IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社FLOSFIAの特許一覧

<>
  • 特開-半導体装置 図1
  • 特開-半導体装置 図2
  • 特開-半導体装置 図3
  • 特開-半導体装置 図4
  • 特開-半導体装置 図5
  • 特開-半導体装置 図6
  • 特開-半導体装置 図7
  • 特開-半導体装置 図8
  • 特開-半導体装置 図9
  • 特開-半導体装置 図10
  • 特開-半導体装置 図11
  • 特開-半導体装置 図12
  • 特開-半導体装置 図13
  • 特開-半導体装置 図14
  • 特開-半導体装置 図15
  • 特開-半導体装置 図16
  • 特開-半導体装置 図17
  • 特開-半導体装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068204
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20230509BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20230509BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20230509BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20230509BHJP
   H01L 21/365 20060101ALI20230509BHJP
   H01L 21/368 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/86 301M
H01L29/86 301E
H01L29/86 301D
H01L29/91 K
H01L29/91 F
H01L29/48 F
H01L29/48 P
H01L29/48 E
H01L29/48 D
H01L21/365
H01L21/368 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050423
(22)【出願日】2023-03-27
(62)【分割の表示】P 2019529115の分割
【原出願日】2018-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2017134243
(32)【優先日】2017-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(72)【発明者】
【氏名】杉本 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 勲
(72)【発明者】
【氏名】神原 仁志
(72)【発明者】
【氏名】四戸 孝
(72)【発明者】
【氏名】人羅 俊実
(57)【要約】
【課題】特にパワーデバイスに有用な半導体特性に優れた半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体領域と、該半導体領域上に設けられているバリア電極とを少なくとも備えている半導体装置であって、前記半導体領域と前記バリア電極との間に、前記半導体領域と前記バリア電極との界面におけるバリアハイトよりも前記バリア電極とのバリアハイトが大きくなるバリアハイト調整領域が設けられており、前記バリアハイト調整領域が前記半導体領域表面に複数埋め込まれている半導体装置。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体領域と、該半導体領域上に設けられているバリア電極とを少なくとも備えている半導体装置であって、前記半導体領域と前記バリア電極との間に、前記半導体領域と前記バリア電極との界面におけるバリアハイトよりも前記バリア電極とのバリアハイトが大きくなるバリアハイト調整領域が設けられており、前記バリアハイト調整領域が前記半導体領域表面に複数設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
半導体領域と、該半導体領域上に設けられているバリア電極とを少なくとも備えている半導体装置であって、前記半導体領域と前記バリア電極との間に、前記半導体領域と前記バリア電極との界面におけるバリアハイトよりも前記バリア電極とのバリアハイトが大きくなるバリアハイト調整領域が設けられており、前記バリアハイト調整領域が前記半導体領域表面に複数埋め込まれていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記バリア電極の両端と前記半導体領域との間に、前記バリアハイト調整領域がそれぞれ設けられている請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記バリアハイト調整領域が前記バリア電極内に突出している請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記バリア電極の外周辺部にガードリングが設けられている請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ガードリングの一部または全部が前記半導体領域表面に埋め込まれている請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記バリア電極と前記バリアハイト調整領域との界面におけるバリアハイトが、1eV以上である請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
前記バリア電極の電極材料が金属である請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体領域が、結晶性酸化物半導体を主成分として含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体領域が、ガリウム化合物を主成分として含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項11】
前記半導体領域が、α―Gaまたはその混晶を主成分として含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項12】
前記バリアハイト調整領域が、p型酸化物半導体を主成分として含む請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記バリアハイト調整領域が、コランダム構造または六方晶構造を有するp型酸化物半導体を主成分として含む請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項14】
ダイオードである請求項1記載の半導体装置。
【請求項15】
ジャンクションバリアショットキーダイオードである請求項1記載の半導体装置。
【請求項16】
パワーデバイスである請求項1記載の半導体装置。
【請求項17】
半導体装置を備える半導体システムであって、前記半導体装置が、請求項1~16のいずれかに記載の半導体装置である半導体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーデバイス等として有用な半導体装置およびそれを備える半導体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板上にショットキーバリア電極が設けられている半導体装置が知られており、逆方向耐圧を大きくし、さらに順方向立ち上がり電圧を小さくすること等を目的に、ショットキーバリア電極について種々検討されている。
特許文献1には、半導体上の中央部に、バリアハイトが小さくなる金属を配置し、半導体上の周辺部に、バリアハイトが大きくなる金属と半導体とのショットキーコンタクトを形成して、逆方向耐圧を大きくし、さらに順方向立ち上がり電圧を小さくすることが記載されている。
【0003】
また、ショットキー電極とオーミック電極との組合せについても検討がなされており、例えば特許文献2には、同種金属で構成されるショットキー電極とオーミック電極とが基板上に形成されたワイドバンドギャップ半導体装置が記載されており、このような構成とすることにより、サージ電流などの高い電流が順方向に流れる場合における熱破壊耐性を向上させることができる旨記載されている。しかしながら、ショットキー接合とオーミック接合との各界面の密着性や各接合同士の密着性に課題があったり、また、電極材料も制限する必要があったり、またさらに、温度によって、バリアハイトが変化する問題等があったりして、必ずしも満足のいくものではなかった。そのため、立ち上がり電圧が低く、温度安定性にも優れた半導体装置が待ち望まれていた。
【0004】
なお、特許文献3には、短絡部を介して、導電型のガードリングと、ショットキー電極と接合されている主接合部とを接続した半導体装置が記載されており、このような半導体装置が電界集中を緩和し、耐圧向上に寄与する旨記載されている。しかしながら、ガードリングを多数設置しても、主接合部と短絡させてしまっているため、耐圧が逆に悪化するなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52-101970号公報
【特許文献2】特開2014-78660号公報
【特許文献3】特開2014-107408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ショットキー特性および半導体特性に優れた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、半導体領域と、該半導体領域上に設けられているバリア電極とを少なくとも備えている半導体装置において、前記半導体領域と前記バリア電極との間に、前記半導体領域と前記バリア電極との界面におけるバリアハイトよりも前記バリア電極とのバリアハイトが大きくなるバリアハイト調整領域を、前記半導体領域表面に複数埋め込むことにより、立ち上がり電圧を低くし、温度安定性を優れたものにでき、さらに耐圧をより優れたものにできることを知見し、このような半導体装置が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 半導体領域と、該半導体領域上に設けられているバリア電極とを少なくとも備えている半導体装置であって、前記半導体領域と前記バリア電極との間に、前記半導体領域と前記バリア電極との界面におけるバリアハイトよりも前記バリア電極とのバリアハイトが大きくなるバリアハイト調整領域が設けられており、前記バリアハイト調整領域が前記半導体領域表面に複数設けられていることを特徴とする半導体装置。
[2] 半導体領域と、該半導体領域上に設けられているバリア電極とを少なくとも備えている半導体装置であって、前記半導体領域と前記バリア電極との間に、前記半導体領域と前記バリア電極との界面におけるバリアハイトよりも前記バリア電極とのバリアハイトが大きくなるバリアハイト調整領域が設けられており、前記バリアハイト調整領域が前記半導体領域表面に複数埋め込まれていることを特徴とする半導体装置。
[3] 前記バリア電極の両端と前記半導体領域との間に、前記バリアハイト調整領域がそれぞれ設けられている前記[1]記載の半導体装置。
[4] 前記バリアハイト調整領域が前記バリア電極内に突出している前記[1]記載の半導体装置。
[5] 前記バリア電極の外周辺部にガードリングが設けられている前記[1]記載の半導体装置。
[6] 前記ガードリングの一部または全部が前記半導体領域表面に埋め込まれている前記[5]記載の半導体装置。
[7] 前記バリア電極と前記バリアハイト調整領域との界面におけるバリアハイトが、1eV以上である前記[1]記載の半導体装置。
[8] 前記バリア電極の電極材料が金属である前記[1]記載の半導体装置。
[9] 前記半導体領域が、結晶性酸化物半導体を主成分として含む前記[1]記載の半導体装置。
[10] 前記半導体領域が、ガリウム化合物を主成分として含む前記[1]記載の半導体装置。
[11] 前記半導体領域が、α―Gaまたはその混晶を主成分として含む前記[1]記載の半導体装置。
[12] 前記バリアハイト調整領域が、p型酸化物半導体を主成分として含む前記[1]または[2]に記載の半導体装置。
[13] 前記バリアハイト調整領域が、コランダム構造または六方晶構造を有するp型酸化物半導体を主成分として含む前記[1]または[2]に記載の半導体装置。
[14] ダイオードである前記[1]記載の半導体装置。
[15] ジャンクションバリアショットキーダイオードである前記[1]記載の半導体装置。
[16] パワーデバイスである前記[1]記載の半導体装置。
[17] 半導体装置を備える半導体システムであって、前記半導体装置が、前記[1]~[16]のいずれかに記載の半導体装置である半導体システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体装置は、ショットキー特性および半導体特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な一態様を模式的に示す図である。
図2図1のジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な製造方法を説明する図である。
図3】本発明のジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な一態様を模式的に示す図である。
図4図3のジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な製造方法を説明する図である。
図5図3のジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な製造方法を説明する図である。
図6】電源システムの好適な一例を模式的に示す図である。
図7】システム装置の好適な一例を模式的に示す図である。
図8】電源装置の電源回路図の好適な一例を模式的に示す図である。
図9】参考例において用いられた成膜装置(ミストCVD装置)の概略構成図である。
図10】参考例におけるIV測定結果を示す図であり、(a)が順方向測定結果を示し、(b)が逆方向測定結果を示す。
図11】本発明のジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な一態様を模式的に示す図である。
図12図11のジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な製造方法を説明する図である。
図13】本発明のジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な一態様を模式的に示す図である。
図14図13のジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な製造方法を説明する図である。
図15】本発明のジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な一態様を模式的に示す図である。
図16】本発明のジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な一態様を模式的に示す図である。
図17】本発明のジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な一態様を模式的に示す図である。
図18】本発明のジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な一態様を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の半導体装置は、半導体領域と、該半導体領域上に設けられているバリア電極とを少なくとも備えている半導体装置であって、前記半導体領域と前記バリア電極との間に、前記半導体領域と前記バリア電極との界面におけるバリアハイトよりも前記バリア電極とのバリアハイトが大きくなるバリアハイト調整領域が設けられており、前記バリアハイト調整領域が前記半導体領域表面に複数設けられていることを特長とする。
また、本発明の半導体装置は、半導体領域と、該半導体領域上に設けられているバリア電極とを少なくとも備えている半導体装置であって、前記半導体領域と前記バリア電極との間に、前記半導体領域と前記バリア電極との界面におけるバリアハイトよりも前記バリア電極とのバリアハイトが大きくなるバリアハイト調整領域が設けられており、前記バリアハイト調整領域が前記半導体領域表面に複数埋め込まれていることを特長とする。
なお、本発明においては、前記バリアハイト調整領域が前記バリア電極内に突出しているのも好ましく、前記バリアハイト調整領域が前記半導体領域表面に埋め込まれており、かつバリア電極内に突出しているのがより好ましい。上記好ましい態様によれば、より電界集中を抑制し、また、よりコンタクト抵抗を下げることができる。
【0012】
前記バリア電極は、前記半導体領域との界面に所定のバリアハイトを有するショットキーバリアを形成するものであれば特に限定されない。前記バリア電極の電極材料は、バリア電極として用いることができるものであれば特に限定されず、導電性無機材料であってもよいし、導電性有機材料であってもよい。本発明においては、前記電極材料が金属であるのが好ましい。前記金属としては、特に限定されないが、好適には例えば、周期律表第4族~第11族から選ばれる少なくとも1種の金属などが挙げられる。周期律表第4族の金属としては、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)などが挙げられるが、中でもTiが好ましい。周期律表第5族の金属としては、例えば、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)などが挙げられる。周期律表第6族の金属としては、例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)等から選ばれる1種または2種以上の金属などが挙げられるが、本発明においては、よりスイッチング特性等の半導体特性がより良好なものとなるのでCrが好ましい。周期律表第7族の金属としては、例えば、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)などが挙げられる。周期律表第8族の金属としては、例えば、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)などが挙げられる。周期律表第9族の金属としては、例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)などが挙げられる。周期律表第10族の金属としては、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などが挙げられるが、中でもPtが好ましい。周期律表第11族の金属としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)などが挙げられる。前記バリア電極の形成手段としては、例えば公知の手段などが挙げられ、より具体的には例えば、ドライ法やウェット法などが挙げられる。ドライ法としては、例えば、スパッタ、真空蒸着、CVD等の公知の手段が挙げられる。ウェット法としては、例えば、スクリーン印刷やダイコート等が挙げられる。
【0013】
前記半導体領域は、半導体を主成分とするものであれば特に限定されないが、本発明においては、前記半導体領域が結晶性酸化物半導体を主成分として含むのが好ましく、n型半導体を主成分として含むn型半導体領域であるのがより好ましい。前記結晶性酸化物半導体は、βガリア構造またはコランダム構造を有するのが好ましく、コランダム構造を有するのがより好ましい。また、前記半導体領域は、ガリウム化合物を主成分として含むのも好ましく、InAlGaO系半導体を主成分とするのがより好ましく、α―Gaまたはその混晶を主成分として含むのが最も好ましい。なお、「主成分」とは、例えば結晶性酸化物半導体がα-Gaである場合、前記半導体領域中の金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上の割合でα-Gaが含まれていればそれでよい。本発明においては、前記半導体領域中の金属元素中のガリウムの原子比が0.7以上であることが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。また、前記半導体領域は、通常、単相領域であるが、本発明の目的を阻害しない限り、さらに異なる半導体相からなる第2の半導体領域やその他の相などを有していてもよい。また、前記半導体領域は通常膜状であり、半導体膜であってよい。前記半導体領域の半導体膜の厚さは、特に限定されず、1μm以下であってもよいし、1μm以上であってもよいが、本発明においては、1μm~40μmであるのが好ましく、1μm~25μmであるのがより好ましい。前記半導体膜の表面積は特に限定されないが、1mm以上であってもよいし、1mm以下であってもよい。なお、前記結晶性酸化物半導体は、通常、単結晶であるが、多結晶であってもよい。また、前記半導体膜は、単層膜であってもよいし、多層膜であってもよい。前記半導体膜が多層膜である場合には、前記多層膜が、膜厚40μm以下であるのが好ましく、また、少なくとも第1の半導体層と第2の半導体層とを含む多層膜であって、第1の半導体層上にショットキー電極が設けられる場合には、第1の半導体層のキャリア濃度が、第2の半導体層のキャリア濃度よりも小さい多層膜であるのも好ましい。なお、この場合、第2の半導体層には、通常、ドーパントが含まれており、前記半導体層のキャリア濃度は、ドーピング量を調節することにより、適宜設定することができる。
【0014】
前記半導体膜は、ドーパントが含まれているのが好ましい。前記ドーパントは、特に限定されず、公知のものであってよい。前記ドーパントとしては、例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウムまたはニオブ等のn型ドーパント、またはp型ドーパントなどが挙げられる。本発明においては、前記ドーパントが、Sn、GeまたはSiであるのが好ましい。ドーパントの含有量は、前記半導体膜の組成中、0.00001原子%以上であるのが好ましく、0.00001原子%~20原子%であるのがより好ましく、0.00001原子%~10原子%であるのが最も好ましい。なお、本発明においては、第1の半導体層に用いられるドーパントがゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウムまたはニオブであり、第2の半導体層に用いられるドーパントがスズであるのが、密着性を損なうことなく、半導体特性がさらに一段と良好となるので好ましい。
【0015】
前記半導体膜は、例えば、ミストCVD法等の手段を用いて形成され、より具体的に例えば、原料溶液を霧化または液滴化し(霧化・液滴化工程)、得られたミストまたは液滴をキャリアガスでもって基体上まで搬送し(搬送工程)、ついで、成膜室内で前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、基体上に結晶性酸化物半導体を主成分として含む半導体膜を積層する(成膜工程)ことにより好適に形成される。
【0016】
(霧化・液滴化工程)
霧化・液滴化工程は、前記原料溶液を霧化または液滴化する。前記原料溶液の霧化手段または液滴化手段は、前記原料溶液を霧化または液滴化できさえすれば特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段または液滴化手段が好ましい。超音波を用いて得られたミストまたは液滴は、初速度がゼロであり、空中に浮遊するので好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮遊してガスとして搬送することが可能なミストであるので衝突エネルギーによる損傷がないため、非常に好適である。液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは100nm~10μmである。
【0017】
(原料溶液)
前記原料溶液は、霧化または液滴化が可能であり、半導体領域を形成可能な原料を含んでいれば特に限定されず、無機材料であっても、有機材料であってもよいが、本発明においては、前記原料が、金属または金属化合物であるのが好ましく、ガリウム、鉄、インジウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、ロジウム、ニッケル、コバルト、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、シリコン、イットリウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれる1種または2種以上の金属を含むのがより好ましい。
【0018】
本発明においては、前記原料溶液として、前記金属を錯体または塩の形態で有機溶媒または水に溶解または分散させたものを好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、有機金属塩(例えば金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属クエン酸塩等)、硫化金属塩、硝化金属塩、リン酸化金属塩、ハロゲン化金属塩(例えば塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩等)などが挙げられる。
【0019】
また、前記原料溶液には、ハロゲン化水素酸や酸化剤等の添加剤を混合するのが好ましい。前記ハロゲン化水素酸としては、例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸などが挙げられるが、中でも、より良質な膜が得られるとの理由から、臭化水素酸またはヨウ化水素酸が好ましい。前記酸化剤としては、例えば、過酸化水素(H)、過酸化ナトリウム(Na)、過酸化バリウム(BaO)、過酸化ベンゾイル(CCO)等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、オゾン水、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0020】
前記原料溶液には、ドーパントが含まれていてもよい。原料溶液にドーパントを含ませることで、ドーピングを良好に行うことができる。前記ドーパントは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。前記ドーパントとしては、例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウムまたはニオブ等のn型ドーパント、またはp型ドーパントなどが挙げられる。ドーパントの濃度は、通常、約1×1016/cm~1×1022/cmであってもよいし、また、ドーパントの濃度を例えば約1×1017/cm以下の低濃度にしてもよい。また、さらに、本発明によれば、ドーパントを約1×1020/cm以上の高濃度で含有させてもよい。本発明においては、1×1017/cm以上のキャリア濃度で含有させるのが好ましい。
【0021】
原料溶液の溶媒は、特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水を含むのが好ましく、水または水とアルコールとの混合溶媒であるのがより好ましい。
【0022】
(搬送工程)
搬送工程では、キャリアガスでもって前記ミストまたは前記液滴を成膜室内に搬送する。前記キャリアガスとしては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、流量を下げた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01~20L/分であるのが好ましく、1~10L/分であるのがより好ましい。希釈ガスの場合には、希釈ガスの流量が、0.001~2L/分であるのが好ましく、0.1~1L/分であるのがより好ましい。
【0023】
(成膜工程)
成膜工程では、成膜室内で前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、基体上に、前記半導体膜を成膜する。熱反応は、熱でもって前記ミストまたは液滴が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、溶媒の蒸発温度以上の温度で行うが、高すぎない温度(例えば1000℃)以下が好ましく、650℃以下がより好ましく、300℃~650℃が最も好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよいが、非酸素雰囲気下または酸素雰囲気下で行われるのが好ましい。また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが好ましい。なお、膜厚は、成膜時間を調整することにより、設定することができる。
【0024】
(基体)
前記基体は、前記半導体膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基体の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基体であってよく、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。前記基体の形状としては、どのような形状のものであってもよく、あらゆる形状に対して有効であり、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明においては、基板が好ましい。基板の厚さは、本発明においては特に限定されない。
【0025】
前記基板は、板状であって、前記半導体膜の支持体となるものであれば特に限定されない。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいし、金属基板や導電性基板であってもよいが、前記基板が、絶縁体基板であるのが好ましく、また、表面に金属膜を有する基板であるのも好ましい。前記基板としては、例えば、コランダム構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板、またはβ-ガリア構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板、六方晶構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板などが挙げられる。ここで、「主成分」とは、前記特定の結晶構造を有する基板材料が、原子比で、基板材料の全成分に対し、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上含まれることを意味し、100%であってもよい。
【0026】
基板材料は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。前記のコランダム構造を有する基板材料としては、例えば、α-Al(サファイア基板)またはα-Gaが好適に挙げられ、a面サファイア基板、m面サファイア基板、r面サファイア基板、c面サファイア基板や、α型酸化ガリウム基板(a面、m面またはr面)などがより好適な例として挙げられる。β-ガリア構造を有する基板材料を主成分とする下地基板としては、例えばβ-Ga基板、又はGaとAlとを含みAlが0wt%より多くかつ60wt%以下である混晶体基板などが挙げられる。また、六方晶構造を有する基板材料を主成分とする下地基板としては、例えば、SiC基板、ZnO基板、GaN基板などが挙げられる。
【0027】
本発明においては、前記成膜工程の後、アニール処理を行ってもよい。アニールの処理温度は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、通常、300℃~650℃であり、好ましくは350℃~550℃である。また、アニールの処理時間は、通常、1分間~48時間であり、好ましくは10分間~24時間であり、より好ましくは30分間~12時間である。なお、アニール処理は、本発明の目的を阻害しない限り、どのような雰囲気下で行われてもよいが、好ましくは非酸素雰囲気下であり、より好ましくは窒素雰囲気下である。
【0028】
また、本発明においては、前記基体上に、直接、前記半導体膜を設けてもよいし、バッファ層(緩衝層)や応力緩和層等の他の層を介して前記半導体膜を設けてもよい。各層の形成手段は、特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、ミストCVD法が好ましい。
【0029】
本発明においては、前記半導体膜を、前記基体等から剥離する等の公知の手段を用いた後に、前記半導体領域として半導体装置に用いてもよいし、そのまま前記半導体領域として半導体装置に用いてもよい。
【0030】
前記バリアハイト調整領域は、前記半導体領域と前記バリア電極との界面におけるバリアハイトよりも前記バリア電極または前記半導体領域とのバリアハイトが大きくなる領域であれば特に限定されない。前記バリアハイト調整領域は、通常、前記半導体領域と前記バリア電極との界面におけるバリアハイトよりも前記バリア電極または前記半導体領域とのバリアハイトが大きくなる導電性材料を主成分とする。ここで、「主成分」とは、前記導電性材料が、原子比で、前記バリアハイト調整領域の全成分に対し、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上含まれることを意味し、100%であってもよい。前記導電性材料は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、金属酸化物または金属であるのが好ましい。前記金属酸化物としては、例えば、前記の半導体領域の主成分として例示したものなどが挙げられる。前記金属としては、前記のバリア電極として例示したものなどが挙げられる。また、前記バリアハイトの調整を、公知の手段を用いて、酸素濃度、不純物濃度、界面準位密度、終端構造、結晶構造や表面凹凸を制御したり、仕事関数や電子親和力を変調したりすることにより行ってもよい。また、本発明においては、前記バリアハイト調整領域がp型半導体を主成分とするのが好ましい。前記p型半導体としては、例えば、p型ドーパント(好ましくは、Mg、Zn、Ca)を用いてp型ドーピングされている結晶性酸化物半導体が挙げられる。また、前記p型半導体は、コランダム構造または六方晶構造を有するのが好ましく、コランダム構造を有するのがより好ましい。また、本発明においては、前記p型半導体が、ガリウムを含む酸化物半導体であるのが好ましく、InAlGaO系半導体を主成分とするのがより好ましく、α―Gaまたはその混晶を主成分として含むのが最も好ましい。バリアハイト調整層に好適に用いられる前記p型半導体は、例えば、金属を含む原料溶液にp型ドーパントと臭化水素酸とを加え、ミストCVD法により得ることができる。なお、前記ミストCVD法の各工程ならびに各手段および各条件については、上記した霧化・液滴化工程、搬送工程および成膜工程ならびに各手段および各条件等と同様であってよい。
本発明においては、前記バリアハイト調整層と前記バリア電極とのショットキーバリアのバリアハイトが、1eV以上となるように調整されるのが好ましい。このような好ましいバリアハイトに調整することにより、本発明の半導体装置の半導体特性(例えばスイッチング特性等)をさらにより良好なものとすることができる。前記バリアハイト調整領域の数は、2以上であれば、特に限定されない。本発明においては、前記バリアハイト調整領域の数が3以上であるのが、前記バリアハイトの調整をより効果的に行うことができ、前記半導体装置の半導体特性をより優れたものとすることができるので、好ましく、4以上であるのがより好ましい。
【0031】
前記バリアハイト調整領域の形成手段は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段であってよい。例えば、前記半導体領域のバリア電極との界面側表面内に、複数のトレンチを設け、ついで、該トレンチ内にバリアハイト調整領域の主成分からなる膜を形成する手段が挙げられる。また、例えば、前記半導体領域の一部領域に対して、ドライエッチング、ウェットエッチング、プラズマ処理、紫外線処理、熱処理または有機溶媒もしくは有機酸などによる表面処理などの公知の表面処理手段を用いて表面改質を施し、ついで、該表面改質領域にバリア電極を形成することでバリアハイトを調整してバリアハイト調整領域を形成する手段、または前記半導体領域とバリア電極とが接合を形成している界面の一部領域に対して、界面形成後または界面形成時に、熱処理(例えば電子ビームアニールやレーザーアニールなど)または紫外線処理などを施してバリアハイト調整領域を形成する手段なども挙げられる。またさらに、本発明においては、上記の手段を組み合わせてバリアハイト調整領域を形成してもよい。なお、これらバリアハイト調整領域の形成手段の実施は真空雰囲気下で行われてもよいし、大気雰囲気下で行われてもよいし、また、特定のガス雰囲気下で行われてもよい。
【0032】
また、本発明の半導体装置は、通常、オーミック電極を備える。前記オーミック電極は、公知の電極材料が用いられてよく、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、周期律表第4族または第11族の金属を含むのが好ましい。オーミック電極に用いられる好適な周期律表第4族または第11族の金属は、前記ショットキー電極に含まれる金属と同様であってよい。また、オーミック電極は単層の金属層であってもよいし、2以上の金属層を含んでいてもよい。オーミック電極の形成手段としては、特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などの公知の手段などが挙げられる。また、オーミック電極を構成する金属は、合金であってもよい。本発明においては、オーミック電極が、Tiまたは/およびAuを含むのが好ましい。
【0033】
以下、図面を用いて本発明の好適な実施の態様をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施の態様に限定されるものではない。
【0034】
図1は、本発明の好適な実施態様の一つであるジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)を示す。図1の半導体装置は、半導体領域3と、前記半導体領域上に設けられておりかつ前記半導体領域との間にショットキーバリアを形成可能なバリア電極2と、バリア電極2と半導体領域3との間に設けられておりかつ前記半導体領域3との間にバリア電極2のショットキーバリアのバリアハイトよりも大きなバリアハイトのショットキーバリアを形成可能なバリアハイト調整層とを含んでいる。なお、バリアハイト調整層1は半導体領域3に埋め込まれている。本発明においては、バリアハイト調整層が一定間隔ごとに設けられているのが好ましく、前記バリア電極の両端と前記半導体領域との間に、前記バリアハイト調整領域がそれぞれ設けられているのがより好ましい。このような好ましい態様により、熱安定性および密着性により優れ、リーク電流がより軽減され、さらに、より耐圧等の半導体特性に優れるようにJBSが構成されている。なお、図1の半導体装置は、半導体領域3上にオーミック電極4を備えている。
【0035】
図1の半導体装置の各層の形成手段は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段であってよい。例えば、真空蒸着法やCVD法、スパッタ法、各種コーティング技術等により成膜した後、フォトリソグラフィー法によりパターニングする手段、または印刷技術などを用いて直接パターニングを行う手段などが挙げられる。
【0036】
以下、図2を用いて、図1の半導体装置の好ましい製造工程等を説明する。図2(a)は、半導体領域3としての半導体基板上にオーミック電極4が積層されており、その反対側表面に複数のトレンチが形成されている積層体を示している。そして、図2(a)の積層体に対して、フォトリソグラフィー法を用いて、図2(b)のとおり、半導体領域3のトレンチ内に、バリアハイト調整層1を形成する。図2(b)の積層体を得た後、バリアハイト調整層1および半導体領域3上に、バリア電極2を前記ドライ法(好ましくは真空蒸着法またはスパッタ)または前記ウェット法等により形成し、図2(c)の積層体を得る。図2(c)の積層体は、バリアハイト調整層1が、前記半導体領域3に埋め込められている構造をしているので、とりわけ耐圧に優れている。
【0037】
図3は、本発明の好適な実施態様の一つであるジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)を示す。図3の半導体装置は、図1の半導体装置とは、バリア電極の外周辺部にガードリング5が設けられている点において異なる。このように構成することによって、より耐圧等の半導体特性に優れた半導体装置を得ることができる。なお、本発明においては、ガードリング5の一部を半導体領域3表面にそれぞれ埋め込むことにより、耐圧をより効果的により良好なものとすることができる。またさらに、ガードリングにバリアハイトの高い金属を用いることにより、バリア電極の形成とあわせてガードリングを工業的有利に設けることができ、半導体領域にあまり影響を与えることなく、オン抵抗も悪化させずに形成することができる。
【0038】
前記ガードリングには、通常、バリアハイトの高い材料が用いられる。前記ガードリングに用いられる材料としては、例えば、バリアハイトが1eV以上の導電性材料などが挙げられ、前記電極材料と同じものであってもよい。本発明においては、前記ガードリングに用いられる材料が、耐圧構造の設計自由度が高く、ガードリングを多く設けることもでき、柔軟に耐圧をより良好なものとすることができるので、前記金属であるのが好ましい。また、ガードリングの形状としては、特に限定されず、例えば、ロの字形状、円状、コ字形状、L字形状または帯状などが挙げられる。本発明においては、ロの字形状または円状が好ましい。ガードリングの本数も特に限定されないが、好ましくは3本以上、より好ましくは6本以上である。
【0039】
以下、図4および図5を用いて、図3の半導体装置の好ましい製造工程等を説明する。図4(a)は、半導体領域3としての半導体基板上にオーミック電極4が積層されており、その反対側表面に複数のトレンチが形成されている積層体を示している。そして、図4(a)の積層体に対して、フォトリソグラフィー法により、図4(b)のとおり、バリアハイト調整領域1を半導体領域3上に形成した後、図4(c)のとおり、半導体領域3表面を露出させる。図4(b)および(c)の積層体は、バリアハイト調整領域1と、半導体領域3と、オーミック電極4とが積層されている。図4(c)の積層体を得た後、バリアハイト調整層1および半導体領域3上に、バリア電極2を前記ドライ法(好ましくは真空蒸着法またはスパッタ)または前記ウェット法等により形成し、図4(d)の積層体を得る。
【0040】
そして、図4(d)の積層体に対して、フォトリソグラフィー法を用いたエッチングを行い、図5(e)のとおり、バリア電極2の一部および半導体領域3の一部を除去する。図5(e)の積層体を得た後、表面に露出している半導体領域3上に、ガードリング5を前記ドライ法(好ましくは真空蒸着法またはスパッタ)または前記ウェット法等により形成し、図5(f)の積層体を得る。図5(f)の積層体は、ガードリング5、バリア電極2、バリアハイト調整層1、半導体領域3およびオーミック電極4がそれぞれ積層されている。図5(f)の積層体を得た後、フォトリソグラフィー法を用いたエッチングを行い、不要な部分を取り除き、図5(g)の積層体を得る。図5(g)の積層体は、バリアハイト調整層1が、半導体領域3に埋め込められており、さらに半導体領域3の周辺部に埋め込み構造のガードリング5を備えているので、耐圧等においてより優れている。
上記説明においては、ガードリング5を最後に形成したが、本発明においては、バリア電極2を形成する前にガードリング5を形成するのも好ましく、このように形成することにより、電極形成時の金属による影響を抑えることができる。
【0041】
図11は、本発明の好適な実施態様の一つであるジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)を示す。図11の半導体装置は、半導体領域3と、前記半導体領域上に設けられておりかつ前記半導体領域との間にショットキーバリアを形成可能なバリア電極2と、バリア電極2と半導体領域3との間に設けられておりかつ前記半導体領域3との間にバリア電極2のショットキーバリアのバリアハイトよりも大きなバリアハイトのショットキーバリアを形成可能なバリアハイト調整層とを含んでいる。なお、バリアハイト調整層1は、半導体領域3に埋め込まれており、かつ前記半導体領域3からバリア電極2内に突出している。本発明においては、バリアハイト調整層が一定間隔ごとに設けられているのが好ましく、前記バリア電極の両端と前記半導体領域との間に、前記バリアハイト調整領域がそれぞれ設けられているのがより好ましい。このような好ましい態様により、JBSが、熱安定性および密着性により優れ、リーク電流がより軽減され、電界集中をより抑制し、さらに、コンタクト抵抗を下げる等の半導体特性により優れたものとなる。なお、図11の半導体装置は、バリア電極2側と反対側の半導体領域3上にオーミック電極4を備えている。
【0042】
図11の半導体装置の各層の形成手段としては、上記した各層の形成手段等が挙げられる。
【0043】
以下、図12を用いて、図11の半導体装置の好ましい製造工程等を説明する。図12(a)は、表面に複数のトレンチが形成されている半導体領域3としての半導体基板を示している。そして、図12(a)の半導体基板上に、バリアハイト調整層1として、ガリウムを含むp型酸化物半導体をミストCVDにより成膜し、図12(b)に示される積層体を得る。得られた積層体に対し、フォトリソグラフィー法を用いたエッチングを行い、不要な部分を取り除き、図12(c)に示される積層体を得る。図2(c)の積層体を得た後、バリアハイト調整層1および半導体領域3上に、バリア電極2を前記ドライ法(好ましくは真空蒸着法またはスパッタ)または前記ウェット法等により形成し、図12(d)の積層体を得る。図12(d)の積層体は、バリアハイト調整層1が、前記半導体領域3に埋め込められており、かつバリア電極2内に突出した構造をしているので、電界集中を抑制し、コンタクト抵抗を下げることができ、とりわけ耐圧に優れている半導体装置に有用となる。
【0044】
図13は、本発明の好適な実施態様の一つであるジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)を示す。図13の半導体装置は、半導体領域3と、前記半導体領域上に設けられておりかつ前記半導体領域との間にショットキーバリアを形成可能なバリア電極2と、バリア電極2と半導体領域3との間に設けられておりかつ前記半導体領域3との間にバリア電極2のショットキーバリアのバリアハイトよりも大きなバリアハイトのショットキーバリアを形成可能なバリアハイト調整層とを含んでいる。なお、バリアハイト調整層1は、半導体領域3上に積層されており、かつバリア電極2内に突出している。本発明においては、バリアハイト調整層が一定間隔ごとに設けられているのが好ましく、前記バリア電極の両端と前記半導体領域との間に、前記バリアハイト調整領域がそれぞれ設けられているのがより好ましい。このような好ましい態様により、JBSが、熱安定性および密着性により優れ、リーク電流がより軽減され、電界集中をより抑制し、さらに、コンタクト抵抗を下げる等の半導体特性により優れたものとなる。なお、図13の半導体装置は、バリア電極2側と反対側の半導体領域3上にオーミック電極4を備えている。
【0045】
図13の半導体装置の各層の形成手段としては、上記した各層の形成手段等が挙げられる。
【0046】
以下、図14を用いて、図13の半導体装置の好ましい製造工程等を説明する。図12(a)は、半導体領域3としての半導体基板を示している。そして、図14(a)の半導体基板上に、バリアハイト調整層1として、ガリウムを含むp型酸化物半導体をミストCVDにより成膜し、図14(b)に示される積層体を得る。得られた積層体に対し、フォトリソグラフィー法を用いたエッチングを行い、不要な部分を取り除き、図14(c)に示される積層体を得る。図14(c)の積層体を得た後、バリアハイト調整層1および半導体領域3上に、バリア電極2を前記ドライ法(好ましくは真空蒸着法またはスパッタ)または前記ウェット法等により形成し、図14(d)の積層体を得る。図14(d)の積層体は、バリアハイト調整層1が、前記半導体領域3に埋め込められており、かつバリア電極2内に突出した構造をしているので、電界集中を抑制し、コンタクト抵抗を下げることができ、とりわけ耐圧に優れている半導体装置に有用となる。
【0047】
図15は、本発明の好適な実施態様の一つであるジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)を示す。図15の半導体装置は、図11の半導体装置とは、バリア電極の外周辺部にガードリング5が設けられている点において異なる。このように構成することによって、より耐圧等の半導体特性に優れた半導体装置を得ることができる。なお、本発明においては、図17に示すように、ガードリング5の一部を半導体領域3表面にそれぞれ埋め込むことにより、耐圧をより効果的により良好なものとすることができる。またさらに、ガードリングにバリアハイトの高い金属を用いることにより、バリア電極の形成とあわせてガードリングを工業的有利に設けることができ、半導体領域にあまり影響を与えることなく、オン抵抗も悪化させずに形成することができる。
【0048】
図16は、本発明の好適な実施態様の一つであるジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)を示す。図16の半導体装置は、図13の半導体装置とは、バリア電極の外周辺部にガードリング5が設けられている点において異なる。このように構成することによって、より耐圧等の半導体特性に優れた半導体装置を得ることができる。なお、本発明においては、図18に示すように、ガードリング5の一部を半導体領域3表面にそれぞれ埋め込むことにより、耐圧をより効果的により良好なものとすることができる。またさらに、ガードリングにバリアハイトの高い金属を用いることにより、バリア電極の形成とあわせてガードリングを工業的有利に設けることができ、半導体領域にあまり影響を与えることなく、オン抵抗も悪化させずに形成することができる。
【0049】
前記半導体装置は、とりわけ、パワーデバイスに有用である。前記半導体装置としては、例えば、ダイオードまたはトランジスタ(例えば、MESFET等)などが挙げられるが、中でもダイオードが好ましく、ジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)がより好ましい。
【0050】
本発明の半導体装置は、上記した事項に加え、さらに公知の手段を用いて、パワーモジュール、インバータまたはコンバータとして好適に用いられ、さらには、例えば電源装置を用いた半導体システム等に好適に用いられる。前記電源装置は、公知の手段を用いて、配線パターン等に接続するなどすることにより、前記半導体装置からまたは前記半導体装置として作製することができる。図6に電源システムの例を示す。図6は、複数の前記電源装置と制御回路を用いて電源システムを構成している。前記電源システムは、図7に示すように、電子回路と組み合わせてシステム装置に用いることができる。なお、電源装置の電源回路図の一例を図8に示す。図8は、パワー回路と制御回路からなる電源装置の電源回路を示しており、インバータ(MOSFET:A~Dで構成)によりDC電圧を高周波でスイッチングしACへ変換後、トランスで絶縁及び変圧を実施し、整流MOSFET(A~B’)で整流後、DCL(平滑用コイルL1,L2)とコンデンサにて平滑し、直流電圧を出力する。この時に電圧比較器で出力電圧を基準電圧と比較し、所望の出力電圧となるようPWM制御回路でインバータ及び整流MOSFETを制御する。
【実施例0051】
(参考例1:アニールによるバリアハイトの調整)
1-1.n-型半導体層の形成
1-1-1.成膜装置
図9を用いて、参考例で用いたミストCVD装置19を説明する。ミストCVD装置19は、基板20を載置するサセプタ21と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給手段22aと、キャリアガス供給手段22aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)供給手段22bと、キャリアガス(希釈)供給手段22bから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23bと、原料溶液24aが収容されるミスト発生源24と、水25aが入れられる容器25と、容器25の底面に取り付けられた超音波振動子26と、内径40mmの石英管からなる供給管27と、供給管27の周辺部に設置されたヒーター28とを備えている。サセプタ21は、石英からなり、基板20を載置する面が水平面から傾斜している。成膜室となる供給管27とサセプタ21をどちらも石英で作製することにより、基板20上に形成される膜内に装置由来の不純物が混入することを抑制している。
【0052】
1-1-2.原料溶液の作製
0.1M臭化ガリウム水溶液に臭化水素酸を体積比で20%含有させ、これを原料溶液とした。
【0053】
1-1-3.成膜準備
上記1-1-2.で得られた原料溶液24aをミスト発生源24内に収容した。次に、基板20として、サファイア基板をサセプタ21上に設置し、ヒーター28を作動させて成膜室27内の温度を480℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁23a、23bを開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段22a、22bからキャリアガスを成膜室27内に供給し、成膜室27の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を5L/分に、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/分にそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして窒素を用いた。
【0054】
1-1-4.半導体膜形成
次に、超音波振動子26を2.4MHzで振動させ、その振動を、水25aを通じて原料溶液24aに伝播させることによって、原料溶液24aを霧化させてミストを生成した。このミストが、キャリアガスによって成膜室27内に導入され、大気圧下、510℃にて、成膜室27内でミストが反応して、基板20上に半導体膜が形成された。なお、膜厚は2.5μmであり、成膜時間は180分間であった。
【0055】
1-1-5.評価
XRD回折装置を用いて、上記1-1-4.にて得られた膜の相の同定を行ったところ、得られた膜はα-Gaであった。
【0056】
1-2.n+型半導体層の形成
0.05Mガリウムアセチルアセトナート水溶液に塩酸を体積比で1.5%および塩化スズ0.2%をそれぞれ含有させ、これを原料溶液としたこと以外、上記1-1.と同様にして、上記1-1.で得られたn-型半導体層上に半導体膜を成膜した。得られた膜につき、XRD回折装置を用いて、膜の相の同定を行ったところ、得られた膜はα-Gaであった。
【0057】
1-3.オーミック電極の形成
n+型半導体層上に、Ti層およびAu層をそれぞれ電子ビーム蒸着にて積層した。なお、Ti層の厚さは35nmであり、Au層の厚さは175nmであった。
【0058】
1-4.ショットキー電極の形成
サファイア基板を剥離後、n-型半導体層上に、Pt層を電子ビーム蒸着にて積層した。そして、高速アニール装置(RTA)を用いて窒素雰囲気で400℃30秒間アニール処理し、アニール処理したPt層を形成した。また、フォトリソグラフィーおよびエッチング処理に付し、アニール処理していないPt層も形成した。
【0059】
1-5.評価
IV測定を実施した。その結果、アニール処理していないPt層のバリアハイトは、1.5eVであり、アニール処理したPt層のバリアハイトは0.9eVであった。なお、アニール処理したPt層のIV測定結果を図10に示す。
【0060】
(参考例2:p型半導体によるバリアハイトの調整)
参考例2では、p型半導体によるバリアハイトの調整について評価を行った。
2-1.p型半導体層の形成
基体として、ミストCVDを用いて形成されたn+型半導体層を表面に有するサファイア基板を用いたこと、原料溶液として、臭化ガリウムと臭化マグネシウムを超純水に混合し、ガリウムに対するマグネシウムの原子比が1:0.01および臭化ガリウム0.1モル/Lとなるように水溶液を調整し、この際、ハロゲン化水素酸を体積比で20%含有させたものを用いたこと、キャリアガスの流量を1L/分、キャリアガス(希釈)の流量を1L/分としたこと、成膜温度を520℃としたこと、および成膜時間を60分間としたこと以外は、上記1-1.と同様にして半導体膜を成膜した。得られた膜につき、XRD回折装置を用いて、膜の相の同定を行ったところ、ハロゲン化水素酸として臭化水素酸を用いて得られた膜はα-Gaであった。
【0061】
2-2.評価
p型半導体層においてマグネシウムがp型ドーパントとして正常に機能しているかどうかを確かめるために、上記2-1.にて得られたα-Ga膜につき、IV測定を実施した。その結果、優れた整流性を示し、n+型半導体層とp型半導体層とが良好なPN接合を形成していた。IV測定の結果から明らかなように、マグネシウムがp型ドーパントとして正常に機能していることから、p型半導体の形成によってバリアハイトを調整できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の半導体装置は、半導体(例えば化合物半導体電子デバイス等)、電子部品・電気機器部品、光学・電子写真関連装置、工業部材などあらゆる分野に用いることができるが、とりわけ、パワーデバイスに有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 バリアハイト調整層
2 バリア電極
3 半導体領域
4 オーミック電極
5 ガードリング
19 ミストCVD装置
20 基板
21 サセプタ
22a キャリアガス供給手段
22b キャリアガス(希釈)供給手段
23a 流量調節弁
23b 流量調節弁
24 ミスト発生源
24a 原料溶液
25 容器
25a 水
26 超音波振動子
27 供給管
28 ヒーター
29 排気口

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18