(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068286
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】出没式筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/10 20060101AFI20230510BHJP
B43K 24/18 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
B43K24/10
B43K24/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179212
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】細木 真百合
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA02
2C353HJ03
2C353MC02
(57)【要約】
【課題】 先口の内面を覆う被覆体がずれるのを防ぐ。
【解決手段】 前端側に先口13を有する軸筒10と、先口13よりも軟質の材料から形成され先口13の内面を覆う被覆体20と、先口13から出没するように軸筒10に収容されたリフィール30,40とを備え、先口13の内面と、被覆体20における前記内面との対向面とのうち、その一方に凸部13bを設け、他方には凸部13bに嵌り合う凹部21を設けた。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端側に先口を有する軸筒と、前記先口の内面を覆う被覆体と、前記先口から出没するように前記軸筒に収容されたリフィールとを備え、
前記先口の内面と、前記被覆体における前記内面との対向面とのうち、その一方に凸部を設け、他方には前記凸部に嵌り合う凹部を設けたことを特徴とする出没式筆記具。
【請求項2】
前記被覆体の前端側に、前記先口の前端の内縁部を覆う前端内縁被覆部が設けられ、突出状態の前記リフィールが、前記前端内縁被覆部に近接又は接触するようにしたことを特徴とする請求項1記載の出没式筆記具。
【請求項3】
前記前端内縁被覆部は、前記先口よりも前方へ突出していることを特徴とする請求項2記載の出没式筆記具。
【請求項4】
前記被覆体は、前記先口よりも軟質の材料から形成されていることを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の出没式筆記具。
【請求項5】
前記先口が金属材料から形成され、前記被覆体が合成樹脂材料から形成されていることを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の出没式筆記具。
【請求項6】
前記先口の内面には、前記凸部と、前記凸部よりも後側に間隔を置いた位置で縮径された段部とが設けられ、
前記被覆体は、前記凹部を前記凸部に嵌め合わせるとともに、後端側部分を前記段部に嵌め合わせていることを特徴とする請求項1~5何れか1項記載の出没式筆記具。
【請求項7】
前記凸部は、先細状の前記先口内面から軸筒軸方向に沿って後方へ延設された第一の面と、前記先口内面から軸筒径方向内側へ突出して前記第一の面の後端に接続された第二の面とを有することを特徴とする請求項6記載の出没式筆記具。
【請求項8】
前記被覆体は、前記凹部と前記後端側部分の間に、他の部分よりも肉厚の薄い薄肉部を有することを特徴とする請求項6又は7記載の出没式筆記具。
【請求項9】
前記先口に対し後方側から前記被覆体を挿入し、前記凸部に前記凹部を嵌め合わせるとともに前記被覆体の後端側部分を前記段部に嵌め合わせる工程を有することを特徴とする請求項6~8何れか1項記載の出没式筆記具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒に収容されるリフィールを、軸筒前端側の先口から出没するようにした出没式筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、軸筒内に単数又は複数のリフィールを備え、軸筒前端に取り付けた先口から前記リフィールの筆記先端部を出没可能にした出没式筆記具において、前記先口の内周面を被覆する樹脂被覆体を付設すると共に、前記樹脂被覆体を前記軸筒の内周面の前端近傍部位まで延設した出没式筆記具がある。
この出没式筆記具によれば、リフィールの筆記先端部が出没する際に先口の内周と干渉して筆記先端部が損傷したり、不快音が生じたりするのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、製造時や搬送時等の振動や、リフィールの当接等に起因して、先口に対し樹脂被覆体が移動しずれてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
前端側に先口を有する軸筒と、前記先口の内面を覆う被覆体と、前記先口から出没するように前記軸筒に収容されたリフィールとを備え、前記先口の内面と、前記被覆体における前記内面との対向面とのうち、その一方に凸部を設け、他方には前記凸部に嵌り合う凹部を設けたことを特徴とする出没式筆記具。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、先口の内面を覆う被覆体がずれるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る出没式筆記具の一例を示す側面図であり、要部を切欠して内部構造を示している。
【
図3】先口に被覆体を組み付ける前の状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、前端側に先口を有する軸筒と、前記先口の内面を覆う被覆体と、前記先口から出没するように前記軸筒に収容されたリフィールとを備え、前記先口の内面と、前記被覆体における前記内面との対向面とのうち、その一方に凸部を設け、他方には前記凸部に嵌り合う凹部を設けた(
図1~
図3参照)。
【0009】
第2の特徴として、前記被覆体の前端側に、前記先口の前端の内縁部を覆う前端内縁被覆部が設けられ、突出状態の前記リフィールが、前記前端内縁被覆部に近接又は接触するようにした(
図1及び
図2参照)。
【0010】
第3の特徴として、前記前端内縁被覆部は、前記先口よりも前方へ突出している(
図2参照)。
【0011】
第4特徴として、前記被覆体は、前記先口よりも軟質の材料から形成されている。
【0012】
第5特徴として、前記先口が金属材料から形成され、前記被覆体が合成樹脂材料から形成されている。
【0013】
第6の特徴として、前記先口の内面には、前記凸部と、前記凸部よりも後側に間隔を置いた位置で縮径された段部とが設けられ、前記被覆体は、前記凹部を前記凸部に嵌め合わせるとともに、後端側部分を前記段部に嵌め合わせている(
図2参照)。
【0014】
第7の特徴として、前記凸部は、先細状の前記先口内面から軸筒軸方向に沿って後方へ延設された第一の面と、前記先口内面から軸筒径方向内側へ突出して前記第一の面の後端に接続された第二の面とを有する(
図3参照)。
【0015】
第8の特徴として、前記被覆体は、前記凹部と前記後端側部分の間に、他の部分よりも肉厚の薄い薄肉部を有する(
図3参照)。
【0016】
第9の特徴として、前記先口に対し後方側から前記被覆体を挿入し、前記凸部に前記凹部を嵌め合わせるとともに前記被覆体の後端側部分を前記段部に嵌め合わせる工程を有する(
図3参照)。
【0017】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
本明細書中、軸筒軸方向とは軸筒の中心線の延びる方向を意味し、軸筒周方向とは軸筒中心線の周囲を回る方向を意味する。また、「前」とは、軸筒軸方向の一方側であってリフィールの前端部が突出する方向を意味し、「後」とは、前記一方側に対する逆方向側を意味する。
また、本明細書中、軸筒径方向とは軸筒の中心線に直交する軸筒の直径方向を意味する。そして、軸筒径方向外側とは軸筒径方向に沿って軸筒中心から離れる方向を意味し、軸筒径方向内側とは軸筒径方向に沿って軸筒中心に向かう方向を意味する。
【0018】
図1は、本発明に係る出没式筆記具の一例を示す。
この出没式筆記具1は、前端側に先口13を有する軸筒10と、先口13よりも軟質の材料から形成され先口13の内面を覆う被覆体20と、先口13から出没するように軸筒10に収容された複数のリフィール30,40とを備え、軸筒10の後端側で外部に露出する複数の操作部材51,52を選択的に前進させる操作により、選択された操作部材に対応するリフィール30(又は40)を前進させて、このリフィールの前端部を先口13から前方へ突出させる。
【0019】
軸筒10は、前軸11と、この前軸11の後端に接続されて後方へ延設された後軸12と、前軸11の前端に延設されて前方へ延設された先細状の先口13と、これら先口13、前軸11及び後軸12を内側から支持し一体化する長尺状の内筒14とから一体略筒状に構成される。
【0020】
なお、この軸筒10の他例としては、前軸11、後軸12、先口13、内筒14のうち、その一部又は全部を一体化した態様とすることが可能である。
また、軸筒10の他例としては、内筒14を省いて、前軸11、後軸12及び先口13を直接接続した態様とすることも可能である。
【0021】
先口13は、硬質金属材料(例えば、真鍮等)から先細筒状に形成される。
この先口13の内周面は、前方へ向かって徐々に縮径する凹曲面状に形成される。この内周面には、径方向内側へ突出する凸部13bと、凸部13bよりも後側で縮径されたに段部13cとが設けられる。
また、先口13の最先端部には、リフィール30(又は40)を出没するための開口13aが設けられる。
【0022】
凸部13bは、
図3に縦断面を示すように、先細状の先口13内面から軸筒軸方向に沿って後方へ延設された第一の面13b1と、先口13内面から軸筒径方向内側へ突出して第一の面13b1の後端に接続された第二の面13b2とを有し、先口13全周にわたる環状に設けられる。
【0023】
段部13cは、凸部13bから後方側に所定の間隔を置いた位置で、後方へ向かって縮径され、先口13の全周にわたる環状に設けられる。
先口13における段部13cよりも後側の内周面は、後軸12の内周面に連続する円筒状に形成される。
【0024】
被覆体20は、先口13の内周面に沿う略円錐台筒状の部材である。
この被覆体20は、先口13よりも軟質の材料(例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂材料)から形成される。
被覆体20の外面は、先口13内面に沿うように前方へ向かって徐々に縮径する凸曲面状に形成される。
【0025】
先口13の内面に対向する被覆体20の外面には、先口13の凸部13bに嵌り合う凹部21と、前端内縁被覆部22と、他の部分よりも肉厚の薄い薄肉部23とが設けられる。
【0026】
凹部21は、軸筒軸方向に沿って後方へ延設された第一の面21aと、第一の面21aの後端から径方向外側へ延設された第二の面21bとを有し、被覆体20の全周にわたる環状に形成される。
この凹部21は、第一の面21aと第二の面21bを、それぞれ、凸部13bの第一の面13b1と第二の面13b2に重ね合わせるようにして、凸部13bに嵌り合う。
【0027】
前端内縁被覆部22は、先口13前端の開口13aの内周面を覆う小径円筒状に形成される。この前端内縁被覆部22の最前端部は、先口13の最前端部よりも前方へ突出する。
この前端内縁被覆部22の内周面は、リフィール30(又は40)が、先口13から前方へ突出した際に、そのリフィール30(40)の前端側の外周面に対し近接又は接触する。
【0028】
また、薄肉部23は、凹部21よりも後側であって、被覆体20の最後端部よりも前側に位置する。この薄肉部23は、被覆体20の外周面を部分的に凹状に凹ませることで、被覆体20の他の部分よりも薄肉になった部分である。
この薄肉部23は、当該出没式筆記具1の組立作業時における被覆体20の変形を容易にする上、被覆体20の成形時にはゲートとしても機能する。
【0029】
複数のリフィールのうち、符号30で示すリフィールは、インク収容管の前端側に、ボールペンチップを接続してなるボールペン用リフィールである。
また、符号40で示すリフィールは、芯タンクの前端側に鉛芯繰り出し機構を接続したシャープペンシル用リフィールであり、前記鉛芯繰り出し機構の前端側を先口13から突出させる。
【0030】
ボールペン用のリフィール30の後端には、操作部材51が接続される。また、シャープペンシル用のリフィール40の後端には、クリップ機能付きの操作部材52が接続される。
これら操作部材51,52は、図示しない付勢部材(例えば、圧縮コイルスプリング)により後方へ付勢されており、選択的に前方へ押される操作により前進して、対応するリフィール30(又は40)を先口13前端から突出させ、この突出状態において、軸筒10内の図示しない係止部に係止される。
これらの構造には、周知の多機能出没式筆記具の構成を適用することが可能である。
【0031】
次に、当該出没式筆記具1の製造方法上の特徴について説明する。
出没式筆記具1の製造方法は、先口13に対し後方側から被覆体20を挿入し、先口13内面の凸部13bに、被覆体20外面の凹部21を嵌め合わせるとともに、被覆体20の後端側部分を段部13cに嵌め合わせる工程を有する。
この作業工程中、被覆体20は弾性的に撓み変形するようにして、凹部21を凸部13bに嵌め合わせるとともに、後端部を段部13cに嵌め合わせる、特に、本実施の形態の好ましい一例によれば、被覆体20の周壁に薄肉部23を有するため、前記撓み変形が容易であり、作業性が良好である。
【0032】
よって、上記構成の出没式筆記具1及びその製造方法によれば、被覆体20の前端側の凹部21を先口13に嵌め合わせるとともに、被覆体20の後端部を段部13cに嵌め合わせているため、製造時や搬送時等の振動や、リフィール30,40の当接等に起因して、先口13に対し被覆体20が前後方向へ移動しずれてしまうようなことを防ぐことができる。しかも、先口13に対し被覆体20を組み付ける際の作業性も良好である。
【0033】
また、先口13の先細状の内周面から前端の開口13aの内縁部にわたる範囲を、先口13よりも軟質の被覆体20により覆うようにしたため、リフィール30,40の前端側が、先口13内面や開口13aの内縁部に直接当接するのを防いで、その当接による不快音や振動等の発生を低減することができる。
【0034】
しかも、突出したリフィール30,40の外周面に、被覆体20の前端内縁被覆部22が近接又は接触するため、筆記中にリフィール30,40が径方向へばたつくのを抑制し、筆記感触を向上することができる。
【0035】
<変形例>
なお、上記実施態様によれば、先口13の内面に凸部13bを設け、被覆体20の対向面である外面に凸部13bに嵌り合う凹部21を設けたが、他例としては、この凹凸関係を逆にして、先口13の内面に凹部を設け、被覆体20の対向面である外面に該凹部に嵌り合う凸部を設けることも可能である。
【0036】
また、図示例の薄肉部23は、被覆体20の周方向において部分的に一つ設けられるが、薄肉部23の他例としては、被覆体20の全周にわたって設けられた態様や、被覆体20の外周面において適宜間隔を置いて複数設けられた態様等とすることが可能である。
【0037】
また、被覆体20の材質の他例としては、被覆体20よりも軟質の金属材料や、ゴム系材料等から形成することも可能である。
【0038】
また、上記実施態様では、特に好ましい態様として、被覆体20を先口13よりも軟質の材料から形成したが、他例としては、被覆体20を先口13よりも硬質の材料から形成することも可能である。
この構成においても、先口13に対し被覆体20がずれるのを防ぐことができる。また、リフィール30(又は40)が出没する際の干渉音の音質を変えることが可能である。
【0039】
本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:出没式筆記具
10:軸筒
13:先口
13a:開口
13b:凸部
13c:段部
20:被覆体
21:凹部
22:前端内縁被覆部
23:薄肉部
30,40:リフィール