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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068310
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】熱電モジュールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/17 20230101AFI20230510BHJP
   H10N 10/01 20230101ALI20230510BHJP
【FI】
H01L35/32 A
H01L35/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179279
(22)【出願日】2021-11-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム/汎用普及に資する長期安定小型熱電電池の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(71)【出願人】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】多田 智紀
(72)【発明者】
【氏名】鵜殿 治彦
(57)【要約】
【課題】ダイシングされた熱電素子を1つずつ搬送する必要がなく、熱電素子に対して効率的に熱を伝搬可能な熱電モジュールおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】両面に電極パターンを有する第1多層基板および第2多層基板と、隣接する2列に配置されたn型熱電素子からなるn型素子群と、n型素子群と並列に、かつ、隣接する2列に配置されたp型熱電素子からなるp型素子群と、を備え、n型素子群およびp型素子群は、第1多層基板の第1おもて面電極パターンと第2多層基板の第2おもて面電極パターンとの間に配置され、第1多層基板および第2多層基板の両面の電極パターンは、隣接するn型熱電素子とp型熱電素子とで形成される隣接Π型構造素子が順に直列に接続され、離間するn型熱電素子とp型熱電素子とで形成される離間Π型構造素子が順に直列に接続されるように形成された熱電モジュール。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
おもて面および裏面のそれぞれに第1おもて面電極パターン、第1裏面電極パターンを有する第1多層基板と、
おもて面および裏面のそれぞれに第2おもて面電極パターン、第2裏面電極パターンを有する第2多層基板と、
隣接する2列に配置された複数のn型熱電素子で構成されたn型素子群と、
前記n型素子群と並列に配置され、隣接する2列に配置された複数のp型熱電素子で構成されたp型素子群と、を備え、
前記n型素子群および前記p型素子群は、前記第1多層基板の前記第1おもて面電極パターンと前記第2多層基板の前記第2おもて面電極パターンとの間に配置され、
前記第1おもて面電極パターン、前記第1裏面電極パターン、前記第2おもて面電極パターン、および、前記第2裏面電極パターンは、隣接するn型熱電素子とp型熱電素子とで形成される隣接Π型構造素子が順に直列に接続され、かつ、離間するn型熱電素子とp型熱電素子とで形成される離間Π型構造素子が順に直列に接続されるように形成されている、熱電モジュール。
【請求項2】
前記第1おもて面電極パターン、前記第1裏面電極パターン、前記第2おもて面電極パターン、および、前記第2裏面電極パターンは、前記隣接Π型構造素子が順に直列に接続された隣接Π型構造素子群と、前記離間Π型構造素子が順に直列に接続された離間Π型構造素子群とが直列に接続されるように形成されている、請求項1に記載の熱電モジュール。
【請求項3】
前記第2おもて面電極パターンは、前記隣接Π型構造素子を構成するn型熱電素子とp型熱電素子とが直列に接続する複数の横長電極と、前記離間Π型構造素子を構成するn型熱電素子およびp型熱電素子が個々に接続する複数の単独電極とを有する、請求項1又は請求項2に記載の熱電モジュール。
【請求項4】
前記第2裏面電極パターンは、前記離間Π型構造素子を構成するn型熱電素子とp型熱電素子とが直列に接続する複数の帯状電極を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱電モジュール。
【請求項5】
前記第1おもて面電極パターンは、隣り合う前記隣接Π型構造素子の極性が異なる熱電素子同士が直列に接続する複数の隣接階段状電極と、前記離間Π型構造素子を構成するn型熱電素子およびp型熱電素子が個々に接続する複数の単独電極とを有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱電モジュール。
【請求項6】
前記第1裏面電極パターンは、隣り合う前記離間Π型構造素子の極性が異なる熱電素子同士が直列に接続する複数の離間階段状電極と、を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱電モジュール。
【請求項7】
前記n型素子群および前記p型素子群をそれぞれ、複数備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の熱電モジュール。
【請求項8】
n型熱電材料およびp型熱電材料をn型素子群およびp型素子群に対応する大きさにダイシングし、n型熱電材料ブロックおよびp型熱電材料ブロックを形成する第1ダイシング工程と、
前記n型熱電材料ブロックおよび前記p型熱電材料ブロックを、両面に電極パターンを有する第1多層基板の第1おもて面電極パターン上に配置し、前記第1おもて面電極パターンと接合する第1接合工程と、
前記n型熱電材料ブロックと、前記p型熱電材料ブロックと、を、ダイシングし、隣接する2列に配置された複数のn型熱電素子からなるn型素子群と、隣接する2列に配置された複数のp型熱電素子からなるp型素子群と、を形成する第2ダイシング工程と、
両面に電極パターンを有する第2多層基板の第2おもて面電極パターンを、前記第1おもて面電極パターンとともに、前記n型素子群および前記p型素子群を挟むように配置し、前記n型素子群および前記p型素子群のそれぞれの前記n型熱電素子と前記p型熱電素子とを前記第2おもて面電極パターンと接合する、第2接合工程と、を備え、
隣接するn型熱電素子とp型熱電素子とで形成される隣接Π型構造素子が順に直列に接続され、かつ、離間するn型熱電素子とp型熱電素子で形成される離間Π型構造素子が順に直列に接続されるように形成する、熱電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温度化対策となる省エネルギー社会を実現するため、自動車や工場から排出されている200~400℃の廃熱を有効利用する研究開発が盛んになっている。熱電変換は、ゼーベック効果を利用した熱エネルギーから電気エネルギーへの直接変換、又は、ペルチェ効果を利用した電気エネルギーから熱エネルギーへの直接変換を行う技術である。例えば、熱電素子に温度差を与えると、ゼーベック効果による熱起電力を発生させることができるため、熱電変換は、廃熱からの発電を可能とする技術として注目されている。
【0003】
熱電変換を行う熱電素子としては、p型熱電素子とn型熱電素子との各上下の面が電極層に接続された熱電素子が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、複数の熱電素子が備えられた熱電モジュールとして、同じ形の矩形状の電極層が基板上の片側に規則的に並び、p型熱電素子とn型熱電素子が、交互に設けられた構成が開示されている。
【0004】
また、p型熱電素子とn型熱電素子とが交互に電気的に直列に接続された回路部を備えた複数の熱電変換部が同一基板上に設けられ、少なくとも2つの熱電変換部の回路部が交差するような配置の熱電変換モジュールが開示されている(特許文献2)。特許文献2では、基板の内部にも電極が配置され、絶縁材料で多層基板(プリント基板)を用いてもよいことが開示されている。特許文献2においても、p型熱電素子とn型熱電素子とは、基板上に交互に設けられた構成が開示されている。
【0005】
内部に電極を有する多層配線基板を用いることで、複雑な回路設計に対応することが可能であると開示されている(特許文献3)。特許文献3では、並列回路と直列回路とを一つの熱電モジュールに組み込むため、内部配線パターンを含む多層配線パターンを備える多層配線基板を用いている。具体的には、特許文献3では、P型熱電変換素子およびN型熱電変換素子に個々に接続する複数の表面電極と、複数の熱電変換ユニットを所定の回路パターンに従って接続するための多層の内部配線パターンを有すると開示されている。特許文献3にも、交互にP型熱電変換素子とN型熱電変換素子とが、基板上に交互に設けられた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-274577号公報
【特許文献2】特開2003-347604号公報
【特許文献3】特許第5125119号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3のような、p型熱電素子とn型熱電素子が、交互に設けられた熱電モジュールを製造するには、ダイシングされたp型熱電素子およびn型熱電素子を、搬送用ロボットなどを用いて1つずつ基板に配置して量産する必要がある。
【0008】
従って、特許文献1~3に開示された方法では、p型熱電素子およびn型熱電素子を配置する工程が煩雑であり、また、搬送用ロボットへの投資が必要であるため、製造コストが高い。
【0009】
また、多層基板は異なる層の配線パターンの間に熱抵抗の大きい絶縁層が設けられており、特許文献2,3のような、内部に配線パターンを有する多層基板を用いる方法では、2層以上の絶縁層が必要となり、p型熱電素子およびn型熱電素子に対して、効率よく熱を伝えられない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされた発明であり、p型熱電素子およびn型熱電素子を配置する工程が簡便であり、且つダイシングされたp型熱電素子やn型熱電素子を1つずつ搬送するための搬送用ロボットへの投資が不要であり、熱電素子に対して効率よく熱を伝えることが可能な熱電モジュールおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係る熱電モジュールは、おもて面および裏面のそれぞれに第1おもて面電極パターン、第1裏面電極パターンを有する第1多層基板と、おもて面および裏面のそれぞれに第2おもて面電極パターン、第2裏面電極パターンを有する第2多層基板と、隣接する2列に配置された複数のn型熱電素子で構成されたn型素子群と、前記n型素子群と並列に配置され、隣接する2列に配置された複数のp型熱電素子で構成されたp型素子群と、を備え、前記n型素子群および前記p型素子群は、前記第1多層基板の前記第1おもて面電極パターンと前記第2多層基板の前記第2おもて面電極パターンとの間に配置され、前記第1おもて面電極パターン、前記第1裏面電極パターン、前記第2おもて面電極パターン、および、前記第2裏面電極パターンは、隣接するn型熱電素子とp型熱電素子とで形成される隣接Π型構造素子が順に直列に接続され、かつ、離間するn型熱電素子とp型熱電素子とで形成される離間Π型構造素子が順に直列に接続されるように形成されている。
【0012】
本発明に係る熱電モジュールの製造方法は、n型熱電材料およびp型熱電材料をn型素子群およびp型素子群に対応する大きさにダイシングし、n型熱電材料ブロックおよびp型熱電材料ブロックを形成する第1ダイシング工程と、前記n型熱電材料ブロックおよび前記p型熱電材料ブロックを、おもて面および裏面のそれぞれに第1おもて面電極パターン、第1裏面電極パターンを有する第1多層基板上に配置し、前記第1おもて面電極パターンと接合する第1接合工程と、前記n型熱電材料ブロックと、前記p型熱電材料ブロックと、を、ダイシングし、隣接する2列に配置された複数のn型熱電素子からなるn型素子群と、隣接する2列に配置された複数のp型熱電素子からなるp型素子群と、を形成する第2ダイシング工程と、おもて面および裏面のそれぞれに第2おもて面電極パターン、第2裏面電極パターンを有する第2多層基板を、前記第1おもて面電極パターンと前記第2おもて面電極パターンとの間に、前記n型素子群および前記p型素子群を挟むように配置し、前記n型素子群および前記p型素子群のそれぞれの前記n型熱電素子と前記p型熱電素子とを前記第2おもて面電極パターンと接合する、第2接合工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、p型熱電素子およびn型熱電素子を配置する工程が簡便であり、且つダイシングされたp型熱電素子やn型熱電素子を1つずつ搬送するための搬送用ロボットへの投資が不要であり、熱電素子に対して効率よく熱を伝えることが可能な熱電モジュールおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る熱電モジュールの斜視図である。
図2A図1の熱電モジュールが備える第1多層基板の第1おもて面電極パターンを示す平面図である。
図2B図1の熱電モジュールが備える第1多層基板の第1裏面電極パターンを示す平面図である。
図3A図1の熱電モジュールの第2多層基板の第2おもて面電極パターンを示す平面図である。
図3B図1の熱電モジュールの第2多層基板の第2裏面電極パターンを示す平面図である。
図4】隣接Π型構造素子の断面図である。
図5】離間Π型構造素子の構造および接続の仕方を説明するための図である。
図6A図1の変形例に係る熱電モジュールの第1多層基板の第1おもて面電極パターンを示す平面図である。
図6B図1の変形例に係る熱電モジュールの第1多層基板の第1裏面電極パターンを示す平面図である。
図7A図1の変形例に係る熱電モジュールの第2多層基板の第2おもて面電極パターンを示す平面図である。
図7B図1の変形例に係る熱電モジュールの第2多層基板の第2裏面電極パターンを示す平面図である。
図8図1の変形例に係る熱電モジュールのn型熱電素子およびp型熱電素子の配置を説明するための図である。
図9A図8の熱電モジュールが備える第1多層基板の第1おもて面電極パターンを示す平面図である。
図9B図8の熱電モジュールが備える第1多層基板の第1裏面電極パターンを示す平面図である。
図10A図8の熱電モジュールが備える第2多層基板の第2おもて面電極パターンを示す平面図である。
図10B図8の熱電モジュールが備える第2多層基板の第2裏面電極パターンを示す平面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る熱電モジュールの製造方法を説明するための図であり、第1ダイシング工程の様子を示す図である。
図12】本発明の一実施形態に係る熱電モジュールの製造方法を説明するための図であり、第1接合工程の様子を示す図である。
図13】本発明の一実施形態に係る熱電モジュールの製造方法を説明するための図であり、第2ダイシング工程の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る熱電モジュール100の斜視図である。
熱電モジュール100は、おもて面30aおよび裏面30bのそれぞれに第1おもて面電極パターン50A、第1裏面電極パターン50Bを有する第1多層基板30と、おもて面40aおよび裏面40bのそれぞれに第2おもて面電極パターン60A、第2裏面電極パターン60Bを有する第2多層基板40と、隣接する2列(20a,20b)に配置された複数のn型熱電素子で構成されたn型素子群20と、n型素子群20と並列に配置され、隣接する2列(10a,10b)に配置された複数のp型熱電素子で構成されたp型素子群10と、を備え、n型素子群20およびp型素子群10は、第1多層基板30の第1おもて面電極パターン50Aと第2多層基板40の第2おもて面電極パターン60Aとの間に配置され、第1おもて面電極パターン50A、第1裏面電極パターン50B、第2おもて面電極パターン60A、および、第2裏面電極パターン60Bは、隣接するn型熱電素子とp型熱電素子とで形成される隣接Π型構造素子が順に直列に接続され、かつ、離間するn型熱電素子とp型熱電素子とで形成される離間Π型構造素子が順に直列に接続されるように形成されている。
【0017】
熱電モジュール100において、p型素子群10は、例えば第1おもて面電極パターン50Aのうち、第1部分51と重なるように配置されている。n型素子群20は、例えば第2おもて面電極パターン50Aのうち、第1部分51と並列な部分である第2部分52と重なるように配置されている。このように、熱電モジュール100において、p型素子群10およびn型素子群20は、隣接しており、並列に配置されている。
【0018】
隣接する2列に配置されたp型素子群10に含まれるp型熱電素子のうち、n型素子群20と離間している列(外側列)に配置されているp型熱電素子を総称して外側p型素子列10aと呼称し、n型素子群20と隣接している列(内側列)に配置されているp型熱電素子を総称して内側p型素子列10bと呼称する。
【0019】
隣接する2列に配置されたn型素子群20に含まれるn型熱電素子のうち、p型素子群10と離間している列(外側列)に配置されているn型熱電素子を総称して外側n型素子列20aと呼称し、p型素子群10と隣接している列(内側列)に配置されているn型熱電素子を総称して内側n型素子列20bと呼称する。
【0020】
詳細を後述するが、内側p型素子列10bに含まれるp型熱電素子と、内側n型素子列20bに含まれるn型熱電素子とは、第1おもて面電極パターン50Aおよび第2おもて面電極パターン60Aとともに隣接Π型構造素子を形成する。外側p型素子列10aに含まれるp型熱電素子と、外側n型素子列20aに含まれるn型熱電素子とは、第1おもて面電極パターン50A、第1裏面電極パターン50B、第2おもて面電極パターン60Aおよび第2裏面電極パターン60Bとともに離間Π型構造素子を形成する。
【0021】
熱電モジュール100において、第1おもて面電極パターン50A、第1裏面電極パターン50B、p型素子群10、n型素子群20,第2おもて面電極パターン60Aおよび第2裏面電極パターン60Bは、電気的に直列に接続されている。第1おもて面電極パターン50A、第1裏面電極パターン50B、第2おもて面電極パターン60A、および、第2裏面電極パターン60Bは、隣接Π型構造素子が順に直列に接続された隣接Π型構造素子群と、離間Π型構造素子が順に直列に接続された離間Π型構造素子群とが直列に接続されるように形成されていることが好ましい。熱電モジュール100は、例えば第1裏面電極パターン50Bを高温にし、第2裏面電極パターン60Bを低温にすると、ゼーベック効果により、第1おもて面電極パターン50Aのスタート部Stが高電位となり、終端部Enが低電位になる。逆に、熱電モジュール100の第1裏面電極パターン50Bを低温にし、第2裏面電極パターン60Bを高温にすると、第1おもて面電極パターン50Aのスタート部Stが低電位となり、終端部Enが高電位になる。
【0022】
図2A図2Bは、図1の熱電モジュール100が備える第1多層基板30の平面図であり、図2Aは第1おもて面電極パターン50Aを示し、図2Bは第1裏面電極パターン50Bを示す。図3は、図1の熱電モジュール100が備える第2多層基板40の平面図であり、図3Aは第2おもて面電極パターン60Aを示し、図3Bは第2裏面電極パターン60Bを示す。熱電モジュール100において、第1おもて面電極パターン50Aおよび第2おもて面電極パターン60Aは対向するように配置され、第2裏面電極パターン60および第2裏面電極パターン60Bは、積層方向外側を向くように配置されている。
【0023】
第1多層基板30および第2多層基板40は、それぞれ少なくとも一部でおもて面の電極パターンと裏面の電極パターンとが接続された多層基板である。図2A図3Bに示す平面図において、一点破線の円で示す部分は、例えばスルーホールHが設けられる部分であり、当該部分では、おもて面電極パターンと裏面電極パターンとが積層方向につながっている。すなわち、第1多層基板30および第2多層基板40は、積層方向から平面視してスルーホールHと重なる位置において、開口となっており、当該部分におもて面電極パターンと裏面電極パターンとをつなぐ導電材料が設けられている。
【0024】
図2および図3では、電気回路上、スタート部Stに近い側からの順序が後になるほど大きい数字を含む参照符号が用いられている。すなわち、熱電モジュール100において、電気回路上、電極E1、E2,E3,・・・E33という順序でスタート部Stに近い。また、電気回路上、部分P11,P12,P13,・・・P87という順序でスタート部Stに近い。部分P11,P12,P13および部分P14は、電気回路上最もスタート部Stに近い側のΠ型熱電素子の一部である。また、部分P21,P22,P23および部分P24は、電気回路上2番目にスタート部Stに近い側のΠ型熱電素子の一部である。
【0025】
第1おもて面電極パターン50Aは、例えば隣り合う隣接Π型構造素子の極性が異なる熱電素子同士が直列に接続する複数の隣接階段状電極(E3,E5,E7)と、離間Π型構造素子を構成するn型熱電素子およびp型熱電素子が個々に接続する複数の単独電極(E11,E15,E17,E21,E23,E27,E29)とを有する。
第1裏面電極パターン50Bは、例えば隣り合う離間Π型構造素子の極性が異なる熱電素子同士が直列に接続する複数の離間階段状電極(E16,E22,E28)と、を有する。
第2おもて面電極パターン60Aは、例えば隣接Π型構造素子を構成するn型熱電素子とp型熱電素子とが直列に接続する複数の横長電極(E2,E4,E6,E8)と、離間Π型構造素子を構成するn型熱電素子およびp型熱電素子が個々に接続する複数の単独電極(E12,E14,E18,E20,E24,E26,E30,E32)とを有する。
第2裏面電極パターン60Bは、離間Π型構造素子を構成するn型熱電素子とp型熱電素子とが直列に接続する複数の帯状電極(E13,E19,E25,E31)を有する。
【0026】
熱電モジュール100の第1おもて面電極パターン50Aは、例えば、さらに、内側n型素子列20bに含まれるただ一つのn型熱電素子と重なり、スタート部Stを含む縦長電極E1と、内側p型素子列10bに含まれるただ一つのp型熱電素子と重なる単独電極E9と、外側p型素子列10aに含まれるただ一つのp型熱電素子と重なり、終端部Enを含む縦長電極E33と、を有する。単独電極E11,E17,E23,E29は、それぞれ外側n型素子列20aに含まれるただ一つのn型熱電素子と重なり、単独電極E15,E21,E27は、それぞれ外側p型素子列10aに含まれるただ一つのp型熱電素子と重なる。第1おもて面電極パターン50Aは、外側p型素子列10aと重なる外側p型列51aと、内側p型素子列10bと重なる内側p型列51bと、内側n型素子列20bと重なる内側n型列52bと、外側n型素子列20aと重なる外側n型列52aと、に区分される。
【0027】
隣接階段状電極E3,E5,E7は、例えば、それぞれ接続部57を有する。接続部57により、極性が異なる熱電素子同士を直列に接続される。すなわち、接続部57は、p型熱電素子とn型熱電素子とを直列に接続する。具体的には、隣接階段状電極E3,E5,E7のうち、部分P14,P24,P34と重なる部分には、内側p型素子列10bが設けられ、部分P21,P31,P41と重なる部分には、内側n型素子列20bが設けられ、それぞれのp型熱電素子とn型熱電素子は、接続部57により第1おもて面電極パターン50A上で電気的に直列に接続されている。
【0028】
第1多層基板30のうち、単独電極E9,E11,E15,E17,E21,E23,E27,E29と重なる部分には、例えばスルーホールHが設けられ、当該部分において、第1おもて面電極パターン50Aと第1裏面電極パターン50BとがスルーホールHの部分に設けられた導電材料により接続されている。
【0029】
第2おもて面電極パターン60Aは、例えば複数の横長電極(E2,E4,E6,E8)で構成された横長電極列55と、複数の単独電極(E12,E14,E18,E20,E24,E26,E30,E32)とからなる。複数の単独電極は、外側p型列51aと重なる外側p型列53aと、外側n型列52aと重なる外側n型列54aと、に区分される。単独電極E14、E20,E26,E32のそれぞれは,外側p型素子列10aのそれぞれのp型熱電素子と重なるように設けられている。横長電極E2,E4,E6,E8のそれぞれは、内側p型素子列10bのp型熱電素子および内側n型素子列20bのn型熱電素子のそれぞれのp型熱電素子およびn型熱電素子と重なるように設けられている。単独電極E12,E18,E24,E30のそれぞれは、外側n型素子列20aのそれぞれのn型熱電素子と重なるように設けられている。第2多層基板40のうち、単独電極E12,E14,E18,E20,E24,E26,E30,E32と重なる部分には、例えばスルーホールHが設けられ、当該部分において、第2おもて面電極パターン60Aと第2裏面電極パターン60Bとが、スルーホールHの部分に設けられた導電材料により接続されている。
【0030】
第1裏面電極パターン50Bは、例えば接続電極E10、複数の離間階段状電極E16,E22,E28と、熱伝導部91と、からなる。第1裏面電極パターン50Bに設けられた接続電極E10および離間階段状電極E16,E22,E28のそれぞれは、第1おもて面電極パターン50Aにおける異なる電極同士を接続している。例えば、接続電極E10は、第1おもて面電極パターン50Aの単独電極E9を単独電極E11と接続しており、隣接Π型構造素子と離間Π型構造素子とを接続している。また、離間階段状電極E16は、単独電極E15を単独電極E17と接続している。このようにして、第1裏面電極パターン50Bに設けられた接続電極E10および離間階段状電極E16,E22,E28は、隣り合うΠ型構造素子の極性が異なる熱電素子同士が直列に接続している。
【0031】
第2裏面電極パターン60Bは、例えば、複数の帯状電極E13,E19,E25,E31と、を有し、熱伝導部92をさらに有することが好ましい。第2多層基板40は、例えば、複数の帯状電極E13,E19,E25,E31のそれぞれが設けられる位置に2つずつスルーホールHが形成されており、当該部分において、第2おもて面電極パターン60Aと第2裏面電極パターン60Bとが、スルーホールHの部分に設けられた導電材料により接続されている。
【0032】
縦長電極E1、横長電極E2および隣接階段状電極E3のうち部分P14が位置し、内側p型列51bに位置する電極は、スタート部Stから1つ目の隣接Π型構造素子の一部である。スタート部Stから2つ目の隣接Π型構造素子には、隣接階段状電極E3のうち部分P21が位置し、内側n型列52bに位置する電極、横長電極E4および、隣接階段状電極E5のうち部分P24が位置し、内側p型列51bに位置する電極が含まれる。スタート部Stから1つ目の隣接Π型構造素子と同2つ目の隣接Π型構造素子とは、隣接階段状電極E3の接続部57により電気的に接続されている。このように、y方向において、同じ位置に設けられた、第1おもて面電極パターン50Aの内側n型列52bの電極と、内側p型列51bの電極と、第2おもて面電極パターン60Aの横長電極列55の横長電極と、は、同一の隣接Π型構造素子の一部を形成し、+y方向における最端部の隣接Π型構造素子を除き、接続部57により次の隣接Π型構造素子と接続している。
【0033】
図4は、隣接Π型構造素子の断面図である。隣接Π型構造素子は、Π型の熱電素子である。隣接Π型構造素子は、例えばn型素子20bと、内側n型列52bの電極と、横長電極列55の電極と、内側p型列51bの電極と、接続部57と、を有する。接続部57は、Π型構造素子同士を接続するための部材であり、説明の便宜上合わせて図示している。
【0034】
p型素子列10bのp型熱電素子およびn型素子列20bのn型熱電素子は、それぞれp型およびn型の熱電材料であり、例えばMgSiSn熱電材料、テルル化合物、スクッテルダイト化合物、充填スクッテルダイト化合物、ホイスラー合金、ハーフホイスラー化合物、クラストレート化合物、シリサイド化合物、シリコンゲルマニウム等で選択されるいずれかで形成される。内側p型列51bの電極、内側n型列52bの電極および横長電極列55の電極を含む第1おもて面電極パターン50A、第2おもて面電極パターン60A、第1裏面電極パターン50Bおよび第2裏面電極パターン60Bは、例えば、銅、ニッケル、銀、金およびアルミニウムから選択されるいずれかで形成されている。p型熱電素子およびn型素子群と電極との接合は、例えば半田接合、ろう付け、ペーストを介した接合などにより接合されている。
【0035】
図5は、離間Π型構造素子の構造および接続の仕方を説明するための図である。図5は、図2,3に示される第1多層基板30、第2多層基板40をp型素子群10およびn型素子群20とともに用いたときに形成される、4つの離間Π型構造素子を示す。
【0036】
離間Π型構造素子において、外側p型素子列10aのp型熱電素子は、第1おもて面電極パターン50の外側p型列51aおよび第2おもて面電極パターン60の外側p型列53aに挟まれ、第2多層基板40の第2裏面電極パターン60Bの帯状電極を介して、第1おもて面電極パターン50の外側n型列52aおよび第2おもて面電極パターン60の外側n型列54aに挟まれた外側n型素子列20aのn型熱電素子と接続されている。離間Π型構造素子において、n型熱電素子20は、第2多層基板40の第2おもて面電極パターン60Aと第1多層基板30の第1おもて面電極パターン50Aとに挟まれている。隣接する離間Π型構造素子同士は、例えば第1多層基板30の第1裏面電極パターン50Bを介して接続されている。
【0037】
第1多層基板30および第2多層基板40は、例えばSi、SiC、Al、セラミックス材料、SiN、GaNおよびAlN等の窒化物半導体、ガラスエポキシ樹脂で構成されている。第1多層基板30および第2多層基板40のうち、スルーホールHが設けられた部分には、Cu、Al、Cr、Zn、Au、Rh、Pt、Pd、Ag、Sn、NiおよびCからなる群から選択された金属、合金および導電性ペーストのいずれかが設けられており、おもて面電極パターンと裏面電極パターンとを接続している。電極パターンは、例えばCu,Ni,Ag,AuおよびAl等で構成される。第1多層基板30および第2多層基板40が半導体材料で構成されている場合、第1多層基板30および第2多層基板40の表面およびスルーホールHの内周面にはSiO等で構成された絶縁層が設けられており、電極パターンおよびスルーホールHの部分に設けられた導電材料は、絶縁層を介して第1多層基板30および第2多層基板40の表面およびスルーホールHに形成されている。第1多層基板30および第2多層基板40は、このようにして、おもて面電極パターンと裏面電極パターンのうち、スルーホールHが設けられた箇所以外の部分では、おもて面電極パターンと裏面電極パターンとは絶縁されている。
【0038】
本実施形態に係る熱電モジュール100は、両面に電極パターンが設けられた第1多層基板30および第2多層基板40を備えており、第1裏面電極パターン50Bおよび第2裏面電極パターン60Bより熱を伝搬することができるため、効率よく熱を伝えることが可能である。また、上記実施形態に係る熱電モジュール100では、第1裏面電極パターン50Bおよび第2裏面電極パターン60Bは、熱電モジュールの電気回路に含まれない部分にも熱伝導部91,92が設けられており、熱伝導部91,92は、第1多層基板30,第2多層基板40よりも熱抵抗の小さい材料で構成されているため、より効率的に熱を伝えることが可能である。
【0039】
また、本実施形態に係る熱電モジュール100において、p型熱電素子およびn型熱電素子は、隣接する2列に配置されているため、両面に電極パターンが形成された多層基板を適用できる。p型熱電素子およびn型熱電素子を隣接する3列以上に配置する場合、多層基板内の電気回路が3層以上に亘る複雑な構造になり、それらの短絡を抑制するために、少なくとも2層以上の絶縁層が必要となる。多層基板に必要な絶縁層の数はp型熱電素子およびn型熱電素子を隣接して配置する列の数とともに増加する。絶縁材料は、一般的に電極パターンとして設けられる導電材料と比べ、熱抵抗が大きいため、p型熱電素子およびn型熱電素子を隣接する3列以上に並べる場合、熱電素子への熱伝導性が損なわれる。本実施形態の熱電モジュール100であれば、p型熱電素子およびn型熱電素子が隣接する2列に配置されているため、熱電素子への熱伝導性を損なうことなく、効率的に熱電変換を行うことができる。
【0040】
本実施形態に係る熱電モジュール100は、上記の例に限定されず、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内で適宜変更が可能である。例えば、p型熱電素子およびn型素子群が2列ずつ4行に設けられる例を上述したが、p型熱電素子およびn型熱電素子の行数は、任意にすることができる。また、図示していない部分に放熱部として、電極パターンをさらに形成してもよく、電極パターンの形状を変更してもよい。
【0041】
<変形例1>
図6Aおよび図6Bならびに図7Aおよび図7Bは、それぞれ変形例1に係る熱電モジュールの第1多層基板30A、第2多層基板40Aの平面図である。図6Aおよび図6Bは、それぞれ第1多層基板30Aのおもて面30aに設けられた第1おもて面電極パターン50AAおよび第1多層基板30Aの裏面30bに設けられた第1裏面電極パターン50ABを示す。図7Aおよび図7Bは、それぞれ第2多層基板40Aのおもて面40aに設けられた第2おもて面電極パターン60AAおよび第2多層基板40Aの裏面40bに設けられた第2裏面電極パターン60BAを示す。図6A図6B図7Aおよび図7Bにおいて、図2および図3と同様の符号を付した箇所は、同様の構成であり、説明を省略する。
【0042】
第1おもて面電極パターン50AAは、1つ多く隣接階段状電極E1´を備える点、縦長電極E1を備えない点、外側n型列52aと内側n型列52bとを連なる横長電極E0をさらに備える点およびスタート部Stが外側n型列51aに設けられている点で第1おもて面電極パターン50Aと異なる。変形例1に係る第1裏面電極パターンは、先の熱電モジュール100の第1裏面電極パターン50Bと同様である。
【0043】
第2おもて面電極パターン60AAは、外側p型列53aおよび外側n型列54aのそれぞれに単独電極を1つ多く備える点、横長電極列55に横長電極を1つ多く備える点および熱伝導部93a、93b、93cを備える点で第2おもて面電極パターン60Aと異なる。熱伝導部93a、93b、93cを区別しない場合、熱伝導部93と呼称する場合がある。第2裏面電極パターン60BAは、帯状電極を1つ多く備える点および熱伝導部94を備えている点で第2裏面電極パターン60BAと異なる。このように変形例1に係る熱電モジュールは、第1多層基板および第2多層基板をした際の大きさが略同等であり、第2多層基板に熱伝導部93,94を追加することができる。
【0044】
変形例1に係る熱電モジュールでは、横長電極E0の内側n型列52bと重なるようにn型熱電素子20が積まれ、横長電極E0とy方向における同じ位置にその一部を有する隣接階段状電極E1の内側p型列51bと重なるようにp型熱電素子10が積まれ、当該電極と熱電素子により隣接Π型構造素子が1つだけ多く設けられる。変形例1の熱電モジュールでは、例えば第1おもて面電極パターン50AAのスタート部Stと終端部Enとが外部の導線に接続される。
【0045】
変形例1に係る熱電モジュールであっても、熱電モジュール100と同様の効果を得られる。また、変形例1に係る熱電モジュールでは、集積できるp型熱電素子およびn型熱電素子の数を増やすことができ、また熱伝導部93,94をさらに含むことで熱電モジュールとしての性能をより高められる。
【0046】
<変形例2>
図8は、変形例2に係る熱電モジュール100Bを説明するための斜視図である。図8では、説明の便宜上第1多層基板30とともにp型素子群10およびn型素子群20を挟む第2多層基板の図示を省略した。熱電モジュール100Bにおいて、熱電モジュール100と同様の構成は、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0047】
図9Aおよび図9Bは、図8の熱電モジュール100Bが備える第1多層基板30Bの平面図であり、図9Aは第1おもて面電極パターン50BAを示し、図9Bは第1裏面電極パターン50BBを示す。図10Aおよび図10Bは、図8の熱電モジュール100Bが備える第2多層基板40Bの平面図であり、図10Aは第2おもて面電極パターン60BAを示し、図10Bは第2裏面電極パターン60BBを示す。
【0048】
変形例2に係る熱電モジュール100Bは、n型素子群20およびp型素子群10をそれぞれ、複数備える。熱電モジュール100Bにおいて、n型素子群20の数およびp型素子群10の数は、同数であり、n型熱電素子の数およびp型熱電素子の数も同数である。熱電モジュール100Bは、スタート部Stから終端部Enまで電気的に直列に接続している。熱電モジュール100Bにおいて、p型素子群10は、外側p型素子列10aと内側p型素子列10bとの隣接する2列に設けられている。熱電モジュール100Bにおいて、n型素子群20は、外側n型素子列20aと内側n型素子列20bとの隣接する2列に設けられている。
【0049】
熱電モジュール100Bは、例えばn型素子群20と、p型素子群10と、を複数備えており、n型素子群20とp型素子群10とが第1方向に交互に並べて配置され、n型素子群20とp型素子群10とのうち、第1方向における最も外側に位置する素子群は、他のn型素子群20およびp型素子群10と比べ、熱伝導素子の数が一つ少なく、第1方向における最も外側の素子群のうち、第1方向と交差する方向における端部の片方には、熱電素子が設けられておらず、外部のリードと接続するためのリード接続部(St,En)が設けられている。
【0050】
以下、本変形例において、第1方向に並列に設けられたp型素子群10およびn型素子群20と、これらの素子群と重なる電極パターンおよび基板を併せて、熱電素子ユニットと呼称する場合がある。熱電モジュール100Bは、スタート部St側から第1方向に、熱電素子ユニットである第1ユニットU1,第2ユニットU2および第3ユニットU3が並ぶ。
【0051】
変形例2の熱電モジュール100Bの第1ユニットU1,第2ユニットU2および第3ユニットU3のそれぞれにおいて、第1おもて面電極パターン50BA、第1裏面電極パターン50BB、第2おもて面電極パターン60BAおよび第2裏面電極パターン60BBは、電極の数は多いものの、電極パターンの形状および配置の仕方は、概ね変形例1と同様である。熱電モジュール100Bでは、第1ユニットU1,第2ユニットU2および第3ユニットU3のそれぞれを接続する必要があり、これに伴い、ユニット間接続電極El2,El1,Elを備える点で、変形例1に係る熱電モジュールの電極パターンと異なる。
【0052】
第1ユニットU1と第2ユニットU2との接続は、ユニット間接続電極El2,El1,Elおよびその近傍の電極によりなされている。熱電モジュール100Bにおいて、当該電極は、電気回路上、スタート部Stに近い側から順に、符号P´1,P´2,P´3,P´4,P´5,P´6,P´7およびP´8が示されている部分を通るように電流が流れる。第1おもて面電極パターン50BAのユニット間接続電極El2は、第1ユニットU1の離間Π型構造素子と、第2ユニットU2および第1ユニットU1に跨るユニット間Π型構造素子と、を繋ぐユニット間階段状電極である。ユニット間Π型構造素子は、第2ユニットU2の部分P´2とP´3とに挟まれたn型熱電素子と第1ユニットU1の部分P´4とP´5とに挟まれたp型熱電素子と、これらの熱電素子を繋ぐ矩形電極El1と、を有する。部分P´5は、スルーホールHを介して部分P´6と電気的に繋がり、ユニット間接続電極Elにより部分P´7へと繋がり、第1おもて面電極パターン50BAの部分P´8へと繋がる。部分P´8は、第2ユニットのスタート部として扱うことができる。第1ユニットU1と第2ユニットU2とは、このようにして電気的に直列に接続されている。
【0053】
第2ユニットU2と第3ユニットU3との接続は、第1ユニットU1と第2ユニットU2との接続と同様であり、ユニット間接続電極El2´、El1´、El´およびその近傍の電極によりなされている。当該電極は、電気回路上、スタート部St側から順に通る部分に、符号P´´1,P´´2,P´´3,P´´4,P´´5,P´´6,P´´7およびP´´8が示されている。ユニット間接続電極El2´、El1´、El´は、それぞれユニット間接続電極El2、El1、Elと同様の構成を有する。第2ユニットU2と第3ユニットU3とは、このようにして電気的に直列に接続されている。
【0054】
変形例2に係る熱電モジュール100Bであっても、熱電モジュール100と同様の効果を得られる。また、熱電モジュール100Bでは、p型熱電素子およびn型熱電素子が2列ずつ交互に設けられているため、熱電モジュール100と同様、多層基板に余計な絶縁層を設けずにより高集積化し、熱電モジュールの性能を高められる。
【0055】
<熱電モジュールの製造方法>
図11図13は、本実施形態に係る熱電モジュールの製造方法を説明するための図である。図11図12図13は、それぞれ詳細を後述する第1ダイシング工程、第1接合工程、第2接合工程の様子を示す。本実施形態に係る熱電モジュールの製造方法は、上記実施形態に係る熱電モジュールを製造する方法である。以下、熱電モジュール100を製造する場合を例に本実施形態の熱電モジュールの製造方法について説明する。
【0056】
本実施形態に係る熱電モジュールの製造方法は、n型熱電材料およびp型熱電材料I10をn型素子群およびp型素子群に対応する大きさにダイシングし、n型熱電材料ブロックB20およびp型熱電材料ブロックB10を形成する第1ダイシング工程と、n型熱電材料ブロックB20およびp型熱電材料ブロックB10を、両面に電極パターンを有する第1多層基板30の第1おもて面電極パターン50A上に配置し、第1おもて面電極パターン50Aと接合する第1接合工程と、n型熱電材料ブロックと、p型熱電材料ブロックと、を、ダイシングし、隣接する2列に配置された複数のn型熱電素子からなるn型素子群20と、隣接する2列に配置された複数のp型熱電素子からなるp型素子群10と、を形成する第2ダイシング工程と、両面に電極パターンを有する第2多層基板40の第2おもて面電極パターン60Aを、第1おもて面電極パターン50Aとともに、n型素子群20およびp型素子群10を挟むように配置し、n型素子群20およびp型素子群10のそれぞれのn型熱電素子とp型熱電素子とを第2おもて面電極パターン60Aと接合する、第2接合工程と、を備える。本実施形態に係る熱電モジュールの製造方法は、例えば隣接するn型熱電素子とp型熱電素子とで形成される隣接Π型構造素子が順に直列に接続され、かつ、離間するn型熱電素子とp型熱電素子で形成される離間Π型構造素子が順に直列に接続されるように形成する。
【0057】
(第1ダイシング工程)
第1ダイシング工程は、先ず、図11に示されるようなp型熱電材料I10を用意する。p型熱電材料I10は、例えばMgSiSn熱電材料、テルル化合物、スクッテルダイト化合物、充填スクッテルダイト化合物、ホイスラー合金、ハーフホイスラー化合物、クラストレート化合物、シリサイド化合物、シリコンゲルマニウム等で選択されるいずれかであり、例えばp型にドープされている。p型熱電材料I10としては、任意の形状のものを用いることができる。第1ダイシング工程は、p型熱電材料I10を公知の方法でダイシングし、p型素子群に対応する形状のp型熱電材料ブロックB10を形成する。また、p型熱電材料I10をダイシングしてp型熱電材料ブロックB10を形成した方法と同様の方法で、n型熱電材料をダイシングしてn型熱電材料ブロックを形成する。n型熱電材料は、n型にドープされている点でp型熱電材料と異なる。
【0058】
(基板準備工程)
基板準備工程は、第1多層基板30および第2多層基板40を準備する工程である。基板準備工程では、例えば、先ず、所望の位置にスルーホールHが形成されたSi、SiC、Al、セラミックス材料、SiN、AlNおよびGaN等の窒化物半導体、ガラスエポキシ樹脂等の基板を準備する。基板として半導体材料で構成された基板を用いる場合、例えば基板の表面およびスルーホールHの内周面に絶縁層を形成する。絶縁層は、例えば大気中で加熱し、基板の表面を酸化させることにより形成することができる。
【0059】
次いで、パターニングなどにより、第1おもて面電極パターン50Aおよび第2おもて面電極パターン60Aを形成する。次いで、スルーホールHにCu、Al、Cr、Zn、Au、Rh、Pt、Pd、Ag、Sn、NiおよびCからなる群から選択された金属、合金および導電性ペースト等の導電材料を形成する。次いで、例えばスルーホールHが設けられた部分にそれぞれ第1おもて面電極パターン50A、第2おもて面電極パターン60Aと接続するように、第1裏面電極パターン50Bおよび第2裏面電極パターン60Bを形成する。電極パターンとしては、Cu,Ni,Ag,AuおよびAl等の材料が用いられる。尚、基板準備工程における処理の順序は、任意である。
【0060】
(第1接合工程)
第1接合工程は、先ず図12に示されるようなp型熱電材料ブロックB10およびn型熱電材料ブロックB20と、両面に電極パターンが設けられた第1多層基板30を用意する。第1多層基板30は、おもて面に第1おもて面電極パターン50Aが設けられており、裏面に第1裏面電極パターン50Bが設けられている。第1おもて面電極パターンは、第1方向に並ぶ第1部分51と第2部分52とに区分される。第1接合工程において、p型熱電材料ブロックは第1部分51に設けられ、n型熱電材料ブロックは第2部分に設けられる。
【0061】
第1おもて面電極パターン50Aは、例えば隣り合う隣接Π型構造素子の極性が異なる熱電素子同士が直列に接続する複数の隣接階段状電極と、離間Π型構造素子を構成するn型熱電素子およびp型熱電素子が個々に接続する複数の単独電極と、スタート部および終端部を含む縦長電極と、を有する。
【0062】
第1接合工程において、p型熱電材料ブロックB10は、縦長電極、単独電極および隣接階段状電極のうち、第1部分51に位置する電極のそれぞれと接合される。p型熱電材料ブロックB10と電極との接合は、例えば、半田接合、ろう付け接合、ペーストによる接合等、公知の手段を採用することができる。n型熱電材料ブロックB20は、p型熱電材料ブロックB20と同様の方法で、縦長電極、単独電極および隣接階段状電極のうち、第2部分52に位置する電極のそれぞれと接合される。
【0063】
(第2ダイシング工程)
第2ダイシング工程では、図13に示されるように、第1おもて面電極パターン50Aに接合された、n型熱電材料ブロックB20と、p型熱電材料ブロックB10と、を、ダイシングし、隣接する2列に配置された複数のn型熱電素子でからなるn型素子群20と、隣接する2列に配置された複数のp型熱電素子からなるp型素子群20と、を形成する。
【0064】
p型熱電材料ブロックB10と、n型熱電材料ブロックB20と、は、公知の手段でダイシングされる。p型熱電材料ブロックB10およびn型熱電材料ブロックB20のダイシングは、p型熱電素子およびn型熱電素子のそれぞれが、1つの電極のみと重なる大きさになるように、ダイシングされる。
【0065】
(第2接合工程)
第2接合工程では、両面に電極パターンを有する第2多層基板40を用意し、そのおもて面電極パターン60Aを、第1おもて面電極パターン50Aと第2おもて面電極パターン60Aとの間に、n型素子群20およびp型素子群10を挟むように配置し、n型素子群20およびp型素子群10のそれぞれのn型熱電素子とp型熱電素子とを第2おもて面電極パターン60Aと接合する。
【0066】
第2おもて面電極パターン60Aは、例えば隣接Π型構造素子を構成するn型熱電素子とp型熱電素子とが直列に接続する複数の横長電極と、離間Π型構造素子を構成するn型熱電素子およびp型熱電素子が個々に接続する複数の単独電極とを有する。
【0067】
第2接合工程において、p型熱電素子およびn型熱電素子のそれぞれが、1つの電極のみと接合するように行われる。第2接合工程における第2おもて面電極パターン60Aとp型熱電素子およびn型熱電素子との接合は、第1おもて面電極パターンとp型熱電素子およびn型熱電素子との接合と同様の手段を採用することができる。
【0068】
本実施形態では、このようにして図1の熱電モジュール100のような、隣接するn型熱電素子とp型熱電素子とで形成される隣接Π型構造素子が順に直列に接続され、かつ、離間するn型熱電素子とp型熱電素子で形成される離間Π型構造素子が順に直列に接続されるように形成することができる。
【0069】
第1ダイシング工程の前に、p型熱電材料およびn型熱電材料の厚みがp型熱電素子の厚みおよびn型熱電素子の厚みと同じになるようにスライスするスライス工程をさらに有していてもよい。スタート部Stおよび終端部Enの電位の高低は、第1裏面電極パターン50Bと第2裏面電極パターン60Bとに与える熱の高低を逆にすることで逆になる。
【0070】
本実施形態に係る熱電モジュールの製造方法では、p型熱電材料ブロックおよびn型熱電材料ブロックを両面に電極パターンが設けられた多層基板に配置し、当該熱電材料ブロックを電極パターンと接合した後、熱電材料ブロックをダイシングし、熱電素子を形成する。そのため、p型熱電素子およびn型熱電素子を配置する工程が簡便であり、且つダイシングされたp型熱電素子やn型熱電素子を1つずつ搬送するための搬送用ロボットへの投資が不要である。
【符号の説明】
【0071】
10:p型素子群、10a:外側p型素子列、10b:内側p型素子列、
20:n型素子群、20a:外側n型素子列、20b:内側n型素子列、
30、30A:第1多層基板、30a:(第1多層基板の)おもて面、30b:(第1多層基板の)裏面、30c:主部、40、40A:第2多層基板、40a:(第2多層基板の)おもて面、40b:(第2多層基板の)裏面、40c:主部、
50A、50AA、50BA:第1おもて面電極パターン、50B、50AB,50BB:第1裏面電極パターン、51:第1部分、51a:外側p型列、51b:内側n型列、52:第2部分、52a:外側n型列、52b:内側n型列、53a:外側p型列、54a:外側n型列、55:横長電極列、57:接続部、60A、60AA、60BA:第2おもて面電極パターン、60B、60BB:第2裏面電極パターン、91,92:熱伝導部、100、100B:熱電モジュール、
B10:p型熱電材料ブロック、B20:n型熱電材料ブロック、E0:横長電極、E1、E33:縦長電極、E1´、E3、E5、E7、:隣接階段状電極、E2、E4、E6、E8、:横長電極、E9、E11、E12、E14、E15、E17、E18、E21、E23、E24、E26、E27、E29、E30、E32:単独電極、E10:接続電極、E13、E19、E20、E25、E31:帯状電極、E16、E22、E28:離間階段状電極、El、El´:ユニット間接続電極、El1、El1´:ユニット間接続電極(矩形電極)、El2、El2´:ユニット間接続電極、En:終端部(リード接続部)、St:スタート部(リード接続部)、H:スルーホール、U1:第1ユニット、U2:第2ユニット、U3:第3ユニット
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13