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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068226
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】転写具
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20230510BHJP
   B43M 11/06 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
B43L19/00 H
B43M11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179101
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】茂野 真成
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
(57)【要約】
【課題】少なくとも、成形品のばらつき等に起因して滑りクラッチのトルク値に個体差が生じ易いという不具合が好適に抑制された転写具を提供する。
【解決手段】転写具は、リール連動機構Eを構成する滑りクラッチSが、第一回転部材である繰出ギアMに設けられ共通軸の軸心cnに対して交差する方向に弾性変位可能に構成された弾性変位部Qと、第二回転部材である繰出用リールCに設けられ弾性変位部Qを押圧し得る突出部c3とを備え、押圧部を構成する突出部c3に、軸心cn方向の断面視において弾性変位部Qに形成された被押圧面Uに対して点状に接する点状接触部たる尖り部分vが設けられている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰出用リールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由させて巻取用リールに巻き取らせるようにした転写具であって、
前記繰出用リールと前記巻取用リールの回転を連動させるリール連動機構と、このリール連動機構を構成するものであり共通軸周りに回転する第一回転部材と第二回転部材との間に滑りを生じさせて前記転写テープの緊張度合を適正化するための滑りクラッチを備えたものであり、
前記滑りクラッチが、前記第一回転部材及び前記第二回転部材の何れか一方に設けられ前記共通軸の軸心に対して交差する方向に弾性変位可能に構成された弾性変位部と、他方に設けられ前記弾性変位部を押圧し得る押圧部とを備えたものであり、
前記弾性変位部及び前記押圧部の何れか一方に突出部が設けられ、その突出部に、前記軸心方向の断面視において他方に形成された被押圧面に対して点状に接する点状接触部が設けられている転写具。
【請求項2】
繰出用リールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由させて巻取用リールに巻き取らせるようにした転写具であって、
前記繰出用リールと前記巻取用リールの回転を連動させるリール連動機構と、このリール連動機構を構成するものであり共通軸周りに回転する第一回転部材と第二回転部材との間に滑りを生じさせて前記転写テープの緊張度合を適正化するための滑りクラッチを備えたものであり、
前記滑りクラッチが、前記第一回転部材及び前記第二回転部材の何れか一方に設けられ前記共通軸の軸心に対して交差する方向に弾性変位可能に構成された弾性変位部と、他方に設けられ前記弾性変位部を押圧し得る押圧部とを備えたものであり、
前記弾性変位部及び前記押圧部の何れか一方に、前記軸心方向の断面視において他方に対して点状に接する被押圧面が設けられている転写具。
【請求項3】
前記押圧部が、前記弾性変位部に向かって突設された突出部を備えている請求項1又は2記載の転写具。
【請求項4】
前記押圧部が、前記弾性変位部に向かって突設された突出部を備えたものであり、
前記点状接触部が、前記突出部の突出端に形成された尖り部分である請求項1又は2記載の転写具。
【請求項5】
前記第二回転部材を前記第一回転部材に対して位置決めする位置規制部が設けられている請求項1、2、3又は4記載の転写具。
【請求項6】
前記被押圧面が、前記共通軸の軸心に対して傾斜している請求項1、2、3、4又は5記載の転写具。
【請求項7】
前記第一回転部材が、前記弾性変位部が一体に設けられた繰出ギアであり、
前記第二回転部材が、前記転写テープが巻装される円筒部を有し当該円筒部の内側に前記突出部が一体に設けられた前記繰出用リールである請求項1、2、3、4、5又は6記載の転写具。
【請求項8】
前記繰出ギアが、円環状の外周縁に複数の歯が並設された繰出ギア本体と、前記共通軸の軸心に沿って延出し当該軸心を囲うように一定の間隔を空けて複数配設された前記弾性変位部とを備えたものである請求項7記載の転写具。
【請求項9】
前記リール連動機構が、前記繰出用リールと、この繰出用リールとともに回転し得る前記繰出ギアと、この繰出ギアに噛合する中間ギアと、この中間ギアに噛合する巻取ギアと、この巻取ギアとともに回転し得る前記巻取用リールとを備えたものである請求項7又は8記載の転写具。
【請求項10】
前記転写テープが、帯状をなす基材と、この基材の片面に添着された修正剤とを備えてなる修正用テープである請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、糊等の転写物が添着された転写テープが繰り出される繰出用リールと、繰出用リールから繰り出された転写テープを巻き取るための巻取用リールと、繰出用リールと巻取用リールの回転を連動させるリール連動機構とを備えた転写具が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
この種の転写具には、転写テープの緊張度合を適正化するために、共通軸に支持された繰出側のギアと繰出用リールとの間にクラッチが設けられたものが存在する。
【0004】
従来のクラッチは、一方側の部材(例えば、繰出用リール)が、他方側の部材(例えば、繰出ギア)に対して、共通軸の軸心に対して交差する方向に面的に接触しながら滑り動く構成をなしていた。
【0005】
ところが、このような構成のものでは、成形品の微細なばらつき(成形品の微細な寸法違い等)に起因して、転写具毎に、クラッチが作動し得るトルク値に個体差が生じ易いものとなっていた。
【0006】
特に、転写具が薄膜状の修正剤を転写するものである場合には、比較的軽微な力によって転写テープを走行させる操作が行われるため、転写具毎にクラッチが作動し得るトルク値にばらつきがあると、使用者の快適な使用感を損なう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-108547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、少なくとも、成形品のばらつき等に起因して滑りクラッチが作動し得るトルク値に個体差が生じ易いという不具合が好適に抑制された転写具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0010】
請求項1に記載の発明は、繰出用リールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由させて巻取用リールに巻き取らせるようにした転写具であって、前記繰出用リールと前記巻取用リールの回転を連動させるリール連動機構と、このリール連動機構を構成するものであり共通軸周りに回転する第一回転部材と第二回転部材との間に滑りを生じさせて前記転写テープの緊張度合を適正化するための滑りクラッチを備えたものであり、前記滑りクラッチが、前記第一回転部材及び前記第二回転部材の何れか一方に設けられ前記共通軸の軸心に対して交差する方向に弾性変位可能に構成された弾性変位部と、他方に設けられ前記弾性変位部を押圧し得る押圧部とを備えたものであり、前記弾性変位部及び前記押圧部の何れか一方に突出部が設けられ、その突出部に、前記軸心方向の断面視において他方に形成された被押圧面に対して点状に接する点状接触部が設けられている転写具である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、繰出用リールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由させて巻取用リールに巻き取らせるようにした転写具であって、前記繰出用リールと前記巻取用リールの回転を連動させるリール連動機構と、このリール連動機構を構成するものであり共通軸周りに回転する第一回転部材と第二回転部材との間に滑りを生じさせて前記転写テープの緊張度合を適正化するための滑りクラッチを備えたものであり、前記滑りクラッチが、前記第一回転部材及び前記第二回転部材の何れか一方に設けられ前記共通軸の軸心に対して交差する方向に弾性変位可能に構成された弾性変位部と、他方に設けられ前記弾性変位部を押圧し得る押圧部とを備えたものであり、前記弾性変位部及び前記押圧部の何れか一方に、前記軸心方向の断面視において他方に対して点状に接する被押圧面が設けられている転写具である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記押圧部が、前記弾性変位部に向かって突設された突出部を備えている請求項1又は2記載の転写具である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記押圧部が、前記弾性変位部に向かって突設された突出部を備えたものであり、前記点状接触部が、前記突出部の突出端に形成された尖り部分である請求項1又は2記載の転写具である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記第二回転部材を前記第一回転部材に対して位置決めする位置規制部が設けられている請求項1、2、3又は4記載の転写具である。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記被押圧面が、前記共通軸の軸心に対して傾斜している請求項1、2、3、4又は5記載の転写具である。
【0016】
請求項7に記載の発明は、前記第一回転部材が、前記弾性変位部が一体に設けられた繰出ギアであり、前記第二回転部材が、前記転写テープが巻装される円筒部を有し当該円筒部の内側に前記突出部が一体に設けられた前記繰出用リールである請求項1、2、3、4、5又は6記載の転写具である。
【0017】
請求項8に記載の発明は、前記繰出ギアが、円環状の外周縁に複数の歯が並設された繰出ギア本体と、前記共通軸の軸心に沿って延出し当該軸心を囲うように一定の間隔を空けて複数配設された前記弾性変位部とを備えたものである請求項7記載の転写具である。
【0018】
請求項9に記載の発明は、前記リール連動機構が、前記繰出用リールと、この繰出用リールとともに回転し得る前記繰出ギアと、この繰出ギアに噛合する中間ギアと、この中間ギアに噛合する巻取ギアと、この巻取ギアとともに回転し得る前記巻取用リールとを備えたものである請求項7又は8記載の転写具である。
【0019】
請求項10に記載の発明は、前記転写テープが、帯状をなす基材と、この基材の片面に添着された修正剤とを備えてなる修正用テープである請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の転写具である。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、成形品のばらつき等に起因して滑りクラッチのトルク値に個体差が生じ易いという不具合が好適に抑制された転写具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
図2】同実施形態における右側面図。
図3】同実施形態における分解斜視図。
図4】同実施形態における右ケース部材を取り外した状態の右側面図。
図5図2におけるX-X線断面図。
図6】同実施形態における繰出ギアの正面図。
図7】同実施形態における繰出リールの右側面図。
図8】同実施形態における繰出ギアと繰出リールとを組み合わせた状態を示す右側面図。
図9図8におけるY-Y線端面図。
図10】同実施形態における繰出ギアと繰出リールの構成を説明するための分解斜視図。
図11】同実施形態における繰出ギアと繰出リールの構成を説明するための分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を、図1~11を参照して説明する。
【0023】
この実施形態は、本発明を、転写物である薄膜状の修正剤(図示せず)を用紙等の転写対象面(図示せず)に対して転写するための転写具に適用したものである。転写具は、繰出用リールCから繰り出された転写テープTを、転写ヘッドBを経由させて巻取用リールDに巻き取らせるようにしたものである。
【0024】
転写具は、帯状をなす基材tの一面側に薄膜状の修正剤が添着されてなる転写テープTを、転写ヘッドBの先端部に設けられた先端押圧部Pによって転写対象面に対して押し付けつつ転写テープTを上流側(繰出用リールC側)から下流側(巻取用リールD側)に向かって流動・走行させることにより、当該転写対象面に対して基材tから修正剤を転写し得るように構成したものである。
【0025】
転写具は、内部に転写テープTを収容し得るケースAと、ケースAの前端部に配された転写ヘッドBと、ケースA内に収容され修正剤を保持した転写テープTが巻装された繰出用リールCと、ケースA内に収容され繰出用リールCから繰り出されるとともに転写ヘッドBの先端押圧部Pを経由した転写テープTを巻き取るための巻取用リールDと、繰出用リールCと巻取用リールDの回転を連動させるリール連動機構Eを備えたものである。
【0026】
この実施形態のリール連動機構Eには、ケースAに設けられた共通軸である第一の支軸j1周りに回転する第一回転部材である繰出ギアMと第二回転部材である繰出用リールCとの間に滑りを生じさせて転写テープTの緊張度合を適正化するための滑りクラッチSが設けられている。
【0027】
以下、転写具の各構成について説明する。
【0028】
<ケースA>
ケースAは、内部に繰出用リールC、巻取用リールD、及び、リール連動機構Eを収容し得る収容空間spが形成された合成樹脂製のものである。ケースAは、左右の側壁1、2と、左右の側壁1、2の上端部間に配された上壁3と、左右の側壁1、2の後端部間に配された後壁4と、左右の側壁1、2の下端部間に配された下壁5とを備えている。
【0029】
ケースAの前側には、転写テープTを転写ヘッドBの先端押圧部Pに導出するとともに転写ヘッドBの先端押圧部Pを経由した転写テープTをケースAの内部に導入するための開口部Gが形成されている。
【0030】
この実施形態のケースAは、左の側壁1を有するとともに上壁3を構成する左上壁部31、後壁4を構成する左後壁部41、及び、下壁5を構成する左下壁部51を有した左ケース部材Jと、右の側壁2を有するとともに上壁3を構成する右上壁部32、後壁4を構成する右後壁部42、及び、下壁5を構成する右下壁部52を有した右ケース部材Kとによって構成されている。
【0031】
なお、図4では、転写具の内部構造を説明する便宜のために、右ケース部材Kを取り外した状態のものを示している。
【0032】
左の側壁1の内面には、リール連動機構Eを構成する繰出用リールCや繰出ギアMを回転可能に支持する第一の支軸j1が突設されている。
【0033】
左の側壁1の内面には、リール連動機構Eを構成する巻取用リールDや巻取ギアNを回転可能に支持する第二の支軸j2が突設されている。第二の支軸j2は、第一の支軸j1よりも前に配されている。
【0034】
左の側壁1の内面には、リール連動機構Eを構成する中間ギアLを回転可能に支持する第三の支軸j3が突設されている。第三の支軸j3は、第一の支軸j1と第二の支軸j2の間に配されている。第三の支軸j3の先端部には、中間ギアLを抜け止めするための爪状の抜止部j31が設けられている。
【0035】
左の側壁1の内面には、略円柱状をなし繰出用リールCから導出された転写テープTのテープ軌道をガイドする柱状をなす第一、第二のテープガイド部i1、i2が立設されている。
【0036】
ケースAには、転写ヘッドBを被覆し得る被覆位置(H)と転写ヘッドBから退避した退避位置(I)との間で回転可能に支持された保護カバーFが設けられている。
【0037】
<転写ヘッドB>
転写ヘッドBは、合成樹脂により一体的に形成されたフレーム体b1と、前端部に転写テープTを転写対象面に対して押し付ける先端押圧部Pが設けられた板状体b2とを備えたものである。
【0038】
フレーム体b1は、ケースAに取り付けられている。フレーム体b1は、前後方向及び上下方向に延びてなる壁状をなし左右に対をなして配設された左右の起立壁b11と、左右の起立壁b11間を繋ぐ左右方向に延びた横架部b12と、左右の起立壁b11の後端部から後方に連設されケースAと接続するケース接続部b13とを備えたものである。
【0039】
板状体b2は、フレーム体b1に支持されている。板状体b2は、前後方向に延びてなる略水平板状をなした金属製のものである。板状体b2の先端部には、転写テープTにおける基材tの他面側に接し転写テープTに添着された修正剤を転写対象面に対して押し付ける左右方向に延びた先端押圧部Pが形成されている。
【0040】
<繰出用リールC>
繰出用リールCは、リール連動機構Eを構成するものである。この実施形態では、繰出用リールCは、転写テープTが巻装される円筒部たる繰出リール本体部c1を有し当該繰出リール本体部c1の内側に弾性変位部Qを押圧し得る押圧部を構成する突出部c3が一体に設けられたものである。突出部c3は、繰出リール本体c1から内方に延出した鍔状をなしている。
【0041】
詳述すれば、繰出用リールCは、左右方向に延びてなり外周部に転写テープTが巻装された円筒状をなす繰出リール本体部c1と、繰出リール本体部c1の一側部すなわち片側に鍔状に設けられた側板部c2と、繰出リール本体部c1の内周面から内方すなわち回転中心方向に向かって鍔状に突出した突出部c3とを有してなるものである。
【0042】
突出部c3の内方端には、先端を約90°の角度により尖らせた点状接触部である尖り部分vが形成されている。図9に示すように、尖り部分vは、左右方向中央部よりも外側すなわち側板部c2側に偏った位置に形成されている。
【0043】
繰出用リールCは、繰出ギアMを介してケースAに突設された第一の支軸j1に回転可能に支持されている。
【0044】
<巻取用リールD>
巻取用リールDは、繰出用リールCから転写ヘッドBの先端押圧部Pを経由して送り出された転写テープTを巻き取るものである。巻取用リールDは、左右方向に延びてなり外周部に転写テープTを巻き取り得る概略円筒状の巻取リール本体部d1と、巻取リール本体部d1の左右両端部に設けられた左右の鍔部d2とを備えたものである。巻取用リールDは、ケースAに突設された第二の支軸j2に回転可能に支持されている。
【0045】
<リール連動機構E>
リール連動機構Eは、修正剤が保持された転写前の転写テープTが巻かれた繰出用リールCと、第一の支軸j1に回転可能に支持され繰出用リールCとともに回転し得る繰出ギアMと、第三の支軸j3に回転可能に支持され繰出ギアMと噛合する中間ギアLと、第二の支軸j2に回転可能に支持され中間ギアLと噛合する巻取ギアNと、当該巻取ギアNが側部に一体に設けられ修正剤が離脱した転写後の転写テープTを巻き取る巻取用リールDとを含んで構成されている。
【0046】
繰出ギアMは、中心部に第一の支軸j1が挿入される軸孔を有し円環状の外周縁に中間ギアLと噛合する複数の歯haが並設された繰出ギア本体部m1と、繰出ギア本体部m1の中央部から第一の支軸j1を囲うように立設され繰出用リールCの中心孔に挿入される繰出用リール支持軸m2とを備えたものである。繰出ギア本体部m1及び繰出用リール支持軸m2は合成樹脂により一体に形成されている。
【0047】
繰出用リール支持軸m2は、繰出ギア本体部m1から立ち上がる基端円筒部m21と、基端円筒部m21の先端部から内方に延設された内鍔部m22と、内鍔部m22の延出端から第一の支軸j1の軸心cnに沿って立ち上がる中央円筒部m23と、中央円筒部m23の先端部から片持ち状に延設された複数の弾性変位部Qを備えたものである。
【0048】
弾性変位部Qは、基端円筒部m21及び中央円筒部m23と同様に、第一の支軸j1における軸心cnに沿って延出したものである。弾性変位部Qは、当該第一の支軸j1における軸心cnを囲うように一定の間隔を空けて複数すなわち四本配設されている。換言すれば、四本の弾性変位部Qの間には、第一の支軸j1における軸心cnに沿って延びてなり弾性変位部Qの弾性変形を許容し得るスリットRが設けられている。弾性変位部Qの外面側には繰出用リールCに設けられた突出部c3により押圧される被押圧面Uが設けられている。
【0049】
弾性変位部Qの外面側には、先端側に設けられ山状に隆起した先端側隆起部分q1、及び、基端側に設けられ山状に隆起した基端側隆起部分q2が並び設けられている。先端側隆起部分q1と基端側隆起部分q2との間には凹み部分q3が形成されている。突出部c3における点状接触部たる尖り部分vが接する被押圧面Uは、先端側隆起部分q1における凹み部分q3を臨む領域に設けられている。
【0050】
なお、この実施形態では、繰出用リールCを繰出ギアMに対して位置決めする位置規制部Wが設けられている。位置規制部Wは、繰出リール本体部c1における一端縁たる左側端縁に設けられたリール側当接端面c11と、繰出ギア本体部m1における繰出用リール支持軸m2の近傍部に環状に設けられリール側当接端面c11が当接し得るギア側当接面m11とを備えている。
【0051】
巻取ギアNは、外周縁に中間ギアLと噛合する複数の歯haが設けられたものである。巻取ギアNは、巻取用リールDと軸心を一致させて当該巻取用リールDに一体に設けられている。
【0052】
<滑りクラッチS>
滑りクラッチSは、繰出用リールCと巻取用リールDとの間に掛け渡された転写テープTの緊張度合を適正化するために、転写テープTに一定以上の緊張が生じた場合に繰出ギアMと繰出用リールCとの相対回転を許容し得るものである。
【0053】
滑りクラッチSは、繰出ギアMに設けられ第一の支軸j1の軸心cnに対して交差する方向に弾性変位可能に構成された弾性変位部Qと、繰出用リールCに設けられ弾性変位部Qを押圧し得る突出部c3とを備えている。
【0054】
弾性変位部Qは、図9に示すように、第一の支軸j1における軸心cn方向の断面視において突出部c3が点状に接する被押圧面Uが設けられている。被押圧面Uは、共通軸の軸心cnに対して傾斜している。
【0055】
突出部c3の突出端には、第一の支軸j1における軸心cn方向の断面視において弾性変位部Qに形成された被押圧面Uに対して点状に接する点状接触部たる尖り部分vが設けられている。
【0056】
続いて、本実施形態における転写具における滑りクラッチSの作動について説明する。
【0057】
転写具は、転写ヘッドBの転写ヘッドBに裏当てされた転写テープTが転写対象面に当接しつつ移動させられると、繰出用リールCから転写テープTが順次繰り出されるようになっている。これと同時に、転写テープTの移動により生ずる繰出用リールCの回転力がリール連動機構Eにより巻取用リールDに伝達されることにより、転写テープTが巻取用リールDに巻き取られるようになっている。
【0058】
繰出用リールCの回転力は、滑りクラッチSを介して繰出ギアMに伝達される。さらに、繰出用リールCの回転力は、繰出ギアMに噛合した中間ギアLを介して巻取ギアNを一体に設けた巻取用リールDに伝達される。そして、回転力を得た巻取用リールDは、転写テープTを巻き取ることになる。
【0059】
繰出用リールCに巻回された転写テープTの残量が減少し、巻取用リールDに巻き取られた転写テープTの巻取量が増えていくと、繰出用リールCの回転数が増えていくとともに巻取用リールDの回転数も増えていく。この結果、巻取用リールDと繰出用リールCとの間の転写テープTの張力すなわち緊張度合は次第に増大していくことになる。また、繰出用リールCから繰出ギアMに伝達される回転力も転写テープTの張力と比例して増大していくことになる。
【0060】
この回転力が所定以上に増大すると、繰出用リールCと繰出ギアMとの間の摩擦力よりも繰出用リールCの回転力が大きくなり、繰出用リールCが繰出ギアMに対して回転方向に滑り動くことになる。すなわち、繰出用リールCが、繰出ギアMよりも回転方向に対して早く回転することになる。
【0061】
この実施形態では、繰出用リールCにおける突出部c3に形成された点状接触部たる尖り部分vが、繰出ギアMにおける弾性変位部Qの被押圧面Uに点状に接している。このため、滑りクラッチSにおける軸心cnに対して交差する方向に摩擦する接触領域を可及的に低減させることができるものとなっている。このため、成形品のばらつき等に起因して滑りクラッチSのトルク値に個体差が生じやすいという不具合が好適に抑制されたものとなっている。
【0062】
以上に詳述したように本実施形態に係る転写具は、繰出用リールCから繰り出された転写テープTを転写ヘッドBを経由させて巻取用リールDに巻き取らせるようにしたものである。
【0063】
そして、転写具は、繰出用リールCと前記巻取用リールDの回転を連動させるリール連動機構Eと、このリール連動機構Eを構成するものであり共通軸である第一の支軸j1周りに回転する第一回転部材である繰出ギアMと第二回転部材である繰出リールとの間に滑りを生じさせて転写テープTの緊張度合を適正化するための滑りクラッチSを備えたものである。
【0064】
滑りクラッチSが、繰出ギアMに設けられ第一の支軸j1の軸心cnに対して交差する方向に弾性変位可能に構成された弾性変位部Qと、繰出用リールCに設けられ弾性変位部Qを押圧し得る突出部c3とを備えたものである。
【0065】
そして、突出部c3に、軸心cn方向の断面視において弾性変位部Qに形成された被押圧面Uに対して点状に接する点状接触部たる尖り部分vが設けられている。
【0066】
すなわち、弾性変位部Qに、軸心cn方向の断面視において突出部c3が点状に接する被押圧面Uが設けられている。
【0067】
このため、成形品のばらつき等に起因して滑りクラッチSのトルク値に個体差が生じ易いという不具合が好適に抑制された転写具を提供することができるものとなる。
【0068】
この実施形態の点状接触部は、突出部c3の突出端に形成された尖り部分vである。このため、尖り部分vの成形により、製品毎の形態のばらつきが好適に抑制されたものとなる。また、点状接触部を尖り部分vとすることにより、滑りクラッチSにおける軸心cnに対して交差する方向に摩擦する接触領域を可及的に低減させることができるものとなっている。
【0069】
繰出用リールCを繰出ギアMに対して位置決めする位置規制部Wが設けられているため、繰出用リールCの尖り部分vが繰出ギアMの被押圧面Uに対して適切に接し得るものとなり、滑りクラッチSが安定的に機能し得るものとなっている。
【0070】
被押圧面Uが、共通軸である第一の支軸j1における軸心cnに対して傾斜しているものである。このため、位置規制部Wと協働して、繰出用リールCが繰出ギアMに対して好適に位置決めされるものとなっている。
【0071】
第一回転部材である繰出ギアMは、弾性変位部Qが一体に設けられたものであり、第二回転部材である繰出用リールCは、転写テープTが巻装される円筒部を有し当該円筒部の内側に突出部c3が一体に設けられたものである。
【0072】
このため、滑りクラッチSは、繰出ギアMと繰出用リールCによって限られた部品点数により好適に実現されたものとなっている。
【0073】
繰出ギアMが、円環状の外周縁に複数の歯haが並設された繰出ギア本体部m1と、共通軸の軸心cnに沿って延出し当該軸心cnを囲うように一定の間隔を空けて複数配設された弾性変位部Qとを備えたものである。
【0074】
このため、弾性変位部Qが、繰出ギアMに好適に配設されたものとなっている。
【0075】
リール連動機構Eが、繰出用リールCと、滑りクラッチSが介設され繰出用リールCとともに回転し得る繰出ギアMと、繰出ギアMに噛合する中間ギアLと、中間ギアLに噛合する巻取ギアNと、巻取ギアNとともに回転し得る巻取用リールDとを備えたものである。
【0076】
このため、繰出用リールCの回転力が巻取用リールDに対して好適に伝達されるものとなっている。
【0077】
転写テープTが、帯状をなす基材tと、基材tの片面に添着された修正剤とを備えてなる修正用テープである。
【0078】
このため、比較的軽い力によって転写の操作が行われるものであっても、所期の目的を達成し得るものとなっている。
【0079】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0080】
転写具は、転写テープに添着された転写物を転写対象物に転写するものであればよい。換言すれば、転写物は、本実施形態に示された薄膜状の修正剤に限られるものではなく、例えば、装飾用の装飾剤(装飾テープ)や糊であってもよい。
【0081】
共通軸周りに回転する第一回転部材と第二回転部材は、本実施形態に示されたものに限られるものではない。
【0082】
例えば、第一回転部材が繰出用リールであり、第二回転部材が繰出ギアであってもよい。
【0083】
また、第一回転部材及び第二回転部材の何れか一方が巻取ギアであり、他方が巻取用リールであってもよい。
【0084】
第一回転部材や第二回転部材は、共通軸周りに回転するギアとリールとの間に介在するギアやリールとは別体をなす部材、例えば、コア部材と称されるような筒状をなす部材であってもよい。
【0085】
押圧部は、弾性変位部を弾性変位可能に押圧し得るものであればよく、その形態は適宜のものを採用することができるものである。
【0086】
例えば、押圧部における弾性変位部と接する部分が、凹凸が殆ど無いフラットな面(円筒の内面を含む)により構成されたものであってもよいし、凹んだ形態をなしたものであってもよい。
【0087】
突出部は、上述した実施形態のように押圧部側に備えたものに限られるものではなく、例えば、弾性変位部側に設けられたものであってもよい。
【0088】
突出部の形状は、上述した実施形態のものに限られないのはもちろんのことである。
【0089】
被押圧面は、上述した実施形態のように弾性変位部側に設けられたものに限られるものではなく、例えば、押圧部側に設けられたものであってもよい。
【0090】
点状接触部は、被押圧面に対して点状に接し得る形態をなしたものであればよく、その具体的な形態は適宜のものに設定可能である。すなわち、点状接触部は、上述した実施形態に示すような尖り部分に限られるものではなく、接触端が丸く形成されているものであってもよい。
【0091】
位置規制部は、前記第二回転部材を前記第一回転部材に対して位置決めする構成であれば、どのようなものであってもよい。
【0092】
被押圧面は、共通軸の軸心に対して傾斜しているものでなくてもよい。
【0093】
転写ヘッドは、転写テープを転写対象面に押し付ける機能を発揮することができればよく、本実施形態に示されるものに限られるものではない。他の転写ヘッドとしては、先端部に転写ローラーを備えたものを挙げることができる。
【0094】
転写具は、転写テープが無くなった場合は以後使用できなくなるいわゆるディスポーザブルタイプのものには限定されるものではない。転写具は、転写物を保持した交換部品であるリフィルを使用したリフィル交換可能タイプのものであってもよい。
【0095】
リール連動機構は、繰出用リールと巻取用リールを連動させ得るものであれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、中間ギアは単数のものに限られるものではなく複数であってもよい。
【0096】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0097】
B…転写ヘッド
C…繰出用リール(第二回転部材)
D…巻取用リール
E…リール連動機構
M…繰出ギア(第一回転部材)
Q…弾性変位部
S…滑りクラッチ
T…転写テープ
c3…突出部
v…尖り部分(点状接触部)
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