(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006816
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】セル、セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0228 20160101AFI20230111BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20230111BHJP
H01M 8/0215 20160101ALI20230111BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20230111BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230111BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20230111BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/0206
H01M8/0215
H01M8/2475
H01M8/04 Z
H01M8/12 101
H01M8/12 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109632
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 大樹
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA14
5H126BB06
5H126CC02
5H126EE13
5H126FF10
5H126GG02
5H126GG12
5H126JJ00
5H127AA07
5H127BA04
5H127BA05
5H127BA13
5H127EE02
5H127EE03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電池性能を向上することができる燃料電池セル、セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置を提供する。
【解決手段】セル1は、素子部3と、前記素子部3に接続される導電部材4と、前記導電部材4を覆う酸素難透過層9とを備える。セル1は、前記素子部3を支持する支持基板2をさらに備え、前記導電部材4は、前記素子部3および前記支持基板2に接続される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子部と、
前記素子部に接続される導電部材と、
前記導電部材を覆う酸素難透過層と
を備えるセル。
【請求項2】
前記素子部を支持する支持基板
をさらに備え、
前記導電部材は、前記素子部および前記支持基板に接続される
請求項1に記載のセル。
【請求項3】
前記酸素難透過層は、前記導電部材よりも酸素イオン透過性が小さい
請求項1または2に記載のセル。
【請求項4】
前記酸素難透過層は、金属またはセラミックスのうち少なくともいずれかを含む
請求項1~3のいずれか1つに記載のセル。
【請求項5】
前記酸素難透過層は、Pt、Ag、TiO2およびReO2のうち少なくともいずれかを含む
請求項1~4のいずれか1つに記載のセル。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載のセルを複数備えるセルスタックを有する
セルスタック装置。
【請求項7】
前記導電部材は、隣り合う素子部同士を電気的に接続するインターコネクタである
請求項6に記載のセルスタック装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載のセルスタック装置と、
前記セルスタック装置を収納する収納容器と
を備えるモジュール。
【請求項9】
請求項8に記載のモジュールと、
前記モジュールの運転を行うための補機と、
前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースと
を備えるモジュール収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セル、セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、燃料電池セルを複数備える燃料電池セルスタック装置が種々提案されている。燃料電池セルは、水素含有ガス等の燃料ガスと空気等の酸素含有ガスとを用いて電力を得ることができるセルの1種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の燃料電池セルスタック装置では、電池性能を向上させる点で改善の余地があった。
【0005】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、電池性能を向上することができるセル、セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係るセルは、素子部と、導電部材と、酸素難透過層とを備える。導電部材は、素子部に接続される。酸素難透過層は、導電部材を覆う。
【0007】
また、本開示のセルスタック装置は、上記に記載のセルを複数備えるセルスタックを有する。
【0008】
また、本開示のモジュールは、上記に記載のセルスタック装置と、セルスタック装置を収納する収納容器とを備える。
【0009】
また、本開示のモジュール収容装置は、上記に記載のモジュールと、モジュールの運転を行うための補機と、モジュールおよび補機を収容する外装ケースとを備える。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の一態様によれば、電池性能を向上することができるセル、セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、第1の実施形態に係るセルの一例を示す横断面図である。
【
図1B】
図1Bは、第1の実施形態に係るセルの一例を空気極側からみた側面図である。
【
図1C】
図1Cは、第1の実施形態に係るセルの一例をインターコネクタ側からみた側面図である。
【
図1D】
図1Dは、第1の実施形態に係るセルの一例を示す縦断面図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施形態に係るセルスタック装置の一例を示す斜視図である。
【
図2C】
図2Cは、第1の実施形態に係るセルスタック装置の一例を示す上面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るモジュールの一例を示す外観斜視図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るモジュール収容装置の一例を概略的に示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、OCV時の水素分圧を比較する概略図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係るセルを示す横断面図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係るセルスタック装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するセル、セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの開示が限定されるものではない。
【0013】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係、比率などが異なる部分が含まれている場合がある。
【0014】
[第1の実施形態]
<セルの構成>
まず、
図1A~
図1Dを参照しながら、第1の実施形態に係るセルとして、固体酸化物形の燃料電池セルの例を用いて説明する。
【0015】
図1Aは、第1の実施形態に係るセルの一例を示す横断面図であり、
図1Bは、第1の実施形態に係るセルの一例を空気極側からみた側面図であり、
図1Cは、第1の実施形態に係るセルの一例をインターコネクタ側からみた側面図であり、
図1Dは、第1の実施形態に係るセルの一例を示す縦断面図である。なお、
図1A~
図1Dは、セル1の各構成の一部を拡大して示している。
【0016】
図1A~
図1Dに示す例において、セル1は中空平板型で、細長い板状である。
図1Bに示すように、セル1の全体を側面から見た形状は、たとえば、長さ方向Lの辺の長さが5cm~50cmで、この長さ方向Lに直交する幅方向Wの長さが1cm~10cmの長方形である。このセル1の全体の厚み方向Tの厚さは1mm~5mmである。
【0017】
図1Aに示すように、セル1は、導電性の支持基板2と、素子部3と、インターコネクタ4と、酸素難透過層9とを備えている。支持基板2は、一対の対向する平坦面n1、n2、およびかかる平坦面n1、n2を接続する一対の円弧状の側面mを有する柱状である。
【0018】
素子部3は、支持基板2の一方の平坦面n1上に設けられている。かかる素子部3は、燃料極5と、固体電解質層6と、空気極8とを有している。また、
図1Aに示す例では、支持基板2の他方の平坦面n2上に導電部材であるインターコネクタ4が設けられている。なお、セル1は、固体電解質層6と空気極8との間に中間層7を備えていてもよい。
【0019】
また、
図1Bに示すように、空気極8はセル1の下端まで延びていない。セル1の下端部では、固体電解質層6のみが平坦面n1の表面に露出している。また、
図1Cに示すように、酸素難透過層9がセル1の下端まで延びていてもよい。セル1の下端部では、酸素難透過層9および固体電解質層6が表面に露出している。なお、
図1Aに示すように、セル1の一対の円弧状の側面mにおける表面では、固体電解質層6が露出している。インターコネクタ4は、セル1の上端および下端まで延びておらず、セル1の外部には露出していない。
【0020】
以下、セル1を構成する各部材について説明する。
【0021】
支持基板2は、ガスが流れるガス流路2aを内部に有している。
図1Aに示す支持基板2の例は、6つのガス流路2aを有している。支持基板2は、ガス透過性を有し、ガス流路2aに流れる燃料ガスを燃料極5まで透過させる。支持基板2は導電性を有していてもよい。導電性を有する支持基板2は、発電素子で生じた電気をインターコネクタ4に集電する。
【0022】
支持基板2の材料は、たとえば、鉄族金属成分および無機酸化物を含む。鉄族金属成分は、たとえば、Ni(ニッケル)および/またはNiOであってもよい。無機酸化物は、たとえば、特定の希土類元素酸化物であってもよい。希土類元素酸化物は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される1以上の希土類元素を含んでもよい。
【0023】
燃料極5の材料には、一般的に公知のものを使用することができる。燃料極5は、多孔質の導電性セラミックス、たとえば酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または希土類元素酸化物が固溶しているZrO2と、Niおよび/またはNiOとを含むセラミックスなどを用いてもよい。この希土類元素酸化物は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される複数の希土類元素を含んでもよい。酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または希土類元素酸化物が固溶しているZrO2を安定化ジルコニアと称する場合もある。安定化ジルコニアは、部分安定化ジルコニアも含む。
【0024】
固体電解質層6は、電解質であり、燃料極5と空気極8との間のイオンの橋渡しをする。同時に、固体電解質層6は、ガス遮断性を有し、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを生じにくくする。
【0025】
固体電解質層6の材料は、たとえば、3モル%~15モル%の希土類元素酸化物が固溶したZrO2であってもよい。希土類元素酸化物は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される1以上の希土類元素を含んでよい。固体電解質層6は、たとえば、Yb、ScまたはGdが固溶したZrO2を含んでもよく、La、NdまたはYbが固溶したCeO2を含んでもよく、ScまたはYbが固溶したBaZrO3を含んでもよく、ScまたはYbが固溶したBaCeO3を含んでもよい。
【0026】
空気極8は、ガス透過性を有している。空気極8の開気孔率は、たとえば20%以上、特に30%~50%の範囲であってもよい。
【0027】
空気極8の材料は、一般的に空気極に用いられるものであれば特に制限はない。空気極8の材料は、たとえば、いわゆるABO3型のペロブスカイト型酸化物などの導電性セラミックスであってもよい。
【0028】
空気極8の材料は、たとえば、AサイトにSr(ストロンチウム)とLa(ランタン)が共存する複合酸化物であってもよい。このような複合酸化物の例としては、LaxSr1-xCoyFe1-yO3、LaxSr1-xMnO3、LaxSr1-xFeO3、LaxSr1-xCoO3などが挙げられる。なお、xは0<x<1、yは0<y<1である。
【0029】
また、素子部3が中間層7を有する場合、中間層7は、拡散抑制層としての機能を有する。空気極8に含まれるSr(ストロンチウム)などの元素が固体電解質層6に拡散すると、かかる固体電解質層6にたとえばSrZrO3などの抵抗層が形成される。中間層7は、Srの拡散を抑制し、SrZrO3その他の電気絶縁性を有する酸化物が形成されにくくする。
【0030】
中間層7の材料は、一般的にSrの拡散抑制層に用いられるものであれば特に制限はない。中間層7の材料は、たとえば、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウム(CeO2)を含む。かかる希土類元素としては、Gd(ガドリニウム)やSm(サマリウム)などが用いられる。
【0031】
また、インターコネクタ4は、緻密質であり、支持基板2の内部のガス流路2aを流通する燃料ガス、および支持基板2の外側を流通する酸素含有ガスのリークを生じにくくする。インターコネクタ4は、ガス流路2aを流通する燃料ガスに、支持基板2を通して接する。インターコネクタ4は、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していてもよい。
【0032】
インターコネクタ4の材料には、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3系酸化物)、もしくは、ランタンストロンチウムチタン系のペロブスカイト型酸化物(LaSrTiO3系酸化物)が好適に使用される。これらの材料は、導電性を有し、かつ燃料ガス(水素含有ガス)および酸素含有ガス(空気など)と接触しても還元も酸化もされない。
【0033】
酸素難透過層9は、セル1の外部に露出したインターコネクタ4の表面を覆うように位置している。上記したように、インターコネクタ4は、支持基板2の外側を流通する酸素含有ガスのリークが生じにくい材料で構成されている。ただし、たとえば700℃を超える高温では、インターコネクタ4は、固体電解質層6と比較して無視できない程度の酸素透過性を有し、たとえば、数%程度の酸素が酸素イオン(O2-)としてインターコネクタ4を透過しうる。インターコネクタ4を透過した酸素は、支持基板2またはガス流路2aの内部で燃料ガス中の水素と反応し、H2Oが発生する。また、水素の消費に伴う燃料ガス中の水素分圧の低下により、開回路電圧(OCV)が低下し、電池性能が低下する可能性があった。
【0034】
そこで、本実施形態に係るセル1では、セル1の外側を流通する酸素含有ガスとインターコネクタ4との間に、酸素難透過層9を位置させることとした。酸素難透過層9は、インターコネクタ4と比較して酸素透過性が低い。このため、固体電解質層6の外部における燃料ガス中の消費が抑えられることから、電池性能が向上する。
【0035】
酸素難透過層9には、上記した低い酸素透過性の他、インターコネクタ4と同等程度の電子伝導性を有することが要求される。このような酸素難透過層9の材料としては、たとえば白金(Pt)、銀(Ag)などの金属、酸化チタン(TiO2)、酸化レニウム(ReO2)の酸化物を用いてもよい。
【0036】
<セルスタック装置の構成>
次に、上述したセル1を用いた本実施形態に係るセルスタック装置10について、
図2A~
図2Cを参照しながら説明する。
図2Aは、第1の実施形態に係るセルスタック装置の一例を示す斜視図であり、
図2Bは、
図2Aに示すX-X線の断面図であり、
図2Cは、第1の実施形態に係るセルスタック装置の一例を示す上面図である。
【0037】
図2Aに示すように、セルスタック装置10は、セル1の厚み方向T(
図1A参照)に配列(積層)された複数のセル1を有するセルスタック11と、固定部材12とを備える。
【0038】
固定部材12は、固定材13と、支持部材14とを有する。支持部材14は、セル1を支持する。固定材13は、セル1を支持部材14に固定する。また、支持部材14は、支持体15と、ガスタンク16とを有する。支持部材14である支持体15およびガスタンク16は、たとえば金属製である。
【0039】
図2Bに示すように、支持体15は、複数のセル1の下端部が挿入される挿入孔15aを有している。複数のセル1の下端部と挿入孔15aの内壁とは、固定材13で接合されている。
【0040】
ガスタンク16は、挿入孔15aを通じて複数のセル1に反応ガスを供給する開口部と、かかる開口部の周囲に位置する凹溝16aとを有する。支持体15の外周の端部は、ガスタンク16の凹溝16aに充填された接合材21によって、ガスタンク16と接合されている。
【0041】
図2Aに示す例では、支持部材14である支持体15とガスタンク16とで形成される内部空間22に燃料ガスが貯留される。ガスタンク16にはガス流通管20が接続されている。燃料ガスは、このガス流通管20を通してガスタンク16に供給され、ガスタンク16からセル1の内部のガス流路2a(
図1A参照)に供給される。ガスタンク16に供給される燃料ガスは、後述する改質器102(
図5参照)で生成される。
【0042】
水素リッチな燃料ガスは、原燃料を水蒸気改質などすることによって生成することができる。水蒸気改質により燃料ガスを生成する場合には、燃料ガスは水蒸気を含む。
【0043】
図2Aに示す例では、2列のセルスタック11、2つの支持体15およびガスタンク16を備えている。2列のセルスタック11はそれぞれ、複数のセル1を有する。各セルスタック11は、各支持体15に固定されている。ガスタンク16は上面に2つの貫通孔を有している。各貫通孔には、各支持体15が配置されている。内部空間22は、1つのガスタンク16と、2つの支持体15とで形成される。
【0044】
挿入孔15aの形状は、たとえば、上面視で長円形状である。挿入孔15aは、たとえば、セル1の配列方向すなわち厚み方向Tの長さが、セルスタック11の両端に位置する2つの端部集電部材17の間の距離よりも大きい。挿入孔15aの幅は、たとえば、セル1の幅方向W(
図1A参照)の長さよりも大きい。
【0045】
図2Bに示すように、挿入孔15aの内壁とセル1の下端部との接合部は、固定材13が充填され、固化されている。これにより、挿入孔15aの内壁と複数個のセル1の下端部とがそれぞれ接合・固定され、また、セル1の下端部同士が接合・固定されている。各セル1のガス流路2aは、下端部で支持部材14の内部空間22と連通している。
【0046】
固定材13および接合材21は、ガラスなどの導電性が低いものを用いることができる。固定材13および接合材21の具体的な材料としては、非晶質ガラスなどを用いてもよく、特に結晶化ガラスなどを用いてもよい。
【0047】
結晶化ガラスとしては、たとえば、SiO2-CaO系、MgO-B2O3系、La2O3-B2O3-MgO系、La2O3-B2O3-ZnO系、SiO2-CaO-ZnO系などの材料のいずれかを用いてもよく、特にSiO2-MgO系の材料を用いてもよい。
【0048】
また、
図2Bに示すように、複数のセル1のうち隣接するセル1の間には、接続部材18が介在している。接続部材18は、隣接する一方のセル1の燃料極5と他方のセル1の空気極8とを電気的に直列に接続する。より具体的には、接続部材18は、隣接する一方のセル1の燃料極5と電気的に接続された酸素難透過層9と、他方のセル1の空気極8とを接続している。
【0049】
また、
図2Bに示すように、複数のセル1の配列方向における最も外側に位置するセル1に、端部集電部材17が電気的に接続されている。端部集電部材17は、セルスタック11の外側に突出する導電部19に接続されている。導電部19は、セル1の発電により生じた電気を集電して外部に引き出す。なお、
図2Aでは、端部集電部材17の図示を省略している。
【0050】
また、
図2Cに示すように、セルスタック装置10は、2つのセルスタック11A、11Bが直列に接続され、一つの電池として機能する。そのため、セルスタック装置10の導電部19は、正極端子19Aと、負極端子19Bと、接続端子19Cとに区別される。
【0051】
正極端子19Aは、セルスタック11が発電した電力を外部に出力する場合の正極であり、セルスタック11Aにおける正極側の端部集電部材17に電気的に接続される。負極端子19Bは、セルスタック11が発電した電力を外部に出力する場合の負極であり、セルスタック11Bにおける負極側の端部集電部材17に電気的に接続される。
【0052】
接続端子19Cは、セルスタック11Aにおける負極側の端部集電部材17と、セルスタック11Bにおける正極側の端部集電部材17とを電気的に接続する。
【0053】
<モジュール>
次に、上述したセルスタック装置10を用いた本開示の実施形態に係るモジュール100について、
図3を用いて説明する。
図3は、第1の実施形態に係るモジュールを示す外観斜視図であり、収納容器101の一部である前面および後面を取り外し、内部に収納される燃料電池のセルスタック装置10を後方に取り出した状態を示している。
【0054】
図3に示すように、モジュール100は、収納容器101、および収納容器内に収納されたセルスタック装置10を備えている。また、セルスタック装置10の上方には、改質器102が配置されている。
【0055】
かかる改質器102は、天然ガスや灯油などの原燃料を改質して燃料ガスを生成し、セル1に供給する。原燃料は、原燃料供給管103を通じて改質器102に供給される。なお、改質器102は、水を気化させる気化部102aと、改質部102bとを備えていてもよい。改質部102bは、図示しない改質触媒を備えており、原燃料を燃料ガスに改質する。このような改質器102は、効率の高い改質反応である水蒸気改質を行うことができる。
【0056】
そして、改質器102で生成された燃料ガスは、ガス流通管20、ガスタンク16、および支持部材14を通じて、セル1のガス流路2a(
図1A参照)に供給される。
【0057】
また、上述の構成のモジュール100では、ガスの燃焼およびセル1の発電に伴い、通常発電時におけるモジュール100内の温度が500~1000℃程度となる。
【0058】
このようなモジュール100においては、上述したように、電池性能が向上されるセルスタック装置10を収納して構成されることにより、電池性能が向上されるモジュール100とすることができる。
【0059】
<モジュール収容装置>
図4は、第1の実施形態に係るモジュール収容装置の一例を示す分解斜視図である。本実施形態に係るモジュール収容装置110は、外装ケース111と、
図3で示したモジュール100と、図示しない補機と、を備えている。補機は、モジュール100の運転を行う。モジュール100および補機は、外装ケース111内に収容されている。なお、
図4においては一部構成を省略して示している。
【0060】
図4に示すモジュール収容装置110の外装ケース111は、支柱112と外装板113とを有する。仕切板114は、外装ケース111内を上下に区画している。外装ケース111内の仕切板114より上側の空間は、モジュール100を収容するモジュール収容室115であり、外装ケース111内の仕切板114より下側の空間は、モジュール100を運転する補機を収容する補機収容室116である。なお、
図4では、補機収容室116に収容する補機を省略して示している。
【0061】
また、仕切板114は、補機収容室116の空気をモジュール収容室115側に流すための空気流通口117を有している。モジュール収容室115を構成する外装板113は、モジュール収容室115内の空気を排気するための排気口118を有している。
【0062】
このようなモジュール収容装置110においては、上述したように、電池性能が向上されるモジュール100をモジュール収容室115に備えていることにより、電池性能が向上されるモジュール収容装置110とすることができる。
【0063】
なお、上述の実施形態では、中空平板型の支持基板を用いた場合を例示したが、円筒型の支持基板を用いたセルスタック装置に適用することもできる。
【0064】
<性能評価>
図2A~
図2Cに示すセルスタック装置10につき、酸素難透過層9の有無による電池性能の相違について評価した。なお、酸素難透過層9としては、銀(Ag)を使用した。酸素難透過層9は、セル1のインターコネクタ4上に銀ペーストを塗布し、焼き付けた。
【0065】
図5は、OCV時の水素分圧を比較する概略図である。セル1の温度700℃、750℃、800℃におけるOCVをそれぞれ測定し、下記の(1)に示すネルンストの式を用いて燃料ガス中の水素分圧を算出した。OCVは、セル1に電圧もしくは電流を印加していない状態の電圧である。
【0066】
【0067】
図5および後述する
図6、
図7中、白丸(〇)は酸素難透過層9を有するセル1を、黒丸(●)は酸素難透過層9を有さないセル1を、それぞれ用いた場合を示したものである。
図5に示すように、セル温度の上昇に伴い、燃料ガス中の水素分圧は低下するものの、セル1が酸素難透過層9を備えるセルスタック装置10では、その程度が小さくなるという結果が得られた。なお、
図6、
図7のOCVおよびスタック電圧は、黒丸(●)の750℃の数値を1とする相対値として示している。
【0068】
図6は、OCVを比較する概略図である。OCVは、セル1の温度700℃、750℃、800℃においてそれぞれ測定した。OCVは、
図2に示す正極端子19A、負極端子19B間の電圧をデータロガー(GL240、GRAPHTEC製)を用いて測定した。
図6には、測定した正極端子19A、負極端子19B間の電圧をセル1の数で除したOCVを示した。
図6に示すように、セル温度の上昇に従ってOCVは低下するが、測定したいずれの温度においても、OCVは、酸素難透過層9を備えた場合の方が酸素難透過層9を備えない場合と比較して高くなるという結果が得られた。
【0069】
図7は、電池性能を比較する概略図である。
図7でいう電池性能とは、1セル当たりのスタック電圧である。
図7では、セル1の温度700℃、750℃、800℃においてスタック電圧をデータロガー(GL240、GRAPHTEC製)、電子負荷装置(FK-400L2、TAKASAGO製)を用いて測定し、得られた値をセル1の数で除したものを図示した。スタック電圧とは、セルスタックに電圧もしくは電流を印加した状態の電圧をいい、具体的には、電流密度を0.4A/cm
2としたときの正極端子19A、負極端子19B間の電圧を測定した。
図7に示すように、測定したいずれの温度においても、1セル当たりのスタック電圧は、酸素難透過層9を備えた場合の方が酸素難透過層9を備えない場合と比較して高くなるという結果が得られた。
【0070】
このように、セル1が酸素難透過層9を備えることにより、電池性能が向上することが明らかとなった。
【0071】
[第2の実施形態]
つづいて、第2の実施形態に係るセルおよびセルスタック装置について、
図8~
図10を参照しながら説明する。
【0072】
上述の実施形態では、支持基板の表面に燃料極、固体電解質層および空気極を含む素子部が1つのみ設けられたいわゆる「縦縞型」を例示したが、支持基板の表面の互いに離れた複数個所にて素子部がそれぞれ設けられ、隣り合う素子部の間が電気的に接続されたいわゆる「横縞型」のセルを配列した横縞型セルスタック装置に適用することができる。
【0073】
図8は、第2の実施形態に係るセルを示す横断面図であり、
図9は、第2の実施形態に係るセルスタック装置の一例を示す断面図であり、
図10は、
図9に示す領域Aの拡大図である。
【0074】
図8に示すように、第2の実施形態に係るセル1Aは、支持基板2と、一対の素子部3と、封止部30とを備えている。支持基板2は、一対の対向する平坦面n1、n2、およびかかる平坦面n1、n2を接続する一対の円弧状の側面mを有する柱状である。
【0075】
一対の素子部3は、支持基板2の平坦面n1、n2上に、互いに対向するように位置している。また、封止部30は、支持基板2の側面mを覆うように位置している。
【0076】
また、
図9に示すように、セルスタック装置10Aは、燃料ガスを流通させる配管22aから複数のセル1Aが長さ方向Lに延びている。セル1Aは、支持基板2上に複数の素子部3を有している。支持基板2の内部には、配管22aからの燃料ガスが流れるガス流路2aが設けられている。
【0077】
また、各セル1Aは、接続部材31を介して互いに電気的に接続されている。接続部材31は、各セル1Aがそれぞれ有する素子部3の間に位置しており、隣り合うセル1Aを接続している。具体的には、接続部材31は、隣り合うセル1Aのうち一方のセル1Aの素子部3の空気極8と、他方のセル1Aの燃料極5と電気的に接合されたインターコネクタ4を覆う酸素難透過層9とを接続している。
【0078】
また、
図10に示すように、インターコネクタ4は、長さ方向Lに隣り合う素子部3同士を接続するように位置している。酸素難透過層9は、インターコネクタ4と空気極8との間に位置している。
【0079】
このように、酸素難透過層9がインターコネクタ4を覆うことにより、空気極8からインターコネクタ4を介して、燃料極5、支持基板2への酸素のリークが生じにくくなることから、セル1Aの電池性能が向上する。これにより、セルスタック装置10Aの電池性能が向上する。
【0080】
<その他の変形例>
つづいて、実施形態のその他の変形例について説明する。
【0081】
上記実施形態では、「セル」、「セルスタック装置」、「モジュール」および「モジュール収容装置」の一例として燃料電池セル、燃料電池セルスタック装置、燃料電池モジュールおよび燃料電池装置を示したが、他の例としてはそれぞれ、電解セル、電解セルスタック装置、電解モジュールおよび電解装置であってもよい。
【0082】
以上、本開示について詳細に説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0083】
以上のように、実施形態に係るセル1は、素子部3と、素子部3に接続される導電部材(インターコネクタ4)と、導電部材を覆う酸素難透過層9とを備える。これにより、電池性能が向上する。
【0084】
また、実施形態に係るセル1は、素子部3を支持する支持基板2をさらに備え、導電部材は、素子部3および支持基板2に接続される。これにより、電池性能が向上する。
【0085】
また、実施形態に係る酸素難透過層9は、導電部材よりも酸素イオン透過性が小さい。これにより、電池性能が向上する。
【0086】
また、実施形態に係る酸素難透過層9は、金属およびセラミックスのうち少なくともいずれかを含む。これにより、電池性能が向上する。
【0087】
また、実施形態に係る酸素難透過層9は、Pt、Ag、TiO2およびReO2のうち少なくともいずれかを含む。これにより、電池性能が向上する。
【0088】
また、実施形態に係るセルスタック装置10は、上記に記載のセル1を複数備えるセルスタック11を有する。これにより、電池性能を向上することができるセルスタック装置10とすることができる。
【0089】
また、実施形態に係るモジュール100は、上記に記載のセルスタック装置10と、セルスタック装置10を収納する収納容器101とを備える。これにより、電池性能を向上することができるモジュール100とすることができる。
【0090】
また、実施形態に係るモジュール収容装置110は、上記に記載のモジュール100と、モジュール100の運転を行うための補機と、モジュール100および補機を収容する外装ケースとを備える。これにより、電池性能を向上することができるモジュール収容装置110とすることができる。
【0091】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1,1A セル
3 素子部
5 燃料極
6 固体電解質層
7 中間層
8 空気極
9 酸素難透過層
10 セルスタック装置
11 セルスタック
12 固定部材
13 固定材
14 支持部材
15 支持体
16 ガスタンク
17 端部集電部材
18 接続部材
100 モジュール
110 モジュール収容装置