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特開2023-68395計測システム、計測方法、及び、計測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068395
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】計測システム、計測方法、及び、計測プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/18 20090101AFI20230510BHJP
   H04W 24/10 20090101ALI20230510BHJP
   H04W 24/06 20090101ALI20230510BHJP
【FI】
H04W16/18 110
H04W24/10
H04W24/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179480
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】渋川 文哉
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA22
5K067DD11
5K067DD43
5K067DD44
5K067DD45
5K067DD46
5K067EE02
5K067EE16
5K067EE32
5K067FF03
5K067FF16
5K067LL08
(57)【要約】
【課題】移動体と基地局の間で安定した無線通信環境を構築する際に生じうる、基地局を設置する場所を繰り返し調整する作業を避けることができる計測システム、計測方法、及び、計測プログラムを提供する。
【解決手段】計測システム、計測方法、及び、計測プログラムによれば、第1移動体に設けられた第1通信装置と、第2移動体に設けられた第2通信装置との間で行われる無線通信の品質を示す品質情報が取得される。候補配置位置に対して第1移動体を配置する組合せごとに品質情報が取得され、品質情報に基づいて、組合せごとに評価値が算出される。そして、所定レベルよりも高い評価値を有する組合せが抽出される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1移動体に設けられる第1通信装置と、
第2移動体に設けられて前記第1通信装置との間で無線通信を行う第2通信装置と、
候補配置位置に対して前記第1移動体を配置する組合せの中から選択された計測対象組合せに基づいて前記第1移動体を配置するよう、前記第1移動体を制御する管理部と、
前記無線通信の品質を示す品質情報を取得する取得部と、
前記組合せごとに、前記候補配置位置に前記第1移動体が配置された際の前記品質情報を前記組合せに紐づけて記憶する記憶部と、
前記組合せごとに、前記品質情報に基づいて評価値を算出する算出部と、
前記組合せのうち所定レベルよりも高い前記評価値を有する組合せを抽出する抽出部と、
を備える計測システム。
【請求項2】
前記管理部は、所定エリアを走査するよう前記第2移動体を制御し、
前記品質情報は、前記所定エリア内の位置に対して、前記位置に前記第2移動体が配置された際の前記品質を関連付けたマッピング情報である、請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記管理部は、前記計測対象組合せに基づいて配置された前記第1移動体に設けられた前記第1通信装置のみを、前記第2通信装置と通信可能な状態に切り替える、請求項1又は2に記載の計測システム。
【請求項4】
前記品質は、前記無線通信の通信強度、通信速度、データロス率、の少なくともいずれかの品質特定値によって示される、請求項1~3のいずれか一項に記載の計測システム。
【請求項5】
前記算出部は、前記品質特定値の最小値に基づいて前記評価値を算出する、請求項4に記載の計測システム。
【請求項6】
前記算出部は、前記品質特定値の平均値に基づいて前記評価値を算出する、請求項4又は5に記載の計測システム。
【請求項7】
第1通信装置を備える第1移動体と、前記第1通信装置との間で無線通信を行う第2通信装置を備える第2移動体と、を用いる計測方法であって、
候補配置位置に対して前記第1移動体を配置する組合せの中から選択された計測対象組合せに基づいて前記第1移動体を配置するよう、前記第1移動体を制御し、
前記無線通信の品質を示す品質情報を取得し、
前記組合せごとに、前記候補配置位置に前記第1移動体が配置された際の前記品質情報を前記組合せに紐づけて記憶し、
前記組合せごとに、前記品質情報に基づいて評価値を算出し、
前記組合せのうち所定レベルよりも高い前記評価値を有する組合せを抽出する、計測方法。
【請求項8】
第1移動体に設けられた第1通信装置と、第2移動体に設けられて前記第1通信装置との間で無線通信を行う第2通信装置と、接続されたコンピュータに、
候補配置位置に対して前記第1移動体を配置する組合せの中から選択された計測対象組合せに基づいて前記第1移動体を配置するよう、前記第1移動体を制御するステップと、
前記無線通信の品質を示す品質情報を取得するステップと、
前記組合せごとに、前記候補配置位置に前記第1移動体が配置された際の前記品質情報を前記組合せに紐づけて記憶するステップと、
前記組合せごとに、前記品質情報に基づいて評価値を算出するステップと、
前記組合せのうち所定レベルよりも高い前記評価値を有する組合せを抽出するステップと、
を実行させるための計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測システム、計測方法、及び、計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動体と基地局の間で安定した無線通信環境を効率よく構築するために、移動体が備える第1の通信装置と、固定された基地局が備える第2の通信装置との間の無線通信の通信状態を計測する技術が開示されている。当該技術では、移動体の移動中において、計測された通信状態が第1の通信装置の位置情報と関連付けて取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-195145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される技術によれば、移動体の作業経路上で通信状態が不安定になる場合に、作業者は、基地局を設置する場所を変更する必要がある。そして、基地局を設置する場所を変更した後に、移動体と基地局の間で安定した無線通信環境を実際に構築できたかどうかを確認するため、再度、通信状態を計測する必要がある。変更後の基地局の場所によっては、安定した無線通信環境を構築できていない場合もあり、基地局を設置する場所を繰り返し調整する作業を避けることができないという問題がある。
【0005】
本開示は上述の状況を鑑みて成されたものである。即ち、本開示は、移動体と基地局の間で安定した無線通信環境を構築する際に生じうる、基地局を設置する場所を繰り返し調整する作業を避けることができる計測システム、計測方法、及び、計測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る計測システムは、第1通信装置と、第2通信装置と、管理部と、取得部と、記憶部と、算出部と、抽出部と、を備える。第1通信装置は、第1移動体に設けられる。第2通信装置は、第2移動体に設けられて上記第1通信装置との間で無線通信を行う。管理部は、候補配置位置に対して上記第1移動体を配置する組合せの中から選択された計測対象組合せに基づいて上記第1移動体を配置するよう、上記第1移動体を制御する。取得部は、上記無線通信の品質を示す品質情報を取得する。記憶部は、上記組合せごとに、上記候補配置位置に上記第1移動体が配置された際の上記品質情報を上記組合せに紐づけて記憶する。算出部は、上記組合せごとに、上記品質情報に基づいて評価値を算出する。抽出部は、上記組合せのうち所定レベルよりも高い上記評価値を有する組合せを抽出する。
【0007】
上記管理部は、所定エリアを走査するよう上記第2移動体を制御し、上記品質情報は、上記所定エリア内の位置に対して、上記位置に上記第2移動体が配置された際の上記品質を関連付けたマッピング情報であってもよい。
【0008】
上記管理部は、上記計測対象組合せに基づいて配置された上記第1移動体に設けられた上記第1通信装置のみを、上記第2通信装置と通信可能な状態に切り替えるものであってもよい。
【0009】
上記品質は、上記無線通信の通信強度、通信速度、データロス率、の少なくともいずれかの品質特定値によって示されるものであってもよい。
【0010】
上記算出部は、上記品質特定値の最小値に基づいて上記評価値を算出するものであってもよい。
【0011】
上記算出部は、上記品質特定値の平均値に基づいて上記評価値を算出するものであってもよい。
【0012】
本開示に係る計測方法は、第1通信装置を備える第1移動体と、上記第1通信装置との間で無線通信を行う第2通信装置を備える第2移動体と、を用いる。候補配置位置に対して上記第1移動体を配置する組合せの中から選択された計測対象組合せに基づいて上記第1移動体を配置するよう、上記第1移動体を制御する。上記無線通信の品質を示す品質情報を取得し、上記組合せごとに、上記候補配置位置に上記第1移動体が配置された際の上記品質情報を上記組合せに紐づけて記憶する。そして、上記組合せごとに、上記品質情報に基づいて評価値を算出し、上記組合せのうち所定レベルよりも高い上記評価値を有する組合せを抽出する。
【0013】
本開示に係る計測プログラムは、第1移動体に設けられた第1通信装置と、第2移動体に設けられて上記第1通信装置との間で無線通信を行う第2通信装置と、接続されたコンピュータに、次のステップを実行させる。候補配置位置に対して上記第1移動体を配置する組合せの中から選択された計測対象組合せに基づいて上記第1移動体を配置するよう、上記第1移動体を制御するステップを実行させる。上記無線通信の品質を示す品質情報を取得するステップを実行させる。上記組合せごとに、上記候補配置位置に上記第1移動体が配置された際の上記品質情報を上記組合せに紐づけて記憶するステップを実行させる。上記組合せごとに、上記品質情報に基づいて評価値を算出するステップを実行させる。上記組合せのうち所定レベルよりも高い上記評価値を有する組合せを抽出するステップを実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、移動体と基地局の間で安定した無線通信環境を構築する際に生じうる、基地局を設置する場所を繰り返し調整する作業を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の実施形態に係る計測システムの構成を概略的に示す図である。
図2】第1移動体及び第2移動体の構成を示すブロック図である。
図3】解析装置の構成を示すブロック図である。
図4】計測システムの計測処理の手順を示すフローチャートである。
図5】計測システムの計測処理の一部の手順を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
[計測システムの構成]
図1は、本開示の実施形態に係る計測システムの構成を概略的に示す図である。図2は、第1移動体及び第2移動体の構成を示すブロック図である。図3は、解析装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
本開示の実施形態に係る計測システムは、移動体が移動する所定エリアにおいて安定した無線通信環境を実現できる、基地局の設置位置を提案するためのシステムである。より具体的には、計測システムは、基地局を配置する可能性のある候補配置位置(例えば、経度、緯度、地表面からの高さで指定される位置)に対して、無線通信機能を備えた第1移動体30を基地局の代わりに配置する。そして、計測システムは、所定エリアにおける無線通信環境を計測する。計測システムは、計測した無線通信環境の中から、安定した無線通信環境を実現できる第1移動体30の配置を抽出し、当該配置に対応する候補配置位置を、推奨される基地局の設置位置として提案するものである。
【0019】
計測システムは、解析装置20と、第1通信装置31と、第2通信装置41と、を備える。ここで、解析装置20は、無線アンテナ10と接続される。第1通信装置31は第1移動体30に設けられる。第2通信装置41は、第2移動体40に設けられて、第1通信装置31との間で無線通信を行う。計測システムは、第1移動体30、第2移動体40、無線アンテナ10を含むものであってもよい。
【0020】
なお、無線通信の通信方式は、特に限定されない。例えば、通信方式は、携帯電話回線網などの移動体通信網、無線パケット通信網、特定小電力無線、又は無線LANによる通信方式等である。第1通信装置31及び第2通信装置41は、無線通信するための無線アンテナを含む。
【0021】
第1移動体30及び第2移動体40は、地上、空中、水上を移動するものであって、有人でもよいし、無人でもよい。例えば、第1移動体30及び第2移動体40は、ドローン、無人航空機、自動運転車両である。以下では、第1移動体30及び第2移動体40はドローンである場合について説明するが、これに限定されない。
【0022】
無線アンテナ10は、解析装置20が第1移動体30と無線接続する用途で用いられる。なお、無線アンテナ10は、解析装置20が第2移動体40と無線接続する用途で用いられるものであってもよい。
【0023】
解析装置20は、無線アンテナ10を介して第1通信装置31と無線接続される。一方、解析装置20は、無線アンテナ10及び第1通信装置31を介して、第2通信装置41と無線接続される。
【0024】
また、解析装置20は、第1通信装置31に対して第1移動体30の移動を制御するための第1移動制御信号を送信する。解析装置20は、第1移動体30において得られる各種の情報を第1通信装置31から取得する。
【0025】
さらに、解析装置20は、第2通信装置41に対して第2移動体40の移動を制御するための第2移動制御信号を送信する。解析装置20は、第2移動体40において得られる各種の情報を第2通信装置41から取得する。
【0026】
まず、図2に示すように、第1移動体30は、第1通信装置31、位置計測部33、移動制御部35を備える。
【0027】
第1通信装置31は、解析装置20から第1移動制御信号を受信する。また、第1通信装置31は、後述する位置計測部33によって取得した第1移動体30の位置情報を、解析装置20に送信する。
【0028】
その他、第1通信装置31は、解析装置20から第2移動制御信号を受信する。そして、第1通信装置31は、受信した第2移動制御信号を第2通信装置41に対して送信する。また、第1通信装置31は、第2通信装置41から第2移動体40の位置情報、及び、品質情報を受信する。そして、第1通信装置31は、受信した第2移動体40の位置情報、及び、品質情報を、解析装置20に送信する。すなわち、第1通信装置31は、解析装置20と第2通信装置41の間の通信を中継する。
【0029】
位置計測部33は、第1移動体30の現在位置の情報(位置情報)を一定周期ごとに取得する。例えば、位置計測部33は、GNSS/IMU装置である。具体的には、位置計測部33は、第1移動体30の位置情報をグローバル座標で取得する。例えば、位置計測部33は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いて、第1移動体30の現在位置をグローバル座標で取得する。
【0030】
移動制御部35は、第1移動制御信号に基づいて、第1移動体30の移動を制御する。例えば、移動制御部35は、第1移動制御信号に含まれる目的地の位置と、第1移動体30の現在位置の位置ズレを算出する。そして、移動制御部35は、当該位置ズレが所定値以下、すなわち目的地の位置の近傍に第1移動体30が到達するように、第1移動体30の駆動手段を制御するものであってもよい。例えば、第1移動体30がドローンである場合には、ドローンを浮遊させるプロペラモータ、機体のピッチング角及びローリング角を制御するモータ等を制御するものであってもよい。
【0031】
次に、図2に示すように、第2移動体40は、第2通信装置41、位置計測部43、移動制御部45、品質情報生成部47を備える。
【0032】
第2通信装置41は、第1通信装置31から第2移動制御信号を受信する。また、第2通信装置41は、後述する位置計測部43によって取得した第2移動体40の位置情報、及び、品質情報生成部47によって生成した品質情報を、第1通信装置31に送信する。
【0033】
位置計測部43は、第2移動体40の現在位置の情報(位置情報)を一定周期ごとに取得する。例えば、位置計測部43は、GNSS/IMU装置である。具体的には、位置計測部43は、第2移動体40の位置情報をグローバル座標で取得する。例えば、位置計測部43は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いて、第2移動体40の現在位置をグローバル座標で取得する。
【0034】
移動制御部45は、第2移動制御信号に基づいて、第2移動体40の移動を制御する。例えば、移動制御部45は、第2移動制御信号に含まれる目的地の位置と、第2移動体40の現在位置の位置ズレを算出する。そして、移動制御部45は、当該位置ズレが所定値以下、すなわち目的地の位置の近傍に第2移動体40が到達するように、第2移動体40の駆動手段を制御するものであってもよい。例えば、第2移動体40がドローンである場合には、ドローンを浮遊させるプロペラモータ、機体のピッチング角及びローリング角を制御するモータ等を制御するものであってもよい。
【0035】
また、移動制御部45は、第2移動制御信号に基づいて、第2移動体40が所定エリアを走査するよう第2移動体40を制御するものであってもよい。すなわち、移動制御部45は、所定エリアに含まれる計測点をすべて経由するルートを移動するように、第2移動体40の移動を制御するものであってもよい。
【0036】
品質情報生成部47は、第1通信装置31と第2通信装置41の間の無線通信の品質を示す品質情報を生成する。ここで、無線通信の品質は、無線通信の通信強度、通信速度、データロス率、の少なくともいずれかの品質特定値によって示される。
【0037】
また、第2移動体40が所定エリアを走査するよう第2移動体40が制御されている場合に、品質情報生成部47は、所定エリアにおける品質を地図にマッピングした、マッピング情報を品質情報として生成するものであってもよい。マッピング情報は、所定エリア内の各計測点における無線通信の品質と、計測点とを関連付けた情報である。
【0038】
次に、図3に示すように、解析装置20は、取得部21、データベース23(記憶部)、コントローラ25、操作部27、提示部29を備える。コントローラ25は、取得部21、データベース23、操作部27、提示部29と通信可能なように接続される。
【0039】
その他、操作部27及び提示部29は、解析装置20自体が備えていてもよいし、解析装置20の外部に設置されて、解析装置20と接続されるものであってもよい。
【0040】
取得部21は、第1通信装置31と第2通信装置41の間の無線通信の品質を示す品質情報を取得する。例えば、取得部21は、品質情報生成部47によって生成された品質情報を取得する。
【0041】
データベース23は、取得した品質情報を記憶する。特に、データベース23は、品質情報を取得した際の、候補配置位置に対して第1移動体30を配置した組合せに紐づけて、品質情報を記憶する。候補配置位置に対する第1移動体30を配置する組合せが複数存在する場合には、データベース23は、組合せごとに品質情報を記憶する。
【0042】
操作部27は、計測システムの監視員・保守員など、ユーザが操作を行うことができる入力装置である。例えば、操作部27は、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネルなどである。操作部27は、ここに挙げた例に限定されない。操作部27を介して入力されたユーザの操作内容は、コントローラ25に送信される。
【0043】
提示部29は、コントローラ25から受信した情報を表示する。例えば、提示部29は、複数の表示画素の組合せにより図形、文字を表示するディスプレイであってもよい。提示部29は、ここに挙げた例に限定されない。
【0044】
コントローラ25(制御部)は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。コントローラ25には、解析装置20として機能するためのコンピュータプログラム(計測プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ25は、解析装置20が備える複数の情報処理回路(251、253、255)として機能する。なお、コンピュータプログラム(計測プログラム)は、コンピュータによって読み書き可能な記憶媒体に格納されるものであってもよい。
【0045】
本開示では、ソフトウェアによって複数の情報処理回路(251、253、255)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(251、253、255)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(251、253、255)を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0046】
図3に示すように、コントローラ25は、複数の情報処理回路(251、253、255)として、管理部251、算出部253、抽出部255を備える。
【0047】
管理部251は、第1移動体30の配置を管理する。より具体的には、管理部251は、事前に設定された候補配置位置(例えば、経度、緯度、地表面からの高さで指定される位置)を取得する。ここで、候補配置位置は、基地局を配置する可能性のある位置の候補である。
【0048】
候補配置位置は、データベース23から読み出されるものであってもよいし、操作部27を介して、ユーザが入力するものであってもよい。
【0049】
管理部251は、候補配置位置に対して第1移動体を配置する組合せの中から、計測対象とする計測対象組合せを選択する。例えば、n個の候補配置位置に対してm台の第1移動体を配置する組合せは、コンビネーション「nCm」の数だけ存在する。ここで、n、mは自然数であって、mは、計測システムによって管理される第1移動体30の台数以下の数である。また、mはn以下の数である。
【0050】
もっとも、管理部251は、n個の候補配置位置に対してm台の第1移動体を配置する組合せのうち、第1移動体同士が隣接して配置される場合を除外して、計測対象組合せを選択するものであってもよい。これは、基地局を建設する際のコストを削減する観点から、なるべく少ない基地局の数で、移動体が移動する所定エリア全体を広く覆う必要があることによる。
【0051】
そして、管理部251は、選択した計測対象組合せに基づいて、第1移動体30を配置するよう、第1移動制御信号を生成する。生成した第1移動制御信号は、無線アンテナ10を介して第1通信装置31に送信される。
【0052】
なお、管理部251は、計測システムによって管理される複数の第1移動体30の全てを候補配置位置のいずれかに配置するよう制御するものであってもよい。また、管理部251は、複数の第1移動体30のうち一部の第1移動体30のみを候補配置位置のいずれかに配置するよう制御するものであってもよい。
【0053】
その他、管理部251は、選択した計測対象組合せに基づいて配置された第1移動体30に設けられた第1通信装置31のみを、第2通信装置41と通信可能な状態に切り替えるものであってもよい。複数の第1移動体30のうち一部の第1移動体30を計測対象組合せに係る候補配置位置に配置し、残りの第1移動体30を計測対象組合せに係る候補配置位置以外の候補配置位置に配置する場合に、効率的な計測を行うことができる。
【0054】
例えば、計測対象組合せに係る候補配置位置に配置されていない残りの第1移動体30を第2通信装置41と通信不能な状態にしておく。これにより、次の計測対象組合せに係る候補配置位置へ残りの第1移動体30を移動させつつ、現在選択されている計測対象組合せに係る候補配置位置に配置された第1移動体30を用いて品質情報の取得を行うことができる。
【0055】
また、管理部251は、所定エリアを走査するよう第2移動体40を制御するものであってもよい。例えば、管理部251は、第2移動体40が所定エリアに含まれる計測点をすべて経由するルートを移動するように、第2移動制御信号を生成するものであってもよい。生成した第2移動制御信号は、無線アンテナ10及び第1通信装置31を介して第2通信装置41に送信される。
【0056】
算出部253は、候補配置位置に対して第1移動体を配置する組合せごとに、データベース23に記憶された品質情報に基づいて評価値を算出する。
【0057】
例えば、品質情報には、無線通信の通信強度、通信速度、データロス率、の少なくともいずれかの品質特定値が含まれている。算出部253は、これらの品質特定値の最小値に基づいて評価値を算出するものであってもよい。これは、所定エリアにおいて無線通信の品質が悪化する計測点が存在する基地局の配置に対して、評価値を低く設定するためである。
【0058】
その他、算出部253は、品質特定値の平均値に基づいて評価値を算出するものであってもよい。ここで、平均値は、所定エリア全体の計測点での評価値の合計を、所定エリアに含まれる計測点の個数で除算して得られる値である。
【0059】
なお、所定エリアの計測点ごとに重み付けを行って、重み付け平均によって平均値を算出してもよい。例えば、重み付けに使用するパラメータの例としては、人口密集度、交通量、基地局を建設する際のコストなどが挙げられる。人口密集度、交通量の高い地点ほど大きな重み付けを行うことで、ユーザの利便性を考慮した基地局の配置を行うことができる。また、基地局を建設する際のコストが小さい地点ほど大きな重み付けを行うことで、経済合理性を考慮した基地局の配置を行うことができる。
【0060】
抽出部255は、データベース23に記憶された組合せのうち所定レベルよりも高い評価値を有する組合せを抽出する。特に、抽出部255は、所定レベルよりも高い評価値を有する組合せを、推奨組合せとして抽出する。
【0061】
その他、抽出部255は、抽出した推奨組合せを外部に出力するものであってもよい。抽出した推奨組合せは、例えば、提示部29を介してユーザに提示されるものであってもよい。
【0062】
[計測システムの計測処理の手順]
次に、本開示に係る計測システムの計測処理の手順を、図4及び図5を参照して説明する。図4は、計測システムの計測処理の手順を示すフローチャートである。図5は、計測システムの計測処理の一部の手順を示すシーケンス図である。図4に示されるフローチャートの処理は、ユーザの指示に基づいて開始される。
【0063】
ステップS101において、管理部251は、候補配置位置に対して第1移動体を配置する組合せの中から、計測対象とする計測対象組合せを選択する。
【0064】
ステップS103において、計測システムは、計測対象組合せに基づいて、第1移動体30を候補配置位置に配置する。
【0065】
より具体的には、図5に示すように、解析装置20から第1移動体30に対して第1移動制御信号が送信される。そして、ステップS301において、第1移動体30の位置情報が取得される。ステップS303において、第1移動制御信号に基づいて、第1移動体30が計測対象組合せに係る候補配置位置まで移動する。その後、第1移動体30から解析装置20に対して第1移動体30の位置情報が送信される。
【0066】
なお、ステップS103は、計測対象組合せに係る候補配置位置及び第1移動体30について、配置が完了するまで実行される。
【0067】
次に、ステップS105において、取得部21は、第1通信装置31と第2通信装置41の間の無線通信の品質を示す品質情報を取得する。
【0068】
より具体的には、図5に示すように、解析装置20から第1移動体30に対して第2移動制御信号が送信される。そして、第1移動体30から第2移動体40に対して第2移動制御信号が送信される。すなわち、第1移動体30は、解析装置20から第2移動体40に向けた、第2移動制御信号の送信を中継する。
【0069】
ステップS401において、品質情報生成部47は、第1通信装置31と第2通信装置41の間の無線通信の品質を示す品質情報を生成する。ステップS403において、第2移動体40の位置情報が取得される。
【0070】
その後、第2移動体40から第1移動体30に対して、品質情報及び第2移動体40の位置情報が送信される。そして、第1移動体30から解析装置20に対して、品質情報及び第2移動体40の位置情報が送信される。すなわち、第1移動体30は、第2移動体40から解析装置20に向けた、品質情報及び第2移動体40の位置情報の送信を中継する。
【0071】
次に、ステップS107において、算出部253は、候補配置位置に対して第1移動体を配置する組合せごとに、品質情報に基づいて評価値を算出する。
【0072】
ステップS109において、データベース23は、候補配置位置に対して第1移動体を配置する組合せごとに、算出された評価値を記憶する。
【0073】
ステップS111において、管理部251は、候補配置位置に対して第1移動体を配置する組合せのうち、計測対象組合せとしてこれまでに選択されていない組合せが存在するかどうかを判定する。
【0074】
未選択の組合せが存在する場合(ステップS111にてYESの場合)、ステップS101に戻り、管理部251は、未選択の組合せを計測対象組合せとして選択する。
【0075】
一方、未選択の組合せが存在しない場合(ステップS111にてNOの場合)、ステップS113において、抽出部255は、所定レベルよりも高い評価値を有する組合せを抽出する。特に、抽出部255は、所定レベルよりも高い評価値を有する組合せを、推奨組合せとして抽出する。
【0076】
ステップS115において、抽出部255は推奨組合せを出力する。
【0077】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本開示に係る計測システム、計測方法、及び、計測プログラムは、第1通信装置を備える第1移動体と、上記第1通信装置との間で無線通信を行う第2通信装置を備える第2移動体と、を用いる。候補配置位置に対して上記第1移動体を配置する組合せの中から選択された計測対象組合せに基づいて上記第1移動体を配置するよう、上記第1移動体を制御する。上記無線通信の品質を示す品質情報を取得し、上記組合せごとに、上記候補配置位置に上記第1移動体が配置された際の上記品質情報を上記組合せに紐づけて記憶する。そして、上記組合せごとに、上記品質情報に基づいて評価値を算出し、上記組合せのうち所定レベルよりも高い上記評価値を有する組合せを抽出する。
【0078】
これにより、移動体と基地局の間で安定した無線通信環境を構築する際に生じうる、基地局を設置する場所を繰り返し調整する作業を避けることができる。
【0079】
特に、基地局を実際に設置する前に、候補配置位置に対して第1移動体を配置する組合せについて品質情報が取得される。そのため、複数の組合せ同士を比較することで、安定した無線通信環境を構築できると考えられる基地局の配置を、基地局を実際に設置する前に把握することができる。
【0080】
本開示に係る計測システム、計測方法、及び、計測プログラムは、所定エリアを走査するよう上記第2移動体を制御するものであってもよい。そして、上記品質情報は、上記所定エリア内の位置に対して、上記位置に上記第2移動体が配置された際の上記品質を関連付けたマッピング情報であってもよい。これにより、所定エリア内での無線通信の品質を地図情報と合わせて把握することができる。さらには、無線通信の品質が悪化する箇所を特定して、将来の基地局の配置計画においてマッピングの結果を利用することができる。
【0081】
本開示に係る計測システム、計測方法、及び、計測プログラムは、上記計測対象組合せに基づいて配置された上記第1移動体に設けられた上記第1通信装置のみを、上記第2通信装置と通信可能な状態に切り替えるものであってもよい。これにより、複数の第1移動体のうち一部の第1移動体を計測対象組合せに係る候補配置位置に配置し、残りの第1移動体を計測対象組合せに係る候補配置位置以外の候補配置位置に配置する場合に、効率的な計測を行うことができる。
【0082】
例えば、次の計測対象組合せに係る候補配置位置へ残りの第1移動体を移動させつつ、現在選択されている計測対象組合せに係る候補配置位置に配置された第1移動体を用いて品質情報の取得を行うことができる。その結果、第1移動体を配置する時間も、計測に利用することができる。その結果、短時間で、安定した無線通信環境を構築できると考えられる基地局の配置を、基地局を実際に設置する前に把握することができる。
【0083】
本開示に係る計測システム、計測方法、及び、計測プログラムにおいて、上記品質は、上記無線通信の通信強度、通信速度、データロス率、の少なくともいずれかの品質特定値によって示されるものであってもよい。無線通信の品質を考慮して、基地局の配置を検討することができる。その結果、基地局の配置の精度を向上させることができる。
【0084】
本開示に係る計測システム、計測方法、及び、計測プログラムは、上記品質特定値の最小値に基づいて上記評価値を算出するものであってもよい。これにより、所定エリアにおいて無線通信の品質が悪化する計測点が存在する基地局の配置に対して、評価値を低く設定することができる。その結果、基地局の配置の精度を向上させることができる。
【0085】
本開示に係る計測システム、計測方法、及び、計測プログラムは、上記品質特定値の平均値に基づいて上記評価値を算出するものであってもよい。これにより、所定エリア全体での無線通信の品質を考慮して、基地局の配置を検討することができる。その結果、基地局の配置の精度を向上させることができる。また、経済合理性を考慮した基地局の配置を行うことができる。
【0086】
上述の実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路によって実装されうる。処理回路には、プログラムされたプロセッサ、電気回路などが含まれ、さらには、特定用途向けの集積回路(ASIC)のような装置、又は、記載された機能を実行するよう配置された回路構成要素なども含まれる。
【0087】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 無線アンテナ
20 解析装置
21 取得部
23 データベース(記憶部)
25 コントローラ
251 管理部
253 算出部
255 抽出部
27 操作部
29 提示部
30 第1移動体
31 第1通信装置
40 第2移動体
41 第2通信装置
47 品質情報生成部
図1
図2
図3
図4
図5