(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068480
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】靴データ生成装置、靴データ生成方法、靴データ生成プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20230510BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20230510BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06T7/60 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179629
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】521005649
【氏名又は名称】株式会社Virtusize
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】上野オラウソン アンドレアス
【テーマコード(参考)】
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
5L049CC12
5L096CA01
5L096EA43
5L096FA06
5L096FA66
(57)【要約】
【課題】靴提示装置に適した態様の靴データを生成できる靴データ生成装置等を提供する。
【解決手段】ユーザに対して靴を提示する靴検索システム100に登録される靴のデータを生成する靴データ生成装置1は、靴の画像を取得する靴画像取得部11と、画像から靴に関するメタデータを生成する靴メタデータ生成部14と、を備える。靴画像取得部11は、靴の少なくとも上面視または下面視の画像を取得する。靴画像取得部11が取得した画像から靴の輪郭を取得する靴輪郭取得部123が更に設けられ、靴メタデータ生成部14は、輪郭から靴に関するメタデータを生成する。靴メタデータ生成部14は、画像から靴の幅、先端形状、タイプに関するメタデータを生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対して靴を提示する靴提示装置に登録される靴のデータを生成する靴データ生成装置であって、
靴の画像を取得する靴画像取得部と、
前記画像から前記靴に関するメタデータを生成する靴メタデータ生成部と、
を備える靴データ生成装置。
【請求項2】
前記靴画像取得部は、前記靴の少なくとも上面視または下面視の画像を取得する、請求項1に記載の靴データ生成装置。
【請求項3】
前記靴画像取得部は、前記靴の視点の異なる複数の画像を取得する、請求項1または2に記載の靴データ生成装置。
【請求項4】
前記靴画像取得部が取得した画像から前記靴の輪郭を取得する靴輪郭取得部を更に備え、
前記靴メタデータ生成部は、前記輪郭から前記靴に関するメタデータを生成する、
請求項1から3のいずれかに記載の靴データ生成装置。
【請求項5】
前記靴メタデータ生成部は、前記画像から前記靴の幅に関するメタデータを生成する、請求項1から4のいずれかに記載の靴データ生成装置。
【請求項6】
前記靴メタデータ生成部は、前記画像から前記靴の先端形状に関するメタデータを生成する、請求項1から5のいずれかに記載の靴データ生成装置。
【請求項7】
前記靴メタデータ生成部は、前記画像から前記靴のタイプに関するメタデータを生成する、請求項1から6のいずれかに記載の靴データ生成装置。
【請求項8】
前記靴に関する情報を取得する靴情報取得部を更に備え、
靴メタデータ生成部は、前記靴情報取得部が取得した情報に基づいて、前記画像から前記靴に関するメタデータを生成する、
請求項1から7のいずれかに記載の靴データ生成装置。
【請求項9】
ユーザに対して靴を提示する靴提示装置に登録される靴のデータを生成する靴データ生成方法であって、
靴の画像を取得する靴画像取得ステップと、
前記画像から前記靴に関するメタデータを生成する靴メタデータ生成ステップと、
を備える靴データ生成方法。
【請求項10】
ユーザに対して靴を提示する靴提示装置に登録される靴のデータを生成する靴データ生成プログラムであって、
靴の画像を取得する靴画像取得ステップと、
前記画像から前記靴に関するメタデータを生成する靴メタデータ生成ステップと、
をコンピュータに実行させる靴データ生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザに対して靴を提示する靴提示装置に登録される靴のデータを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ユーザに対して靴およびインソールを推薦する技術を開示する。ユーザの足に関する足データ、靴に関する靴データ、インソールに関するインソールデータの比較によって、ユーザの足に適合する靴とインソールの組合せが推薦される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の靴提示装置または靴推薦装置では、ユーザの足データ等と的確に比較できる態様で靴データが登録されていない場合も多く、ユーザにとって最適な靴が必ずしも提示または推薦されないという問題があった。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、靴提示装置に適した態様の靴データを生成できる靴データ生成装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の靴データ生成装置は、ユーザに対して靴を提示する靴提示装置に登録される靴のデータを生成する靴データ生成装置であって、靴の画像を取得する靴画像取得部と、画像から靴に関するメタデータを生成する靴メタデータ生成部と、を備える。この態様によれば、靴提示装置に適した態様の靴データ(靴に関するメタデータ)を靴の画像から生成できる。
【0007】
本発明の別の態様は、靴データ生成方法である。この方法は、ユーザに対して靴を提示する靴提示装置に登録される靴のデータを生成する靴データ生成方法であって、靴の画像を取得する靴画像取得ステップと、画像から靴に関するメタデータを生成する靴メタデータ生成ステップと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、靴提示装置に適した態様の靴データを生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】靴データ生成装置を示す機能ブロック図である。
【
図2】靴画像取得部が取得した靴の画像の例を示す。
【
図3】靴画像取得部が取得した靴の画像の例および靴輪郭取得部が当該画像から取得した靴の輪郭の例を示す。
【
図4】靴検索システムを示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明または図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る靴データ生成装置1を示す機能ブロック図である。靴データ生成装置1は、ユーザの検索や行動履歴等に応じてユーザに対して靴を提示する靴提示装置としての靴検索システム100に登録される靴のデータを生成する装置である。靴データ生成装置1は、靴画像取得部11と、靴画像処理部12と、靴情報取得部13と、靴メタデータ生成部14を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。
【0013】
靴画像取得部11は、靴検索システム100に登録される靴の画像を取得する。靴画像取得部11は靴を撮像するカメラまたは撮像装置によって構成してもよいし、インターネット等の情報通信網も含む後述するデータベース200に存在する靴の画像データを当該データベース200から取得するコンピュータやスマートフォン等の情報通信機器によって構成してもよい。靴画像取得部11は、後続の靴画像処理部12や靴メタデータ生成部14の処理に好適な上面視または下面視の靴の画像を取得するのが好ましい。以下、上面視および下面視の画像をそれぞれ上面画像および下面画像と略し、両者を併せて平面画像と総称する。すなわち、本明細書における平面画像は、上面画像および下面画像の両方を含む概念である。
【0014】
なお、靴画像取得部11は、靴の平面画像に加えてまたは代えて、靴の他の視点の画像、例えば、側面視の画像、正面視の画像、背面視の画像、斜視画像を取得してもよい。後述するように、靴データ生成装置1は主に靴の平面画像を利用するが、視点の異なる複数の靴の画像を利用することで、靴画像処理部12が靴の精緻な三次元画像または三次元モデルを生成できる、靴メタデータ生成部14が異なる複数の視点の画像の分析に基づいて靴の寸法、形状、タイプ等を正確に判別できる(正確なメタデータを生成できる)等の追加的な便益が得られる。なお、靴画像取得部11は二次元の画像に限らず、三次元の画像を取得するものでもよい。
【0015】
靴画像処理部12は、靴画像取得部11が取得した靴の画像に対して各種の画像処理を施す。本実施形態では画像処理部として平面画像特定部121、画像方向補正部122、靴輪郭取得部123、画像統合部124を例示するが、これら以外の任意の画像処理部を設けてもよい。また、例示される平面画像特定部121、画像方向補正部122、靴輪郭取得部123、画像統合部124の全部を常に設ける必要はなく、これらの一部を設けてもよいし、靴画像処理部12自体を設けずに靴画像取得部11によって取得された靴の画像がそのまま靴メタデータ生成部14に入力されてもよい。
【0016】
以下、平面画像特定部121、画像方向補正部122、靴輪郭取得部123、画像統合部124の順に説明するが、これらの画像処理の実行順序(および実行可否)は任意であり、全部または一部の画像処理が並行に実行されてもよい。また、これらの画像処理部121~124の全部または一部は、靴画像処理部12において一体的または不可分に構成されてもよい。例えば、靴画像処理部12を機械学習可能な人工知能によって構成し、以下で説明する各画像処理部121~124の画像処理に相当する網羅的な教師データまたは訓練データに基づいて機械学習させることで、靴画像処理部12は各画像処理部121~124の画像処理を包含する包括的かつ総合的な画像処理をまとめて実行できる。
【0017】
平面画像特定部121は、靴画像取得部11が取得した靴の画像から上面視または下面視の平面画像を特定または選択する。
図2は、靴画像取得部11が取得した靴の画像の例を示す。これらの(A)~(J)の靴の画像のうち、平面画像特定部121は、(B)~(D)、(G)、(I)、(J)を平面画像として特定する。なお、(I)には左側の上面視の靴と右側の側面視の靴が示されているが、それぞれの靴は後述する靴分離部1233等によって分離され、平面画像特定部121は左側の上面視の靴の画像のみを平面画像として特定できる。後述するように、平面画像特定部121によって特定された靴の平面画像は、靴メタデータ生成部14において靴の寸法、形状、タイプを特定する際の主要データを構成する。なお、前述のように、平面画像に加えてまたは代えて平面画像以外の視点の画像を、靴画像処理部12(例えば後述する画像統合部124)および/または靴メタデータ生成部14における処理に利用してもよい。
【0018】
画像方向補正部122は、靴画像取得部11が取得した靴の画像の方向が所定の方向に一致するように補正する。例えば、画像方向補正部122は、靴の平面画像の長さ方向が上下方向に一致するように、すなわち靴の先端部が上端部(または下端部)に靴の後端部が下端部(または上端部)に来るように靴の平面画像を回転させる。
図2の例では、(I)の左側の平面画像が180度回転され、(J)の平面画像が反時計回り方向に90度回転される。同様に、画像方向補正部122は、靴の側面画像の長さ方向が左右方向に一致するように、すなわち靴の先端部が左端部(または右端部)に靴の後端部が右端部(または左端部)に来るように靴の側面画像を回転させてもよい。
図2の例では、(I)の右側の側面画像が時計回り方向に90度回転される。このように靴の画像の方向を所定の方向に一致させるまたは揃えることで、靴画像処理部12および/または靴メタデータ生成部14における後続処理の精度を高めることができる。
【0019】
靴輪郭取得部123は、靴画像取得部11が取得した靴の画像から靴の輪郭を取得する。
図3(A)~(D)において、右側に靴画像取得部11が取得した靴の画像の例を示し、左側に靴輪郭取得部123が当該画像から取得した靴の輪郭の例を示す。靴輪郭取得部123は、輪郭の取得精度を向上させるためのいくつかの補助的な画像処理部1231~1233を備える。
図3(A)は補助的な画像処理部1231~1233を用いなくても正確に輪郭を取得できる例を示し、
図3(B)は装飾除去部1231を用いることで正確に輪郭を取得できる例を示し、
図3(C)は背景除去部1232を用いることで正確に輪郭を取得できる例を示し、
図3(D)は靴分離部1233を用いることで正確に輪郭を取得できる例を示す。
【0020】
画像処理部1231~1233の区別は便宜上のものに過ぎず、実際には例えば靴輪郭取得部123(または靴画像処理部12全体)を機械学習可能な人工知能によって構成し、以下で説明する各画像処理部1231~1233の画像処理に相当する網羅的な教師データまたは訓練データに基づいて機械学習させることで、靴輪郭取得部123は各画像処理部1231~1233の画像処理を包含する包括的かつ総合的な輪郭取得処理をまとめて実行できる。なお、靴輪郭取得部123の訓練時または機械学習時には、
図3(A)~(D)のように、輪郭の取得対象の元画像(右側)と当該元画像から取得されるべき正しい輪郭(左側)が組となったデータが教師データとして靴輪郭取得部123に提供される。
【0021】
図3(B)の例では、靴画像取得部11が取得した靴の画像に、靴の輪郭を取得する際には除外されるべき装飾物αが含まれている。装飾除去部1231は、靴画像取得部11が取得した靴の画像中のこのような装飾物αを認識し、これらが除去された正確な靴の輪郭を取得する。
図3(B)の左側の輪郭において、装飾除去部1231が設けられない場合は装飾部分α′を含む誤った靴の輪郭が取得されてしまうが、装飾除去部1231を設けることで装飾部分α′を含まない正しい靴の輪郭が取得される。
【0022】
図3(C)の例では、靴画像取得部11が取得した靴の画像に、靴の輪郭を取得する際には除外されるべき背景物β(靴の側部)が含まれている。背景除去部1232は、靴画像取得部11が取得した靴の画像中のこのような背景物βを認識し、これらが除去された正確な靴の輪郭を取得する。
図3(C)の左側の輪郭において、背景除去部1232が設けられない場合は背景部分β′を含む誤った靴の輪郭が取得されてしまうが、背景除去部1232を設けることで装飾部分β′を含まない正しい靴の輪郭が取得される。
【0023】
図3(D)の例では、靴画像取得部11が取得した画像において一対の靴が密着している。一対の靴の間には両者を隔てる境界線γが存在するが、画像では明確に確認できない。このままでは一対の靴が一つの靴と認識されて誤った輪郭が取得されてしまう可能性がある。靴分離部1233は、靴の輪郭を取得する際に、画像では視認できない境界線γ′を付加し、当該境界線γ′によって一対の靴を個々の靴に分離する。そして、分離された個々の靴について正しい輪郭を取得する。
【0024】
以上のように靴輪郭取得部123が取得した靴の輪郭は、後述する靴メタデータ生成部14における寸法生成部141の処理において特に有用である。靴の寸法を画像から認識する際には靴の輪郭またはシルエットがあれば十分であり、それ以外の情報が含まれていると寸法を誤認識する可能性があるためである。同様に、靴輪郭取得部123が取得した靴の輪郭は、後述する靴メタデータ生成部14における形状生成部142が靴の形状を画像から認識する際にも有用である。一方、靴メタデータ生成部14におけるタイプ生成部143が靴のタイプを画像から認識する際には、靴の輪郭も有用な情報ではあるが、それ以外の情報、例えば
図3(B)のような装飾物αや
図3(C)のような背景物βも有用である。このため、靴画像処理部12は、靴輪郭取得部123が取得した輪郭に加えて、輪郭取得前の元画像も靴メタデータ生成部14に提供するのが好ましい。
【0025】
画像統合部124は、靴画像取得部11が一つの靴について視点の異なる複数の画像を取得した場合、それらを任意の態様で統合する。例えば、画像統合部124は、当該複数の画像を合成して靴の三次元画像または三次元モデルを生成してもよいし、当該複数の画像が同一の靴に関するものであることを示す識別子やタグを各画像データに付加してもよい。
【0026】
靴情報取得部13は、靴検索システム100に登録される靴に関する情報をデータベース200等から取得する。後述するようにデータベース200には多種多様な靴情報220が保持されており、靴情報取得部13はその中から靴メタデータ生成部14の処理に有用な任意の靴情報を抽出する。例えば、靴情報取得部13は、登録対象の靴が販売されているウェブサイト(データベース200の一部を構成する)から、靴のブランド、製造者、販売者、名称、シリーズ名、商品コード、品番、色、長さ(サイズ)、幅、高さ、素材、特徴、機能、用途、カテゴリ、タイプ、製造地域、商品説明等の各種の靴情報220を取得できる。なお、このようなウェブサイトに掲載されている靴の画像は、靴画像取得部11による取得対象となる。また、登録対象の靴が既に靴検索システム100に登録されている場合、靴情報取得部13は靴検索システム100のウェブサイトやデータベースから靴情報を取得してもよい。この場合、靴自体は靴検索システム100に登録済であるが、靴メタデータ生成部14によって新たに生成される靴のメタデータが新たに靴検索システム100に登録される。
【0027】
靴メタデータ生成部14は、靴画像取得部11が取得して靴画像処理部12が処理した靴の画像から靴に関するメタデータを生成する。具体的には、靴メタデータ生成部14は、靴の画像から靴の寸法に関するメタデータを生成する寸法生成部141と、靴の画像から靴の形状に関するメタデータを生成する形状生成部142と、靴の画像から靴のタイプに関するメタデータを生成するタイプ生成部143を備える。また、靴メタデータ生成部14は、各種のメタデータを生成する際に、靴情報取得部13が取得した靴情報220等も参照する。
【0028】
寸法生成部141は、靴の画像から靴の幅に関するメタデータを生成する幅生成部1411を備える。具体的には、幅生成部1411は、
図3に示したような靴輪郭取得部123が取得した靴の輪郭またはシルエットに基づいて、靴の幅を推定する。幅生成部1411が推定する靴の幅は「85mm」等の具体的な数値でもよいし、所定の基準に従って区分された靴の幅の範囲を表すコードでもよい。後者の例としては、日本工業規格において足幅と足囲の比率に従って区分された「A」~「EEEEEE」等のコードが知られている。
【0029】
幅生成部1411が靴の幅を推定する際、靴情報取得部13が取得した靴の長さを参照することで、
図3の靴のシルエットの上下方向の寸法が正確に分かるため、シルエットの左右方向の寸法である靴の幅を正確に推定できる。また、上記の「A」~「EEEEEE」等のコードは、靴のブランド、製造者、シリーズ(名)、素材、用途、製造地域等によってばらつくこともあるが(例えば、同じ「85mm」の幅の靴であっても異なるコードが付与されうる)、これらの靴情報220を靴情報取得部13から得ることで、幅生成部1411はブランド毎等のばらつきを加味した(あるいは除去した)一貫性のあるコードを生成できる。
【0030】
なお、幅生成部1411は、靴の複数箇所(例えば、前部、中央部、後部)の幅を推定してもよい。また、寸法生成部141は靴の幅に限らず、靴の任意の箇所の任意の方向の寸法を靴の画像から推定してもよい。例えば、
図2(I)の右側のような側面画像があれば、靴の高さや履き口の前後寸法を高精度に推定できる。靴の幅やその他の箇所の寸法は、一般的な靴検索システム100には全く登録されていない、または、検索に利用可能な一貫性のある態様で登録されていないが、靴検索システム100で靴を検索するユーザの足に適合する靴を提示または推薦する上では極めて有用な情報である。本実施形態によれば、このような有用なメタデータを靴の画像から生成して靴検索システム100に登録できるため、靴検索システム100のユーザにとっての利便性を著しく向上させることができる。
【0031】
形状生成部142は、靴の画像から靴の先端形状に関するメタデータを生成する先端形状生成部1421を備える。具体的には、先端形状生成部1421は、
図3に示したような靴輪郭取得部123が取得した靴の輪郭またはシルエットに基づいて、靴の先端形状を推定する。先端形状生成部1421が推定する靴の先端形状としては、例えば、「丸い(round)」「尖っている(pointed)」「アーモンド形(almond)」「オープン形(open)」「スクエア形(square)」が例示される。先端形状生成部1421が靴の先端形状を推定する際、靴情報取得部13が取得した靴のブランド、シリーズ名、商品コード、カテゴリ、タイプ、商品説明等の靴の先端形状を示唆しうる靴情報220を参照することで、推定精度を高めることができる。なお、形状生成部142は靴の先端形状に限らず、靴の任意の箇所の形状を靴の画像から推定してもよい。
【0032】
タイプ生成部143は、靴の画像から靴のタイプに関するメタデータを生成する。具体的には、タイプ生成部143は、
図2に示したような靴画像取得部11が取得した靴の画像および/または
図3に示したような靴輪郭取得部123が取得した靴の輪郭またはシルエットに基づいて、靴の特徴を認識して所定の基準に従って靴のタイプまたはカテゴリを推定する。なお、寸法生成部141が推定した靴の寸法や形状生成部142が推定した靴の形状も靴の特徴を表すため、タイプ生成部143はこれらの推定データを参照しながら靴のタイプを推定してもよい。
【0033】
タイプ生成部143が推定する靴のタイプは「スニーカー」「スポーツシューズ」「ビジネスシューズ」「ローファー」「カジュアルシューズ」「ブーツ」「アウトドアシューズ」「サンダル」「パンプス」「ドレスシューズ」等の靴の種別でもよいし、靴の特徴に基づいて任意に設定された類型またはカテゴリ(例えば、靴の幅に基づく「細い(thin)」「普通(normal)」「広い(wide)」等の類型)でもよい。タイプ生成部143が靴のタイプを推定する際、靴情報取得部13が取得した靴のブランド、製造者、販売者、名称、シリーズ名、商品コード、品番、素材、特徴、機能、用途、カテゴリ、タイプ、商品説明等の靴のタイプまたは特徴を示唆しうる靴情報220を参照することで、推定精度を高めることができる。
【0034】
以上の寸法生成部141、形状生成部142、タイプ生成部143の全部または一部の機能は、機械学習可能な人工知能によって構成された靴メタデータ生成部14によって実現できる。すなわち、以上で説明した各生成部141~143の推定処理に相当する網羅的な教師データまたは訓練データによって訓練された靴メタデータ生成部14は、寸法生成部141に相当する寸法推定、形状生成部142に相当する形状推定、タイプ生成部143に相当するタイプ推定を高精度かつ自律的に実行できる。
【0035】
靴メタデータ生成部14は、以上のような各種の靴のメタデータを靴画像取得部11が取得した画像から生成して靴検索システム100に登録する。なお、靴画像取得部11が取得した靴の画像の全部または一部自体も靴のメタデータとして靴検索システム100に登録してもよい。本実施形態の靴データ生成装置1が生成するこれらのメタデータは、従来の靴検索システム100には全く登録されていない、または、検索に利用可能な一貫性のある態様で登録されていなかった。本実施形態によれば、靴検索システム100で靴を検索するユーザの足に適合する靴を提示または推薦する上で極めて有用なこれらのメタデータを、靴の画像から生成して靴検索システム100に登録できるため、靴検索システム100のユーザにとっての利便性を著しく向上させることができる。
【0036】
図4は、靴検索システム100を示す機能ブロック図である。靴検索システム100は、入力部31の入力に基づき、データベース200に記録される各種のデータに基づいて靴の検索を行い、その結果を表示部32に表示させるシステムである。靴検索システム100は、参照商品指定部としての参照靴指定部101と、メタデータ取得部102と、類似商品検索部としての類似靴検索部103と、類似スコア付与部104と、寸法情報取得部105と、販売促進情報取得部106と、表示制御部107を備える。これらの各機能ブロックは、単一の電子機器に実現されてもよいし、複数の電子機器に分散して実現されてもよい。また、これらの各機能ブロックを実現する電子機器は、ユーザが使用するスマートフォン、タブレット、コンピュータ等でもよいし、インターネット等の情報通信ネットワークを介してユーザが使用する電子機器と通信可能なサーバ等の遠隔の電子機器でもよい。また、入力部31および表示部32は、典型的にはユーザが使用する単一の電子機器に実現されるが、複数の電子機器に分散して実現されてもよい。
【0037】
データベース200は、靴検索システム100の各機能ブロックが実現される電子機器のストレージや、それらと情報通信ネットワークを介して通信可能な他の電子機器のストレージに整理されて記録される情報の集合である。データベース200には任意のデータを記録できるが、靴検索システム100が主に利用するのは、ユーザ情報210と靴情報220の二種類のデータである。
【0038】
ユーザ情報210は、基本情報211と、寸法情報212と、靴箱213と、行動情報214と、その他メタデータ215を含む。基本情報211は、性別、年齢、身長、体重等のユーザの基本的な情報であり、ユーザが入力部31を介してマニュアルで入力する。これらの基本情報211が既に登録されている別のサービスがある場合は、そこからコピーしてもよい。
【0039】
寸法情報212は、ユーザが靴を着用する足の各部位の寸法情報である。足の各部位の寸法に代えてまたは加えてユーザの足を撮影した画像データを寸法情報212として記録してもよい。この場合、画像データの解析によって足の各部位の寸法を演算により求めることができる。なお、後述するように、本実施形態では、ユーザが指定した参照靴の寸法情報222で、ユーザの寸法情報212を代替できるため、ユーザの寸法情報212の記録は任意である。したがって、煩雑な採寸を避けられる。ユーザが指定した一または複数の参照靴の寸法情報222に基づき、ユーザの寸法情報212を推定して記録してもよい。
【0040】
靴箱213は、後述する参照靴指定部101で指定できるように、ユーザがお気に入りの靴を入力部31を介して予め登録する。登録する靴の詳細な情報はデータベース200の靴情報220で入手できるため、靴箱213への登録の際は、ブランド、製品名、サイズ、色等の、靴を特定できる最低限の情報を入力すればよい。なお、典型的にはユーザが実際に保有する靴を靴箱213に登録することが想定されるが、ユーザが保有していない靴を靴箱213に登録してもよい。例えば、有名なファッションモデルやアスリートが着用する高価な靴を靴箱213に登録することで、それとデザイン等が類似する安価な靴を検索できる。ユーザが検索中に気になった未購入の靴を、靴箱213に登録してもよいし、後述する参照靴として直接指定してもよい。また、次に述べる行動情報214として、靴の購買や閲覧の履歴など、ユーザのお気に入りの靴に関する情報が含まれている場合は、靴箱213の登録画面(表示部32)において、これらの靴を候補として表示させてもよい。
【0041】
行動情報214は、ユーザの過去の行動に関する情報であり、靴検索システム100におけるユーザの行動や、靴検索システム100に付随する図示しない靴購買システムにおけるユーザの行動が自動的に記録される。例えば、靴の検索、靴の閲覧、靴の比較、靴の購買、ウェブページ内のクリック等に関するユーザの行動が記録される。その他メタデータ215には、上記の各情報211~214に含まれない、ユーザに関する任意の情報を記録できる。例えば、ユーザが靴を選ぶ際に重視する点や、ユーザが靴に求める要望事項を記録できる。以上のような多様なユーザ情報210を利用することで、靴検索システム100は、ユーザに合った靴を効率的に検索できる。
【0042】
靴情報220は、商品として販売されている膨大な数の靴に関する情報であり、情報通信ネットワークを介して収集されて自動的に記録される。靴情報220の一部または全部は、靴検索システム100の管理者がマニュアルで記録してもよい。各靴の靴情報220は、基本情報221と、寸法情報222と、デザイン情報223と、販売情報224と、その他メタデータ225を含む。
【0043】
基本情報221は、靴の基本的な情報であり、商品ID、商品名、商品カテゴリ、ブランド、性別、商品詳細ページのURL等が含まれる。寸法情報222は、靴の長さや幅等の寸法情報である。デザイン情報223は、靴のデザインに関する情報であり、色、形状、模様等が含まれる。デザイン情報223は、靴を撮影した画像データとして記録してもよい。この場合、画像データの解析によって定量化したデザインの各要素の比較に基づき、靴検索システム100は類似デザインの靴を検索できる。
【0044】
販売情報224は、靴の販売に関する情報であり、販売店ID、販売店名、販売価格、販売開始日、割引や特典等の販売促進情報等が含まれる。販売情報224の一部または全部は、各販売店の担当者や靴検索システム100の管理者がマニュアルで記録してもよい。その他メタデータ225には、上記の各情報221~224に含まれない、靴に関する任意の情報を記録できる。例えば、靴の素材、その素材の性質(透明性、伸縮性など)、靴の製法、靴のスタイルや履き心地に関するタグを記録できる。
【0045】
図1の靴メタデータ生成部14で生成された靴のメタデータは、靴情報220の一部として靴検索システム100のデータベース200に記録される。例えば、寸法生成部141が生成した靴の幅等の寸法情報は寸法情報222として記録され、形状生成部142が生成した靴の先端形状等の形状情報はデザイン情報223として記録され、タイプ生成部143が生成した靴のタイプ情報はデザイン情報223および/またはその他メタデータ225として記録される。以上のような多様な靴情報220を利用することで、靴検索システム100は、膨大な数の靴の中からユーザに合った靴を効率的に検索できる。
【0046】
続いて、靴検索システム100の各機能ブロック101~107について順番に説明する。参照靴指定部101は、ユーザの入力部31の入力に基づき、既存の靴を参照靴(参照商品)として指定する。前述したように、ユーザは靴箱213に予め登録した靴の中から参照靴を指定できる。靴箱213を用いずに、商品として販売されている任意の靴を、参照靴として直接的に指定してもよい。この場合、ユーザは、その製品を特定するための最小限の情報(ブランド、製品名、サイズ、色等)を入力部31で入力すればよい。メタデータ取得部102は、参照靴のメタデータを取得する。すなわち、メタデータ取得部102は、参照靴指定部101で指定された参照靴についての靴情報220に含まれる各種のメタデータ221~225を取得する。
【0047】
類似靴検索部103は、メタデータの類似性に基づき、参照靴と類似の靴を検索する。すなわち、類似靴検索部103は、メタデータ取得部102で取得された参照靴のメタデータ221~225に基づき、これらと類似するメタデータ221~225を有する靴を検索する。この類似靴の検索における類否判断の基準は、利用可能なメタデータ221~225を組み合わせて任意に設定できる。例えば、各メタデータを定量化し、それらを参照靴と検索対象靴の間で比較すれば、両靴の類似度を演算できる。この類似度の演算において、各メタデータの重要度に応じて重みづけしてもよい。全く考慮すべきでないメタデータについては、重みを0とすることで類似度の演算から除外できる。
【0048】
このような靴の類似度の演算において、寸法情報222の重みを他のメタデータに比べて大きく設定すれば、参照靴と類似の寸法の靴を効率的に検索できる。ユーザが実際に着用したことがあり、自身の足にフィットしていると感じた靴を参照靴として指定すれば、同様のフィット感の靴を簡単に見つけることができる。この際、ユーザは自身の足の採寸をする必要がなく、参照靴を指定するだけでよいので手間がかからない。また、実際のフィット感が高い靴を参照靴としたことで、参照靴の寸法情報222がユーザの寸法情報212を高精度に表したものとなる。すなわち、ユーザの足の採寸を行うことなく、ユーザ足の寸法情報212が高精度に得られる。
【0049】
また、靴の類似度の演算において、デザイン情報223の重みを他のメタデータに比べて大きく設定すれば、参照靴と類似のデザインや形状の靴を効率的に検索できる。同様に、各メタデータの重みを適宜設定することで、参照靴と類似のブランド、参照靴と類似の販売価格、参照靴と類似の素材、参照靴と類似の製法、参照靴と類似のスタイル、参照靴と類似の履き心地、等の各種の類似靴を効率的に検索できる。このような重みづけにおいて、複数のメタデータに大きな重みを設定してもよい。例えば、寸法情報222と素材(その他メタデータ225)の重みを大きく設定すれば、参照靴と類似の寸法および素材の靴を効率的に検索できる。
【0050】
また、以上のような様々な類否判断の基準は、ユーザの入力部31を介した選択に応じて切り替えて適用してもよい。例えば、入力部31を構成するスマートフォン等の画面(タッチパネル)上に、寸法情報222の重みを大きくした「サイズ重視」の検索を行うボタンと、デザイン情報223の重みを大きくした「デザイン重視」の検索を行うボタンを並置し、ユーザの各ボタンの押下操作に応じて、実行する検索を切り替えてもよい。
【0051】
類似スコア付与部104は、類似靴検索部103が検索した靴について、参照靴との類似性または寸法情報取得部105で取得されるユーザの寸法情報との類似性に基づく類似スコアを付与する。類似スコアは、例えば、0から10の間のスコアで表され、類似性が高い靴ほど高いスコアが付与される。スコアの最小値、最大値、刻み幅は任意に設定できる。スコアは、0%~100%の間の百分率で表してもよい。この類似スコアは、類似靴検索部103の類否判断の基準に応じて変化する。したがって、ユーザの選択に応じて類否判断の基準が切替可能な場合は、付与される類似スコアもユーザの選択に応じて切り替わる。また、ユーザの選択に応じて、参照靴との類似性に基づく類似スコアと、ユーザの寸法情報との類似性に基づく類似スコアを切り替えて表示部32に表示してもよい。
【0052】
寸法情報取得部105は、類似靴の検索結果を表示部32に表示させる際に考慮するため、ユーザの寸法情報212を取得する。前述の通り、参照靴としてユーザの足にフィットした靴が指定されている場合は、参照靴の寸法情報222をユーザの寸法情報212の代わりに取得してもよい。販売促進情報取得部106は、類似靴の検索結果を表示部32に表示させる際に考慮するため、類似靴検索部103が検索した靴の販売促進情報を取得する。前述の通り、販売促進情報は販売情報224に含まれている割引や特典等の情報である。
【0053】
表示制御部107は、類似靴検索部103の検索結果を表示部32に表示させる。その際、類似スコア付与部104で付与された類似スコアが各靴とともに表示される。また、参照靴との類似性の高い靴、寸法情報取得部105で取得された寸法情報との類似性の高い靴、販売促進情報取得部106で取得された販売促進情報を含む靴の表示順を先にする等の優先表示が行われる。
【0054】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0055】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 靴データ生成装置、11 靴画像取得部、12 靴画像処理部、13 靴情報取得部、14 靴メタデータ生成部、100 靴検索システム、121 平面画像特定部、123 靴輪郭取得部、141 寸法生成部、142 形状生成部、143 タイプ生成部、200 データベース、220 靴情報、1411 幅生成部、1421 先端形状生成部。