IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛知県の特許一覧

<>
  • 特開-検体中の核酸を回収する方法 図1
  • 特開-検体中の核酸を回収する方法 図2
  • 特開-検体中の核酸を回収する方法 図3
  • 特開-検体中の核酸を回収する方法 図4
  • 特開-検体中の核酸を回収する方法 図5
  • 特開-検体中の核酸を回収する方法 図6
  • 特開-検体中の核酸を回収する方法 図7
  • 特開-検体中の核酸を回収する方法 図8
  • 特開-検体中の核酸を回収する方法 図9
  • 特開-検体中の核酸を回収する方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068351
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】検体中の核酸を回収する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20230510BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20230510BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20230510BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
C12N15/10 120Z
C12Q1/6806 Z ZNA
C12Q1/6844 Z
C12M1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179373
(22)【出願日】2021-11-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2020年(令和2年)11月14日~16日 https://sites.google.com/view/edna-popeco-2020/にて発表 2021年(令和3年)2月26日 https://www.naro.go.jp/event/list/2021/01/137430.htmlにて発表
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度農林水産研究推進事業委託プロジェクト研究「農業被害をもたらす侵略的外来種の管理技術の開発」及び「果樹等の幼木期における安定生産技術の開発」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000116622
【氏名又は名称】愛知県
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良地
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB20
4B029CC01
4B029CC02
4B029DG08
4B029HA02
4B029HA06
4B063QA01
4B063QQ18
4B063QQ19
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS25
4B063QS32
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】環境水や土壌中に含まれるDNAを簡易な装置でろ過分離および抽出する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】水に懸濁したガラス繊維に検体中の核酸を吸着させる工程、及び核酸が吸着したガラス繊維を、微細な編み目構造を有するシートでろ過分離することにより回収する工程を含む、検体中の核酸を回収する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に懸濁したガラス繊維に検体中の核酸を吸着させる工程、及び核酸が吸着したガラス繊維を、微細な編み目構造を有するシートでろ過分離することにより回収する工程を含む、検体中の核酸を回収する方法。
【請求項2】
核酸が吸着したガラス繊維を、微細な編み目構造を有するシートでろ過分離することにより回収する工程を、
(a)液体を流入するための開口部および液体を排出するための開口部を有する袋、及び
(b)前記の液体を排出するための開口部に設置された、2つの円筒管に挟まれた微細な編み目構造を有するシート、
を有するサンプリングバッグを使用して実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数個のサンプリングバッグを並列させて、複数個の検体を同時にろ過する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
液体を排出するための開口部に吸引ポンプを連結させすることによって、ろ過時間を短縮させる、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
核酸が吸着したガラス繊維を、微細な編み目構造を有するシートでろ過分離することにより回収する工程を、
液体を流入するための開口部および液体を排出するための開口部を有する吸引カップと、前記の液体を排出するための開口部から排出される液体を受けるための容器とを含み、前記吸引カップと前記容器との間に、微細な編み目構造を有するシートが設置されているDNAろ過器具を使用して実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数個のDNAろ過器具を並列させて、複数個の検体を同時にろ過する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
液体を排出するための開口部に吸引ポンプを連結させすることによって、ろ過時間を短縮させる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
微細な編み目構造を有するシートの目開きが、0.18mm~0.28mmである、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
核酸を吸着させるためのガラス繊維が、ジルコニアビーズとともに振動数25Hzで5秒から15秒粉砕したものである、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
核酸を吸着させるためのガラス繊維の繊維長の分布が、繊維長50μm以下が10~65%、繊維長51μm以上300μm以下が30~60%、繊維長301μm以上が5~40%である、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載の方法により検体中の核酸を回収する工程、及び
回収した核酸を用いて、LAMP法によりDNAの増幅を行う工程、
を含む、環境DNAの検出方法。
【請求項12】
(a)液体を流入するための開口部および液体を排出するための開口部を有する袋、及び
(b)前記の液体を排出するための開口部に設置された、2つの円筒管に挟まれた微細な編み目構造を有するシート、
を有するサンプリングバッグ。
【請求項13】
液体を流入するための開口部および液体を排出するための開口部を有する吸引カップと、前記の液体を排出するための開口部から排出される液体を受けるための容器とを含み、前記吸引カップと前記容器との間に、微細な編み目構造を有するシートが設置されているDNAろ過器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境水や土壌中に含まれるDNAを簡易な装置でろ過分離および抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
環境DNAを環境水からろ過、分離、抽出する方法は、一般社団法人環境DNA学会発行の環境DNA調査・実験マニュアル(非特許文献1)に詳細が記載されている。非特許文献1のマニュアルでは、環境水1Lから環境DNAをろ過、分離する方法として、カートリッジ式のフィルターを用いる方法と、ガラス繊維ろ紙を用いる方法の2種類が定義されている。いずれの方法もリアルタイムPCR法または次世代シーケンサーによる分析を前提としており、DNeasy Blood and Tissue Kit(Qiagen)によりDNAを抽出する。
【0003】
上記した環境DNAのろ過、分離法は、DNAやRNAなどの核酸が、カオトロピックの塩の存在下でガラス、シリカゲル、石英ウール、シリカ、ガラス膜又はポリマーなどに吸着する原理を利用したものであり、この原理は一般的に広く知られている。この原理を利用したDNAを抽出する方法としては、ガラス繊維またはガラス粉末を組み込んだカートリッジ式のフィルターによってDNAを精製する方法(例えば、特許第3045922号公報)、電気泳動後のアガロースゲルからガラス粉末にDNAを吸着させて回収する方法(例えば、特開昭59-227744号公報)、ガラス粉末に生体試料のDNAを吸着させて遠心分離により回収する方法(特開平03-007582号公報)などが報告されている。また、DNAをシリカ粒子等の懸濁液に吸着させ、メンブレンフィルター上で回収する方法(特許第2680462号公報及び特開平10-155481号公報)も報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3045922号公報
【特許文献2】特開昭59-227744号公報
【特許文献3】特開平03-007582号公報
【特許文献4】特許第2680462号公報
【特許文献5】特開平10-155481号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】一般社団法人環境DNA学会(2020)環境DNA調査・実験マニュアル ver.2.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1~5に記載されているカオトロピック物質にDNAを吸着させて回収する方法は、微量または少量のDNA溶液を対象としていることから、有機物を含む浮遊物に汚染された清浄ではない水を1L程度ろ過する必要がある一般的な環境DNA分析には適用できない。
【0007】
環境水を対象とする「環境DNA調査・実験マニュアル」(非特許文献1)に記載の方法においても、1Lを目詰まりさせることなくろ過することはしばしば困難である。同時に、これら従来の方法はいずれも施設の整った実験室で実施する必要があり、広範囲の環境DNA調査の物理的な妨げとなっていた。そこで、環境水を実験施設に持ち帰ることなく、採水現場で多量の環境DNAのろ過分離を可能とする技術の開発が求められていた。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明は、簡易な装置で環境DNAをろ過分離および抽出する方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、水に懸濁したガラス繊維に検体中の核酸を吸着させ、それらのガラス繊維を微細な編み目構造を有するシートで回収することにより、簡易に検体中の核酸をろ過及び分離できることを見出した。本発明によれば、以下の発明が提供される。
【0010】
<1> 水に懸濁したガラス繊維に検体中の核酸を吸着させる工程、及び核酸が吸着したガラス繊維を、微細な編み目構造を有するシートでろ過分離することにより回収する工程を含む、検体中の核酸を回収する方法。
<2> 核酸が吸着したガラス繊維を、微細な編み目構造を有するシートでろ過分離することにより回収する工程を、
(a)液体を流入するための開口部および液体を排出するための開口部を有する袋、及び
(b)前記の液体を排出するための開口部に設置された、2つの円筒管に挟まれた微細な編み目構造を有するシート、
を有するサンプリングバッグを使用して実施する、<1>に記載の方法。
<3> 複数個のサンプリングバッグを並列させて、複数個の検体を同時にろ過する、<2>に記載の方法。
<4> 液体を排出するための開口部に吸引ポンプを連結させすることによって、ろ過時間を短縮させる、<2>又は<3>に記載の方法。
<5> 核酸が吸着したガラス繊維を、微細な編み目構造を有するシートでろ過分離することにより回収する工程を、
液体を流入するための開口部および液体を排出するための開口部を有する吸引カップと、前記の液体を排出するための開口部から排出される液体を受けるための容器とを含み、前記吸引カップと前記容器との間に、微細な編み目構造を有するシートが設置されているDNAろ過器具を使用して実施する、<1>に記載の方法。
<6> 複数個のDNAろ過器具を並列させて、複数個の検体を同時にろ過する、<5>に記載の方法。
<7> 液体を排出するための開口部に吸引ポンプを連結させすることによって、ろ過時間を短縮させる、<5>又は<6>に記載の方法。
<8> 微細な編み目構造を有するシートの目開きが、0.18mm~0.28mmである、<1>から<7>の何れか一に記載の方法。
<9> 核酸を吸着させるためのガラス繊維が、ジルコニアビーズとともに振動数25Hzで5秒から15秒粉砕したものである、<1>から<8>の何れか一に記載の方法。
<10> 核酸を吸着させるためのガラス繊維の繊維長の分布が、繊維長50μm以下が10~65%、繊維長51μm以上300μm以下が30~60%、繊維長301μm以上が5~40%である、<1>から<9>の何れか一に記載の方法。
<11> <1>から<10>の何れか一に記載の方法により検体中の核酸を回収する工程、及び
回収した核酸を用いて、LAMP法によりDNAの増幅を行う工程、
を含む、環境DNAの検出方法。
<12> (a)液体を流入するための開口部および液体を排出するための開口部を有する袋、及び
(b)前記の液体を排出するための開口部に設置された、2つの円筒管に挟まれた微細な編み目構造を有するシート、
を有するサンプリングバッグ。
<13> 液体を流入するための開口部および液体を排出するための開口部を有する吸引カップと、前記の液体を排出するための開口部から排出される液体を受けるための容器とを含み、前記吸引カップと前記容器との間に、微細な編み目構造を有するシートが設置されているDNAろ過器具。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、土壌懸濁水を含む環境水中のDNAを目詰まりすることなく容易にろ過分離できる。このろ過物は市販の簡易な試薬でDNA抽出でき、こうして抽出されたDNAはPCR法以外にもLAMP法で分析可能である。これにより、環境DNA分析をオンサイトで実施でき、分析効率が飛躍的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、破砕用ビーズを用いて水中で破砕したガラス繊維の写真である。
図2図2は、図3または図4の装置に、図1のガラス繊維を加えて、環境水をろ過した後にメッシュシート上に残ったろ過物の写真である。
図3図3は、環境水を簡易にろ過分離する装置の概略構成を示す説明図である。
図4図4は、土壌懸濁水をろ過分離する器具の概略構成を示す説明図である。
図5図5は、実施例におけるガラス繊維の破砕処理別の繊維長の割合を示す。
図6図6は、実施例におけるメッシュシート別のガラス繊維の捕捉率(%)の平均値を示す。
図7図7は、実施例における池水1Lのろ過に要する時間(秒)の平均値を示す。
図8図8は、実施例におけるカワヒバリガイ環境DNAの定量結果(平均値)を示す。
図9図9は、実施例におけるガラス繊維の添加量とDNA吸着率の関係を示す。
図10図10は、実施例におけるカワヒバリガイ飼育水の環境DNAをリアルタイムPCR法およびLAMP法で分析し、陽性率を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
本発明による検体中の核酸を回収する方法は、水に懸濁したガラス繊維に検体中の核酸を吸着させる工程、及び核酸が吸着したガラス繊維を、微細な編み目構造を有するシートでろ過分離することにより回収する工程を含む方法である。
【0014】
本発明においては、検体としては環境から採取した検体を使用することができる。環境とは、土壌、堆肥、汚泥、下水、河川、湖沼、海水、海底、昆虫、動物、及び植物の固体の組織内部及び表面、並びに、排泄物等、微生物の生育環境を意味する。環境から採取した検体とは、具体的には、土壌、堆肥、汚泥、下水、河川、湖沼、海水、海底、昆虫、動物、及び植物の固体の組織内部及び表面、並びに、排泄物等から採取された検体が挙げられる。
【0015】
具体的には、市販のガラス繊維ろ紙を少量の水中で破砕して懸濁し、それを検体に加えることで、検体中のDNAをガラス繊維に吸着させる。その後、樹脂製または天然素材のガーゼ等の微細な編み目構造を有するシートをフィルターとして、ガラス繊維をろ過、回収する。
【0016】
微細な編み目構造を有するシートは、懸濁したガラス繊維を補足するだけの目開きがあればよく、先行技術でみられるようなメンブレンフィルターやガラス繊維ろ紙のような極微細な目開きである必要はない。逆に目開きが微細すぎるとろ過時に目詰まりを生じがちであるし、また、広すぎるとガラス繊維が捕捉されずに流出してしまい、回収できない。従って、適度な目開きのフィルターを用いることで池や川などの清浄でない水をろ過する場合でも、目詰まりすることはなくガラス繊維を捕捉、回収できる。
【0017】
微細な編み目構造を有するシートの目開きは、一般的には、0.07mm~0.50mmあり、好ましくは0.10mm~0.40mmであり、好ましくは0.18mm~0.28mmである。
【0018】
核酸を吸着させるためのガラス繊維としては、ジルコニアビーズとともに振動数25Hzで5秒から15秒粉砕したものを使用することが好ましい。
【0019】
核酸を吸着させるためのガラス繊維の繊維長の分布としては、好ましくは、繊維長50μm以下が10~65%(より好ましくは10~30%)、繊維長51μm以上300μm以下が30~60%(より好ましくは50~60%)、繊維長301μm以上が5~40%(より好ましくは10~30%)であることが好ましい。
【0020】
本発明では、河川水、池水、海水、など環境中の水に溶存するDNAを現場で採取およびろ過する器具として、一例としては、以下の構成を採用することができる。検体を流入または排出するための開口部を備えた、およそ容量2リットル以下を目安としたポリエチレン製またはその他の合成樹脂製のサンプリングバックを用い、開口部に塩化ビニル製またはその他の合成樹脂製からなる円筒管を1個または複数個連結し、間にメッシュシートまたはガーゼまたはその他微細な編み目構造を有するシートを装着する。これを簡易DNAろ過用のサンプリングバッグとする。
【0021】
また、土壌懸濁水などの対象の検体が少量の場合は、上記のサンプリングバッグ以外にも市販のろ過瓶にメッシュシート等を介して重力ろ過することもできる。
【0022】
環境水を入れたサンプリングバックまたは土壌懸濁水などにあっては小容量の容器に、懸濁または溶解したガラス繊維を適量加えて混合する。添加するガラス繊維は、メーカー、規格は問わず、また、容器に少量の水と規定量のガラス繊維ろ紙を加えて、破砕用ビーズとともに激しく振ることで、繊維が切断されず懸濁させることができる。ガラス繊維を混合することで検体中のDNAがガラス繊維に吸着保持されるため、サンプリングバッグを開口部が下部になるように保持することで、ガラス繊維以外の有機物を含む浮遊物がメッシュシートの網目を通過して排水され、DNAを吸着したガラス繊維を含むろ過物がメッシュシート上に堆積する。このとき、サンプリングバッグの側面に圧力を加えることで、ろ過時間を短縮することができる。
【0023】
この方法は、サンプリングバッグまたはフィルターをフック等による吊り下げまたは架台等に一定間隔で列状に並べることで、複数個の検体を同時にろ過することも可能である。
【0024】
また、サンプリングバッグの排水側にポンプを接続して吸引ろ過を行い、ろ過時間を短縮させることもできる。
【0025】
ろ過物は、例えばMightyPrep reagent for DNA (Takara)等の簡易DNA抽出試薬でDNA抽出が可能である。
【0026】
上記で抽出されたDNAは、核酸増幅反応に供することができる。
核酸増幅反応としては、当業者にとって公知の方法を用いることができ、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)が挙げられる。PCR法においては、環境DNAを鋳型として、特定のプライマーセットを用いてPCRを行うことにより増幅産物を得ることができる。PCR法は、リアルタイムPCR法でもよい。
【0027】
また、核酸増幅反応としては、PCR法だけではなく、特殊な分析装置を必要としない核酸増幅法であるloop-mediated isothermal amplification(LAMP)法を行ってもよい。LAMP法は、標的遺伝子の配列から6つ~8つの領域を選んで組み合わせた4種類~6種類のプライマーを用いて、鎖置換反応を利用して増幅させる方法である。プライマーの設計によって、最初の増幅産物のプライマー結合部位にループ構造を生じるようになる。ループ部分は1本鎖なので、次のプライマーが結合できる。鎖置換活性の高い特殊なDNA合成酵素は、進行方向にある2本鎖DNAを解離しながら、自らの伸長反応を進めていく。最終的には、もとの標的配列の約整数倍の長さの増幅産物が1時間ほどの約65℃の反応で蓄積する。したがって反応産物を電気泳動するとラダー状である。PCR法と比較して、1本鎖から2本鎖への変性反応が必要なく、60~70℃の定温または65℃前後の定温で反応が進行することから、サーマルサイクラーは不要である。また、増幅速度が速く、特異性も高いことから、反応液の白濁を見るだけでテンプレート(標的DNA)が増えたかどうかを確認できる。
【0028】
以下に、ガラス繊維を用いたDNAの採取・ろ過法の概要、フィールド等における環境水の採取・ろ過法、および土壌懸濁水のろ過法に分けて、図面に基づいて説明する。
【0029】
ガラス繊維を用いたDNAの採取・ろ過法においては、図1に示す破砕して水に懸濁したガラス繊維を環境水1Lに加えて撹拌し、従来の水のろ過用フィルターホルダーなどにメッシュシートを固定し、ガラス繊維を混合した環境水を通水させてろ過し、メッシュシート上に堆積したガラス繊維(図2)を回収する。
【0030】
ガラス繊維の規格やメーカーは問わない。ガラス繊維の量は、実験の結果、5mg~20mgが望ましいことが明らかとなっている。また、ガラス繊維は破砕方法によっては繊維が短くなりすぎ、メッシュシートを通過して回収できない場合があるため、繊維が分断されすぎない程度に破砕し、さらにそれらを回収するのに適した目開きのメッシュシートを組み合わせる必要がある。
【0031】
図3は、(a)液体を流入するための開口部および液体を排出するための開口部を有する袋、及び(b)前記の液体を排出するための開口部に設置された、2つの円筒管に挟まれた微細な編み目構造を有するシート、を有するサンプリングバッグの一例を示す。図3の装置は、キャップ付きサンプリングバッグ1、ホース2、シリコン栓3、キャップに装着する塩化ビニル製のアダプタ4 、メッシュシート5 、メッシュシート固定用の塩化ビニル製のアダプタ6から構成されている。図3のサンプリングバッグは、フィールド等における環境水の採取・ろ過法において使用することができる。
【0032】
キャップ付きサンプリングバッグ1は環境水と懸濁させたガラス繊維を混合するための容器である。採取した環境水1Lをサンプリングバック1に入れ、懸濁させたガラス繊維を加え、良く撹拌する。その後、ろ過用のアタッチメントを装着する。ろ過用のアタッチメントは次の通りである。すなわり、サンプリングバッグの開口部内径と一致する外径の水道用ホース2をシリコン栓3を介して、アダプタ4に接続する。メッシュシート5を被せ、さらにその上からアダプタ6でメッシュシートを固定する。装着後、サンプリングバッグとろ過用のアタッチメントを反転させ、環境水を重力ろ過する。環境水の濁りが酷い場合は、重力ろ過だけではろ過できないことが多いため、手でバックの側面を押さえて加圧しながら環境水を排出する。サンプリングバッグ内の環境水のおおよそを排出した後、手でバッグを押さえて、バッグおよびろ過用のアタッチメント内の環境水を完全に排出する。その後、アダプタ6をゆっくり外して、メッシュシートを取り出す。メッシュシート上には図3のように、DNAを含んだガラス繊維がフィルム状に堆積しており、それを滅菌したつまようじまたはピンセットなどで慎重に巻き取り、0.2mL~1.5mLのPCRチューブ等に入れる。ここまでがフィールド等における環境水の採取・ろ過法である。
【0033】
図4は、液体を流入するための開口部および液体を排出するための開口部を有する吸引カップと、前記の液体を排出するための開口部から排出される液体を受けるための容器とを含み、前記吸引カップと前記容器との間に、微細な編み目構造を有するシートが設置されているDNAろ過器具の一例を示す。図4のDNAろ過器具は、吸引カップ11、メッシュシート12、吸引瓶13から構成されている。図4のDNAろ過器具は、土壌懸濁水のろ過法において使用することができる。
【0034】
土壌を加えて撹拌した水にガラス繊維を適量加えてよく撹拌する。実験を重ねた結果、約100mLの水に土壌を0.5g加えて良く撹拌し、約5mgのガラス繊維を加えるとよいことが明らかとなっている。メッシュシートを挟んだ吸引カップを吸引瓶にセットし、ガラス繊維を加えた土壌懸濁水を注ぎ入れる。このとき、重力のみでろ過できるので、必ずしもポンプ等で吸引する必要はない。ろ過後に吸引カップを外してメッシュシートを回収する。その後は上述の方法と同様にしてフィルム状に堆積したDNAを含むガラス繊維をPCRチューブ等に入れる。
【0035】
以下の実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0036】
<1>ガラス繊維の性状とそれを回収するためのメッシュシートの組み合わせ
添加するガラス繊維を効率良く回収できるメッシュシートの目開きを明らかにするために、はじめに、破砕方法の違いによるガラス繊維の性状(長さ)を計測した。ガラス繊維は(GA-55、Advantec)を用い、ガラス繊維10mgに1mlのDWを加え、TissueLyser(Qiagen)を用いて、約5mmのジルコニアボールとともに振動数25Hzで5秒、15秒、60秒破砕した場合およびビニル袋内で手もみした場合の4通りの破砕を行い、その繊維長を光学顕微鏡で計測した。
【0037】
次に、目開きが1.0mm、0.28mm、0.18mm、0.07mmの4種類のメッシュシートを用いて、上記の破砕方法で調製したガラス繊維10mgを懸濁した水道水をろ過し、フィルター上に残ったガラス繊維の重量(ガラス繊維捕捉率)を測定した。実験は3回実施した。
【0038】
次に、目詰まりしないメッシュシートを選定するために、浮遊物の多い池の水1Lを上記の破砕方法で調製したガラス繊維およびメッシュシートの様々な組み合わせでろ過を行い、目詰まりの有無およびろ過時間を計測した。このときのろ過時間は5秒以内に連続して滴下が確認できなくなるまでの時間と定義した。ただし、目開き1.0mmのフィルターはこれまでの実験から使用に適さないことが明らかだったため、対象から除外した。実験は3回実施した。
【0039】
<2>環境DNAの収量の比較(1):ガラス繊維の調製法とメッシュシートの決定
5秒、15秒、60秒破砕したガラス繊維を使って、カワヒバリガイ飼育水に含まれるカワヒバリガイ環境DNAをろ過、分離し、DNA抽出量を比較した。カワヒバリガイ飼育水は、カワヒバリガイ約50匹を飼育している水量約60Lの水を用いた。飼育水1Lに破砕懸濁したガラス繊維GA-55を10mg加え、良く撹拌した後に、0.28mm、0.18mm、0.07mmの3種類のメッシュシートでろ過し、ガラス繊維を回収した。MightyPrep Reagent for DNA(Takara)でDNAを抽出し、リアルタイムPCR装置CFX96(BioRad)を用いて、カワヒバリガイ特異的PCRプライマー(Xia et al, 2018)によりPCRを行い、カワヒバリガイ環境DNAを定量した。実験は3回実施した。
【0040】
Xia Z, Zhan A, Gao Y, Zhang L, Haffner DG, MacIsaac HJ (2018) Early detection of a highly invasive bivalve based on environmental DNA (eDNA). Biol Invasions 20: 437-447. doi:org/10.1007/s10530-017-1545-7
【0041】
<3>環境DNAの収量の比較(2):ガラス繊維の添加量の決定
ガラス繊維により環境水中のDNAが吸着される効果を明らかにするために、カワヒバリガイ飼育水を用いて実験を行った。カワヒバリガイ飼育水は、カワヒバリガイ約20匹を飼育している水量約60Lの水を用いた。飼育水1Lに破砕時間15秒で破砕懸濁させたガラス繊維GA-55を5mg~50mg加え、良く撹拌した後に、100メッシュのステンレススクリーンを通過させて、ガラス繊維を取り除いた。その後、環境DNA調査・実験マニュアル(一般社団法人環境DNA学会)に基づいて飼育水中のカワヒバリガイ環境DNAをろ過・抽出した。すなわち、孔径0.7μmのガラス繊維GF/F(Whatman)を用いて吸引ろ過を行い、回収したGF/FからDNeasy Blood and Tissue kitによりDNAを抽出した。リアルタイムPCR装置CFX96を用いて、カワヒバリガイ特異的PCRプライマー(Xia et al, 2018)によりPCRを行い、カワヒバリガイ環境DNAを定量した。吸着DNAはガラス繊維を添加しなかった飼育水の抽出DNAから、ガラス繊維を添加した後に除去した飼育水の抽出DMAを差し引いて求め、吸着率を算出した。実験は4回実施した。
【0042】
<4>各種ガラス繊維によるPCR法およびLAMP法による環境DNA検出
Whatman社、ADVANTEC社、アズワンの3つのメーカーから複数の規格のガラス繊維ろ紙を選び、それぞれ10mgを破砕時間15秒で破砕懸濁してカワヒバリガイ飼育水1Lに添加した。図3に示す本発明の簡易ろ過法(メッシュシート 目開き0.18mm)でガラス繊維を回収し、MightyPrep Reagent for DNAでDNAを抽出した。リアルタイムPCRによりCt値を測定するとともにカワヒバリガイ特異的なLAMPプライマーを用いてLAMP反応を行った。カワヒバリガイ特異的LAMPプライマーとして、GenBankから得たカワヒバリガイのmtCOI遺伝子配列(Accession No.AB520627,DQ264395,JX177087)を基に、PrimerExplorer Ver.5( 栄研化学 http://primerexplorer.jp/)を用いて、F3、B3、FIP、BIPおよびFloopから構成されるプライマーセットを設計した(表1)。LAMP反応液は、20mM Tris-HCl(pH8.8)、10mM KCl、10mM (NHSO、0.1% Tween20、0.8M betain(FUJIFILM Wako)、8mM MgSO、1.4mM dNTPs、0.2μM F3およびB3 プライマー、1.6 μM FIP およびBIPプライマー、0.8μM Floopプライマー、8units Bst DNA polymerase(Nippon Gene)を混合し、滅菌水およびDNA抽出液1 μlを加えて、総量20μlとした。LAMP反応は、リアルタイム濁度計LA200(Teramecs)を用い、濁度が閾値0.1に達した時間を計測した。
【0043】
【表1】
【0044】
<5>カワヒバリガイ環境DNAのPCR検出およびLAMP検出の比較(室内実験)
カワヒバリガイ飼育水1Lを簡易ろ過法(ガラス繊維ろ紙GA-55、添加量10mg、15秒破砕、0.18mmメッシュシート)と従来法(環境DNA調査・実験マニュアル)でろ過し、前者についてはMightyPrep Reagent for DNA で、後者についてはDNeasy Blood and Tissue kitによりDNAを抽出した。リアルタイムPCRによりCt値を測定するとともにカワヒバリガイ特異的なLAMPプライマーを用いてLAMP反応を行い、リアルタイム濁度計LA200を用いて反応時間を計測し、30分以内に濁度が閾値0.1に達した場合を陽性とした。試験は20回実施した。
【0045】
<6>カワヒバリガイ環境DNAのPCR検出およびLAMP検出の比較(野外調査)
農業用水(枝下用水、愛知県豊田市)でそれぞれ約1km離れた10カ所の地点から1L採水し、簡易ろ過法(ガラス繊維ろ紙GA-55、添加量10mg、15秒破砕、0.18mmメッシュシート)と従来法(環境DNA調査・実験マニュアル)でろ過した。前述と同様の試薬を用いてDNAを抽出し、リアルタイムPCR法およびLAMP法で分析した。
【0046】
<7>土壌懸濁水のDNA分析の比較
あらかじめDNA量が明らかなLambda DNA(TAKARA)を用いて、10copies/soilに濃度調製して、黄色土および黒ぼく土0.5gに加えて混合した。これを100mLの滅菌水に加え、さらに懸濁させたガラス繊維5mg(15秒破砕)を加えて良く撹拌し、図4に示すろ過分離を行う器具を用いてろ過し、回収したガラス繊維からMightyPrep Reagent for DNA でDNAを抽出した。同時に、市販の土壌DNA抽出キットであるNucleoSpin Soil(TAKARA)で添付のプロトコルに従ってDNAを抽出した。それぞれの抽出DNAについて、リアルタイムPCRを用いてLambda DNA検出用のPCRプライマー(Boulter et al,2016)によりqPCR反応を行い、DNA回収率を求めた。
Boulter N, Suarez FG, Schibeci S, Sunderland T, Tolhurst O, Hunter T, Hodge G, Handelsman D, Simanainen U, Hendriks E, Duggan K (2016) A simple, accurate and universal method for quantification of PCR. BMC Biotechnology: 16:27. doi:10.1186/s12896-016-0256-y
【0047】
<8>結果および考察
図5にガラス繊維(GA-55)の破砕処理別の繊維長を示した。破砕時間が長いほど繊維が短くなること、および手もみが最も繊維が短いことが明らかとなった。なお、データは省略するが、GA-55の他に、GB-140(Advantec)、GF/A(Whatman)、GF/D(同)、GF/F(同)について、15秒破砕後の繊維長を調査した結果、GF/Fの繊維が比較的長い傾向があったが、他には大きな差は見られなかった。
【0048】
図6にメッシュシート別のガラス繊維の捕捉率(%)の平均値を示した。1.0mmのシートではガラス繊維がほぼ通過してしまい、捕捉率が低かった。またシートの目開きが小さいほど、多くのガラス繊維を捕捉できることが明らかとなった。しかし、手もみのガラス繊維は繊維が短すぎて、最小の0.07mmのシートでさえ流失する割合が高いことがわかった。
【0049】
図7に池水1Lのろ過に要する時間(秒)の平均値を示した。シートの目開きが小さいほど、ろ過時間が長く、0.07mmのシートでは5秒破砕のガラス繊維以外は目詰まりして計測できなかった。図5および図6に示した結果から、ガラス繊維は手もみは適さず、5秒から60秒破砕すると良いこと、およびシートは0.28mmから0.18mmが適していることがわかった。
【0050】
図8にカワヒバリガイ環境DNAの定量結果(平均値)を示した。60秒破砕したガラス繊維および0.07mmシートの組み合わせが最もDNA量が多く、また破砕時間が長い(繊維が短い)ほどDNA量が多い傾向がみられた。しかし、これまでの実験から0.07mmのシートでは目詰まりする可能性が高いこと、および0.28mmまたは0.18mmのシートでは60秒破砕のガラス繊維の優位性が確認できないことから、ガラス繊維は5秒または15秒破砕すると良いこと、およびシートは0.28mmから0.18mmが適していることがわかった。
【0051】
図9にガラス繊維の添加量ごとのDNA吸着効果の実験結果を示した。横軸はガラス繊維の添加量を、縦軸は吸着率の平均値を表している。添加量50mgの場合は平均で83.7%のDNAがガラス繊維に吸着されたことが明らかとなった。しかし、反復間のばらつきが大きく、差が認められたのは20mgと50mgの吸着率だけであり、その他では有意差はなかった。添加量を50mgとした場合は、その後に行うMightyPrep Reagent for DNAによるDNA抽出の工程において、試薬による反応が不十分となることが多かった。従って、本発明において添加するガラス繊維の量は、DNA吸着率および抽出工程におけるハンドリングの観点から10mg~20mgが適量であると考えられた。
【0052】
表2に実験で使用したガラス繊維の種類、価格およびカワヒバリガイ飼育水中の環境DNAをリアルタイムPCRおよびLAMP法で分析した結果を示した。リアルタイムPCRの値はCt値を、LAMP法の値はLAMP反応により生じた濁度が閾値0.1に達した時間(分)を表している。この結果、リアルタイムPCR法もLAMP法も供試した10種類のガラス繊維の全てDNAが検出され、Ct値または反応時間(分)に大きな差はなかった。このことから、添加するガラス繊維のメーカーや規格を問わず、DNA吸着に使用できると考えられた。
【0053】
【表2】
【0054】
図10に簡易ろ過法と従来法でろ過抽出したカワヒバリガイ飼育水中の環境DNAについて、リアルタイムPCR法およびLAMP法で分析した結果を示した。簡易ろ過法で調製したDNAをLAMP分析した結果、20検体中19検体が陽性となり、陽性率が最も高かった。このことから簡易ろ過法でろ過抽出したDNAはLAMP分析に適していると考えられた。
【0055】
表3は、実施例における農業用水中のカワヒバリガイの環境DNAをリアルタイムPCR法およびLAMP法で分析し、陽性率を比較した表である。簡易ろ過法で調製したDNAはLAMP分析では全て陽性となり、従来法で抽出したDNAをPCR分析した場合と結果が完全に一致した。このことから前述の室内実験と同様に野外調査でも、簡易ろ過法でろ過抽出したDNAはLAMP分析に適していることが実証された。
【0056】
【表3】
【0057】
表4は、実施例における土壌に添加したLambda DNAを市販のキットとガラス繊維を用いた簡易ろ過法で抽出して、PCR法で分析した結果を示した表である。簡易ろ過法で調製した場合のDNA回収率は、黄色土では3.8~4.2%、黒ぼく土では0.7~1.5%だったのに対し、NucleSpin soil抽出のDNA回収率は、それぞれ約12.3%および11%だった。簡易ろ過法のDNA回収率は市販のDNA抽出キットの約1/3~1/16と低く、Ct値が3~4サイクル遅くなるものの、DNA増幅産物のTm値は市販抽出キットとほぼ一致しており、簡易ろ過法で土壌中のDNAを抽出することは可能と考えられた。
【0058】
【表4】
【0059】
以上の実験結果から、ガラス繊維に水中のDNAを吸着させてメッシュシート等で回収するという本発明の方法は、工程が極めて簡単であるだけでなく、その後のDNA抽出にMightyPrep Reagent for DNAに代表される簡易なDNA抽出試薬を利用でき、さらにこうして抽出したDNAは遺伝子診断法として最も一般的なPCR法だけでなく、むしろLAMP法での検出に適していることが明らかとなった。実施例では、環境水および土壌水を対象としたが、対象はこれらだけにとどまるものではない。例えば、空中に浮遊、飛散しているウイルス、花粉、胞子、微小昆虫、など、水に溶解されれば、その後の工程は環境水と同様に扱うことができると考えられる。従って、本発明は環境中の様々な生物相の分析に活用が期待できる。
【符号の説明】
【0060】
1 キャップ付きサンプリングバッグ
2 ホース
3 シリコン栓
4 塩化ビニル製のアダプタ
5 メッシュシート
6 塩化ビニル製のアダプタ
11 吸引カップ
12 メッシュシート
13 吸引瓶
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2023068351000001.app