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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068408
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】位置情報設定システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20230510BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20230510BHJP
   E02F 3/43 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F9/20 M
E02F3/43 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179511
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】野田 大輔
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003AC06
2D003BA06
2D003BB04
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】作業現場に対して作業機械が移動した場合に、位置情報を設定し直す必要をなくす。
【解決手段】位置情報設定システム1は、作業機械10に関する位置情報Dを設定する位置情報設定部(53、63)を備える。位置情報設定部(53、63)は、旧位置P1に作業機械10が配置されたときと、旧位置P1とは異なる新位置P2に作業機械10が配置されたときとで、作業機械10が配置された作業現場に対する位置情報Dの位置が変わらないように、位置情報Dを設定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に関する位置情報を設定する位置情報設定部を備え、
前記位置情報設定部は、旧位置に前記作業機械が配置されたときと、前記旧位置とは異なる新位置に前記作業機械が配置されたときとで、前記作業機械が配置された作業現場に対する前記位置情報の位置が変わらないように、前記位置情報を設定する、
位置情報設定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の位置情報設定システムであって、
前記旧位置に前記作業機械が配置されたときの前記作業機械を基準とした機械座標系で、前記作業機械の外部の基準位置を表した旧基準位置を設定する旧基準位置設定部と、
前記新位置に前記作業機械が配置されたときの前記機械座標系で前記基準位置を表した新基準位置を設定する新基準位置設定部と、
を備え、
前記位置情報設定部は、
前記旧位置に前記作業機械が配置されたときの前記機械座標系で前記位置情報を表した旧位置情報を設定する旧位置情報設定部と、
前記新位置に前記作業機械が配置されたときの前記機械座標系で前記位置情報を表した新位置情報を、前記旧位置情報、前記旧基準位置、および前記新基準位置に基づいて演算する新位置情報設定部と、
を備える、
位置情報設定システム。
【請求項3】
請求項2に記載の位置情報設定システムであって、
前記基準位置は、前記作業現場の互いに異なる複数の点である、
位置情報設定システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の位置情報設定システムであって、
前記作業機械の周囲の特徴物を検出する特徴物検出装置を備え、
前記旧基準位置設定部および前記新基準位置設定部の少なくともいずれかは、前記特徴物検出装置の検出結果に基づいて、前記機械座標系で表した前記基準位置を設定する、
位置情報設定システム。
【請求項5】
請求項2または3に記載の位置情報設定システムであって、
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられたアタッチメントと、
前記下部走行体に対する前記上部旋回体の旋回角度、および前記アタッチメントの姿勢を検出する姿勢センサと、
を備え、
前記旧基準位置設定部および前記新基準位置設定部の少なくともいずれかは、前記アタッチメントの特定部位が前記基準位置に配置されたときの前記姿勢センサの検出結果に基づいて、前記機械座標系で表した前記基準位置を設定する、
位置情報設定システム。
【請求項6】
請求項1に記載の位置情報設定システムであって、
前記作業現場を基準とした現場座標系で表した前記作業機械の位置を検出する位置検出部を備え、
前記位置情報設定部は、前記現場座標系で表した前記位置情報を設定する、
位置情報設定システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の位置情報設定システムであって、
前記位置情報は、前記作業機械の作業を制限する範囲である作業制限範囲の情報である、
位置情報設定システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の位置情報設定システムであって、
前記作業機械が前記旧位置から移動したときに報知を行う第1報知部を備える、
位置情報設定システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の位置情報設定システムであって、
前記旧位置から前記新位置までの距離が、所定の距離閾値以上のときに報知を行う第2報知部を備える、
位置情報設定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する位置情報を設定する位置情報設定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載の発明では、位置情報(同文献では教示データ)に従って作動する作業機械と、この作業機械以外の他の作業機械と、の接触や衝突の防止が図られている(同文献の[0003]などを参照)。同文献に記載の発明では、位置情報が設定されたときの作業機械の位置に対する、現在の作業機械の位置ずれが検出される(同文献の[0031]などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-183671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献に記載の発明では、作業現場に対して作業機械がずれると、位置情報(同文献では教示データ)も作業現場に対してずれる。作業機械が元の位置からずれた状態で作業機械が適切に作業を行うには、位置情報の再設定が必要となり、手間がかかる。
【0005】
そこで、本発明は、作業現場に対して作業機械が移動した場合に、位置情報を設定し直す必要をなくすことができる位置情報設定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
位置情報設定システムは、作業機械に関する位置情報を設定する位置情報設定部を備える。前記位置情報設定部は、旧位置に前記作業機械が配置されたときと、前記旧位置とは異なる新位置に前記作業機械が配置されたときとで、前記作業機械が配置された作業現場に対する前記位置情報の位置が変わらないように、前記位置情報を設定する。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、作業現場に対して作業機械が移動した場合に、位置情報を設定し直す必要をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】位置情報設定システム1の作業機械10などを横から見た図である。
図2図1に示す位置情報設定システム1のブロック図である。
図3図1に示す作業機械10などを上から見た図である。
図4図1に示す位置情報設定システム1の作動のフローチャートである。
図5図3に示す新位置情報設定部63の演算を説明するための図3相当図である。
図6図3に示す作業機械10が、図3に示す位置から移動した場合の図3相当図である。
図7図2に示す報知部80による報知が行われる場合の、図1に示す位置情報設定システム1の作動のフローチャートである。
図8】第2実施形態の図2相当図である。
図9】第2実施形態の図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1図7を参照して、第1実施形態の位置情報設定システム1について説明する。
【0010】
位置情報設定システム1は、図3に示す位置情報D(後述)を設定するシステムである。位置情報設定システム1は、作業機械10が移動する前に設定された位置情報Dを、作業機械10が移動した後にも(立ち位置がずれた場合にも)利用できるようにする。本実施形態では、位置情報設定システム1は、作業機械10が旧位置P1に配置されたときに設定された旧位置情報D1を、作業機械10が新位置P2に配置されたときにも新位置情報D2として利用できるようにする。位置情報設定システム1は、作業機械10と、図2に示す姿勢センサ21と、走行センサ23と、特徴物検出装置25と、コントローラ30と、報知部80と、を備える。
【0011】
作業機械10は、図1に示すように、作業を行う機械であり、例えば建設作業を行う建設機械であり、例えばショベルでもよく、クレーンでもよい。以下では、作業機械10がショベルである場合について説明する。作業機械10は、機械本体10aと、アタッチメント15と、を備える。
【0012】
機械本体10aは、作業機械10の本体部であり、下部走行体11と、上部旋回体13と、を備える。下部走行体11は、作業機械10を走行させる。下部走行体11は、例えばクローラを備える。上部旋回体13は、下部走行体11に旋回可能に搭載される。下部走行体11に対する上部旋回体13の回転軸を旋回中心13aとする。上部旋回体13は、運転室13cを備える。運転室13cは、操作者が作業機械10を操作することが可能な部分である。作業機械10は、運転室13c内の操作者により操作されなくてもよく、遠隔操作されてもよく、自動運転されてもよい。
【0013】
アタッチメント15は、作業を行う部分であり、例えば、ブーム15bと、アーム15cと、先端アタッチメント15dと、を備える。ブーム15bは、上部旋回体13に起伏可能(上下方向に回転可能)に取り付けられる。アーム15cは、ブーム15bに対して回転可能に取り付けられる。先端アタッチメント15dは、アタッチメント15の先端部に設けられ、アーム15cに回転可能に取り付けられる。先端アタッチメント15dは、例えば土砂をすくうバケットでもよく、物を挟む装置(グラップルなど)でもよく、破砕や掘削などを行う装置(ブレーカなど)でもよい。アタッチメント15の特定の部位を、特定部位15eとする。特定部位15eは、図1に示す例では先端アタッチメント15dの先端部であり、先端アタッチメント15dの先端部でなくてもよく、例えばアーム15cの先端部などでもよい。
【0014】
姿勢センサ21は、作業機械10の姿勢を検出する。姿勢センサ21は、下部走行体11に対する上部旋回体13の旋回角度、およびアタッチメント15の姿勢を検出する。具体的には例えば、姿勢センサ21は、旋回センサ21aと、ブームセンサ21bと、アームセンサ21cと、先端アタッチメントセンサ21dと、を備える。
【0015】
旋回センサ21aは、上部旋回体13の姿勢(角度、向き)を検出する。例えば、旋回センサ21aは、下部走行体11に対する上部旋回体13の旋回角度を検出する。旋回センサ21aは、下部走行体11に対する上部旋回体13の回転軸や回転支持部などに取り付けられる角度センサを備えてもよい。旋回センサ21aは、二次元画像および距離画像(後述)の少なくともいずれかに基づいて上部旋回体13の姿勢を検出するものでもよい。この場合、二次元画像および距離画像の少なくともいずれかは、特徴物検出装置25により撮像されてもよい(ブームセンサ21b、アームセンサ21c、先端アタッチメントセンサ21d、走行センサ23についても同様)。
【0016】
ブームセンサ21bは、ブーム15bの姿勢を検出する。例えば、ブームセンサ21bは、上部旋回体13に対するブーム15bの回転角度を検出する。ブームセンサ21bは、水平面に対するブーム15bの角度を検出する傾斜センサ(ジャイロセンサ、加速度センサ、慣性計測装置など)を備えてもよい(アームセンサ21cおよび先端アタッチメントセンサ21dも同様)。ブームセンサ21bは、上部旋回体13に対するブーム15bの回転軸や回転支持部に取り付けられる角度センサ(例えばロータリエンコーダなど)を備えてもよい(アームセンサ21cおよび先端アタッチメントセンサ21dも同様)。ブームセンサ21bは、ブーム15bを駆動するシリンダ(ブームシリンダ)のストロークを検出するストロークセンサを備えてもよい(アームセンサ21cおよび先端アタッチメントセンサ21dも同様)。ブームセンサ21bは、二次元画像および距離画像(後述)の少なくともいずれかに基づいてブーム15bの姿勢を検出するものでもよい(アームセンサ21cおよび先端アタッチメントセンサ21dも同様)。
【0017】
アームセンサ21cは、アーム15cの姿勢を検出する。例えば、アームセンサ21cは、ブーム15bに対するアーム15cの回転角度を検出する。先端アタッチメントセンサ21dは、先端アタッチメント15dの姿勢を検出する。例えば、先端アタッチメントセンサ21dは、アーム15cに対する先端アタッチメント15dの回転角度を検出する。
【0018】
走行センサ23(図2参照)は、下部走行体11の走行を検出する。走行センサ23は、下部走行体11を駆動するモータ(走行モータ)の作動を検出してもよい。走行センサ23は、走行モータを駆動させるための指令を検出してもよい。走行センサ23は、二次元画像および距離画像(後述)の少なくともいずれかに基づいて、下部走行体11の走行を検出してもよい。
【0019】
特徴物検出装置25は、作業機械10の周囲の特徴物を検出する。特徴物検出装置25は、作業機械10の姿勢を検出してもよい(姿勢センサ21でもよい)。特徴物検出装置25は、検出対象物(例えば、特徴物、作業機械10など)を撮像する撮像装置である。特徴物検出装置25は、検出対象物の二次元情報(例えば二次元画像における位置、形状など)を検出してもよい。特徴物検出装置25は、二次元の情報を検出するカメラ(単眼カメラ)を備えてもよい。特徴物検出装置25は、検出対象物の三次元情報(例えば三次元座標、三次元形状など)を検出してもよく、距離の情報(奥行きの情報)を有する画像(距離画像)を取得してもよい。特徴物検出装置25は、レーザー光を用いて三次元の情報を検出する装置を備えてもよく、例えばLIDAR(Light Detection and Ranging)を備えてもよく、例えばTOF(Time Of Flight)センサを備えてもよい。特徴物検出装置25は、電波を用いて三次元の情報を検出する装置(例えばミリ波レーダなど)を備えてもよい。特徴物検出装置25は、ステレオカメラを備えてもよい。特徴物検出装置25は、距離画像と二次元画像とに基づいて、検出対象物の三次元情報を検出してもよい。特徴物検出装置25は、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。特徴物検出装置25は、作業機械10に搭載されてもよく、作業機械10の外部に配置されてもよい。
【0020】
コントローラ30(図2参照)は、信号の入出力、演算(処理)、情報の記憶などを行うコンピュータである。例えば、図2に示すコントローラ30の機能は、記憶装置に記憶されたプログラムが演算装置で実行されることにより実現される。コントローラ30は、1つの装置でもよく、複数の装置でもよい。コントローラ30は、作業機械10に搭載されてもよく、作業機械10の外部に配置されてもよい。コントローラ30は、作業機械10(図1参照)の作動を制御する装置を含んでもよく、作業機械10を自動運転させる制御を行ってもよい。コントローラ30は、運転室13c(図1参照)内に配置されてもよく、作業機械10の外部の携帯端末(タブレットなど)に設けられてもよく、作業機械10の外部のサーバなどに設けられてもよい。コントローラ30は、特定部位位置演算部41と、旧基準位置設定部51と、旧位置情報設定部53(位置情報設定部)と、記憶部55と、新基準位置設定部61と、新位置情報設定部63(位置情報設定部)と、報知制御部71と、を備える。
【0021】
特定部位位置演算部41は、姿勢センサ21の検出結果に基づいて、特定部位15e(図1参照)の位置(座標)を演算する。
【0022】
旧基準位置設定部51は、図3に示す作業機械10が旧位置P1に配置されたときの所定の基準位置R(旧基準位置R1)を設定する(詳細は後述)。旧位置情報設定部53(図2参照)(位置情報設定部)は、作業機械10が旧位置P1に配置されたときに位置情報D(旧位置情報D1)を設定する(詳細は後述)。記憶部55(図2参照)は、各種情報を記憶する。例えば、記憶部55は、旧基準位置R1および旧位置情報D1を記憶する(詳細は後述)。記憶部55は、新基準位置R2を記憶してもよい。新基準位置設定部61(図2参照)は、作業機械10が新位置P2に配置されたときの基準位置R(新基準位置R2)を設定する(詳細は後述)。新位置情報設定部63(図2参照)(位置情報設定部)は、作業機械10が新位置P2に配置されたときの位置情報D(新位置情報D2)を演算(設定)する(詳細は後述)。図2に示す報知制御部71は、報知に関する制御(後述)を行う。
【0023】
報知部80(第1報知部、第2報知部)は、作業者に対して報知を行う。報知部80は、光(表示含む)による報知を行ってもよく、音(音声、警告音など)による報知を行ってもよく、振動による報知を行ってもよい。具体的には例えば、報知部80は、携帯端末(例えば、タブレット、スマートフォンなど)でもよく、運転室13c内の表示機やスピーカでもよく、作業機械10の遠隔操作を行うためのモニタやスピーカなどでもよい。報知部80による報知の内容については後述する。
【0024】
(作動)
本実施形態の位置情報設定システム1は、次のように作動するように構成される。以下では、図4に示す各ステップ(S11~S32)については図4を参照して説明する。図3に示すように、作業機械10が旧位置P1に配置されているときに、旧基準位置設定部51(図2参照)が旧基準位置R1を設定し(ステップS11)、旧位置情報設定部53(図2参照)が旧位置情報D1を設定する(ステップS12、S13)。その後、作業機械10が、旧位置P1から新位置P2に移動する(ステップS20)。作業機械10が新位置P2に配置されているときに、新基準位置設定部61(図2参照)が新基準位置R2を設定する(ステップS21)。そして、新位置情報設定部63(図2参照)が、旧位置情報D1、旧基準位置R1、および新基準位置R2に基づいて、新位置情報D2を演算する(ステップS22、S31、S32)。位置情報設定システム1の作動の詳細は、次の通りである。
【0025】
(機械座標系)
図3に示す特定部位15eの位置、旧基準位置R1、新基準位置R2、旧位置情報D1、および新位置情報D2のそれぞれは、機械座標系で表される。機械座標系は、作業機械10を基準とした座標系であり、さらに詳しくは、上部旋回体13を基準とした座標系である。例えば、機械座標系の原点の位置は、旋回中心13a上に設定される。機械座標系の原点の位置は、例えば、上部旋回体13の高さ方向における所定の位置(例えば上部旋回体13の底面の位置)などに設定される(図1参照)。旧位置P1および新位置P2のそれぞれは、機械座標系の原点の位置である。さらに詳しくは、「作業機械10が旧位置P1に配置されている」ことは、作業現場における旧位置P1に、機械座標系の原点が配置されていることを意味する(新位置P2も同様)。
【0026】
具体的には例えば、図1に示すように、機械座標系におけるZ軸は、旋回中心13aの軸が延びる方向である。機械座標系におけるY軸は、Z軸に直交する方向であって、上部旋回体13からアタッチメント15が突出する方向(上部旋回体13の前後方向)である。図3に示すように、機械座標系におけるX軸は、Z軸およびY軸に直交する方向(上部旋回体13の幅方向)である。なお、機械座標系は、直交座標系である必要はない。例えば、機械座標系は、円筒座標系でもよく、旋回中心13aを中心とする円周に沿った方向(旋回方向)の座標軸を含んでもよい。
【0027】
(基準位置R)
位置情報設定システム1では、基準位置Rが設定される。基準位置Rは、作業機械10の外部(作業現場)の、所定の位置である。基準位置Rは、作業現場に対して移動しない。さらに詳しくは、作業現場に対して作業機械10が移動しても、基準位置Rは、作業現場に対して移動しない。「作業現場」は、作業機械10の外部であって、作業機械10が配置されている現場(場所)である。なお、「作業現場」で作業が行われる必要はない。基準位置Rは、互いに異なる複数の点を含む。基準位置Rは、2点設定されてもよく、3点以上設定されてもよい。具体的には例えば、基準位置Rは、第1の基準位置Raと、第2の基準位置Rbと、を含む。基準位置Rには、旧基準位置R1と、新基準位置R2と、がある。旧基準位置R1は、作業機械10が旧位置P1に配置されたときの機械座標系で表される基準位置Rの情報(具体的には座標)である。新基準位置R2は、作業機械10が新位置P2に配置されたときの機械座標系で表される基準位置Rの情報(具体的には座標)である。
【0028】
(旧基準位置R1)
旧基準位置設定部51(図2参照)は、旧基準位置R1を設定(決定)する(図4のステップS11)。旧基準位置設定部51に設定された旧基準位置R1は、記憶部55(図2参照)に記憶される。記憶部55に記憶されることは、旧位置情報設定部53(図2参照)に設定される旧位置情報D1、および新基準位置設定部61(図2参照)に設定される新基準位置R2についても同様である。旧基準位置R1の設定は、例えば、1日の中での作業機械10による作業の開始時(始業時)に行われてもよく、新たな作業現場での作業機械10の作業開始時に行われてもよく、作業機械10が新たな作業計画に従って新たな作業を開始するときに行われてもよい。
【0029】
(旧基準位置R1の具体的設定方法)
旧基準位置R1は、様々な方法により設定可能である。例えば、旧基準位置R1は、ティーチングに基づいて設定されてもよく(下記[例1a]参照)、ティーチング以外の手動の入力操作に基づいて設定されてもよい(下記[例1b]参照)。旧基準位置R1は、特徴物検出装置25の検出結果に基づいて設定されてもよい(下記[例1c]参照)。
【0030】
[例1a]旧基準位置R1は、ティーチングに基づいて設定されてもよい。さらに詳しくは、旧基準位置設定部51(図2参照)は、アタッチメント15の特定部位15eが基準位置Rに配置されたときの姿勢センサ21(図2参照)の検出結果に基づいて、旧基準位置R1を設定してもよい。具体的には例えば、ティーチングは、次のように行われる。作業者(オペレータ)が作業機械10に搭乗して作業機械10を操作する、または、作業者が作業機械10を遠隔操作する。作業者は、作業機械10を操作することで、特定部位15eを基準位置Rに配置させる(基準位置Rに合わせる)。例えば、この状態で、作業者は、決定操作を行う。特定部位位置演算部41(図2参照)は、特定部位15eが基準位置Rに配置されたときの姿勢センサ21の検出結果に基づいて、特定部位15eの位置を算出する。旧基準位置設定部51(図2参照)は、特定部位15eの位置に基づいて、旧基準位置R1を設定する。設定された旧基準位置R1は、記憶部55(図2参照)に記憶される。基準位置Rが複数設定される場合、複数の基準位置Rのそれぞれ(第1の基準位置Ra、および第2の基準位置Rbのそれぞれ)が、ティーチングにより旧基準位置R1として設定される。
【0031】
[例1b]旧基準位置R1は、ティーチング以外の作業者の手動の入力操作に基づいて設定されてもよい。この「入力操作」は、例えば、作業機械10の外部の装置(例えばタブレット、遠隔操作装置など)により行われてもよく、例えば作業機械10の内部(例えば運転室13c内)の装置により行われてもよい。この「入力操作」は、具体的には例えば、画面に表示された作業現場の画像や図形から基準位置Rの位置を指定する操作(タッチ操作やカーソル操作など)でもよく、基準位置Rの座標を数値入力する操作などでもよい。
【0032】
[例1c]旧基準位置R1は、特徴物検出装置25の検出結果に基づいて設定されてもよい。旧基準位置設定部51(図2参照)は、特徴物検出装置25の検出結果に基づいて旧基準位置R1を設定してもよい。この設定の具体例は、例えば次の通りである。[例1c-1]例えば、予め(特徴物検出装置25による検出よりも前に)、作業現場の基準位置Rに目印(マーカー)が設けられる。目印は、特定の色彩、形状、模様などを有するものなどであり、具体的には例えばAR(Augmented Reality)マーカーなどである。特徴物検出装置25は、この目印の位置を検出する。そして、旧基準位置設定部51(図2参照)は、特徴物検出装置25に検出された目印の位置を、旧基準位置R1として設定してもよい。[例1c-2]例えば、特徴物検出装置25は、作業現場に存在する物の形状(現場形状)を検出(学習)する。特徴物検出装置25は、検出した形状から、特徴点(例えば物体の角など)を抽出する。そして、旧基準位置設定部51(図2参照)は、特徴物検出装置25が抽出した特徴点の位置を、旧基準位置R1として設定してもよい。特徴物検出装置25に検出される物は、例えば、障害物Oの一部の点でもよく、壁、ブロック、柱などの一部の点でもよい。
【0033】
(間隔Ri)
基準位置Rが複数設けられる場合、複数の基準位置Rどうしの間隔Riが広いほど、ティーチングによる旧基準位置R1の設定の精度、または、特徴物検出装置25の検出結果に基づく旧基準位置R1の設定の精度が向上する。間隔Riが広いほど、基準位置Rの現実の座標に対する、旧基準位置設定部51(図2参照)に設定された旧基準位置R1の座標の差異(誤差)が小さくなる。間隔Riは、具体的には、第1の基準位置Raと、第2の基準位置Rbと、の距離である。
【0034】
例えば、旧基準位置設定部51(図2参照)は、間隔Riが、所定の間隔閾値よりも狭い場合、旧基準位置R1を設定しなくてもよく、報知部80(図2参照)に報知を行わせてもよい。上記「間隔閾値」は、コントローラ30(図2参照)に予め(旧基準位置R1の設定前に)設定される。
【0035】
[例2a]上記「間隔閾値」は、図1に示す作業機械10の構成要素の寸法に基づく大きさに設定されてもよい。例えば、間隔閾値は、ブーム15b、アーム15c、および先端アタッチメント15dの少なくともいずれかの寸法に基づく大きさ(例えばブーム15bの長さの所定値倍など)でもよい。
【0036】
[例2b]間隔閾値は、図3に示す作業機械10の作動範囲に基づく大きさに設定されてもよい。例えば、間隔閾値は、アタッチメント15がY軸方向に最も伸ばされた状態から最も縮められた状態までの先端アタッチメント15dのY軸方向における移動距離に基づく大きさ(例えば移動距離の所定値倍など)でもよい。
【0037】
[例2c]間隔閾値は、下部走行体11に対する上部旋回体13の旋回角度により規定されてもよい。さらに詳しくは、間隔閾値は、アタッチメント15が第1の基準位置Raを向いたときから第2の基準位置Rbを向いたときまでの旋回角度差(具体的には例えば90度など)でもよい。
【0038】
[例2d]間隔閾値は、作業機械10の目標とする作業位置に関する距離に基づく大きさに設定されてもよい。例えば、間隔閾値は、作業機械10の目標掘削位置から目標排土位置までの距離に基づく大きさ(この距離の所定値倍など)でもよい。
【0039】
[例2e]旧基準位置R1の設定よりも前に旧位置情報D1が設定されている場合は、間隔閾値は、旧位置情報D1の寸法に基づく大きさに設定されてもよい。例えば、間隔閾値は、作業範囲D13(後述)の辺の寸法に基づく大きさ(辺の寸法の所定値倍など)でもよい。例えば、間隔閾値は、旧位置P1から前方制限D11y(後述)までの距離に基づく大きさ(距離の所定値倍など)でもよい。
【0040】
(位置情報D)
位置情報Dは、作業機械10に関する位置の情報である。位置情報Dには、旧位置情報D1と、新位置情報D2と、がある。旧位置情報D1は、作業機械10が旧位置P1に配置されたときの機械座標系で表される位置情報Dの情報(例えば座標など)である。新位置情報D2は、作業機械10が新位置P2に配置されたときの機械座標系で表される位置情報Dの情報(例えば座標など)である。具体的には例えば、位置情報Dは、作業機械10の作動(例えば作業など)に関する位置の情報などである。
【0041】
[例3a]位置情報Dは、作業機械10の作業を制限する範囲である作業制限範囲D11の情報でもよい。作業制限範囲D11は、例えば、特定部位15eの侵入を制限する範囲でもよく、アタッチメント15の侵入を制限する範囲でもよい。位置情報Dが作業制限範囲D11である場合は、位置情報設定システム1は、制限位置設定システムである。
【0042】
[例3a1]作業制限範囲D11は、前方制限D11yを含んでもよい。[例3a1-1]前方制限D11yは、作業機械10が旧位置P1に配置されるとともに、作業機械10が(上部旋回体13が)所定の向きを向いているときの、Y軸方向に関する制限である。この場合、前方制限D11yは、上から見たときに直線状である。この前方制限D11yよりも前方(上部旋回体13から遠い側)での作業が、制限(例えば禁止)される。具体的には例えば、作業機械10を接触させたくない物体が存在する場合に、この物体よりも上部旋回体13側に、前方制限D11yが設定されてもよい。また、例えば、作業範囲D13(後述)の内部と外部との境界などに、前方制限D11yが設定されてもよい。[例3a1-2]前方制限D11yは、上から見たときに旋回中心13aを中心とした円弧状に設定されてもよい。
【0043】
[例3a2]作業制限範囲D11は、旋回制限D11θを含んでもよい。旋回制限D11θは、作業機械10が旧位置P1に配置されているときの、下部走行体11に対する上部旋回体13の旋回角度に関する制限である。具体的には例えば、図3に示す例では、旋回制限D11θを超えて上部旋回体13が旋回する(図3では右旋回する)と、アタッチメント15が障害物Oに接触する場合がある。そこで、旋回制限D11θは、アタッチメント15の障害物Oへの接触を抑制できるような位置に設定される。
【0044】
[例3b]位置情報Dは、作業機械10が作業を行う範囲である作業範囲D13の情報を含んでもよい。さらに詳しくは、コントローラ30(図2参照)は、作業範囲D13内の作業対象物(例えば土)に対して作業を行うように、作業機械10を自動運転させる場合がある。この作業範囲D13が、位置情報Dに含まれてもよい。
【0045】
[例3c]位置情報Dは、アタッチメント15(特定部位15e)の目標経路の情報を含んでもよい。さらに詳しくは、コントローラ30(図2参照)は、コントローラ30に設定された目標経路に従ってアタッチメント15(例えば特定部位15e)が移動するように、作業機械10を自動運転させる場合がある。この目標経路が、位置情報Dに含まれてもよい。
【0046】
(旧位置情報D1)
旧位置情報設定部53(図2参照)は、旧位置情報D1を設定する(図4のステップS12、S13)。旧位置情報設定部53は、機械座標系で表した旧位置情報D1を設定する。なお、旧基準位置R1の設定(図4のステップS11)、および、旧位置情報D1の設定(図4のステップS12、S13)のどちらが先に行われてもよい。
【0047】
(旧位置情報D1の具体的設定方法)
旧位置情報D1は、様々な方法により設定可能である。旧位置情報D1は、位置情報用基準位置D0に基づいて設定されてもよい(下記[例4a]参照)(図4のステップS12)、旧位置情報D1は、位置情報用基準位置D0に基づくことなく設定されてもよい(下記[例4b]参照)。旧位置情報D1は、ティーチングに基づいて設定されてもよく(下記[例5a]参照)、ティーチング以外の手動の入力操作に基づいて設定されてもよい(下記[例5b]参照)。旧位置情報D1は、特徴物検出装置25の検出結果から設定されてもよい(下記[例5c]参照)。
【0048】
[例4a]旧位置情報D1は、位置情報用基準位置D0に基づいて設定されてもよい(図4のステップS12)。位置情報用基準位置D0は、位置情報Dを特定するための基準となる位置である。位置情報用基準位置D0は、1点のみ設定されてもよく、複数点設定されてもよい。例えば、位置情報用基準位置D0に基づいて、作業制限範囲D11が設定されてもよい。例えば、1点の位置情報用基準位置D0に基づいて、複数種類の作業制限範囲D11(具体的には例えば、前方制限D11yおよび旋回制限D11θ)が設定されてもよい。また、例えば、作業範囲D13が上から見て多角形である場合に、作業範囲D13の角の位置の情報に基づいて、作業範囲D13が設定されてもよい。具体的には例えば、作業範囲D13が上から見て四角形(例えば長方形)である場合に、作業範囲D13の角(例えば作業範囲D13の対角となる2点、または4点など)の位置の情報に基づいて、上から見て四角形の作業範囲D13が設定されてもよい。
【0049】
[例4b]旧位置情報D1は、位置情報用基準位置D0に基づくことなく設定されてもよい。例えば、旧位置情報D1は、上から見た形状(平面形状)を表す二次元情報、立体形状を表す三次元情報、目標経路を表す複数点の情報などに基づいて、位置情報Dを設定してもよい。
【0050】
[例5a]旧位置情報D1は、ティーチングに基づいて設定されてもよい。[例5a1]例えば、位置情報用基準位置D0(上記[例4a]参照)が、ティーチングに基づいて設定されてもよい。この場合、特定部位位置演算部41(図2参照)は、特定部位15eが位置情報用基準位置D0に配置されたときの姿勢センサ21(図2参照)の検出結果に基づいて、位置情報用基準位置D0の位置を算出する。そして、旧位置情報設定部53(図2参照)は、位置情報用基準位置D0の位置に基づいて、旧位置情報D1を設定する(ティーチングの具体例は上記[例1a]を参照)。[例5a2]また、例えば、旧位置情報D1は、位置情報用基準位置D0に基づくことなく、ティーチングに基づいて設定されてもよい。具体的には例えば、旧位置情報D1が、アタッチメント15(特定部位15e)の目標経路である場合、目標経路である旧位置情報D1が、ティーチングに基づいて設定されてもよい。この場合、作業者は、アタッチメント15を操作することで、目標経路として設定したい経路に沿って特定部位15eを移動させる。そして、旧位置情報設定部53(図2参照)は、特定部位15eが移動したときの姿勢センサ21(図2参照)の検出結果に基づいて、旧位置情報D1である目標経路を設定する。
【0051】
[例5b]旧位置情報D1は、ティーチング以外の作業者の手動の入力操作に基づいて設定されてもよい(上記[例1b]を参照)。
【0052】
[例5c]旧位置情報D1は、特徴物検出装置25の検出結果に基づいて設定されてもよい(上記[例1c]を参照)。
【0053】
(作業機械10の移動)
旧位置情報D1および旧基準位置R1が設定された後に、作業機械10が、旧位置P1から新位置P2に移動する(図4のステップS20)。新位置P2は、旧位置P1とは異なる位置(作業現場における位置)である。新位置P2は、作業現場に対して下部走行体11が旧位置P1から移動(例えば走行)した後の、作業機械10の位置である。なお、作業現場に対して下部走行体11が旧位置P1から移動(例えば走行)しなければ、上部旋回体13の旋回およびアタッチメント15の作動の少なくともいずれかが行われても、作業機械10は旧位置P1に配置されたままである。また、作業機械10が、旧位置P1から複数回移動して現在の位置まで移動した場合、現在の作業機械10の位置が、新位置P2である。
【0054】
(新基準位置R2)
新基準位置設定部61(図2参照)は、新位置P2に作業機械10が配置されたときの機械座標系で表した基準位置R(新基準位置R2)を設定する(図4のステップS21)。新基準位置設定部61は、作業機械10が旧位置P1に配置されたときに設定された旧基準位置R1を、作業機械10が新位置P2に配置されたときに新基準位置R2として再設定する。
【0055】
基準位置Rの再設定が行われる理由は、次の通りである。旧基準位置R1および旧位置情報D1のそれぞれは、作業機械10を基準とした機械座標系で表される。そのため、作業現場に対して作業機械10が旧位置P1から新位置P2に移動すると、作業現場に対して旧基準位置R1および旧位置情報D1も移動する。コントローラ30(図2参照)は(作業機械10は)、例えば図3において二点鎖線で示す位置(D5)に、基準位置R(位置Qa、位置Qb)および位置情報Dがあると判断してしまう。そこで、位置情報設定システム1は、作業機械10が旧位置P1に配置されたときと新位置P2に配置されたときとで、作業現場に対する位置情報Dの位置が変わらないように演算を行う。この演算のために、新基準位置設定部61(図2参照)は、基準位置Rを再設定(新基準位置R2を設定し)し、新位置情報設定部63(図2参照)は、新基準位置R2などに基づいて位置情報Dを演算する(詳細は後述)。なお、新基準位置R2が設定された後に、作業機械10が移動した場合は、移動後の位置で新基準位置R2が再度設定される。
【0056】
(新基準位置R2の具体的設定方法)
新基準位置R2は、旧基準位置R1の具体的設定方法と同様に、様々に設定可能である。例えば、旧基準位置R1と新基準位置R2とが、同一の方法により設定されてもよく、互いに異なる方法により設定されてもよい。具体的には例えば、旧基準位置R1がティーチングに基づいて設定された場合に、新基準位置R2もティーチングに基づいて設定されてもよく、新基準位置R2は特徴物検出装置25に基づいて検出されてもよい。
【0057】
(新位置情報D2の演算)
新位置情報設定部63(図2参照)は、新位置P2に作業機械10が配置されたときの位置情報D(すなわち新位置情報D2)を演算(設定)する(図4のステップS22、S31、S32)。新位置情報設定部63は、旧位置情報D1、旧基準位置R1、および新基準位置R2に基づいて、新位置情報D2を演算する。
【0058】
(新位置情報D2の演算の具体例)
新位置情報D2の演算の詳細は、次の通りである。なお、新位置情報D2の演算は、様々に行うことが可能である。上記のように、作業機械10が旧位置P1のときに、旧基準位置R1および旧位置情報D1が設定され(図4のステップS11、S12、S13)、記憶部55(図2参照)に記憶される。また、作業機械10が新位置P2のときに、新基準位置R2が設定される(ステップS21)。ここで、作業現場における新基準位置R2の位置は、作業現場における旧基準位置R1の位置と同じ位置である。よって、記憶部55に記憶された旧基準位置R1の情報と、新基準位置R2と、に基づいて、新位置P2に対する旧位置P1の相対位置が決まる(ステップS22)。すなわち、作業機械10が新位置P2に配置されたときの機械座標系で表した旧位置P1(具体的には座標)が決まる。作業機械10が旧位置P1に配置されていたときの位置情報D(すなわち旧位置情報D1)は、記憶部55(図2参照)に記憶されている。よって、新位置P2に対する旧位置P1の位置と、旧位置P1に対する旧位置情報D1の位置と、に基づいて、作業機械10が新位置P2に配置されたときの機械座標系で表した位置情報D(すなわち新位置情報D2)が決まる(ステップS32)。
【0059】
位置情報用基準位置D0に基づいて旧位置情報D1が設定される場合(ステップS12、S13)は、新位置情報D2は、次のように算出される。この場合、新位置P2に対する旧位置P1の位置と、旧位置P1に対する位置情報用基準位置D0の位置と、に基づいて、作業機械10が新位置P2に配置されたときの機械座標系で表した位置情報用基準位置D0の位置が決まる(ステップS31)。この位置情報用基準位置D0に基づいて、作業機械10が新位置P2に配置されたときの機械座標系で表した位置情報D(すなわち新位置情報D2)が決まる(ステップS32)。
【0060】
(新位置情報D2の演算のさらなる具体例:その1)
新位置情報D2の演算のさらなる具体例は、次の通りである。この例では、基準位置Rが2点設定され、位置情報用基準位置D0に基づいて位置情報Dが設定され、地面の傾斜は考慮しないこととする(新位置情報D2の演算のさらなる具体例の、その2およびその3も同様)。
【0061】
上記のように、作業機械10が旧位置P1に配置されているときに、旧基準位置R1、および旧位置情報D1が設定される(ステップS11、S12、S13)。その後、図5に示すように、作業機械10が新位置P2に配置されたときに新基準位置R2が設定される(ステップS21)。第1の基準位置Raと第2の基準位置Rbとを通る直線L1が算出される。「直線L1が算出される」とは、直線L1の方向および直線L1が通る点が算出されることを意味する(他の直線も同様)。作業機械10が新位置P2に配置されているときの機械座標系のX軸を、直線L2とする。直線L1と直線L2との交点β11の座標が算出される。直線L1の垂線であって第1の基準位置Raを通る直線L3が算出される。直線L2と直線L3との交点β12の座標が算出される。よって、交点β11、交点β12、および第1の基準位置Raの3点の座標が決まる。その結果、直線L1、直線L2、および直線L3により構成される三角形が決まる。この三角形の余弦定理により、直線L1と直線L2とがなす角度α11が算出される。
【0062】
旧位置P1(未知の位置)を通り、直線L1と平行な直線を、直線L4とする。旧位置P1を通り、直線L2と平行(X軸と平行)な直線を、直線L5とする。直線L2と直線L4とがなす角度α12、および、直線L4と直線L5とがなす角度α13のそれぞれは、算出された角度α11と等しい。なお、図5に示す二重丸印(「◎」)を付した角度は互いに等しい。
【0063】
旧基準位置R1が設定されたときの情報に基づき、直線L3、直線L4、および線分L6により構成される三角形の情報(各辺の長さ、角度)が算出され、記憶部55(図2参照)に記憶される。具体的には、記憶部55には、線分L6の長さ、旧位置P1から交点β13までの長さ、および第1の基準位置Raから交点β13までの長さが記憶される。上記の線分L6は、旧位置P1と第1の基準位置Raとを結ぶ線分である。上記の交点β13は、直線L3と直線L4との交点である。算出された直線L3、算出された交点β12の座標、および、第1の基準位置Raから交点β13までの距離(記憶部55に記憶された距離)に基づいて、交点β13の座標が算出される。そして、直線L4の方向(直線L1と平行)、算出された交点β13の座標、および旧位置P1から交点β13までの距離(記憶部55に記憶された距離)に基づいて、旧位置P1の座標が算出される(ステップS22)。
【0064】
直線L3、直線L4、および線分L6により構成される三角形(記憶部55(図2参照)に記憶された三角形)の余弦定理により、直線L4と線分L6とがなす角度α14が算出されてもよい。
【0065】
図3に示す位置情報用基準位置D0が設定されたときの情報に基づき、直線L4、線分L7、および直線L8により構成される三角形の情報(各辺の長さ、角度)が算出され、記憶部55(図2参照)に記憶される。具体的には、旧位置P1と位置情報用基準位置D0とを結ぶ線分L7の長さが、記憶部55に記憶される。直線L1の垂線であって、位置情報用基準位置D0を通る直線L8が算出され、記憶部55に記憶される。直線L4と直線L8との交点を、交点β14とする。直線L4、線分L7、および直線L8により構成される三角形の余弦定理により、直線L4と線分L7とがなす角度α15が算出され、記憶部55に記憶される。線分L7の長さと角度α15とに基づいて(「線分L7の長さ」×sin(角度α15)により)、位置情報用基準位置D0から交点β14までの距離が算出され、記憶部55に記憶される。また、線分L7と直線L8とがなす角度と、線分L7の長さと、に基づいて、旧位置P1から交点β14までの距離が算出され、記憶部55に記憶される。
【0066】
図5に示す、算出された旧位置P1の座標と、直線L4の方向(直線L1と平行)と、旧位置P1から交点β14までの距離(記憶部55(図2参照)に記憶された距離)と、から交点β14の座標が算出される。算出された交点β14の座標と、直線L8の方向(直線L1に直交する方向)と、位置情報用基準位置D0から交点β14までの距離(記憶部55に記憶された距離)と、から位置情報用基準位置D0の座標が算出される(ステップS31)。
【0067】
なお、上記の算出の手順において、旧位置P1や位置情報用基準位置D0の算出に利用されていない値(例えば角度α12、α13、α14)が、旧位置P1や位置情報用基準位置D0の算出に利用されてもよい。また、上記の算出の手順では算出されていないが導き出すことができる値が算出され、旧位置P1や位置情報用基準位置D0の算出に利用されてもよい。具体的には例えば、算出された角度α15から、算出された角度α14を引いた角度(α15-α14)が算出および利用されてもよい。
【0068】
(新位置情報D2の演算のさらなる具体例:その2)
上記のように、作業機械10が旧位置P1に配置されているときに、旧基準位置R1、および旧位置情報D1が設定される(ステップS11、S12、S13)。作業機械10が旧位置P1に配置されているときに、旧基準位置R1の第1の基準位置Raが設定されることで、旧位置P1から第1の基準位置Raまでの長さ(すなわち線分L6の長さ)が求められる。また、直線L1と線分L6とがなす角度α21が求められる。求められた線分L6の長さ、および角度α21が、記憶部55(図2参照)に記憶される。
【0069】
その後、作業機械10が新位置P2に配置されたときに新基準位置R2が設定される(ステップS21)。新基準位置R2の第1の基準位置Raおよび第2の基準位置Rbの座標から、作業機械10が新位置P2に配置されたときの機械座標系で表した、直線L1が求められる。ここで、線分L6の長さ、および角度α21は、記憶部55(図2参照)に記憶されている。よって、これらの既知の情報(第1の基準位置Raの座標、第2の基準位置Rbの座標、線分L6の長さ、および角度α21)に基づいて、未知の情報である旧位置P1が算出される。そして、記憶部55に記憶された旧位置P1に対する位置情報用基準位置D0の情報に基づいて、作業機械10が新位置P2に配置されたときの機械座標系で表した位置情報用基準位置D0の位置が算出される(図4のステップS31)。そして、位置情報用基準位置D0に基づいて、新位置情報D2が算出される(図4のステップS32)。
【0070】
(新位置情報D2の演算のさらなる具体例:その3)
例えば、旧位置情報D1が座標変換(回転および平行移動)されることで、新位置情報D2が算出されてもよい。具体的には例えば、図5に示す例では、角度α22が算出される。角度α22は、座標変換前の第1の基準位置Ra(位置Qa)から座標変換前の第2の基準位置Rb(位置Qb)への向きと、作業機械10が新位置P2に配置されたときに設定された第1の基準位置Raから第2の基準位置Rbへの向きと、がなす角度である。そして、記憶部55(図2参照)に記憶されている旧位置情報D1が、新位置P2を中心として角度α22だけ回転させられる(この回転を「角度α22の回転」という)。また、角度α22の回転が行われた後の位置Qa(図示なし)を始点、作業機械10が新位置P2に配置されたときに設定された第1の基準位置Raを終点、とするベクトルが算出される。そして、このベクトルの方向および距離だけ、角度α22の回転後の旧位置情報D1(図示なし)を平行移動させる。その結果、新位置情報D2が算出される。
【0071】
(地面の傾斜を考慮する場合)
作業機械10が配置される地面に傾斜がある場合が想定される。この場合、Z軸が鉛直方向に対して傾き、X軸およびY軸の少なくともいずれかが水平方向に対して傾く。そこで、コントローラ30(図2参照)(新位置情報設定部63(図2参照))は、地面の傾斜を考慮して新位置情報D2を演算してもよい。この場合、例えば、作業機械10の傾斜を検出する傾斜センサ(図示なし)が設けられる。コントローラ30(図2参照)は、傾斜センサの検出値に基づいて、X軸、Y軸、およびZ軸の各値を、水平および鉛直に延びる軸の座標系に変換する。そして、変換後の座標系を、上記「機械座標系」としてもよい。
【0072】
上記の座標系の変換が行われることなく、地面の傾斜を考慮した新位置情報D2の演算が行われてもよい。具体的には例えば、基準位置Rとして、互いに異なる3点以上の点が設定されてもよい。この場合、基準位置Rとして基準となる平面を設定することができる。そのため、旧基準位置R1および新基準位置R2が設定される際に、この基準となる平面に対する作業機械10の傾斜を決定することができる。よって、作業機械10が旧位置P1に配置されていたときの(旧位置情報D1が設定されたときの)作業機械10の傾斜を、作業機械10が新位置P2に配置されているときの機械座標系で表すことができる。その結果、作業機械10の傾斜を考慮した新位置情報D2を演算することができる。
【0073】
基準位置Rは1点のみ設定されてもよい。例えば、上部旋回体13の方位を検出するセンサ(例えば地磁気を利用したものなど)により、旧位置P1から基準位置Rに向かう方位、および新位置P2から基準位置Rに向かう方位が検出されてもよい。そして、新位置情報設定部63(図2参照)は、これらの方位に基づいて新位置情報D2を算出してもよい。
【0074】
(報知)
作業現場に対して作業機械10が移動しても、作業現場に対する位置情報Dは移動しない。その結果、作業機械10を基準として見れば、作業機械10の移動に伴って、位置情報Dが移動する。その結果、図6に示すように、作業機械10の移動後の(新位置P2に配置されたとき)の位置情報Dが、適切な情報ではなくなる場合がある。
【0075】
[例6a]例えば、位置情報Dが作業制限範囲D11や作業範囲D13である場合、作業機械10の移動後に作業機械10が作業可能となる範囲が狭すぎる場合が想定される。図6に示す例では、作業機械10が作業可能な範囲は、作業範囲D13と、前方制限D11yと、旋回制限D11θと、に囲まれ、障害物Oを含まない領域A1である。この例では、作業機械10は、領域A1の外部かつ上部旋回体13の近傍(手前側)の領域では作業ができない。この例では、作業機械10の移動前(図3参照)に比べ、作業機械10が実質的に作業可能な範囲が狭くなっている。[例6b]また、例えば、位置情報Dが特定部位15eの目標経路である場合、作業機械10の移動後に、特定部位15eを目標経路に適切に配置できない場合が想定される。
【0076】
上記のような問題を抑制できるように、報知部80(図2参照)が報知を行うことが好ましい。以下では、各ステップについては図7を参照して説明する。
【0077】
報知部80(第1報知部)(図2参照)は、図3に示す作業機械10が旧位置P1から移動したときに報知を行ってもよい(図7のステップS120)。具体的には例えば、旧位置P1に配置されていた作業機械10が走行を開始したことを、図2に示す走行センサ23が検出したときに、報知制御部71は、報知部80に報知を行わせてもよい。
【0078】
報知部80(第2報知部)は、図3に示す旧位置P1から新位置P2までの距離が、所定の距離閾値以上のときに(図7のステップS123でYESのときに)、報知を行ってもよい(図7のステップS124)。上記「旧位置P1から新位置P2までの距離」は、例えば、旧位置P1から新位置P2までの直線距離である。旧位置P1から新位置P2までの距離が距離閾値以上のとき、新位置情報設定部63は、新位置情報D2を算出しなくてもよく、算出してもよい(図7のステップS124からステップS31に進んでもよい)。
【0079】
報知部80(図2参照)は、位置情報Dの妥当性を確保させる行動を作業者に促すような報知を行ってもよい。この報知は、表示による報知でもよく、音声による報知でもよい。具体的には例えば、報知部80は、作業機械10が移動したときに、旧位置P1側に移動する(元の位置に戻る)ことを促す通知を行ってもよい。報知部80は、作業機械10が移動したときに、旧位置情報D1の再設定を促す通知を行ってもよい。具体的には例えば、報知部80は、作業機械10が移動したときに、作業制限範囲D11の再設定(例えば位置情報用基準位置D0の再設定)を促す通知を行ってもよく、特定部位15eの目標経路の再設定を促す通知を行ってもよい。
【0080】
報知部80(図2参照)は、位置に関する報知(表示)を行ってもよい。具体的には例えば、報知部80は、作業現場を示す表示を行ってもよく、作業現場を上から見た表示を行ってもよく、作業現場を立体的に示す表示を行ってもよい。報知部80は、位置情報Dを示す図形を表示してもよく、基準位置Rを示す図形(例えば点など)を表示してもよく、作業機械10の位置(旧位置P1、新位置P2の少なくともいずれか)を示す図形(例えば点等)を表示してもよい。
【0081】
(第1の発明の効果)
図3に示す位置情報設定システム1による効果は、次の通りである。位置情報設定システム1は、作業機械10に関する位置情報Dを設定する位置情報設定部(旧位置情報設定部53(図2参照)および新位置情報設定部63(図2参照))を備える。
【0082】
[構成1]位置情報設定部(53、63)は、旧位置P1に作業機械10が配置されたときと、旧位置P1とは異なる新位置P2に作業機械10が配置されたときとで、作業機械10が配置された作業現場に対する位置情報Dの位置が変わらないように、位置情報Dを設定する。
【0083】
上記[構成1]により、作業現場に対して作業機械10が移動した場合でも、作業現場に対する位置情報Dの位置が変わらない。よって、位置情報設定システム1は、作業現場に対して作業機械10が移動した場合に、位置情報Dを設定し直す必要をなくすことができる。
【0084】
(第2の発明の効果)
[構成2-1]位置情報設定システム1は、旧基準位置R1を設定する旧基準位置設定部51(図2参照)と、新基準位置R2を設定する新基準位置設定部61(図2参照)と、を備える。旧基準位置R1は、旧位置P1に作業機械10が配置されたときの作業機械10を基準とした機械座標系で、作業機械10の外部の基準位置Rを表したものである。新基準位置R2は、新位置P2に作業機械10が配置されたときの機械座標系で、基準位置Rを表したものである。
【0085】
[構成2-2]位置情報設定部(53、63)は、旧位置情報設定部53(図2参照)と、新位置情報設定部63(図2参照)と、を備える。旧位置情報設定部53は、旧位置情報D1を設定する。旧位置情報D1は、旧位置P1に作業機械10が配置されたときの機械座標系で、位置情報Dを表したものである。
【0086】
[構成2-3]新位置情報設定部63(図2参照)は、旧位置情報D1、旧基準位置R1、および新基準位置R2に基づいて、新位置情報D2を演算する。新位置情報D2は、新位置P2に作業機械10が配置されたときの機械座標系で位置情報Dを表したものである。
【0087】
上記[構成2-1]では、旧位置P1に作業機械10が配置されたときの基準位置R(旧基準位置R1)と、新位置P2に作業機械10が配置されたときの基準位置R(新基準位置R2)と、が設定される。旧基準位置R1と新基準位置R2とは、作業機械10の外部の同じ基準位置Rである。よって、新位置情報設定部63(図2参照)(上記[構成2-3])は、旧基準位置R1および新基準位置R2に基づいて、新位置P2に対する旧位置P1の相対位置を算出することができる。また、上記[構成2-2]では、旧位置P1に作業機械10が配置されたときの位置情報D(旧位置情報D1)が設定される。すなわち、旧位置P1に対する位置情報Dの相対位置が設定される。よって、新位置情報設定部63(図2参照)は、新位置P2に対する旧位置P1の相対位置、および、旧位置P1に対する旧位置情報D1の相対位置に基づいて、新位置情報D2を算出することができる。この新位置情報D2は、作業機械10が新位置P2に配置されたときの機械座標系で表した位置情報Dである。上記[構成2-1]、[構成2-2]、および[構成2-3]では、作業現場に対する作業機械10の位置が直接的に検出されなくても、新位置情報D2を算出することができる。なお、作業現場に対する作業機械10の位置が直接的に検出される例については後述する。
【0088】
(第3の発明の効果)
[構成3]基準位置Rは、作業現場の互いに異なる複数の点(第1の基準位置Ra、第2の基準位置Rb)である。
【0089】
上記[構成3]により、例えば作業機械10の位置(旧位置P1または新位置P2)から基準位置Rに向かう方位の検出などを行わなくても、新位置情報D2を算出することができる。
【0090】
(第4の発明の効果)
[構成4]位置情報設定システム1は、作業機械10の周囲の特徴物を検出する特徴物検出装置25を備える。旧基準位置設定部51(図2参照)および新基準位置設定部61(図2参照)の少なくともいずれかは、特徴物検出装置25の検出結果に基づいて、機械座標系で表した基準位置R(旧基準位置R1、新基準位置R2)を設定する。
【0091】
上記[構成4]により、機械座標系で表した基準位置R(旧基準位置R1および新基準位置R2の少なくともいずれか)を作業者が手動で設定する必要がない。よって、作業者の手間を抑制することができる。
【0092】
(第5の発明の効果)
図1に示すように、位置情報設定システム1は、下部走行体11と、上部旋回体13と、アタッチメント15と、姿勢センサ21と、を備える。上部旋回体13は、下部走行体11に旋回可能に取り付けられる。アタッチメント15は、上部旋回体13に取り付けられる。姿勢センサ21は、下部走行体11に対する上部旋回体13の旋回角度、およびアタッチメント15の姿勢を検出する。
【0093】
[構成5]図2に示す旧基準位置設定部51および新基準位置設定部61の少なくともいずれかは、機械座標系で表した基準位置R(旧基準位置R1、新基準位置R2)を設定する。この設定は、図3に示すアタッチメント15の特定部位15eが基準位置Rに配置されたときの姿勢センサ21(図2参照)の検出結果に基づいて行われる。
【0094】
上記[構成5]では、作業者がアタッチメント15を操作し、基準位置Rとして設定したい位置に特定部位15eを配置することで、基準位置R(旧基準位置R1、および新基準位置R2の少なくともいずれか)を確実に設定することができる。よって、例えば、特徴物検出装置25の不具合によって誤った位置を基準位置Rとして検出してしまう、といった問題が生じない。
【0095】
(第7の発明の効果)
[構成7]位置情報Dは、作業機械10の作業を制限する範囲である作業制限範囲D11の情報である。
【0096】
上記[構成7]により、次の効果が得られる。作業制限範囲D11の位置は、例えば作業現場の障害物Oの位置などに基づいて設定されることが想定される。この場合、作業制限範囲D11として適切な位置(作業現場における位置)は、作業機械10が移動しても変わらないことが想定される。上記[構成1]および[構成7]では、作業現場に対して作業機械10が移動した場合でも、作業現場に対する作業制限範囲D11の位置が変わらない。よって、作業現場に対して作業機械10が移動した場合に、作業制限範囲D11を設定し直さなくても、作業機械10の作業を作業制限範囲D11に基づいて制限することができる。
【0097】
(第8の発明の効果)
[構成8]位置情報設定システム1は、作業機械10が旧位置P1から移動したときに報知を行う報知部80(第1報知部)(図2参照)を備える(図7のステップS120を参照)。
【0098】
上記[構成8]により、次の効果が得られる。上記[構成1]では、作業現場に対して作業機械10が移動しても、作業現場に対する位置情報Dの位置は変わらない。一方、作業現場に対して作業機械10が移動すると、作業機械10から見た位置情報Dの位置は変わる。すると、作業機械10が旧位置P1に配置されていたときには妥当であった位置情報D(すなわち旧位置情報D1)が、作業機械10の移動後には妥当ではなくなる場合がある。そこで、上記[構成8]では、作業機械10が旧位置P1から移動したときに、報知部80(図2参照)が報知を行う。よって、位置情報Dが妥当でない情報になる可能性があることを、作業者に報知することができる。
【0099】
(第9の発明の効果)
[構成9]位置情報設定システム1は、旧位置P1から新位置P2までの距離が、所定の距離閾値以上のときに報知を行う報知部80(第2報知部)(図2参照)を備える(図7のステップS124を参照)。
【0100】
上記[構成9]では、作業機械10が所定の距離閾値を超えて移動したときに、報知部80(図2参照)が報知を行う。よって、位置情報Dが妥当でない情報になる可能性があることを、作業者に報知することができる(詳細は[構成8]による効果を参照)。
【0101】
(第2実施形態)
主に図8および図9を参照して、第2実施形態の位置情報設定システム201について、第1実施形態との相違点を説明する。なお、第2実施形態の位置情報設定システム201のうち、第1実施形態との共通点については、説明を省略する。
【0102】
第1実施形態では、図3に示すように、機械座標系の位置情報D(旧位置情報D1および新位置情報D2)、基準位置R(旧基準位置R1および新基準位置R2)が設定された。一方、本実施形態では、図8に示すように、現場座標系での作業機械10の位置が検出され、現場座標系の位置情報Dが設定される。本実施形態では、基準位置R(図3参照)は設定される必要がない。位置情報設定システム201は、位置検出部227と、位置情報設定部253と、を備える。
【0103】
位置検出部227は、図9に示すように、現場座標系で表した作業機械10の位置を検出する。現場座標系は、作業機械10が配置された作業現場を基準とした座標系(例えばグローバル座標系など)である。作業現場に対して作業機械10が移動しても、現場座標系は、作業現場に対して移動しない。位置検出部227(図8参照)は、作業機械10の基準となる部位の、作業現場に対する位置および向きを検出する。作業機械10の基準となる部位は、例えば、旋回中心13a上の位置であり、例えば上部旋回体13の底面の位置などである。作業機械10の基準となる部位は、上部旋回体13へのブーム15bの取付部(ブームフット)などでもよい。位置検出部227は、位置測位システム(例えば衛星測位システムなど)により検出を行うものでもよい。位置測位システムは、衛星測位システムでもよく、例えばGNSS(global navigation satellite system)でもよい。この場合、位置検出部227は、GNSSアンテナ227aを備える。位置測位システムは、衛星測位システムでなくてもよく、例えばトータルステーションを用いたものでもよい。
【0104】
位置情報設定部253(図8参照)は、現場座標系で表した位置情報Dを設定する。位置情報Dの具体的設定方法は、旧位置情報設定部53(図2参照)での旧位置情報D1(図3参照)の設定方法と同様である。
【0105】
(作動)
図9に示す位置情報設定システム201の作動の、第1実施形態との相違点は次の通りである。作業機械10が旧位置P1に配置されたときに、位置情報設定部253(図8参照)が現場座標系の位置情報Dを設定する。その後、作業機械10が新位置P2に移動する。位置情報Dは現場座標系で表されるので、作業機械10が旧位置P1から新位置P2に移動しても、作業現場に対する位置情報Dの位置は変わらない。また、作業機械10の現場座標系における位置は、位置検出部227により検出される。よって、コントローラ30(図8参照)は、現場座標系での作業機械10の位置、および現場座標系での位置情報Dを把握することができる。その結果、作業機械10は、新位置P2に移動した後も、旧位置P1で設定された位置情報Dを利用することができる。具体的には例えば、位置情報Dが作業制限範囲D11である場合、作業機械10が新位置P2に移動した後も、作業機械10の作業可能な範囲を作業制限範囲D11に基づいて制限することができる。
【0106】
(第6の発明の効果)
図9に示す位置情報設定システム201による効果は、次の通りである。
【0107】
[構成6]位置情報設定システム201は、位置検出部227を備える。位置検出部227は、作業現場を基準とした現場座標系で表した作業機械10の位置を検出する。位置情報設定部253(図8参照)は、現場座標系で表した位置情報Dを設定する。
【0108】
上記[構成6]では、基準位置R(図3参照)を設定しなくても、上記[構成1]による効果を得ることができる。よって、基準位置Rを設定するための装置(例えば特徴物検出装置25)を設ける必要や、基準位置Rを設定するための操作者の操作(例えばティーチングなど)を行う必要をなくすことができる。また、基準位置Rに関するコントローラ30(図8参照)の処理をなくすことができる。なお、本実施形態の位置情報設定システム201は、特徴物検出装置25を備えてもよく、例えば位置情報Dを設定するために特徴物検出装置25の検出値が用いられてもよい。
【0109】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、互いに異なる実施形態の構成要素どうしが組み合わされてもよい。具体的には例えば、旧基準位置R1、新基準位置R2、および旧位置情報D1に基づいて新位置情報D2が設定される場合(第1実施形態参照)に、作業機械10が位置検出部227(図9参照)を備えていてもよい。例えば、図3、および図8に示す各構成要素どうしの接続は変更されてもよい。例えば、図4および図7に示すフローチャートのステップの順序が変更されてもよく、ステップの一部が行われなくてもよい。例えば、閾値(例えば間隔閾値、距離閾値)などの値は一定でもよく、手動操作により変えられてもよく、何らかの条件に応じて自動的に変えられてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。例えば、各構成要素は、各特徴(作用機能、配置、形状、作動など)の一部のみを有してもよい。
【符号の説明】
【0110】
1、201 位置情報設定システム
10 作業機械
11 下部走行体
13 上部旋回体
15 アタッチメント
15e 特定部位
21 姿勢センサ
25 特徴物検出装置
51 旧基準位置設定部
53 旧位置情報設定部
61 新基準位置設定部
63 新位置情報設定部
80 報知部(第1報知部、第2報知部)
227 位置検出部
253 位置情報設定部
D 位置情報
D1 旧位置情報
D2 新位置情報
D11 作業制限範囲
P1 旧位置
P2 新位置
R 基準位置
R1 旧基準位置
R2 新基準位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9