(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068441
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】水性インク用インクジェット記録材料
(51)【国際特許分類】
B41M 5/52 20060101AFI20230510BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20230510BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230510BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
B41M5/52 110
B32B27/20 Z
B32B27/30 102
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179568
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 昌治
(72)【発明者】
【氏名】志野 成樹
【テーマコード(参考)】
2H186
4F100
【Fターム(参考)】
2H186BA11
2H186BB16X
2H186BB24X
2H186BB32X
2H186BB52X
2H186BC21X
2H186BC30X
2H186BC36X
2H186BC52X
2H186BC77X
2H186BC78X
2H186BC79X
2H186DA16
4F100AA19B
4F100AK21B
4F100AK51B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100EJ38A
4F100HB31C
4F100JN21
(57)【要約】
【課題】水性インクを利用したインクジェット記録において優れたインク吸収性と光沢性を有し、且つ、人工風化耐性、テープ剥離耐性、および耐摩耗性に優れた水性インク用インクジェット記録材料を提供すること。
【解決手段】支持体上にアルミナ水和物、カチオン系ウレタン樹脂、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、およびジルコニウム化合物を含有するインク受容層を有し、該カチオン系ウレタン樹脂の含有量がアルミナ水和物の含有量に対して20.5~40質量%であり、かつ、該アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量がアルミナ水和物の含有量に対して3~9.5質量%である水性インク用インクジェット記録材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にアルミナ水和物、カチオン系ウレタン樹脂、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、およびジルコニウム化合物を含有するインク受容層を有し、該カチオン系ウレタン樹脂の含有量がアルミナ水和物の含有量に対して20.5~40質量%であり、かつ、該アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量がアルミナ水和物の含有量に対して3~9.5質量%である水性インク用インクジェット記録材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性インク用インクジェット記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙などの記録シートに付着させ、画像、文字などの記録を行うものであり、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像-定着が不要などの特徴があり、漢字を含め各種図形およびカラー画像などの記録装置として種々の用途に急速に普及している。更に多色インクジェット方式により形成される画像は、多色カラー写真方式による印画と比較して、遜色の無い画質を得ることが可能である。また、作製部数が少なくて済む用途においては、前記した多色カラー写真方式による記録よりも安価であることからフルカラー記録分野にまで広く応用されつつある。
【0003】
一方、インクジェット記録方式により記録される記録材料についても、用途に応じた検討が種々行われており、例えば、特開2008-246739号公報(特許文献1)には、銀塩写真用印画紙並みの写像性(光沢性)を有し、かつ高いインク吸収性と、印字後の耐光性および耐水性が優れた、ひび割れの無いインクジェット記録媒体として、透気性の支持体上に少なくとも下層と上層を有し、該下層が、吸水性無機顔料、ラテックス、ホウ酸またはその塩、および五員複素環構造を有するカチオン性樹脂を含有する塗工組成物から形成されるインクジェット記録媒体が開示され、国際公開第2012/032841号パンフレット(特許文献2)には、優れた耐水性と耐擦過性を有するインクジェット記録媒体として、基材上にウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ジルコニウム化合物と、前記したジルコニウム化合物以外の水溶性多価金属塩を含有するインクジェット受理層を有するインクジェット記録媒体が開示され、特開2009-220521号公報(特許文献3)には、塗布液安定性を保ちながら、ひび割れ等の塗膜故障の発生を防止し、記録後のインク滲みを抑えることができるインクジェット記録媒体の製造方法として、支持体上に、少なくとも無機微粒子とアセトアセチル変性ポリビニルアルコールとカチオン性ポリウレタンとを含む溶液を塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜の乾燥塗中であって該塗布膜が減率乾燥を示す前に、分子内に2個以上のアミノ基を有する水溶性多官能化合物を含む溶液を前記塗布膜の上に付与する溶液付与工程を有するインクジェット記録媒体の製造方法が開示されている。
【0004】
また、ニーズの多様化に伴って、インクジェット記録方式で印字されたインクジェットラベルを価格表示用ラベル、商品表示(バーコード)用ラベル、品質表示用ラベル、広告宣伝用ラベル(ステッカー)等のラベル用途として利用することが増加している。そして、それぞれのラベル用途で求められる性質に合わせて種々のラベルが検討されている。例えば、特開2009-56753号公報(特許文献4)には、ラインヘッド型インクジェットプリンターでの印字において、良好なインク吸収性を付与し、且つ高光沢で表面強度に優れた、ラベル用インクジェット記録媒体として、透気性支持体上の一方の面に少なくとも一層以上の塗工層を設け、その最表層が特定の光沢発現層であり、その反対面に粘着層を設けたラベル用インクジェット記録媒体が開示されている。
【0005】
そのような中、化学品の分類や化学品を収容する容器におけるラベル表示に関し、国に依らずに化学物質を安全に製造、使用、輸送、処理、廃棄するために、国際的に調和された化学物質の分類および表示方法が必要であると認識されるようになり、国際連合(国連)で国連GHS(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:化学品の分類および表示に関する世界調和システム)文書が制定された。
【0006】
このGHS文書では物理化学的危険性、健康に対する有害性、および環境に対する有害性に関してそれぞれ危険有害性クラスが設定されており、分類基準に従って決定する危険有害性区分に応じてラベル要素が定められる。ラベル要素には製品特定名、注意喚起語、絵表示、危険有害性情報、注意書き、および供給者の特定があり、GHS文書に基づくGHSラベルでは、そのラベル要素を表示する必要がある。更に、英国規格であるBS5609:1986年では、GHSラベルに対して、3か月の海水浸漬試験におけるラベル材質と接着剤の永続性および耐久性に関するラベル性能(セクション2)や、人工風化耐性、テープ剥離耐性および耐摩耗性といった印刷性能(セクション3)が求められる。
【0007】
上記したBS5609:1986年において求められる優れた耐摩耗性を有する粘着ラベルとしては、例えば国際公開第2019/189699号パンフレット(特許文献5)に、電子写真印刷および/またはインクジェット印刷に適合できる積層体および粘着ラベルが記載されている。しかしながら、特許文献5におけるインクジェット印刷はUVインクを用いており、印刷後にUV照射が必要であることや、UVインク用のインクジェットプリンターが高価なことから、水性インクを利用し、UV照射を必要としないインクジェット記録においてインク吸収性と光沢性に優れ、かつ該水性インクで記録された情報が、BS5609:1986年において定められる人工風化耐性、テープ剥離耐性、および耐摩耗性に優れた画像が得られる水性インク用インクジェット記録材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-246739号公報
【特許文献2】国際公開第2012/032841号パンフレット
【特許文献3】特開2009-220521号公報
【特許文献4】特開2009-56753号公報
【特許文献5】国際公開第2019/189699号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、水性インクを利用し、UV照射を必要としないインクジェット記録において優れたインク吸収性と光沢性を有し、且つ、人工風化耐性、テープ剥離耐性、および耐摩耗性に優れた水性インク用インクジェット記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題は、以下の発明により達成される。
支持体上にアルミナ水和物、カチオン系ウレタン樹脂、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、およびジルコニウム化合物を含有するインク受容層を有し、該カチオン系ウレタン樹脂の含有量がアルミナ水和物の含有量に対して20.5~40質量%であり、かつ、該アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量がアルミナ水和物の含有量に対して3~9.5質量%である水性インク用インクジェット記録材料。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、水性インクを利用し、UV照射を必要としないインクジェット記録において優れたインク吸収性と光沢性を有し、且つ、人工風化耐性、テープ剥離耐性、および耐摩耗性に優れた水性インク用インクジェット記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の水性インク用インクジェット記録材料が有する支持体としては、人工風化耐性に優れる観点から、非吸水性支持体が好ましい。非吸水性支持体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、セロファン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の樹脂フィルムや、ポリプロピレン樹脂に無機充填材を配合して、二軸延伸フィルム成形法によって製造された合成紙、基紙の片面または両面をポリオレフィン樹脂で被覆した樹脂被覆紙が例示される。中でも、耐水性に優れ、かつ紙に印字した記録物に近い風合いが得られる観点から、合成紙が好ましい。
【0013】
合成紙は製造方法によって、フィルム法合成紙、ファイバー法合成紙、フィルムラミネート法合成紙に大別される。フィルム法合成紙は、原料となる合成樹脂をフィルム状に成型して製造される。フィルム法合成紙としては、例えば、(株)ユポ・コーポレーションからユポ(登録商標)として市販されている。ファイバー法合成紙は、合成樹脂を原料にした樹脂ファイバーをパルプの代わりに使用し製造される。ファイバー法合成紙としては、例えば、帝人フロンティア(株)からレーザーエコペット(登録商標)として市販されている。フィルムラミネート法合成紙は、従来の紙の表面にフィルムをラミネートすることで製造される。フィルムラミネート法合成紙としては、例えば、日本製紙パピリア(株)からオーパー(登録商標)として市販されている。本発明では、得られるインクジェット記録材料の耐水性や記録物の風合いの観点からフィルム法合成紙が好ましく用いられる。
【0014】
上記した支持体のインク受容層が塗設される側の面は、下引き層を有していてもよい。この下引き層は、インク受容層が塗設される前に、予め支持体の表面に塗布、乾燥されたものであり、皮膜形成可能な水溶性高分子化合物やポリマーラテックス等を主体に含有することができる。ここで主体とは、下引き層の全固形分量に対して、水溶性高分子化合物やポリマーラテックスの占める割合が50質量%以上であることを意味する。下引き層における水溶性高分子化合物またはポリマーラテックスの含有量は、10~500mg/m2が好ましく、20~300mg/m2がより好ましい。更に、下引き層は界面活性剤や硬膜剤を含有することもできる。
【0015】
本発明の水性インク用インクジェット記録材料が有するインク受容層はアルミナ水和物を含有する。インク受容層が含有するアルミナ水和物は、Al2O3・nH2O(n=1~3)の構成式で表され、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。本発明に使用されるアルミナ水和物の平均二次粒子径は500nm以下であることが好ましく、20~300nmであることがより好ましい。同等の平均二次粒子径を有するシリカは、インクジェット記録材料のインク受容層を構成する無機微粒子として公知であるが、後述するカチオン系ウレタン樹脂と凝集して光沢性が低下する場合があり、この点においてアルミナ水和物は好適である。
【0016】
上記したアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散されたものが好ましく用いられる。
【0017】
本発明の水性インク用インクジェット記録材料が有するインク受容層は、カチオン系ウレタン樹脂を含有する。カチオン系ウレタン樹脂が有するカチオン性基としては、1級~3級アミン、4級アンモニウム塩の如きカチオン性基が挙げられ、本発明におけるカチオン系ウレタン樹脂としては、3級アミンおよび4級アンモニウム塩の如きカチオン性基を有するカチオン系ウレタン樹脂が好ましい。カチオン系ウレタン樹脂は、例えば、ジオール化合物とジイソシアネート化合物とを種々組み合わせて重付加反応によりウレタン樹脂を合成する際に、公知の方法によりジオール化合物にカチオン性基を導入したものを使用することによって得ることができる。また4級アンモニウム塩の場合は、三級アミノ基を含有するウレタン樹脂を四級化剤で四級化してもよい。カチオン系でないウレタン樹脂では人工風化耐性が劣る場合があり、カチオン系であってもウレタン樹脂ではない、例えばカチオン系アクリル樹脂等では耐摩耗性が劣る場合がある。
【0018】
上記カチオン系ウレタン樹脂は市販品を使用することもできる。該市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製のスーパーフレックス(登録商標)650、同620、DIC(株)製のハイドラン(登録商標)CP-7050、同CP-7520等を挙げることができる。
【0019】
本発明におけるインク受容層が含有するカチオン系ウレタン樹脂の含有量は、上述したアルミナ水和物の含有量に対して20.5~40質量%であり、25~35質量%であることがより好ましい。カチオン系ウレタン樹脂の含有量が20.5質量%未満であるとテープ剥離耐性および耐摩耗性が低下する。また、40質量%を超えるとインク吸収性が低下し、印字画像の輪郭部や白抜き文字等に滲みが発生する。
【0020】
本発明の水性インク用インクジェット記録材料が有するインク受容層はアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールを含有する。該アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールは、通常の完全ケン化や部分ケン化ポリビニルアルコールに、ジケテンを付加反応させたり、アセト酢酸エステルでエステル交換反応したりして、アセトアセチル基を導入することにより得ることができる。アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールにおけるアセトアセチル基の含有量は、0.2~10モル%の範囲が好ましい。アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの重合度としては、100~3000程度が好ましい。また、ケン化度としては、80モル%~100モル%の範囲が好ましい。アセトアセチル基変性のポリビニルアルコールは市販品として入手し使用することも可能であり、例えば三菱ケミカル(株)からゴーセネックス(登録商標)Zシリーズとして市販されている。
【0021】
本発明におけるインク受容層が含有するアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量はアルミナ水和物の含有量に対して3~9.5質量%である。アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量が3質量%未満であると水性インクの吸収性およびテープ剥離耐性が低下し、9.5質量%を超えると人工風化耐性が低下する。
【0022】
本発明の水性インク用インクジェット記録材料が有するインク受容層はジルコニウム化合物を含有する。該ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムの無機塩や有機酸塩が挙げられ、具体的には、オキソ酸塩類、酢酸ジルコニウム、乳酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、ラウリル酸ジルコニル、マンデン酸ジルコニル等の有機酸塩類等を例示することができる。これらは一種または二種以上の混合物として使用することができるが、インク受容層塗布液の安定性の観点から、酢酸ジルコニウムが好ましい。ジルコニウム化合物は市販品として入手することも可能であり、例えば第一稀元素化学工業(株)から各種ジルコニウムおよびジルコゾール(登録商標)として市販されている。
【0023】
本発明におけるインク受容層が含有するジルコニウム化合物の含有量は、アルミナ水和物の含有量に対して0.1~5質量%であることが好ましく、より好ましくは2~4質量%である。これにより、耐摩耗性に優れた水性インク用インクジェット記録材料を得ることができる。
【0024】
本発明におけるインク受容層は、更に着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。また、本発明におけるインク受容層の作製に使用するインク受容層塗布液のpHは、液経時の安定性の観点から、3.3~6.5の範囲が好ましく、特に3.5~5.5の範囲が好ましい。
【0025】
本発明の水性インク用インクジェット記録材料が有するインク受容層の固形分塗布量(乾燥固形分量)は、10~40g/m2であることが好ましく、更に好ましくは15~25g/m2である。
【0026】
本発明において、インク受容層の塗布方法は、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある。
【0027】
本発明の水性インク用インクジェット記録材料は、支持体のインク受容層を有する面の反対面に粘着層を設けることで粘着ラベルとして好適に利用することができる。該粘着層に用いられる粘着剤は特に制約はなく、溶剤型粘着剤、エマルション型粘着剤、ホットメルト型粘着剤等の各種粘着剤を用いることができ、BS5609:1986年で定められる、3か月の海水浸漬試験におけるラベル材質と接着剤の永続性および耐久性に関するラベル性能(セクション2)に適応させることによって、上述した国際連合で制定されたGHS文書に基づくラベル情報が印字されたGHSラベルとしても好適に用いることができる。
【実施例0028】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。なお、部および%は記載がない場合は質量基準である。
【0029】
(実施例1)
<アルミナ水和物分散液1の作製>
水に硝酸2質量部とアルミナ水和物(平均一次粒子径14nm、BET比表面積190m2/g)100質量部を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して分散することにより、固形分濃度30%のアルミナ水和物分散液1を得た。アルミナ水和物の平均二次粒子径は160nmであった。
【0030】
<インク受容層塗布液1の作製>
アルミナ水和物分散液1(アルミナ水和物固形分として) 100質量部
カチオン系ウレタン樹脂(固形分として) 25質量部
(DIC(株)製 ハイドランCP-7050 固形分25質量%)
アセトアセチル基変性のポリビニルアルコール(固形分として) 5質量部
(三菱ケミカル(株)製 ゴーセネックスZ-200、ケン化度99モル%、平均重合度1200、アセトアセチル化度5モル%)
酢酸ジルコニウム(固形分として) 3.5質量部
(第一稀元素化学工業(株)製 ジルコゾールZA-30 固形分30質量%)
インク受容層塗布液1は、イオン交換水で22%の固形分濃度となるように調製した。インク受容層塗布液1のpHは3.70であった。
【0031】
<インクジェット記録材料1の作製>
支持体として、二軸延伸フィルム形成法によって得られた厚み80μmの合成紙((株)ユポ・コーポレーション製ニューユポFGS80)を用い、該支持体上にインク受容層塗布液1を乾燥固形分量で20g/m2になるようにスライドビードコーターで塗布し、30~55℃の加熱空気を吹き付けて乾燥することでインクジェット記録材料1を得た。
【0032】
<インクジェット記録材料2の作製>
インク受容層塗液1の作製においてカチオン系ウレタン樹脂の固形分を35質量部に変更してインク受容層塗布液2を作製し、その他は前記したインクジェット記録材料1の作製と同様にしてインクジェット記録材料2を得た。インク受容層塗布液2のpHは3.75であった。
【0033】
<インクジェット記録材料3の作製>
インク受容層塗液1の作製においてカチオン系ウレタン樹脂の固形分を45質量部に変更してインク受容層塗布液3を作製し、その他は前記したインクジェット記録材料1の作製と同様にしてインクジェット記録材料3を得た。インク受容層塗布液3のpHは3.8であった。
【0034】
<インクジェット記録材料4の作製>
インク受容層塗液1の作製においてカチオン系ウレタン樹脂の固形分を16質量部に変更してインク受容層塗布液4を作製し、その他は前記したインクジェット記録材料1の作製と同様にしてインクジェット記録材料4を得た。インク受容層塗布液4のpHは3.65であった。
【0035】
<インクジェット記録材料5の作製>
インク受容層塗液1の作製においてアセトアセチル基変性のポリビニルアルコールの固形分を7質量部に変更してインク受容層塗布液5を作製し、その他は前記したインクジェット記録材料1の作製と同様にしてインクジェット記録材料5を作製した。インク受容層塗布液5のpHは3.70であった。
【0036】
<インクジェット記録材料6の作製>
インク受容層塗液1の作製においてアセトアセチル基変性のポリビニルアルコールの固形分を12質量部に変更してインク受容層塗布液6を作製し、その他は前記したインクジェット記録材料1の作製と同様にしてインクジェット記録材料6を得た。インク受容層塗布液6のpHは3.70であった。
【0037】
<インクジェット記録材料7の作製>
インク受容層塗液1の作製においてアセトアセチル基変性のポリビニルアルコールの固形分を1質量部に変更してインク受容層塗布液7を作製し、その他は前記したインクジェット記録材料1の作製と同様にしてインクジェット記録材料7を得た。インク受容層塗布液7のpHは3.70であった。
【0038】
<インクジェット記録材料8の作製>
インク受容層塗液1の作製において酢酸ジルコニウムを未添加にしてインク受容層塗布液8を作製し、その他は前記したインクジェット記録材料1の作製と同様にしてインクジェット記録材料8を得た。インク受容層塗布液8のpHは3.80であった。
【0039】
上記のようにして作製したインクジェット記録材料1~8について下記の評価を行った。
【0040】
<インク吸収性評価>
インクジェット記録材料1~8のインク受容層面に、水性顔料インクを備えた市販のインクジェットラベルプリンター(セイコーエプソン(株)製TM-C 7500G、印刷品質:合成紙、色補正:無し)で、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ブルー、レッド、グリーンの各色ベタ画像および各色ベタ画像部中に白抜き文字を組み入れたパターンからなる画像を印刷し、自然乾燥させた。各インクジェット記録材料に印刷された画像を顕微鏡(25倍)にて観察し、インク吸収性について下記の基準にて評価を行った。本発明において、○の評価であればインク吸収性が優れるものと判断した。結果を表1に示す。なお、光沢性については、日本電色工業(株)製変角光沢度計VGS-1001DPを用いて測定(75度鏡面光沢度、JIS-Z8741-1983)した結果、インクジェット記録材料1~8の光沢度は何れも60%以上であり、良好であった。
<インク吸収性評価基準>
○:顕微鏡観察で各色ベタ印字画像の輪郭部や白抜き文字に滲みが認められない、あるいは、顕微鏡観察では僅かに滲みが認められるが目視観察では認められ難く、実用上は問題ないレベル。
△:顕微鏡観察で各色ベタ印字画像の輪郭部や白抜き文字に滲みが認められ、目視観察でも僅かに認められるが、実用上問題ないレベル。
×:目視観察で各色ベタ印字画像輪郭部や白抜き文字に明確な滲みが認められ、実用できないレベル。
【0041】
<人工風化耐性評価>
インクジェット記録材料1~8のインク受容層面に、水性顔料インクを備えたインクジェットラベルプリンター(セイコーエプソン(株)製SC-M 7500G、印刷品質:合成紙、色補正:無し)で、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(以上、上一列)、およびレッド、グリーン、ブルー、ホワイト(未印字部)(以上、下一列)の各色ベタ画像を縦25mm、横20mmの大きさで縦二列、横四列に0.5mm間隔で並べ、ベタ画像間に空白部ができるように印刷し、自然乾燥させた。次に、キセノン耐候性試験機(アトラス社製、ATRAS Ci4400 Xenon Weather-Ometer(登録商標))の中に、長手方向に半分が不透明な材料で覆われたブルーウール標準布No.5(25cm×15cm、BS1006-B01準拠、以下ブルーウール)と前記印刷済みインクジェット記録材料1~8(以下、試験片)を入れ、340nmの光を出力1Wにて17時間照射した。試験片のみを取り出し、塩水噴霧機(スガ試験機(株)製、STP-90、スプレー噴射口圧力70Kpa)にて下記生理食塩水を6時間噴霧した後、試験片をキセノン耐候性試験機に戻した。再度、ブルーウールを半分が不透明な材料で覆われた状態で、同条件にて17時間光照射を行った。適切な間隔でブルーウールの退色の程度を変色用グレースケール(BS1006-A02C準拠、以下グレースケール)で検査し、ブルーウールがグレースケールのステップ2に相当する退色を示すまで、あるいは光照射と塩水噴霧のサイクルを最大で5サイクル継続した。本実施例では5サイクルの光照射と塩水噴霧を実施し、5サイクル実施後のブルーウールの退色がグレースケールのステップ2相当であった。5サイクル実施後の試験片の各ベタ画像の退色具合を、試験前の試験片と目視にて比較し、グレースケールで評価した。各色ベタ画像の退色具合で最も変化が大きかったレッドの評価結果を表1に示す。なお、BS5609:1986年規格ではステップ2以上が求められるが、本発明ではステップ3以上であるものを優れた人工風化耐性を有すると判断した。
【0042】
<生理食塩水>
NaCl 26.5g
MgCl2 2.4g
MgSO4 3.3g
KCl 0.73g
NaHCO3 0.2g
NaBr 0.28g
CaCl2 1.1g
純水で溶解し1Lとする。
【0043】
<グレースケール>
最も退色変化が大きいステップ1から、退色変化がないステップ5まで9段階のステップがあり、ステップ1から順に、ステップ1-2、ステップ2、ステップ2-3、ステップ3、ステップ3-4、ステップ4、ステップ4-5、ステップ5となる。
【0044】
<テープ剥離耐性評価>
インクジェット記録材料1~8のインク受容層に、上記人工風化耐性の評価と同じ画像を印刷し、自然乾燥させた。印刷後のインクジェット記録材料(試験片)の印刷画像上に、BS3887:1984の付録Bに従って試験した粘着力が3.4~5.4N/25mmの透明感圧テープとして、テサテープ(株)製tesa#4204テープ(粘着力5.0N/25mm)をしっかりと押し付け15秒放置した。次に該テープの片方の端から、試験片に対して約90度の角度で素早く引っ張って該テープを剥離した。各試験片のテープ剥離後のベタ画像の退色具合について、上記人工風化耐性の評価と同様に目視にて評価した。各色ベタ画像の退色具合で最も変化が大きかったレッドの評価結果を表1に示す。なお、BS5609:1986年規格ではステップ2以上が求められるが、本発明ではステップ3以上であるものを優れたテープ剥離耐性を有すると判断した。
【0045】
<耐摩耗性評価>
インクジェット記録材料1~8のインク受容層に、上記人工風化耐性の評価と同じ画像を印刷し、自然乾燥させた。印刷後のインクジェット記録材料(試験片)の印刷画像が最表面になるように中空SUS(ステンレススチール)304の棒(長さ190mm、直径25mm)に両面テープで巻きつけ、直径170mm、高さ195mmのタンブラー(ドラム)に、海砂(粒径300~500μm)442gおよび前記生理食塩水1770gと共に入れて、擦過試験機(LORTONE社製、Model QT12)にセットし、回転数25rpm/分で20分間運転させた。停止後、試験片を回収し、試験片の表面に付着した海砂を洗い流し、乾燥させた。擦過試験後の試験片のベタ画像の退色具合を、上記人工風化耐性の評価と同様に目視にて評価した。各色ベタ画像の退色具合で最も変化が大きかったレッドの評価結果を表1に示す。なお、BS5609:1986年規格ではステップ2以上が求められるが、本発明ではステップ3以上であるものを優れた耐摩耗性を有すると判断した。
【0046】
【0047】
表1の結果から、本発明により、水性インクを利用したインクジェット記録において優れたインク吸収性を有し、且つ、人工風化耐性、テープ剥離耐性、および耐摩耗性に優れた水性インク用インクジェット記録材料が得られることがわかる。