(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068208
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】防曇発熱体
(51)【国際特許分類】
B60S 1/02 20060101AFI20230510BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20230510BHJP
B60R 1/00 20220101ALI20230510BHJP
B60S 1/60 20060101ALI20230510BHJP
H05B 3/84 20060101ALI20230510BHJP
H04N 23/52 20230101ALI20230510BHJP
【FI】
B60S1/02 B
B60J1/00 H
B60R1/00 A
B60S1/60 Z
H05B3/84
H04N5/225 430
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020061293
(22)【出願日】2020-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】313001332
【氏名又は名称】積水ポリマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】本松 良文
【テーマコード(参考)】
3D025
3D225
3K034
5C122
【Fターム(参考)】
3D025AA02
3D025AA04
3D025AB01
3D025AC10
3D025AD02
3D025AD11
3D225AA02
3D225AA04
3D225AB01
3D225AC10
3D225AD02
3D225AD11
3K034AA02
3K034BB08
3K034BB13
3K034BB14
3K034BC12
3K034CA22
3K034HA09
3K034JA10
5C122DA03
5C122DA11
5C122DA13
5C122DA14
5C122EA02
5C122EA47
5C122EA68
5C122FB03
5C122HA84
(57)【要約】
【課題】本発明は透明板を防曇するための防曇発熱体を提供する。
【解決手段】防曇発熱体1は、車載カメラ3のレンズ3dの前方に位置する透明板としてのフロントガラス2を加熱して防曇する。防曇発熱体1は、透明基材10と、熱拡散部12とを備える。透明基材10は、フロントガラス2におけるレンズ3dの前方に設けられ、熱拡散部12は、透明基材10に設けられ、レンズ3dの前方投影領域を含むように熱拡散することでフロントガラス2を加熱する外枠部12aと網状部12bを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラのレンズの前方に位置する透明板を加熱して防曇する防曇発熱体であって、
透明基材と、熱拡散部とを備えており、
前記透明基材は、前記透明板における前記レンズの前方に設けられ、
前記熱拡散部は、前記透明基材に設けられ前記レンズの前方を含むように熱拡散することで前記透明板を加熱する熱拡散路を有する
防曇発熱体。
【請求項2】
前記防曇発熱体は、さらに加熱部を備えており、
前記加熱部は、前記透明基材に設けられ導通により発熱して前記熱拡散部に熱を伝える発熱導電部を有する
請求項1記載の防曇発熱体。
【請求項3】
前記加熱部は、前記熱拡散部を囲む外縁発熱部を有する
請求項2記載の防曇発熱体。
【請求項4】
前記加熱部は、前記熱拡散部を通過する内側発熱部を有する
請求項2又は3記載の防曇発熱体。
【請求項5】
前記熱拡散部は、電気絶縁性の熱伝導膜である
請求項1~4何れか1項記載の防曇発熱体。
【請求項6】
前記熱拡散部は、並列配置した複数の熱伝導線を有する縞形状に形成されている
請求項1~5何れか1項記載の防曇発熱体。
【請求項7】
前記熱拡散部は、交差配置した複数の熱伝導線を有する網形状に形成されている
請求項1~5何れか1項記載の防曇発熱体。
【請求項8】
前記透明基材は、透明な樹脂フィルムであり、
前記加熱部は、前記樹脂フィルムに設けた発熱導電部であり、
前記熱拡散部は、前記樹脂フィルムに設けた熱伝導膜である
請求項1~7何れか1項記載の防曇発熱体。
【請求項9】
前記透明基材は、透明なガラス部材であり、
前記加熱部は、前記ガラス部材に設けた発熱導電部であり、
前記熱拡散部は、前記ガラス部材に設けた熱伝導膜である
請求項1~7何れか1項記載の防曇発熱体。
【請求項10】
車両用合わせガラスであって、
第1のガラス部材と、
第2のガラス部材と、
前記第1のガラス部材と前記第2のガラス部材との間に配置する請求項1~8何れか1項記載の防曇発熱体とを備える、
車両用合わせガラス。
【請求項11】
車載カメラ装置であって、
車室の内外を仕切る透明板を通じて車外を撮影するカメラと、
請求項1~9何れか1項記載の防曇発熱体とを備えており、
前記防曇発熱体は、前記透明板における前記熱拡散部が前記カメラのレンズとの対向位置に設けられる、
車載カメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明板を防曇する防曇発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、フロントガラスおよびリアガラスに近接して車載カメラが設置されている。例えばドライブレコーダ用のカメラおよび先進運転支援システム(ADAS:Advanced driver-assistance systems)用のステレオカメラは、その例である。
【0003】
車載カメラは、例えばフロントガラスが結露により曇ると、フロントガラスの外界を明瞭に撮影できなくなるという問題がある。ここで特許文献1にはエアコンをデフロスターモードで作動させることで、フロントガラスの全体の曇りを晴らすことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エアコンのデフロスターは、フロントガラスにおける車載カメラの前方を迅速に防曇することができない。
【0006】
そこで本発明の一態様では、透明板を防曇するための防曇発熱体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、カメラのレンズの前方に位置する透明板を加熱して防曇する防曇発熱体であって、透明基材と、熱拡散部とを備えており、前記透明基材は、前記透明板における前記レンズの前方に設けられ、前記熱拡散部は、前記透明基材に設けられ前記レンズの前方を含むように熱拡散することで前記透明板を加熱する熱拡散路を有する防曇発熱体である。
【0008】
本発明の一態様によれば、カメラのレンズの前方にある透明板を加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車両のフロントガラスに設置した本発明の第1実施形態による防曇発熱体を示す外観図。
【
図4】
図2の矢示IVから見た防曇発熱体の正面図。
【
図6】6Aは第2実施形態の防曇発熱体の正面図、6Bは第3実施形態の防曇発熱体の正面図。
【
図7】7Aは第4実施形態の防曇発熱体の正面図、7Bは第5実施形態の防曇発熱体の正面図。
【
図8】8Aは第6実施形態の防曇発熱体の正面図、8Bは第7実施形態の防曇発熱体の正面図。
【
図9】9Aは第8実施形態の防曇発熱体の正面図、9Bは第9実施形態の防曇発熱体の正面図。
【
図10】10Aは第10実施形態の防曇発熱体の正面図、10Bは
図2の矢示IVから見た第10実施形態の防曇発熱体の正面図。
【
図12】12Aは第12実施形態の防曇発熱体の正面図、12Bは第13実施形態の防曇発熱体の正面図。
【
図13】本発明の一態様の合わせガラス及び防曇発熱体を示す
図5相当の断面図。
【
図14】本発明の一態様の合わせガラス及び防曇発熱体を示す
図5相当の断面図。
【
図15】本発明の一態様の合わせガラス及び防曇発熱体を示す
図5相当の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および特許請求の範囲において「第1」および「第2」と記載する場合、それらは、異なる構成要素を区別するために用いるものであり、特定の順序や優劣等を示すために用いるものではない。また、各実施形態で共通する構成で同一の効果を奏するものについては、同一符号を付して重複説明を省略する。また、
図1で示す防曇発熱体1の正面の左右方向をX方向とし、奥行方向(前後方向)をY方向とし、高さ方向(上下方向)をZ方向として説明する。
【0011】
【0012】
本実施形態の防曇発熱体1は、「透明板」としての車両のフロントガラス2に設置されている。
図1および
図2で示すように、フロントガラス2の中央上部には車載カメラ3が設置されている。車載カメラ3と防曇発熱体1は、本発明の「車載カメラ装置」の一態様を構成する。車載カメラ3は、ドライブレコーダ用のカメラであり、フロントガラス2の室内面2aに固定する固定部3aと、固定部3aから伸長する支持部3bと、支持部3bに支持されるカメラ本体部3cとを備える。固定部3aは図示しない粘着材によりフロントガラス2に固定される。カメラ本体部3cにはレンズ3dが設けられている。レンズ3dの前方(車室からフロントガラス2を通じて車外に向かう方向(撮像方向))には、防曇発熱体1がフロントガラス2に設置されている。
【0013】
防曇発熱体1
防曇発熱体1は、透明基材10と、加熱部11と、熱拡散部12と、保護層13と、粘着層14を備えている(
図5参照)。より具体的には、加熱部11と熱拡散部12は、透明基材10の第1の面10aに設けられている。保護層13は、加熱部11と熱拡散部12を含めて透明基材10の第1の面10aの全体を被覆するように形成されている。保護層13の表面13aには粘着層14が形成されている。粘着層14は表面13aの全面に形成されており、防曇発熱体1はその粘着層14によってフロントガラス2の室内面2aに貼り付けられている。
【0014】
透明基材10
透明基材10は、電気絶縁性で透明な樹脂フィルムにて構成することができる。樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂でなるものを使用できる。熱可塑性樹脂であれば、加熱して成形することで、取付対象物の取付面(フロントガラス2)の形状に対応して形成することが容易である。そのような透明基材10の防曇発熱体1であれば、取付面への貼付け時に皺ができてしまうような不具合の発生を抑制できる。また、透明基材10としての樹脂フィルムは、透明性のものが使用される。着色された樹脂フィルムでは、車載カメラ3により撮影される映像が着色されてしまうからである。このため透明基材10を構成する樹脂フィルムには、車載カメラ3により撮影した映像を着色しない無色透明のものが使用される。
【0015】
透明基材10に用いる樹脂フィルムの具体的な材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)などを挙げることができる。
【0016】
透明基材10の樹脂フィルムとしては、導電性高分子との密着性を高めるプライマー層や、表面保護層、帯電防止等を目的とするオーバーコート層などのうち有機高分子からなる表面処理を施したものを用いても良い。こうした樹脂フィルムは、二色成形やインサート成形によって他の樹脂成形体と重ね合わせられた一体成形品としてもよい。
【0017】
透明基材10(樹脂フィルム)の厚みは、10~500μmとすることが好ましく、75~200μmとすることがより好ましい。透明基材10が500μmまでの厚みならば防曇発熱体1としての強度が得られる。他方、透明基材10には500μmを超えて厚くするほどに強度を高める必要性に乏しい。さらに透明基材10が10μm未満では、透明基材10としての耐久性が不十分となるおそれがある。
【0018】
加熱部11
加熱部11は、透明基材10の第1の面10aに積層して設けられている。加熱部11は、本体部11aと配線部11bとを有する。
【0019】
本体部11aは、通電により発熱する「発熱導電部」として形成されている。また、本体部11aは、後述する熱拡散部12を囲む「外縁発熱部」として構成されている。本体部11aは、透明基材10の外周縁の内側に形成されており、本実施形態では枠形状に形成されている。具体的には、本体部11aは、上配線11a1、一対の側配線11a2、11a3、上配線11a1と対向する下配線11a4にて形成されている。上配線11a1は一対設けられている。具体的には、側配線11a2と配線部11bとを繋ぐ上配線11a1と、側配線11a3と配線部11bとを繋ぐ上配線11a1とで構成されている。
【0020】
本体部11aは、電流が流れることにより発熱する材料にて形成されている。具体的には本体部11aは、例えば導電性金属箔、金属導線、導電性塗膜により形成することができる。
【0021】
導電性金属箔は例えば銅箔、アルミ箔等を用いることができる。金属導線は例えば銅線等を用いることができる。本体部11aの形状に形成した銅箔、銅線を透明基材10の第1の面10aに貼り付けることで、本体部11aを形成することができる。導電性塗膜は金属ペースト、カーボンペースト等により形成することができる。具体的には、例えば銀ペースト、銅ペースト、カーボンペーストを本体部11aの形状に塗布することで形成することができる。
【0022】
配線部11bは、透明基材10から伸長して本体部11aと図示しない電源とを接続する。そのため配線部11bは、透明基材10から伸長する被覆付き電線にて構成されている。配線部11bは、他に、フレキシブルプリント基板(FPC)を用いることもできる。配線部11bの一端は、本体部11aの上配線11a1に接続されている。配線部11bと本体部11aとは、例えば導電性接着剤等により導通接続されている。本体部11aと配線部11bとは透明基材10を共有して導電材料からなる配線が連続して形成されたものとしてもよい。
【0023】
熱拡散部12
熱拡散部12は、加熱部11が生じる熱を伝導する「熱拡散路」を有する。具体的には、本実施形態の熱拡散部12は、四角形状の熱伝導線でなる外枠部12aと、外枠部12aの内側に交差配置した複数の熱伝導線でなる網状部12bとを有している。これらの外枠部12aと網状部12bは「熱拡散路」を構成する。
【0024】
外枠部12aは、全周にわたって加熱部11の本体部11aと隣接して形成されている。そのため本体部11aの上配線11a1、側配線11a2,11a3、下配線11a4が発した熱は、透明基材10を介して、それぞれ隣接する外枠部12aの枠線部分に伝導される。
【0025】
網状部12bは、複数本の縦線12b1と複数本の横線12b2とが格子状の網形状に交差して形成されている。それらの縦線12b1と横線12b2は「熱伝導線」を構成する。加熱部11から外枠部12aに伝わった熱は、外枠部12aに繋がる縦線12b1と横線12b2に伝わる。
【0026】
熱拡散部12を構成する熱伝導線は、高分子マトリクスに電気絶縁性の熱伝導性充填材を含有する塗膜(電気絶縁性の熱伝導膜)で形成される。
【0027】
高分子マトリクスの材質としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の各種樹脂を例示することができる。
【0028】
熱拡散部12に用いる熱伝導性充填材は、第1の特徴として、熱伝導性に優れるものを使用できる。具体的に熱伝導性充填材は、熱伝導率が25W/m・Kを超えるものが好ましい。これによれば熱拡散部12に対して迅速かつ効果的に熱拡散を行うことができる。したがって、フロントガラス2における防曇発熱体1の取付部分とその周囲部分に対する加熱を迅速かつ効果的に行うことで、結露の発生を抑制し、また発生した結露を無くすことができる。これにより結露による曇りが車載カメラ3の映像を損ねてしまうことを抑制できる。
【0029】
さらに、熱伝導性充填材は、第2の特徴として、電気絶縁性(低電気伝導度)のものを使用できる。熱拡散部12が、例えば導電性メッシュとして形成されていると、熱拡散部12が車内にある通信機器に対する各種の無線データ通信(例えば赤外線通信、GPS通信、ETC(Electronic Toll Collection System)、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System))における電波の送受信を遮ってしまうおそれがある。しかしながら熱拡散部12が電気絶縁性(非導電性)であることによって、通信機器が行う電波の送受信を遮ることがないという利点がある。なお、通信機器は、車載機器だけでなく、搭乗者が所持するスマートホン等の携帯通信端末も含まれる。
【0030】
さらに、熱伝導性充填材は、第3の特徴として、彩度が低く、明度が高いものを使用することができる。具体的には、車載カメラ3でフロントガラス2に貼り付けられた防曇発熱体1を通じて外界を撮影した映像に、熱拡散部12を形成する熱伝導線の映り込みを少なくできる熱伝導性充填材を使用することが好ましい。こうした観点によれば熱伝導性充填材は、色相が無く、明度が高い配線色、具体的には白色、薄い灰色であるのが好ましい。
【0031】
第3の特徴に関連して、熱拡散部12は透明性熱伝導線として構成することができる。熱拡散部12の熱伝導線をなす高分子マトリクスと熱伝導性充填材との可視光線の屈折率の差は無いか又は小さいほど、熱伝導性充填材が目立たなくなり、熱伝導線の光透過性(透明性)を向上させることができる。そのような高分子マトリクスと熱伝導性充填材の組み合わせとしては、シリコーン樹脂とシリカ粉末との組み合わせが挙げられる。さらに、熱拡散部12と透明基材10との可視光線の屈折率は無いか又は小さいことが好ましい。これによれば熱拡散部12が透明基材10に対してできるだけ外観上区別がつかないようにすることができる。
【0032】
熱伝導性充填材の材質は、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物などが挙げられる。具体例としては、金属酸化物では、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素(シリカ粉末)が挙げられる。金属窒化物では、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどが挙げられる。金属炭化物では、炭化ケイ素が挙げられる。金属水酸化物では、水酸化アルミニウムが挙げられる。このうち酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウムは、何れも前述した第1~第3の特徴を有しており、特に第3の特徴に関して白色である点で好ましい。これらの熱伝導性充填材は、それぞれ単独で又は複数を組み合わせて用いることもできる。例えば、酸化ケイ素に含まれるシリカ粉末は、シリコーン樹脂との組み合わせで透明性に優れる熱拡散部12として構成することができるが、シリカ粉末は熱伝導率が例示した他の熱伝導性充填材よりも低いため、アルミナ等の熱伝導率の高い熱伝導性充填材と組み合わせて使用することが好ましい。
【0033】
熱伝導性充填材の形状は、粒子状、繊維状、鱗片状の形状の粉末を用いることができる。熱伝導性充填材が繊維状及び鱗片状のように特定方向に伸長する異方性形状(異方体)であると、熱伝導性充填材の伸長方向を揃えて配向させることで、特定方向に向かう熱伝導性(異方的熱拡散性)を高めることができる。このように熱伝導性充填材を特定方向に配向するには、高分子マトリクスに熱伝導性充填材を充填した液状組成物を、スクリーン印刷等で透明基材10に塗布するときに、その特定方向に沿って加圧することで配向することができる。
【0034】
熱伝導性充填材の含有量は、熱伝導率が25W/m・Kを超える熱伝導性充填材を高分子固形分に対して30~95体積%とすることが好ましい。より好ましくは50~90体積%である。熱伝導性充填材が高分子固形分に対して30体積%より少ないと、フロントガラス2の加熱に必要な熱拡散性が得られないことがある。他方、熱伝導性充填材が高分子固形分に対して95体積%を超えると、熱伝導性充填材を充填した高分子マトリクスの流動性が低下することから、スクリーン印刷等により熱拡散部12を形成するのが困難になるという不具合がある。このような熱伝導性充填材を含有する熱拡散部12は、高分子マトリクスに充填されることで熱伝導性充填材そのものの熱伝導率よりも低下するが、熱拡散部12の熱伝導率は、0.8W/m・Kを超えることが好ましい。フロントガラス2を十分に加熱するためである。
【0035】
このような熱拡散部12は、高分子マトリクスに熱伝導性充填材を充填した液状組成物を、スクリーン印刷、メタル版印刷、ディスペンサー等により透明基材10に塗布することによって形成することができる。
【0036】
熱拡散部12を形成する熱伝導線は、車載カメラ3の映像に映り込まない程度の微細線形状に形成される。前述のように熱伝導性充填材として彩度が低く、明度が高いものを使用することにより、車載カメラ3の映像への映り込みを抑制することができるが、熱伝導線が微細線形状であれば、熱拡散部12が映像に映り込むことをさらに抑制することが可能となる。こうした微細線形状は、例えば太さ(線幅)を10μm~2000μm、厚さ(膜厚)を0.01μm~300μm、隣接する熱伝導線どうしの間隔を1mm~50mmとして形成することができる。
【0037】
保護層13
保護層13は、透明基材10に形成した加熱部11、熱拡散部12を保護するために設けられる電気絶縁性の被膜である。保護層13は、透明性(可視光線透過性)が要求される。車載カメラ3の映像に映り込まないようにするためである。また、加熱部11や熱拡散部12の酸化や硫化を防止するために用いることもできる。
【0038】
保護層13は、加熱部11、熱拡散部12を含めて透明基材10の第1の面10aの全面を被覆するように形成されている。保護層13はスクリーン印刷やグラビヤ印刷、スプレー塗布等により形成することができる。保護層13の上面側(透明基材10と対面しない反対面側)は、平坦面13aとして形成されている。これにより平坦面13aに積層した粘着層14が凹凸の無い粘着面となることから、防曇発熱体1をフロントガラス2に綺麗に貼り付けることができる。
【0039】
保護層13は、透明樹脂で形成されており、例えばアクリル系やウレタン系、エポキシ系、ポリオレフィン系の樹脂、その他の樹脂を用いることができる。
【0040】
保護層13の厚さは、通常は、6μm~30μmであり、好ましくは10μm~20μmである。その理由は、30μmを超えると柔軟性に乏しくなり、6μm未満であると加熱部11と熱拡散部12の保護が不十分となるおそれがあるからである。保護層13は、透明基材10として例示した材質の樹脂フィルムを用いることもできる。保護層13となる樹脂フィルムの厚みは、10~500μmとすることが好ましく、75~200μmとすることがより好ましい。保護層13が500μmまでの厚みならば防曇発熱体1としての強度が得られる。他方、500μmを超えて厚くするほどに強度を高める必要性に乏しい。さらに保護層13が10μm未満では、加熱部11と熱拡散部12の保護が不十分となるおそれがある。
【0041】
粘着層14
粘着層14は、防曇発熱体1をフロントガラス2に貼り付けるためのものである。この粘着層14と透明樹脂層で構成されている。粘着層14はスクリーン印刷等により形成することができる。なお、粘着層14には剥離フィルムをさらに設けておいてもよい。また、粘着層14は、粘着剤により形成した層とする以外にも、両面テープや、硬化型の接着剤等を使用することもできる。
【0042】
防曇発熱体1の取付方法と防曇発熱体1の配置構造
防曇発熱体1をフロントガラス2に取付けるには、粘着層14をフロントガラス2の特定位置に貼り付ける。このとき透明基材10から伸長する配線部11bは、防曇発熱体1とフロントガラス2との間に挟まないようにして、車両の車室内の適宜経路で配線する。
【0043】
防曇発熱体1のフロントガラス2への取付位置は、車載カメラ3のレンズ3dの前方投影領域rに熱拡散部12が配置される位置とする。
図2で示すように、フロントガラス2及び室内面2aは傾斜している。このため防曇発熱体1をフロントガラス2に取付けた状態で、
図2矢示IVで示すように車載カメラ3のレンズ3dの前方から防曇発熱体1を見ると、
図4で示すように見かけ上の高さが短くなる。したがって、車載カメラ3のレンズ3dの前方投影領域rが熱拡散部12の内側に位置するように、防曇発熱体1を取付けるようにする。
【0044】
また、この場合、車載カメラ3の上下方向及び左右方向の視野角αの前方投影領域rが、できるだけ熱拡散部12の内側に位置するように、防曇発熱体1を配置することが好ましい。このような防曇発熱体1の配置構造により、車載カメラ3の映像に加熱部11が映り込むのを抑制することができる。
【0045】
加熱部11と熱拡散部12が車載カメラ3の映像に映り込むのを抑制するには、防曇発熱体1が車載カメラ3の被写界深度の被写界近点よりもレンズ3dの側に位置するように、防曇発熱体1と車載カメラ3とを配置する。この防曇発熱体1の配置構造によれば、防曇発熱体1が車載カメラ3のレンズ3dの被写界深度から外れて車載カメラ3の焦点と合わないようにできるため、防曇発熱体1が車載カメラ3の映像に映り込むのを抑制することができる。
【0046】
効果
防曇発熱体1によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0047】
防曇発熱体1は、透明基材10と、熱拡散部12とを備えている。透明基材10は、「透明板」としてのフロントガラス2における車載カメラ3のレンズ3dの前方に設けられる。熱拡散部12は、透明基材10に設けられレンズ3dの前方を含むように熱拡散することで「透明板」としてのフロントガラス2を加熱する「熱拡散路」(外枠部12aと網状部12b)を有する。したがって、防曇発熱体1は、車載カメラ3のレンズ3dの前方にあるフロントガラス2を加熱することができる。
【0048】
また、防曇発熱体1は、フロントガラス2の全面ではなく、車載カメラ3の前方部分(レンズ3dの前方投影領域r)に特化してフロントガラス2を加熱することができる。
【0049】
さらに防曇発熱体1は、加熱によってフロントガラス2の曇りを除去したり、フロントガラス2が曇るのを抑制することができる。また、防曇発熱体1は、結露のみならず着霜、着氷も抑制することができる。
【0050】
防曇発熱体1は、加熱部11を備えており、加熱部11は、透明基材10に設けられ導通により発熱して熱拡散部12に熱を伝える「熱伝導部」(本体部11a)を有する。このため、防曇発熱体1は、通電により加熱部11が生じる熱を速やかに熱拡散部12に伝えて、「透明板」(フロントガラス2)を加熱することができる。
【0051】
加熱部11は、熱拡散部12を囲む「外縁発熱部」としての本体部11aを有する。このためフロントガラス2を加熱するための熱拡散部12は、その外側から中心に向けて熱伝導することにより、迅速かつ効果的にフロントガラス2を加熱することができる。また、加熱部11は、熱拡散部12を包囲するため、より迅速かつ効果的に熱拡散部12に熱を伝えることができる。
【0052】
熱拡散部12は、電気絶縁性の熱伝導性充填材を含有する熱伝導膜として形成されている。熱拡散部12が電気絶縁性であるため、各種の無線データ通信における電波の送受信を遮ることがない。
【0053】
熱拡散部12の熱伝導膜(熱伝導線)は、高分子マトリクスに熱伝導性充填材を含有する塗膜により形成されており、熱伝導性充填材は、熱伝導率が25W/m・Kを超えるものである。したがって、迅速かつ効果的にフロントガラス2を加熱できる。
【0054】
熱伝導性充填材は、彩度が低く、明度が高い材料、より具体的には白色又は薄い灰色により形成されている。したがって、熱拡散部12の車載カメラ3の映像への映り込みを抑制することができる。
【0055】
熱拡散部12の熱伝導膜(熱伝導線)は、熱伝導性充填材が異方性形状(例えば繊維状又は鱗片状)の粉末であり、その伸長方向(長手方向)を特定方向に配向するものとして、形成することができる。これによれば、熱伝導性充填材が、例えば熱伝導膜の伸長方向に沿うように配向することで、より熱伝導効率の高い熱伝導膜とすることができる。
【0056】
防曇発熱体1は、「透明板」としてのフロントガラス2における車載カメラ3のレンズ3dの前方投影領域rに熱拡散部12が位置するように配置する。これによれば「透明板」の設置角度が、車載カメラ3のレンズ3dの光軸に対して斜めに交差していても、レンズ3dの前方投影領域rに対応するフロントガラス2の部分を防曇発熱体1により確実に加熱することができる。
【0057】
【0058】
第2実施形態の防曇発熱体20は、第1実施形態と同様に、透明基材10と、加熱部21と、熱拡散部12と、保護層13と、粘着層14を備える点で共通する。また、防曇発熱体20の取付方法及び配置構造も第1実施形態と共通する。他方、防曇発熱体20は、加熱部21の構成が第1実施形態と相違する。
【0059】
本実施形態の加熱部21は、上配線11a1が無く、一対の側配線21a2、21a3と、下配線21a4が本体部21aを形成する構成となっている。本体部21aには、配線部11bが接続されている。
【0060】
防曇発熱体20によれば、加熱部21が一対の側配線21a2、21a3と、下配線21a4にて構成されているので、車載カメラ3の映像に加熱部21が映り込む可能性を低減することができる。
【0061】
【0062】
第3実施形態の防曇発熱体30は、第1実施形態と同様に、透明基材10と、加熱部31と、熱拡散部32と、保護層13と、粘着層14を備える点で共通する。また、防曇発熱体30の取付方法及び配置構造も第1実施形態と共通する。他方、防曇発熱体30は、加熱部31、熱拡散部32の構成が第1実施形態と相違する。
【0063】
加熱部31は、第2実施形態の加熱部21の構成と同一である。すなわち、加熱部31は、一対の側配線31a2、31a3と、下配線31a4が本体部31aを形成する構成となっている。本体部31aには、配線部11bが接続されている。
【0064】
熱拡散部32は、網状部32bのみにより形成されている。また、熱拡散部32は、加熱部31に対して直接繋がっている。具体的には、網状部32bが縦線32b1と横線32b2とを有しており、このうち横線32b2の両端が加熱部31の側配線31a2、31a3に対して直接接続されている。また、縦線32b1の下端が加熱部31の下配線31a4に対して直接接続されている。
【0065】
このような防曇発熱体30によれば、加熱部31と熱拡散部32とが直接繋がっているため、加熱部31の発熱を熱拡散部32に直接伝えることができる。したがって、迅速かつ効率的にフロントガラス2を加熱することができる。
【0066】
【0067】
第4実施形態の防曇発熱体40は、第1実施形態と同様に、透明基材10と、加熱部41と、熱拡散部12と、保護層13と、粘着層14を備える点で共通する。また、防曇発熱体40の取付方法及び配置構造も第1実施形態と共通する。他方、防曇発熱体40は、加熱部41の構成が第1実施形態と相違する。
【0068】
加熱部41は、上配線41a1を有する本体部41aと一対の配線部41bとを有している。上配線41a1は、一対の配線部41bを繋ぐように形成されている。配線部41bと上配線41a1は、熱拡散部12の外枠部12aと網状部12bの縦線12bに対して直接繋がっている。
【0069】
防曇発熱体40によれば、加熱部41が配線部41bとその間の部分のみに存在する上配線41a1にて構成されているので、車載カメラ3の映像に加熱部41が映り込む可能性を低減することができる。
【0070】
【0071】
第5実施形態の防曇発熱体50は、第1実施形態と同様に、透明基材10と、加熱部51と、熱拡散部12と、保護層13と、粘着層14を備える点で共通する。また、防曇発熱体50の取付方法及び配置構造も第1実施形態と共通する。他方、防曇発熱体50は、加熱部51の構成が第1実施形態と相違する。
【0072】
加熱部51は、本体部51aと配線部51bを有している。ここで本体部51aは、熱拡散部12の外枠部12aの一辺と略同じ長さの上配線51a1のみを有している。配線部51bは、その上配線51a1に対して繋がっている。また、熱拡散部12の網状部12bの縦線12b1は、上配線51a1に直接繋がっている。
【0073】
防曇発熱体50は上配線51a1のみを有しているので、車載カメラ3の映像に加熱部51が映り込む可能性を低減することができる。
【0074】
熱拡散部12の網状部12bの縦線12b1が加熱部51に直接繋がっている。また、外枠部12aも加熱部51に直接繋がっている。このため、加熱部51の発熱を熱拡散部12に直接伝えることができる。したがって、迅速かつ効率的にフロントガラス2を加熱することができる。配線部51bから外方に広がって延びる上配線51a1は、電流は流れないものの、熱伝導性があるため、熱を外枠部12aの端まで広げやすくなっている。
【0075】
【0076】
第6実施形態の防曇発熱体60は、第1実施形態と同様に、透明基材10と、加熱部11と、熱拡散部62と、保護層13と、粘着層14とを備える点で共通する。また、防曇発熱体60の取付方法及び配置構造も第1実施形態と共通する。他方、防曇発熱体60は、熱拡散部62の構成が第1実施形態と相違する。
【0077】
熱拡散部62は、外枠部62aと網状部62bとを有し、それらは加熱部11に対して直接繋がっている。すなわち外枠部62aの両端と、網状部62bの縦線62b1と、横線62b2とは、すべて加熱部11に対して直接繋がっている。
【0078】
防曇発熱体60によれば、熱拡散部62を構成するすべての熱伝導線が加熱部11に対して直接繋がっているので、加熱部11の発熱を熱拡散部62に迅速に伝えることができる。したがって、迅速かつ効率的にフロントガラス2を加熱することができる。
【0079】
【0080】
第7実施形態の防曇発熱体70は、第1実施形態と同様に、透明基材10と、加熱部11と、熱拡散部72と、保護層13と、粘着層14とを備える点で共通する。また、防曇発熱体70の取付方法及び配置構造も第1実施形態と共通する。他方、防曇発熱体70は、熱拡散部72の構成が第1実施形態と相違する。
【0081】
熱拡散部72は、外枠部72aと網状部72bを有している。このうち外枠部72aは、
図8Bにてクロスハッチングで示すように、幅広の帯形状として形成されている。幅広の帯形状は、具体的には網状部72bと加熱部11との間隔に対応する幅を有するように形成されている。そして外枠部72aは、加熱部11と辺で接して直接繋がっている。
【0082】
防曇発熱体70によれば、幅広の帯形状の熱拡散部72の外枠部72aと加熱部11とが直接繋がっているので、加熱部11の発熱を熱拡散部72に迅速に伝えることができる。したがって、迅速かつ効率的にフロントガラス2を加熱することができる。そして、熱拡散部72の外枠部72aが細線形状ではなく帯形状であるため、辺(外縁)で長く広く加熱部11と接することができ、加熱部11の発熱をより迅速に網状部72bに伝えることができる。
【0083】
【0084】
第8実施形態の防曇発熱体80は、第1実施形態と同様に、透明基材10と、加熱部11と、熱拡散部82と、保護層13と、粘着層14とを備える点で共通する。また、防曇発熱体80の取付方法及び配置構造も第1実施形態と共通する。他方、防曇発熱体80は、熱拡散部82の構成が第1実施形態と相違する。
【0085】
熱拡散部82は、網状部82bの縦線82b1が車載カメラ3のレンズ3dの前方投影領域rを通過しないように形成されている。すなわち縦線82b1は不等ピッチ部を有する。網状部82bの横線82b2は、第1実施形態と同様に等間隔で形成されている。
【0086】
防曇発熱体80によれば、縦線82b1が車載カメラ3のレンズ3dの前方投影領域rを通過しないので、縦線82b1が車載カメラ3の映像に映り込むのを抑制することができる。
【0087】
【0088】
第9実施形態の防曇発熱体90は、第1実施形態と同様に、透明基材10と、加熱部11と、熱拡散部92と、保護層13と、粘着層14とを備える点で共通する。また、防曇発熱体90の取付方法及び配置構造も第1実施形態と共通する。他方、防曇発熱体90は、熱拡散部92の構成が第1実施形態と相違する。
【0089】
熱拡散部92は、網状部92bの横線92b2が車載カメラ3のレンズ3dの前方投影領域rを通過しないように形成されている。すなわち横線92b2は不等ピッチ部を有する。網状部92bの縦線92b1は、第1実施形態と同様に等間隔で形成されている。
【0090】
防曇発熱体90によれば、横線92b2が車載カメラ3のレンズ3dの前方投影領域rを通過しないので、横線92b2が車載カメラ3の映像に映り込むのを抑制することができる。
【0091】
【0092】
第10実施形態の防曇発熱体100は、第1実施形態と同様に、透明基材10と、加熱部11と、熱拡散部102と、保護層13と、粘着層14とを備える点で共通する。また、防曇発熱体100の取付方法及び配置構造も第1実施形態と共通する。他方、防曇発熱体100は、熱拡散部102の構成が第1実施形態と相違する。
【0093】
熱拡散部102は、網状部102bの縦線102b1と横線102b2が何れも車載カメラ3のレンズ3dの前方投影領域rを通過しないように形成されている。すなわち縦線102b1と横線102b2はそれぞれ不等ピッチ部を有する。
【0094】
防曇発熱体100によれば、
図10Bで示すように、縦線102b1と横線102b2が車載カメラ3のレンズ3dの前方投影領域rを通過しないので、網状部102bが車載カメラ3の映像に映り込むのを抑制することができる。
【0095】
【0096】
第11実施形態の防曇発熱体110は、第1実施形態と同様に、透明基材10と、加熱部11と、熱拡散部112と、保護層13と、粘着層14とを備える点で共通する。また、防曇発熱体110の取付方法及び配置構造も第1実施形態と共通する。他方、防曇発熱体110は、熱拡散部112の構成が第1実施形態と相違する。
【0097】
熱拡散部112は、網状部112bの縦線112b1と横線112b2が何れも車載カメラ3のレンズ3dの前方投影領域rを通過しないように形成されている。すなわち縦線112b1と横線112b2はそれぞれ不等ピッチ部を有する。また、網状部112bは、前方投影領域rの周辺部分に縦線112b1と横線112b2の配線間隔を狭小とした狭ピッチ配線部112b3、112b4を有する。
【0098】
防曇発熱体110によれば、縦線112b1と横線112b2が車載カメラ3のレンズ3dの前方投影領域rを通過しないので、網状部112bが車載カメラ3の映像に映り込むのを抑制することができる。
【0099】
防曇発熱体110によれば、網状部112bに狭ピッチ配線部112b3、112b4を有するので、それらの部分を特に迅速に加熱することができる。特に、縦線112b1と横線112b2が車載カメラ3のレンズ3dの前方投影領域rを通過しないため加熱が弱くなるが、狭ピッチ配線部112b3、112b4で加熱を集中させることができるので、前方投影領域rとその周囲を含めて確実に加熱することができる。
【0100】
【0101】
第12実施形態の防曇発熱体120は、第1実施形態と同様に、透明基材10と、加熱部121と、熱拡散部12と、保護層13と、粘着層14とを備える点で共通する。また、防曇発熱体120の取付方法及び配置構造も第1実施形態と共通する。他方、防曇発熱体120は、加熱部121の構成が第1実施形態と相違する。
【0102】
加熱部121は、熱拡散部12の内側に設けられている。すなわち、加熱部121は熱拡散部12の網状部12bと重なる位置に設けられており、本体部121aと網状部12bとは交差している。
【0103】
防曇発熱体120によれば、熱拡散部12の内側に加熱部121が配置されている。このため熱拡散部12の内側から熱拡散部12に熱を伝えることができるので、加熱部121の発熱を熱拡散部12に迅速に伝えることができる。したがって、迅速かつ効率的にフロントガラス2を加熱することができる。
【0104】
【0105】
第13実施形態の防曇発熱体130は、第1実施形態と同様に、透明基材10と、加熱部131と、熱拡散部132と、保護層13と、粘着層14とを備える点で共通する。また、防曇発熱体130の取付方法及び配置構造も第1実施形態と共通する。他方、防曇発熱体130は、加熱部131と熱拡散部132の構成が第1実施形態と相違する。
【0106】
加熱部131は、第1実施形態と比較して、側配線131a2、131a3と、下配線131a4が透明基材10の中心寄りに形成されている。そして、熱拡散部132は、透明基材10の全面に網状部132bが形成されている。このため加熱部131は、熱拡散部132の内側に設けられている。すなわち、加熱部131は熱拡散部132の網状部132bと重なる位置に設けられており、本体部131aと網状部132bとは交差している。
【0107】
防曇発熱体130によれば、熱拡散部132の内側に加熱部131が配置されている。このため熱拡散部132の内側から熱拡散部132に熱を伝えることができるので、加熱部131の発熱を熱拡散部132に迅速に伝えることができる。したがって、迅速かつ効率的にフロントガラス2を加熱することができる。
【0108】
熱拡散部132は、透明基材10の全面に網状部132bが形成されているため、防曇発熱体130の全面によってフロントガラス2を加熱することができる。。
【0109】
【0110】
第1実施形態では、防曇発熱体1を「透明板」としてのフロントガラス2の室内面2aに取付ける例を示したが、本実施形態では第1実施形態の防曇発熱体1を「車両用合わせガラス」としての板厚内に備えるフロントガラス142を示す。
【0111】
フロントガラス142は、室内側の第1のガラス部材142aと、室外側の第2のガラス部材142bと、第1のガラス部材142aと第2のガラス部材142bの間に配置する樹脂フィルムでなる中間膜142cとを有する。中間膜142cは、防曇発熱体1を配置するために防曇発熱体1の外形に合わせて欠如する凹部142c1を有しており、防曇発熱体1はその凹部142c1に配置されている。
【0112】
「車両用合わせガラス」としてのフロントガラス142によれば、フロントガラス142を板厚内から加熱することで、第1実施形態の防曇発熱体1と同じ効果を奏することができる。また、フロントガラス142に防曇発熱体1が内蔵されているため、後付け作業が不要であり、経年変化によって剥離することもない。
【0113】
【0114】
第1実施形態では、防曇発熱体1を「透明板」としてのフロントガラス2の室内面2aに取付ける例を示したが、本実施形態では防曇発熱体151を「車両用合わせガラス」としての板厚内に備えるフロントガラス152を示す。
【0115】
フロントガラス152は、室内側の第1のガラス部材152aと、室外側の第2のガラス部材152bと、第1のガラス部材152aと第2のガラス部材152bの間に配置する樹脂フィルムでなる中間膜152cとを有する。そして中間膜152cは防曇発熱体151の「透明基材」となっている。つまり防曇発熱体151は「透明基材」としての中間膜152cに形成されている。
【0116】
「車両用合わせガラス」としてのフロントガラス152によれば、フロントガラス152を板厚内から加熱することで、第1実施形態の防曇発熱体1と同じ効果を奏することができる。また、フロントガラス152に防曇発熱体151が内蔵されているため、後付け作業が不要であり、経年変化によって剥離することもない。
【0117】
「車両用合わせガラス」としてのフロントガラス152によれば、中間膜152cが防曇発熱体151の「透明基材」であるため、中間膜152cに防曇発熱体151を直接構成することができ、中間膜152cを有するフロントガラス152を多機能化し、その付加価値を高めることができる。
【0118】
【0119】
第1実施形態では、防曇発熱体1を「透明板」としてのフロントガラス2の室内面2aに取付ける例を示したが、本実施形態では防曇発熱体161を「車両用合わせガラス」としての板厚内に備えるフロントガラス162を示す。
【0120】
フロントガラス162は、室内側の第1のガラス部材162aと、室外側の第2のガラス部材162bと、第1のガラス部材162aと第2のガラス部材162bの間に配置する樹脂フィルムでなる中間膜162cとを有する。そして室内側の第1のガラス部材162aは防曇発熱体161の「透明基材」を構成している。つまり防曇発熱体161は「透明基材」としての第1のガラス部材162aに形成されている。
【0121】
「車両用合わせガラス」としてのフロントガラス162によれば、フロントガラス162を板厚内から加熱することで、第1実施形態の防曇発熱体1と同じ効果を奏することができる。また、フロントガラス162に防曇発熱体161が内蔵されているため、後付け作業が不要であり、経年変化によって剥離することもない。
【0122】
「車両用合わせガラス」としてのフロントガラス162によれば、室内側の第1のガラス部材162aが防曇発熱体161の「透明基材」であるため、第1のガラス部材162aに防曇発熱体161を直接構成することができ、フロントガラス162を多機能化し、その付加価値を高めることができる。
【0123】
その他実施形態及び変形例
【0124】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく様々な実施形態とすることができる。
【0125】
前記実施形態では、車載カメラ3を例示した。しかしながら、結露等により映像が不鮮明になる問題は車両に用いる車載カメラ3に固有の問題ではなく、カメラのレンズの前方に透明板(ガラス、透明樹脂板)が設置される様々な機械、例えば船舶、航空機、鉄道、オートバイ、工作機械についても当てはまる。そのため、前記実施形態の防曇発熱体1は、車両に備える「透明板」だけでなく、船舶、航空機、鉄道等に備える「透明板」を取付対象物としてもよい。
【0126】
前記実施形態では、「カメラ」、「車載カメラ装置」としてドライブレコーダ用の車載カメラ3を例示したが、先進運転支援システム(ADAS:Advanced driver-assistance systems)に用いるステレオカメラでもよい。ステレオカメラは、カメラ筐体に相互に離間して視差を形成可能な複数のレンズ(通常は2つのレンズ)を備えている。このような複数のレンズを備えるステレオカメラでは、透明板における各レンズの前方投影部分を少なくとも防曇する必要がある。そのため防曇発熱体1としては複数の各レンズに対応する大きさに形成される。
【0127】
前記実施形態では、防曇発熱体1の取付対象物である「透明板」としてフロントガラス2を例示したが、リアガラスやその他の車両用ガラスを取付対象物としてもよい。また、車両の樹脂製の外装加飾板に設けるカメラ用の透明窓部に設置してもよい。
【0128】
前記実施形態では、透明基材10と加熱部11の本体部11aが四角形状のものを例示したが、その他の多角形でも、また円形や楕円形等でもよい。また、例えば透明基材10の上端部に、車載カメラ3の固定部3aとの干渉を回避する凹部、バックミラーの固定部との干渉を回避する凹部を有する形状としてもよい。さらに、前記実施形態の防曇発熱体1の大きさは例示であり、前記実施形態よりも大きく形成してもよい。一例として、フロントガラス2の全面に熱拡散部12を設ける構成とすることもできる。これによればフロントガラス2を広い面積で加熱して防曇することができる。
【0129】
前記実施形態では、熱拡散部12の網状部12bを網形状に形成する例を示したが、直線の熱伝導線により形成される網形状ではなく、角を有する屈曲線、湾曲形状の波線等による熱伝導線により網状部12bを形成することもできる。また、直線と屈曲線と波線等を適宜組み合わせた複数の熱伝導線により網状部12bを形成することもできる。
【0130】
熱拡散部12は、網状部12bに代えて、縦線12b1、横線12b2のどちらかを有さない複数本の熱伝導線を並列に配置した縞形状に形成することもできる。この場合、外枠部12aは、設けて構成することも可能であり、設けないで構成することも可能である。また、熱拡散部12は、網状部12bに代えて、多重同心状の波紋形状に形成することもできる。
【符号の説明】
【0131】
1 防曇発熱体(第1実施形態)
2 フロントガラス
2a 室内面
2b 第1のガラス部材
2c 第2のガラス部材
2d 中間膜
3 車載カメラ
3a 固定部
3b 支持部
3c カメラ本体
3d レンズ
10 透明基材
10a 第1の面
11 加熱部
11a 本体部
11a1 上配線
11a2 側配線
11a3 側配線
11a4 下配線
11b 配線部
12 熱拡散部
12a 外枠部
12b 網状部
12b1 縦線
12b2 横線
13 保護層
13a 表面
14 粘着層
20 防曇発熱体(第2実施形態)
21 加熱部
21a 本体部
21a2 側配線
21a3 側配線
21a4 下配線
30 防曇発熱体(第3実施形態)
31 加熱部
31a 本体部
31a2 側配線
31a3 側配線
31a4 下配線
32 熱拡散部
32b 網状部
32b1 縦線
32b2 横線
40 防曇発熱体(第4実施形態)
41 加熱部
41a 本体部
41a1 上配線
41b 配線部
50 防曇発熱体(第5実施形態)
51 加熱部
51a 本体部
51a1 上配線
51b 配線部
60 防曇発熱体(第6実施形態)
62 熱拡散部
62a 外枠部
62b 網状部
62b1 縦線
62b2 横線
70 防曇発熱体(第7実施形態)
72 熱拡散部
72a 外枠部
72b 網状部
80 防曇発熱体(第8実施形態)
82 熱拡散部
82b 網状部
82b1 縦線
82b2 横線
90 防曇発熱体(第9実施形態)
92 熱拡散部
92b 網状部
92b1 縦線
92b2 横線
100 防曇発熱体(第10実施形態)
102 熱拡散部
102b 網状部
102b1 縦線
102b2 横線
110 防曇発熱体(第11実施形態)
112 熱拡散部
112b 網状部
112b1 縦線
112b2 横線
112b3 狭ピッチ配線部
112b4 狭ピッチ配線部
120 防曇発熱体(第12実施形態)
121 加熱部
121a 本体部
121b 配線部
130 防曇発熱体(第13実施形態)
131 加熱部
131a 本体部
132 熱拡散部
132b 網状部
131a2 側配線
131a3 側配線
131a4 下配線
142 フロントガラス(第14実施形態)
142a 第1のガラス部材
142b 第2のガラス部材
142c 中間膜
142c1 凹部200
151 防曇発熱体(第15実施形態)
152 フロントガラス
152a 第1のガラス部材
152b 第2のガラス部材
152c 中間膜(透明基材)
161 防曇発熱体(第16実施形態)
162 フロントガラス
162a 第1のガラス部材
162b 第2のガラス部材
162c 中間膜(透明基材)