(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068544
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】ケースレスコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/224 20060101AFI20230510BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
H01G4/224 200
H01G4/32 530
H01G4/32 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179737
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】平垣 康行
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AB04
5E082BC25
5E082BC39
5E082EE07
5E082EE23
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG06
5E082FG34
5E082GG27
5E082HH25
5E082HH48
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】コンデンサ素子で発生した熱を外部に放出しやすいケースレスコンデンサを提供する。
【解決手段】ケースレスコンデンサ1は、第1方向D1に延び、第1方向D1の一方側に第1端面31、第1方向D1の他方側に第2端面32を持ち、第2方向D2の一方側に第1平面41、第2方向D2の他方側に第2平面42を持つ本体部5と、第1端面31に設けられた第1端面電極61と、第2端面32に設けられた第2端面電極62と、を有するコンデンサ素子2と、コンデンサ素子2を封止する封止部7と、コンデンサ素子2の第2平面42と絶縁層8を介して対向し、絶縁層8に固定されて外部に露出した金属板9と、を備える。第3方向D3に沿ったコンデンサ素子2の幅(B)の、第1平面41と第2平面42との平面間距離(A)に対する比の値である扁平率(B/A)が2.0以上10.0以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延び、前記第1方向の一方側に第1端面、及び前記第1方向の他方側に第2端面を持ち、かつ前記第1方向に直交する第2方向の一方側に第1平面、及び前記第2方向の他方側に第2平面を持つ本体部と、前記第1端面に設けられた第1端面電極と、前記第2端面に設けられた第2端面電極と、を有するコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を封止する封止部と、
前記コンデンサ素子の前記第2平面と絶縁層を介して対向し、かつ前記絶縁層に固定されて外部に露出した金属板と、を備え、
前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に沿った前記コンデンサ素子の幅(B)の、前記第1平面と前記第2平面との平面間距離(A)に対する比の値である扁平率(B/A)が2.0以上10.0以下である、
ケースレスコンデンサ。
【請求項2】
前記平面間距離(A)が10mm以上30mm以下である、
請求項1に記載のケースレスコンデンサ。
【請求項3】
前記コンデンサ素子の前記第1方向に沿った全長が10mm以上30mm以下である、
請求項1又は2に記載のケースレスコンデンサ。
【請求項4】
前記第1端面電極及び前記第2端面電極の厚さが0.5mm以上1.5mm以下である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のケースレスコンデンサ。
【請求項5】
第1方向に延び、前記第1方向の一方側に第1端面、及び前記第1方向の他方側に第2端面を持ち、かつ前記第1方向に直交する第2方向の一方側に第1平面、及び前記第2方向の他方側に第2平面を持つ本体部と、前記第1端面に設けられた第1端面電極と、前記第2端面に設けられた第2端面電極と、を有するコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を封止する封止部と、
前記コンデンサ素子の前記第2平面と絶縁層を介して対向し、かつ前記絶縁層に固定されて外部に露出した金属板と、を備え、
前記第1平面と前記第2平面との平面間距離が10mm以上30mm以下である、
ケースレスコンデンサ。
【請求項6】
第1方向に延び、前記第1方向の一方側に第1端面、及び前記第1方向の他方側に第2端面を持ち、かつ前記第1方向に直交する第2方向の一方側に第1平面、及び前記第2方向の他方側に第2平面を持つ本体部と、前記第1端面に設けられた第1端面電極と、前記第2端面に設けられた第2端面電極と、を有するコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を封止する封止部と、
前記コンデンサ素子の前記第2平面と絶縁層を介して対向し、かつ前記絶縁層に固定されて外部に露出した金属板と、を備え、
前記コンデンサ素子の前記第1方向に沿った全長が10mm以上30mm以下である、
ケースレスコンデンサ。
【請求項7】
第1方向に延び、前記第1方向の一方側に第1端面、及び前記第1方向の他方側に第2端面を持ち、かつ前記第1方向に直交する第2方向の一方側に第1平面、及び前記第2方向の他方側に第2平面を持つ本体部と、前記第1端面に設けられた第1端面電極と、前記第2端面に設けられた第2端面電極と、を有するコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を封止する封止部と、
前記コンデンサ素子の前記第2平面と絶縁層を介して対向し、かつ前記絶縁層に固定されて外部に露出した金属板と、を備え、
前記第1端面電極及び前記第2端面電極の厚さが0.5mm以上1.5mm以下である、
ケースレスコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にケースレスコンデンサに関し、より詳細には封止部を備えるケースレスコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乾式金属化フィルムコンデンサが開示されている。この乾式金属化フィルムコンデンサは、一対の金属化フィルムを重ね合せて巻回し、両端面にメタリコン金属を溶射して電極引出部を形成したコンデンサ素子に外部引出し線を接合し、コンデンサ素子を樹脂ケース内に収納し熱硬化性樹脂を充填、硬化してなる。上記乾式金属化フィルムコンデンサでは、外部引出し線をコンデンサ素子側に屈曲する鍵型形状とし、外部引出し線のL形部分に支持板を嵌挿し、樹脂ケース内に収納しかつ固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の乾式金属化フィルムコンデンサでは、熱硬化性樹脂の他に樹脂ケース及び支持板が用いられているため、軽量化しにくいという問題があった。またコンデンサ素子が樹脂ケース内に収納され、支持板で蓋がされているため、コンデンサ素子で発生した熱を外部に放出しにくいという問題もあった。
【0005】
本開示の目的は、コンデンサ素子で発生した熱を外部に放出しやすいケースレスコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係るケースレスコンデンサは、第1方向に延び、前記第1方向の一方側に第1端面、及び前記第1方向の他方側に第2端面を持ち、かつ前記第1方向に直交する第2方向の一方側に第1平面、及び前記第2方向の他方側に第2平面を持つ本体部と、前記第1端面に設けられた第1端面電極と、前記第2端面に設けられた第2端面電極と、を有するコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を封止する封止部と、前記コンデンサ素子の前記第2平面と絶縁層を介して対向し、かつ前記絶縁層に固定されて外部に露出した金属板と、を備える。前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に沿った前記コンデンサ素子の幅(B)の、前記第1平面と前記第2平面との平面間距離(A)に対する比の値である扁平率(B/A)が2.0以上10.0以下である。
【0007】
本開示の第2の態様に係るケースレスコンデンサは、第1方向に延び、前記第1方向の一方側に第1端面、及び前記第1方向の他方側に第2端面を持ち、かつ前記第1方向に直交する第2方向の一方側に第1平面、及び前記第2方向の他方側に第2平面を持つ本体部と、前記第1端面に設けられた第1端面電極と、前記第2端面に設けられた第2端面電極と、を有するコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を封止する封止部と、前記コンデンサ素子の前記第2平面と絶縁層を介して対向し、かつ前記絶縁層に固定されて外部に露出した金属板と、を備える。前記第1平面と前記第2平面との平面間距離が10mm以上30mm以下である。
【0008】
本開示の第3の態様に係るケースレスコンデンサは、第1方向に延び、前記第1方向の一方側に第1端面、及び前記第1方向の他方側に第2端面を持ち、かつ前記第1方向に直交する第2方向の一方側に第1平面、及び前記第2方向の他方側に第2平面を持つ本体部と、前記第1端面に設けられた第1端面電極と、前記第2端面に設けられた第2端面電極と、を有するコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を封止する封止部と、前記コンデンサ素子の前記第2平面と絶縁層を介して対向し、かつ前記絶縁層に固定されて外部に露出した金属板と、を備える。前記コンデンサ素子の前記第1方向に沿った全長が10mm以上30mm以下である。
【0009】
本開示の第4の態様に係るケースレスコンデンサは、第1方向に延び、前記第1方向の一方側に第1端面、及び前記第1方向の他方側に第2端面を持ち、かつ前記第1方向に直交する第2方向の一方側に第1平面、及び前記第2方向の他方側に第2平面を持つ本体部と、前記第1端面に設けられた第1端面電極と、前記第2端面に設けられた第2端面電極と、を有するコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を封止する封止部と、前記コンデンサ素子の前記第2平面と絶縁層を介して対向し、かつ前記絶縁層に固定されて外部に露出した金属板と、を備える。前記第1端面電極及び前記第2端面電極の厚さが0.5mm以上1.5mm以下である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、コンデンサ素子で発生した熱を外部に放出しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1Aは、本実施形態に係るケースレスコンデンサを示す概略斜視図である。
図1Bは、同上のケースレスコンデンサを示す概略側面図である。
図1Cは、同上のケースレスコンデンサを示す概略正面図である。
【
図2】
図2Aは、放熱効果の評価方法を示す概略正面図である。
図2Bは、放熱効果の評価方法を示す概略側面図である。
【
図3】
図3は、扁平率(B/A)と上昇温度(△T)との関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、平面間距離(A)と上昇温度(△T)との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、全長(X)と上昇温度(△T)との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、電極厚(Y)と上昇温度(△T)との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、同上のケースレスコンデンサの製造方法の各工程を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.第1実施形態
(1)概要
図1A~
図1Cに示すように、本実施形態に係るケースレスコンデンサ1は、コンデンサ素子2と、封止部7と、金属板9と、を備える。
【0013】
コンデンサ素子2は、本体部5と、第1端面電極61と、第2端面電極62と、を有する。本体部5は、第1方向D1に延び、第1方向D1の一方側に第1端面31、及び第1方向D1の他方側に第2端面32を持ち、かつ第2方向D2の一方側に第1平面41、及び第2方向D2の他方側に第2平面42を持つ。第1端面電極61は、第1端面31に設けられている。第2端面電極62は、第2端面32に設けられている。
【0014】
封止部7は、コンデンサ素子2を封止している。
【0015】
金属板9は、コンデンサ素子2の第2平面42と絶縁層8を介して対向し、かつ絶縁層8に固定されて外部に露出している。
【0016】
本実施形態では、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)が2.0以上10.0以下である。扁平率(B/A)は、第3方向D3に沿ったコンデンサ素子2の幅(B)の、第1平面41と第2平面42との平面間距離(A)に対する比の値である。
【0017】
コンデンサ素子2の扁平率(B/A)が大きくなるほど、コンデンサ素子2が全体的に金属板9に近接しやすくなる。そして、金属板9は、封止部7に比べて熱伝導性が高く、外部に露出している。
【0018】
したがって、本実施形態によれば、コンデンサ素子2で発生した熱を外部に放出しやすい。なお、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)の数値範囲の技術的意義については、実施例の項において、実験データを示しながら明確にしている。
【0019】
(2)詳細
以下、本実施形態に係るケースレスコンデンサ1について、図面を参照して説明する。各図は模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさは必ずしも実際の寸法を反映しているとは限らない。なお、図中に第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3を規定する矢印を図示しているが、これらの矢印は、説明の都合上図示しているだけであり、ケースレスコンデンサ1の方向を限定する趣旨ではなく、実体を伴わない。第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3は、相互に直交する。また以下において、「正面視」とは、第1方向D1に沿って視ることを意味し、「平面視」とは、第2方向D2に沿って視ることを意味し、「側面視」とは、第3方向D3に沿って視ることを意味する。
【0020】
図1A~
図1Cに示すように、本実施形態に係るケースレスコンデンサ1は、コンデンサ素子2と、一対のバスバー600と、封止部7と、金属板9と、を備える。ケースレスコンデンサ1は、文字通りケースを備えないので、軽量化しやすい。ケースレスコンデンサ1の静電容量は、大きいほど好ましいが、例えば、50μF以上300μF以下である。
【0021】
<コンデンサ素子>
コンデンサ素子2は、本体部5と、第1端面電極61と、第2端面電極62と、を有する。
【0022】
≪本体部≫
本体部5は、正面視角丸長方形をなし、第1方向D1に延びる立体形状をなす。
【0023】
本体部5は、第1端面31と、第2端面32と、第1平面41と、第2平面42と、第1湾曲面51と、第2湾曲面52と、を持つ。第1平面41、第2平面42、第1湾曲面51、及び第2湾曲面52は、電気絶縁性を有する。
【0024】
第1端面31は、第1方向D1の一方側に存在する。
【0025】
第2端面32は、第1方向D1において、第1端面31の反対側の面である。すなわち、第2端面32は、第1方向D1の他方側に存在する。第2端面32は、第1端面31と平行である。なお、「平行」には、厳密な平行のみならず、厳密な平行と同視し得る平行(実質的な平行)も含まれる。「実質的な平行」とは、本実施形態の効果を損なわない程度の平行を意味する。以下においても同様である。
【0026】
第1平面41は、第2方向D2の一方側に存在する。第1平面41は、第1方向D1の一方側において、第1端面31とつながっている。第1平面41は、第1方向D1の他方側において、第2端面32とつながっている。
【0027】
第2平面42は、第2方向D2において、第1平面の反対側の面である。すなわち、第2平面42は、第2方向D2の他方側に存在する。第2平面42は、第1平面41と平行である。第2平面42は、第1方向D1の一方側において、第1端面31とつながっている。第2平面42は、第1方向D1の他方側において、第2端面32とつながっている。
【0028】
第1湾曲面51は、正面視で第3方向D3の一方側(右側)に凸の湾曲した面である。第1湾曲面51は、第3方向D3の一方側に存在する。第1湾曲面51は、第1方向D1の一方側において、第1端面31とつながっている。第1湾曲面51は、第1方向D1の他方側において、第2端面32とつながっている。第1湾曲面51は、第2方向D2の一方側において、第1平面41とつながっている。第1湾曲面51は、第2方向D2の他方側において、第2平面42とつながっている。
【0029】
第2湾曲面52は、正面視で第3方向D3の他方側(左側)に凸の湾曲した面である。第2湾曲面52は、第1湾曲面51の反対側の面である。すなわち、第2湾曲面52は、第3方向D3の他方側に存在する。第2湾曲面52は、第1方向D1の一方側において、第1端面31とつながっている。第2湾曲面52は、第1方向D1の他方側において、第2端面32とつながっている。第2湾曲面52は、第2方向D2の一方側において、第1平面41とつながっている。第2湾曲面52は、第2方向D2の他方側において、第2平面42とつながっている。
【0030】
≪第1端面電極≫
第1端面電極61は、第1端面31に設けられている。第1端面電極61は、金属溶射法により形成可能である。第1端面電極61の材質としては、特に限定されないが、例えば、亜鉛、銅、及び錫等が挙げられる。
【0031】
≪第2端面電極≫
第2端面電極62は、第2端面32に設けられている。第2端面電極62も、金属溶射法により形成可能である。第2端面電極62の材質としては、第1端面電極61の材質と同様の材質が挙げられる。
【0032】
≪コンデンサ素子の形成方法≫
コンデンサ素子2は、巻回型又は積層型である。本実施形態では、巻回型のコンデンサ素子2を使用している。以下、巻回型のコンデンサ素子2の形成方法について説明する。
【0033】
まず
図7Aに示すように、長尺状をなす金属化フィルム20を巻回して本体部5を形成する。具体的には、2枚の金属化フィルム20(第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22)を用意し、これらの金属化フィルム20を重ねて巻回する。なお、2枚の金属化フィルム20の短手方向Sの長さは等しい。
【0034】
第1金属化フィルム21は、金属が蒸着された蒸着部21aと、金属が蒸着されていない非蒸着部21bと、を有する。蒸着される金属としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、亜鉛及び銅等が挙げられる。蒸着部21a及び非蒸着部21bは、第1誘電体フィルム210の一方の面に存在する。蒸着部21aは、第1誘電体フィルム210の短手方向Sの一方側端部(右側端部)を除く部分に存在する。非蒸着部21bは、第1誘電体フィルム210の短手方向Sの一方側端部(右側端部)に存在する。第1誘電体フィルム210の他方の面には蒸着部21aは存在しない。第1誘電体フィルム210の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。第1誘電体フィルム210の厚さは、好ましくは1.6μm以上4.0μm以下、より好ましくは1.8μm以上3.4μm以下、さらに好ましくは2.0μm以上3.0μm以下である。
【0035】
一方、第2金属化フィルム22は、金属が蒸着された蒸着部22aと、金属が蒸着されていない非蒸着部22bと、を有する。蒸着される金属としては、上記と同様の金属が挙げられる。蒸着部22a及び非蒸着部22bは、第2誘電体フィルム220の一方の面に存在する。蒸着部22aは、第2誘電体フィルム220の短手方向Sの他方側端部(左側端部)を除く部分に存在する。非蒸着部22bは、第2誘電体フィルム220の短手方向Sの他方側端部(左側端部)に存在する。第2誘電体フィルム220の他方の面には蒸着部22aは存在しない。第2誘電体フィルム220の材質としては、第1誘電体フィルム210の材質と同様の材質が挙げられる。第2誘電体フィルム220の厚さは、第1誘電体フィルム210の厚さと同様である。
【0036】
そして、第1金属化フィルム21の他方の面と、第2金属化フィルム22の一方の面とを対向させて重ね、この状態で2枚の金属化フィルム20を長手方向Lに巻回して、円柱状をなす巻回体5aが得られる(
図7A参照)。巻回体5aを、巻回軸Rに垂直な方向に加圧することにより、扁平巻回体5bが得られる(
図7B参照)。扁平巻回体5bは、巻回軸Rの方向(第1方向D1)に沿って視ると角丸長方形をなし、巻回軸Rの方向に延びる立体形状をなす。本実施形態では、扁平巻回体5bを本体部5として使用している。
【0037】
本体部5の第1端面31において、第2金属化フィルム22の右側縁が露出している。第2金属化フィルム22の右側縁には蒸着部22aが存在する。したがって、第1端面電極61は、第2金属化フィルム22の蒸着部22aと接続される。
【0038】
一方、本体部5の第2端面32において、第1金属化フィルム21の左側縁が露出している。第1金属化フィルム21の左側縁には蒸着部21aが存在する。したがって、第2端面電極62は、第1金属化フィルム21の蒸着部21aと接続される。
【0039】
<一対のバスバー>
一対のバスバー600(第1バスバー601及び第2バスバー602)は、第2方向D2に延びる導電性部材である。第1バスバー601は、第1端面電極61に接続されている。第2バスバー602は、第2端面電極62に接続されている。第1バスバー601及び第2バスバー602は、第1方向D1に並んで、第2方向D2に平行に配置されている。一対のバスバー600の材質としては、特に限定されないが、例えば、銅等が挙げられる。
【0040】
<封止部>
封止部7は、コンデンサ素子2を封止している(
図1A~
図1C参照)。すなわち、封止部7にコンデンサ素子2が埋没している。更に換言すれば、封止部7は、正面視、平面視、及び側面視で、コンデンサ素子2よりも一回り大きい。
【0041】
封止部7は、樹脂の硬化物で形成されている。樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0042】
本実施形態では、封止部7は、直方体状をなす。具体的には、封止部7は、前面7aと、後面7bと、上面7cと、下面7dと、右面7eと、左面7fと、を有する。
【0043】
前面7aは、第1方向D1の一方側に存在する。前面7aは、第1端面電極61と平行である。
【0044】
後面7bは、第1方向D1において、前面7aの反対側の面である。すなわち、後面7bは、第1方向D1の他方側に存在する。後面7bは、前面7aと平行である。
【0045】
上面7cは、第2方向D2の一方側に存在する。上面7cは、第1平面41と平行である。上面7cから一対のバスバー600が突出している。
【0046】
下面7dは、第2方向D2において、上面7cの反対側の面である。すなわち、下面7dは、第2方向D2の他方側に存在する。下面7dは、上面7cと平行である。本実施形態では、下面7dは、コンデンサ素子2の第2平面42と面一である。
【0047】
右面7eは、第3方向D3の一方側に存在する。
【0048】
左面7fは、第3方向D3において、右面7eの反対側の面である。すなわち、左面7fは、第3方向D3の他方側に存在する。左面7fは、右面7eと平行である。
【0049】
<金属板>
金属板9は、コンデンサ素子2の第2平面42と絶縁層8を介して対向している。また金属板9は、封止部7の下面7dと絶縁層8を介して対向している。金属板9の材質としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム等が挙げられる。金属板9の厚さは、好ましくは0.3mm以上2.5mm以下、より好ましくは0.5mm以上2.0mm以下、さらに好ましくは0.8mm以上1.5mm以下である。金属板9は、平面視で封止部7よりもわずかに大きい矩形状をなす。なお、金属板9の平面視の形状及び大きさは、特に限定されない。
【0050】
金属板9は、絶縁層8に固定されて外部に露出している。絶縁層8は、樹脂の硬化物で形成されている。樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。絶縁層8の厚さは、好ましくは0.1mm以上1.0mm以下、より好ましくは0.3mm以上0.6mm以下、絶縁層8は、平面視で封止部7と同一寸法の矩形状をなす。
【0051】
<扁平率>
本実施形態では、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)が2.0以上10.0以下である。
【0052】
ここで、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)は、コンデンサ素子2の幅(B)の、平面間距離(A)に対する比の値である。コンデンサ素子2の幅(B)は、第3方向D3に沿ったコンデンサ素子2の長さである(
図1C参照)。平面間距離(A)は、第1平面41と第2平面42との間の距離である(
図1C参照)。
【0053】
上記のように、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)が2.0以上であることで、放熱性の低下を抑制することができる。一方、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)が10.0以下であることで、ケースレスコンデンサ1の低容量化を抑制することができる。
【0054】
扁平率(B/A)の下限値は、好ましくは2.4以上、より好ましくは2.8以上である。一方、扁平率(B/A)の上限値は、好ましくは7.5以下、より好ましくは5.0以下である。
【0055】
なお、封止部7の幅(W)は、コンデンサ素子2の幅(B)よりも長い。封止部7の幅(W)は、封止部7の右面7eと左面7fとの間の距離である(
図1C参照)。好ましい封止部7の幅(W)は、コンデンサ素子2の幅(B)に応じて変化し得る。すなわち、封止部7の幅(W)は、好ましくは(B+1)mm以上(B+10)mm以下、より好ましくは(B+2)mm以上(B+7)mm以下、さらに好ましくは(B+3)mm以上(B+5)mm以下である。
【0056】
<平面間距離>
本実施形態では、コンデンサ素子2の平面間距離(A)は、好ましくは10mm以上30mm以下である。平面間距離(A)が10mm以上であることで、ケースレスコンデンサ1の低容量化を抑制することができる。一方、平面間距離(A)が30mm以下であることで、放熱性の低下を抑制することができる。
【0057】
平面間距離(A)の下限値は、より好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上である。一方、平面間距離(A)の上限値は、より好ましくは28mm以下、さらに好ましくは26mm以下である。
【0058】
なお、封止部7の高さ(H)は、平面間距離(A)よりも長い。封止部7の高さ(H)は、封止部7の上面7cと下面7dとの間の距離である(
図1C参照)。好ましい封止部7の高さ(H)は、平面間距離(A)に応じて変化し得る。すなわち、封止部7の高さ(H)は、好ましくは(A+0.5)mm以上(A+10)mm以下、より好ましくは(A+1.5)mm以上(A+7)mm以下、さらに好ましくは(A+2)mm以上(A+5)mm以下である。
【0059】
<全長>
本実施形態では、コンデンサ素子2の全長(X)は、好ましくは10mm以上30mm以下である。
【0060】
ここで、コンデンサ素子2の全長(X)は、第1方向D1に沿ったコンデンサ素子2の長さである(
図1B参照)。コンデンサ素子2の全長(X)が10mm以上であることで、ケースレスコンデンサ1の低容量化を抑制することができる。一方、コンデンサ素子2の全長(X)が30mm以下であることで、放熱性の低下を抑制することができる。
【0061】
コンデンサ素子2の全長(X)の下限値は、より好ましくは15mm以上、さらに好ましくは18mm以上である。一方、コンデンサ素子2の全長(X)の上限値は、より好ましくは28mm以下、さらに好ましくは23mm以下である。
【0062】
なお、封止部7の全長(TL)は、コンデンサ素子2の全長(X)よりも長い。封止部7の全長(TL)は、封止部7の前面7aと後面7bとの間の距離である(
図1B参照)。好ましい封止部7の全長(TL)は、コンデンサ素子2の全長(X)に応じて変化し得る。すなわち、封止部7の全長(TL)は、好ましくは(X+1)mm以上(X+10)mm以下、より好ましくは(X+2)mm以上(X+7)mm以下、さらに好ましくは(X+3)mm以上(X+6)mm以下である。
【0063】
<第1端面電極及び第2端面電極の厚さ>
本実施形態では、第1端面電極61及び第2端面電極62の厚さ(Y)(以下「電極厚(Y)」ともいう)は、好ましくは0.5mm以上1.5mm以下である(
図1B参照)。電極厚(Y)が0.5mm以上であることで、放熱性の低下を抑制することができる。一方、電極厚(Y)が1.5mm以下であることで、はんだ濡れ性の低下を抑制することができる。
【0064】
電極厚(Y)の下限値は、より好ましくは0.7mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上である。なお、第1端面電極61の厚さ(Y1)と第2端面電極62の厚さ(Y2)とは同じでも異なってもよい。
【0065】
<作用効果>
本実施形態に係るケースレスコンデンサ1は、一対のバスバー600間に電圧を印加することにより充電される。特に一対のバスバー600間に交流電圧を印加することにより、ケースレスコンデンサ1は、充電及び放電を繰り返す。これにより、コンデンサ素子2に熱が発生し得る。
【0066】
上記の熱を外部に放出すべく、本実施形態では、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)を2.0以上10.0以下としている。コンデンサ素子2の扁平率(B/A)が大きくなるほど、コンデンサ素子2が全体的に金属板9に近接しやすくなる。そして、金属板9は、封止部7に比べて熱伝導性が高く、外部に露出している。
【0067】
したがって、本実施形態によれば、コンデンサ素子2で発生した熱を外部に放出しやすい。なお、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)の数値範囲の技術的意義については、実施例の項において、実験データを示しながら明確にしている(
図3参照)。
【0068】
2.第2実施形態
次に第2実施形態に係るケースレスコンデンサ1について、図面を参照して説明する。第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成要素には第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
【0069】
<平面間距離>
本実施形態では、第1平面41と第2平面42との平面間距離(A)が10mm以上30mm以下である。なお、本実施形態では、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)が2.0以上10.0以下の範囲を逸脱していてもよい。
【0070】
平面間距離(A)が10mm以上であることで、ケースレスコンデンサ1の低容量化を抑制することができる。一方、平面間距離(A)が30mm以下であることで、放熱性の低下を抑制することができる。
【0071】
平面間距離(A)の下限値は、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上である。一方、平面間距離(A)の上限値は、好ましくは28mm以下、より好ましくは26mm以下である。
【0072】
<作用効果>
第1実施形態と同様に、本実施形態に係るケースレスコンデンサ1も、一対のバスバー600間に交流電圧を印加することにより充電及び放電を繰り返す。これにより、コンデンサ素子2に熱が発生し得る。
【0073】
上記の熱を外部に放出すべく、本実施形態では、コンデンサ素子2の平面間距離(A)を10mm以上30mm以下としている。平面間距離(A)が短いほど(つまり第1平面41が第2平面42に接近するほど)、コンデンサ素子2が全体的に金属板9に近接しやすくなる。
【0074】
したがって、本実施形態によれば、コンデンサ素子2で発生した熱を外部に放出しやすい。なお、平面間距離(A)の数値範囲の技術的意義については、実施例の項において、実験データを示しながら明確にしている(
図4参照)。
【0075】
3.第3実施形態
次に第3実施形態に係るケースレスコンデンサ1について、図面を参照して説明する。第3実施形態では、第1~2実施形態と同様の構成要素には第1~2実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
【0076】
<全長>
本実施形態では、コンデンサ素子2の第1方向D1に沿った全長(X)が10mm以上30mm以下である(
図1B参照)。なお、本実施形態では、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)が2.0以上10.0以下の範囲を逸脱していてもよい。
【0077】
コンデンサ素子2の全長(X)が10mm以上であることで、ケースレスコンデンサ1の低容量化を抑制することができる。一方、コンデンサ素子2の全長(X)が30mm以下であることで、放熱性の低下を抑制することができる。
【0078】
コンデンサ素子2の全長(X)の下限値は、好ましくは15mm以上、より好ましくは18mm以上である。コンデンサ素子2の全長(X)の上限値は、好ましくは28mm以下、より好ましくは23mm以下である。
【0079】
<作用効果>
第1実施形態と同様に、本実施形態に係るケースレスコンデンサ1も、一対のバスバー600間に交流電圧を印加することにより充電及び放電を繰り返す。これにより、コンデンサ素子2に熱が発生し得る。
【0080】
上記の熱を外部に放出すべく、本実施形態では、コンデンサ素子2の全長(X)を10mm以上30mm以下としている。全長(X)が長すぎると、放熱効果が飽和し得るが(
図5参照)、全長(X)が30mm以下であれば、全長(X)は長いほど、コンデンサ素子2と金属板9とが近接する面積が増加する。
【0081】
したがって、本実施形態によれば、コンデンサ素子2で発生した熱を外部に放出しやすい。なお、全長(X)の数値範囲の技術的意義については、実施例の項において、実験データを示しながら明確にしている(
図5参照)。
【0082】
4.第4実施形態
次に第4実施形態に係るケースレスコンデンサ1について、図面を参照して説明する。第4実施形態では、第1~3実施形態と同様の構成要素には第1~3実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
【0083】
<第1端面電極及び第2端面電極の厚さ>
第1端面電極61及び第2端面電極62の厚さ(Y)が0.5mm以上1.5mm以下である(
図1B参照)。なお、本実施形態では、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)が2.0以上10.0以下の範囲を逸脱していてもよい。
【0084】
電極厚(Y)が0.5mm以上であることで、放熱性の低下を抑制することができる。一方、電極厚(Y)が1.5mm以下であることで、はんだ濡れ性の低下を抑制することができる。
【0085】
電極厚(Y)の下限値は、好ましくは0.7mm以上、より好ましくは1.0mm以上である。なお、第1端面電極61の厚さ(Y1)と第2端面電極62の厚さ(Y2)とは同じでも異なってもよい。
【0086】
<作用効果>
第1実施形態と同様に、本実施形態に係るケースレスコンデンサ1も、一対のバスバー600間に交流電圧を印加することにより充電及び放電を繰り返す。これにより、コンデンサ素子2に熱が発生し得る。
【0087】
上記の熱を外部に放出すべく、本実施形態では、第1端面電極61及び第2端面電極62の厚さ(Y)を0.5mm以上1.5mm以下としている。電極厚(Y)が厚すぎると、はんだ濡れ性が低下し得るが、電極厚(Y)が1.5mm以下であれば、電極厚(Y)は厚いほど、第1端面電極61及び第2端面電極62と金属板9とが近接する面積が増加する。金属板9と同様に、第1端面電極61及び第2端面電極62は、封止部7に比べて熱伝導性が高いので、第1端面電極61及び第2端面電極62から金属板9に熱が逃げやすくなる。
【0088】
したがって、本実施形態によれば、コンデンサ素子2で発生した熱を外部に放出しやすい。なお、電極厚(Y)の数値範囲の技術的意義については、実施例の項において、実験データを示しながら明確にしている(
図6参照)。
【実施例0089】
以下、本開示を実施例によって具体的に説明する。
【0090】
1.サンプル
放熱効果を評価するため、コンデンサ素子2(巻回型)の寸法を変えて、
図1A~
図1Cに示すケースレスコンデンサ1を20個(サンプル1~22)製造した(表1参照)。なお、各サンプルの静電容量は115μFである。また各サンプルの封止部7は、エポキシ樹脂の硬化物で形成されている。封止部7の幅(W)は(B+5)mm、封止部7の高さ(H)は(A+5)mm、封止部7の全長(TL)は(X+6)mmである。
【0091】
各サンプルの第1誘電体フィルム210は、厚さ2.0μmのポリプロピレン(PP)フィルムである。第2誘電体フィルム220は、第1誘電体フィルム210と同じである。
【0092】
各サンプルの第1金属化フィルム21は、アルミニウムが蒸着されて厚さ20nmの蒸着部21aが形成されている。第2金属化フィルム22の蒸着部22aは、第1金属化フィルム21の蒸着部21aと同じである。
【0093】
各サンプルの金属板9は、厚さ1mmのアルミニウム板である。
【0094】
各サンプルの絶縁層8は、エポキシ樹脂接着剤の硬化物で形成されている。絶縁層8の厚さは、0.3mmである。
【0095】
各サンプルの第1端面電極61及び第2端面電極62の材質は、亜鉛である。
【0096】
各サンプルのコンデンサ素子2の全長(X)、コンデンサ素子2の幅(B)、平面間距離(A)、電極厚(Y)、及びコンデンサ素子2の扁平率(B/A)は、表1に示すとおりである。電極厚(Y)は、第1端面電極61及び第2端面電極62の各々の厚さである。つまり、第1端面電極61の厚さ(Y1)と第2端面電極62の厚さ(Y2)とは同じである。
【0097】
【0098】
2.評価方法
85℃の雰囲気下において、
図2A及び
図2Bに示すように、金属板9を下にしてケースレスコンデンサ1を65℃の冷却板90の上に置いた。このように、金属板9と冷却板90とを接触させた。この状態で十分に時間が経過して平衡に達したときのケースレスコンデンサ1の温度を測定し、この温度を基準温度(通電前の温度)とした。なお、ケースレスコンデンサ1の温度の測定点は、コンデンサ素子2の第1平面41の中央部である。温度の測定は、熱電対を用いて行った。
【0099】
次に一対のバスバー600間に周波数10kHzの交流電流100Aを通電し、この状態で十分に時間が経過して平衡に達したときのケースレスコンデンサ1の温度を測定し、この温度を通電後の温度とした。
【0100】
そして、通電後の温度と通電前の温度との差から、基準温度に対する上昇温度(△T)を求めた。各サンプルの上昇温度(△T)を表1に示す。表1の実験データを解析することにより、放熱効果に関して以下のような知見が得られた。
【0101】
3.結果
(1)扁平率(B/A)
表2は、表1中の一部のサンプルを抜き出して作成されたものである。
【0102】
【0103】
図3は、表2の実験データを用いて作成されたグラフである。すなわち、横軸に扁平率(B/A)、縦軸に上昇温度(△T)をとって、表2の実験データをプロットすると、
図3に示すようなグラフが得られた。
図3中、Y(0.5)は、電極厚(Y)が0.5mmの場合の曲線、Y(1.0)は、電極厚(Y)が1.0mmの場合の曲線、Y(2.0)は、電極厚(Y)が2.0mmの場合の曲線を示す。
【0104】
図3からコンデンサ素子2の扁平率(B/A)が2.0以上であることで、上昇温度(△T)を25℃よりも低くできると考えられる。また放熱効果に限って言えば、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)は5.0より大きくても問題が無いように考えられる。
【0105】
(2)平面間距離(A)
表3は、表1中の一部のサンプルを抜き出して作成されたものである。
【0106】
【0107】
図4は、表3の実験データを用いて作成されたグラフである。すなわち、横軸に平面間距離(A)、縦軸に上昇温度(△T)をとって、表3の実験データをプロットすると、
図4に示すようなグラフが得られた。
【0108】
図4からコンデンサ素子2の平面間距離(A)が30mm以下であることで、上昇温度(△T)を20℃よりも低くできると考えられる。また放熱効果に限って言えば、コンデンサ素子2の平面間距離(A)は20mmより短くても問題が無いように考えられる。
【0109】
また表1中のサンプル21の結果から、平面間距離(A)が10mm以上30mm以下であれば、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)が2.0以上10.0以下の範囲を逸脱していても、上昇温度(△T)を25℃よりも低くできることが確認された。
【0110】
(3)全長(X)
表4は、表1中の一部のサンプルを抜き出して作成されたものである。
【0111】
【0112】
図5は、表4の実験データを用いて作成されたグラフである。すなわち、横軸に全長(X)、縦軸に上昇温度(△T)をとって、表4の実験データをプロットすると、
図5に示すようなグラフが得られた。
【0113】
図5からコンデンサ素子2の全長(X)が30mmを超えると、上昇温度(△T)がほぼ横這いになることが分かる。また
図5からコンデンサ素子2の全長(X)が30mm以下であることで、上昇温度(△T)を22℃よりも低くできると考えられる。また放熱効果に限って言えば、コンデンサ素子2の全長(X)は18mmより小さくても問題が無いように考えられる。
【0114】
また表1中のサンプル22の結果から、コンデンサ素子2の全長(X)が10mm以上30mm以下であれば、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)が2.0以上10.0以下の範囲を逸脱していても、上昇温度(△T)を25℃よりも低くできることが確認された。
【0115】
(4)電極厚(Y)
表5は、表1中の一部のサンプルを抜き出して作成されたものである。
【0116】
【0117】
図6は、表5の実験データを用いて作成された棒グラフである。
図6から、放熱効果に限って言えば、電極厚(Y)は厚いほど好ましいと考えられる。
【0118】
また表1中のサンプル22の結果から、電極厚(Y)が0.5mm以上1.5mm以下であれば、コンデンサ素子2の扁平率(B/A)が2.0以上10.0以下の範囲を逸脱していても、上昇温度(△T)を25℃よりも低くできることが確認された。
【0119】
一方、表6は、表5中のサンプル1、2、4にサンプル23を加えて作成されたものである。サンプル23の電極厚(Y)は1.5mmである。
【0120】
サンプル1、2、4、21のはんだ濡れ性を接触角により評価した。接触角は、協和界面科学株式会社製「自動接触角計 DMe-201」を用いて測定した。評価基準は、以下のとおりである。
【0121】
A:接触角が30°未満
B:接触角が30°以上45°未満
C:接触角が45°超。
【0122】
【0123】
表6から、はんだ濡れ性に限って言えば、電極厚(Y)は2.0mmよりも薄い方が有利であることが分かる。