(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068364
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】放射能評価装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/167 20060101AFI20230510BHJP
G21C 17/00 20060101ALI20230510BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
G01T1/167 C
G01T1/167 D
G21C17/00 500
G21F9/30 535F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179395
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】名雲 靖
(72)【発明者】
【氏名】関 洋
(72)【発明者】
【氏名】吉原 有里
(72)【発明者】
【氏名】上田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】角田 洋一
【テーマコード(参考)】
2G075
2G188
【Fターム(参考)】
2G075BA16
2G075BA19
2G075CA48
2G075DA08
2G075FA18
2G188AA19
2G188BB04
(57)【要約】
【課題】原子力発電施設から発生する廃棄物の放射能を、廃棄物の実際の汚染分布を反映させて、正確に評価することができる放射能評価装置を提供する。
【解決手段】本発明による放射能評価装置は、原子力発電施設から発生する廃棄物51の形状データを取得する形状データ取得装置12と、廃棄物51の汚染分布データを取得する汚染分布データ取得装置11と、形状データと汚染分布データを入力して放射線解析を実施して、放射線測定値を放射能へ換算する換算係数を廃棄物51について求める換算係数解析装置13と、廃棄物51の放射線を測定する放射線測定装置101と、放射線測定装置101が測定した廃棄物51の放射線のデータと、廃棄物51についての換算係数とを用いて、廃棄物51の放射能を算出する放射能算出装置103を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電施設から発生する廃棄物の形状データを取得する形状データ取得装置と、
前記廃棄物の汚染分布データを取得する汚染分布データ取得装置と、
前記形状データと前記汚染分布データを入力して放射線解析を実施して、放射線測定値を放射能へ換算する換算係数を前記廃棄物について求める換算係数解析装置と、
前記廃棄物の放射線を測定する放射線測定装置と、
前記放射線測定装置が測定した前記廃棄物の放射線のデータと、前記廃棄物についての前記換算係数とを用いて、前記廃棄物の放射能を算出する放射能算出装置と、
を備えることを特徴とする放射能評価装置。
【請求項2】
前記形状データ取得装置は、解体計画解析装置であり、
前記解体計画解析装置は、前記原子力発電施設の解体計画のシミュレーションを実施して、前記形状データを含むCADデータを生成する、
請求項1に記載の放射能評価装置。
【請求項3】
前記形状データ取得装置は、前記廃棄物の形状を測定する形状計測装置を備え、
前記形状計測装置は、前記廃棄物の形状を測定することにより、前記形状データを点群データとして取得する、
請求項1に記載の放射能評価装置。
【請求項4】
前記放射線測定装置は、前記廃棄物に付与された識別子と、前記識別子を有する前記廃棄物に対応する前記CADデータとを対応付けるリンク情報を生成する、
請求項2に記載の放射能評価装置。
【請求項5】
前記汚染分布データ取得装置は、汚染分布解析装置であり、
前記汚染分布解析装置は、前記原子力発電施設の汚染状況に基づいてシミュレーションを実施して、前記汚染分布データを取得する、
請求項1に記載の放射能評価装置。
【請求項6】
前記汚染分布データ取得装置は、放射線測定器であり、
前記放射線測定器は、前記廃棄物を測定して得た測定値から前記汚染分布データを取得する、
請求項1に記載の放射能評価装置。
【請求項7】
前記汚染分布データ取得装置は、腐食電位測定装置と、腐食電位評価装置を備え、
前記腐食電位測定装置は、前記原子力発電施設の内部の腐食電位を測定し、
前記腐食電位評価装置は、前記腐食電位の分布から前記汚染分布データを取得する、
請求項1に記載の放射能評価装置。
【請求項8】
過去に得られた前記汚染分布データを格納する放射能評価実績データベースと、
前記原子力発電施設の原子炉の運転データである原子炉運転データを格納する原子炉運転データベースと、
前記原子炉運転データベースが格納した前記原子炉運転データと、前記放射能評価実績データベースが格納した前記汚染分布データを入力して、前記原子炉運転データと前記汚染分布データとの関係を学習する学習推定装置と、
を備え、
前記学習推定装置は、学習した前記原子炉運転データと前記汚染分布データとの関係を利用して、前記廃棄物の放射能を評価する前記原子力発電施設の前記原子炉運転データから前記汚染分布データを求める、
請求項1に記載の放射能評価装置。
【請求項9】
前記換算係数解析装置は、前記換算係数を求めるときに、前記汚染分布データとして相対値で表された放射能の分布のデータを用いる、
請求項1に記載の放射能評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電施設から発生する廃棄物の放射能を評価する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電施設等では、運用中または廃止措置における機器の交換や施設の解体に伴い、放射化された廃棄物、または放射能により汚染された廃棄物など、大量の廃棄物が発生する。これらの廃棄物は、放射化または放射能汚染の程度等、放射能濃度のレベルに応じて分類される。このうち、低レベル放射性廃棄物と総称される、放射能濃度が比較的高いもの、放射能濃度が比較的低いもの、及び放射能濃度が極めて低いものについては、それぞれ中深度処分、浅地中ピット処分、及びトレンチ処分といった地中埋設処分が実施される。また、低レベル放射性廃棄物よりも放射能濃度が高い高レベル放射性廃棄物については、地層処分が実施される。
【0003】
一方、廃棄物の中には、その放射能の汚染程度が、自然界の放射線レベルと比較して十分に小さく、人の健康に対するリスクが無視できる程度であることから、放射線防護に係る規制から除外してもよいものがある。これらは、クリアランス物と呼ばれる。
【0004】
放射能濃度がクリアランスレベル以下と判定された廃棄物は、放射性廃棄物として取り扱う必要がなく、クリアランス物として扱われる。このため、クリアランス物は、原子力発電所外に搬出でき、再利用できるものについては資源として再利用され、再利用が合理的でない場合には通常の産業廃棄物と同様に処分することが可能である。廃棄物がクリアランスレベル以下であるかどうかの判定は、測定対象の廃棄物を放射線測定し、この測定結果から放射能を評価することにより実施される。
【0005】
廃棄物の放射能を測定・評価する従来の方法の例は、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の方法は、放射性廃棄物が収納された容器内を複数のメッシュに仮想的に分割し、各メッシュに放射線源と廃棄物の密度を設定し、容器の周囲に配置した放射線検出器により放射線を測定し、この測定結果から容器内に収納された廃棄物全体の放射能濃度分布を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された方法では、効率化のため、容器内に仮想的なメッシュを設定して容器内の放射能濃度分布を評価し、容器全体の放射能を評価している。すなわち、特許文献1に記載の方法では、メッシュ単位で容器全体の放射能を評価しており、容器に収納された個々の廃棄物の汚染分布までは求めていない。
【0008】
また、特許文献1に記載の方法では、放射線検出器での測定効率が一番低い場所に放射線源があると仮定して放射能濃度分布を評価しているので、評価の保守性が高く、放射能濃度を過剰に高く算出し、クリアランス物として扱える廃棄物をクリアランスレベルよりも高い放射能を有すると評価する可能性がある。このような廃棄物は、実際にはクリアランス物であるにもかかわらず、放射性廃棄物として扱われることになる。クリアランス物として扱える廃棄物を放射性廃棄物として扱うと、クリアランス物を放射性廃棄物として処理することになり、放射性廃棄物の処理のコストが増加する。
【0009】
このように、従来の技術では、原子力発電施設から発生する廃棄物の放射能を、廃棄物の実際の汚染分布を反映させて、正確に評価することに課題がある。
【0010】
本発明の目的は、原子力発電施設から発生する廃棄物の放射能を、廃棄物の実際の汚染分布を反映させて、正確に評価することができる放射能評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による放射能評価装置は、原子力発電施設から発生する廃棄物の形状データを取得する形状データ取得装置と、前記廃棄物の汚染分布データを取得する汚染分布データ取得装置と、前記形状データと前記汚染分布データを入力して放射線解析を実施して、放射線測定値を放射能へ換算する換算係数を前記廃棄物について求める換算係数解析装置と、前記廃棄物の放射線を測定する放射線測定装置と、前記放射線測定装置が測定した前記廃棄物の放射線のデータと、前記廃棄物についての前記換算係数とを用いて、前記廃棄物の放射能を算出する放射能算出装置とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、原子力発電施設から発生する廃棄物の放射能を、廃棄物の実際の汚染分布を反映させて、正確に評価することができる放射能評価装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1による放射能評価装置の構成を示す図である。
【
図2】実施例1において、放射能評価装置を用いて廃棄物の放射能を評価する処理フローの一例を示す図である。
【
図3】実施例1において、換算係数解析装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施例2において、形状データ取得装置の構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施例3において、解体物の汚染分布データを取得する放射線測定器を示す図である。
【
図6】本発明の実施例4による放射能評価装置の構成を示す図である。
【
図7】本発明の実施例5による放射能評価装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による放射能評価装置は、原子力発電施設から発生する廃棄物の放射能を、廃棄物の実際の汚染分布を反映させて、正確に評価することができる。このような廃棄物には、例えば、原子力発電施設の運用中に機器の交換に伴って発生する廃棄物や、原子力発電施設の廃止措置において施設の解体に伴って発生する解体物が含まれる。
【0015】
本発明による放射能評価装置は、放射線測定値を放射能へ換算する換算係数を、廃棄物の汚染分布データから求める。本発明による放射能評価装置は、この換算係数を個々の廃棄物ごとに求め、個々の廃棄物ごとに放射能を算出することができる。このため、本発明による放射能評価装置は、廃棄物の放射能を、廃棄物の実際の汚染分布を反映させて実態に即して、正確に評価することができる。
【0016】
以下、本発明の実施例による放射能評価装置を、図面を用いて説明する。以下の実施例では、原子力発電施設から発生する廃棄物が施設の解体に伴って発生する解体物である例について説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【実施例0017】
本発明の実施例1による放射能評価装置を説明する。
【0018】
図1は、本実施例による放射能評価装置の構成を示す図である。
【0019】
本実施例による放射能評価装置は、汚染分布解析装置11と、汚染分布データベース21と、解体計画解析装置12と、解体物CADデータベース22を備える。
【0020】
汚染分布解析装置11は、原子力発電施設の解体前に、施設の汚染分布状況を推定するための装置である。汚染分布解析装置11は、解析結果として汚染分布データを出力する。
【0021】
汚染分布データベース21は、汚染分布解析装置11が出力した汚染分布データを格納する。
【0022】
解体計画解析装置12は、原子力発電施設の解体前に、解体方法、解体物のサイズ、及び工事手順等の解体計画を解析して求める装置である。解体計画解析装置12は、解析結果の一部として解体物のCADデータ(解体物CADデータ)を出力する。解体物CADデータには、解体物の形状、及び材質についてのデータが含まれる。解体物の形状についてのデータには、解体物の寸法も含まれる。解体計画解析装置12は、解体計画から解体物の形状についてのデータ(形状データ)を取得する形状データ取得装置でもある。
【0023】
解体物CADデータベース22は、解体計画解析装置12が出力した解体物CADデータを格納する。
【0024】
汚染分布データは、解体物CADデータに対応して求められる。すなわち、汚染分布解析装置11は、解体計画解析装置12が求めた解体物ごとに汚染分布(放射能または放射線量率の分布)を求めることができる。汚染分布解析装置11は、解体物の汚染分布データを取得する汚染分布データ取得装置である。
【0025】
本実施例による放射能評価装置は、さらに、換算係数解析装置13と、換算係数データベース23を備える。
【0026】
換算係数解析装置13は、汚染分布データと解体物CADデータを入力データとし、放射線の発生から検出までの放射線解析を実施し、この放射線解析の結果に基づいて解体物の換算係数を求める装置である。換算係数解析装置13は、解体物CADデータに対応した換算係数(解体物ごとの換算係数)を求める。
【0027】
換算係数とは、単位放射能(Bq)あたりの放射線検出器に放射線が入射する計数率(cps: count per sec)で表される係数であり、放射線測定値を放射能へ換算する係数である。放射能評価装置は、予め換算係数を用意しておくことで、放射線測定の結果である計数率が得られると、計数率を放射能に換算できる。この換算係数は、測定対象物の形状や材質によって異なる。このため、換算係数解析装置13は、解体物CADデータに対応した換算係数、すなわち解体計画解析装置12が求めた解体物ごとに換算係数を求める。
【0028】
換算係数データベース23は、換算係数解析装置13が求めた、解体物の換算係数を格納する。
【0029】
本実施例による放射能評価装置は、さらに、放射線測定装置101と、測定データ収集装置102と、測定データベース121と、放射能算出装置103と、放射能評価結果出力装置104と、リンク情報データベース26を備える。
【0030】
放射線測定装置101は、放射線検出器を備え、原子力発電施設から発生した解体物51の放射線を測定する。放射線検出器は、解体物51から入射した放射線(おもにガンマ線)の計数率を測定する。
【0031】
測定データ収集装置102は、放射線測定装置101が測定した放射線(計数率)を収集する。
【0032】
測定データベース121は、測定データ収集装置102が収集した、放射線測定装置101の測定データを格納する。
【0033】
放射能算出装置103は、放射線測定装置101が測定した解体物51の放射線のデータ(解体物51の放射線測定データ)と、この解体物51に対応する解体物CADデータを入力し、放射線測定データから解体物51の放射能を算出する。具体的には、放射能算出装置103は、解体物51の放射線測定データと、この解体物51の換算係数(より正確には、この解体物51に対応する解体物CADデータの換算係数)を用いて、この解体物51の放射能を算出する。放射能算出装置103は、個々の解体物51ごとに放射能を算出することができる。「対象解体物51」と呼ぶ。
【0034】
放射能評価結果出力装置104は、放射能算出装置103が算出した、解体物51の放射能を出力する。放射能評価結果出力装置104は、汚染分布解析装置11が求めた汚染分布データや、解体計画解析装置12が求めた解体物CADデータなど、放射能評価装置が算出したデータを出力することができる。
【0035】
リンク情報データベース26は、放射線測定装置101が測定した解体物51と、この解体物51に対応する解体物CADデータとを対応付けるリンク情報(例えば、ID情報)を格納する。このリンク情報については、後述する。
【0036】
図2は、本実施例による放射能評価装置を用いて廃棄物の放射能を評価する処理フローの一例を示す図である。
図2には、処理の流れを実線の矢印で示し、データの流れを破線の矢印で示している。
図2に示す処理フローは、廃炉計画ステップ(ステップ1100)、換算係数解析ステップ(ステップ1200)、解体ステップ(ステップ1300)、放射線測定ステップ(ステップ1400)、及び放射能評価ステップ(ステップ1500)を有する。
【0037】
初めに、ステップ1001で、原子力発電施設の解体前に汚染状況調査が実施され、調査データが調査データベース24に格納される。
【0038】
次に、ステップ1100の廃炉計画ステップが実行される。
【0039】
ステップ1101で、汚染分布解析装置11は、汚染状況調査の調査データに基づいてシミュレーションを実施して汚染分布を推定し、推定して取得した汚染分布のデータ(汚染分布データ)を汚染分布データベース21に格納する。汚染分布を推定するシミュレーションには、既存の技術を用いることができる。汚染分布解析装置11は、例えば、汚染状況調査の調査データから調査地点での汚染を求め、調査地点以外の地点での汚染を調査地点での汚染から(例えば補間により)求めることで、汚染分布を推定する。または、汚染分布解析装置11は、原子力発電施設の運転履歴を利用して汚染分布を推定することもできる。
【0040】
ステップ1102で、解体計画解析装置12は、汚染分布データに基づいて原子力発電施設の解体計画のシミュレーションを実施し、解体計画データを生成する。解体計画解析装置12は、解体計画シミュレーションで、汚染分布データ、作業効率、及び被ばく線量等を考慮して、解体方法、解体手順、及び解体物の搬送手順等の解体計画を立案し、解体計画データを生成する。解体計画解析装置12は、生成した解体計画データを解体計画データベース25に格納する。
【0041】
ステップ1103で、解体計画解析装置12は、生成した解体計画データを用いて解体物のモデルをCADデータとして生成し、生成したCADデータ(解体物CADデータ)を解体物CADデータベース22に格納する。解体物CADデータには、解体物CADデータごとに固有の識別番号が付与される。
【0042】
次に、ステップ1200の換算係数解析ステップが実行される。換算係数解析ステップの処理は、換算係数解析装置13が実施する。換算係数解析装置13は、解体物ごとに、すなわち解体物CADデータごとに換算係数を求める。
【0043】
ステップ1201で、換算係数解析装置13は、換算係数を求める解体物の解体物CADデータを、換算係数解析装置13が実行するシミュレーションの入力データ(解体物解析モデル)に変換する。
【0044】
ステップ1202で、換算係数解析装置13は、ステップ1201の処理と並行して、汚染分布データベース21から、換算係数を求める解体物の解体物CADデータ(すなわち、ステップ1201で解析モデルに変換した解体物CADデータ)についての汚染分布データを抽出する。そして、換算係数解析装置13は、抽出した汚染分布データを、換算係数解析装置13が実行するシミュレーションの入力データ(放射線源モデル)に変換する。
【0045】
放射線源モデルは、放射能(Bq)の分布として生成される。放射線源モデルでの放射能の値は、空間に対する放射能の絶対値の分布であってもよく、相対値で表された放射能の分布であってもよい。放射能の分布が相対値で表されていると、放射能の分布をグラフで表したときのグラフの形状(分布形状)が定められ、分布の値は相対的な値である。
【0046】
ステップ1203で、換算係数解析装置13は、解体物解析モデルと放射線源モデルを用いてシミュレーションを実行し、放射線源モデルから放射される放射線の輸送を解体物解析モデルについて解析して計数率(cps)を求める。換算係数解析装置13は、シミュレーションには、例えば、放射線の輸送計算によく利用されるモンテカルロシミュレーションコードを使用する。また、換算係数解析装置13は、モンテカルロシミュレーションコードでは計算に時間がかかる場合には、簡易の遮蔽計算コードを使用することもできる。
【0047】
ステップ1204で、換算係数解析装置13は、ステップ1203でのシミュレーションで得られた計数率(cps)から換算係数εを算出し、算出した換算係数εを換算係数データベース23に格納する。換算係数解析装置13は、既存の方法を用いて換算係数εを算出することができる。
【0048】
換算係数解析装置13は、解体物(解体物CADデータ)ごとに換算係数εを算出し、算出した換算係数εを解体物(解体物CADデータ)と関連付けて換算係数データベース23に格納する。また、上述したように、換算係数解析装置13は、換算係数を求めるときに、放射線源モデル(汚染分布データ)として相対値で表された放射能の分布を用いることができる。
【0049】
次に、ステップ1300の解体ステップについて説明する。解体ステップは、廃炉計画ステップ(ステップ1100)の後に実行されるものであり、例えば、換算係数解析ステップ(ステップ1200)と並行して実施しても構わない。
【0050】
ステップ1301で、作業員は、解体計画データベース25に格納されている解体計画データに基づき、原子力発電施設の解体(例えば、切断、及び加工等)を実施する。ステップ1301での解体により、解体物51が発生する。この解体物51は、解体計画データに基づいて発生したものであるから、対応する解体物CADデータが存在する。
【0051】
ステップ1302で、放射線測定装置101は、解体物51に識別子を付与する。解体物51に付与した識別子は、例えば二次元バーコードで表示することができる。
【0052】
ステップ1303で、放射線測定装置101は、解体物51に付与した識別子と、この解体物51に対応する解体物CADデータとを対応付けるリンク情報を生成する。このリンク情報は、識別子で特定された解体物51と、この識別子を有する解体物51に対応する解体物CADデータとを対応付ける情報で、例えばID情報等である。そして、放射線測定装置101は、このリンク情報をリンク情報データベース26に格納する。リンク情報は、例えば、解体物51に付与された識別子が二次元バーコードで表示される場合には、この二次元バーコードに、解体物CADデータに付与された識別番号を登録することで設定することができる。上述したように、解体物CADデータには、固有の識別番号が付与されている。
【0053】
次に、ステップ1400の放射線測定ステップについて説明する。放射線測定ステップでは、解体ステップ(ステップ1300)で発生した解体物51に対して放射線測定を実施する。解体物51は、解体ステップ(ステップ1300)が実行されると随時発生する。このため、放射線測定ステップは、解体ステップが開始された後に随時実行される。
【0054】
以下では、放射線を測定する解体物51(すなわち、放射能を評価する解体物51)のことを「対象解体物51」と呼ぶ。
【0055】
ステップ1401で、作業員は、対象解体物51を放射線の測定施設に搬入する。
【0056】
ステップ1402で、作業員は、対象解体物51に付与された識別子を認識し、放射線測定を実施する対象解体物51を確認する。
【0057】
ステップ1403で、作業員は、対象解体物51を放射線測定装置101に設置する。
【0058】
ステップ1404で、放射線測定装置101は、対象解体物51に対して放射線測定を実施する。放射線測定装置101が測定した対象解体物51の放射線測定データは、測定データ収集装置102に収集され、測定データベース121に格納される。
【0059】
ステップ1405で、放射線測定装置101は、対象解体物51に付与された識別子を用いて、リンク情報データベース26から対象解体物51のリンク情報を抽出する。そして、放射線測定装置101は、対象解体物51のリンク情報と、対象解体物51の放射線測定データとを関連付ける。ステップ1405の処理により、対象解体物51の放射線測定データと、対象解体物51に対応する解体物CADデータとが関連付けられる。
【0060】
その後、ステップ1500の放射能評価ステップが実行される。
【0061】
ステップ1501で、放射能算出装置103は、ステップ1405で抽出したリンク情報を用いて、対象解体物51に対応する解体物CADデータについての換算係数εを、換算係数データベース23から読み出す。
【0062】
ステップ1502で、放射能算出装置103は、換算係数データベース23から読み出した換算係数εを用いて、放射線測定装置101が測定した対象解体物51の放射線測定データから、対象解体物51の放射能を算出する。放射能算出装置103は、対象解体物51について、すなわち個々の解体物51ごとに、放射能を算出することができる。
【0063】
図3は、換算係数解析装置13の構成の一例を示す図である。換算係数解析装置13は、解析モデル変換入力装置130、放射線解析装置140、及び換算係数算出装置145を備える。
【0064】
解析モデル変換入力装置130は、データ変換装置131と線源モデル変換装置132を備える。
【0065】
データ変換装置131は、換算係数を求める解体物51のCADデータ(解体物CADデータ72)を入力し、入力した解体物CADデータ72を、放射線解析装置140への入力データ(解体物解析モデル141)に変換する。データ変換装置131は、解体物CADデータ72が有する解体物51の形状及び材質についてのデータを、放射線解析装置140への入力フォーマットに合わせて変換し、解体物解析モデル141を生成する機能を有する。解体物解析モデル141は、放射線解析装置140が
図2のステップ1203で行うシミュレーションの入力データである。
【0066】
線源モデル変換装置132は、換算係数を求める解体物51の解体物CADデータ72についての汚染分布データ71を入力し、入力した汚染分布データ71を、放射線解析装置140への入力データ(放射線源モデル142)に変換する。線源モデル変換装置132は、汚染分布データ71が有する線源強度情報や空間分布情報を、放射線解析装置140への入力フォーマットに合わせて変換し、放射線源モデル142を生成する機能を有する。既に述べたように、放射線源モデル142での線源分布(放射能の値)は、空間に対する放射能の絶対値の分布であってもよく、相対値で表された放射能の分布であってもよい。放射線源モデル142は、放射線解析装置140が
図2のステップ1203で行うシミュレーションの入力データである。
【0067】
放射線解析装置140は、上述したように、解体物解析モデル141と放射線源モデル142を入力する。放射線解析装置140には、さらに、放射線検出器モデル143が設定される。放射線検出器モデル143は、放射線測定装置101が備える放射線検出器の解析モデルであり、この放射線検出器の仕様に基づいて作成される。
【0068】
放射線解析装置140は、解体物解析モデル141と放射線源モデル142と放射線検出器モデル143を用いてシミュレーションを実行し、放射線源モデル142から放射される放射線の輸送を解析する。具体的には、放射線検出器モデル143に解体物解析モデル141との相対位置が与えられ、解体物解析モデル141に放射線源モデル142が与えられて、放射線解析装置140は、放射線源モデル142から放射される放射線144(例えばガンマ線)の輸送を解析し、放射線検出器モデル143に入射する放射線144の単位時間当たりのカウント数(計数率)を求める。
【0069】
換算係数算出装置145は、放射線解析装置140が求めた計数率(cps)から換算係数εを算出し、算出した換算係数εを換算係数データベース23に格納する。換算係数データベース23には、解体物51(解体物CADデータ72)ごとに換算係数εが格納される。換算係数算出装置145は、既存の方法を用いて換算係数εを算出することができる。
【0070】
本実施例による放射能評価装置は、以上に説明した構成を備え、原子力発電施設から発生する解体物(廃棄物)の放射能を、解体物の実際の汚染分布を反映させて、個々の解体物51ごとに正確に評価することができる。本実施例では、換算係数解析装置13が汚染分布データ71と解体物CADデータ72を用いて換算係数εを算出するので、解体物51の放射能を解体物51の実態に即して効率的かつ合理的に評価できる。
形状計測装置150は、解体物51の形状を測定する。制御装置151は、形状計測装置150を制御し、形状計測装置150から解体物51の形状データを取得する。形状データベース152は、制御装置151が取得した解体物51の形状データを格納する。
形状計測装置150は、解体物51の形状を測定することにより、解体物51の形状データを取得する。形状計測装置150には、任意の装置を用いることができ、例えば、レーザを解体物51の複数の点に照射し、各点からの反射信号の到達時間の差から解体物51の形状データを点群データとして取得する装置や、視差を利用して形状を測定するステレオカメラなどを用いることができる。ステレオカメラでも、解体物51の形状データを点群データとして取得することが一般的である。本実施例では、形状データベース152に格納される解体物51の形状データが点群で表されるとする。
本実施例での形状データ取得装置は、さらに点群CADデータ変換装置153を備える。点群CADデータ変換装置153は、形状データベース152に格納された解体物51の形状データ(点群データ)を入力し、入力した点群データをCADデータに変換する。そして、点群CADデータ変換装置153は、このCADデータを解体物CADデータ72として解体物CADデータベース22に格納する。この解体物CADデータ72は、実施例1での解体物CADデータ72と同様に取り扱うことができる。
本実施例による放射能評価装置は、以上に説明した構成を備え、解体物の形状を直接測定することで、解体物が計画時と異なる形状になった場合でも、解体物の放射能を解体物の実態に即して正確かつ合理的に評価できる。また、本実施例による放射能評価装置は、解体計画解析装置12を利用できない場合でも、解体物の形状を直接測定して形状データを取得することにより、実施例1による放射能評価装置と同様に解体物の放射能を評価できる。また、解体時と放射線測定時に解体物の形状を測定することで、解体物と解体物のCADデータとの関連付けができ、対象解体物を他の解体物と間違えることなく放射能を評価できる。