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特開2023-68546近赤外線吸収フィルタ及びその製造方法
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  • 特開-近赤外線吸収フィルタ及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068546
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】近赤外線吸収フィルタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20230510BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20230510BHJP
   G02B 5/28 20060101ALN20230510BHJP
   G02B 5/02 20060101ALN20230510BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/26
G02B5/28
G02B5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179740
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】521481175
【氏名又は名称】水晶光電ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中山 明仁
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
【Fターム(参考)】
2H042BA01
2H042BA13
2H042BA16
2H148CA04
2H148CA06
2H148CA09
2H148CA12
2H148CA17
2H148CA19
2H148CA23
2H148CA29
2H148FA05
2H148FA07
2H148FA09
2H148FA13
2H148FA22
2H148FA24
2H148GA09
2H148GA19
2H148GA24
2H148GA32
(57)【要約】
【課題】近赤外線吸収フィルタの性能低下を抑制しつつコストダウンを促進する。
【解決手段】近赤外線吸収フィルタ43は、近赤外線吸収粒子7が樹脂基材6に分散及び/又は保持されたものである。近赤外線吸収粒子7は、近赤外線に対して選択的な光吸収特性を有し、かつ50%粒子径が500nm以下であるガラス粒子又は樹脂粒子である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線吸収粒子が樹脂基材に分散及び/又は保持された近赤外線吸収フィルタであって、
前記近赤外線吸収粒子は、近赤外線に対して選択的な光吸収特性を有し、かつ50%粒子径が500nm以下であるガラス粒子又は樹脂粒子である、近赤外線吸収フィルタ。
【請求項2】
前記近赤外線吸収粒子の50%粒子径は、300nm以下、又は200nm以下、又は100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の近赤外線吸収フィルタ。
【請求項3】
前記近赤外線吸収粒子は、銅が添加されたリン酸系ガラス、及び/又は、近赤外線吸収色素が添加された樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の近赤外線吸収フィルタ。
【請求項4】
前記樹脂基材は、シリコーン系樹脂、ポリイミド、又はポリオレフィン樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の近赤外線吸収フィルタ。
【請求項5】
前記近赤外線吸収フィルタにおける前記近赤外線吸収粒子の質量%は、10~90質量%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の近赤外線吸収フィルタ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の近赤外線吸収フィルタと、
近赤外線の選択的な反射のために屈折率が異なる誘電体層が交互に積層されて成る近赤外線反射フィルタを備え、
前記近赤外線吸収フィルタと前記近赤外線反射フィルタが積層される、フィルタユニット。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の近赤外線吸収フィルタ又は請求項6に記載のフィルタユニットと、
前記近赤外線吸収フィルタ又は前記フィルタユニットを介して到来する光を受光する半導体受光素子を備える受光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の受光装置を周囲光センシング装置として含む電子機器。
【請求項9】
近赤外線吸収粒子が樹脂基材に分散及び/又は保持された近赤外線吸収フィルタの製造方法であって、
近赤外線に対して選択的な光吸収特性を有するガラス又は樹脂原料を粉砕して50%粒子径が500nm以下の近赤外線吸収粒子の粉体を得る工程と、
前記樹脂基材になるべき樹脂材料の流体と前記近赤外線吸収粒子の粉体を混合する工程を含む、近赤外線吸収フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、近赤外線吸収フィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外線カットフィルタとしては反射型と吸収型が知られている。反射型に関しては、異なる屈折率の誘電体層を交互に積層させて光の干渉に基づいて近赤外線を選択的に反射させる方法が知られている。この方法の一つの欠点は、薄膜の積層に長時間を要し、入射角依存性があることである。吸収型に関しては、2価の銅イオンを含むガラス(通称、青ガラス)や近赤外線吸収性の色素を含有する樹脂が知られている。
【0003】
特許文献1には吸収型のフィルタが開示されている。無機微粒子として金属酸化物粒子が採用されている。特許文献2にも同種のフィルタが開示されており、Cu又はPを含む酸化物の結晶子からなる近赤外線吸収粒子が開示されている。特許文献3にも同種のフィルタが開示されており、近赤外線吸収材料としてリン化合物が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6114235号公報
【特許文献2】特許第5454111号公報
【特許文献3】特開2006-103069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スマートフォンといった電子機器にも周囲光センサーが実装されはじめていることに見られるように、近赤外線吸収フィルタの市場拡大が進展しており、その性能低下を抑制しつつコストダウンを促進することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る近赤外線吸収フィルタは、近赤外線吸収粒子が樹脂基材に分散及び/又は保持された近赤外線吸収フィルタであって、
近赤外線吸収粒子は、近赤外線に対して選択的な光吸収特性を有し、かつ50%粒子径が500nm以下であるガラス粒子又は樹脂粒子である。
【0007】
幾つかの実施形態においては、近赤外線吸収粒子の50%粒子径は、300nm以下、又は200nm以下、又は100nm以下である。
【0008】
幾つかの実施形態においては、近赤外線吸収粒子は、銅が添加されたリン酸系ガラス、及び/又は、近赤外線吸収色素が添加された樹脂を含む。
【0009】
幾つかの実施形態においては、樹脂基材は、シリコーン系樹脂、ポリイミド、又はポリオレフィン樹脂を含む。近赤外線吸収粒子の質量%が多い場合、樹脂基材は、バインダーとしての役割を担う。
【0010】
幾つかの実施形態においては、近赤外線吸収フィルタにおける近赤外線吸収粒子の質量%は、(近赤外線吸収フィルタの全固形部に対して)10~90質量%である。
【0011】
幾つかの実施形態においては、近赤外線吸収フィルタと近赤外線反射フィルタがフィルタユニットとして組み合わせて用いられる。近赤外線反射フィルタは、近赤外線の選択的な反射のために屈折率が異なる誘電体層が交互に積層されて成る。近赤外線吸収フィルタと近赤外線反射フィルタが積層される。近赤外線反射フィルタは、近赤外線吸収フィルタよりも光入射側(即ち、装置内部から見て外側)に配置され得る。
【0012】
本開示の別態様に係る受光装置は、上述の近赤外線吸収フィルタ又はフィルタユニットと、近赤外線吸収フィルタ又はフィルタユニットを介して到来する光を受光する半導体受光素子を含む。受光装置は、周囲光センシング装置として電子機器に組み込まれ得る。
【0013】
本開示の更なる別態様に係る近赤外線吸収フィルタの製造方法は、近赤外線吸収粒子が樹脂基材に分散及び/又は保持された近赤外線吸収フィルタの製造方法であって、
近赤外線に対して選択的な光吸収特性を有するガラス又は樹脂原料を粉砕して50%粒子径が500nm以下の近赤外線吸収粒子の粉体を得る工程と、
樹脂基材になるべき樹脂材料の流体と近赤外線吸収粒子の粉体を混合する工程を含む。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様によれば、近赤外線吸収フィルタの性能低下を抑制しつつコストダウンすることが促進され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一態様に係る電子機器の概略図である。
図2】電子機器に内蔵される周囲光センシング装置の概略図である。
図3】近赤外線吸収フィルタの概略図である。
図4】近赤外線吸収フィルタの模範的又は大まかな透過スペクトルを示す概略図である。
図5】反射型及び吸収型近赤外線吸収フィルタの両方を含むフィルタユニットの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の非限定の実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本明細書に開示された近赤外線吸収フィルタにのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々な近赤外線吸収フィルタにも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0017】
本開示に係る近赤外線吸収フィルタは、様々な電子機器に実装可能であり、例えば、図1に示す電子機器1(詳細には、電子機器1に内蔵された周囲光センシング装置4)に内蔵される。電子機器1は、所謂、スマートフォンであって、ディスプレイ2の外周の所定位置にカメラ3と周囲光センシング装置4が設けられている。周囲光センシング装置4において、単位時間当たりに受光面に入射する光量が検出され、これに基づいて(例えば、スマートフォン又はカメラのCPU(Central Processing Unit)により)照度が算出される。算出された照度は、カメラ3の動作条件、又はカメラ3の取得画像に対する画像処理、又は(例えば、照度計の実装のためにインストールされたアプリケーションによる)単なる照度の提示、又は他の目的のために用いられる。なお、電子機器1における周囲光センシング装置4の位置及び個数は任意に設定可能である。
【0018】
周囲光センシング装置4は、図2に示すように、実装基板41、半導体受光素子42、近赤外線吸収フィルタ43、拡散板44、窓材45、及びホルダー46,47を有する。実装基板41は、ガラスエポキシ樹脂又は他の材料から成る絶縁性基板であり、配線パターンが形成されている。半導体受光素子42は、例えば、所定面積の受光面を有するフォトダイオード又は他の種類の光電変換装置であり、実装基板41の配線パターンに対して電気的に接続される。
【0019】
半導体受光素子42の受光面上には、近赤外線吸収フィルタ43、拡散板44、及び窓材45がこの順で配置される。周囲光は、窓材45、拡散板44、近赤外線吸収フィルタ43を透過して半導体受光素子42の受光面に入射し、半導体受光素子42において光電変換される。半導体受光素子42で生成された光電流が不図示の受光回路により電圧に変換され、必要に応じてデジタル値に変換され、外部(例えば、スマートフォン又はカメラのCPU)に出力される。
【0020】
窓材45は、可視光帯(300~700nmの波長帯)に対して高い透過率(80%以上)を有する材料(例えば、ガラス、石英)から成る。拡散板44は、光を拡散させる光学素子であり、例えば、その表面又は内部に微小レンズを有する。窓材45と同様、拡散板44は、可視光帯(300~700nmの波長帯)に対して高い透過率(80%以上)を有する。近赤外線吸収フィルタ43は、近赤外線吸収粒子が樹脂基材に分散及び/又は保持されて成り、近赤外線に対して選択的な光吸収特性を有する。窓材45及び拡散板44と同様、近赤外線吸収フィルタ43は、可視光帯(300~700nmの波長帯)に対して高い透過率(例えば、70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上)を有する。
【0021】
近赤外線吸収フィルタ43は、図3に示すように樹脂基材6と一群の近赤外線吸収粒子7を含む複合フィルタである。端的には、近赤外線吸収粒子7が樹脂基材6に分散及び/又は保持されている。なお、図3では、近赤外線吸収粒子7が円形で模式的に示されている。近赤外線吸収粒子7は、球形に限定されず、不定の3次元形状を持ち得る。樹脂基材6は、可視光帯(300~700nmの波長帯)に対して高い透過率(例えば、70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上)を有し、例えば、シリコーン系樹脂、ポリイミド、又はポリオレフィン樹脂から成る。近赤外線吸収粒子7は、近赤外線(例えば、700nm~1200の波長帯の近赤外線)に対して選択的な光吸収特性を有し、かつ50%粒子径(D50)が500nm以下であるガラス粒子又は樹脂粒子である。なお、樹脂基材6と同様、近赤外線吸収粒子7は、可視光帯(300~700nmの波長帯)に対して高い透過率(例えば、70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上)を有する。
【0022】
本実施形態においては、近赤外線吸収粒子7として機能するガラス粒子又は樹脂粒子が近赤外線の吸収の役割を担い、樹脂基材6がそれらのガラス粒子又は樹脂粒子の保持の役割を担う。これにより近赤外線吸収フィルタ43の性能を維持しつつコストダウンを促進することが可能になり得る。近赤外線を選択的に吸収するガラス(即ち、可視光帯には透明であり、近赤外線(例えば、700nm~1200の帯域の光線)には不透明であるガラス)は、通称、青ガラスとして市場において容易に入手可能である。また、青ガラスの代替品として、それと同等の光吸収特性を添加剤(例えば、無機又は有機の近赤外線吸収色素)を樹脂に添加して得ることもでき、これも市場において容易に入手可能である。これらの青ガラス又は同等の機能性樹脂をそのまま用いる場合、1以上の観点(例えば、価格、機械的強度、厚み、又は光学的特性)から得策ではないことが想定される。例えば、青ガラスは薄くなるほど壊れやすくなる。機能性樹脂は、高価になり得る。本実施形態によれば、これらの欠点を回避又は抑制することが見込める。
【0023】
近赤外線吸収粒子7のガラス粒子又は樹脂粒子は、公知の乾式粉砕法又は湿式粉砕法を用いて得ることができる。乾式粉砕法としては、ボールミル、ジェットミル、ミル型粉砕機、ミキサー型粉砕機等を用いる方法等が挙げられる。湿式粉砕法としては、湿式ミル(ボールミル、遊星ミル等)、クラッシャー、乳鉢、衝撃粉砕装置(ナノマイザー等)、湿式微粒子化装置等を用いる方法等が挙げられる。例えば、青ガラスを乾式粉砕法で粉砕することにより、近赤外線吸収粒子7として機能するガラス粒子が得られる。同様、機能性樹脂を乾式粉砕法で粉砕することにより、近赤外線吸収粒子7として機能する樹脂粒子が得られる。なお、「粒子」は、粉砕法に依存して、又は、実際に用いる粉砕機に応じて、様々な形状を用いる。
【0024】
なお、青ガラス等の粉砕により近赤外線吸収粒子7が得られる場合、近赤外線吸収粒子7は、銅(例えば、酸化銅(CuO))が添加されたリン酸系ガラスを含む。機能性樹脂の粉砕により近赤外線吸収粒子7が得られる場合、近赤外線吸収粒子7は、近赤外線吸収色素が添加された樹脂を含む。近赤外線吸収色素は、(特には、長期に亘る)耐光性を持つものが好ましい。
【0025】
近赤外線吸収粒子7のガラス粒子又は樹脂粒子は粒径分布を持ち、50%粒子径(D50)が500nm以下、300nm以下、又は200nm以下、又は100nm以下であり得る。90%粒子径(D90)が700nm以下、500nm以下、又は400nm以下、又は300nm以下であり得る。上述のように粒径を制御することにより近赤外線吸収フィルタ43に近赤外線吸収粒子7が含有されることに伴って近赤外線吸収フィルタ43に拡散性が付与されてしまうことが回避又は抑制される。
【0026】
粒径分布は、体積基準のものであり、横軸が粒子径を示し、縦軸が累積頻度を示す。レーザー回折散乱粒度分布装置を使用して50%粒子径と90%粒子径を測定可能である。
【0027】
近赤外線吸収フィルタ43における近赤外線吸収粒子の質量%は、10~90質量%であり得る。近赤外線吸収フィルタ43の十分な近赤外線吸収特性を確保する観点から、近赤外線吸収粒子の質量%は、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上であり得る。近赤外線吸収フィルタ43の機械的強度を確保する観点から、近赤外線吸収粒子の質量%は、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下であり得る。両者のバランスの確保の観点から、近赤外線吸収粒子の質量%は、40~80質量%の範囲内であり得る。即ち、近赤外線吸収粒子の質量%は、近赤外線吸収フィルタ43の機械的強度や近赤外線吸収特性の両立の観点(又は別の観点)から適切に決定される。近赤外線吸収フィルタ43における近赤外線吸収粒子7の分散を確保又は促進するために分散剤を添加することもできる。
【0028】
近赤外線吸収フィルタ43は、各種薄膜形成技術(スピンコーティング等)により成膜可能であり、また任意の形状に切断可能である。
【0029】
近赤外線吸収フィルタ43の模範的な透過スペクトルを図4に示す。近赤外線吸収粒子7は、可視光線を殆ど吸収せず、近赤外線を多く吸収する。即ち、近赤外線吸収フィルタ43は、可視光帯(300~700nmの波長帯)の全波長に対して高い透過率(例えば、70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上)を有し、近赤外帯(例えば、700~1200nmの波長帯)の全波長に対して低い透過率(例えば、20%以下、又は15%以下、又は10%以下、又は5%以下)を持つ。
【0030】
近赤外線吸収フィルタ43の製造方法は、次の二つの工程を少なくとも含む。第1工程において、ガラス又は樹脂原料を粉砕して50%粒子径が500nm以下の近赤外線吸収粒子の粉体を得る。第2工程において、近赤外線吸収粒子の粉体と樹脂材料の流体を混合する。
【0031】
粉砕されるべきガラス又は樹脂原料は、近赤外線吸収粒子と同じく、近赤外線に対して選択的な光吸収特性を有するものである。上述のように公知の乾式粉砕法又は湿式粉砕法を採用可能である。近赤外線吸収粒子の粉体が混合されるべき樹脂材料の流体は、軟化又は溶融状態の樹脂、又は固形樹脂の粉体であり得る。流体の樹脂材料が熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の場合、加熱又は冷却により硬化させることができる。流体の樹脂材料がエネルギー線硬化樹脂の場合、エネルギー線の照射により硬化させることができる(尚、エネルギー線は、例えば、紫外線である)。流体が粉体である時、例えば、加熱により軟化又は溶融させ、続いて冷却により硬化させることができる。このようにして近赤外線吸収フィルタ43が製造される。なお、近赤外線吸収粒子の粉体が混合されるべき樹脂材料は、近赤外線吸収粒子の樹脂とは異なる樹脂が用いられる。
【0032】
混合工程後に薄膜形成工程を行うことができる。例えば、スピンコーティング等によって近赤外線吸収粒子と樹脂材料の混合組成物から所定厚の薄膜を形成することができる。混合工程後にスタンプ工程を行うことができる。これによりスタンプ・ダイに応じた光学的構造(例えば、マイクロレンズ、又はマイクロレンズアレイ、又は回折格子)を近赤外線吸収フィルタに持たせることができる。この形態は、近赤外線吸収粒子と樹脂基材から近赤外線吸収フィルタを形成する本開示の有望な候補例の一つである。なお、本開示の近赤外線吸収フィルタに関して様々な製法が考えられ、その全てについて説明することは省略する。
【0033】
図5は、反射型及び吸収型近赤外線吸収フィルタの両方を含むフィルタユニットの例を示す模式図である。図5においては、光入射側から順に、反射型フィルタ90と近赤外線吸収フィルタ43が配置される。反射型フィルタ90は、支持基板91と、異なる屈折率の誘電体層(例えば、SiO2とTiO2)が交互に積層された積層体92を含む。近赤外線吸収フィルタ43は上述のものである。光束は、まず反射型フィルタ93を透過し、次に、近赤外線吸収フィルタ43を透過し、受光される。この過程で、近赤外線が反射型フィルタ93により反射され、同様、近赤外線吸収フィルタ43により吸収される。かかる実施形態においては、反射型フィルタ93を透過した近赤外線は、近赤外線吸収フィルタ43により吸収される。従って、反射型フィルタ93の誘電体層の積層数を減少し、そのコストダウンを図ることができる。
【0034】
実施形態によっては、反射型フィルタ90の支持基板91の第1面上に積層体92が積層され、反射型フィルタ90の支持基板91の第2面上に近赤外線吸収フィルタ43が積層され得る。反射型フィルタ90の支持基板91の第2面に近赤外線吸収フィルタ43が接着剤を介して又は介することなく固着し得る。反射型フィルタ90の支持基板91の第2面上で近赤外線吸収フィルタ43を成膜することも可能である。
【0035】
上述の教示を踏まえ、当業者は、各実施形態及び各特徴に対して様々な変更を加えることができる。近赤外線吸収フィルタは、周囲光センシング装置に限らず、カメラにも用いることができる。例えば、近赤外線吸収フィルタは、CCD撮像素子の受光面上に配置され得る。
【符号の説明】
【0036】
1 :電子機器
2 :ディスプレイ
3 :カメラ
4 :周囲光センシング装置
6 :樹脂基材
7 :近赤外線吸収粒子
41 :実装基板
42 :半導体受光素子
43 :近赤外線吸収フィルタ
44 :拡散板
45 :窓材
90 :反射型フィルタ
91 :支持基板
92 :積層体
93 :反射型フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5