(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068503
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】ポリエチレン延伸基材フィルム及び包装材料
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20230510BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230510BHJP
B65D 65/40 20060101ALN20230510BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 H
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179670
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】細見 将吾
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB85
4F100AK04C
4F100AK05A
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4F100BA04
4F100BA06
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4F100EJ37
4F100GB15
4F100JA03B
4F100JA06A
4F100JA06B
4F100JA07A
4F100JA07B
4F100JA13A
4F100JK06
4F100JK07
4F100JK10
4F100JL12C
(57)【要約】
【課題】 ポリエチレンモノマテリアル包装材における基材として好適なポリエチレン樹脂積層体、及びそれを用いたポリエチレン延伸基材フィルム、及びそれを用いた樹脂積層体と包装材料を提供する。
【解決手段】 少なくともポリエチレン延伸基材フィルムとポリエチレンシーラントフィルムを有するポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体のポリエチレン延伸基材フィルムに用いるポリエチレン樹脂積層体であって、少なくとも3層以上の層構造を有し、少なくとも1方向に延伸されており、該樹脂積層体の層のうちポリエチレンシーラントに向かい合う最表面の層(1a)と、その反対側の最表面の層(2a)は、特定の要件を満たす高密度ポリエチレン樹脂組成物(A)を含む層であり、中間層は特定の要件を満たす直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物(B)を含む層である、ポリエチレン延伸基材フィルムである。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリエチレン延伸基材フィルムとポリエチレンシーラントフィルムを有するポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体のポリエチレン延伸基材フィルムに用いるポリエチレン樹脂積層体であって、少なくとも3層以上の層構造を有し、少なくとも1方向に延伸されており、該樹脂積層体の層のうちポリエチレンシーラントに向かい合う最表面の層(1a)と、その反対側の最表面の層(2a)は、高密度ポリエチレン樹脂組成物(A)を含む層であり、中間層は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物(B)を含む層であり、(A)と(B)が以下の要件を満たすことを特徴とする、ポリエチレン延伸基材フィルム。
(A)
(a-1)密度が0.945~0.970g/cm3
(a-2)温度190℃、荷重2.16kgでのメルトフローレイト(MFR)が0.1~20g/10min
(a-3)GPC(Gel Permeation Clomatography)から求めた数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比である分子量分布(Mw/Mn)が1.5~10
(B)
(b-1)密度が0.870~0.915g/cm3
(b-2)温度190℃、荷重2.16kgでのMFRが0.1~20g/10min
(b-3)キャピログラフから求めた溶融張力(MT)が5.0g以下
(b-4)GPCから求めた数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比である分子量分布(Mw/Mn)が1.5~10
(b-5)GPCにより算出された1000Cあたりの短鎖分岐数と式(a)を用いて計算したSCB指数が1.02以上
式(a)SCB指数=(log5.2での短鎖分岐数)/(log4.2での短鎖分岐数)
【請求項2】
インフレーション成形もしくはTダイ成形にて得られたポリエチレン樹脂積層体を、機械方向(MD)に5倍以上延伸して得られることを特徴とする、請求項1に記載のポリエチレン延伸基材フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載のポリエチレン延伸基材フィルムの機械方向(MD)の弾性率をEM、直交方向(TD)の弾性率をETとしたとき、EMが1500MPa以上、ETが1000MPa以上であることを特徴とする、ポリエチレン延伸基材フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエチレン延伸基材フィルムのダートドロップインパクト試験が30g以上であることを特徴とする、ポリエチレン延伸基材フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエチレン延伸基材フィルムのヒートシール強度試験において、シール温度140℃でのシール強度が5N/15mm以下であることを特徴とする、ポリエチレン延伸基材フィルム。
【請求項6】
インフレーション成形もしくはTダイ成形にて得られたポリエチレン樹脂積層体を、MD及びTDに2倍以上延伸して得られる、請求項1に記載のポリエチレン延伸基材フィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリエチレン延伸基材フィルムからなる層を含む樹脂積層体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリエチレン延伸基材フィルムからなる層を基材として含み、シーラントフィルムを含む、請求項7に記載の樹脂積層体。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリエチレン延伸基材フィルムからなる層を基材として含み、ポリエチレンシーラントフィルムを含む、請求項7又は8に記載の樹脂積層体。
【請求項10】
樹脂積層体を構成する層が、すべてポリエチレン系樹脂組成物で構成されたポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体であることを特徴する、請求項7~9のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリエチレン延伸基材フィルムを用いた包装材料。
【請求項12】
請求項7~10のいずれか一項に記載の樹脂積層体を用いた包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエチレンモノマテリアル包材において、剛性―強度バランスに優れたポリエチレン延伸基材フィルムやこれを用いた包装材料、さらにそのポリエチレン延伸基材フィルムを含む樹脂積層体、該積層体から構成される包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材の基本的な構成の一つとして基材フィルムとシーラントフィルムを接着剤で貼り合わせるものがある。このうち、シーラントフィルムは適度な柔軟性、透明性、ヒートシール性に優れたポリエチレン樹脂組成物からなるフィルムが広く使用されている。他方、基材層には剛性、耐衝撃性、耐熱性の観点からポリエステル樹脂組成物又はポリアミド樹脂組成物からなるフィルムを延伸したフィルムが使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、高いリサイクル性を有する包装材が求められている。しかしながら、従来の包装材は上記で示したように異種の樹脂材料から構成されており、樹脂材料ごとに分離するのが困難であるため、リサイクルされていないのが現状である。
【0004】
高いリサイクル性を持たせる方法として、全て同一の樹脂材料からなる包装材(モノマテリアル包装材)を構成することが挙げられる。ポリエチレン樹脂組成物は包装材の原料として広く使用されているため、基材フィルムもシーラントフィルムもポリエチレン樹脂組成物からなるフィルムで構成されたモノマテリアル包装材は、循環型社会を実現するリサイクル性の高い包装材として期待されている。
【0005】
ポリエチレンモノマテリアル包装材の構成の1つとしてポリエチレン基材フィルムとポリエチレンシーラントフィルムを積層した構造が挙げられる。しかしながら、ポリエチレン樹脂組成物からなるフィルムを基材として使用する場合、インフレーション成形法又はTダイ成形法で得られたフィルムをそのまま使用すると包装材料の衝撃強度が不足するばかりか、剛性不足により印刷した際にフィルムが伸びてしまい、画像がずれる。これを補うため、ポリエチレン樹脂組成物をインフレーション成形法又はTダイ成形法で成形し得られたフィルムを延伸して得られる、ポリエチレン延伸基材フィルムを使用する。
【0006】
ポリエチレン延伸フィルムとして例えば、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)をブレンドした樹脂組成物をインフレーション成形で原反を製造し、熱ロール延伸で得られるポリエチレン延伸フィルム(特許文献2参考)や、HDPEとLLDPEを含む樹脂組成物をシート成形し、これを横1軸延伸することで得られるポリエチレン延伸フィルム(特許文献3参考)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-202519号公報
【特許文献2】特開2005-89693号公報
【特許文献3】特許第5069423号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2のポリエチレン延伸フィルムはシュリンク包装フィルムの用途、特許文献3はひねり包装フィルムの用途であって、基材フィルムの用途ではなかった。加えて、これら特許文献記載のフィルムでは、ポリエチレン延伸基材フィルムに必要な剛性と強度が不足しており、この2つの物性バランスが良いフィルムを開発することが望まれていた。
本発明の目的はポリエチレンモノマテリアル包装材における基材として好適なポリエチレン樹脂積層体、及びそれを用いたポリエチレン延伸基材フィルム、及びそれを用いた樹脂積層体と包装材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定の条件を満たす高ポリエチレン樹脂組成物積層することで上記の課題を解決可能な特性を示すことを見出し、これらの知見に基づいて発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明[1]によれば、少なくともポリエチレン延伸基材フィルムとポリエチレンシーラントフィルムを有するポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体のポリエチレン延伸基材フィルムに用いるポリエチレン樹脂積層体であって、少なくとも3層以上の層構造を有し、少なくとも1方向に延伸されており、該樹脂積層体の層のうちポリエチレンシーラントに向かい合う最表面の層(1a)と、その反対側の最表面の層(2a)は、高密度ポリエチレン樹脂組成物(A)を含む層であり、中間層は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物(B)を含む層であり、(A)と(B)が以下の要件を満たすことを特徴とする、ポリエチレン延伸基材フィルムが提供される。
(A)
(a-1)密度が0.945~0.970g/cm3
(a-2)温度190℃、荷重2.16kgでのメルトフローレイト(MFR)が0.1~20g/10min
(a-3)GPC(Gel Permeation Clomatography)から求めた数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比である分子量分布(Mw/Mn)が1.5~10
(B)
(b-1)密度が0.870~0.915g/cm3
(b-2)温度190℃、荷重2.16kgでのMFRが0.1~20g/10min
(b-3)キャピログラフから求めた溶融張力(MT)が5.0g以下
(b-4)GPCから求めた数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比である分子量分布(Mw/Mn)が1.5~10
(b-5)GPCにより算出された1000Cあたりの短鎖分岐数と式(a)を用いて計算したSCB指数が1.02以上
式(a)SCB指数=(log5.2での短鎖分岐数)/(log4.2での短鎖分岐数)
【0011】
また本発明[2]によれば、インフレーション成形もしくはTダイ成形にて得られたポリエチレン樹脂積層体を、機械方向(MD)に5倍以上延伸して得られることを特徴とする、前記[1]記載のポリエチレン延伸基材フィルムが提供される。
【0012】
また本発明[3]によれば、前記[1]又は[2]記載のポリエチレン延伸基材フィルムの機械方向(MD)の弾性率をEM、直交方向(TD)の弾性率をETとしたとき、EMが1500MPa以上、ETが1000MPa以上であることを特徴とする、ポリエチレン延伸基材フィルムが提供される。
【0013】
また本発明[4]によれば、前記[1]~[3]のいずれか記載のポリエチレン延伸基材フィルムのダートドロップインパクト試験が30g以上であることを特徴とする、ポリエチレン延伸基材フィルムが提供される。
【0014】
また本発明[5]によれば、前記[1]~[4]のいずれか記載のポリエチレン延伸基材フィルムのヒートシール強度試験において、シール温度140℃でのシール強度が5N/15mm以下であることを特徴とする、ポリエチレン延伸基材フィルムが提供される。
【0015】
また本発明[6]によれば、インフレーション成形もしくはTダイ成形にて得られたポリエチレン樹脂積層体を、MD及びTDに2倍以上延伸して得られる、前記[1]記載のポリエチレン延伸基材フィルムが提供される。
【0016】
また本発明[7]によれば、前記[1]~[6]のいずれか記載のポリエチレン延伸基材フィルムからなる層を含む樹脂積層体が提供される。
【0017】
また本発明[8]によれば、前記[1]~[6]のいずれか記載のポリエチレン延伸基材フィルムからなる層を基材として含み、シーラントフィルムを含む、前記[7]記載の樹脂積層体が提供される。
【0018】
また本発明[9]によれば、前記[1]~[6]のいずれか記載のポリエチレン延伸基材フィルムからなる層を基材として含み、ポリエチレンシーラントフィルムを含む、前記[7]又は[8]に記載の樹脂積層体が提供される。
【0019】
また本発明[10]によれば、樹脂積層体を構成する層が、すべてポリエチレン系樹脂組成物で構成されたポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体であることを特徴する、前記[7]~[9]のいずれか記載の樹脂積層体が提供される。
【0020】
また本発明[11]によれば、前記[1]~[6]のいずれか記載のポリエチレン延伸基材フィルムを用いた包装材料が提供される。
【0021】
また本発明[12]によれば、前記[7]~[10]のいずれか記載の樹脂積層体を用いた包装材料が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のポリエチレン樹脂積層体は、延伸性、耐熱性に優れ、剛性と強度のバランスに優れたポリエチレン延伸基材フィルムを提供することができる。このようなポリエチレン延伸基材フィルムの表面への印刷も可能であるため、該延伸基材フィルムを包装材の基材として用いて、ポリエチレンシーラントフィルムと貼り合わせて使用することで、リサイクル性の高い包装材料、特に単一素材で構成された、モノマテリアルの積層体及び包装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例1-1、比較例1-1のGPC曲線を表す。
【
図2】実施例1-2、比較例1-2、比較例1-3、比較例1-4のGPC曲線を表す。
【
図3】実施例1-2、比較例1-2、比較例1-3、比較例1-4のSCB曲線を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.ポリエチレン樹脂組成物
本発明におけるポリエチレン樹脂組成物とは、ポリエチレン延伸基材フィルムやポリエチレンシーラントフィルムの原料として用いる樹脂組成物であって、ポリエチレン樹脂単体又はそのポリエチレン樹脂混合物の両方を意味し、それに必要な添加剤を加えていてもよい。
【0025】
・ポリエチレン樹脂組成物の重合触媒及び重合方法
ポリエチレン樹脂組成物を構成するためのポリエチレン樹脂は、石油原料を由来とするエチレンとバイオマス原料を由来とするエチレンのどちらか、又はその両方を原料として、チーグラー・ナッタ触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の金属触媒などの従来公知の触媒を用いて製造される。一般にこれらの触媒は有機金属化合物で構成された錯体を、シリカやMg化合物などの担体に担持された状態である。
【0026】
重合方法は、高圧法、溶液法、スラリー法、気相法のいずれかが挙げられる。高圧法は酸素、過酸化物などのラジカル発生源、もしくは金属錯体からなる触媒を開始剤とし、反応容器にエチレン、コモノマー、開始剤を投入し高温高圧の条件下で重合を行う方法である。反応容器の形によってチューブラー法とオートクレーブ法にさらに分けることができる。溶液法は、ポリマーの融点以上の温度で炭化水素溶媒中にポリマーが溶解した状態で行う重合法である。スラリー法は溶媒にヘキサン又はイソブタンなどの炭化水素化合物を用い、生成したポリエチレンがスラリーとして溶媒中に存在する重合方法である。反応容器の形状によって、オートクレーブ法とループパイプ法の2つに大別される。気相法はたて型の反応容器の下部からエチレンとコモノマーとしてα-オレフィン、連鎖移動剤として水素をガスの状態でフィードし、そこへ重合触媒を投入する重合方法である(編著:松浦一雄、三上尚孝/ポリエチレン技術読本より)。本発明のポリエチレン樹脂組成物としては金属触媒を用いて重合されたものが好ましい。
【0027】
これらの製法により得られるポリエチレン樹脂組成物は、従来知られている様々な用途に応じるために、広い範囲において様々な密度、メルトフローレイト(MFR)、そのほか樹脂物性の組み合わせを有するが、その中でも、本発明の要件を満たすポリエチレン樹脂組成物を選択し、用いることを特徴とする。
【0028】
・ポリエチレン樹脂組成物のコモノマー組成
ポリエチレン樹脂組成物は、エチレン単独重合体、又はエチレンと炭素数3~18のα-オレフィンから選ばれる一種以上のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。この炭素数3~18のα-オレフィンとしては、好ましくは炭素数3~12のものであり、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。また、これらのα-オレフィンの含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。この範囲であれば、フィルムなどの柔軟性と耐熱性が良好になる。
ここでα-オレフィンの含有量は、下記の条件の13C-NMR法によって計測される値である。
装置:日本電子製 JEOL-GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
【0029】
2.ポリエチレン延伸基材フィルム
本発明の要件に係るポリエチレン延伸基材フィルムとは、ポリエチレン樹脂組成物をインフレーション成形又はTダイ成形にて得られたフィルムを、延伸して得られるフィルムであって、樹脂積層体の基材として用いる延伸フィルムのことを意味する。
【0030】
・原反製造方法と製造条件
ポリエチレン延伸基材フィルムは原反を延伸することで得られる。原反の製造方法としてインフレーション成形、Tダイ成形法又はカレンダー成形法が挙げられるが、生産速度、製造のしやすさなどの観点からインフレーション成形又はTダイ成形法が好ましい。また原反の製造条件は特に限定されるものではないが、原反フィルムの厚みは20μm~200μが好ましい。より好ましくは30μm~200μmであり、さらに好ましくは50μm~200μmである。
【0031】
・層構成
本発明の要件に係るポリエチレン延伸基材フィルムは所定の樹脂物性を持つ複数のポリエチレン樹脂組成物を用いて3層以上の多層構成にすることを必須とする。3層構成である場合、本発明の要件に係る高密度ポリエチレン樹脂組成物を(A)、直鎖低密度ポリエチレン樹脂組成物を(B)としたとき、(A)/(B)/(A)であることが必須である。このときの層(A)のいずれかは、ポリエチレンシーラントに向かい合う最表面の層(又は「外層」ということがある)となる。もう一方の層(A)は、反対側の最表面の層(又は「内層」ということがある)となり、層(B)は中間層を構成する。3層よりも層の多い多層構成の場合、特に制限はないが、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)を組み合わせることができる。層構成としては5層の場合、(A)/MDPE/(B)/MDPE/(A)、(A)/LLDPE/(B)/LLDPE/(A)、(A)/ULDPE/(B)/ULDPE/(A)、(A)/(B)/(A)/(B)/(A)、(A)/(B)/HDPE/(B)/(A)、(A)/(B)/MDPE/(B)/(A)、(A)/(B)/LLDPE/(B)/(A)、(A)/(B)/ULDPE/(B)/(A)が挙げられる。これらの例から明らかなように、層(A)は中間層の一部に含まれていてもよいし、層(B)は中間層において他の樹脂層に区切られて複数の層を構成していてもよい。
【0032】
・高密度ポリエチレン樹脂組成物
本発明の要件に係るポリエチレン延伸基材フィルムに用いられる高密度ポリエチレン樹脂組成物(A)は、密度0.945~0.970g/cm3、190℃、2.16kg荷重でのメルトフローレイト(MFR)が0.1~20g/10min、GPC(Gel Permeation Clomatography)から求めた数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比である分子量分布(Mw/Mn)が1.5~10の範囲内にあることを必須とする。この範囲内でないとポリエチレン延伸フィルムの剛性や耐熱性が不足する、延伸の際に高倍率延伸ができず剛性が不足する等の問題があり、不適である。より好ましい範囲は密度が0.950~0.965g/cm3、MFRが0.5~10g/10min、Mw/Mnが3~9である。
【0033】
・直鎖低密度ポリエチレン樹脂組成物
本発明の要件に係るポリエチレン延伸基材フィルムに用いられる直鎖低密度ポリエチレン樹脂組成物(B)は密度0.870~0.915g/cm3、190℃、2.16kg荷重でのMFRが0.1~20g/10min、190℃でのキャピログラフで求めた溶融張力(MT)が5.0g以下、GPCから求めた数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比である分子量分布(Mw/Mn)が1.5~10、GPCにより算出された1000Cあたりの短鎖分岐数式(a)を用いて計算したSCB指数が1.02以上であることを必須とする。この要件を満たさない場合、ポリエチレン延伸基材フィルムの強度が足りないので好ましくない。またより好ましい範囲は密度が0.875~0.913g/cm3、MFRが0.5~10g/10min、Mw/Mnが3~9、MTが4.0g以下、SCB指数が1.03以上である。
式(a)SCB指数=(log5.2での短鎖分岐数)/(log4.2での短鎖分岐数)
【0034】
・樹脂ブレンド
本発明の要件に係るポリエチレン延伸基材フィルムに用いられる高密度ポリエチレン樹脂組成物又は直鎖低密度ポリエチレン樹脂組成物は、本発明の要件を満たすように他のポリエチレン樹脂組成物をブレンドしてもよい。ブレンドするポリエチレン樹脂組成物としてはHDPE、MDPE、LLDPE、LDPE、ULDPEが挙げられる。
【0035】
・添加剤
本発明の要件に係るポリエチレン延伸基材フィルムに用いられるポリエチレン樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に樹脂組成物用として用いられている添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、中和剤、アンチブロッキング剤、粘着付与剤、帯電防止剤、スリップ剤、核剤、発泡剤、架橋剤、バイオマス資源、生分解促進剤等が配合されてもよい。
【0036】
・延伸方法
本発明の要件に係るポリエチレン延伸基材フィルムとして特に限定されるわけではないが1軸延伸フィルムであっても、2軸延伸フィルムであってもよい。延伸方法は縦1軸延伸、横1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれかが使用可能であり、縦1軸延伸であることが好ましい。
【0037】
・縦延伸倍率
本発明の要件に係るポリエチレン延伸基材フィルムの機械方向(MD)の延伸倍率は、2倍以上15倍以下であることが好ましく、5倍以上10倍以下であることが好ましい。更に6倍以上とすると好ましい。ポリエチレン延伸基材フィルムのMDの延伸倍率を大きくすることにより、本発明の積層体の強度及び耐熱性を向上することができる。また、基材の透明性を向上することができるため、基材への印刷適性を向上することができる。これによりポリエチレン延伸基材フィルムの、ポリエチレンシーラントフィルムと接している側の表面に画像を形成した場合に、その視認性を向上させることができる。一方、ポリエチレン延伸基材フィルムのMDの延伸倍率の上限値は、特に制限されるものではないが、延伸フィルムの破断限界の観点からは15倍以下、更には10倍以下とすることが好ましい。
【0038】
・横延伸倍率
本発明の要件に係るポリエチレン延伸基材フィルムのTDの延伸倍率は、1.5倍以上であることが好ましく、さらに好ましくは2倍以上である。
ポリエチレン延伸基材フィルムのTDの延伸倍率を1.5倍以上とすることにより、本発明の積層体の強度及び耐熱性を向上することができる。また、基材の透明性を向上することができるため、基材への印刷適性を向上することができる。これによりポリエチレン延伸基材フィルムの、ポリエチレンシーラントフィルムと接している側の表面に画像を形成した場合に、その視認性を向上させることができる。一方、ポリエチレン延伸基材フィルムのTDの延伸倍率の上限値は、特に制限されるものではないが、延伸フィルムの破断限界の観点からは10倍以下とすることが好ましい。
【0039】
・二軸延伸倍率
本発明の要件に係るポリエチレン延伸基材フィルムを2軸延伸する場合には、MDとTDにそれぞれ1.5倍以上が好ましく、さらに好ましくは2倍以上である。
ポリエチレン延伸基材フィルムのMD、TDの延伸倍率を大きくすることにより、本発明の積層体の強度及び耐熱性を向上することができる。これによりポリエチレン延伸基材フィルムの、ポリエチレンシーラントフィルムと接している側の表面に画像を形成した場合に、その視認性を向上させることができる。一方、ポリエチレン延伸基材フィルムのMD及びTDそれぞれの延伸倍率の上限は特に制限されるものではないが、延伸フィルムの破断点限界の観点から、MD及びTDの延伸倍率の下限値を1.5倍、好ましくは2倍とし、MD延伸倍率とTD延伸倍率との積が50以下とすることが好ましい。
【0040】
・剛性
本発明の要件に係るポリエチレン延伸基材フィルムに用いられるポリエチレン樹脂組成物を用いてインフレーション成形又はTダイ成形して得られたフィルムを機械方向(MD)に5倍以上延伸して得られるフィルムにおいて、MDの弾性率をEM、MDに直交方向(TD)の弾性率をETとしたときに、EMが1500MPa以上、ETが1000MPa以上であることを必須とする。好ましくはEMが1600MPa以上、ETが1100MPa以上である。EM、MTが前文で示した値以下である場合、印刷やポリエチレンシーラントフィルムとのラミネートの際にポリエチレン延伸フィルムが伸びてしまい、印刷した画像がずれる、ラミネートの加工性が悪化するので好ましくない。
【0041】
・強度
本発明の要件に係るポリエチレン延伸基材フィルムに用いられるポリエチレン樹脂組成物を用いてインフレーション成形又はTダイ成形して得られたフィルムを機械方向(MD)に5倍以上延伸して得られるフィルムにおいて、ダートドロップインパクト(DDI)の値が30g以上であることを必須とする。好ましくは35g以上である。DDIが前文で示した値以下である場合、ポリエチレン延伸基材フィルムの強度が不足し、加工の際にタテ裂けしてしまう、包装材料として強度が不足するので好ましくない。なお、DDIとは既定の高さから任意の荷重の重錘(ダート)を落下させ、試験片の50%が破壊される破壊質量・強度を求める測定である。
【0042】
・耐熱性
本発明の要件に係るポリエチレン延伸基材フィルムは、140℃でのヒートシール強度試験においてシール強度が5N/15mm以下であることを必須とする。シール強度が要件を満たさない場合、ポリエチレン延伸基材フィルムを用いた包装材料を製袋する際、ヒートシールバーに基材が融着する場合があり、好ましくない。シール強度のさらに好ましい値は4N/15mm以下である。
【0043】
3.ポリエチレンシーラントフィルム
・使用するポリエチレン樹脂組成物
ポリエチレンシーラントフィルムとは、少なくとも1つ以上のポリエチレン樹脂組成物からなる層を含み、この層が融着することによってシールできることを特徴とするフィルムである。使用できるポリエチレン樹脂組成物は、特に制限はないが、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0044】
・添加剤
ポリエチレンシーラントフィルムに使用されるポリエチレン樹脂組成物には、シーラントフィルムとしての機能を損なわない範囲で、一般に樹脂組成物用として用いられている添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、中和剤、アンチブロッキング剤、粘着付与剤、帯電防止剤、スリップ剤、核剤、発泡剤、架橋剤、バイオマス資源、生分解促進剤等が配合されてもよい。
【0045】
・ポリエチレンシーラントフィルムの製造方法と製造条件
ポリエチレンシーラントフィルムの製造方法としては公知技術を使用することができる。具体的にはインフレーション成形、Tダイ成形、カレンダー成形が挙げられるが、好ましくはインフレーション成形、Tダイ成形である。またシーラントフィルムの厚みは特に限定されないが、10~200μmが好ましく、さらに好ましくは30~180μmである。
【0046】
・ポリエチレンシーラントフィルム構造
ポリエチレンシーラントフィルムは単層構造であっても多層構造であってもよい。単層構造の場合、ポリエチレン樹脂組成物を単体で用いてもよいし、他のポリエチレン樹脂組成物と混合して用いてもよい。多層構造の場合、上記の公知技術を使用し、共押成形で成形することが好ましく、また少なくとも3層以上であることが好ましい。
【0047】
4.その他
樹脂積層体を構成する層が、全てポリエチレン系樹脂で構成された樹脂積層体であってもよい。この樹脂積層体はモノマテリアル樹脂積層体として扱うことができる。モノマテリアル樹脂積層体中の主たる成分の割合について、特に制限されるものではないが、好ましくは80重量%、より好ましくは90重量%である。
【0048】
・表面処理
ポリエチレン延伸基材フィルムとポリエチレンシーラントフィルムは表面処理が施されていることが好ましい。これにより、隣接する層との密着性を向上することができる。
表面処理の方法は特に限定されず、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス及び/又は窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理、並びに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
また、基材表面に従来公知のアンカーコート剤を用いて、アンカーコート層を形成してもよい。
【0049】
・印刷
ポリエチレン延伸基材フィルム又はポリエチレンシーラントフィルムの少なくとも一方の面に、文字、柄、記号等の画像が形成されていてもよい。画像の経時的な劣化を防止することができるため、ポリエチレン延伸基材フィルムとポリエチレンシーラントフィルムが向かい合う面に画像が形成されていることが好ましい。
画像の形成方法は、特に限定されるものではなく、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の従来公知の印刷法を挙げることができる。これらの中でも、環境負荷の観点から、フレキソ印刷法が好ましい。
【0050】
・蒸着膜
ポリエチレン延伸基材フィルム又はポリエチレンシーラントフィルムの少なくとも一方の面に蒸着膜を備えていてもよい。蒸着膜としては、アルミニウムなどの金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムなどの無機酸化物から構成される、蒸着膜を挙げることができる。
【0051】
また、蒸着膜の厚さは、1nm以上150nm以下であることが好ましく、5nm以上60nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。
蒸着膜の厚さを1nm以上とすることにより、本発明の積層体の酸素バリア性及び水蒸気バリア性をより向上することができる。また、蒸着膜の厚さを150nm以下とすることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を防止することができると共に、本発明の積層体のリサイクル性を向上することができる。
【0052】
蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜である場合には、そのOD値は、2以上3.5以下であることが好ましい。これにより、本発明の積層体の生産性を維持しつつ、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上することができる。なお、本発明において、OD値は、JIS-K-7361に準拠して測定することができる。
【0053】
蒸着膜は、従来公知の方法を用いて形成することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法などの物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法及び光化学気相成長法などの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)などを挙げることができる。
【0054】
また、例えば、物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。蒸着チャンバーの真空度としては、酸素導入前においては、10-2~10-8mbar程度が好ましく、酸素導入後においては、10-1~10-6mbar程度が好ましい。なお、酸素導入量などは、蒸着機の大きさなどによって異なる。導入する酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。フィルムの搬送速度は、10~800m/min程度とすることができる。
【0055】
蒸着膜の表面は、上記表面処理が施されていることが好ましい。これにより、隣接する層との密着性を向上することができる。
【0056】
・コート
ポリエチレン延伸基材フィルム又はポリエチレンシーラントフィルムの少なくとも一方の面に、コート層として耐熱コート層又はバリアコート層を備えることができ、少なくとも1種の樹脂材料を含む。コート層の樹脂材料として例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びビニル樹脂などが挙げられる。
【0057】
コート層に含まれる樹脂材料の、積層体の総重量に対する割合は、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。これにより、本発明の積層体のリサイクル性を維持しつつ、耐熱性やバリア性を向上することができる。
【0058】
コート層の厚さは、0.1μm以上、5μm以下であることが好ましく、0.5μm以上、3μm以下であることがより好ましい。これにより、本発明の延伸基材フィルムを用いて得られる積層体のリサイクル性を維持しつつ、耐熱性やバリア性を向上することができる。
【0059】
・接着剤
上記樹脂積層体を積層するため、接着剤を使用することができる。使用する接着剤は少なくとも1つの樹脂組成物を含むが、特に制限はない。使用できる接着剤は例えば、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系がある。
また、上記いずれかの樹脂組成物を含む接着剤は、特に制限はないが必要に応じて1液型、2液型、ホットメルト型を使用することができる。
また、DIC株式会社製、商品名:PASLIMや三菱ガス化学株式会社製、商品名:マクシーブといったバリア性を持つ接着剤を用いると、そのほかバリア性を持つ素材の使用量が減り、樹脂積層体のポリエチレンの比率が上がるので好ましい。
【0060】
4.包装材料
本発明の積層体は、包装材料用途に特に好適に使用することができる。包装材料の形状としては、特に限定されず包装袋であってもよく、スタンドパウチであってもよい。なお、スタンドパウチにおいては、胴部のみが上記樹脂積層体により形成されていても、底部のみが上記樹脂積層体により形成されていても、胴部及び底部の両方が上記樹脂積層体により形成されていてもよい。
【0061】
・包装袋
袋状の包装材料は、上記積層体のポリエチレンシーラントフィルム(ヒートシール層)が内側となるように、二つ折にして重ね合わせて、その端部をヒートシールすることにより製造することができる。
また、袋状の包装材料は、2枚の積層体を、ヒートシール層が向かい合うように重ね合わせ、その端部をヒートシールすることによっても製造することができる。
【0062】
・スタンドパウチ
スタンドパウチ状の包装材料は、上記積層体のヒートシール層が内側となるように、筒状にヒートシールすることにより、胴部を形成し、次いで、ヒートシール層が内側となるように、上記積層体をV字状に折り、胴部の一端から挟み込み、ヒートシールすることにより底部を形成し、製造することができる。
【0063】
ヒートシールの方法は、特に限定されるものではなく、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどの公知の方法で行うことができる。
【0064】
包装材料に充填される内容物は、特に限定されるものではなく、内容物は、液体、粉体及びゲル体であってもよい。また、食品であっても、非食品であってもよい。
内容物充填後、開口をヒートシールすることにより、包装体とすることができる。
【実施例0065】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例、比較例に用いた評価及び使用樹脂は以下の通りである。
【0066】
<評価方法>
(1)密度
JIS K6922-1、2に準拠して、測定した。
【0067】
(2)MFR
JIS K6922-2に準拠して、190℃、2.16kg荷重の条件にて、測定した。
【0068】
(3)溶融張力(MT)
東洋精機製作所製キャピログラフを用い、炉内で190℃で加熱安定された樹脂を内径2.095mm、長さ8mmのオリフィスから1cm/minのピストン速度で押し出し、押し出された溶融樹脂を4m/minの速度で引っ張り、その時に生じた抵抗力を測定し、溶融張力値とした。
【0069】
(4)分子量分布
下記条件のGPC(Gel Permeation Clomatography)により測定した。
[測定条件]
使用機種:Polymer Char社製HT GPC-IR System
検出器:IR-6
測定温度:145℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)(酸化防止剤としてトリメチルフェノール3.6g/18L添加)
カラム:昭和電工社製Shodex HT-806M×2本
流速:1.0mL/分
注入量:20μL
【0070】
・試料の調製
試料をバイアル瓶に5~8mg入れ、オートサンプラーにセットした。オートサンプラーで溶媒量8mL(室温)を注入し、150℃で2時間を要して溶解するようにプログラムした。ポンプ流量補正のためのフローマーカーとしてヘプタンを使用した。
【0071】
・検量線の作成
標準ポリスチレンにより検量線を作成し、ポリエチレンに換算した。使用した標準ポリスチレンは、Showdex Standard SM-105のサンプルセット及びn-エイコサン、n-テトラコンタンを用いた。
【0072】
・分子量の計算
前述の条件にて測定を行い、サンプリング間隔1sでクロマトグラムを記録した。クロマトグラムの記録(データ取り込み)及び平均分子量計算は、Microsoft社製OS Windows(登録商標)10をインストールしたPC上で専用ソフトウエア(GPC One、Polymer Char社製)を用いて行った。
【0073】
(5)SCB指数
Polymer Char社のIR-6を用いて、短鎖分岐数を算出した。即ち、IRにて、CH2(メチレン)、CH3(メチル)の濃度を測定し、短鎖分岐数既知の標準サンプルの検量線から短鎖分岐数を求めた。
求めた短鎖分岐数を以下の式(a)を用いて計算し、SCB指数を求めた。SCB指数とlogM=5.2(Mw=158000)の短鎖分岐数とlogM=4.2(Mw=15800)の短鎖分岐数との商である。
式(a)SCB指数=(log5.2での短鎖分岐数)/(log4.2での短鎖分岐数)
【0074】
(6)弾性率
JIS K7127を参考にして測定した。長さ200mm、幅10mmの大きさの試験片をフィルムの機械方向(MD方向)と垂直方向(TD方向)にカットし、引張速度2mm/min、チャック間距離100mmとして伸び率1%の時の引張弾性率を測定した。
【0075】
(7)ダートドロップインパクト(DDI)
JIS K7124-1を参考にして測定した。試験機はテスタ―産業社製、IM-302ダートインパクトテスタ―を使用した。クランプにサンプルフィルムを挟み、フィルム面から66cmの高さのところの支柱に重錘ホルダーを設置した。Φ38mmのアルミニウム製半円球と長さ150mmのシャフトを組み合わせた重錘(ダート)に任意の重さ設定し、重錘ホルダーに設置した。この状態で重錘を自由落下させ、フィルム面が破膜を目視で判断した。ダートの重さ1点につき5回測定し、5回すべて破膜しない場合は一定の割合でダートを重くして再度測定した。5回すべて破膜する場合は一定の割合でダートを軽くして再度測定した。このように重さを変えて測定いき、5回すべて破膜しないダートの重さと5回すべて破膜するダートの重さが分かれば測定は終了とした。最後にフィルムサンプルの50%破壊質量(M50)及び50%破壊エネルギー(E50)を次式[1][2]で算出した。
[1]M50=W-S(T/100-1/2)
[2]E50=M50×g×H
W:全試験数破壊時の最低質量(g)
S:繰り返し試験時の質量間隔(g)
T:各試験質量における5枚フィルムサンプルの破壊割合の総和(%)
H:フィルムサンプル面からダート先端までの距離(m)
g:重力加速度(9.81m/s2)
【0076】
(8)ヒートシール強度
・ヒートシールサンプルの作成
JIS Z1713を参考に測定した。MD×TD=200×150(mm)のサンプルを準備し、このサンプルをTDに半分に折ったものを12μmのPETフィルムで覆い、TDにヒートシールした。この時のシール条件は圧力0.2MPa、シール時間1.0s、シール温度140℃でサンプルを作成した。
【0077】
・ヒートシール強度測定
Orientech社製テンシロン万能試験機を用い、上記で作成したヒートシールサンプルを15mm幅ずつMDにカットしたものを試験片として測定した。測定条件はチャック間距離50mm、引張速度500mm/minである。測定点数を5点とし、5点の加重平均をヒートシール強度とした。
【0078】
[実施例1-1]
高密度ポリエチレン樹脂組成物としてP1(日本ポリエチレン(株)製、ノバテックHD(登録商標)、グレード名HY540)を用意した。P1の密度、MFR、Mw/Mnを表1に示す。
【0079】
[実施例1-2]
直鎖低密度ポリエチレン樹脂組成物としてQ1(日本ポリエチレン(株)製、ハーモレックス(登録商標)、グレード名NF324A)を用意した。Q1の密度、MFR、MT、Mw/Mn、SCB指数を表2に示す。
【0080】
[比較例1-1]
高密度ポリエチレン樹脂組成物としてP2(日本ポリエチレン(株)製、ハーモレックス(登録商標)、グレード名NF396A)を用意した。P2の密度、MFR、Mw/Mnを表1に示す。
【0081】
[比較例1-2]
直鎖低密度ポリエチレン樹脂組成物としてQ2(日本ポリエチレン(株)製、ハーモレックス(登録商標)、グレード名NF464A)を用意した。Q2の密度、MFR、MT、Mw/Mn、SCB指数を表2に示す。
【0082】
[比較例1-3]
直鎖低密度ポリエチレン樹脂組成物としてQ3(日本ポリエチレン(株)製、ノバテックLL(登録商標)、グレード名UF230)を用意した。Q3の密度、MFR、MT、Mw/Mn、SCB指数を表2に示す。
【0083】
[比較例1-4]
直鎖低密度ポリエチレン樹脂組成物としてQ4(日本ポリエチレン(株)製、ノバテックLD(登録商標)、グレード名LF240)を用意した。Q4の密度、MFR、MT、Mw/Mn、SCB指数を表2に示す。
【0084】
[実施例2-1]
表3に示すフィルム構成、成形条件で原反フィルムを5層インフレーション成形機にて成形した。この原反フィルムをMD1軸延伸機にて延伸温度120℃、延伸倍率7倍で延伸し、ポリエチレン延伸基材フィルムを得た。ポリエチレン延伸基材フィルムの弾性率、DDI、ヒートシール強度を表4に示す。
【0085】
[比較例2-1]
表3のフィルム構成、成形条件を変更し、原反フィルムを成形した以外は実施例2-1と同様であった。ポリエチレン延伸基材フィルムの弾性率、DDI、ヒートシール強度を表4に示す。
【0086】
[比較例2-2]
表3のフィルム構成、成形条件を変更し、原反フィルムを成形した以外は実施例2-1と同様であった。ポリエチレン延伸基材フィルムの弾性率、DDI、ヒートシール強度を表4に示す。
【0087】
[比較例2-3]
表3のフィルム構成、成形条件を変更し、原反フィルムを成形した以外は実施例2-1と同様であった。ポリエチレン延伸基材フィルムの弾性率、DDI、ヒートシール強度を表4に示す。
【0088】
[比較例2-4]
表3に示すフィルム構成、成形条件で原反フィルムを単層インフレーション成形機にて成形した。この原反フィルムをMD1軸延伸機にて延伸温度120℃、延伸倍率7倍で延伸し、ポリエチレン延伸基材フィルムを得た。ポリエチレン延伸基材フィルムの弾性率、DDI、ヒートシール強度を表4に示す。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
本発明によれば、剛性―強度バランスや透明性、耐熱性に優れるポリエチレン延伸基材フィルムを提供することができる。従って、本発明のポリエチレン延伸基材フィルムを基材とした包装材料、特に、基材とシーラント両方がポリエチレン樹脂組成物で構成されるポリエチレンモノマテリアル包材等の用途に好適に使用することができる。