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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068447
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】電界効果トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20230510BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20230510BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 652T
H01L29/78 652J
H01L29/78 658K
H01L29/78 652F
H01L29/78 652K
H01L29/78 653A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179582
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】515277942
【氏名又は名称】株式会社ノベルクリスタルテクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】308035117
【氏名又は名称】株式会社イオンテクノセンター
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井田 高
(72)【発明者】
【氏名】倉知 郁生
(72)【発明者】
【氏名】名倉 宙志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 公平
(57)【要約】
【課題】トレンチ構造を利用した電界効果トランジスタであって、より高い耐圧を有する電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】一実施の形態として、酸化ガリウム系半導体からなる第1のn型半導体層10と、Siからなる第2のn型半導体層11と、トレンチ12a、12b内に埋め込まれたp型半導体部14a、14bと、第2のn型半導体層11のトレンチ間領域13の上面の表層の一部に設けられたn型領域15a、15bと、トレンチ間領域13にn型領域15a、15bを囲むように設けられたp型領域16a、16bと、トレンチ間領域13上にゲート絶縁膜18を介して設けられたゲート電極17と、n型領域15a、15b及びp型半導体部14a、14bに接続されたソース電極20と、第1のn型半導体層10に接続されたドレイン電極21と、を備えた、電界効果トランジスタ1を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ガリウム系半導体からなる第1のn型半導体層と、
前記第1のn型半導体層上に設けられた、Siからなる第2のn型半導体層と、
前記第2のn型半導体層の上面から前記第1のn型半導体層まで達するトレンチ内に埋め込まれたp型半導体部と、
前記第2のn型半導体層の前記トレンチに両側から挟まれたトレンチ間領域の上面の表層の一部に設けられたn型領域と、
前記トレンチ間領域に前記n型領域を囲むように設けられたp型領域と、
前記トレンチ間領域上にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記n型領域及び前記p型半導体部に接続されたソース電極と、
前記第1のn型半導体層に接続されたドレイン電極と、
を備えた、電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記p型半導体部がp型の酸化物半導体からなる、
請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記p型の酸化物半導体がp型のNiOである、
請求項2に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記トレンチ間領域の幅が、0.5μm以上、2.0μm以下である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記トレンチが、前記第1のn型半導体層の上面より0.5μm以上深い、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接合させたGa基板とSi基板を半導体層として用いた、トレンチゲート構造を有する電界効果トランジスタが知られている(特許文献1参照)。このようなトレンチゲート構造を有する電界効果トランジスタにおいては、電界が集中するトレンチの底をGaのような絶縁破壊電界強度の高い材料からなる層に設けることにより、素子の耐圧を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6873516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トレンチゲート構造を有する電界効果トランジスタにおいては、トレンチの底に集中する電界によって、半導体層が耐えられたとしても、トレンチ底部のゲート絶縁膜に絶縁破壊が生じるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、トレンチ構造を利用した電界効果トランジスタであって、より高い耐圧を有する電界効果トランジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]~[5]の電界効果トランジスタを提供する。
【0007】
[1]酸化ガリウム系半導体からなる第1のn型半導体層と、前記第1のn型半導体層上に設けられた、Siからなる第2のn型半導体層と、前記第2のn型半導体層の上面から前記第1のn型半導体層まで達するトレンチ内に埋め込まれたp型半導体部と、前記第2のn型半導体層の前記トレンチに両側から挟まれたトレンチ間領域の上面の表層の一部に設けられたn型領域と、前記トレンチ間領域に前記n型領域を囲むように設けられたp型領域と、前記トレンチ間領域上にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、前記n型領域及び前記p型半導体部に接続されたソース電極と、前記第1のn型半導体層に接続されたドレイン電極と、を備えた、電界効果トランジスタ。
[2]前記p型半導体部がp型の酸化物半導体からなる、上記[1]に記載の電界効果トランジスタ。
[3]前記p型の酸化物半導体がp型のNiOである、上記[2]に記載の電界効果トランジスタ。
[4]前記トレンチ間領域の幅が、0.5μm以上、2.0μm以下である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタ。
[5]前記トレンチが、前記第1のn型半導体層の上面より0.5μm以上深い、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トレンチ構造を利用した電界効果トランジスタであって、より高い耐圧を有する電界効果トランジスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電界効果トランジスタの垂直断面図である。
図2図2は、図1に示される切断線A-Aで切断した、本発明の第1の実施の形態に係る電界効果トランジスタの水平断面図である。
図3図3は、第2のn型半導体層を薄くした本発明の第1の実施の形態に係る電界効果トランジスタの垂直断面図である。
図4図4は、ゲート電極に下向きの凸部を設けた本発明の第1の実施の形態に係る電界効果トランジスタの垂直断面図である。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態に係る電界効果トランジスタの変形例の垂直断面図である。
図6図6は、図5に示される切断線B-Bで切断した、変形例としての電界効果トランジスタの水平断面図である。
図7図7は、本発明の第1の実施の形態に係る電界効果トランジスタの他の変形例の垂直断面図である。
図8図8は、図7に示される切断線C-Cで切断した、他の変形例としての電界効果トランジスタの水平断面図である。
図9図9は、本発明の第2の実施の形態に係る電界効果トランジスタの垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1の実施の形態〕
(電界効果トランジスタの構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電界効果トランジスタ1の垂直断面図である。電界効果トランジスタ1は、プレーナ構造を有する縦型の電界効果トランジスタである。
【0011】
電界効果トランジスタ1は、酸化ガリウム系半導体からなる第1のn型半導体層10と、第1のn型半導体層10上に設けられた、Siからなる第2のn型半導体層11と、第2のn型半導体層11の上面から第1のn型半導体層10まで達するトレンチ12a、12b内に埋め込まれたp型半導体部14a、14bと、第2のn型半導体層11のトレンチ12a、12bに両側から挟まれたトレンチ間領域13の上面の表層の一部に設けられたn型領域15a、15bと、トレンチ間領域13にn型領域15a、15bを囲むように設けられたp型領域16a、16bと、トレンチ間領域13上にゲート絶縁膜18を介して設けられたゲート電極17と、n型領域15a、15b及びp型半導体部14a、14bに接続されたソース電極20と、第1のn型半導体層10に接続されたドレイン電極21とを備える。
【0012】
第1のn型半導体層10は、β型の結晶構造を有する酸化ガリウム系半導体の単結晶からなる。ここで、酸化ガリウム系半導体とは、Ga、又は、Al、Inなどの元素が添加されたGaをいう。例えば、酸化ガリウム系半導体は、(GaAlIn(1-x-y)(0<x≦1、0≦y≦1、0<x+y≦1)で表される組成を有する。GaにAlを添加した場合にはバンドギャップが広がり、Inを添加した場合にはバンドギャップが狭くなる。
【0013】
また、第1のn型半導体層10は、Si、Snなどのドナー不純物を含む。また、第1のn型半導体層10は、典型的には、図1に示されるように、ドレイン電極21をオーミック接続するためのドナー濃度の高い層101と、その上の層102を含む。例えば、層101は1×1018cm-3以上、1×1021cm-3以下のドナー濃度を有し、層102は1×1015cm-3以上、1×1017cm-3以下のドナー濃度を有する。また、例えば、層101の厚さは30μm以上、600μm以下であり、層102の厚さは5μm以上、50μm以下である。
【0014】
第1のn型半導体層10の層101は、典型的には、酸化ガリウム系半導体の基板からなる。この場合の基板は、例えば、FZ(Floating Zone)法やEFG(Edge Defined Film Fed Growth)法等の融液成長法により育成した酸化ガリウム系単結晶のバルク結晶をスライスし、表面を研磨することにより形成される。また、第1のn型半導体層10の層102は、典型的には、層101の上面を下地面として成膜されたエピタキシャル膜である。
【0015】
第2のn型半導体層11は、Siの単結晶からなる層である。第2のn型半導体層11は、リンなどのドナー不純物を含み、例えば、1×1012cm-3以上、1×1018cm-3以下のドナー濃度を有する。
【0016】
第2のn型半導体層11は、薄すぎるとn型領域15a、15bやp型領域16a、16bの形成が難しくなり、厚すぎるとトレンチ12a、12bを深く形成しなければならなくなる。このため、第2のn型半導体層11の厚さは、例えば、0.3μm以上、1.0μm以下であることが好ましい。
【0017】
第2のn型半導体層11の形成方法は特に限定されず、例えば、第1のn型半導体層10の上面を下地面としてSi単結晶をエピタキシャル成長させてもよく、また、スマートカット法などの基板貼り合わせ技術を用いた方法によりSi基板を第1のn型半導体層10に貼り合わせてもよい。なお、エピタキシャル成長させるよりも、スマートカット法などの基板貼り合わせ技術を用いる方が、第2のn型半導体層11の結晶品質を高くすることができるため、好ましい。
【0018】
なお、トレンチゲート構造を有する電界効果トランジスタにおいては、その動作上、n型の半導体層とp型の半導体層がpnジャンクションを形成することが必要であるが、電界効果トランジスタ1のように半導体層が酸化ガリウム系半導体からなる層とSiからなる層により構成される場合、それらの間にpnジャンクションを形成することは難しい。例えば、n型の半導体層とp型の半導体層の界面にSiGaやGaメタルなどの層が形成されたり、Siが酸化ガリウム系半導体中でドナーとして働くため、p型の半導体層からのSiの拡散によりn型の半導体層の界面近傍にドナー濃度が非常に高い層が形成されたりすることにより、pnジャンクションが得られない場合がある。一方、プレーナ構造を有する電界効果トランジスタ1においては、その動作上、第2のn型半導体層11と、その内部に形成されるp型領域16a、16bとの間にpnジャンクションを形成すればよいため、トレンチゲート構造を有する電界効果トランジスタと比較して、pnジャンクションの形成が容易である。
【0019】
トレンチ12a、12bは、第2のn型半導体層11の上面(第1のn型半導体層10の反対側の面)から第1のn型半導体層10まで達する。すなわち、トレンチ12a、12bの底及びトレンチ12a、12bに埋め込まれるp型半導体部14a、14bの底が、第1のn型半導体層10の上面(第2のn型半導体層11側の面)よりも下側に位置する。トレンチ12a、12bは、例えば、フォトリソグラフィとドライエッチングにより形成される。
【0020】
p型半導体部14a、14bは、p型の半導体からなり、トレンチへの埋め込み技術が確立されているp型Siが製造容易性という点で好ましい。一方、第1のn型半導体層10を構成する酸化ガリウム系半導体と反応し難いという点では、p型の酸化物半導体からなることが好ましい。さらに、p型の酸化物半導体の中でも、特に電界効果トランジスタ1の耐圧が大きくなることが確認されているp型のNiOをp型半導体部14a、14bの材料に用いることが好ましい。p型半導体部14a、14bは、例えば、CVD法やスパッタ法などにより、トレンチ12a、12b内にp型半導体を堆積させることにより形成される。
【0021】
p型半導体部14a、14bを設けることにより、電界効果トランジスタ1に逆バイアスを印加するとき(オフ時)に、p型半導体部14a、14bの底に電界が集中する。p型半導体部14a、14bの底は、絶縁破壊電界強度の高い酸化ガリウム系半導体からなる第1のn型半導体層10内に位置するため、電界集中による半導体層の絶縁破壊が抑えられ、電界効果トランジスタ1の耐圧が大きくなる。そして、p型半導体部14a、14bを設けて第1のn型半導体層10内に電界を集中させることにより、チャネルが形成される第2のn型半導体層11の材料に酸化ガリウム系半導体よりも電子の移動度が大きいSiを用いてチャネル抵抗を低減し、素子のオン抵抗を低減することができる。
【0022】
また、トレンチ12a、12b内にp型半導体部14a、14bが埋め込まれた電界効果トランジスタ1は、トレンチ内にゲート電極とゲート絶縁膜が埋め込まれたトレンチゲート構造の電界効果トランジスタと異なり、トレンチの底に絶縁体が存在しない。このため、トレンチの底に集中する電界による絶縁体の絶縁破壊のおそれがない。なお、プレーナ構造を有する電界効果トランジスタ1のゲート絶縁膜18は、電界が印加されない第2のn型半導体層11の上に位置するため、絶縁破壊のおそれはない。
【0023】
さらに、トレンチの底に絶縁体が存在する場合には、その絶縁体のチャージアップ(帯電)により素子の特性が変動するおそれがあるが、電界効果トランジスタ1においては、ソース電極20を介してp型半導体部14a、14bに生じた電荷を外部に逃がすことができるため、チャージアップによる素子特性の変動のおそれがない。
【0024】
p型半導体部14aとp型半導体部14bの間隔、すなわちトレンチ間領域13の幅は、大きすぎると、電界効果トランジスタ1に逆バイアスを印加したときに、p型半導体部14aとp型半導体部14bから広がる空乏層によりp型半導体部14aとp型半導体部14bの間の電流経路を閉じることが難しくなり、電界効果トランジスタ1がオフしなくなるおそれがある。一方、トレンチ間領域13の幅が小さすぎると、n型領域15a、15b、p型領域16a、16bの形成が難しくなる。このため、トレンチ間領域13の幅は、例えば、0.5μm以上、2.0μm以下であることが好ましい。
【0025】
また、電界効果トランジスタ1に逆バイアスを印加したときに、p型半導体部14aとp型半導体部14bから広がる空乏層により効果的に電流経路を閉じるためには、p型半導体部14aとp型半導体部14bの底が第1のn型半導体層10の上面よりも0.5μm以上下側にあること、すなわちトレンチ12a、12bが第1のn型半導体層10の上面よりも0.5μm以上深いことが好ましい。
【0026】
n型領域15a、15bは、電界効果トランジスタ1のソースであり、ソース電極20をオーミック接続するために高いドナー濃度を有し、例えば、第2のn型半導体層11の表面にヒ素などのドナー不純物をイオン注入することにより形成される。
【0027】
p型領域16a、16bは、n型領域15a、15bとトレンチ間領域13のn型領域15a、15bが設けられていない領域を隔離するために、n型領域15a、15bを囲むように設けられたトレンチ間領域13中のp型の領域であり、例えば、第2のn型半導体層11の表面にホウ素などのアクセプター不純物をイオン注入することにより形成される。ゲート電極17に電圧を印加すると、p型領域16a、16bのトレンチ間領域13の表層に位置する部分に水平方向のチャネルが形成され、ソース電極20とドレイン電極21との間に電流が流れる。
【0028】
図2は、図1に示される切断線A-Aで切断した電界効果トランジスタ1の水平断面図である。図2は、p型半導体部14a、14b(トレンチ12a、12b)、n型領域15a、15b、p型領域16a、16bの水平方向のパターンの一例を示している。また、図2には、ゲート電極17の水平方向の位置を点線で示す。
【0029】
p型半導体部14a、14b(トレンチ12a、12b)、n型領域15a、15b、p型領域16a、16bの水平方向のパターンは、図2に示されるものに限定されない。例えば、トレンチ12a、12bは、ともに図1の垂直断面に表れない部分でつながった1つのトレンチの一部であってもよい。すなわち、p型半導体部14a、14bは、ともに1つのp型半導体部の一部であってもよい。また、n型領域15a、15bも、ともに1つのn型領域の一部であってもよい。
【0030】
ゲート電極17は、例えば、高濃度のドナーが添加された多結晶Siや、タングステン、タングステンとSiの化合物であるタングステンシリサイドなどの金属からなる。また、ゲート電極17とトレンチ間領域13の間に設けられるゲート絶縁膜18と、ゲート電極17の側方及び上方を覆うように設けられる層間絶縁膜19は、例えば、シリコン酸化膜などの絶縁体からなる。
【0031】
ソース電極20は、例えば、アルミニウムなどの金属からなる。また、ドレイン電極21は、例えば、チタンやアルミニウムなどの金属からなる。
【0032】
なお、電界効果トランジスタ1においては、図3に示されるように、第2のn型半導体層11の底面とn型半導体層11中のp型領域16a、16bの底面が一致する程度に、第2のn型半導体層11を薄くしてもよい。第2のn型半導体層11を薄くすることにより、第2のn型半導体層11中でのアバランシェブレークダウンを抑制し、電界効果トランジスタ1の耐圧を向上させることができる。
【0033】
さらに、電界効果トランジスタ1においては、図4に示されるように、トレンチ間領域13の一部(n型領域15a、15bが設けられていない部分)に入り込む下向きの突起171をゲート電極17に設けてもよい。第2のn型半導体層11の突起171の下側の部分はより薄くなるため、第2のn型半導体層11中でのアバランシェブレークダウンをより効果的に抑制し、電界効果トランジスタ1の耐圧をより向上させることができる。
【0034】
(変形例1)
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る電界効果トランジスタ1の変形例である電界効果トランジスタ2の垂直断面図である。
【0035】
図6は、図5に示される切断線B-Bで切断した電界効果トランジスタ2の水平断面図である。図6は、電界効果トランジスタ2におけるp型半導体部14a、14b(トレンチ12a、12b)、n型領域15a、p型領域16aの水平方向のパターンの一例を示している。また、図6には、ゲート電極17の水平方向の位置を点線で示す。
【0036】
電界効果トランジスタ2は、n型領域15a、15bのうち、n型領域15aのみが設けられている点において電界効果トランジスタ1と異なる。n型領域15aとn型領域15bの両方の形成により、素子の製造が困難なほどゲート長(水平方向の電子の移動距離)が短くなる場合には、n型領域15aのみを設けることにより、素子のサイズを変えずにゲート長を長くする(p型領域16aの水平方向の幅を大きくする)ことができる。このため、素子の製造難易度を低減し、安定して製造することができる。
【0037】
また、電界効果トランジスタ2においては、電界効果トランジスタ1と同様に、第2のn型半導体層11の底面とn型半導体層11中のp型領域16aの底面が一致する程度に、第2のn型半導体層11を薄くしてもよい。第2のn型半導体層11を薄くすることにより、第2のn型半導体層11中でのアバランシェブレークダウンを抑制し、電界効果トランジスタ2の耐圧を向上させることができる。
【0038】
さらに、電界効果トランジスタ2においては、電界効果トランジスタ1と同様に、トレンチ間領域13の一部(n型領域15aが設けられていない部分)に入り込む下向きの突起171をゲート電極17に設けてもよい。第2のn型半導体層11の突起171の下側の部分はより薄くなるため、第2のn型半導体層11中でのアバランシェブレークダウンをより効果的に抑制し、電界効果トランジスタ2の耐圧をより向上させることができる。
【0039】
(変形例2)
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る電界効果トランジスタ1の他の変形例である電界効果トランジスタ3の垂直断面図である。
【0040】
図8は、図7に示される切断線C-Cで切断した電界効果トランジスタ3の水平断面図である。図8は、電界効果トランジスタ3におけるp型半導体部14a、14b(トレンチ12a、12b)、n型領域15a、15b、p型領域16a、16bの水平方向のパターンの一例を示している。また、図8には、ゲート電極17の水平方向の位置を点線で示す。なお、図7に示される垂直断面は、図8に示される切断線D-Dで切断した電界効果トランジスタ3の垂直断面に相当する。
【0041】
電界効果トランジスタ3は、p型半導体部14a、14b(トレンチ12a、12b)の水平方向のパターンの長手方向が、ゲート電極17、n型領域15a、15b、及びp型領域16a、16bの水平方向のパターンの長手方向と直交する点において、電界効果トランジスタ1と異なる。p型半導体部14a、14bとゲート電極17などを三次元的に配置することにより、設計自由度が向上し、素子の製造難易度の低減が期待できる。
【0042】
また、電界効果トランジスタ3においては、電界効果トランジスタ1と同様に、第2のn型半導体層11の底面とn型半導体層11中のp型領域16a、16bの底面が一致する程度に、第2のn型半導体層11を薄くしてもよい。第2のn型半導体層11を薄くすることにより、第2のn型半導体層11中でのアバランシェブレークダウンを抑制し、電界効果トランジスタ3の耐圧を向上させることができる。
【0043】
さらに、電界効果トランジスタ3においては、電界効果トランジスタ1と同様に、トレンチ間領域13の一部(n型領域15a、15bが設けられていない部分)に入り込む下向きの突起171をゲート電極17に設けてもよい。第2のn型半導体層11の突起171の下側の部分はより薄くなるため、第2のn型半導体層11中でのアバランシェブレークダウンをより効果的に抑制し、電界効果トランジスタ3の耐圧をより向上させることができる。
【0044】
(第1の実施の形態の効果)
上記本発明の第1の実施の形態に係る電界効果トランジスタ1~3によれば、トレンチ12a、12b(又はトレンチ12a)にp型半導体部14a、14b(又はp型半導体部14a)を埋め込んだトレンチ構造と、ゲート絶縁膜18をトレンチ間領域13の上に設けるプレーナ構造を有することにより、トレンチ底部に集中する電界による絶縁体の絶縁破壊というトレンチゲート構造の欠点を克服し、より高い耐圧を得ることができる。
【0045】
〔第2の実施の形態〕
(電界効果トランジスタの構成)
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る電界効果トランジスタ4の垂直断面図である。電界効果トランジスタ4は、トレンチゲート構造を有する縦型の電界効果トランジスタである。
【0046】
電界効果トランジスタ4は、酸化ガリウム系半導体からなる第1のn型半導体層10と、第1のn型半導体層10上に設けられた、Siからなるp型半導体層41と、p型半導体層41上に設けられた、Siからなる第2のn型半導体層42と、第2のn型半導体層42の上面から第1のn型半導体層10まで達するトレンチ43a、43b内の底部に埋め込まれたp型半導体部46a、46bと、トレンチ43a、43b内のp型半導体部46a、46b上にゲート絶縁膜45a、45bに覆われて埋め込まれたゲート電極44a、44bと、第2のn型半導体層42の上面及びp型半導体部46a、46bに接続されたソース電極47と、第1のn型半導体層10に接続されたドレイン電極48とを備える。
【0047】
p型半導体層41及び第2のn型半導体層42は、Siの単結晶からなる層である。p型半導体層41は、ホウ素などのアクセプター不純物を含み、例えば、1×1015cm-3以上、1×1018cm-3以下のアクセプター濃度を有する。第2のn型半導体層42は、リン、ヒ素などのドナー不純物を含み、例えば、1×1018cm-3以上、1×1021cm-3以下のドナー濃度を有する。p型半導体層41の厚さは、例えば、0.3μm以上、1.2μm以下であり、第2のn型半導体層42の厚さは、例えば、0.1μm以上、0.3μm以下である。
【0048】
トレンチ43a、43bは、例えば、フォトリソグラフィとドライエッチングにより形成される。
【0049】
p型半導体部46a、46bは、p型の半導体からなり、トレンチへの埋め込み技術が確立されているp型Siが製造容易性という点で好ましい。一方、第1のn型半導体層10を構成する酸化ガリウム系半導体と反応し難いという点では、p型の酸化物半導体からなることが好ましい。さらに、p型の酸化物半導体の中でも、特に電界効果トランジスタ4の耐圧が大きくなることが確認されているp型のNiOをp型半導体部46a、46bの材料に用いることが好ましい。p型半導体部46a、46bは、例えば、CVD法やスパッタ法などにより、トレンチ43a、43b内にp型半導体を堆積させることにより形成される。
【0050】
ゲート電極44a、44bの底は、第1のn型半導体層10の上面(p型半導体層41側の面)よりも下側に位置する。これにより、絶縁破壊電界強度の高い酸化ガリウム系半導体からなる第1のn型半導体層10内に電界を集中させ、電界効果トランジスタ4の耐圧が大きくすることができる。そして、第1のn型半導体層10内に電界を集中させることにより、チャネルが形成されるp型半導体層41の材料に酸化ガリウム系半導体よりも電子の移動度が大きいSiを用いてチャネル抵抗を低減し、素子のオン抵抗を低減することができる。
【0051】
また、p型半導体部46a、46bを設けることにより、電界効果トランジスタ4に逆バイアスを印加するとき(オフ時)に、ゲート電極44a、44b下のゲート絶縁膜45a、45bへの電界の集中を緩和することができる。さらに、電界効果トランジスタ4においては、p型半導体部46a、46bが図9の断面に表れない部分でソース電極47に接続されており、ソース電極47を介してp型半導体部46a、46bに生じた電荷を外部に逃がすことができるため、チャージアップによる素子特性の変動のおそれがない。
【0052】
トレンチ43aとトレンチ43bの間隔は、大きすぎると、電界効果トランジスタ4に逆バイアスを印加したときに、ゲート絶縁膜45aとゲート絶縁膜45bから広がる空乏層により、n型半導体層10とp型半導体層41の接合部の電界強度を低減する効果が弱くなり、p型半導体層41で絶縁破壊するおそれがある。一方、トレンチ43aとトレンチ43bの間隔が小さすぎると、ステッパーを用いたパターニングによるトレンチ43a、43bの形成が難しくなる。このため、トレンチ43aとトレンチ43bの間隔は、例えば、0.6μm以上、1.8μm以下であることが好ましい。
【0053】
また、電界効果トランジスタ4に逆バイアスを印加したときに、ゲート絶縁膜45aとゲート絶縁膜45bから広がる空乏層により効果的にn型半導体層10とp型半導体層41の接合部の電界強度を低減するためには、ゲート電極44a、44bの底が第1のn型半導体層10の上面よりも0.6μm以上下側にあることが好ましい。
【0054】
ゲート電極44a、44bは、例えば、高濃度のドナーが添加された多結晶Siや、タングステン、タングステンとSiの化合物であるタングステンシリサイドなどの金属からなる。また、ゲート絶縁膜45a、45bは、例えば、シリコン酸化膜などの絶縁体からなる。
【0055】
ソース電極47は、例えば、アルミニウムなどの金属からなる。また、ドレイン電極48は、例えば、チタンやアルミニウムなどの金属からなる。
【0056】
(第2の実施の形態の効果)
上記本発明の第2の実施の形態に係る電界効果トランジスタ4によれば、トレンチ43a、43b内のゲート絶縁膜45a、45bに覆われたゲート電極44a、44bの下にp型半導体部46a、46bを設けることにより、ゲート電極44a、44b下のゲート絶縁膜45a、45bへの電界の集中を緩和し、かつ、ソース電極47を介してp型半導体部46a、46bに生じた電荷を外部に逃がすことにより、p型半導体部46a、46bのチャージアップを防ぐことができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0058】
また、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0059】
1、2、3…電界効果トランジスタ、 10…第1のn型半導体層、 11…第2のn型半導体層、 12a、12b…トレンチ、 13…トレンチ間領域、 14a、14b…p型半導体部、 15a、15b…n型領域、 16a、16b…p型領域、 17…ゲート電極、 18…ゲート絶縁膜、 20…ソース電極、 21…ドレイン電極、 4…電界効果トランジスタ、 41…p型半導体層、 42…第2のn型半導体層、 43a、43b…トレンチ、 44a、44b…ゲート電極、 45a、45b…ゲート絶縁膜、 46a、46b…p型半導体部、 47…ソース電極、 48…ドレイン電極
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9