(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068325
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】襟口の開度調整機構
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20230510BHJP
A41D 27/18 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179320
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】507213101
【氏名又は名称】株式会社ザックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土井 淳一
【テーマコード(参考)】
3B011
3B035
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC02
3B011AC03
3B035AA11
3B035AB03
3B035AB11
3B035AC22
(57)【要約】
【課題】ファン付衣服の襟口に着目し、連続的に襟口の開度調整ができるほか、ファン付衣服を着用した状態でも襟口の開度調整ができる襟口の開度調整機構を提供する。
【解決手段】襟刳24の内側に架け渡された状態となるコード11と、コード11の他端側が引き出された襟刳24の外側である衣服上部に設けた巻取装置12とから構成され、巻取装置12は、リール部122の回動方向を一方向に制限したり、リール部122の回動方向の制限を解除して回動自在にしたりする操作部123を備え、操作部123の制限により回動方向が一方向に制限されたリール部122が襟刳24の外側に引き出されたコード11を制限された回動方向に巻き取り、操作部123の解除により回動自在とされたリール部122が巻き取られたコード11を解放して緩めるファン付衣服2の襟口の開度調整機構1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
襟又は襟刳の内側に一端側が位置固定され、他端側が襟又は襟刳から外側に引き出されることにより、襟又は襟刳の内側に架け渡された状態となるコードと、
コードの他端側が引き出された襟又は襟刳の外側である衣服上部に設けた巻取装置とから構成され、
巻取装置は、衣服上部に固定されるベース部と、回動自在な状態でベース部に取り付けられるリール部と、リール部の回動方向を一方向に制限したり、リール部の回動方向の制限を解除して回動自在にしたりする操作部とを備え、
操作部の制限により回動方向が一方向に制限されたリール部が、襟又は襟刳の外側に引き出されたコードを制限された回動方向に巻き取り、
操作部の解除により回動自在とされたリール部が、巻き取られたコードを解放して緩める
ファン付衣服の襟口の開度調整機構。
【請求項2】
コードは、折り返して開いた環状とし、襟又は襟刳の内側に設けたループ片に通した折り返し部分を一端側として位置固定され、折り返し部分から延びる2条の他端側を襟又は襟刳から外側に引き出されることにより、襟又は襟刳の内側に2条が架け渡された状態となる
請求項1記載のファン付衣服の襟口の開度調整機構。
【請求項3】
コードは、襟又は襟刳の内側に架け渡された範囲で、可撓性のある筒状のカバーに挿通させた
請求項1又は2いずれか記載のファン付衣服の襟口の開度調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン付衣服における襟口の開度調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ファン付衣服は、例えば腰付近に設けたファンにより外気を取り込み、着用者の身体に沿って流れる空気が汗を蒸発させる際の気化熱の作用により、着用者の身体を冷却する。このため、ファン付衣服は、十分な冷却作用を発揮する観点から、円滑な空気の流れを形成することが肝要となる。具体的には、メッシュ生地等の通気性面を形成するほか、袖口(袖と手首との間の開口)や襟口(襟と首との間の開口)が潰れないように開いた状態を確保し、空気の排出を円滑にする。
【0003】
特許文献1が開示するファン付衣服は、襟口が潰れないように開いた状態を確保する手段として、襟(襟後部)の内側に掛け渡した調整ベルトを首に当てることにより、襟と首との間に襟口(空気排出口)を形成する。襟口は、主に襟と調整ベルトとの間に形成される。特許文献1が開示するファン付衣服は、着用者の首に調整ベルトが緊張状態で当たることにより、襟口を潰さない。また、特許文献1が開示するファン付衣服は、調整ベルトの一端側が特定位置に固着されているものの、他端側の固定位置が選択でき、襟口の大きさを調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファン付衣服の襟口は、周囲の気温又は湿度や着用者に応じて、開度の大きさを加減する、すなわち開度調整のできることが望ましい。特許文献1が開示するファン付衣服は、他端側の固定位置を選択できる調整ベルトによる襟口の開度調整機構を備えている。しかし、調整ベルトの他端側の固定位置が選択できるだけでは、襟口の細かな開度調整ができない。襟口の開度と冷却作用の能率とが必ずしも比例関係にあるわけではないが、ファン付衣服の着用者の好みもあることから、周囲の気温及び湿度や、着用者に応じて、襟口は連続的に開度調整できることが好ましい。
【0006】
この点、特許文献1には、一組の調整紐を結ぶ位置を変えることにより襟口の開度調整ができる従来技術が紹介されている。しかし、調整紐を結ぶ作業は面倒であり、利便性に欠ける。また、特許文献1が開示するファン付衣服や調整紐を用いる従来のファン付衣服のいずれも、着用した状態での襟口の開度調整ができない不便さがある。そこで、ファン付衣服の襟口に着目し、連続的に襟口の開度調整ができるほか、ファン付衣服を着用した状態でも襟口の開度調整ができる襟口の開度調整機構を提供すべく、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
検討の結果開発したものが、襟又は襟刳の内側に一端側が位置固定され、他端側が襟又は襟刳から外側に引き出されることにより、襟又は襟刳の内側に架け渡された状態となるコードと、コードの他端側が引き出された襟又は襟刳の外側である衣服上部に設けた巻取装置とから構成され、巻取装置は、衣服上部に固定されるベース部と、回動自在な状態でベース部に取り付けられるリール部と、リール部の回動方向を一方向に制限したり、リール部の回動方向の制限を解除して回動自在にしたりする操作部とを備え、操作部の制限により回動方向が一方向に制限されたリール部が、襟又は襟刳の外側に引き出されたコードを制限された回動方向に巻き取り、操作部の解除により回動自在とされたリール部が、巻き取られたコードを解放して緩めるファン付衣服の襟口の開度調整機構である。襟口は、主に襟とコードとの間に形成される。
【0008】
本発明の襟口の開度調整機構は、一端側が襟又は襟刳の内側に位置固定されたコードの他端側を、襟又は襟刳の外側である衣服上部に設けた巻取装置に巻き取ったり、解放したりして、襟口を開度調整する。巻取装置でコードを巻き取れば、襟又は襟刳に架け渡されるコードが襟の周長より短くなり、主に襟とコードとの間が広がる、すなわち襟口の開度が大きくなる。逆に、巻取装置からコードを解放すれば、襟又は襟刳に架け渡されるコードが襟の周長より長くなり、主に襟とコードとの間が潰れる、すなわち襟口の開度が小さくなる。巻取装置は、襟又は襟刳の外側にある衣服上部に設けられるから、ファン付衣服を着用した状態でもコードの巻取及び解放が自由にできる。衣服上部は、着用者の肩に位置する前見頃又は後見頃の上部や肩ヨークである。
【0009】
コードの一端側が位置固定される襟の内側は、台襟(襟腰)の内側を含む。コードの一端側が襟又は襟刳の内側に位置固定されるとは、コードの一端又は一端近傍が襟又は襟刳の内側の特定位置に常に位置することを意味し、コードの一端又は一端近傍が襟又は襟刳の内側に固着されることを必ずしも意味しない。襟又は襟刳の内側に架け渡されるコードは、一端側が位置固定される位置と他端側が引き出される位置とが左右対称位置にあるとよい。コードの他端側は、襟又は襟刳に設けられた取出孔から外側に引き出すとよい。コードの一端側が位置固定される位置と他端側が引き出される位置(例えば取出孔)とが長いほど、襟口の開度の調整幅が大きくなる。これから、コードの一端側が位置固定される位置と他端側が引き出される位置は、後見頃に形成される襟刳の範囲で、首を中心とする点対称位置又は点対称位置よりやや後方に位置にするとよい。
【0010】
コードは、広幅のベルトでも細い糸条でもよく、ベルト又は糸条を単独又は組み合わせて複数本で用いる。ここで、コードが複数本の場合、襟又は襟刳の内側に位置固定される一端側がそれぞれ独立して襟又は襟刳の内側に固着されると、コード毎に巻取具合に差が発生する。そこで、コードは、折り返して開いた環状とし、襟又は襟刳の内側に設けたループ片に通した折り返し部分を一端側として位置固定され、折り返し部分から延びる2条の他端側を襟又は襟刳から外側に引き出されることにより、襟又は襟刳の内側に2条が架け渡された状態となる構成にするとよい。折り返した部分をループ片に通したコードは、ループ片を通して移動することにより、折り返されて延びる2条それぞれの巻取具合の差が発生しなくなる。
【0011】
コードが首に直接当たると痛くなるし、コードが複数本であれば、コードそれぞれがバラバラに首に当たることで、主に襟とコードとの間が綺麗な形に形成されない可能性が出てくる。そこで、コードは、襟又は襟刳の内側に架け渡された範囲で、可撓性のある筒状のカバーに挿通させた構成にするとよい。筒状のカバーは、挿通させたコードを保持できれば、周方向に閉じた筒体でなく、周方向の一部が開放された構造でもよい。カバーは、挿通させるコードより当然に広幅となり、首に対する接触面積を増やし、複数本のコードを束ねて一体的に首に当たるようにする。カバーは、襟又は襟刳の内側に掛け渡したコードの長さに応じて変形する可撓性又は伸縮性を備えた素材で構成するとよい。この場合、カバーに挿通させたコードが進退自在になる限り、カバーの一部を襟又は襟刳に固着(例えば縫着)してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ファン付衣服の襟口を連続的に開度調整でき、ファン付衣服を着用した状態で襟口の開度調整ができる襟口の開度調整機構を提供可能とする。これは、襟又は襟刳の内側に掛け渡したコードを、襟又は襟刳の外側に設けた巻取装置に巻き取ったり、解放したりする構成による効果である。具体的には、巻取装置によるコードの巻取又は解放は、襟又は襟刳の内側に掛け渡したコードの長さを連続的に加減し、コードと襟との間に形成される襟口を連続的に開度調整させる。また、巻取装置は、襟又は襟刳の外側に設けているため、ファン付衣服を着用した状態で操作できる。
【0013】
折り返して開いた環状としたコードの折り返し部分を一端側としてループ片に通し、折り返し部分から延びる2条の他端側を襟又は襟刳から外側に引き出す構成にすると、コードを2条として首に当たる幅を増やしながら、襟又は襟刳の内側に位置固定するコードの一端側を動けるようにする。これにより、2条のコードは、巻取装置による巻取具合の差が発生無くなり、2条それぞれの首への当たりが同じになるほか、首の動きや襟の変形があっても、一端側を動かすことで2条それぞれの首への当たりをほぼ同じに保つことができ、襟口を構成する襟とコードとの間を潰さず、維持できる。
【0014】
襟又は襟刳の内側に架け渡された範囲で、可撓性のある筒状のカバーにコードを挿通させた構成は、単数のコードが首に当たる幅を広げ、複数本のコード(条数を増やしたコードを含む)を束ねて一体化する。コードに比べて首に当たる幅の広いカバーは、首に対する当たり感をコードより柔らかくし、特に複数本のコードがまとまって首に当たるようにすることで、首に当たるコードの感触が改善される。また、カバーを襟又は襟刳に固着すると、襟又は襟刳の内側におけるコードの位置が特定され、首に当たるコードの感触が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の開度調整機構を適用したファン付衣服の一例を表す正面図である。
【
図2】コードを襟刳の内側に掛け渡した本例の開度調整機構を表す一部破断拡大正面図である。
【
図3】コードを襟刳の内側に掛け渡した本例の開度調整機構を表す一部破断拡大平面図である。
【
図4】巻取装置によりコードを巻き取った状態の本例の開度調整機構を表す一部破断拡大正面図である。
【
図5】巻取装置によりコードを巻き取った状態の本例の開度調整機構を表す一部破断拡大平面図である。
【
図6】巻取装置からコードを解放した状態の本例の開度調整機構を表す一部破断拡大正面図である。
【
図7】巻取装置からコードを解放した状態の本例の開度調整機構を表す一部破断拡大平面図である。
【
図8】コードを襟の内側に掛け渡した別例の開度調整機構を表す一部破断拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の開度調整機構1は、腰部に左右一対のファン29を備えるファン付衣服2に対して、例えば
図1に見られるように、コード11を襟刳24に掛け渡し、巻取装置12を肩口に設けて構成される。本例の開度調整機構1は、折り返して開いた環状のコード11と、襟21の外側に設けられた巻取装置12とから構成される。コード11は、伸縮しない紐体で、後見頃23の襟刳24に沿って架け渡されている。
【0017】
本例のコード11は、
図2及び
図3に見られるように、後見頃23の襟刳24の内側かつ右側(各図中では左側)に設けたループ片28に通した折り返し部分111を一端側として位置固定され、折り返し部分111から上下2段で平行に延びる上条112及び下条113の他端側を、後見頃23の襟刳24の内側かつ左側(各図中右側)に設けた上下2段の取出孔25それぞれから襟刳24の外側に引き出されることにより、襟刳24の内側に2条が架け渡された構成になっている。
【0018】
コード11の上条112及び下条113は、一体のカバー13に覆われている。カバー13は、伸縮自在な可撓性素材(薄手の生地等)で構成された筒体で、コード11を掛け渡す方向に延びる中央縫着線131により、上下に別れて左右に延びる空間を区画して設け、それぞれの空間に上条112及び下条113を挿通している。また、カバー13は、端部縫着線132により、左端及び右端を後見頃23の襟刳24の内側に固着している。
【0019】
コード11の折り返し部分111を位置固定するループ片28は、後見頃23と同素材の帯片を二つ折りにし、折り返して重ねた端部側をループ片縫着部281により、後見頃23の襟刳24の内側かつ右側に固定されている。本例のループ片26は、コード11の折り返し部分111を上下方向に通して、移動自在にコード11を保持している。このほか、コード11の折り返し部分111を移動自在に通して保持する手段として、後見頃23の襟刳24の内側左側に固定される金属製又は樹脂製リングを用いることもできる。
【0020】
本例の巻取装置12は、前見頃22及び後見頃23の縫着線を跨いで襟21の左横(図中右横)に設けられた保護パッドに固定される円盤状のベース部121と、回動自在にベース部121に取り付けられる円筒状のリール部122と、リール部122の回動方向を一方向に制限したり、リール部122の回動方向の制限を解除して回動自在にしたりする円筒状の操作部123とを備えて構成される。保護パッド27は、ベース部121を支持する強度を備えた部材である。前見頃22及び後見頃23が必要十分な強度を有すれば、ベース部121を前見頃22及び後見頃23に直接設けてもよい。
【0021】
ベース部121は、円環状のラチェットギアを設けた周壁内にリール部122を回動自在に収納している。リール部122は、ラチェットギアに特定方向でのみ掛合する爪を設けてあり、コード11の他端側を接続している。操作部123は、リール部122を回動軸線に沿って移動可能な状態でリール部122の回動方向に掛合し、リール部122を回動操作させる。本例の巻取装置12は、操作部123をベース部121に向けて移動させてリール部122の爪をベース部121のラチェットギアに掛合させた状態で、操作部123及びリール部122を右回りのみさせる。
【0022】
リール部122に接続されたコード11は、リール部122の爪をベース部121のラチェットギアに掛合させた状態で操作部123を右回りさせると、リール部122に巻き取られる。リール部122は、爪をラチェットギアに掛合させた状態では左回りしないので、コード11の巻き取られた状態が維持される。リール部122に巻き取られたコード11は、操作部123をベース部121から遠ざけると、リール部122の爪がベース部121のラチェットギアから外れ、リール部122が右回り及び左回りが可能となるので、リール部122を巻き戻して引き出せる。
【0023】
開度調整機構1の働きを説明する。本例のファン付衣服2は、
図2及び
図3に見られるように、開度調整機構1により襟21とコード11との間に襟口26aが形成される。本例の開度調整機構1は、コード11は上条112及び下条113の2条を一体のカバー13に通し、カバー13の両端を端部縫着線132により襟刳24に固着している。このため、コード11は、カバー13の端部縫着線132に挟まれた間が襟刳24から離れて架け渡され、コード11が架け渡された範囲の襟刳24が後方に膨らみ、続く襟21が変形して襟口26a(
図2中ハッチング部分)が形成される。
【0024】
コード11は、襟刳24に掛け渡され、襟21の変形を導いて襟口26aを形成するだけではなく、着用者の首3の背面側に当接し、背面側では着用者の首3が襟21に直接接触しないようにする(
図3参照)。これにより、着用者の首3がどのように動いても、着用者の首3が襟口26aを変形させたり、塞いだりする事態を避けることができる。このように、本発明の開度調整機構1は、形成された襟口26aを保形する働きも有する。
【0025】
本発明の開度調整機構1は、コード11を巻取装置12に巻き取ったり、解放したりして、襟口26aを開度調整する点に特徴を有する。例えば
図2及び
図3に見られる状態を基準状態とし、襟刳24に架け渡されたコード11におけるカバー13の端部縫着線132間の長さ=端部縫着線間距離をLa、襟口26aの左右中間におけるコード11から襟21の内側までの長さ=襟口奥行きをDaとする。襟口26aの開口の大きさは、端部縫着線間距離Laと襟口奥行きDaとの積の1/2強である。
【0026】
基準状態(
図2及び
図3)から巻取装置12の操作部123を右回りに回すと、コード11が巻き取られ、
図4及び
図5に見られるように、襟口24に架け渡されるコード11が短くなり、基準状態の襟口26aに比べて後方に突出した平面視形状の襟口26b(
図4中ハッチング部分)が形成される拡大状態となる。襟口26bは、端部縫着線間距離Laに比べて端部縫着線間距離Lbが短くなる割合より、襟口奥行きDbが襟口奥行きDaより大きくなる割合が大きいことから、開口の大きさが大きくなる。
【0027】
本例のコード11は、上条112及び下条113が巻取装置12のリール部122により同時に巻き取られる。ここで、本例のコード11は、折り返し部分111をループ片28に通し、位置固定される一端側を自由状態にしている。このため、上条112及び下条113は、いずれもが弛むことなく巻取装置12に巻き取られ、等しい緊張状態で襟口24に架け渡される。これにより、襟口26bを潰すことなく、着用者の首3に対するコード11の当たり具合を一定に保つ。本例の場合、着用者の首3に対するコード11の当たり具合の改善は、上条112及び下条113を包むカバー13の働きもある。
【0028】
基準状態(
図2及び
図3)から巻取装置12の操作部123を引き上げると、リール部122の爪とベース部121のラチェットギアとの掛合が解除されるため、リール部122の回動を自由にしてコード11を引き出すことができ、
図6及び
図7に見られるように、襟口24に架け渡されるコード11を長くして、基準状態の襟口26aに比べて扁平に潰れた平面視形状の襟口26c(
図6中ハッチング部分)が形成される縮小状態となる。襟口26cは、端部縫着線間距離Laに比べて端部縫着線間距離Lcが長くなる割合より、襟口奥行きDbが襟口奥行きDcより小さくなる割合が大きいことから、開口の大きさが小さくなる。
【0029】
本発明の開度調整機構1は、襟口の開口調整が段階的ではなく、襟口26a(基準状態)と襟口26b(拡大状態)との中間の大きさや、襟口26a(基準状態)と襟口26c(縮小状態)との中間の大きさも可能であり、連続的に開口調整ができる。そして、本発明の開度調整機構1は、ファン付衣服2を着用した状態で衣服上部に設けた巻取装置12を着用者自身が操作して、襟口の開口調整ができる。襟口の連続的な開口調整やファン付衣服2を着用した状態での開口調整は、従来の開度調整機構に見られない特徴である。
【0030】
本発明の開度調整機構1は、
図8に見られるように、襟21の内側にコード11を掛け渡す別例の構成でも構わない。別例の開度調整機構1は、巻取装置12が本例(
図2以下)と同じ衣服上部の保護パッド27上に設けられているが、コード11が襟21の内側下方、襟刳24に沿って架け渡されている点で相違する。別例の襟21は襟先のない構造であるが、襟先のある襟の場合、コード11は襟台(襟腰)の内側に掛け渡す。別例の開度調整機構1による開度調整は、襟21の内側に掛け渡すコード11の長さに応じて本例と同様に働き、直接的に襟21を変形させる。
【符号の説明】
【0031】
1 開度調整機構
11 コード
111 折り返し部分
112 上条
113 下条
12 巻取装置
121 ベース部
122 リール部
123 操作部
13 カバー
131 中央縫着線
132 端部縫着線
2 ファン付衣服
21 襟
22 前見頃
23 後見頃
24 襟刳
25 取出孔
26a 襟口(開口中)
26b 襟口(開口大)
26c 襟口(開口小)
27 保護パッド
28 ループ片
281 ループ片縫着部
29 ファン
3 着用者の首
La 端部縫着線間距離(中)
Lb 端部縫着線間距離(大)
Lc 端部縫着線間距離(小)
Da 襟口奥行き(中)
Db 襟口奥行き(大)
Dc 襟口奥行き(小)