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特開2023-68517リード部材の回路基板へのはんだ接合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068517
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】リード部材の回路基板へのはんだ接合構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/18 20060101AFI20230510BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20230510BHJP
   H05K 7/12 20060101ALI20230510BHJP
   H05K 7/14 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
H05K1/18 B
H05K3/34 507B
H05K7/12 M
H05K7/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179697
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100092853
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一
(72)【発明者】
【氏名】傳刀 聖
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 康夫
(72)【発明者】
【氏名】小長谷 康明
【テーマコード(参考)】
4E353
5E319
5E336
5E348
【Fターム(参考)】
4E353AA05
4E353BB05
4E353CC01
4E353CC05
4E353CC32
4E353CC33
4E353CC40
4E353DD01
4E353DR15
4E353DR17
4E353DR19
4E353DR32
4E353DR34
4E353DR36
4E353DR49
4E353DR60
4E353EE01
4E353GG29
5E319AA02
5E319AC01
5E319CC53
5E319GG03
5E336AA01
5E336BB02
5E336BC04
5E336CC04
5E336DD02
5E336EE01
5E336GG06
5E348AA03
5E348AA07
5E348AA32
5E348AA40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】半田ごてを当てた回路基板のスルーホールの反対側においても、フィレットが形成可能なリード部材の回路基板へのはんだ接合構造を提供する。
【解決手段】スルーホール10aを有する回路基板10と、回路基板を収容するハウジング(筐体)2の外部から内部に通るリード部材20と、の電気的な接続を行うはんだ接合構造であって、回路基板は、回路基板の表面および裏面における一方側面において、スルーホールの開口部周縁に配置された第1ランド部12と、他方側面において、スルーホールの開口部周縁に配置された第2ランド部13と、スルーホールの内周壁に配置されて第1ランド部と第2ランド部とを接続する筒状ランド部14と、を備える。リード部材は、筒状ランド部内を通る第1リード部23と、第1リード部に対して屈曲し、第2ランド部に沿って配置され、第2ランド部に接触してはんだ接合された第2リード部22と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホールを有する回路基板と、前記回路基板を収容する筐体の外部から内部に通るリード部材と、の電気的な接続を行うはんだ接合構造であって、
前記回路基板は、
該回路基板の表面および裏面における一方側面において、前記スルーホールの開口部周縁に配置された第1ランド部と、
該回路基板の表面および裏面における他方側面において、前記スルーホールの開口部周縁に配置された第2ランド部と、
前記スルーホールの内周壁に配置されて前記第1ランド部と前記第2ランド部とを接続する筒状ランド部と、を備え、
前記リード部材は、
前記筒状ランド部内を通る第1リード部と、
前記第1リード部に対して屈曲し、前記第2ランド部に沿って配置され、前記第2ランド部に接触してはんだ接合された第2リード部と、を備えることを特徴とするリード部材の回路基板へのはんだ接合構造。
【請求項2】
前記第2リード部は、前記回路基板の他方側面に沿って屈曲部を有することを特徴とする請求項1に記載のリード部材の回路基板へのはんだ接合構造。
【請求項3】
前記第2リード部の前記屈曲部は、前記第1リード部に対して角度を有する、直線状または曲線状であることを特徴とする請求項2に記載のリード部材の回路基板へのはんだ接合構造。
【請求項4】
前記屈曲部は、
前記第2ランド部に接触する第1屈曲部と、
前記第1屈曲部よりも前記回路基板から離れて屈曲する第2屈曲部と、を有することを特徴とする請求項1または3に記載のリード部材の回路基板へのはんだ接合構造。
【請求項5】
前記第2リード部の前記回路基板の表面に沿う長さは、前記筒状ランド部の直径よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のリード部材の回路基板へのはんだ接合構造。
【請求項6】
前記筐体は、前記回路基板を受け面で受けて固定するための台座部を有し、
前記屈曲部が弾性変形している状態で、前記回路基板が前記台座部に固定されることを特徴とする請求項2~5の何れかに記載のリード部材の回路基板へのはんだ接合構造。
【請求項7】
前記第2リード部と前記筐体との間に、前記リード部材を前記筐体に対して支持する支持部材を設けたことを特徴とする請求項1~6の何れかに記載のリード部材の回路基板へのはんだ接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品から延びるリード端子などのリード部材の回路基板へのはんだ接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路がプリント印刷された回路基板には各種電子部品が実装されるが、この電子部品の実装は、当該電子部品から延びるリード端子(以下、「リード部材」と総称する)を回路基板にはんだ接合することによってなされている。ここで、従来のリード部材の回路基板へのはんだ接合構造を図10に示す。
【0003】
図15は従来のリード部材のはんだ接合構造を示す部分斜視図であり、回路基板110には、図の上下に貫通する円孔状のスルーホール110aが形成されており、回路基板110の一方の面(図の上面)のスルーホール110aが開口する周縁には、円形リング状の第1ランド部112が形成され、他方の面(図の下面)のスルーホール110aが開口する周縁には、同じく円形リング状の第2ランド部113が形成されている。そして、これらの第1ランド部112と第2ランド部113とは、スルーホール110aの内周壁に形成された円筒状の筒状ランド部114によって接続されている。なお、第1ランド部112と第2ランド部113及び筒状ランド部114は、金メッキによって構成されている。
【0004】
また、不図示の筐体からはリード部材120が図の上方に向かって垂直に延びており、このリード部材120を回路基板110にはんだ接合するには、リード部材120を回路基板110のスルーホール110aに下方から通し、或いは回路基板110をリード部材120に対して下げ、当該回路基板110に形成されたスルーホール110aをリード部材120に上方から通す。そして、不図示の半田ごての先を図の斜め上方(図示矢印Y方向)から第1ランド部112に当てて、該半田ごての先にはんだHを当て、はんだHを溶かすことによって、リード部材120を回路基板110にはんだ接合する。
【0005】
また、特許文献1には、図16に示すようなはんだ接合構造が提案されている。
【0006】
すなわち、図16は特許文献1において提案されたはんだ接合構造を示す部分縦断面図であり、図示のはんだ接合構造においては、電子部品211から延びるリード部材220の回路基板210のスルーホール210aに挿通する部分に、はんだHが凝固時にランド部212に引き込まれることを抑制する抑制手段として球状の突起物220aを形成する構成が提案されている。このような構成によれば、はんだ付け直後に発生するクラックや引け巣などの不具合が発生しても、熱疲労による亀裂の発生を防ぐことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-270987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図15に示す従来のはんだ接合構造においては、半田ごてからの熱が回路基板110や筐体に逃げてしまい、回路基板110の第2ランド部113側(図15の下側)に熱が十分伝わらないため、この部分には溶けたはんだHが十分に充填されず、はんだ充填率が低くなるという問題が発生する。すなわち、図15に示すように、回路基板110のスルーホール110aのうち、半田ごてによって加熱される上側の領域には、はんだが十分充填される「はんだ充填領域」が形成され、スルーホール110aの上側には十分なフィレットFが形成されるのに対して、スルーホール110aの下側の領域にはんだ充填率が低い「はんだ未充填領域」が形成され、スルーホール110aの下側にはフィレットが形成されないという問題が発生する。
【0009】
また、特許文献1において提案された図16に示すはんだ接合構造においても、上述と同様の問題が発生する。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、半田ごてを当てた回路基板のスルーホールの反対側においても、フィレットが形成可能なリード部材の回路基板へのはんだ接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、スルーホールを有する回路基板と、前記回路基板を収容する筐体の外部から内部に通るリード部材と、の電気的な接続を行うはんだ接合構造であって、
前記回路基板は、
該回路基板の表面および裏面における一方側面において、前記スルーホールの開口部周縁に配置された第1ランド部と、
該回路基板の表面および裏面における他方側面において、前記スルーホールの開口部周縁に配置された第2ランド部と、
前記スルーホールの内周壁に配置されて前記第1ランド部と前記第2ランド部とを接続する筒状ランド部と、を備え、
前記リード部材は、
前記筒状ランド部内を通る第1リード部と、
前記第1リード部に対して屈曲し、前記第2ランド部に沿って配置され、前記第2ランド部に接触してはんだ接合された第2リード部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半田ごてを当てた回路基板のスルーホールの反対側においても、フィレットが形成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、電動オイルポンプの上下を逆にして下面側から見た斜視図である。
図2図2は、電動オイルポンプ底部のカバーを取り外した状態を示す部分斜視図である。
図3図3は、図2のA部を拡大して示す斜視図(基板を取り外した状態)である。
図4図4は、本開示の実施の形態1に係るリード部材の回路基板へのはんだ接合構造を示す部分縦断面図である。
図5図5は、本開示の実施の形態1に係るリード部材の回路基板へのはんだ接合構造を示す部分斜視図である。
図6図6は、本開示の実施の形態1におけるリード部材の回路基板へのはんだ接合方法を示す部分縦断面図である。
図7図7は、本開示の実施の形態1におけるリード部材の回路基板へのはんだ接合方法を示す部分縦断面図である。
図8図8は、本開示の実施の形態1におけるリード部材の回路基板へのはんだ接合方法を示す部分縦断面図である。
図9図9は、本開示の実施の形態2に係るリード部材の回路基板へのはんだ接合構造を示す部分縦断面図である。
図10図10は、本開示の実施の形態2に係るリード部材の回路基板へのはんだ接合構造を示す部分斜視図である。
図11図11は、本開示の実施の形態2の変形例を示す部分側面図である。
図12図12は、本開示の実施の形態2の変形例を示す部分側面図である。
図13図13は、本開示の実施の形態2の変形例を示す部分側面図である。
図14図14は、本開示の実施の形態2の変形例を示す部分側面図である。
図15】従来のリード部材の回路基板へのはんだ接合構造を示す部分斜視図である。
図16】特許文献1において提案されたリード部材の回路基板へのはんだ接合構造を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本開示のリード部材の回路基板へのはんだ接合構造の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
[電動オイルポンプの概略構成]
まず、本開示のリード部材の回路基板へのはんだ接合構造が用いられる電動オイルポンプの概略構成を図1図3に基づいて以下に説明する。
【0016】
図1は電動オイルポンプの上下を逆にして下面側から見た斜視図、図2は同電動オイルポンプ底部のカバーを取り外した状態を示す部分斜視図、図3図2のA部を拡大して示す斜視図(基板を取り外した状態)である。なお、図1及び図2においては、矢印方向を図示のようにそれぞれ「上下」、「前後」及び『左右」方向とする。ここで、「上下」とは、当該電動オイルポンプの使用状態における上下と定義する。
【0017】
図示の電動オイルポンプ1は、アルミダイキャスト製のハウジング(筐体)2を備えており、このハウジング2内の前後にはポンプ収容部S1とモータ収容部S2がそれぞれ形成されている。そして、モータ収容部S2には、駆動源である不図示の電動モータが収容されており、ポンプ収容部S1には、電動モータによって回転駆動される不図示のポンプが収容されている。なお、本実施の形態においては、ポンプの種類はトロコイドポンプが使用されているが、特にこれに限定される訳ではない。
【0018】
そして、ハウジング2内の前部と後部にそれぞれ形成されたポンプ収容部S1とモータ収容部S2は、前方と後方に向かってそれぞれ開口しており、これらの開口部は、複数本(4本)のボルト3によってハウジング2に取り付けられたポンプカバー4とモータカバー5によってそれぞれ閉じられている。
【0019】
また、ハウジング2の底部(図1及び図2においては、上部)周縁には、矩形枠状のフランジ部2aが一体に形成されており、このフランジ部2aによって囲まれる部分には、図2に示すように、矩形凹状の基板収容部S3が形成されている。そして、この基板収容部S3には、矩形平板状の回路基板10が水平状態で収容されている。ここで、回路基板10は、ハウジング2に一体に形成された複数の台座部(ボス)2b(図2には、1つのみ図示)にねじ込まれた複数のねじ6によって、その周縁の複数箇所がハウジング2に水平状態で取り付けられている。なお、回路基板10は、ハウジング2の基板収容部S3に対して水平状態で取り付けられることに限定されない。ねじ6に限らず、スナップフィットやクリップ状の締結具などを用いて回路基板10を固定してもよい。
【0020】
上記回路基板10は、電動モータを駆動制御するためのものであって、これには不図示の電気回路がプリント印刷されており、この回路基板10の上面(図2においては下面)と下面(図2においては上面)には、複数の各種電子部品11…が実装されている。
【0021】
また、ハウジング2の前方側底部(図1及び図2においては、上部)には、不図示の電源から延びる不図示の複数本のハーネスの各一端が接続される樹脂製のカプラー7が取り付けられている。そして、図3に示すように、このカプラー7からは複数(図示例では、6つ)のターミナル(以下、「リード部材」と称する)20が延びており、これらのリード部材20は、回路基板10の前端部を上方から下方(図2においては、下方から上方)に貫通しており、これらのリード部材20は、本発明に係る後述のはんだ接合構造によって回路基板10に接合されて該回路基板10の不図示の電気回路に電気的に接続されている。なお、リード部材20は、銅等の電気伝導率の高い金属によって構成されている。
【0022】
ところで、ハウジング2の底部に設けられた基板収容部S3(図2参照)は、その下面開口部(図2においては、上面開口部)が図1に示す矩形プレート状の着脱可能なカバー8によって塞がれている。ここで、カバー8は、板金またはアルミ板によって構成されており、その周縁の複数箇所(図示例では、8箇所)がねじ9によってハウジング2のフランジ部2aに取り付けられることによって、基板収容部S3の下面開口部を下方(図1においては、上方)から塞いでいる。
【0023】
[リード部材の回路基板へのはんだ接合構造]
次に、本開示に係るリード部材20の回路基板10へのはんだ接合構造の実施の形態について説明する。
【0024】
<実施の形態1>
図4は本開示の実施の形態1に係るリード部材の回路基板へのはんだ接合構造を示す部分縦断面図、図5は同はんだ接合構造を示す部分斜視図、図6図8は本開示の実施の形態1におけるリード部材の回路基板へのはんだ接合方法をその工程順に示す部分縦断面図である。なお、リード部材20の回路基板10へのはんだ接合は、電動オイルポンプ1の上下を逆にした状態(図1及び図2に示す状態)で行われるため、以下の説明における「上下」は、使用状態における電動オイルポンプ1の上下とは逆になる。
【0025】
図3及び図4に示すように、カプラー7には、左右方向に適当な間隔で並設された複数(本実施の形態では、6つ)のリード部材20が前後方向に貫通しており、各リード部材20の基板収容部S3内に導入された部分のうちの水平延出部21の端部には、直角上方に折り曲げられた第2リード部22が連続している。ここで、第2リード部22は、垂直に起立する垂直部22aと、該垂直部22aの上端から水平に直角に屈曲する直線状の屈曲部(水平部)22bを備えており、屈曲部22bの端部には、直角上方に折り曲げられて垂直に起立する第1リード部23が連続している。ここで、リード部材20の第2リード部22の垂直部22aと第1リード部23とは、第2リード部22の屈曲部22bの長さ分だけ前後方向にオフセットした状態で互いに平行且つ垂直に延びている。
【0026】
他方、回路基板10の前端部の各リード部材20の先端部が貫通する6つの箇所には、図4及び図5に示すように、上下方向に貫通する円孔状のスルーホール10aがそれぞれ形成されている。そして、回路基板10の図4及び図5の上面(電動オイルポンプ1の使用状態においては、下面)のスルーホール10aが開口する周縁には、環状の第1ランド部12が形成されており、同回路基板10の下面(電動オイルポンプ1の使用状態においては、上面)のスルーホール10aが開口する周縁には、同じく環状の第2ランド部13が形成されている。また、回路基板10のスルーホール10aの内壁面には、円筒状の筒状ランド部14が形成されており、この筒状ランド部14によって第1ランド部12と第2ランド部13とが互いに接続されている。なお、第1ランド部12と第2ランド部13及び筒状ランド部14は、金メッキによって構成されている。本実施形態において、第1ランド部12および第2ランド部13は、円形の環状であるが、円形に限定されない。また、第1ランド部12または第2ランド部13は、環状の一部分が、回路基板10の上面または下面に沿って延びた形状であってもよい。
【0027】
ところで、図3及び図4に示すように、ハウジング2の基板収容部S3には、前述のように回路基板10をハウジング2に取り付けるねじ6(図2参照)がねじ込まれる複数の台座部2b(図3及び図4には1つのみ図示)が一体に形成されている。ハウジング2の基板収容部S3は、複数の台座部2bを有している。なお、回路基板10の台座部2bへの固定は、第2リード部22の屈曲部22bが弾性変形している状態でなされる。
【0028】
前述のように、リード部材20の回路基板10へのはんだ接合は、電動オイルポンプ1の上下を逆にした図1及び図2に示す状態で行われるが、ここで、リード部材20の回路基板10への接合方法を図6図8にしたがって以下に説明する。
【0029】
リード部材20の回路基板10へのはんだ接合に際しては、図6に示すように、回路基板10のスルーホール10aをリード部材20の第1リード部23に位置合わせしながら、該回路基板10を矢印に示すように下方へと移動させ、当該回路基板10に形成されたスルーホール10aにリード部材20の第1リード部23を下方から通す。すると、回路基板10は、図7に示すように、その下面が第2リード部22の水平な屈曲部22bに接することによって上下方向の位置決めがなされ、該回路基板10の下面に形成された第2ランド部13が第2リード部22の屈曲部22bに接触して両者が密着する(図4及び図5参照)。なお、ここで、第2ランド部13と第2リード部22の屈曲部22bの「接触」とは、第2ランド部13と屈曲部22bとの間に多少の隙間があっても、後述のはんだ接合の結果、両者がはんだHを介して繋がっている状態を含むものとする。
【0030】
次に、上記状態から不図示の半田ごてを回路基板10とリード部材20との接合部に対して図8に矢印Xにて示すように斜め上方から当ててはんだHを溶かすことによって、リード部材20を回路基板10にはんだ接合する。すなわち、半田ごてを用いてリード部材20の第1リード部23と回路基板10の第1ランド部12側(図8の上側)から加熱してはんだ付けを行うと、半田ごてから第1リード部23へ伝わった熱は、第2リード部22へも伝わる。また、半田ごてから第1ランド部12へ伝わった熱は、筒状ランド部14を経由して第2ランド部13へも伝わる。第1リード部23に対して屈曲し、第2ランド部13に沿って配置された第2リード部22と、第2リード部22と接する第2ランド部13とは、半田ごてから伝わった熱をそれぞれ有するため、第2リード部22が第1リード部23に対して屈曲しない場合(第1リード部23が回路基板10の第2ランド部13側へ真っ直ぐ延びた場合)に比べ、熱の放熱が抑制される。第2リード部22と、第2ランド部13とは、半田ごてから伝わった熱の放熱が抑制されるため、半田ごてによって溶けた半田Hは、第1リード部23および筒状ランド部14を経由し、回路基板10の第2ランド部13および第2リード部22へ伝わることができる。
【0031】
また、第2リード部22に接した第2ランド部13は、第1リード部23および第2リード部22を介して、半田ごてから効果的に、効率良く熱を受けることができる。第2リード部22に接した第2ランド部13は、リード部材20からも半田ごての熱を受けることができるため、第2リード部22が第1リード部23に対して屈曲しない場合(第1リード部23が回路基板10の第2ランド部13側へ真っ直ぐ延びた場合)に比べ、短い時間で第2ランド部13の温度を高くすることができる。第2ランド部13の熱を短い時間で上げることができるため、半田ごてによって溶けたはんだHは、第1リード部23および筒状ランド部14を経由し、回路基板10の第2ランド部13および第2リード部22へ短い時間で伝わることができる。
【0032】
半田ごてによって溶けた半田が、図8に示す、半田ごてを当てる回路基板10の上面だけでなく、回路基板10の下面側の第2ランド部13および第2リード部22へも伝わり、回路基板10の下面側においてもはんだHのフィレットF2が形成できる。つまり、半田ごてを当てた回路基板10のスルーホール10aの反対側においても、はんだHのフィレットF2が形成可能となる。
【0033】
さらに、第2リード部22に接した第2ランド部13は、短い時間で半田ごての熱を受けて温度を上げることがきるので、半田付けの作業性が良い。短い時間で半田付けの作業ができるため、回路基板10へ過剰な熱を供給することがなく、過剰な熱の供給による回路基板10への悪影響を抑制することができる。
【0034】
第2リード部22と、第2ランド部13との間は、隙間を有していても、第2ランド部13に沿って第2リード部22が配置されているため、第2リード部22が第1リード部23に対して屈曲しない場合に比べ熱の放熱が抑制され、回路基板10の下面側の第2ランド部13および第2リード部22へもはんだHが伝わり、半田ごてを当てたスルーホール10aの反対側においても、はんだHのフィレットF2を形成することができる。したがって、はんだ接合前に第2リード部22と第2ランド部13との間に隙間が存在していても、はんだ接合後は、第2リード部22と第2ランド部13とははんだHを介して確実に接合される。
【0035】
第2リード部22と、第2ランド部13との間は、隙間を有していても、はんだ接合することによって接触する。第2リード部22と、第2ランド部13との接触は、隙間を介してはんだ接合している状態を含む。
【0036】
そして、本実施の形態では、前述のように、回路基板10の台座部2bへの固定は、第2リード部22の屈曲部22bが弾性変形している状態でなされるため、回路基板10を台座部2bに取り付けた状態では、第2リード部22の屈曲部22bが弾性変形して第2ランド部13が第2リード部22の屈曲部22bに的確に接する。このため、第2ランド部13と第2リード部22の屈曲部22bとが好適にはんだ付けされて接合される。
【0037】
ところで、第2リード部22とハウジング22との間には、リード部材20をハウジング22に対して支持する支持部材30を設ける場合がある。図4に示すように、リード部材20の水平延出部21とハウジング22との間には、リード部材20の水平延出部21をハウジング2に対して支持する支持部材30が設けられている。本実施の形態では、支持部材30は、回路基板10のスルーホール10aの中心側に向かって(図4の右方に向かって)カプラー7から延びている。このような支持部材30を設ければ、回路基板10がハウジング2の台座部2bに取り付けられた状態においてリード部材20の水平延出部21が支持部材30によってハウジング2に対して支持されるため、リード部材20の水平延出部21における撓みや変形が支持部材30によって抑制することができる。水平延出部21における撓みや変形を抑制することができるため、第2リード部22と第2ランド部13とがより適切な位置となり、該リード部材20の回路基板10へのはんだ接合が作業性良く且つ的確になされるという効果が得られる。
【0038】
また支持部材30は、垂直部22aの位置まで延びても良いし、カプラー7から連続して水平延出部21の全体を覆うようにして構成しても良い。支持部材30が垂直部22aの位置まで延びることで、屈曲部22bが弾性変形している状態で回路基板10がハウジング2の台座部(ボス)2bに固定された際に、よりリード部材20を支持することができる。なお、本実施の形態では、支持部材30をカプラー7と一体に形成したが、支持部材30をハウジング2と一体に形成しても良く、或いは別体で単体として構成しても良い。
さらに、支持部材30は、複数のリード部材20に対してそれぞれ設けても良いし、支持部材30の1つで複数のリード部材20を支持しても良い。
【0039】
<実施の形態2>
次に、本開示の実施の形態2に係るリード部材20の回路基板10へのはんだ接合構造を図9及び図10に基づいて以下に説明する。
【0040】
図9は本開示の実施の形態2に係るリード部材の回路基板へのはんだ接合構造を示す部分縦断面図、図10は同はんだ接合構造を示す部分斜視図あり、これらの図においては、図3図8において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0041】
本実施の形態においては、リード部材20の回路基板10の下側に位置する第2リード部22の水平な屈曲部(以下、「第1屈曲部」と称する)22bの下方にコの字状(直線状)に屈曲する第2屈曲部22cを設けたことを特徴としており、他の構成は、前記実施の形態1の構成と同じである。ここで、回路基板10の下面に沿う水平な第1屈曲部22bは、回路基板10に形成された第2ランド部13に接触している。また、第1屈曲部22bの回路基板10の下面に沿う長さ(屈曲部22bの屈曲長さ)Lは、筒状ランド部14の直径dよりも大きく設定されている(L>d)。さらに、本実施の形態においても、回路基板10の台座部2bへの固定は、第2リード部22の第1屈曲部22bと第2屈曲部22cが弾性変形している状態でなされるため、回路基板10を台座部2bに取り付けた状態では、第2リード部22の第1屈曲部22bと第2屈曲部22cが弾性変形して第2ランド部13が第2リード部22の第1屈曲部22bに的確に接する。このため、第2ランド部13と第2リード部22の第1屈曲部22bとが好適にはんだ付けされて接合される。なお、図9図10を例に示す第2屈曲部22cを有するリード部材20においても、第2リード部22の(図面で示す)垂直方向に延びる箇所は垂直部22aに当たる。
【0042】
本実施の形態においても、前記実施の形態1と同様に、半田ごてを用いてリード部材20の第1リード部23と回路基板10の第1ランド部12側(図9及び図10の上側)から加熱してはんだ付けを行うと、半田ごてから第1リード部23への入熱が効率良く下側の第1屈曲部22bへと伝導し、互いに接触する第1屈曲部22bと第2ランド部13とが効果的に加熱されて両者が確実にはんだ接合される。この結果、回路基板10のスルーホール10a内におけるはんだ充填率が高められ、第2リード部22の第1屈曲部22bと第2ランド部13との接合部にはんだHのフィレットF2が形成され、リード部材20が基板回路10に確実にはんだ接合されて両者が電気的に導通するという効果が得られる。なお、本実施の形態においても、回路基板10の上側の第1リード部23と第1ランド部12との接合部にも、はんだHのフィレットF1が形成される。
【0043】
そして、本実施の形態においては、リード部材20の第2リード部22に第2屈曲部22cを設けたため、リード部材20を回路基板10にはんだ付けする際に回路基板10からリード部材20に加わる荷重が第2屈曲部22cの弾性変形によって吸収される。このため、第2リード部22の第1屈曲部22bと第2ランド部13との接触部に過大な負荷が掛からず、両者のはんだ接合が正常になされる。
【0044】
また、本実施の形態においては、リード部材20の第1屈曲部22bの回路基板10の下面に沿う長さLが筒状ランド部14の直径dよりも大きく設定されているため(L>d)、第1屈曲部22bが回路基板10のスルーホール10aに埋没することがなく、この第1屈曲部22bと第2屈曲部22cの弾性変形によって回路基板10からリード部材22に加えられる荷重が効果的に吸収される。
【0045】
なお、本実施の形態においても、図9に示すように、リード部材20の水平延出部21とハウジング2との間に、リード部材20の水平延出部21をハウジング2に対して支持する支持部材30を設ければ、回路基板10がハウジング2のボス2bに取り付けられた状態においてリード部材20の水平延出部21が支持部材30によってハウジング2に対して支持されるため、はんだ接合時のリード部材20の撓みや変形が支持部材30によって防がれ、該リード部材20の回路基板10へのはんだ接合が作業性良く且つ的確になされるという効果が得られる。なお、本実施の形態では、支持部材30をカプラー7と一体に形成したが、支持部材30をハウジング2と一体に形成しても良く、或いは別体で単体として構成しても良い。
【0046】
ここで、本実施の形態の変形例を図11図14に示す。
【0047】
すなわち、図11図14は本開示の実施の形態2の変形例を示す部分側面図であり、図11はリード部材20の第2リード部22の中間高さ位置に半円状の湾曲する第2屈曲部22dを設けた例を示し、図12は第2リード部22の下端部に半円状の湾曲部22eを設けた例を示している。また、図13図14はリード部材20の水平延出部21と第2リード部22との接続部(コーナー部)に下向きに湾曲する半円状の第2屈曲部22fを設けた例、斜め下向きに湾曲する円弧状の第2屈曲22gを設けた例をそれぞれ示している。なお、本明細書においては、第2リード部22の第1リード部23に対して所定の角度をもって直線状に屈曲する部分と曲線状に湾曲する部分を「屈曲部」と定義している。第2リード部22は、第1リード部23から直線状に屈曲することに限定されない。第2リード部22は、第1リード部23から曲線状に湾曲して屈曲しても良い。例えば、曲線状に湾曲した第2リード部22は、回路基板10の下面に沿って延びた、第2ランド部13の環状の一部分に接した構造としてもよい。
【0048】
以上のように、リード部材22に第2屈曲部22d,22e,22f,22gを形成することによって、リード部材20を回路基板10にはんだ接合する際に回路基板10からリード部材20に加わる荷重が各第2屈曲部22d~22gの弾性変形によってそれぞれ吸収されるため、第2リード部22と第2ランド部13との接触部に過大な負荷が掛からず、両者のはんだ接合が正常になされてリード部材20の回路基板10へのはんだ接合が確実になされるという効果が得られる。
【0049】
なお、以上は本発明を電動オイルポンプ1に設けられた回路基板10へのリード部材(ターミナル)20のはんだ接合構造に対して適用した形態について説明したが、本発明は、回路基板を備える電動オイルポンプ以外の他の任意の機器におけるリード部材の回路基板へのはんだ接合構造に対しても同様に適用可能である。本発明のリード部材の回路基板へのはんだ接合構造の一例として電動オイルポンプが挙げられるが、本発明のリード部材の回路基板へのはんだ接合構造の使用は、電動オイルポンプに限定されない。
【0050】
また、以上の実施の形態では、回路基板10に給電するためのハーネスが接続されるカプラー7に設けられたリード部材(ターミナル端子)20の回路基板10へのはんだ接合構造を例として説明したが、本発明は、回路基板に実装される各種電子部品から延びるリード端子を含む他の任意のリード部材の回路基板へのはんだ接合構造に対しても同様に適用可能である。
【0051】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 電動オイルポンプ
2 ハウジング(筐体)
2a ハウジングのフランジ部
2b ハウジングの台座部
7 カプラー
10 回路基板
10a スルーホール
12 第1ランド部
13 第2ランド部
14 筒状ランド部
20 リード部材
21 リード部材の水平延出部
22 リード部材の第2リード部
22a 第2リード部の垂直部
22b 第2リード部の第1屈曲部
22c~22g 第2リード部の第2屈曲部
23 リード部材の第1リード部
30 支持部材
F1,F2 フィレット
H はんだ
L 第2リード部の第1屈曲部の長さ
d 筒状ランド部の直径
図1
図2
図3
図4
図5
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