(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068239
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】免震システム
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20230510BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
E04H9/02 331E
F16F15/02 L
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179133
(22)【出願日】2021-11-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】515211935
【氏名又は名称】有限会社神明工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100180208
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 洋
(72)【発明者】
【氏名】北島 健晴
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AA05
2E139AB13
2E139AC19
2E139AC22
2E139CA24
2E139CB04
2E139CB05
2E139CC02
3J048AA07
3J048AC01
3J048BA24
3J048BE11
3J048BG04
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】従来の免震システムよりも単純な構成とし、低コストで木造戸建建築物のための免震システムを提供することである。
【解決手段】基礎コンクリート主要構成とする下部構造が、上部構造となる木造構造体を支える、木造戸建建築物において、基礎コンクリートの上部には、滑り支承構造が設けられてており、該滑り支承構造の上面が木造構造体下部の免震架台を接触支持する構成を採用し、前記接触支持に係わる部位間の静摩擦係数を調整し、予め設定した強さ以上の地震の場合に、前記支承構造の上を前記土台が滑り、相対的位置のズレを発生させることにより、地震エネルギーを吸収することにより免震させ、該免震によって発生した前記ズレを前記土台位置調整システムの動作による水平変位力によって戻す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に設けた基礎コンクリートと該基礎コンクリートに載せる木造構造体とを主要構成とする木造戸建建築物の免震システムであって、
a)前記基礎コンクリートの上部に着脱自在に取付けされて水平面を形成する高さ調整部と、該水平面に取付けされる滑り支承材と、から構成されて前記木造構造体の土台を接触支持する滑り支承構造と、
b)前記基礎コンクリートの側面に予め設けられた取付け部と、該取り付け部を支点として前記土台に当接して水平変位力を加える変位力伝達部と、を構成に含む土台位置調整システムと、
を含み、
前記接触支持に係わる部位間の静摩擦係数を調整し、予め設定した強さ以上の地震の場合に、前記支承構造の上を前記土台が滑り、相対的位置のズレを発生させることにより、地震エネルギーを吸収することにより免震させ、
該免震によって発生した前記ズレを前記土台位置調整システムの動作による水平変位力によって戻すことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記滑り支承材は、前記土台との間の静摩擦係数が0.18以上0.25以下となるような樹脂から形成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記樹脂は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記取付け部の位置は、前記基礎コンクリートの隅角を挟む外周面であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ズレの移動距離が予め設定した距離に達した場合に、前記基礎コンクリートの側面に当接する衝撃吸収部を有するストッパーを前記土台に設置して、前記予め設定した距離を超えるズレ移動を規制することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震システムに関し、特に木造戸建建築物の免震システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造戸建建築物は、地盤に設けた基礎コンクリートと木造構造体の土台とを、アンカーボルトによって、固定的に接続する方式が通常であった。
地震発生時において、地震のエネルギーが土台を通して木造構造体に伝わるため、地震対策は木造構造体の強度を高めることが通常であった。そのため、地震エネルギーが木造構造体に伝達し、屋内家具の転倒、それら転倒にともなう屋内の破損、屋内にいる人のケガ等が発生することが問題となっていた。
最近、地震対策として建物と基礎との間に免震装置を設置し、上部の木造構造体を地盤と切り離すことで地震のエネルギーを直接伝えない方式が提案されている。
しかしながら、このような免震装置はボールベアリング等を含む複雑な構成で高価なものであるため、個人宅の施工に普及させるには施工の難しさや高コストの問題があった。
【0003】
特許文献1には、建物に固定された土台と建物の基礎との間に設置される免震装置が記載されている。
この免震装置は 建物の前記土台に取り付けられた滑り支承と、滑り支承を支持するための支承滑動台と、前記支承滑動台を支持するために前記基礎に設置された装置固定盤と、前記支承滑動台と前記装置固定盤との間に介在された衝撃緩衝材と、を備える。
【0004】
ここで、前記滑り支承の接触面には潤滑性樹脂層が設けられ、前記支承滑動台の接触面には潤滑性樹脂層が設けられ、前記滑り支承の前記接触面が前記支承滑動台の前記接触面に接触支持され、前記装置固定盤には取付け凹部が設けられ、また前記支持滑動台には一対の移動規制部が設けられ、前記支承滑動台は、前記一対の移動規制部が前記装置固定盤の前記取付け凹部を跨ぐように前記装置固定盤の前記取付け凹部に取り付けられており、 前記支承滑動台の所定方向の往復移動は、前記一対の移動規制部が前記装置固定盤及び/又は前記基礎に当接することによって拘束され、前記支承滑動台の前記所定方向に対して垂直な方向の往復移動は、前記支承滑動台が前記装置固定盤の前記取付け凹部の壁面に当接することによって拘束され、 地震の際の竪揺れに対しては、前記衝撃緩衝材が上下方向に弾性変形して竪揺れを緩衝し、地震の際の横揺れに対しては、前記滑り支承が前記支承滑動台に対して相対的に移動して横揺れを緩衝することが示されている。
しかしながら、 荷重や地震力を均等に伝達させるための機構を備えた滑り支承を含む土台側に固定された上部装置と、上部装置との接触面を作る支承滑動台や弾性体から構成される衝撃緩衝材を備え基礎の凹部にアンカー材を介して緊結固定される免震装置固定盤を含む下部装置とからなる複雑な構成であった。
【0005】
また、横揺れを緩衝することによって生じた相対的移動を戻す機構については、免震装置(上部装置及び下部装置)を補完するために設けられた補助装置によって制御するものであるが、コイルばね等の自由伸縮材の弾性変形とその復元力に依存したものであり、土台と基礎との相対的移動によって生じたズレを所望の位置に戻すに十分な位置調整機能を備えたものではない。
さらには、自由伸縮材が地震エネルギーの一部を吸収し、戻りの動作でそのエネルギーを開放する方式であり、滑り支承が前記支承滑動台に対して相対的に移動することにより、地震エネルギーをすべて吸収する方式となっていないので、補助装置が開放するエネルギーによって地震による揺れを増幅してしまうおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明の課題は、想定内の揺れの地震については、地震エネルギーを基礎コンクリートと木造構造体の土台とが滑りによって相対的に移動するズレによって吸収することにより地震の揺れを除き、木造戸建建築物の破損や室内の家具の転倒などの危険を回避し、地震エネルギーの吸収によって生じた基礎コンクリートと木造構造体の土台とのズレを適切に戻す単純で安価な機構を備えた免震システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点の発明では、地盤に設けた基礎コンクリートと該基礎コンクリートに載せる木造構造体とを主要構成とする木造戸建建築物の免震システムであって、
a)前記基礎コンクリートの上部に着脱自在に取付けされて水平面を形成する高さ調整部と、該水平面に取付けされる滑り支承材と、から構成されて前記木造構造体の土台を接触支持する滑り支承構造と、
b)前記基礎コンクリートの側面に予め設けられた取付け部と、該取り付け部を支点として前記土台に当接して水平変位力を加える変位力伝達部と、を構成に含む土台位置調整システムと、
を含み、
前記接触支持に係わる部位間の静摩擦係数を調整し、予め設定した強さ以上の地震の場合に、前記支承構造の上を前記土台が滑り、相対的位置のズレを発生させることにより、地震エネルギーを吸収することにより免震させ、
該免震によって発生した前記ズレを前記土台位置調整システムの動作による水平変位力によって戻すことを特徴とするシステムが提供される。
【0009】
上記支承構造の上を前記土台の滑り始める強さを震度4とするように上記静摩擦係数を調整すると、屋内の家具等の物が転倒する恐れのある強さ以上の地震の場合に免震システムのズレ動作が起こり、地震エネルギーを吸収して、物の転倒による被害を防止できる。
【0010】
前記滑り支承材は、前記土台との間の静摩擦係数が0.18以上0.25以下の樹脂から形成されるとよい。上部構造の土台の下面についての特別な加工は不要であり、下部構造となる基礎コンクリートの上面の構成の加工のみにより土台を構成する木材との間の静摩擦係数を調整する方式であり、施工が容易である。
静摩擦係数が0.18以上であれば、気象庁の用語でいう強い台風による風速40m程度の風でも滑りを抑えることができる。また、本システムの免震対象として最大と想定する震度7程度の地震でも、配管、電線等の基礎コンクリートに固定された住宅関連設備を破損しないズレの範囲で免震できる。以下、このズレの範囲をズレ許容範囲という。
静摩擦係数0.25以下であれば、木造戸建建築物を損壊する恐れがある強い地震に際して滑りが発生し、地震エネルギーを吸収することができる。
前記樹脂は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンから選ばれる少なくとも1つである、としてもい。
【0011】
前記取付け部の位置は、前記基礎コンクリートの隅角を挟む外周面である、としてもよい。
隅角は、上記水平変位力を支えるに十分な強度を有するからである。また、他の隅角を回転支点として、容易に土台位置を水平移動させることができる作用点となる位置である。
【0012】
前記ズレの移動距離が予め設定した距離に達した場合に、前記基礎コンクリートの側面に当接する衝撃吸収部を有するストッパーを前記土台に設置して、前記予め設定した距離を超えるズレ移動を規制する、としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例1における木造戸建建築物の概略を示した正面図である。
【
図2】
図2は、基礎コンクリートに設けられた滑り支承構造及び土台位置調整用装置の取付け部の平面配置を示した平面図である。
【
図3】
図3は、基礎コンクリートに設けられた滑り支承構造の外観を示した概略斜視図である。
【
図4】
図4は、滑り支承構造の基礎コンクリートへの取付けを示した概略断面図である。
【
図6】
図6は、ストッパーとその取付け及び基礎コンクリートとの位置関係を示した透し図である。
【
図7】
図7は、衝撃吸収ゴムの当接面を正面とした、ストッパーの正面図と側面図である。
【
図8】
図8は、基礎コンクリートに設けられた取付け部と土台位置調整用装置から構成される土台位置調整システムを示した図である。
【
図9】
図9は、土台位置調整装置の取り付け、土台を元の位置に戻す戻し動作を示したイメージ図である。
【
図10】
図10は、地震発生における免震動作から地震後のズレ戻しまでの過程を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に示す実施例は、本願発明の好適な実施の例を示したものであり、これに限定して本願発明が解釈されるものではない。
【実施例0015】
図1は、実施例1における木造戸建建築物の概略を示した正面図である。
地盤1000に打設された基礎コンクリート1001を主要構成とする下部構造が、上部構造となる木造構造体1002を支えている。
ここで基礎コンクリート1001の上部には、滑り支承構造1003が設けられてており、該滑り支承構造の上面が木造構造体1002の下部の免震架台1004を接触支持している。免震架台1004は、土台1005と土台に取り付けられたストッパー1006から構成されており、上記接触支持される部分は土台1005の底面である。
【0016】
図2は、基礎コンクリート1001に設けられた滑り支承構造1003及び土台位置調整用装置の取付け部2001の平面配置を示した平面図である。
ここでは、木造構造体1002の隅角の隅角柱位置を接触支持する正方形タイプの滑り支承構造1003A、木造構造体1002の隅角間の外周位置を接触支持する長方形タイプの滑り支承構造1003Bと1003Cそして室内の内柱位置を接触支持する正方形タイプの滑り支承構造1003Dと長方形タイプのすべり支承構造1003Eが配置されている。
ここで正方形タイプとは、上面の平面形状が正方形である滑り支承構造を指す。また、長方形タイプとは、上面の平面形状が長方形である滑り支承構造を指す。
本発明における滑り支承構造の平面形状は、ここで示したタイプや面積に限定されるものではない。支承する上部構造における位置やその位置に掛かる荷重に応じて、円形、楕円等の平面形状の異なるタイプや、同じタイプでも面積の異なる平面形状の滑り支承構造が適宜採用されうる。
【0017】
また、基礎コンクリートの隅角を挟む外周には、土台位置調整用装置の取付け部2001が設けられている。ここでは、取付け部2001として、4か所の隅角を挟む両側の外周面に2カ所づつ合計16個の取付け用貫通孔が基礎コンクリートに設けられている。
これは、基礎工事において、予め取付け部2001となる塩化ビニルパイプを埋め込んでコンクリートを打設することにより、設けられる。
【0018】
図3は、基礎コンクリート1001に設けられた滑り支承構造の外観を示した概略斜視図である。
滑り支承構造1003Aにおいて、免震架台の隅角部位を接触支持する滑り支承材3001Aが高さ調整部材3002Aに固定されている。高さ調整部材3002Aは、コンクリート上面の水平レベルの高さを整える水平部位と位置固定のための垂直部位を有している。垂直部位は、基礎コンクリート1001の外周側面に予め高さ調整部材固定手段として埋め込まれたボルト雌ねじに対してボルト3003Aを締め込むことにより固定されている。
この滑り支承構造は、基礎コンクリートを形成するときに予め型枠内に上記雌ねじボルトを抜け防止加工した上でセットして、高さ調整部材3002Aをボルト3003Aにより固定した状態でコンクリートを型枠に流し込むことにより設けられる。高さ調整部材3002Aをコンクリートと接着せず、水平レベルを保つに十分な強度の金属を採用する。ボルト3003A及び後で説明する滑り支承材固定ボルトの着脱により、高さ調整部材3002A及び滑り支承材3001Aを自在に着脱して、部材交換等の修理や改善を容易にすることができる。
【0019】
滑り支承構造1003Bにおいて、免震架台の隅角間の部位を接触支持する滑り支承材3001Bが高さ調整部材3002Bに固定されている。高さ調整部材3002Bは、コンクリート上面の水平レベルの高さを整える水平部位と位置固定のための垂直部位を有している。垂直部位は、接触する基礎コンクリート1001の内周側面に予め高さ調整部材固定手段として埋め込まれたボルト雌ねじに対してボルト3003Bを締め込むことにより固定されている。
この滑り支承構造は、基礎コンクリートを形成するときに予め型枠内に上記雌ねじボルトを抜け防止加工した上でセットして、高さ調整部材3002Bをボルト3003Bにより固定した状態でコンクリートを型枠に流し込むことにより設けられる。高さ調整部材3002Bをコンクリートと接着せず、水平レベルを保つに十分な強度の金属を採用する。ボルト3003B及び後で説明する滑り支承材固定ボルトの着脱により、高さ調整部材3002B及び滑り支承材3001Bを自在に着脱して、部材交換等の修理や改善を容易にすることができる。
【0020】
滑り支承構造1003Cにおいて、免震架台の隅角間の部位を接触支持する滑り支承材3001Cが高さ調整部材3002Cに固定されている。滑り支承材3001Cは、滑り支承材3001Bと同一サイズのものを長手方向に2枚並べることにより、交換等におけるメンテナンス容易性の向上を図っている。
高さ調整部材3002Cは、コンクリート上面の水平レベルの高さを整える水平部位と位置固定のための垂直部位を有している。垂直部位は、接触する基礎コンクリート1001の内周側面に予め高さ調整部材固定手段として埋め込まれたボルト雌ねじに対してボルト3003Cを締め込むことにより固定されている。1003Bに比べて面積が大きくなるのでボルト及びボルト雌ねじの数を多くして固定強度を高めている。
この滑り支承構造は、基礎コンクリートを形成するときに予め型枠内に上記雌ねじボルトを抜け防止加工した上でセットして、高さ調整部材3002Cをボルト3003Cにより固定した状態でコンクリートを型枠に流し込むことにより設けられる。高さ調整部材3002Cをコンクリートと接着せず、水平レベルを保つに十分な強度の金属を採用する。ボルト3003C及び後で説明する滑り支承材固定ボルトの着脱により、高さ調整部材3002C及び滑り支承材3001Cを自在に着脱して、部材交換等の修理や改善を容易にすることができる。
【0021】
滑り支承構造1003Dにおいて、免震架台の内柱を支える部位を接触支持する滑り支承材3001Dが高さ調整部材3002Dに固定されている。滑り支承材3001D及び高さ調整部材3002Dは、基礎コンクリート1001の立ち上がり部分を挟むように対面する組から構成されている。
高さ調整部材3002Dは、コンクリート上面の水平レベルの高さを整える水平部位と位置固定のための垂直部位を有している。垂直部位は、基礎コンクリートの立ち上がり部分の相対する側面に予め高さ調整部材固定手段として埋め込まれたボルト雌ねじに対してボルト3003Dを締め込むことにより固定されている。
この滑り支承構造は、基礎コンクリートを形成するときに予め型枠内に上記雌ねじボルトを抜け防止加工した上でセットして、高さ調整部材3002Dをボルト3003Dにより固定した状態でコンクリートを型枠に流し込むことにより設けられる。高さ調整部材3002Dをコンクリートと接着せず、水平レベルを保つに十分な強度の金属を採用する。ボルト3003D及び後で説明する滑り支承材固定ボルトの着脱により、高さ調整部材3002D及び滑り支承材3001Dを自在に着脱して、部材交換等の修理や改善を容易にすることができる。
【0022】
滑り支承構造1003Eにおいて、免震架台の内柱を支える部位を接触支持する滑り支承材3001Eが高さ調整部材3002Eに固定されている。滑り支承材3001E及び高さ調整部材3002Eは、基礎コンクリート1001の立ち上がり部分を挟むように対面する組から構成されている。
滑り支承材3001Eは、複数に分割した滑り支承材を並べた構成とすることにより、交換等におけるメンテナンス容易性の向上を図っている。
高さ調整部材3002Eは、コンクリート上面の水平レベルの高さを整える水平部位と位置固定のための垂直部位を有している。垂直部位は、基礎コンクリートの立ち上がり部分の相対する側面に予め高さ調整部材固定手段として埋め込まれたボルト雌ねじに対してボルト3003Eを締め込むことにより固定されている。1003Dに比べて面積が大きくなるのでボルト及びボルト雌ねじの数を多くして固定強度を高めている。
この滑り支承構造は、基礎コンクリートを形成するときに予め型枠内に上記雌ねじボルトを抜け防止加工した上でセットして、高さ調整部材3002Dをボルト3003Dにより固定した状態でコンクリートを型枠に流し込むことにより設けられる。高さ調整部材3002Dをコンクリートと接着せず、水平レベルを保つに十分な強度の金属を採用する。ボルト3003D及び後で説明する滑り支承材固定ボルトの着脱により、高さ調整部材3002D及び滑り支承材3001Dを自在に着脱して、部材交換等の修理や改善を容易にすることができる。
【0023】
図4は、滑り支承構造の基礎コンクリートへの取付けを示した概略断面図である。
4001は滑り支承構造1003Aのいずれかボルト3003Aを含む垂直面で切った概略断面である。基礎コンクリート1001の上面には、水平面を形成する高さ調整部材3002Aの水平部位4004Aが積層されている。
高さ調整部材3002Aの垂直部位4005Aは、基礎コンクリート1001の側面に埋め込まれたボルト雌ねじ4006Aに対してボルト3003Aを締め込むことにより固定されている。水平部位4004Aの上面には、滑り支承材3001Aが滑り支承材固定ボルト4008Aによって固定されている。
基礎コンクリートの打設において、ボルト雌ねじ4006Aは、先端に突縁を形成する抜け防止加工4007Aが設けられ、予め型枠内の所定の位置に固定され、そのボルト雌ねじに対して高さ調整部材をボルト3003Aによって組み付けられた状態でコンクリートを型枠内に流し込むという工程を採用することにより、滑り支承構造1003Aの水平レベルと表面の均一性の精度を高め、静摩擦係数を調整することが容易になる。
【0024】
4002は滑り支承構造1003Bのいずれかボルト3003Bを含む垂直面で切った概略断面である。基礎コンクリート1001の上面には、水平面を形成しする高さ調整部材3002Bの水平部位4004Bが積層されている。
高さ調整部材3002Bの垂直部位4005Bは、基礎コンクリート1001の側面に埋め込まれたボルト雌ねじ4006Bに対してボルト3003Bを締め込むことにより固定されている。水平部位4004Bの上面には、滑り支承材3001Bが滑り支承材固定ボルト4008Bによって固定されている。
基礎コンクリートの打設において、ボルト雌ねじ4006Bは、先端に突縁を形成する抜け防止加工4007Bが設けられ、予め型枠内の所定の位置に固定され、そのボルト雌ねじに対して高さ調整部材をボルト3003Bによって組み付けた状態でコンクリートを型枠内に流し込むという工程を採用することにより、滑り支承構造1003Bの水平レベルと表面の均一性の精度を高め、静摩擦係数を調整することが容易になる。
滑り支承構造1003Cのいずれかボルト3003Cを含む垂直面で切った概略断面は、滑り支承構造1003Bと同様であるので省略する。
【0025】
4003は滑り支承構造1003Dのいずれかボルト3003Dを含む垂直面で切った概略断面である。基礎コンクリート1001の上面には、水平面を形成しする高さ調整部材3002Dの水平部位4004Dが積層されている。
高さ調整部材3002Dの垂直部位4005Dは、基礎コンクリート1001の側面に埋め込まれたボルト雌ねじ4006Dに対してボルト3003Dを締め込むことにより固定されている。水平部位4004Dの上面には、滑り支承材3001Dが滑り支承材固定ボルト4008Dによって固定されている。
基礎コンクリートの打設において、ボルト雌ねじ4006Dは、先端に突縁を形成する抜け防止加工4007Dが設けられ、予め型枠内の所定の位置に固定され、そのボルト雌ねじに対して高さ調整部材をボルト3003Dによって組み付けた状態でコンクリートを型枠内に流し込むという工程を採用することにより、滑り支承構造1003Dの水平レベルと表面の均一性の精度を高め、静摩擦係数を調整することが容易になる。
滑り支承構造1003Eのいずれかボルト3003Eを含む垂直面で切った概略断面は、滑り支承構造1003Dと同様であるので省略する。
【0026】
滑り支承材1003A、1003B、1003C、1003Dそして1003Eは、免震架台を構成する横木との間の静摩擦係数0.18以上0.25以下の樹脂から構成された平板である。
このような素材の滑り支承材を採用することにより、気象庁の基準で強い台風で想定される風速40メートル程度の風で動かず、強い地震であっても滑り支承構造上面の200mm程度のズレでそのエネルギーを吸収するように摩擦力を調整することができる。配管等の上部構造と下部構造と接続を要する住宅設備のズレ許容範囲は200mm程度であり、上記樹脂を採用することにより、そのズレ許容範囲に応じて摩擦力を調整することができる。以下、配管、電線等の基礎コンクリートに固定された住宅関連設備を破損しないズレの範囲を、ズレ許容範囲という。
ここで上記のような摩擦力の調整が可能な滑り支承材の素材として、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の樹脂が採用されうる。
【0027】
図5は、免震架台1004の平面図である。
免震架台1004は土台5001とストッパーとから構成されている。土台5001は、横木となる木材を組んで組み立てられたものであり、柱が立て付けられて、木造構造体1002の底部を構成する。破線の円で示した位置は、ストッパー設置位置5002を示している。
【0028】
図6は、ストッパーとその取付け及び基礎コンクリートとの位置関係を示した透し図である。ここでは、基礎コンクリートの断面とストッパーの断面との上下位置関係の説明のため前後関係を無視して同一面に描いている。
ストッパー6001は、土台5001のストッパー設置位置5002に固定部材6002で固定されている。ボルト6004によって固定部材に固定された衝撃吸収ゴム6003は、その当接面6005が基礎コンクリートの滑り支承構造6006の直下内側面6007から200mmの位置になるように調整されている。このように調整することにより200mmのズレ移動で地震エネルギーを吸収し切れない場合、ストッパーでズレ移動が規制される。
ここでは、当接面6005の位置を基礎コンクリートの内側面から200mmに調整したが、配管等の上部構造と下部構造と接続を要する住宅設備のズレ許容範囲に応じて適宜変更されうる。
【0029】
図7は、衝撃吸収ゴム6003の当接面6005を正面とした、ストッパー正面図と側面図である。7001は側面図であり、7002は正面図である。固定部材6002は、土台取付け部7003と衝撃吸収ゴム取付け部7004から構成される。
土台取付け部7003は、その間に土台を構成する横木を挟み込み固定する構造となっており、ボルト等でストッパー設置位置5002の横木に固定される。
正面
図7002で示すように複数のボルト6004によって、衝撃吸収ゴム6003が衝撃吸収ゴム取付け部7004に固定される。
【0030】
図8は、基礎コンクリート1001に設けられた取付け部2001と土台位置調整用装置から構成される土台位置調整システムを示した図である。
8001Aはピストンの土台に対する当接面を正面としたときの土台位置調整装置の側面を示したものであり、8001Bは正面図である。
土台位置調整装置8001A、8001Bは、変位力押さえ板8002、フック8003を有する固定アーム8004、固定台8005そして変位力伝達部8007を有する変位力発生部8006から構成される。
ここで採用した土台位置調整装置では、変位力発生部8006はジャッキ本体であり、変位力伝達部8007はジャッキのピストンであるが、本発明の土台位置調整装置として変位力を発生させる機構を適宜採用することが可能である。
土台位置調整装置は、ズレ発生後の土台1005を元の位置に戻すために、固定アーム8004を取付け部2001に取付けして使用される。
【0031】
図9は、土台位置調整装置の取り付け、土台を元の位置に戻す戻し動作を示したイメージ図である。
9001は、土台位置調整装置の取付け直後のイメージである。土台位置調整作業する者により、固定アーム8004が取付け部2001となる取付け用貫通孔に貫通させられて、孔の出口にフック8003が固定されている。変位力を伝える前のピストン8007は、ジャッキ本体内に引っ込んだ状態である。
9002は、戻し完了直後の土台位置調整装置のイメージである。ジャッキにより発生する変位力がピストン8007から土台1005に伝達され、土台1005の位置を調整して元の位置に戻すことができる。
隅角を挟む基礎コンクリート外周のうちズレによる突出のある側面にある取付け部に土台位置調整装置の固定アーム8004を取り付け、ピストンから土台に変位力を伝える。ピストンが当接した部位と異なる隅角を回転支点とする梃子作用の効いた変位力となるので、少ない力で大きな変位力を発生させることが可能であり、位置移動の微調整も容易である。
このように単純な構成の装置と予め基礎コンクリートに設けた取付け部から構成される土台位置調整システムを採用することによって、低いコストでズレ戻し機能を実現することが可能となる。
ここで取付け部2001となる取付け用貫通孔は、基礎コンクリート打設時において、塩化ビニル等の樹脂で成形したパイプを型枠内における取付け部の位置に固定した状態でコンクリートを流し込むことにより容易に設けることができる。
【0032】
図10は、地震発生における免震動作から地震後のズレ戻しまでの進行過程を示したフローチャートである。
地震発生ステップ10001は、地震が発生し、揺れが本システムを採用した木造戸建建築物に達する段階である。
上記摩擦力を超える変位力を発生させるほどに地震が強くない場合、10002に示すようにズレ動作なしのステップとなって、地震対応の免震動作は起こらない。地震が強い場合、ズレ動作ステップ10003となって、滑り支承構造によるズレ動作で地震エネルギーの吸収が起こる。
想定内の強さの揺れの場合、エネルギー吸収ステップ10004となって、ズレ移動で地震エネルギーが吸収されて、ズレ動作が停止する。設計想定を超えるズレ移動が発生した場合、ステップ10005に示すようにストッパーと基礎コンクリートとが当接することによって、ズレ動作が規制される。
ここで、許容範囲内のズレで吸収しきれなかった地震エネルギーはストッパーの衝撃吸収ゴムと基礎コンクリートとの衝突により吸収される。
ずれ戻しステップ10006において、ステップ10004もしくはステップ10005で地震エネルギーを吸収することによって生じたズレを、土台位置調整システムによって、元の位置に戻す。土台位置調整システムによる戻し動作は、先に説明した通りである。
【0033】
以上のような免震システムを採用することにより、想定内の強さの地震については、地震エネルギーを基礎コンクリートと木造構造体の土台とが滑りによって相対的に移動するズレによって吸収することにより地震の揺れを除くことができる。「除震」効果とでも呼ぶべき効果を発揮して、、木造戸建建築物の破損や室内の家具の転倒などの危険を回避することが可能になる。
また、想定を超えるズレ移動を発生させる地震に対しても基礎コンクリートとの固定部を持つ住宅設備等を破損するようなズレを規制することも可能になる。
さらに、地震エネルギーの吸収によって生じた基礎コンクリートと木造構造体の土台とのズレを適切に戻す機構も備えることができる。
これらの機能を備えた免震システムを従来の複雑な構成の免震システムよりも単純な構成として、安価に供給することが可能となる。