(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068372
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 19/02 20060101AFI20230510BHJP
B65G 19/20 20060101ALI20230510BHJP
B65G 19/22 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
B65G19/02 A
B65G19/20 A
B65G19/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179418
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000206093
【氏名又は名称】大森機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】張 大龍
(72)【発明者】
【氏名】菅原 拓也
【テーマコード(参考)】
3F013
【Fターム(参考)】
3F013AA12
3F013AB01
3F013AC01
3F013AC05
3F013AD09
(57)【要約】
【課題】 押送手段と載置手段により物品を搬送する搬送装置において、押送手段間を倍ピッチにすることで搬送する物品のサイズ変更に対応可能とした構成であっても、載置手段の間(隙間)から物品が落下することを防止し、物品の確実な搬送が可能な搬送装置を提供する。
【解決手段】 搬送装置1は、物品XA1の搬送方向Tに沿って所定ピッチで走行し物品XA1を押送可能な押送手段2を有し、押送手段2は着脱可能であり、押送手段2の着脱により搬送方向Tに並ぶ押送手段2のピッチを変更可能に構成され、搬送方向Tにおいて離間して配置され押送手段2とともに走行しつつ物品XA1を下方から支持可能な載置手段3と、少なくとも搬送方向Tにおいて離間する載置手段3の間に配置されるレール7と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の搬送方向に沿って所定ピッチで走行し該物品を押送可能な押送手段を有する搬送装置であって、
前記搬送方向に並ぶ前記押送手段のピッチを変更可能に構成され、
前記搬送方向において離間して配置され前記押送手段とともに走行しつつ前記物品を下方から支持可能な載置手段と、
離間する前記載置手段の間に配置されるように前記搬送方向の上流側から下流側に延在するレールと、を備える、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記レールは、前記搬送方向の上流端部から下流端部に亘って延在する、
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記載置部は前記レールの収容部を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記載置部は、前記収容部に前記レールを収容しつつ該レールに対して相対的に移動する、
ことを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記レールは、前記搬送方向の上流端部付近では該レールの上面が前記載置手段の載置面より高く、該搬送方向の下流端部付近では該上面が該載置面より低くなるように変位する、
ことを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記レールの前記載置手段に対する相対高さは前記搬送方向に渡って漸次変位する、
ことを特徴とする請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記レールは前記搬送方向に渡って連続して設けられ、前記上流端部において片持ち支持される、
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記レールの前記上面が前記載置面より高い領域における該レールと前記物品の接触面積の合計面積は、該上面が該載置面より低い領域における該載置面と該物品の接触面積の合計面積より小さい、
ことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記押送手段によって押送される物品は、柔軟なシート状物品である、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載置手段と押送手段により物品を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬路幅方向に沿って所定の隙間間隔を持たせて複数のレールを配設して搬路(搬送面)とし、レール下方を移動する移動に取付けた複数の押送手段(スクレーパ、フィンガー)をレールの隙間から上方に突出させて物品を押送する搬送装置(フィンガーコンベア)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の搬送装置はレール上に物品を摺動させる構成であるため、物品によっては安定した搬送が困難である。
【0005】
具体的に、例えば物品が柔軟なシート状であって、特に水分を多く含むようなもの(例えば、液体を含侵させた繊維材料(具体的には、美容用フェイスパック)など)の場合、フィンガーで押送し、搬送面となるレール上を滑らせるように搬送すると、物品とレールとの摩擦が大きくなり、物品が変形(しわやたるみなどが発生)し、そのまま例えば包装などが行われる下流工程に搬送され、噛み込みや包装不良等が発生してしまう問題がある。
【0006】
そこで、そのような物品を搬送する場合は、フィンガーコンベアに例えば平板状の載置手段(載置部)を設け、当該載置部上に物品を載置して搬送することが考えられる。これによれば物品は、自身が当接する載置部に対しては相対的に移動することなく搬送でき、搬送面との摩擦が生じることはなくなる。
【0007】
図7は、載置部付のフィンガーコンベア500の一例を示す平明図である。同図(A)、同図(B)が平面図、同図(C)および同図(D)が同図(B)のY-Y線断面の一部を抜き出して示す図である。
【0008】
同図(A)に示すように、フィンガーコンベア500は、複数のフィンガー510と、フィンガー510に対応して設けられ、これとともに移動する載置部520を有する。フィンガー510および載置部520を走行させる構成は、既知のものであり図示は省略するが、載置部520の下部に設けられた環状チェーン530と、複数のスプロケットと、動力源等から構成される。動力源の回転運動はスプロケットを通じて環状チェーン530に伝えられ、これにより載置部520に載置された物品XA1が矢印で示す搬送方向に搬送される。載置部520は所定の物品XA1(例えば、液体を含侵させたフェイスマスク)を確実にその下方から支持可能なように、当該物品XA1のサイズに合わせた平板状(トレー状)に構成され、所定ピッチで離間して配置される。
【0009】
この場合、移動する載置部520によって物品XA1が搬送されるため、フィンガー510は主として物品XA1を載置部520に載置する際の位置合わせ手段として機能する。すなわち、フィンガーコンベア500の上流端(物品XA1の供給部)においてフィンガー510を基準に(これに位置を合わせるように)、すなわちフィンガー510に物品XA1の端部を接触させるように供給することで、物品XA1を正確な位置で(所定ピッチで)下流工程に搬送できる。
各フィンガー510は環状チェーン530に着脱自在に構成される。従って、同図(B)に示すようにフィンガー510を例えば1つ置きに取り外し、前後のフィンガー510の間隔を同図(A)の2倍のピッチ(倍ピッチ)とすることで、物品XA1を、搬送方向前後に並ぶ複数(この場合2個)の載置部520に掛け渡されるようにして搬送することができる。つまり1つのフィンガーコンベア500であっても、異なる複数のサイズの物品XA1を搬送可能となる。
【0010】
しかしながら、同図(B)に示すように、前後のフィンガー510を倍ピッチにした場合、搬送する物品XA1によっては、安定した搬送が困難となる問題があった。つまり同図(C)に示すように、例えば物品XA1を2個の載置部520に掛け渡すように載置することでサイズ的には大きな物品XA1を支持可能となるが、載置部520間に隙間Gが生じてしまう。このため、物品XA1が柔軟であって特に液体が含侵されたようなものの場合は、自重によって同図(D)に示すように隙間Gから下方に落下してしまう問題があった。また、物品XA1の製品長さが載置部520よりも長く、同図(D)の隙間Gに一方の先端が位置する場合、下流側の先端が下方に垂れ下がり、下流工程の乗り移りの際に物品XA1が折れ曲がってしまう問題もある。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、押送手段と載置手段により物品を搬送する搬送装置において、押送手段間を倍ピッチにすることで搬送する物品のサイズ変更に対応可能とした構成であっても、載置手段の間(隙間)から物品が落下することを防止し、物品の確実な搬送が可能な搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、物品の搬送方向に沿って所定ピッチで走行し該物品を押送可能な押送手段を有する搬送装置であって、前記搬送方向に並ぶ前記押送手段のピッチを変更可能に構成され、前記搬送方向において離間して配置され前記押送手段とともに走行しつつ前記物品を下方から支持可能な載置手段と、離間する前記載置手段の間に配置されるように前記搬送方向の上流側から下流側に延在するレールと、を備える、搬送装置に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、押送手段と載置手段により物品を搬送する搬送装置において、押送手段間を倍ピッチにすることで搬送する物品のサイズ変更に対応可能とした構成であっても、載置手段の間(隙間)から物品が落下することを防止し、物品の確実な搬送が可能な搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る搬送装置の概略を示す平面図である。
【
図2】本実施形態に係る搬送装置の概略を示す断面図である。
【
図3】本実施形態に係る搬送装置の概略を示す図であり、(A)平面図、(B)側面図、(C)平面図である。
【
図4】本実施形態に係る搬送装置の概略を示す図であり、(A)~(C)正面図、(D)側面図、(E)側面図である。
【
図5】本実施形態に係る搬送装置について示す図であり、(A)~(E)正面図、(F)平面図である。
【
図6】本実施形態に係る搬送装置の概略を示す平面図である。
【
図7】従来技術を説明するための図であり、(A)平面図、(B)平面図、(C)断面図、(D)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る搬送装置1について詳細に説明する。
図1は、搬送装置1の全体の概略を示す平面図であり、
図2は、搬送装置1の全体の概略を示す断面図である。なお、本図及び以降の各図において、一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、本図及び以降の各図において、部材の大きさ、形状、厚みなどを適宜誇張して表現する。
図1(A)は、小さい物品XA1を搬送している状態を示し、
図1(B)は大きい物品XA1を搬送している状態を示す。
図2は、
図1(B)のX-X線断面に相当する断面図である。なお、説明の便宜上
図1と
図2の縮尺は異なっており、以下の各図においても同様である。
【0016】
図1に示す本実施形態の搬送装置1は、上流端部にて順次供給される物品XA1を押送手段2にて下流に押送する、押送手段付きコンベア装置である。押送手段2は、物品XA1の一部に当接して物品を押送するものであり、例えば、フィンガー(押送フィンガー)である。また、本実施形態の搬送装置1はフィンガー2とともに移動し、その上面に物品XA1を載置可能な載置手段(載置部)3を有する。すなわち、搬送装置1は例えば、載置部付フィンガーコンベアであり、以下、単に「フィンガーコンベア」と称する。
【0017】
以下、説明の便宜上、フィンガーコンベア(搬送装置)1における各種方向の定義として、物品XA1が上流(
図1では左)から下流(
図1では右)に移動する方向を搬送方向Tとし、搬送方向Tと水平面内で直交する方向を搬送幅方向Wとし、搬送方向T及び搬送幅方向Wに対して直交する方向(鉛直方向)を搬送高さ方向Hとする。
【0018】
図1を参照して、フィンガーコンベア1は、フィンガーコンベア1の下流側に配置される下流側装置(例えば、包装機などでありここでは不図示)へ物品XA1を連続的に搬送方向Tに沿って搬送する。具体的にはフィンガーコンベア1は、複数の押送手段(フィンガー)2と、複数の載置手段(載置部)3と、環状チェーン(または環状ベルト、以下同様)4A,4Bと、複数のスプロケット6(
図2参照)と、レール7と、不図示の動力源(例えば、サーボモータ)および制御ユニット等を有する。制御ユニットは、CPU、RAM、及びROM等から構成され、各種制御を実行する。
【0019】
図2を参照して、装置全体を支持する機台Fの下部に複数のスプロケット6が配置され、それらに環状チェーン4(4A,4B)が掛け渡される。動力源(不図示)の回転運動はシャフト9から、シャフト9に固定されたスプロケット6を通じて環状チェーン4に伝えられる。
【0020】
再び
図1を参照し、複数のフィンガー2は、所定ピッチで離間して環状チェーン4に取り付けられ、環状チェーン4の回転(走行)に伴い、物品XA1の搬送方向Tに沿って所定ピッチで走行する。複数のフィンガー2のうち一部は環状チェーン4に着脱自在となっており、当該一部のフィンガー2を取り外すことでフィンガー2間のピッチを拡げることができる。
【0021】
物品XA1は例えば、柔軟で比較的重量のあるシート状物品などが好適であり、ここでは液体を含侵させた繊維材料、あるいはゲル状物体が塗布・貼り付けされるなどした繊維材料などからなるシート状物品(例えば美容用などのフェイスパック、フェイスマスクなど)である。
【0022】
複数の載置部3は、所定ピッチで離間し、環状チェーン4(4A,4B)に取り付けられ、環状チェーン4の回転(走行)に伴い、物品XA1の搬送方向Tに沿って所定ピッチで走行する。
【0023】
図1(A)に示すように複数の載置部3は、複数のフィンガー2にそれぞれ対応して設けられ、フィンガー2と近接し、フィンガー2とともに走行する。載置部3は、物品XA1を下方から支持可能な例えば平板状部材で構成される。つまり載置部3の搬送高さ方向Hの上面が物品XA1の載置面30となる。
【0024】
また、フィンガーコンベア1は、載置部3はそのままに、フィンガー2を所定間隔で離脱させることで、複数のサイズの物品XA1を搬送可能である。例えば、
図1(A)に示すように、それぞれの載置部3毎にフィンガー2を配置した状態から、同図(B)に示すようにフィンガー2を1つ置きに取り外し、各フィンガー2間に二つの載置部3を配置する(1本のフィンガー2に対してその下流側の2つの載置部3を対応させる)。これによりフィンガー2の間隔(ピッチ)を2倍とした搬送が可能となり、複数(たとえば二つ)の載置部3により大きなサイズの物品XA1を搬送可能となる。なお、フィンガー2のピッチは2倍以上に変更も可能である。
【0025】
レール7は、少なくとも搬送方向Tにおいて離間する複数の載置部3の間に存在するように配置され、載置部3の間から物品XA1が下方に落下することを防止する。
【0026】
レール7は、好適には
図1に示すようにその搬送幅方向Wの長さに比して搬送方向Tの長さが十分に長く、例えば、フィンガーコンベア1の搬送領域(物品XA1の供給部INから排出部OUTまで)の長さと同等以上の長さを有する。また、レール7は、望ましくは複数本(ここでは3本)、搬送幅方向Wに並列的に設けられる。複数のレール7は、搬送幅方向Wに離間して配置され、それらの間にフィンガー2が配置される。
【0027】
また、レール7は、載置部3の上方において、搬送方向Tの上流端部から下流端部に亘って搬送方向Tに沿って延在する。より詳細には、載置部3はレール7の一部を収容可能なレール収容部32を有し、レール7は当該レール収容部32の上方に(これと重なるように)配置される。
【0028】
図2は、
図1(B)のX-X線断面に相当する断面図であり、
図2(A),
図2(B)のいずれも、フィンガー2の一部を離脱させてフィンガー2の間隔(ピッチ)を広げ、複数の載置部3による大きいサイズの物品XA1を搬送する構成である。
図2(A),同図(B)はレール7の設置状態が異なっており、同図(A)はレール7が機台Fの表面(床面)に対して略水平に(搬送方向Tの上流から下流に向かって意図的に傾斜させることなく)配置した例である。また、同図(B)は搬送方向Tの上流かよりも下流の方がレール7の搬送方向高さHが低くなるようにレール7を配置した例である。
【0029】
フィンガー2は、搬送高さ方向Hの一部をレール7の上面70より高い位置に突出させてレール7間を走行可能となっている。
【0030】
後に詳述するが、レール収容部32は、搬送方向Tから見た正面視において略凹状に構成され、その底部が載置部3の載置面3Aよりも搬送高さ方向Hの下方に位置する。
図2の断面は、レール収容部32の内部から、レール収容部32の側面部分を視ている状態となる。
【0031】
すなわち、同図(A)ではレール7は、載置部3と重なる場合には全てレール収容部32に収容され、レール7の上面70が載置面30より搬送高さ方向Hの下方に位置する構成である。この場合、載置部3は、レール収容部32にレール7を収容しつつ、該レール7に対して相対的に移動する。
【0032】
この構成によれば、物品XA1は載置部3で搬送される(搬送面(載置面30)が物品XA1とともに移動する)ため、物品XA1が柔軟で比較的重量がある場合でも、搬送面との摩擦を抑え、確実な搬送が可能となる。
【0033】
また、物品XA1の下方には常にレール7が存在する(物品XA1は、レール7の上方をレール7に沿って搬送される)。つまり、フィンガー2の間隔(ピッチ)を広げて大きいサイズの物品XA1を搬送する場合であっても、載置部3間の隙間Gをレール7でカバーでき(支持可能となり)、隙間Gからの物品XA1の落下を防止できる。
【0034】
なお、物品XA1が隙間Gに入り込むように撓み、レール7と接触する場合もあるが、物品XA1の搬送方向Tの先端(下流側端部)は載置部3に載置されているので物品XA1とレール7の摩擦による物品XA1の変形は抑制可能である。また、摩擦を最小限にするよう搬送速度などを適宜選択することで摩擦をより小さくすることもできる。
【0035】
同図(A)の構成において、レール7はその搬送高さ方向Hが、搬送方向Tに亘って変位しないように(例えば床面や機台Fの表面に対して水平が維持できるように)機台Fに固定される。あるいは、レール7は自重により撓みが生じ搬送方向Tに亘って水平が維持されなくてもよい。レール7が撓んだ場合でもレール7はレール収容部32(の底部)で支持され、隙間Gのカバーが可能であるので問題はない。
【0036】
図2(B)はさらに、上流工程からの物品XA1の供給部INにおいて、物品XA1の受け入れ位置の位置合わせが確実に行える構成である。
【0037】
フィンガーコンベア1は、フィンガー2と載置部3が同時に(一体的に)走行する。このような構成においては、供給部INにおいて物品XA1の供給位置がずれる可能性もあり、フィンガー2と物品XA1とが当接しない状態となる場合がある。そうなるとフィンガー2は載置部3に対して相対的に移動しないため、物品XA1はフィンガー2に位置合わせされない状態で下流まで搬送されることになり、下流工程(例えば包装機など)に受け渡される際に物品XA1の噛み込みなどの原因となってしまう問題がある。
【0038】
そこで
図2(B)に示す本実施形態では、供給部INにおいて、物品XA1が確実にフィンガー2に対して位置合わせがされるように(物品XA1がフィンガー基準で載置部3に載置されるように)した。
【0039】
具体的に、レール7は、供給部INを含む搬送方向Tの上流端部(図示左方)およびその付近ではレール7の上面70が載置部3の載置面30より高く、搬送方向Tの下流端部(図示右方)およびその付近ではレール7の上面70が該載置部3の載置面30より低くなるように変位する。これにより、供給部INにおいて物品XA1の供給位置がフィンガー2に当接していなくても(フィンガー基準となっていなくても)、搬送中においてフィンガー基準に位置を合わせることができる。
【0040】
図3および
図4を参照してレール7と載置部3の関係について詳述する。
図3(A)は、フィンガーコンベア1の上流側付近を示す平面図であり、同図(B)は搬送方向Tの上流側から見た上流側端部の側面図であり、同図(C)は載置部3を拡大して示す平面図である。また、
図4(A)~
図4(C)は、搬送方向Tの上流から下流に移動する一組の載置部3とレール7の位置関係の概要を示す正面図であり、
図4(D)および同図(E)は搬送方向Tの上流から下流に向かうレール7と載置部3の関係を下流側から示す側面図であって、
図3(B)に対応する図である。
【0041】
図3(A)に示すように機台Fの搬送方向Tの上流端部には、レール支持部10が設けられる。レール7は上流端部がこのレール支持部10に固定されて片持ち支持される(
図1(B)参照)。つまりレール7は上流側端部が固定端となり、下流側端部が自由端となって自重により撓み、上流端部から下流端部に向かうにつれて漸次下降する(
図2(B)参照)。
【0042】
また、この例では、一の載置部3は、複数(ここでは4本)の細角柱部材31を搬送方向Tに沿って並べて平板状部材とすることにより構成される。載置部3(細角柱部材31)はその上面(載置面30)の一部を切り欠いたレール収容部32を有する(
図3(B)、同図(C))。
【0043】
載置部3のレール収容部32は、搬送高さ方向Hにおいてレール7と重なる位置に設けられる。この例では、中央のレール7の両側にフィンガー2が配置される。すなわち、
図3(B)に示すように環状チェーン4Aにフィンガー2(2A)と載置部3(3A)が取り付けられ、環状チェーン4Bにフィンガー2(2B)と載置部3(3B)が取り付けられる。つまり、一組の載置部3A、3Bによって1つの物品XA1の載置面30(搬送面)が構成される。一つの載置部3を、搬送方向Tに添う中心線で二分して一組の載置部3A、3Bで構成する(さらにフィンガー2A,2Bもそれらに対応させて設ける)ことにより、2列の環状チェーン4A,4Bの調整(捻れや伸びなどの調整)が必要となっても、その調整作業が容易となる。つまり、搬送方向Tに並ぶ4本の細角柱部材31も、載置部3A、3B毎に設けられている。載置部3は例えばABS樹脂などの樹脂材料により構成される。
【0044】
レール収容部32は、この例では搬送幅方向Wの断面視が凹状溝のレール収容部321とL字段差形状のレール収容部322を含む。レール収容部321は載置部3A,3Bのそれぞれに独立して設けられてそれぞれ(搬送幅方向W両側の)1本のレール7を収容可能である。また、レール収容部322は組となる載置部3A,3Bの互いの対向面に設けられ、載置部3A側と載置部3B側とで一つの凹状溝となり、中央のレール7を収容可能である。
【0045】
いずれのレール収容部32(321、322)も、レール収容部32の搬送幅方向Wの長さ32Wおよび搬送高さ方向Tの深さ32T(
図3(B))は、レール7を完全に収容可能な形状に設けられる。特に、レール収容部32の深さ32Tは、レール7の厚みD(搬送高さ方向Hの長さ)より大きい。レール7は例えばステンレス材料などにより構成される。
【0046】
レール7はレール支持部10に固定される上流側端部において片持ち支持され、自重により下流端部に向かって漸次下降するが、その搬送高さ方向Hの下方には載置部3(レール収容部32)が配置され、所定高さで(レール収容部32の底部で)下降が規制される。
【0047】
本実施形態では、
図1(B)に示すレール7の上流端部に位置する第一の地点P1においては、レール7の上面70は、載置部3の上面Aよりも高くなるように設定される。
図3(B)は第一の地点P1において搬送方向Tの下流側から見た側面図であり、
図4(A)は、第一の地点P1付近の側面概要図である。
【0048】
供給部INは、第一の地点P1またはその近傍(例えば第一の地点P1より上流)に位置する。なお、
図3(B)のレール7の位置は一例であり、第一の地点P1においてはレール7の上面70が載置面30より上方に位置していればよく、レール7の下面側はレール収容部32に収容されていてもよい。
【0049】
そしてレール7は下流に向けて漸次下降して徐々にレール収容部32に没入する(収容される量が多くなる)。すなわち、
図1(B)、
図4(B)に示すように、上流から下流へ向かう途中の第二の地点P2においてレール7の上面70と載置部3の載置面30の高さが同等となる。
図4(D)は、第二の地点P2において搬送方向Tの上流側から見た側面図である。
【0050】
第二の地点P2以降は、レール7の上面70は載置面30より低くなりレール収容部32へのレール7の収容量が多くなる。そして
図1(B)、
図4(C)に示すように、レール7は下流端部(第三の地点P3)においてはレール7の上面70より載置部3の載置面30の高さが高くなる。物品XA1の排出部OUTは、第三の地点P3またはその近傍に位置する。
【0051】
このように、フィンガーコンベア1は第二の地点P2より上流側に、レール7の上面70が載置部3の載置面30より高く、主にレール7に支持されて物品XA1が搬送される領域(
図1(B)に示す第一の搬送領域21)が存在する。第一の地点P1においける載置面30からのレール7突出量(上面70までの距離)は、物品XA1の形態、サイズ、重さ、搬送速度などに応じて適宜選択されるが、例えば2mm~数mmである。
【0052】
また第二の地点P2より下流側に、レール7の上面70が載置部3の載置面30より低く、載置部3によって物品XA1が搬送される領域(
図1(B)に示す第二の搬送領域22)が存在する。載置面30からのレール7埋没量(上面70までの距離)は、物品XA1の形態、サイズ、重さ、搬送速度などに応じて適宜選択されるが、例えば2mm~数mmである。
【0053】
このようにして本実施形態のフィンガーコンベア1は、載置部3の載置面30だけでなくレール7の上面70も物品XA1の搬送面として機能する。
【0054】
図5は、フィンガーコンベア1による物品XA1の搬送の状態を示す図であり、同図(A)から同図(E)が搬送状態の概略を時系列で示す正面図である。また同図(F)は、搬送面としてのレール7と載置部3を比較する概念図である。
【0055】
既に述べているようにレール7はその上面70が、上流端部(第一の地点P1)では載置面30より高く、下流端部(第三の地点P3)では載置面30より低くなるように、搬送方向Tに沿って次第に下降する。なお、長尺部材の片持ち支持であるので、第一の地点P1から第三の地点P3まではレール7が直線的に傾斜するとは限らず、途中任意の撓みが生じていてもよい。
【0056】
同図(A)に示すように、レール7の上流端部(供給部IN、第一の地点P1)に供給された物品XA1は、レール7の上面70に載置される。ここでは、供給部INにおいて物品XA1がフィンガー2基準でない任意の位置に配置された場合を示している。そしてレール7上に停止した状態で、その上流側から近づくフィンガー2を待機する。フィンガー2は一部がレール7より搬送高さ方向Hの上方に突出して走行するが、載置部3は、レール7の下方を走行する。
【0057】
同図(B)に示すように、物品XA1に直近上流のフィンガー2が当接すると、物品XA1はフィンガー2により下流方向に押し出される。このタイミングで載置部3はレール7より下方に位置しており、物品XA1を載置することなく走行可能である。これにより物品XA1は確実にフィンガー2に当接し、物品XA1の位置がフィンガー2に位置合わせされる(フィンガー2基準となる)。このタイミングでは、レール7の上面70が載置部3の載置面30よりも搬送高さ方向Hの上方に突出し、物品XA1はレール7上を摺動する。
【0058】
つまり同図(A)~同図(B)の状態では、載置部3は物品XA1に対して移動可能となってるが、接触による摩擦によって物品XA1の位置に影響を及ぼすことがない程度に物品XA1に接触し、下方から支持可能となるように、レール7の載置部3からの突出量、載置部3の移動速度などが適宜選択されている。
【0059】
第一の地点P1以降、レール7の高さは次第に下降し、同図(C)に示すように、第二の地点P2でレール7の高さと載置部3の高さが同等となった後、それらの高さが逆転する。つまりレール7上を押送されていた物品XA1は、物品XA1に対して相対的にせり上がる載置部3の載置面30に次第に移送され、載置部3に支持される。以降は同図(D)に示すように物品XA1は載置部3によって搬送され、下流端部(第三の地点P3)に至る。
【0060】
このように、少なくとも第一の地点P1において主にレール7が、載置面30に代わって物品XA1を支持し、搬送面となる。そして第一の地点P1から第二の地点P2までは、主にレール7が載置面として物品XA1を搬送する。ただしこの区間では、レール7も漸次下降するため(特に物品XA1が柔軟で撓む場合には)、載置部3も物品XA1と接触し、載置部3もレール7とともに搬送面として機能する場合があってもよい(レール7のみが搬送面になるとは限らない)。
【0061】
第二の地点P2においてレール7の上面70と載置部3の載置面30の高さが同等となるとその区間は両者が搬送面となり、物品XA1を搬送する。
【0062】
第二の地点P2から第三の地点P3においては、主に載置部3が物品XA1を支持し、搬送面となる。ただしこの区間においても物品XA1が撓みその一部が載置部3の隙間Gから垂下したような状態になる場合もある。つまり、レール7も物品XA1と接触し、レール7も載置部3とともに搬送面として機能する場合があってもよい(載置部3のみが搬送面になるとは限らない)。
【0063】
このような構成により、上流工程からの供給直後は、レール7上に載置されて停止する物品XA1に対して、フィンガー2および載置部3が移動可能となっているため、物品XA1のフィンガー2に対する(フィンガー2を基準とする)確実な位置合わせが可能となる。
【0064】
一方で、レール7上をフィンガー2によって押送すると摩擦が大きくなり、物品XA1の変形が生じる(しわやたるみが発生する)。このため、物品XA1の変形が生じる以前に、フィンガー2とともに移動する載置部3によって物品XA1を搬送するように切り替える。つまり、レール7と載置部3はいずれも物品XA1の搬送面として機能し、物品XA1の搬送途中において当該搬送面がレール7から載置部3に切り替わる。
【0065】
フィンガー2を基準とする物品XA1の位置合わせさえできれば、それ以降は物品XA1の変形を防ぐために、載置部3による搬送が望ましい。つまり、レール7と物品XA1の摩擦は最小限に抑えることが望ましい。
【0066】
従って、同図(F)に示すように、レール7の上面70が載置面30より高い領域(第一の搬送領域21)におけるレール7と物品XA1の接触面積の合計面積S1は、上面70が載置面30より低い領域(第二の搬送領域22)における載置面30と物品XA1の接触面積S2の合計面積より小さくすることが望ましい。
【0067】
なお、第一の搬送領域21の長さ(第一の搬送領域21と第二の搬送領域22の境界となる第二の地点P2の位置)は、搬送する物品XA1の形態(大きさ、重さ、材質など)、およびレール7との摩擦力、レール7の撓みの程度、レール7と載置部3の材質などに応じて、適宜選択・設定する。
【0068】
このような構成により、物品XA1の供給時にはフィンガー2に対する(フィンガー2を基準とする)確実な位置合わせが可能となる。
【0069】
また、本実施形態では、長尺のレール7を上流端部で片持ち支持するとともにレール7の下方に載置部3を配置し、レール7が漸次載置部3内に没入する構成としている。これにより、物品XA1の搬送中に自動で、すなわち把持手段などで物品XA1を持ち替えて移載することなく、レール7から載置部3に連続的且つ緩やかに搬送面を切り替えることができる。
【0070】
本実施形態のレール7は、上流端部から下流端部に向かって下降(傾斜)させる構成でなくてもよい。レール7が載置部3のレール収容部32に収容されて、載置部3がレール7の下方を走行可能な構成であれば、フィンガー2の搬送方向Tにおけるピッチを広げた場合であっても、物品XA1の落下を防止できる(
図2(A))。
【0071】
レール7を上流端部では載置部3より突出させ、下流端部では載置面30より下方に位置させることによって、物品XA1の供給時にフィンガー2基準で物品XA1の位置合わせができ、より正確かつ確実に物品XA1を搬送できる(
図2(B))。
【0072】
<変形例>
以下、
図6を参照して本実施形態の変形例について説明する。
図6に示すように、載置部3は、レール収容部32を有さず、レール7を挟んで独立していてもよい。この場合においても、レール7を上流端部から下流端部に傾斜させる場合には、レール7を下方から支持する支持手段を設けるとよい。
【0073】
また、以下図示は省略するが、第一の搬送領域21においてレール7の上面70が載置部3の載置面30よりも高くなるように、第一の搬送領域21のレール7の厚みを厚くしてもよい。また、レール7は、曲げ加工により上流側のレール7の上面70が載置部3よりも高くなるようにしてもよい。
【0074】
また、フィンガー2は着脱に限らず、例えば、所定数置きに倒すなどしてピッチを変更してもよい。また、フィンガー2の間隔(ピッチ)は、3倍以上に拡げるようにしてもよい。
【0075】
以上押送手段としてフィンガーを例に説明したが、物品XA1の一部に当接して物品を押送するものであればフィンガーに限らない。
【0076】
また、載置部3の下方にレール7を配置してもよく、載置部3間における物品XA1の落下は防止できる。この場合、レール7は搬送方向Tに連続して配置してもよい。
また、レールは1本であってもよい。
【0077】
以上、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨および技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 フィンガーコンベア(搬送装置)
2 押送手段(フィンガー)
3 載置手段(載置部)
3A、3B 載置部
30 載置面
4、4A,4B 環状チェーン
6 スプロケット
7 レール
70 上面
9 シャフト
10 レール支持部
21 第一の搬送領域
22 第二の搬送領域
31 細角柱部材
32、321、322 レール収容部
G 隙間
IN 供給部
P1 第一の地点
P2 第二の地点
P3 第三の地点