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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068449
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】米麺
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20230510BHJP
【FI】
A23L7/109 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179584
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】521481784
【氏名又は名称】金田 淳二
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】金田 淳二
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA10
4B046LC17
4B046LG30
4B046LP03
4B046LQ01
4B046LQ04
(57)【要約】
【課題】ロール式の製麺機による安定的な製麺が可能で、香ばしさのある米麺を提供する。
【解決手段】澱粉がα澱粉である発芽玄米の粉からなる発芽玄米α粉と、澱粉がα澱粉である白米の粉からなる白米α粉と、澱粉がβ澱粉である白米の粉からなる白米β粉とを含む米粉を原料とする米麺であって、米粉全体に対する割合は、発芽玄米α粉が10質量%以上35質量%以下、白米α粉が15質量%以上40質量%以下、白米β粉が40質量%以上60質量%以下である。なお、発芽玄米α粉の割合は20質量%以上30質量%以下が好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉がα澱粉である発芽玄米の粉からなる発芽玄米α粉と、澱粉がα澱粉である白米の粉からなる白米α粉と、澱粉がβ澱粉である白米の粉からなる白米β粉とを含む米粉を原料とする米麺であって、
前記米粉全体に対する割合は、前記発芽玄米α粉が10質量%以上35質量%以下、前記白米α粉が15質量%以上40質量%以下、前記白米β粉が40質量%以上60質量%以下であることを特徴とする米麺。
【請求項2】
請求項1記載の米麺において、前記米粉全体に対する前記発芽玄米α粉の割合が20質量%以上であることを特徴とする米麺。
【請求項3】
請求項1記載の米麺において、前記米粉全体に対する前記発芽玄米α粉の割合が30質量%以下であることを特徴とする米麺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粉を主な原料とする米麺に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの麺が小麦を原料に含んでいることから、アレルギー等が理由で小麦を用いた食品を食せない人や、体質の改善等を目的にグルテンの摂取量を抑える人は、麺類を食す機会が制限されている。また、アレルギーによって蕎麦を食べられない人もいる。このような人が安心して食べられる麺類の一つに、米を主原料とする米麺が挙げられる。従来、米麺は白米を原料としたものが主流であり、澱粉がβ澱粉である白米の粉(以下、「白米β粉」と言う)及び澱粉がα澱粉(β澱粉をα化したもの)である白米の粉(以下、「白米α粉」と言う)に水等を加えたものが製麺されて製品化されている。
【0003】
ところで、近年、白米に比べて、ビタミン、ミネラル、食物繊維等の栄養が豊富な発芽玄米が注目され、米麺においても発芽玄米を含んだものの製品化が試みられている。例えば、特許文献1には発芽玄米を用いたうどん用の麺が、特許文献2には発芽玄米及び白米粉を主原料とした発芽玄米麺がそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-301708号公報
【特許文献2】特開2021-83406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のうどん用の麺は、発芽玄米を含んではいるが、原料の大半が小麦粉であり、小麦を摂取できない人は食べることができない。これに対し、特許文献2に記載の発芽玄米麺は小麦粉を含んでいない。
しかしながら、引用文献2に記載の発芽玄米麺は、押出し型製麺機を利用して製麺される。即ち、主な製麺機の一つであるロール式の製麺機による製麺を前提としていない。
【0006】
ロール式の製麺機による製麺を可能にするには、麺の生地(穀物粉に水や食塩等を加えて混ぜ合わせたもの、以下同じ)が適度な粘り気(粘着性)を有している必要がある。粘り気が小さ過ぎると、麺の生地を延伸する工程で麺の生地が切れてしまう。一方、粘り気が大き過ぎると、麺の生地は、帯状に伸ばされてロールに巻き付けられた状態で一の領域と他の領域が接着するという問題や、薄く延ばした麺の生地を麺状に切断する処理を安定的に行えないという問題が生じる。
【0007】
また、引用文献1、2に記載の麺には、蕎麦のような香ばしさがないため、香ばしい味の麺を食したいという要求には応えることができなかった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、ロール式の製麺機による安定的な製麺が可能で、香ばしさのある米麺を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う本発明に係る米麺は、澱粉がα澱粉である発芽玄米の粉からなる発芽玄米α粉と、澱粉がα澱粉である白米の粉からなる白米α粉と、澱粉がβ澱粉である白米の粉からなる白米β粉とを含む米粉を原料とする米麺であって、前記米粉全体に対する割合は、前記発芽玄米α粉が10質量%以上35質量%以下、前記白米α粉が15質量%以上40質量%以下、前記白米β粉が40質量%以上60質量%以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る米麺は、米粉全体に対する割合が、発芽玄米α粉が10質量%以上35質量%以下、白米α粉が15質量%以上40質量%以下、白米β粉が40質量%以上60質量%以下であるので、米粉の生地が適度な粘り気を有し、ロール式の製麺機による安定的な製麺が可能で、香ばしさがある。
【0010】
これは、本願の発明者が種々の検証により以下の知見を得、この知見を基に実験を重ねてロール式の製麺機による安定的な製麺が可能で、香ばしさのある米麺を得るための発芽玄米α粉、白米α粉、白米β粉の混合比を見出したことによる。
【0011】
1)澱粉がβ澱粉である発芽玄米の粉(発芽玄米β粉)は米麺に香ばしさを生じさせないが、発芽玄米α粉は米麺の原料に加えられることによって、米麺に香ばしさを出現させる。
2)発芽玄米α粉の割合の増加に伴って米麺の香ばしさが強くなり、発芽玄米α粉の割合が多過ぎると米麺に香ばしさが無くなり苦みが出る。
3)発芽玄米α粉は、米麺の生地に粘り気をもたらし、白米β粉に比べて米麺の生地の粘り気に与える影響は大きいが、白米α粉に比べて米麺の生地の粘り気に与える影響は小さい。即ち、発芽玄米α粉の増加に伴う米麺の生地の粘り気の上昇率は、白米α粉の増加に伴う米麺の生地の粘り気の上昇率より小さく、発芽玄米α粉の減少に伴う米麺の生地の粘り気の低下率は、白米α粉の減少に伴う米麺の生地の粘り気の低下率より小さい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
本発明の一実施の形態に係る米麺は、澱粉がα澱粉である発芽玄米の粉からなる発芽玄米α粉と、澱粉がα澱粉である白米の粉からなる白米α粉と、澱粉がβ澱粉である白米の粉からなる白米β粉とを含む米粉を原料とする米麺であり、米粉全体に対する割合は、発芽玄米α粉が10質量%以上35質量%以下、白米α粉が15質量%以上40質量%以下、白米β粉が40質量%以上60質量%以下である。
【0013】
本実施の形態において、発芽玄米α粉は、α化されていない発芽玄米を加圧しながら加熱した後、圧力を解放して発芽玄米に対しα化を伴った膨化処理を行い、粉砕処理を経て生成されている。白米α粉も発芽玄米α粉と同様の処理によって製造されている。発芽玄米α粉及び白米α粉の製造には、例えば、エクストルーダが用いられる。
白米β粉は、生米を粉砕して製造されている。
【0014】
米麺は、発芽玄米α粉、白米α粉及び白米β粉の混合物(米粉)に水及び食塩を加えた米麺の生地をロール式の製麺機によって製麺化したものである。
ここで、米麺の生地に含有されている米粉(本実施の形態では、発芽玄米α粉、白米α粉及び白米β粉)全体に対する発芽玄米α粉の割合、白米α粉の割合、白米β粉の割合をそれぞれ、10質量%以上35質量%以下、15質量%以上40質量%以下、40質量%以上60質量%以下としているのは、ロール式の製麺機による製麺を安定的に行えるようにし、かつ、米麺にほどよい香ばしさを持たせるためである。
【0015】
米粉全体に対する発芽玄米α粉の割合が10質量%未満の場合、米麺は香ばしさを安定的に有することができず、米粉全体に対する発芽玄米α粉の割合が35質量%を超えると、米麺の香ばしい味が香ばしさを超えて苦みとなる。そのため、米粉全体に対する発芽玄米α粉の割合を10質量%以上35質量%以下とすることが求められる。
米麺にほどよい香ばしさを確実にもたらせる観点では、米粉全体に対する発芽玄米α粉の割合を20質量%以上にすることが好ましく、米麺が苦みを有するのを確実に回避する観点では、米粉全体に対する発芽玄米α粉の割合を30質量%以下にすることが好ましい。
【0016】
また、米粉全体に対する発芽玄米α粉の割合を10質量%以上35質量%以下とした場合、米粉全体に対する白米α粉の割合が15質量%未満、又は、40質量%を超えるようにすると、米粉の生地に適度な粘り気がなく、ロール式の製麺機による製麺が安定的に行えないことが判明した。よって、米粉全体に対する白米α粉の割合は、15質量%以上40質量%以下である必要があり、同割合は、20質量%以上35質量%以下が好ましい。
なお、米粉には、発芽玄米α粉、白米α粉及び白米β粉以外に、例えば、発芽玄米β粉を含んでいてもよい。
【実施例0017】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実験について説明する。
発芽玄米α粉、白米α粉及び白米β粉の含有率が異なる米麺(米麺を湯で加熱したもの)を20代から50代までの男女8名(実験結果では、人A、人B、人C、人D、人E、人F、人G、人Hと表わす)が食し、香ばしさ及び風味についてそれぞれ1~3点の3段階で採点する実験を行った。各人による採点のタイミングを統一化するため、米麺を口に入れ咀嚼し飲み込む流れの中で飲み込んだ直後の香ばしさや風味を採点対象とした。
【0018】
採点は、点数が大きいほうが良いようにし、香ばしさ(又は風味)を感じない、あるいは、ほとんど感じない場合を1点とし、ほどよい香ばしさ(風味)を感じる場合を3点とし、その中間を2点とした。
前準備として、8名に、発芽玄米α粉の代わりにきな粉を材料に含んだ以下の2つの米麺のサンプルを食させ、採点の基準合わせを行った。
サンプル1:きな粉が25質量%、白米α粉が30質量%、白米β粉が45質量%
サンプル2:きな粉が5質量%、白米α粉が30質量%、白米β粉が65質量%
【0019】
サンプル1、2には、きな粉、白米α粉、白米β粉以外に水及び食塩のみが含まれていた。サンプル1、2は、米麺の料理人が様々な麺を試食して選出したもので、サンプル1は香ばしさ及び風味がそれぞれ3点のサンプルであり、サンプル2は香ばしさ及び風味がそれぞれ1点のサンプルであった。
【0020】
実験で用いた米麺を以下に示す。
米麺イ:発芽玄米α粉が20質量%、白米α粉が30質量%、白米β粉が50質量%
米麺ロ:発芽玄米α粉が20質量%、白米α粉が20質量%、白米β粉が60質量%
米麺ハ:発芽玄米α粉が30質量%、白米α粉が25質量%、白米β粉が45質量%
米麺ニ:発芽玄米α粉が10質量%、白米α粉が35質量%、白米β粉が55質量%
米麺ホ:発芽玄米α粉が5質量%、白米α粉が40質量%、白米β粉が55質量%
【0021】
米麺イ、ロ、ハ、ニ、ホには、発芽玄米α粉、白米α粉、白米β粉以外に水及び食塩のみが含まれていた。米麺イ、ロ、ハ、ニ、ホにおける発芽玄米α粉、白米α粉、白米β粉それぞれの割合は、発芽玄米α粉、白米α粉及び白米β粉を足し合わせた米粉の質量に対しるものである。
香ばしさ及び風味に関する実験結果を以下の表1及び表2にそれぞれ示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
実験結果より、発芽玄米α粉の割合が20質量%以上の米麺イ、ロ、ハは同割合が10質量%以下の米麺ニ、ホより、香ばしさ及び風味の採点が高かった。また、発芽玄米α粉の割合が10質量%の米麺ニは、同割合が5質量%の米麺ホに対して、香ばしさの採点が高く、風味の採点は同じであった。
【0025】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
発芽玄米α粉及び白米α粉は、エクストルーダ以外の装置を用いて製造してもよいことは言うまでもない。また、米麺の生地は、発芽玄米α粉、白米α粉、白米β粉、水及び食塩以外のもの(例えば、よもぎ)を含んでいてもよい。