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特開2023-68394モジュール運搬箱の運用方法およびモジュール運搬箱
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068394
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】モジュール運搬箱の運用方法およびモジュール運搬箱
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230510BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20230510BHJP
【FI】
H02J7/00 301B
H02J7/02 B
H02J7/00 X
H02J7/00 Y
H02J7/00 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179479
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(72)【発明者】
【氏名】野又 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】美馬 正明
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA08
5G503DA13
5G503EA05
5G503EA08
5G503FA01
5G503FA03
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】予備モジュールの備蓄に関わる作業を効率良く行えるモジュール運搬箱の運用方法及びモジュール運搬箱を提供する。
【解決手段】モジュール運搬箱100の運用方法は、複数の予備モジュール50を収納したモジュール運搬箱100を、設置位置に設置し、モジュール運搬箱100の中の予備モジュール50の通信部に、モジュール運搬箱100の外側の充電器10から通信接続し、通信により予備モジュール50の、充電状態及び電圧の少なくとも何れかを含む状態情報を取得し、取得した状態情報に基づいて充電の必要性又は可否を判定して、充電器10によりモジュール運搬箱100の中の予備モジュール50を充電する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の予備モジュールを収納したモジュール運搬箱を、設置位置に設置し、
前記モジュール運搬箱の中の予備モジュールの通信部に、前記モジュール運搬箱の外側の充電器から通信接続し、
通信により前記予備モジュールの、充電状態および電圧の少なくともいずれかを含む状態情報を取得し、
取得した前記状態情報に基づいて充電の必要性または可否を判定して、前記充電器により前記モジュール運搬箱の中の予備モジュールを充電する、モジュール運搬箱の運用方法。
【請求項2】
前記充電器によって前記予備モジュールの異常を検知する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記充電器が、前記予備モジュールの状態情報と異常の有無とを示す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記充電器からの通信線を、前記モジュール運搬箱の第1方向から前記予備モジュールに設けられた通信コネクタに接続し、前記充電器からの充電ケーブルを、前記第1方向から前記予備モジュールに設けられた外部端子に接続する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記通信線および前記充電ケーブルを前記通信コネクタおよび前記外部端子に接続した後、前記フロント扉を閉めて、前記予備モジュールを充電する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
複数の予備モジュールを収納したモジュール運搬箱の中の予備モジュールの通信部に、前記モジュール運搬箱の外側の充電器から通信接続し、
通信により前記予備モジュールの、充電状態および電圧の少なくともいずれかを含む状態情報を取得し、
取得した前記状態情報に基づいて充電の必要性または可否を判定して、前記充電器により前記モジュール運搬箱の中の予備モジュールを充電する、モジュール運搬箱の運用方法。
【請求項7】
前記複数の予備モジュールは、互いに電気接続されず、かつ、電力回路から切り離された状態で、前記モジュール運搬箱に収納されている、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
複数の車輪が設けられた底板と、
縦方向に間隔をあけて設けられて、それぞれに予備モジュールを設置可能な複数の棚板と、
開閉可能なフロント扉と、を備え、
前記フロント扉を閉めた状態で、外部の充電器によって前記予備モジュールを充電することが可能に構成されている、モジュール運搬箱。
【請求項9】
前記複数の車輪は、それらの間にフォークリフトの一対の爪を挿入可能であるように、前記底板に設けられている、請求項8に記載のモジュール運搬箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、モジュール運搬箱の運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道などの移動体用の蓄電システムや、定置用の蓄電システムに、蓄電池モジュールが用いられている。蓄電池モジュールは、使用および時間の経過に伴って性能が低下する。
【0003】
従来、蓄電池モジュールの、故障またはその予兆が検知されてから、電池製造業者や保守事業者がモジュールの交換を手配している。具体的には、新品のモジュールを段ボール箱に入れて現地へ発送したり、保守員が交換用のモジュールを持参して現地を訪れたりしている。
【0004】
特許文献1は、電池モジュールのための封じ込めシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2018-506148
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、再生可能エネルギーの導入・拡大に伴い、蓄電システムが世界各所に建設されている。そうした蓄電システムを運用していくうえで、蓄電池モジュールの予備品(以下、予備モジュールと称する)を、蓄電システムに近接して備蓄することが、今後必要になる可能性がある。
【0007】
特に、大規模蓄電システムでは、稼働している蓄電池モジュールの数が膨大であり、必然的に、故障が発生する確率も高い。予備モジュールを、段ボール箱に入れて発送したり保守員が持参して訪れたりするよりも、蓄電システムに近接して備蓄しておいたほうが、短時間でモジュールを交換してシステムを迅速に復旧できる。
【0008】
予備モジュールは、使われることなく長期間放置されると自己放電により充電状態(SOC)が低下する。予備モジュールの、備蓄開始時における充電状態が50%程度またはそれ未満であると、自己放電によって予備モジュールが過放電に至る可能性がある。予備モジュールの過放電を防ぐために、定期的に充電状態を確認し、充電状態が低下した予備モジュールについては充電(補充電)を行う必要がある。
【0009】
本発明の一態様は、予備モジュールの備蓄に関わる作業を効率良く行える、モジュール運搬箱の運用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、蓄電システムの現場に予備モジュールを備蓄し管理するために、モジュール運搬箱を用いることを検討し、本発明を考案した。
【0011】
本発明の一態様に係るモジュール運搬箱の運用方法は、
複数の予備モジュールを収納したモジュール運搬箱を、設置位置に設置し、
前記モジュール運搬箱の中の予備モジュールの通信部に、前記モジュール運搬箱の外側の充電器から通信接続し、
通信により前記予備モジュールの、充電状態および電圧の少なくともいずれかを含む状態情報を取得し、
取得した前記状態情報に基づいて充電の必要性または可否を判定して、前記充電器により前記モジュール運搬箱の中の予備モジュールを充電する。
【発明の効果】
【0012】
上記態様によれば、モジュール運搬箱と、その外側の充電器によって、予備モジュールの備蓄に関わる作業を効率良く行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】モジュール運搬箱および充電器の正面図である。
図2】モジュール運搬箱の側面図である。
図3】予備モジュールの斜視図である。
図4】充電器の側面図および正面図である。
図5】充電器および予備モジュールの内部構成を示す図である。
図6】予備モジュールの備蓄に関わる作業手順を示すフローチャートである。
図7】充電器の表示部における表示例を示す図である。
図8】充電器の表示部における表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一実施形態に係るモジュール運搬箱の運用方法は、
複数の予備モジュールを収納したモジュール運搬箱を、設置位置に設置し、
前記モジュール運搬箱の中の予備モジュールの通信部に、前記モジュール運搬箱の外側の充電器から通信接続し、
通信により前記予備モジュールの、充電状態および電圧の少なくともいずれかを含む状態情報を取得し、
取得した前記状態情報に基づいて充電の必要性または可否を判定して、前記充電器により前記モジュール運搬箱の中の予備モジュールを充電する。
【0015】
ここで、モジュール運搬箱は、強度・コスト・耐火性・対候性などに優れる金属製の筐体であることが好ましいが、それに限定はされない。
充電器は、予備モジュールからの放電を受け入れる、放電機能も備えた充放電器であることが好ましいが、それに限定はされない。
予備モジュールの通信部と充電器との間の通信は、構成簡素化の観点から、有線通信であることが好ましいが、それに限定はされず、無線通信であってもよい。
充電器による予備モジュールの充電は、構成簡素化の観点から、充電ケーブルを介して行うことが好ましいが、それに限定はされず、非接触充電(ワイヤレス充電)であってもよい。
【0016】
この方法による第一の技術的効果は、モジュール運搬箱を、予備モジュールの運搬に加え、蓄電システムの現場に予備モジュールを備蓄し管理するためにも用いるため、専用の予備モジュール保管箱を、別途用意する必要がないことである。また、予備モジュールの運搬を終えたモジュール運搬箱を、廃棄したり回収したりするコストが不要である。
【0017】
第二の技術的効果は、モジュール運搬箱に予備モジュールを収納したまま(すなわち、モジュール運搬箱から予備モジュールを取り出すことなく)、モジュール運搬箱の外側の充電器によって、予備モジュールの状態把握と必要に応じた充電とを行うことができることである。所定の重量がある予備モジュールをモジュール運搬箱から取り出す作業や、状態把握や充電が済んだ予備モジュールをモジュール運搬箱に戻す作業を省略できるため、保守員の負担が軽減される。
【0018】
モジュール運搬箱に複数の予備モジュールを収納し、蓄電システムに近接して備蓄する運用は、過去に例がなく、そのため標準的な運用方法が未だ確立されていない。上述した方法によれば、モジュール運搬箱と充電器によって、予備モジュールの備蓄に関わる作業を効率良く行える。
【0019】
第三の技術的効果は、充電器の機能(予備モジュールの状態把握と必要に応じた充電)を、モジュール運搬箱に担わせないことで、モジュール運搬箱の構成を簡素化できることである。モジュール運搬箱は、充電器のみならず、複数の予備モジュールを互いに電気接続するための接続部材や、予備モジュールを他の電気機器に電気接続するための接続部材・インターフェースも備える必要がない。モジュール運搬箱は、複数の予備モジュールを適切に収納できる構成を有していればよいため、コスト・重量を低くできる。モジュール運搬箱の重量の増加を抑制することで、予備モジュールの運搬作業に要する負担も軽減される。
【0020】
上述したモジュール運搬箱の運用方法において、前記充電器によって前記予備モジュールの異常を検知してもよい。
【0021】
モジュール運搬箱に収納された予備モジュールが、内蔵する複数の蓄電セルの中に過度に電圧低下した蓄電セルを含むなどの、異常状態にある場合が想定される。上述した方法によれば、予備モジュールの状態把握と、必要に応じた充電とを行う過程で、充電器を介して、異常状態にある予備モジュールを保守員に認識させ、蓄電システムにそのような予備モジュールが組み込まれることを防止できる。
【0022】
上述したモジュール運搬箱の運用方法において、前記充電器が、前記予備モジュールの状態情報と異常の有無とを示してもよい。
状態情報・異常の有無を示す方法は、充電器が備える表示部に異常の有無を表示する方法でもよいし、充電器が異常の有無を発話する方法でもよい。
【0023】
上述した方法によれば、モジュール運搬箱に表示部や発話部を設けずに済む。そのため、表示部や発話部といった電気機器を動作させるための電源をモジュール運搬箱に供給する必要がなく、モジュール運搬箱の構成を簡素化できる。また、モジュール運搬箱の設置位置の自由度も向上する(商用電源がない位置にも設置できる)。
【0024】
上述したモジュール運搬箱の管理方法において、前記充電器からの通信線を、前記モジュール運搬箱の第1方向から前記予備モジュールに設けられた通信コネクタに接続し、前記充電器からの充電ケーブルを、前記第1方向から前記予備モジュールに設けられた外部端子に接続してもよい。
【0025】
上述した方法によれば、保守員は、同じ方向から、予備モジュールの通信コネクタと外部端子に、効率的にアクセスできる。
例えば保守員は、モジュール運搬箱のフロント扉を開けて、予備モジュールの前面に設けられた、通信コネクタおよび外部端子に、予備モジュールの前方からアクセスして、それらに通信線および充電ケーブルを接続することができる。
【0026】
上述した予備モジュールの管理方法において、前記通信線および前記充電ケーブルを前記通信コネクタおよび前記外部端子に接続した後、前記フロント扉を閉めて、前記予備モジュールを充電してもよい。
【0027】
予備モジュールの充電には、所定の時間を要する。短時間で急速に充電することは、予備モジュールの劣化を加速する可能性があるため好ましくない。上述した方法によれば、フロント扉を開けたまま充電する場合に比べて、予備モジュールの充電を安全に行うことができる。
【0028】
他の実施形態に係るモジュール運搬箱は、
複数の車輪が設けられた底板と、
縦方向に間隔をあけて設けられて、それぞれに予備モジュールを設置可能な複数の棚板と、
開閉可能なフロント扉と、を備え、
前記フロント扉を閉めた状態で、外部の充電器によって前記予備モジュールを充電することが可能に構成されている。
【0029】
従来、パレットの上に一段、複数の蓄電モジュールを載せて運搬されているが、広い占有面積が必要で運搬の効率が高くない。上述のモジュール運搬箱は、複数の棚板により、縦方向に複数の予備モジュールを設置可能であるため、運搬効率が高い。また、蓄電システムの近傍に予備モジュールを備蓄する際の、モジュール運搬箱による占有面積が比較的小さく、スペース効率が高い。
【0030】
前記複数の車輪は、それらの間にフォークリフトの一対の爪を挿入可能であるように、前記底板に設けられていてもよい。
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、例であり、本発明を限定するものではない。
【0032】
以下の説明および図面において、1つの蓄電セル(プリズマティックセル)における一対の電極端子の並び方向、蓄電セルの容器の短側面の対向方向、または、蓄電ユニットの外装体の長側面の対向方向を、X軸方向と定義する。複数の蓄電セルの並び方向、蓄電セルの容器の長側面の対向方向、蓄電ユニットの外装体の短側面の対向方向、または、蓄電ユニットと基板ユニットとの並び方向を、Y軸方向と定義する。蓄電ユニットにおけるベース部材と外装体蓋体との並び方向、蓄電セルとバスバーとの並び方向、蓄電セルの容器本体と蓋部との並び方向、または、上下方向(縦方向)を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は、互いに交差(本実施形態では直交)する方向である。
【0033】
図1に示すように、モジュール運搬箱100は、複数の予備モジュール50を収納する。モジュール運搬箱100は、金属製の筐体であり、その内部に、縦方向に間隔をあけて設けられて、それぞれに予備モジュール50を設置可能な複数の棚板を有している。図1に示す例では、縦方向に4段、各段に3個の予備モジュール50(合計12個)が収納されている。モジュール運搬箱100に収納可能な予備モジュール50の個数は、この例に限定はされない。
【0034】
モジュール運搬箱100に収納された複数の予備モジュール50は、互いに電気接続されておらず、かつ、他の電気機器や配線にも接続されていない(電力回路から切り離されている)。このような状態でモジュール運搬箱100に収納された予備モジュール50は、自己放電が極めて少なく抑えられる。
【0035】
図1に示す例では、モジュール運搬箱100は直方体形状を有し、複数の棚板の前方を覆うフロント扉101と、天板104と、底板106とを有する。フロント扉101は、複数段に設置された予備モジュール50の前方を覆っている。フロント扉101には、扉ハンドル102が設けられている。保守員が扉ハンドル102を操作してフロント扉101を開くと、内部の複数の(複数段の)予備モジュール50の前面にアクセスできる。フロント扉101は、施錠が可能であることが好ましい。
【0036】
モジュール運搬箱100は、その底板106に、複数の車輪106aが設けられている。図1に示す例では、長方形状の底板106の四隅に、回転軸の方向が自在に変わるキャスターが、車輪106aとして設けられている。図1(前面視)において、複数の車輪106aは、それらの間に、フォークリフトの一対の爪(図1に破線で示す)を挿入可能であるように、底板106に設けられている。
【0037】
図1に示す例では、モジュール運搬箱100の長方形状の天板104の四隅に、運搬箱100吊り下げ用の金具104aが設けられている。そのため、モジュール運搬箱100は、小型クレーンやユニック車によって、運搬車両などの移動体に対する、積載・積み下ろしをすることもできる。
【0038】
フロント扉101を閉めることで、内部の予備モジュール50はモジュール運搬箱100によって覆われる(外部に露出しなくなる)。このようなモジュール運搬箱100により、予備モジュール50を高い安全性で運搬できる。運搬車両による運搬中に、予備モジュール50がモジュール運搬箱100から落ちることがない。運搬車両から積み下ろし、車輪106aを転がしてモジュール運搬箱100を備蓄のための設置位置まで運搬する間も同様である。
【0039】
予備モジュール50を蓄電システムの近傍に備蓄する間、モジュール運搬箱100が、外部からの意図しない金属の接触、水分を含む異物の接触、熱、盗難などから、予備モジュール50を保護する。
【0040】
モジュール運搬箱100は、フロント扉101を閉めた状態で、外部の充電器10によって、予備モジュール50を充電することが可能に構成されており、この点については後述する。充電器10は、モジュール運搬箱100に固定されていない、可搬タイプのものであることが好ましい。
【0041】
図2に示すように、モジュール運搬箱100は、フロント扉101と反対側に位置してフロント扉101と対向する背板103と、フロント扉101と背板103との間に延びる一対の側板105とを有している。予備モジュール50は、フロント扉101を開けた状態で、モジュール運搬箱100の前方から(図2の左側から)挿入されて、各棚板の上に設置される。予備モジュール50は、その背面が、モジュール運搬箱100の背板103に対向するように、モジュール運搬箱100に収納される。
【0042】
フロント扉101を閉めた状態で、フロント扉101の下方から、充電器10(図1参照)の充電ケーブル16aを、モジュール運搬箱100の外部に導出できるようになっている。モジュール運搬箱100の内部で、棚板と、フロント扉101の内面との間には隙間が形成されており、充電ケーブル16aはその隙間を通じ、さらに、底板106と、フロント扉101の内面との間の隙間ないし開口(その幅ないし直径が、10mm未満)を通じて、外部に導出される。
【0043】
図2(側面視)においても、複数の車輪106aは、それらの間に、フォークリフトの一対の爪(図2に破線で示す)を挿入可能であるように、底板106に設けられている。モジュール運搬箱100を適正な位置に設置した後、底板106を、固定用金具107(例えば、L字形金具)およびボルトを用いて、床に対して固定してもよい。
【0044】
図3に示すように、予備モジュール50は、蓄電ユニット50aと、蓄電ユニット50aに取り付けられる基板ユニット52aとを有している。予備モジュール50の前面に(基板ユニット52aの前面に)、充電器10の通信線が接続される通信コネクタ52bと、充電器10の充電ケーブルが接続される正極コネクタ41および負極コネクタ42と、が設けられている。正極コネクタ41および負極コネクタ42は、予備モジュール50の外部端子に相当する。
【0045】
図3に示す蓄電ユニット50aは、Y軸方向に長尺の略直方体形状を有する組電池である。複数の蓄電セル55aが、バスバーフレームと、複数のバスバーとともに、外装体に収納されている。外装体は、外装体本体、ベース部材および外装体蓋体、を有している。
【0046】
蓄電ユニット50aには正極電源ケーブル41aおよび負極電源ケーブル42aが接続されている。正極電源ケーブル41aの先端および負極電源ケーブル42aの先端に、正極コネクタ41および負極コネクタ42がそれぞれ設けられている。図3は、正極コネクタ41が上を向き、負極コネクタ42が下を向く様子を示しているが、電源ケーブル41a,42aは可撓性を有しており、コネクタ41,42の向きは自在に変更できる。予備モジュール50をモジュール運搬箱100に収納した状態で、保守員がモジュール運搬箱100の前方から、コネクタ41,42に充電ケーブル16aを接続できればよい。
【0047】
本実施形態における蓄電セル55aは、二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電セル55a(プリズマティックセル)は、扁平な直方体(角形)の形状を有しており、本実施形態では、16個の蓄電セル55aがY軸方向に並んでいる。蓄電セル55aの形状、配置位置および個数等は、特に限定されない。また、蓄電セル55aは、非水電解質二次電池に限定はされず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電セル55aは、二次電池に代えて、一次電池であってもよい。蓄電セル55aは、固体電解質を用いた電池であってもよい。蓄電セル55aは、ラミネート型ケースを有するパウチセルであってもよい。
【0048】
次に、充電器10について説明する。
図4(A)に示すように、充電器10の筐体11は、前面11aと、後面11bと、一対の側面11cとを有し、略直方体形状を有する。前面11aに、表示部でありかつ受付部(ユーザインタフェース)であるタッチパネル20が設けられている。後面11bは、交流電源が接続される接続端子18を有する。充電器10は、可搬タイプであり、その上面に一対の取っ手12を有している。
【0049】
図4(B)に示すように、前面11aに、充電器10のパワースイッチ14、予備モジュールとの通信インターフェースである第1通信チャンネル15a、第2通信チャンネル15bが設けられている。前面11aに、予備モジュールのコネクタ41,42(図3参照)に接続される、充電器10の充電端子(本実施形態では、充放電用の充放電端子)16が設けられている。
【0050】
図5に示すように、充電器10は、タッチパネル20と電気的に接続された管理ユニット30と、管理ユニット30と通信可能に接続された第1コンバータ40aと、第1コンバータ40aと通信可能に接続された第2コンバータ40bとを有する。管理ユニット30は、第1コンバータ40a、第2コンバータ40bの双方と直接通信可能であってもよい。
【0051】
充電器10の後面の接続端子18に入力された交流電力は、前述のパワースイッチ14に連動するブレーカ14aを介して、第1コンバータ40aと第2コンバータ40bに供給される。交流電力はまた、降圧した電力を管理ユニット30に供給するための電源32に入力される。
【0052】
第2コンバータ40bと第1コンバータ40aは、直列接続されている。第2コンバータ40bのマイナス出力端子は、遮断スイッチ(例えば、リレー)34と電流センサ36を介して、充電器10の前面の充電端子16に接続されている。第2コンバータ40bのプラス出力端子は、第1コンバータ40aのマイナス出力端子に接続されている。第1コンバータ40aのプラス出力端子は、充電端子16に接続されている。充電端子16は、充電ケーブル16aにより、予備モジュール50のコネクタ41,42に接続される。
【0053】
本実施形態の充電器10は、筐体内に、予備モジュール50を放電させる放電用回路60が設けられて、充放電器として構成されている。放電用回路60は、耐熱性が高いホーロー抵抗を有してもよい。
【0054】
予備モジュール50の基板ユニット52a(図3参照)に収納されている監視基板52に、充電器10の管理ユニット30が通信可能に接続される。充電器10の管理ユニット30は、図示しない蓄電システムに予備モジュール50が組み込まれた際に、監視基板52が接続される電池管理ユニット(上位コントローラ)と同様の構成であってもよい。図5において、破線は通信経路を示す。
【0055】
監視基板52は、電圧センサを用いて、各蓄電セル55aの電圧値を検出し、充電器10の管理ユニット30に通信で送信する。監視基板52は、各蓄電セル55aの電圧値の総和を、予備モジュール50の電圧値として、管理ユニット30に送信する。代替的に、管理ユニット30において各蓄電セル55aの電圧値の総和を求め、予備モジュール50の電圧値として認識してもよい。
【0056】
監視基板52はさらに、温度センサを用いて、予備モジュール50の温度を検出し、充電器10の管理ユニット30に通信で送信する。
【0057】
このように充電器10の管理ユニット30を予備モジュール50の監視基板52に通信接続させることで、管理ユニット30が、予備モジュール50の状態を把握できる。
【0058】
次に、予備モジュール50の備蓄に関わる作業を、図6を参照して説明する。
複数の予備モジュール50を収納したモジュール運搬箱100を、蓄電システム近傍の、備蓄のために適正な設置位置に設置する(ステップS10)。
【0059】
モジュール運搬箱100の外側の充電器10(図1参照)からの通信線を、モジュール運搬箱100の中の一つの予備モジュール50の通信コネクタ52bに接続する(ステップS20)。このとき、充電器10からの充電ケーブル16a(図5参照)を、予備モジュール50のコネクタ41,42に接続してもよい。
【0060】
モジュール運搬箱100の外側の充電器10が、通信により、予備モジュール50の状態情報を取得する(ステップS30)。充電器10の管理ユニット30が、図示しない蓄電システムにおける電池管理ユニットと同様の構成であれば、管理ユニット30は、予備モジュール50の状態を極めて詳細に把握できる。管理ユニット30は、取得した状態情報に基づいて、予備モジュール50の異常を検知する。例えば、管理ユニット30は、予備モジュール50の各蓄電セル55aの電圧を把握して、予備モジュール50が異常な(例えば、内部短絡が生じている)セル55aを含むか否かを判定できる。
【0061】
モジュール運搬箱100の外側の充電器10が、取得した予備モジュール50の状態情報と異常の有無とを表示する(ステップS40)。図7(A)に示すように、充電器10のタッチパネル20が、一つの表示画面において、異常の有無を示すアイコン(ボタン)21を有してもよい。アイコン21は、「異常なし」と「異常発生」との間を遷移してもよい。
【0062】
同じ表示画面に、予備モジュール50の状態情報を表示してもよい。図7(A)の例では、充電器10が接続している予備モジュール50の機種「XYZ」を示すアイコン22が、アイコン21と同じ表示画面に示されている。
【0063】
図8に示すように、他の表示画面に予備モジュール50の状態情報を表示してもよい。図7(A)の表示画面において「充電モード」を示すアイコン24が選択された際に、図8の表示画面に遷移してもよい。図8の例では、「電池電圧(予備モジュール50の総電圧)」、「SOC(予備モジュール50の充電状態)」、「電池電流(予備モジュール50に流れる電流)」、「電池温度(予備モジュール50の温度)」が表示されている。
【0064】
図7(A)におけるアイコン21が「異常発生」を表示する場合、そのアイコン21が選択されると、図7(B)の表示画面に遷移する。図7(B)は、検知された異常の項目、例えば、温度状態、通信状態、電圧状態、管理ユニット30(BMU)の状態、監視基板52(CMU:Cell Monitoring Unit)の状態などを示す。図7(B)の表示画面に、異常の程度や内容を詳細に表示する画面に遷移するためのアイコン23が用意されていてもよい
【0065】
図6に戻って、充電器10のタッチパネル20における表示に基づき、通信線を接続した予備モジュール50に対する充電の必要性を、保守員が判定する(ステップS50)。S30において、予備モジュール50の異常が検知された場合、充電は不要と判定されてもよい。代替的に、充電器10が自律的に、充電の必要性(充電の可否)を判定して判定結果を表示してもよい。
【0066】
充電が不要(S50:NO)という場合、通信線を接続した予備モジュール50に対する管理作業を終了する(ステップS70)。保守員は、モジュール運搬箱100に収納された他の予備モジュールの状態把握を開始してもよい(S20に戻ってもよい)。
【0067】
充電が必要(S50:YES)という場合、充電器10の充電ケーブル16aを介して予備モジュールを充電する。充電に所定の時間を要する場合、モジュール運搬箱100のフロント扉101を閉めることが好ましい(図2参照)。フロント扉101が開いたままだと、風や地震の揺れによってフロント扉101が意図せず動くことが想定される。フロント扉101を閉めることで、充電作業の安全性を高めることができる。充電ケーブル16aと通信線とが、モジュール運搬箱100の底板106とフロント扉101との間の隙間ないし開口を通じて、外部に導出される。
【0068】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。
充電器10からの通信線と充電ケーブル16aとを予備モジュール50に接続することに代えて、充電ケーブル16aは接続せずに、充電器10に予備モジュール50との通信を行わせてもよい。通信により状態を把握し、充電が必要と判定される場合に充電ケーブル16aを予備モジュール50に接続してもよい。
【0069】
モジュール運搬箱100は、モジュール運搬箱100の底板106とフロント扉101との間の箇所以外に、隙間ないし開口を有してもよい。モジュール運搬箱100が、屋外や、風通しの良い場所に設置される場合、こうした隙間や開口は、数が少ないほうがよく、かつ、モジュール運搬箱100の下側に配置されるとよい。
【0070】
モジュール運搬箱100は、フロント扉101に代えて、またはフロント扉101に加えて、リア扉またはサイド扉を開閉できるタイプであってもよい。
【0071】
モジュール運搬箱100は、車輪106aの回転を制動するストッパーを有してもよい。モジュール運搬箱100は、底板106に車輪106aを備えなくてもよい。
【0072】
モジュール運搬箱101は、それぞれが予備モジュール50を収納する複数の箱を組み合わせて構成されてもよい。複数の箱それぞれが、外部の充電器から内部の予備モジュール50への通信接続を許容するように構成されてもよい。
【0073】
既設のモジュール運搬箱101に、本技術を適用してもよい。すなわち、モジュール運搬箱101の運用方法は、複数の予備モジュールを収納したモジュール運搬箱(既設)の中の予備モジュールの通信部に、前記モジュール運搬箱の外側の充電器から通信接続し、通信により前記予備モジュールの、充電状態および電圧の少なくともいずれかを含む状態情報を取得し、取得した前記状態情報に基づいて充電の必要性または可否を判定して、前記充電器により前記モジュール運搬箱の中の予備モジュールを充電してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 充電器
16a 充電ケーブル
50 予備モジュール
100 モジュール運搬箱
101 フロント扉
106 底板
106a 車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8