(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068164
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】補強されたカテーテルを用いた血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/13 20210101AFI20230509BHJP
A61M 60/216 20210101ALI20230509BHJP
A61M 60/857 20210101ALI20230509BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A61M60/13
A61M60/216
A61M60/857
A61M25/00 620
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049130
(22)【出願日】2023-03-27
(62)【分割の表示】P 2019560767の分割
【原出願日】2018-05-03
(31)【優先権主張番号】17169486.2
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】キルヒホッフ フランク
(72)【発明者】
【氏名】アボウルホーセン ワリド
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ねじれを防ぐことができるカテーテルを有し、それによってカテーテルの剛性を調整することができる、患者の血管内に経皮挿入するための血管内血液ポンプを提供することである。
【解決手段】血管内血液ポンプが、カテーテル(10)と、カテーテル(10)に取り付けられたポンピングデバイス(1)とを備える。カテーテル(10)は、長手方向軸に沿って延び、遠位端(11)と、遠位端(11)の反対側の近位端(12)とを有する。カテーテル(10)は、カテーテル(10)の近位端(12)および遠位端(11)間に長手方向に延びる管状補剛構造(15)を含む。管状補剛構造(15)は、管腔(21)と、近位端(17)と、近位端(17)の反対側の閉じた遠位端(16)とを有し、補剛構造(15)の管腔(21)は、少なくとも5バールの過剰圧力を有する加圧流体を受けるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管内に経皮挿入するための血管内血液ポンプであって、カテーテル(10)と、前記カテーテル(10)に取り付けられたポンピングデバイス(1)とを備え、前記カテーテル(10)は、長手方向軸に沿って延び、前記長手方向軸に沿って、遠位端(11)と、前記遠位端(11)の反対側の近位端(12)とを有し、前記カテーテル(10)は、或る長さを有し、前記カテーテルの前記近位端(12)および前記遠位端(11)間に長手方向に延びる、管状補剛構造(15)を含み、前記管状補剛構造(15)は、管腔(21)と、近位端(17)と、前記近位端(17)の反対側の閉じた遠位端(16)とを有し、前記補剛構造(15)の前記管腔(21)は、少なくとも5バールの過剰圧力を有する加圧流体を受けるように構成されることを特徴とする血管内血液ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の血液ポンプであって、前記カテーテル(10)は、前記近位端(12)から前記遠位端(11)まで前記カテーテル(10)を通って延びる管腔(13)を有し、前記補剛構造(15)は前記カテーテル(10)の前記管腔(13)内に配設されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造は、前記カテーテル(10)の前記管腔(13)内部で緩んでいることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造(15)の前記管腔(21)は、5バール~150バールの過剰圧力を有する加圧流体を受けるように構成されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造(15)は、形状記憶材料、好ましくは形状記憶合金、より好ましくはニチノールを含むことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造(15)はポリマー材料を含むことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記管状補剛構造(15)のうちの少なくとも2つを含み、前記少なくとも2つの管状補剛構造(15)は撚り合わされていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記管状補剛構造(15)のうちの少なくとも3つを含み、前記少なくとも3つの管状補剛構造(15)は、中実の編み紐または編組された中空の管状部材を形成するように編組されていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造(15)は、前記血液ポンプの動作中、前記カテーテル(10)内に留まるように構成されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造(15)は、前記血液ポンプを患者の身体内に配置した後、前記カテーテル(10)から除去されるように構成されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造(15)は、前記カテーテル(10)が、塑性変形を生じることなく、10mm以下の曲げで弾性変形されることを可能にすることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の血液ポンプと、前記補剛構造(15)の前記近位端(17)に接続された圧力源(20)とを備え、加圧流体を前記補剛構造(15)の前記管腔(21)に供給するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、前記加圧流体の圧力を調整するように構成されたコントローラを更に備えることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルと、カテーテルの遠位端に取り付けられたポンピングデバイスとを含む、患者の血管内に経皮挿入するための血管内血液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
経皮挿入のための血液ポンプは、患者の心臓をサポートするように設計され、患者の皮膚における血管アクセスを通じて、すなわち経皮的に、カテーテルによって大動脈または大腿動脈等の血管を介して患者の心臓内に挿入される。経皮挿入のための血管内血液ポンプは、通常、カテーテルと、カテーテルに取り付けられたポンピングデバイスとを備える。カテーテルは、長手方向軸に沿って遠位端から近位端に延びることができ、ポンピングデバイスは、外科医等のオペレータから離れた端部においてカテーテルに取り付けられる。ポンピングデバイスは、カテーテルによって、例えば大腿動脈および大動脈を通じて患者の心臓の左心室内に挿入することができる。患者の心臓内に配置される血液ポンプは、心臓内血液ポンプと呼ばれる場合もある。
【0003】
比較的剛性の高いカテーテルはねじれのリスクがより少ないのに対し、軟質のカテーテルは、大動脈、特に大動脈弓等の血管の形状により良好に適合する。しかしながら、軟質のカテーテルは、その低剛性に起因して、特にカテーテルの挿入中にねじれる傾向がある。カテーテルがねじれると、これにより、カテーテル上に弱体化した場所が生じ、同じ場所で再びねじれる可能性が高くなる。これは、血液ポンプの動作中に特に問題となる場合がある。例えば、血液ポンプは、心臓から押し出され、大動脈内に戻される場合があり、これにより、特にカテーテルが挿入中に既にねじれている場合、カテーテルのねじれを引き起こす場合がある。この結果、弱体化した場所において激しいねじれが生じる場合があり、ひいては、ポンピングデバイスにパージ流体を供給するパージライン等のカテーテル内部の構造のねじれが引き起こされる。パージラインは遮断する可能性があり、血液ポンプは、パージラインの増大したパージ圧力または更には完全な遮断に起因して故障する可能性がある。
【0004】
カテーテルを補強または補剛する試みがなされてきたが、結果として得られる剛性は望ましくない場合がある。例えばパージラインのみを補強する他の試みもなされてきたが、これにより構造の複雑度が増大し、より高いコストが生じる場合がある。それとは別に、カテーテルの剛性を調整可能であることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、ねじれを防ぐことができるカテーテルを有し、それによってカテーテルの剛性を調整することができる、患者の血管内に経皮挿入するための血管内血液ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明によれば、独立請求項1に記載の特徴を有する経皮挿入のための血液ポンプによって達成される。本発明の好ましい実施形態および更なる発展形は、その従属項に指定されている。本開示全体を通じて、用語「遠位」は、使用者から離れて心臓に向かう方向を指し、用語「近位」は、使用者に向かう方向を指す。
【0007】
本発明によれば、経皮挿入のための血管内血液ポンプのカテーテルは、カテーテルの近位端および遠位端間で長手方向に延びる管状補剛構造を含む。管状補剛構造は、管腔と、近位端と、近位端の反対側の閉じた遠位端とを有する。補剛構造の管腔は、少なくとも5バールの過剰圧力を有する加圧流体を受けるように構成される。閉じた遠位端は、補剛構造の剛性を調整することができるように、管腔が加圧流体を受け、保持することを可能にする。補剛構造は、加圧流体が管腔内に受けられていない状態で所定の剛性を有することができ、流体を挿入し、流体内の圧力を増大させることにより剛性を高めることが可能である。
【0008】
管状補剛構造は、管状補剛構造の管腔内部の加圧流体の圧力を増減させることによって、その曲げ剛性の調整を可能にする。加圧流体は、近位端から挿入することができ、遠位端が閉じていることに起因して、管状補剛構造から出ることを阻止される。例えば、加圧流体は、カテーテルが高い曲げ剛性を有するべきである、患者の血管内へのカテーテルの挿入中に、高い圧力で管状補剛構造の管腔内に挿入され、管腔の内部に保持され得る。カテーテルが所望の量まで挿入されると、圧力を解放することができ、結果として曲げ剛性が減少し、カテーテルが血管の形状により良好に一致することが可能になる。使用者は、用途および需要に依拠して任意の時点で加圧流体の圧力を調整することによって、曲げ剛性を調整することができる。
【0009】
補剛構造は、カテーテルがねじれることを防ぎ、同時に、カテーテルが大動脈等の血管を通して方向付けされ得るような曲げを可能にするのに十分な可撓性を提供する。特に、外科医/心臓医が血管を通してカテーテルを押す、血液ポンプの挿入中に、ねじれを防ぐことができる。血液ポンプの動作中のカテーテルのねじれのリスクが少なくなるように、カテーテル上の弱体化した場所が回避される。それにもかかわらず、万一、処置中にカテーテルがねじれた場合、カテーテルは逆に撓み、経時的にその形状を回復することができる。特に、ねじれはカテーテルの塑性変形、すなわち不可逆的変形であるのに対し、曲げは、カテーテルがその初期形状に戻ることができる弾性変形であるため、補剛構造は、好ましくは、カテーテルが塑性変形を生じることなく10mm以下の曲げ半径で弾性的に変形することを可能にする。曲げ半径は、カテーテルの中心軸に対し測定される。
【0010】
例えば、カテーテルの剛性は、カテーテルの挿入中は、挿入を容易にし、挿入中のカテーテルのねじれを回避するために増大させることができ、血液ポンプの動作中は、カテーテルが血管の形状に適応することを可能にするために減少させることができる。好ましくは、補剛構造の管腔は、5バール~150バール、例えば75バールの過剰圧力を有する加圧流体を受けるように構成される。より詳細には、補剛構造の管腔は、所望の剛性を達成するために、少なくとも5バール、少なくとも10バール、少なくとも20バール、もしくは少なくとも30バールの過剰圧力、または更に高い少なくとも50バール、少なくとも85バール、もしくは少なくとも100バール、最大で150バールの圧力を有する加圧流体を受けるように構成することができる。
【0011】
補剛構造は、手術全体の間および血液ポンプの動作中に、カテーテルをサポートし、ねじれを防ぐために、血液ポンプの動作中にカテーテル内に留まるように構成することができる。これは、心臓の動き、または血液ポンプのポンプ作用によって、血液ポンプの動作中に血液ポンプが心臓から押し出される傾向がある用途において有利であり得る。血液ポンプを心臓から押し出す傾向がないかまたは少ない用途では、補剛構造は、患者の身体内に血液ポンプを配置した後、カテーテルから除去するように構成することができる。これにより、カテーテルは、血液ポンプの動作中により可撓性になり、カテーテルが大動脈等のそれぞれの血管の形状により良好に適合することが可能になる。これによって、血管の内壁とカテーテルとの間の接触が低減し、また、ポンプが弁構造を押し得る力も低減することができる。
【0012】
患者の心臓への大腿部アクセス(動脈または静脈)を介した経皮挿入のためのカテーテルの一般的な長さは、100cm~150cmとすることができる。補剛構造も、100cm~150cmの長さを有することができる。カテーテルおよび補剛構造は、カテーテルが、鎖骨下動脈または腋窩動脈を通じて左心室内に挿入されるか、または頸静脈を通じて右心室に挿入されるように設計される場合、25cm~50cmの長さを有することができる。
【0013】
カテーテルは、カテーテルを通って近位端から遠位端に延びる管腔を有することができる。補剛構造は、好ましくはカテーテルの管腔内部に配設される。このため、一般的なカテーテルを用い、このカテーテルに、カテーテル管腔を通して補剛構造を挿入することにより補剛構造を設けることができる。好ましくは、補剛構造は実質的に自由浮動しているかまたは緩んでおり、すなわち、カテーテルの管腔の内部で固定されていない。特に、補剛構造の遠位端は自由にすることができ、すなわち血液ポンプの他の部分、例えばポンピングデバイスに取り付けられず、連動もしない。これにより、カテーテルの可撓性が向上する一方で、同時に、カテーテルが血管の形状に従うように曲がるときに補剛構造がカテーテル管腔内部で移動および摺動することができるため、カテーテルのねじれも効果的に防ぐ。これは、補剛構造がカテーテルの一方の側に固定して取り付けられていないことに起因して、カテーテルの可撓性が等方性の挙動を有することができる、すなわち、可撓性が任意の曲げ方向において同一であり得るという更なる効果を有する。
【0014】
代替的に、補剛構造は、カテーテルの壁に収容されるかもしくは埋め込まれてもよく、またはカテーテルの管腔内に挿入せずにカテーテルの外面に配置されてもよい。補剛構造は、少なくとも径方向において固定することができる。補剛構造は、例えばカテーテルが曲がるとき、カテーテルの長さに沿って軸方向に摺動可能であるように、軸方向に移動可能であり得る。例えば、補剛構造は、リング、ループ、小穴等のような任意の適切な取付具によってカテーテルの外面に固定することができる。代替的に、補剛構造は、カテーテルの外面にその全長に沿って固定されてもよい。
【0015】
補剛構造は、好ましくは、超弾性特性を有する、形状記憶材料、好ましくは形状記憶合金、例えばニチノールを含むことができるか、またはそこから作製することができる。材料は、代替的に、同様に形状記憶特性を有することができるポリマー材料を含んでもよい。形状記憶材料は、温度依存特性および温度非依存特性を有する。形状記憶は、形状記憶材料が、或る温度において変形を受け、次に「変形温度」を超えて加熱されると元の変形していない形状に復元する能力を可能にする温度依存特性である。温度変化は、材料のマルテンサイト相とオーステナイト相との間の変換を引き起こす。超弾性は、形状記憶材料が、形状記憶材料に加えられる外力に起因して機械的変形を受け、次に外力が解放されると、元の変形していない形状に復元する能力を可能にする温度非依存特性である。疑似弾性とも称される超弾性は、外部の負荷に起因して生じるマルテンサイト相とオーステナイト相との間の変換によって引き起こされる。結果として、これらの材料は、非常に高い歪みに対し可逆的に変形することができる。管状補剛構造の管腔内に加圧流体を保持するのに適している限り、他の材料が可能であることが理解されよう。
【0016】
補剛構造は編組することもできる。より詳細には、補剛構造が少なくとも3つのチューブを含む場合、チューブを編組し、実質的に中実の編み紐、または編組されたチューブ、すなわち中空の管状本体を形成することができる。補剛構造は、撚り合わされた少なくとも2つのチューブを含むことができる。
【0017】
1つの実施形態では、システムは、上記で説明した血液ポンプと、補剛構造の近位端に接続され、補剛構造の管腔に加圧流体を供給するように構成された圧力源を備える。システムは、特に上述した範囲で、加圧流体の圧力を調整するように構成されたコントローラを更に備えることができる。流体は、好ましくは、グリセリン、シリコンオイルもしくはゲルまたは生理食塩水等の高粘度の生体適合性の流体である。高粘度の流体は、低粘度の流体よりも、管状補剛構造から漏れ出す可能性が低いため、好ましい。
【0018】
前述の要約、ならびに、好ましい実施形態の以下詳細な説明は、添付の図面に関連して読んだときにより良く理解されるであろう。本開示を例証する目的で、参照が図面について行われる。しかしながら、本開示の範囲は、図面に開示した特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】血液ポンプが大動脈を通じて左心室に挿入された患者の心臓を示す図である。
【
図2】補剛構造を有する
図1の血液ポンプのカテーテルを概略的に示す図である。
【
図3】1つの実施形態による補剛構造を有するカテーテルを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1において、患者の心臓H内に挿入される血液ポンプが示される。より詳細には、血液ポンプは、カテーテル10に取り付けられたポンピングデバイス1を備え、このカテーテル10によって、ポンピングデバイス1は、下行大動脈DAおよび大動脈弓AAを含む大動脈AOを介して患者の心臓Hの左心室LV内に挿入される。カテーテル10は、遠位端11および近位端12を有する。血液ポンプは、大動脈AO内で患者の心臓Hの外側に配設される血流出口3を有する一方で、血流入口2は、左心室LVの内側に配置されたフローカニューレ4と流体連通する。インペラ(図示せず)がポンピングデバイス1内に設けられ、血流入口2から血流出口3への血流を発生させる。血液ポンプの遠位端において、周囲の組織に損傷を引き起こすことなく患者の心臓H内への血液ポンプの挿入を容易にするために、ピグテールまたはJ字形先端等の軟質先端5が配置される。また、軟質先端5は、軟組織を血流入口2から離しておき、ポンピングデバイス1を左心室LVの内壁に対し支持するのに役立つ。
【0021】
ここで
図2を参照すると、
図1の血液ポンプのカテーテル10が示されている。カテーテル10は遠位端12から近位端11に延び、カテーテル10を通って延びる管腔13を有する。
図1に示すようなカテーテル10の遠位端11に取り付けられたポンピングデバイス1は
図2には示されていない。カテーテル10の管腔13はカテーテル10の壁14によって画定され、この壁14は、約0.1mm~1mm、例えば0.5mmの壁厚を有することができる。カテーテル10は、2mm~4mm、例えば約3mm(9フレンチの寸法に対応する)の外径を有することができる。したがって、カテーテルの内径は、例えば約2mm(7フレンチの寸法に対応する)とすることができる。管状の補剛構造15がカテーテル管腔13の内部に配設され、遠位端16から近位端17に延びる。管状の補剛構造15は、カテーテル10を通ってカテーテルの遠位端11からその近位端12まで連続的に延びる。パージラインまたは電気線材等についての、カテーテル10を通って延びる場合がある他の構造は、明確にするために
図2では省かれている。
【0022】
図3は、カテーテル10の概略図を示す。管状の補剛構造15が、パージ流体をポンピングデバイス1に供給するためのパージ流体ライン18、および電力をポンピングデバイス1に供給するための電気線材19と共にカテーテル管腔13の内部に配設される。補剛構造15は、パージライン18がねじれることを防ぐために特に有用である。ねじれはパージライン18を遮蔽し、パージ圧力が過度に高いかまたは潤滑性が遮断されることに起因した血液ポンプの故障につながる。2つ以上、例えば2つまたは3つのチューブが設けられてもよいことが理解されよう。1つ以上のチューブは、サイズおよび形状に関して同一に形成されてもよく、または異なるサイズおよび形状を有してもよい。管状の補剛構造15は、好ましくは、ニチノール等の形状記憶材料を含む。しかしながら、形状記憶特性を有するかまたは有しないポリマー材料等の他の材料も用いられ得る。チューブ15は編組されていてもよい。より詳細には、補剛構造15は、例えば実質的に中実の撚り紐もしくは編み紐、または編組された中空の管状部材を形成するように、撚り合わされるか、または好ましくは編組された少なくとも2つの、好ましくは3つ以上のチューブ15を含むことができる。
【0023】
チューブ15は、カテーテル10がねじれることを防ぐ一方で、カテーテル10が、大動脈AO、特に大動脈弓AA等の血管の形状に適合するように曲がることを許容するために、以下でより詳細に説明されるように、変化可能なねじれ耐性を提供する。
図2および
図3に示すように、チューブ15は、実質的に、カテーテル10の管腔13内で自由浮動しており、すなわち、緩んでおり、カテーテル10の内部で固定されていない。このため、チューブ15は、カテーテル管腔13の内部で移動しながら、カテーテル10と僅かに異なる曲率半径に従うことができる。チューブ15は、管腔13内部で、特に軸方向に摺動することも許容され、これはカテーテル10の可撓性にとって有利であり得る。チューブ15の遠位端16は自由であり、特に、ポンピングデバイス1またはポンピングデバイス1の一部に取り付けられていない。少なくとも、チューブ15の遠位端16は、カテーテル10または他の隣接する構造内に貫入することを回避するために、軟質先端で保護するかまたは包むことができる。
【0024】
同様に
図2に概略的に示すように、チューブ15に加圧流体を供給するために、制御ユニットを有する圧力源20がチューブ15の近位端17に接続される。また
図4を参照すると、チューブ15の近位端17は開放しており、圧力源20に接続されているのに対し、遠位端16は閉じており、加圧流体を受け、保持することができる管腔21を形成する。このため、管腔21は、チューブ15の外周壁22および端壁23によって制限される。チューブ15の剛性は、管腔21内の加圧流体の圧力を調整することによって調整することができる。例えば、剛性は、患者の血管内への血液ポンプの挿入中に増大させることができ、血液ポンプの動作中に減少させることができ、それによってカテーテル10は患者の血管、特に大動脈弓AAの形状に良好に適合する。所望の剛性を達成するために、高い圧力、例えば5バール超もしくは30バール超、または更に高い50バール超もしくは75バール超、最大で150バールの圧力を加えることができる。グリセリン、シリコーンオイルまたはゲル等の高粘性の生体適合材料が好ましい。なぜなら、水等の低粘度流体は、管状の補剛構造15から漏れ出す可能性がより高いためである。
【0025】
補剛構造15は、その形状、サイズおよび構成にかかわらず、形状記憶材料、好ましくは形状記憶合金、特にニチノールを含むことができるか、またはそこから作製することができる。特にこの材料に起因して、および加圧流体の圧力に依拠して、補剛構造15は、カテーテル10が、ねじれることなく、すなわち塑性変形が生じることなく、10mm以下の曲げ半径で曲がる、すなわち弾性変形することを可能にする。曲げ半径は、カテーテルの中心軸に対して測定される。このため、補剛構造15を有するカテーテル10は、より良好なねじれ耐性を提供する。カテーテルのねじれを防ぐことは、例えばカテーテル内部の管状ラインの遮蔽を防ぐために重要である。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管内に経皮挿入するための血管内血液ポンプであって、カテーテル(10)と、前記カテーテル(10)に取り付けられたポンピングデバイス(1)とを備え、前記カテーテル(10)は、長手方向軸に沿って延び、前記長手方向軸に沿って、遠位端(11)と、前記遠位端(11)の反対側の近位端(12)とを有し、前記カテーテル(10)は、或る長さを有し、前記カテーテルの前記近位端(12)および前記遠位端(11)間に長手方向に延びる、管状の補剛構造(15)を含み、前記補剛構造(15)は、管腔(21)と、近位端(17)と、前記近位端(17)の反対側の閉じた遠位端(16)とを有し、前記補剛構造(15)の前記管腔(21)は、少なくとも5バールの過剰圧力を有する加圧流体を受けるように構成され、
前記カテーテル(10)は、前記近位端(12)から前記遠位端(11)まで前記カテーテル(10)を通って延びる管腔(13)を有し、前記補剛構造(15)は前記カテーテル(10)の前記管腔(13)内に配設され、
前記補剛構造は、前記カテーテル(10)の前記管腔(13)に対して緩んでいることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造(15)の前記管腔(21)は、5バール~150バールの過剰圧力を有する加圧流体を受けるように構成されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造(15)は、形状記憶材料を含むことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項4】
請求項3に記載の血液ポンプであって、前記形状記憶材料は、形状記憶合金であることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項5】
請求項4に記載の血液ポンプであって、前記形状記憶合金は、ニチノールであることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造(15)はポリマー材料を含むことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造(15)のうちの少なくとも2つを含み、少なくとも2つの前記補剛構造(15)は撚り合わされていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造(15)のうちの少なくとも3つを含み、少なくとも3つの前記補剛構造(15)は、中実の編み紐または編組された中空の管状部材を形成するように編組されていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造(15)は、前記血液ポンプの動作中、前記カテーテル(10)内に留まるように構成されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造(15)は、前記血液ポンプを患者の身体内に配置した後、前記カテーテル(10)から除去されるように構成されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記補剛構造(15)は、前記カテーテル(10)が、塑性変形を生じることなく、10mm以下の曲げで弾性変形されることを可能にすることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の血液ポンプと、前記補剛構造(15)の前記近位端(17)に接続された圧力源(20)とを備え、加圧流体を前記補剛構造(15)の前記管腔(21)に供給するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、前記加圧流体の圧力を調整するように構成されたコントローラを更に備えることを特徴とするシステム。