(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068233
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム用塗剤
(51)【国際特許分類】
C09D 125/08 20060101AFI20230510BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230510BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
C09D125/08
B32B27/36
C09D201/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179116
(22)【出願日】2021-11-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】596000154
【氏名又は名称】中京油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 拓也
(72)【発明者】
【氏名】片岡 瞳
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 潤
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AK12A
4F100AK24A
4F100AK25A
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK51A
4F100AL01A
4F100BA02
4F100CA02A
4F100CC00A
4F100CC01A
4F100EH46A
4F100JN01
4J038CC021
4J038CG071
4J038KA03
4J038KA06
4J038MA07
4J038MA09
4J038NA02
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】ポリエステルフィルムを高温加熱した際の白化を防止するため、ポリエステルフィルムの表面へ塗布される新規な塗剤を提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムの少なくとも片面に形成され、ポリエステルフィルムの白化を防止する塗剤層を得るための塗剤であって、
スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体の誘導体、及びこれらの塩から選ばれる樹脂の1種以上を固形分比で20wt%以上含む塗剤。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に形成され、前記ポリエステルフィルムの白化を防止する塗剤層を得るための塗剤であって、
スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体の誘導体、及びこれらの塩から選ばれる樹脂の1種以上を固形分比で20wt%以上含む塗剤。
【請求項2】
前記塗剤はさらに、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル酸系樹脂から選ばれる樹脂を少なくとも1種以上を含む請求項1に記載の塗剤。
【請求項3】
前記塗剤はさらに、架橋剤を含む請求項1、2に記載の塗剤。
【請求項4】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に形成され、前記ポリエステルフィルムの白化を防止する塗剤層であって、
スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体の誘導体、及びこれらの塩から選ばれる樹脂の1種以上を固形分比で20wt%以上含む塗剤層。
【請求項5】
アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル酸系樹脂から選ばれる樹脂の少なくとも1種以上が更に含まれる請求項4に記載の塗剤層。
【請求項6】
架橋剤が更に含まれる請求項4、5に記載の塗剤層。
【請求項7】
前記塗剤層の厚みが0.01~0.60μmである、請求項4~6に記載の塗剤層。
【請求項8】
前記塗剤層は、これが積層されたポリエステルフィルムとともに、150℃×1時間の加熱処理をしたときのヘーズ変化量が1.0%以下である、請求項4~7のいずれかに記載の塗剤層。
【請求項9】
請求項1~3のいずれかに記載の前記塗剤を準備するステップと、
該塗剤をポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布するステップと、
該塗剤を乾燥するステップと、
を備える、ポリエステルフィルム用塗剤層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムに塗布することで、高温にさらされた後でも、ポリエステルフィルムからのオリゴマー(ポリエステルの低分子量成分、主にエステル環状三量体)の表面析出を抑制し、フィルム外観の白化を防止するポリエステルフィルム用塗剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、電気的特性などに優れ、さまざまな分野で使用されており、光学用フィルムとして利用される場合は、高透明性等の高い品質が求められている。
【0003】
近年では、ポリエステルフィルムの用途の多様化により、加工条件や使用環境の高温化が進んでいる。しかし、ポリエステルフィルムは高温の環境に長時間さらされると、フィルム中に含有されるオリゴマーがフィルム表面に析出・結晶化し、フィルム外観の白化による視認性の低下により透明性が失われる。
【0004】
このようなオリゴマーの析出を防止する方法として、ポリエステルフィルムへ所定の成分が配合された塗剤をコーティングする方法が提案されている。特許文献1及び2に開示の塗剤にはスチレン構造と(メタ)アクリル酸構造を有する樹脂層(スチレン-(メタ)アクリル酸樹脂)「以下、単にスチレン-アクリル酸系樹脂ということがある」成分が配合されている。
本願発明に関連する技術を開示する先行技術文献として、特許文献3~特許文献6を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6154872号公報
【特許文献2】特許第6023227号公報
【特許文献3】特開2014-218057号公報
【特許文献4】特許第5492781号公報
【特許文献5】特許第6388131号公報
【特許文献6】特許第4653913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らはオリゴマー析出防止能力に優れた成分について鋭意検討を重ねてきた。
【0007】
その結果、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体の誘導体、及びこれらの塩から選ばれる樹脂(以下、スチレン-マレイン酸系樹脂ということがある)成分を塗剤に配合した場合、得られる塗剤層に優れたオリゴマー析出防止能力があることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
よって、この発明の第1局面は次のように規定される。
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に形成され、前記ポリエステルフィルムの白化を防止する塗剤層を得るための塗剤であって、
スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体の誘導体、及びこれらの塩から選ばれる樹脂の1種以上を固形分比で20wt%以上含む塗剤。
【0009】
スチレン-マレイン酸系樹脂成分を配合した塗剤には、スチレン-アクリル酸系樹脂成分を配合したものに比べ、更に、下記の効果がある。
ポリエステルフィルムへ塗布する塗剤には、一般的に、他成分を配合して、乾燥後に得られる塗剤層がポリエステルフィルムに対して、もしくは塗剤層の上に設けられる別の層に対して、密着性を持たせる必要がある。また、塗工性を向上させたりブロッキング防止性を向上させたりする為に、種々の他成分(樹脂成分、無機成分)を添加する必要がある。
スチレン-アクリル酸系樹脂成分を配合した塗剤から得られる塗剤層は、実質的にスチレン-アクリル酸系樹脂成分のみからなるものとしたとき優れたオリゴマーの析出防止能力を発揮するが、これに他成分を追加配合した場合、オリゴマーの析出防止能力が著しく低減する。その結果、スチレン-アクリル酸系樹脂成分を配合した塗剤にはその用途が制限される。他成分の選択に自由度がないからである。
これに対し、スチレン-マレイン酸系樹脂成分を配合した塗剤から得られる塗剤層は、オリゴマー析出防止能力が高いために、これに各種の他成分を追加配合しても、オリゴマーの析出防止能力が低下することは殆ど見られなかった。
【0010】
この発明の第2局面は次のように規定される。
第1局面に規定の塗剤において、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル酸系樹脂から選ばれる樹脂を少なくとも1種以上が含まれる。
上記で規定した樹脂材料を塗剤へ適宜配合することにより、得られる塗剤層には、オリゴマー析出防止能力に加えて、基材への密着性、積層される保護層や機能層への接着性、耐ブロッキング性、耐擦傷性、耐溶剤性、耐候性などの機能を任意に付与できる。
他方、上記で規定した樹脂材料を、背景技術で説明したスチレン-アクリル酸系樹脂成分を配合した塗剤に含ませると、得られた塗剤層には十分なオリゴマー析出防止能力が得られなかった。
【0011】
第1又は第2局面で規定の塗剤により得られる塗剤層は、その厚さを0.01μm~0.60μmとすることが好ましい(第3局面)。この厚さは、塗剤に含まれる溶剤(水系、溶剤系)が揮発した後、即ち、乾燥後の塗剤層の厚さの値である。
塗剤層の厚さを0.01μm~0.60μmの範囲にすることで、その下地層となるポリエステルフィルムからのオリゴマー析出を防止する能力が確保され、塗剤層を備えたポリエステルフィルムを150℃×1時間で熱処理したときのヘーズ変化量を1.0%以下とすることができる(第4局面)。
【0012】
本発明によれば、塗剤層の厚さを0.01μm以上とすることで、オリゴマー析出防止能力が十分に発揮される。また、塗剤層の厚さを0.60μm以下とすることで、オリゴマー析出防止能力を確保しつつ、材料コストや塗工コストの増大を防止する。
【0013】
上記において、スチレン-無水マレイン酸共重合体とはスチレンと無水マレイン酸から成る共重合体であり、例えば下記式(1)で表されるものである。
【化1】
【0014】
スチレン-マレイン酸共重合体とはスチレンとマレイン酸から成る共重合体であり、無水マレイン酸ユニットの一部またはすべてが開環した構造であり、例えば下記式(2)で表されるものである。
【化2】
【0015】
スチレン-マレイン酸共重合体の誘導体は、例えば下記式(3)で表されるように、無水マレイン酸ユニットの一部またはすべてが開環した構造であり、アルコールによるハーフエステル化が挙げられる。ハーフエステル構造と反応率によって樹脂のガラス転移温度(Tg)を下げることができる。
【化3】
【0016】
式(3)中のRの例として、組成式CxHyOzで表される付加物を挙げるがこれに限定されない。組成式CxHyOzにおけるxは1~28であり、yは3~56であり、zは0~14である。
【0017】
水系の塗剤に配合する成分としてスチレン-マレイン酸系樹脂を用いる場合は、スチレン-マレイン酸共重合体やスチレン-マレイン酸共重合体の誘導体のカルボキシ基を塩の状態とする。これにより、スチレン-マレイン酸系樹脂成分に水溶性や水分散性が付与される。塩基の種類は特に限定されないが、揮発性の塩基を選択することで乾燥後の塗剤層に耐水性を付与することができる。
【0018】
スチレン-マレイン酸系樹脂成分の平均分子量はMw=3,000以上、Tgは40℃以上が好ましい。平均分子量及びガラス転移温度をかかる値以上とすることにより、塗剤層にオリゴマー析出防止能力を確保できる。
本発明のスチレン-マレイン酸系樹脂には、さらに他の重合性モノマーを共重合させたものでも良く、モノマーの種類によってTgなどの熱特性や他樹脂との相溶性を調整することができる。
【0019】
本発明のスチレン-マレイン酸系樹脂成分におけるスチレンユニットは、スチレン誘導体であってもよい。スチレン誘導体としては、スチレンのα位やフェニル基のオルト位、メタ位、パラ位に置換基が導入されているものが挙げられる。
【0020】
本発明のスチレン-マレイン酸系樹脂成分の好ましい配合量は、塗剤に含まれる固形分比で20wt%以上である。配合量が20wt%未満になると、ポリエステルフィルムの塗剤層に求められる厚さ(0.01~0.60μm)において十分なオリゴマー析出防止効果を得られなくなる。
【0021】
スチレン-マレイン酸系樹脂成分を配合した塗剤は、他成分(有機成分、無機成分)を併用してもオリゴマー析出防止能力を維持できる。
他成分として、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂を挙げることができ、これらの樹脂成分は有機溶剤または水を含む分散媒中に分散または溶解可能である。塗剤中におけるこれらの樹脂の状態は、ホモジナイズ等により分散された分散状態、エマルション状態、溶解状態でもよい。これらの樹脂成分を塗剤に配合させることで、塗剤層が積層されたポリエステルフィルムに、配合した樹脂成分に起因する、各種機能を付与できる。
【0022】
本発明の塗剤に配合できる他成分として、上記有機成分の他に、例えば、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。更には、スチレン-アクリル酸系樹脂の配合も可能である。
【0023】
本発明の塗剤は他成分として架橋剤を含んでもよく、架橋剤を含むことで高温加熱時の塗剤層の軟化を防ぎオリゴマーの析出をさらに抑制することができる。具体例としては、エポキシ系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、メラミン系、ブロックドイソシアネート系の架橋剤が挙げられる。スチレン-マレイン酸系樹脂を配合したときは、これがカルボキシ基を有するため、アミノ基や水酸基を有するポリマーも架橋剤として使用できる。
【0024】
さらに、オリゴマー析出防止能力を損なわない範囲で、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、スリップ剤、粒子、増粘剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、カップリング剤、酸化防止剤、染料、顔料等を他成分として配合可能である。
【0025】
本発明の塗剤はポリエステルフィルムの一方の面又は両方の面の一部または全面に塗布される。塗剤を乾燥し得られる塗剤層の厚さは、オリゴマー析出防止能力を担保する見地から、0.01~0.60μmとすることが好ましい。更には、塗剤層を0.60μm以下の厚さとすることでブロッキングの防止や、塗剤層の外観の悪化を防止できる。
塗剤層の厚さは、より好ましくは0.01~0.30μmとする。
【0026】
ポリエステルフィルムにおいて本発明の塗剤による塗剤層が設けられた面とは反対の面には、本発明の塗剤以外にも、既知のオリゴマー封止処理方法を実行したり、他のオリゴマー封止層を設けたりしてもよい。例えば、先行文献1~3に記載の方法や、ハードコート層などが挙げられる。
【0027】
本発明の塗剤が適用されるポリエステルフィルムは特に限定されないが、ジカルボン酸とグリコールの重縮合によって得られる汎用的なポリエステルでよい。ここに、ジカルボン酸やグリコールとしては脂肪族や芳香族のものであってよく、これらを2種以上ふくむ共重合ポリエステルであってもよい。
【0028】
ポリエステルフィルムは、本発明の要旨を超えない限り、単層構成でも2層以上の積層ポリエステルフィルムであってもよい。ポリエステルフィルムの厚みも特に限定されない。
【0029】
ポリエステルフィルムに対する塗剤の塗布方法も特に限定されず、オフラインコート法やインラインコート法等を採用できる。オフラインコート法の場合、延伸及びアニール処理されたポリエステルフィルムに、塗剤を塗布した後、乾燥して塗剤層を得る。
【0030】
インラインコート法の自由巾一軸延伸法、固定巾一軸延伸法、同時二軸延伸法の場合、延伸前のポリエステルフィルムに塗剤を塗布した後、乾燥して塗剤層を得る。その後、ポリエステルフィルムとともに延伸、アニール処理される。インラインコート法の逐次二軸延伸法の場合、一軸延伸されたポリエステルフィルムに塗剤を塗布した後、乾燥して塗剤層を得る。その後、ポリエステルフィルムとともに延伸、アニール処理される。一般的に延伸工程では70~120℃の熱をかけ、アニール処理では180~270℃の熱をかけて行われる。延伸とアニール処理を経ることで塗剤層とフィルムとの密着性が強固になる。
【0031】
フィルムに塗布液を塗布する方法としては、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、ナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、キスロールコート、キャストコート、スプレイコート、カーテンコート、カレンダコート、押出コート等の従来公知の塗布方法を用いることができる。
【0032】
本発明の塗剤より得られた塗剤層でコーティングされたポリエステルフィルムには、例えばタッチパネル用の場合、長時間、高温雰囲気下にさらされた後であっても、高度な透明性が要求される場合がある。
このような高度な透明性の要求に対応するには、150℃の熱処理前後におけるフィルムのヘーズ(HAZE)の変化量が1.0%未満、好ましくは0.7%以下、より好ましくは0.5%以下とする。ヘーズの変化量が1.0%を超える場合、長時間の高温雰囲気の環境に曝されたとき、オリゴマー析出によって視認性が悪化し、透明性が失われる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
フィルムヘーズの測定方法
試料フィルムをJIS-K-7136に準じ、日本電色工業株式会社製、ヘーズメーターNDH5000により、フィルムのヘーズを測定した。
【0034】
加熱処理によるフィルムヘーズ変化量(ΔHAZE)の評価方法
ポリエステルフィルムに塗剤層を設け試料に対し、上記の測定方法を実行して、ヘーズを測定し、その後、同試料を150℃×1時間熱処理した後に、同様にしてヘーズを測定した。加熱前後のヘーズの差を計算しフィルムヘーズ変化量とした。
【0035】
塗剤に使用した化合物は以下の通りである。
・スチレン-マレイン酸系樹脂
(IA)スチレン-無水マレイン酸共重合体:スチレン/無水マレイン酸=1.0/1.0(モル比)、Mw=5,500、Tg=155℃。
(IB)スチレン-マレイン酸共重合体:スチレン/マレイン酸=1.0/1.0(モル比)、アンモニウム塩、Mw=5,500、Tg=155℃。
(IC)スチレン-マレイン酸共重合体:スチレン/マレイン酸=3.0/1.0(モル比)、アンモニウム塩、Mw=9,500、Tg=125℃。
(ID)スチレン-マレイン酸ハーフエステル化共重合体:スチレン/マレイン酸=1.2/1.0(モル比)、ブタノールハーフエステル化率 99%、アンモニウム塩、Mw=12,000、Tg=78℃。
(IE)スチレン-マレイン酸ハーフエステル化共重合体:スチレン/マレイン酸=1.5/1.0(モル比)、ブトキシエタノールハーフエステル化率 80%、アンモニウム塩、Mw=7,000、Tg=64℃。
(IF)スチレン-マレイン酸ハーフエステル化共重合体:スチレン/マレイン酸=1.5/1.0(モル比)、ブトキシエタノールハーフエステル化率 65%、アンモニウム塩、Mw=7,000、Tg=49℃。
・スチレン-アクリル酸系樹脂
(IIA)スチレン-アクリル酸系樹脂:スチレン/アクリル酸=1.5/1.0(モル比)、アンモニウム塩、Tg=102℃
・無機粒子
(IIIA)シリカ粒子:平均粒径0.08μmの球状シリカ粒子。
・水分散性樹脂
(IIIB)ポリウレタン樹脂:Tg=41℃、軟化点=123℃、ヘキサメチレンジイソシアネート系/エステル系。
(IIIC)アクリル樹脂:Tg=47℃、アクリル酸/メタクリル酸エチル/アクリル酸イソブチル共重合体のアンモニウム塩。
(IIID)ポリエステル樹脂:Mw=16,000、Tg=47℃。
・架橋剤
(IVA)エポキシ化合物:ソルビトールポリグリシジルエーテル。
(IVB)オキサゾリン化合物:オキサゾリン基を有すアクリルポリマー(オキサゾリン基量=4.5mmol/g)。
(IVC)カルボジイミド化合物:カルボジイミド当量=590のカルボジイミド化合物。
(IVD)メラミン化合物:2,4,6-トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン。
【0036】
ポリエステルフィルムは東レ株式会社製のルミラー(登録商標) T-60(厚み125μm)を使用した。
【0037】
作成した各塗剤の塗剤組成を表1示す。ポリエステルフィルムに塗布する際は、塗剤を希釈して使用した。架橋剤はそれぞれ50%IPA水溶液で希釈し濃度1.0wt%の架橋剤希釈液を作製した。
表中のSMAはスチレン-マレイン酸系樹脂、St-Acはスチレン-アクリル酸系樹脂である。
【0038】
【0039】
【0040】
実施例1:塗剤1をメチルエチルケトン(MEK)で希釈し濃度0.5wt%の塗布液を作成した。これをポリエステルフィルムにバーコータで塗布、80℃で乾燥し、膜厚0.02μmの塗剤層を設けた。この操作をポリエステルフィルムの両面に施した。
【0041】
実施例2:塗剤2を50%IPA水溶液で希釈し濃度0.5wt%の塗布液を作成した。ポリエステルフィルムにバーコータで塗布、130℃で乾燥し、膜厚0.02μmの塗剤層を設けた。この操作をポリエステルフィルムの両面に施した。
【0042】
実施例3~6:表2に示す通り、塗剤を変更した以外は、実施例2と同様の操作を行った。
実施例7:塗剤2をポリエステルフィルムの片面に実施例2と同様の方法で設けた。塗剤層を設けた面とは反対側の面に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート95重量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5重量部、メチルイソブチルケトン150重量部の混合塗布液を乾燥膜厚が4.0μmになるように塗布し、300mJ/cm2の紫外線を照射しハードコート層を形成した。
【0043】
実施例8:表2に示す通り、スチレン-マレイン酸系樹脂とシリカ粒子を含む塗剤を使用し膜厚0.07μmの塗剤層を設けた以外は、実施例2と同様の操作を行った。
比較例1:ポリエステルフィルムに塗布層を設けなかった。
【0044】
表2の結果より、スチレン-マレイン酸系樹脂の単独成分では優れたオリゴマー封止能を発揮し、高温加熱時のフィルムの白化を防止した。スチレン-マレイン酸系樹脂は無機粒子と組み合わせた場合も、同様の効果が得られた。塗布層を設けなかった場合はフィルムが白化した。
【0045】
実施例9~12の結果を表3に示す。
【表3】
実施例9~12、比較例2、3:表3に示す樹脂を含む塗剤を50%IPA水溶液で希釈し濃度1.0wt%の塗布液を作成した。ポリエステルフィルムにバーコータで塗布、130℃で乾燥し、膜厚0.06μmの塗剤層を設けた。この操作をポリエステルフィルムの両面に施した。
【0046】
表3より、膜厚0.06μmに於いて、スチレン-マレイン酸系樹脂を固形分比で20~70wt%、それ以外の樹脂を30~80wt%含む場合でも、優れたオリゴマー析出防止能力を発揮しフィルムの白化を防止した。一方、スチレン-アクリル酸系樹脂とポリウレタン樹脂の組み合わせではフィルムが白化した。
【0047】
実施例13~21の結果を表4に示す。
【表4】
実施例13~21、比較例4~8:表4に示す樹脂を含む塗剤を使用し、膜厚0.11μmの塗剤層を設けた以外は、実施例9と同様の操作を行った。
【0048】
表4より、膜厚0.11μmに於いて、スチレン-マレイン酸系樹脂を固形分比で50~70wt%、その他樹脂を30~50wt%含む場合でも優れたオリゴマー封止性を発揮しフィルムの白化を防止した。一方、スチレン-アクリル酸系樹脂とその他の樹脂の組み合わせではフィルムが白化した。
【0049】
実施例22~31の結果を表5に示す。
【表5】
実施例22~31、比較例9~12:表5に示す樹脂を含む塗剤を50%IPA水溶液で希釈し濃度2.0wt%の塗布液を作成した。ポリエステルフィルムにバーコータで塗布、130℃で乾燥し、膜厚0.22μmの塗剤層を設けた。この操作をポリエステルフィルムの両面に施した。
【0050】
比較例13:塗剤38を50%IPA水溶液で希釈し濃度5.0wt%の塗布液を作成し、膜厚0.55μmの塗剤層を設けた以外は、実施例22と同様の操作を行った。
【0051】
表5より、膜厚0.22μmに於いて、スチレン-マレイン酸系樹脂を固形分比で20~70wt%、それ以外の樹脂を30~80wt%含む場合でも優れたオリゴマー封止性を発揮しフィルムの白化を防止した。一方、スチレン-アクリル酸系樹脂とその他樹脂の組み合わせではフィルムが白化した。
スチレン-マレイン酸系樹脂を固形分比で10wt%、ポリウレタン樹脂を90wt%含む場合は、膜厚0.55μmに於いてもオリゴマー析出によりフィルムが白化した。
【0052】
実施例32~35の結果を表6に示す。
【表6】
実施例32~35:濃度1.0wt%の塗剤13の希釈液100重量部に対し、濃度1.0wt%の架橋剤希釈液IVA~IVDを各20重量部添加し混合し、塗剤13+IVA~塗剤13+IVDを作製した。ポリエステルフィルムにバーコータで塗布、130℃で乾燥し、膜厚0.11μmの塗剤層を設けた。この操作をポリエステルフィルムの両面に施した後、130℃×15分間加熱した。
【0053】
表6より、膜厚0.11μmに於いて、実施例17の塗剤に種々の架橋剤を含むことで、白化をさらに抑制した。
架橋剤の添加量は、塗剤層中の架橋剤の比率が10~40%になるよう配合することで、白化抑制作用が安定する。