(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068549
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】バンド及び時計
(51)【国際特許分類】
A44C 5/02 20060101AFI20230510BHJP
A44C 5/14 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A44C5/02 F
A44C5/02 E
A44C5/14 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179748
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】502366745
【氏名又は名称】セイコーウオッチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】檜林 勇吾
(72)【発明者】
【氏名】川村 公則
(72)【発明者】
【氏名】伊東 絢人
(72)【発明者】
【氏名】印牧 幸男
(72)【発明者】
【氏名】平岡 武
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 昭尚
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸靖
(57)【要約】
【課題】屈曲性を高く維持することにより、装着感を向上しつつ劣化を抑制することができるバンドを提供する。
【解決手段】バンド1は、少なくとも可撓性を有する部材を含む複数の部材が積層された芯材本体15を有する芯材3と、芯材3を取り囲む表皮部材2と、を備える。芯材本体15は、可変性能部材と、特殊部材と、が互いに熱圧着により接合されて時計の表裏方向に積層されることにより形成される。可変性能部材は、可撓性及び温度依存性を有し、プラスチックを含んで形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する部材を含む複数の部材が積層された積層構造体を有する芯材と、
前記芯材を取り囲む表皮部材と、
を備えるバンド。
【請求項2】
前記積層構造体は、
可撓性を有し、プラスチックを含んで形成される第一部材と、
前記第一部材よりも厚みが薄い第二部材と、
を有する請求項1に記載のバンド。
【請求項3】
前記積層構造体は、
可撓性を有し、プラスチックを含んで形成される第一部材と、
前記第一部材と素材が異なる第二部材と、
を有する請求項1又は請求項2に記載のバンド。
【請求項4】
前記第一部材は、温度によって柔らかさが変化する温度依存性を有する請求項2又は請求項3に記載のバンド。
【請求項5】
前記第一部材は、可撓性及び温度依存性を有するプラスチック製のシートであり、
前記第二部材は、不織布である請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のバンド。
【請求項6】
前記積層構造体は、前記第一部材と前記第二部材とが熱圧着により互いに接合されることにより形成される請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のバンド。
【請求項7】
前記芯材は、
芯材本体と、
前記芯材本体と前記表皮部材との間に設けられた補助芯材と、
によって構成され、
前記積層構造体は、前記芯材本体である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のバンド。
【請求項8】
前記芯材は、
芯材本体と、
前記芯材本体と前記表皮部材との間に設けられた補助芯材と、
によって構成され、
前記積層構造体は、前記補助芯材である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のバンド。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のバンドと、
前記バンドと接続される時計本体と、
を有する時計。
【請求項10】
前記芯材は補助芯材を有し、
前記補助芯材は、前記バンドの長手方向のうち前記時計本体との接続部分である基端部のみに設けられる請求項9に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンド及び時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腕時計等の腕に装着するバンドにおいて、腕回りへの装着感を高めるための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、形状記憶合金をバンドの芯材として用いた腕時計の構成が開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、形状記憶合金によってバンドがC字状に保持される。これにより、着脱を容易にし、快適な装着感を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、主に合成樹脂や皮革等を用いたバンドでは、バンドの厚みが増加するにつれて屈曲性が低下することにより、腕回りへの装着感が悪化するおそれがある。さらに、厚みのあるバンドを繰り返し屈曲させることにより、バンドが劣化し易くなるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、装着感を向上しつつ劣化を抑制することができるバンド及びこのバンドを備えた時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一つの形態のバンドは、可撓性を有する部材を含む複数の部材が積層された積層構造体を有する芯材と、前記芯材を取り囲む表皮部材と、を備える。
【0008】
この構成によれば、バンドの屈曲性を高く維持することができ、腕回りへの装着感を向上できる。特に腕時計用のバンド等として用いた場合には、デザイン上厚みを増加させた場合であっても屈曲性を高めることができる。よって、汎用性を向上することができる。
バンドは、少なくとも可撓性を有する部材を含む複数層を積層した積層構造体によって構成されるので、例えば機能や性能の異なる部材同士を組み合わせて積層することができる。これにより、可撓性を有する部材の他に、種々の用途に応じて積層する部材を選択することにより、芯材に高い機能性を持たせることができる。例えば形状維持や密着性を高める部材を積層することにより、バンドを繰り返し屈曲させることによるバンドの劣化を抑制できる。
したがって、装着感を向上しつつ劣化を抑制することができるバンドを提供できる。
【0009】
また、前記バンドは、前記積層構造体は、可撓性を有し、プラスチックを含んで形成される第一部材と、前記第一部材よりも厚みが薄い第二部材と、を有する。
【0010】
この構成によれば、可撓性を有するプラスチック素材である第一部材と、第一部材よりも薄い第二部材と、が積層されることにより芯材が形成される。第一部材は第二部材よりも厚いので、芯材はメイン機能として可撓性を有する。これにより、複数の部材を積層した場合であっても、芯材として高い屈曲性を有することができる。また、第一部材はプラスチック製の材料で形成されるので、例えば芯材を金属製の材料により形成する場合と比較して、芯材の厚みを増加させた際にバンドの硬さが増すことを抑制できる。よって、芯材の厚みが増加した場合であっても屈曲性を高く維持し、装着感を向上できる。
【0011】
また、前記バンドは、前記積層構造体は、可撓性を有し、プラスチックを含んで形成される第一部材と、前記第一部材と素材が異なる第二部材と、を有する。
【0012】
この構成によれば、可撓性を有するプラスチック素材である第一部材と、第一部材と異なる素材の第二部材と、が積層されることにより芯材が形成される。このように、可撓性を有する部材と可撓性以外の機能を有する部材とを組み合わせることで、芯材に複数の機能性を持たせることができる。よって、厚みが増した場合であっても屈曲性を高く維持するとともに、バンドの劣化や使用時の変形等を効果的に抑制できる。
【0013】
また、前記バンドは、前記第一部材は、温度によって柔らかさが変化する温度依存性を有する。
【0014】
この構成によれば、例えばバンドを腕に装着した際には、バンドが温められることにより第一部材が柔らかくなる。これにより、装着時におけるバンドの腕への追従性が向上し、装着感を高めることができる。さらに、バンドの厚みが増加した場合であってもバンドが屈曲し易いので、無理にバンドを屈曲させる必要が無い。これにより、例えばバンドに対して過度に大きな力が加わることによるバンドの劣化等を抑制できる。また、例えば脱着後には、バンドの温度が冷めることにより第一部材が変形し難くなる。これにより、使用時(腕装着時)以外でのバンドの変形を抑制し、バンドの型崩れや劣化を抑制できる。
【0015】
また、前記バンドは、前記第一部材は、可撓性及び温度依存性を有するプラスチック製のシートであり、前記第二部材は、不織布である。
【0016】
この構成によれば、第一部材を有することにより、特にバンドの屈曲性及び装着感を向上できる。また、第二部材を有することにより、芯材の形状を維持し易く、かつ密着性及び耐久性に優れた芯材とすることができる。さらに、金属製の材料を用いることなく芯材を形成できるので、バンドの厚みが増加した場合であっても、必要以上にバンドが硬くなるのを抑制し、屈曲性を高く維持することができる。
【0017】
また、前記バンドは、前記積層構造体は、前記第一部材と前記第二部材とが熱圧着により互いに接合されることにより形成される。
【0018】
この構成によれば、接着剤を用いる場合と比較して、第一部材と第二部材をより容易に積層することができる。また、第一部材及び第二部材をそれぞれ個別で成形した後に接合させることができるので、芯材の形状自由度が高く、製造性を向上できる。
【0019】
また、前記バンドは、前記芯材は、芯材本体と、前記芯材本体と前記表皮部材との間に設けられた補助芯材と、によって構成され、前記積層構造体は、前記芯材本体である。
【0020】
また、前記バンドは、前記芯材は、芯材本体と、前記芯材本体と前記表皮部材との間に設けられた補助芯材と、によって構成され、前記積層構造体は、前記補助芯材である。
【0021】
本発明の一つの形態の時計は、上述のバンドと、前記バンドと接続される時計本体と、を有する。
【0022】
この構成によれば、特に腕時計用のバンドとして用いる場合に好適な構成とすることができる。すなわち、屈曲性を向上し、腕回りへの装着時におけるユーザーの装着感を向上できる。また、腕への着脱を繰り返すことによるバンドの劣化を抑制できる。
したがって、装着感を向上しつつ劣化を抑制することができるバンドを備えた時計を提供できる。
【0023】
また、前記時計は、前記芯材は補助芯材を有し、前記補助芯材は、前記バンドの長手方向のうち前記時計本体との接続部分である基端部のみに設けられる。
【0024】
この構成によれば、補助芯材がバンドの長手方向における一部のみに設けられる。このようにバンド全体でなく一部に補助芯材を設けることにより、種々のデザインや用途等に適応させることができる。特に補助芯材を基端部のみに設けた場合には、バンドの長手方向における基端部の厚みを増加させることができる。これにより、例えば時計本体の厚みが厚い腕時計に適用する場合に、長手方向の中央部から基端部に向かって徐々に厚みが増加するように芯材を形成することで、高級感を表現すことができる。また、つく棒孔等が形成される部分に補助芯材を配置しない構成とすることにより、長年の使用で芯材が伸縮した場合であっても、つく棒孔を塞ぐことがない。さらに、より大きな変形量が求められるバンドの先端部から中央部における厚みが薄くなることで、屈曲させ易くし、ユーザーの使い易さを向上できる。さらに、上述の補助芯材を用いることにより、部分的に厚みが増加した部分においても屈曲性を高く維持することができる。また、バンドと時計本体との間の接続構造に応じてバンドの厚みを変化させることができる。よって、時計の汎用性を向上できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、装着感を向上しつつ劣化を抑制することができるバンド及びこのバンドを備えた時計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図4】第1実施形態の変形例に係る芯材本体の断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。以下の説明において、ユーザーの腕に腕時計10を装着した際に腕を向く側を裏側といい、その反対を表側という場合がある。
【0028】
(第1実施形態)
(時計、バンド)
図1は、第1実施形態に係るバンド1の断面図である。
図2は、第1実施形態に係るバンド1の上面図である。
図2では、バンド1の内部が見えるように表皮部材2の一部(表材12)の図示を省略している。
図1に示すように、バンド1は、例えばユーザーが腕に巻き付けて装着する時計(腕時計)10用のバンドである。時計10は、時計本体11と、時計本体11の一端部に接続されるバンド1と、を備える。
【0029】
本実施形態のバンド1は、例えば表面の少なくとも一部に皮革材を用いて一体的に形成されたレザーバンドである。バンド1には、他方のバンドと係合するためのつく棒(不図示)やつく棒孔8(
図2参照)、或いは中留機構(不図示)等が設けられている。バンド1は、表皮部材2と、芯材3と、取付部材4と、を備える。
【0030】
(表皮部材)
図1に示すように、表皮部材2は、表材12と、裏材13と、を有する。表材12は、ユーザーの腕に時計10(バンド1)を装着した際に外側を向く面に設けられる部材であり、バンド1の意匠面となる部材である。裏材13は、時計10を装着した際にユーザーの腕側を向く面に設けられる部材である。
図2に示すように、表材12及び裏材13は、バンド1の長手方向に沿う帯状に形成された後、ステッチや接着剤等を用いて外周部が互いに接合される。これにより、表材12と裏材13との間に、後述する芯材3を入れるための空間が形成される。換言すれば、表皮部材2は、芯材3を取り囲むように形成されている。
【0031】
(芯材)
図1に示すように、芯材3は、表皮部材2の内部に設けられている。芯材3は、表材12と裏材13との間に設けられている。芯材3は、少なくとも芯材本体15を有して構成される。芯材3は、芯材本体15に加えて、本実施形態のように、少なくとも1つ以上の補助芯材16,17を有してもよい。芯材本体15と補助芯材16,17とは、別体となっている。
【0032】
図1及び
図2に示すように、芯材本体15は、バンド1の長手方向のほぼ全体に亘って設けられている。芯材本体15は、
図2に示す上面視において、表皮部材2よりも一回り小さい形状となるように形成されている。芯材本体15は、バンド1を屈曲させることが可能な程度の適度な可撓性を有するとともに、バンド1の強度を向上させる機能を有する。
【0033】
補助芯材16,17は、芯材本体15よりもバンド1の表側(表材12側)に設けられている。本実施形態において、補助芯材16,17は複数(本実施形態では2個)設けられている。第一の補助芯材16は、芯材本体15の表側の面と接触するように設けられている。第二の補助芯材17は、第一の補助芯材16よりも表側に設けられている。以下の説明において、第一の補助芯材16と第二の補助芯材17とを区別しない場合は、単に補助芯材16,17と言う場合がある。
【0034】
図3は、第1実施形態に係る芯材本体15の断面模式図である。
図3では説明を容易にするために、積層される各部材の厚みを誇張して記載している。よって、実際の各部材の厚みは、図示した厚みに限定されない。なお、図示は省略するが、補助芯材16,17も、
図3に示す芯材本体15と同様に構成される。
図3に示すように、芯材本体15は、少なくとも可撓性を有する部材を含む複数の部材が表裏方向に積層されることにより形成されている。具体的に、芯材本体15は、可変性能部材21(請求項の第一部材)と、特殊部材22(請求項の第二部材)と、を有する。
【0035】
可変性能部材21は、可撓性を有する部材である。可変性能部材21は、少なくとも伸縮性、変形性(可撓性)、及び温度依存性(感温性)を有する材料により形成されている。具体的に、可変性能部材21は、可撓性及び温度依存性を有するプラスチック製のシート(例えばHUMOFIT(登録商標))である。可変性能部材21は、プラスチック製のシートを複数枚貼り合わせたものであってもよい。可変性能部材21は、1枚のプラスチック製のシートにより形成されてもよい。可変性能部材21が温度依存性を有するとは、温度によって可変性能部材21の柔らかさが変化することを示す。柔らかさが変化し始める温度には、例えば人肌程度の温度が含まれる。よって、可変性能部材21は、ユーザーがバンド1を腕に装着した際に、非装着時と比較して柔らかくなるような機能を有する。
【0036】
特殊部材22は、可変性能部材21の少なくとも一面に積層されている。本実施形態において、特殊部材22は、可変性能部材21の両面にそれぞれ積層されている。可変性能部材21の表側の面には、表側特殊部材25が接合されている。可変性能部材21の裏側の面には、裏側特殊部材27が接合されている。よって、本実施形態において、芯材本体15は、特殊部材22、可変性能部材21、特殊部材22の順で積層された3層構造となっている。
【0037】
特殊部材22は、可変性能部材21よりも厚みが薄く形成されている。特殊部材22は、可変性能部材21とは異なる素材で形成されている。具体的に、表側特殊部材25及び裏側特殊部材27はいずれも不織布である。特殊部材22は、可変性能部材21に積層されることにより、芯材本体15及び補助芯材16,17における形状維持及び耐久性、表皮部材2との密着性を向上する機能を有している。可変性能部材21と特殊部材22とは、熱圧着又は圧着により互いに接合されている。
【0038】
本実施形態において、芯材本体15、第一の補助芯材16及び第二の補助芯材17はいずれも、同等の素材により形成された積層構造体である。すなわち、芯材本体15、各補助芯材16,17はいずれも、不織布、可変性能部材21、不織布、の順で積層されることにより形成されている。但し、芯材本体15、第一の補助芯材16及び第二の補助芯材17は、詳しくは後述するように形状及び厚みが異なる。
【0039】
図1及び
図2に示すように、このように形成された各補助芯材16,17は、バンド1の長手方向のうち、時計本体11との接続部分である基端部1aのみに設けられている。
図2に示すように、第一の補助芯材16は、バンド1の長手方向のうち、つく棒孔8が形成された部分よりも基端部1a側に設けられている。第一の補助芯材16の幅寸法は、バンド1の幅寸法(すなわち表皮部材2の幅寸法)とほぼ同等となっている。
【0040】
第二の補助芯材17は、第一の補助芯材16と同様に、バンド1の基端部1aのみに設けられている。第二の補助芯材17の幅寸法は、第一の補助芯材16の幅寸法よりも小さい。第二の補助芯材17は、バンド1の幅方向における中央部に位置している。
さらに、
図1に示すように、各補助芯材16,17は、バンド1の長手方向の基端部1aから中央部へ向かうにつれて厚みが薄くなるように形成されている。このような補助芯材16,17は、例えば、可変性能部材21と特殊部材22とを接合した後、所望の形状にカットし、厚みが徐々に変化するように削ることにより形成される。
【0041】
よって、補助芯材16,17は、バンド1の長手方向における中央部から基端部1aへ向かうにつれて厚みが増す。さらに、補助芯材16,17は、基端部1aにおいて、幅方向の両端部から中央部へ向かうにつれて厚みが増す。表皮部材2及び芯材本体15の厚みはほぼ一定とされているので、上述の補助芯材16,17を芯材3として有することにより、バンド1全体が上述した厚みの変化が生じるように形成されている。
【0042】
(取付部材)
取付部材4は、バンド1のうち時計本体11との間に設けられている。取付部材4は、上述した表皮部材2及び芯材3によって構成されるバンド本体と、時計本体11と、を接続している。
【0043】
(第1実施形態の変形例)
図4は、第1実施形態の変形例に係る芯材本体115の断面模式図である。なお、図示は省略するが、第一の補助芯材及び第二の補助芯材も、
図4に示す芯材本体115と同様に構成されてもよい。
変形例において、芯材本体115は、可変性能部材121と、可変性能部材121の片側に積層された特殊部材122と、を有する。
特殊部材122は、裏側特殊部材127と、表側特殊部材125と、を有する。裏側特殊部材127は、可変性能部材121の表側の面に接合されている。表側特殊部材125は、裏側特殊部材127よりも表側に設けられている。表側特殊部材125は、裏側特殊部材127の表側の面に接合されている。よって、本変形例において、芯材本体115は、特殊部材122、特殊部材122、可変性能部材121の順で積層された3層構造となっている。
【0044】
なお、本変形例においては、芯材本体115が
図4に示す特殊部材122、特殊部材122、可変性能部材121の順で積層された構造となっているが、これに限定されない。芯材本体115、第一の補助芯材16及び第二の補助芯材17のいずれか1つ又はいずれか2つが
図4に示す構造とされ、残りが
図3に示す特殊部材22、可変性能部材21、特殊部材22の順で積層された構造となっていてもよい。
【0045】
(作用、効果)
次に、上述のバンド1及び時計10の作用、効果について説明する。
本実施形態のバンド1によれば、バンド1は、少なくとも可撓性を有する部材を含む積層構造体によって構成される芯材3と、芯材3を取り囲む表皮部材2と、を備える。したがって、バンド1の屈曲性を高く維持することができ、腕回りへの装着感を向上できる。特に腕時計10用のバンド1等として用いた場合には、デザイン上厚みを増加させた場合であっても屈曲性を高めることができる。よって、汎用性を向上することができる。
バンド1は、少なくとも可撓性を有する部材を含む複数層を積層した積層構造体によって、芯材本体15及び補助芯材16,17が構成されるので、例えば機能や性能の異なる部材同士を組み合わせて積層することができる。これにより、可撓性を有する部材の他に、種々の用途に応じて積層する部材を選択することにより、芯材3に高い機能性を持たせることができる。例えば形状維持や密着性を高める部材を積層することにより、バンド1を繰り返し屈曲させることによるバンド1の劣化を抑制できる。
したがって、装着感を向上しつつ劣化を抑制することができるバンド1を提供できる。
【0046】
芯材本体15及び補助芯材16,17は、可変性能部材21(請求項の第一部材)と、可変性能部材21よりも厚みが薄い特殊部材22(請求項の第二部材)と、を有する。この構成によれば、可撓性を有するプラスチック素材である可変性能部材21と、可変性能部材21よりも薄い特殊部材22と、が積層されることにより芯材本体15及び補助芯材16,17が形成される。可変性能部材21は特殊部材22よりも厚いので、芯材本体15及び補助芯材16,17はメイン機能として可撓性を有する。これにより、複数の部材を積層した場合であっても、芯材3として高い屈曲性を有することができる。また、可変性能部材21はプラスチック製の材料で形成されるので、例えば芯材3を金属製の材料により形成する場合と比較して、芯材3の厚みを増加させた際にバンド1の硬さが増すことを抑制できる。よって、芯材3の厚みが増加した場合であっても屈曲性を高く維持し、装着感を向上できる。
【0047】
芯材本体15及び補助芯材16,17は、可変性能部材21と、可変性能部材21と素材が異なる特殊部材22と、を有する。この構成によれば、可撓性を有するプラスチック素材である可変性能部材21と、可変性能部材21と異なる素材の特殊部材22と、が積層されることにより芯材本体15及び補助芯材16,17が形成される。このように、可撓性を有する部材と可撓性以外の機能を有する部材とを組み合わせることで、芯材3に複数の機能性を持たせることができる。よって、厚みが増した場合であっても屈曲性を高く維持するとともに、バンド1の劣化や使用時の変形等を効果的に抑制できる。
【0048】
可変性能部材21は、温度によって柔らかさが変化する温度依存性を有する。このため、例えばバンド1を腕に装着した際には、バンド1が温められることにより可変性能部材21が柔らかくなる。これにより、装着時におけるバンド1の腕への追従性が向上し、装着感を高めることができる。さらに、バンド1の厚みが増加した場合であってもバンド1が屈曲し易いので、無理にバンド1を屈曲させる必要が無い。これにより、例えばバンド1に対して過度に大きな力が加わることによるバンド1の劣化等を抑制できる。また、例えば脱着後には、バンド1の温度が冷めることにより可変性能部材21が変形し難くなる。これにより、使用時(腕装着時)以外でのバンド1の変形を抑制し、バンド1の型崩れや劣化を抑制できる。
【0049】
可変性能部材21は、可撓性及び温度依存性を有するプラスチック製のシートであり、特殊部材22は、不織布である。このような可変性能部材21を有することにより、特にバンド1の屈曲性及び装着感を向上できる。また、特殊部材22を有することにより、芯材3の形状を維持し易く、かつ密着性及び耐久性に優れた芯材3とすることができる。さらに、金属製の材料を用いることなく芯材3を形成できるので、バンド1の厚みが増加した場合であっても、必要以上にバンド1が硬くなるのを抑制し、屈曲性を高く維持することができる。
【0050】
芯材本体15及び補助芯材16,17は、可変性能部材21と特殊部材22とが熱圧着により互いに接合されることにより形成される。これにより、接着剤を用いる場合と比較して、可変性能部材21と特殊部材22をより容易に積層することができる。また、可変性能部材21及び特殊部材22をそれぞれ個別で成形した後に接合させることができるので、芯材3の形状自由度が高く、製造性を向上できる。
【0051】
本実施形態の時計10によれば、時計10は、上述のバンド1と、バンド1と接続される時計本体11と、を有する。このため、特に腕時計10用のバンド1として用いる場合に好適な構成とすることができる。すなわち、屈曲性を向上し、腕回りへの装着時におけるユーザーの装着感を向上できる。また、腕への着脱を繰り返すことによるバンド1の劣化を抑制できる。
したがって、装着感を向上しつつ劣化を抑制することができるバンド1を備えた時計10を提供できる。
【0052】
補助芯材16,17は、バンド1の長手方向のうち時計本体11との接続部分である基端部1aのみに設けられる。補助芯材16,17がバンド1の長手方向における一部のみに設けられる。このようにバンド1全体でなく一部に補助芯材16,17を設けることにより、種々のデザインや用途等に適応させることができる。特に補助芯材16,17を基端部1aのみに設けた場合には、バンド1の長手方向における基端部1aの厚みを増加させることができる。これにより、例えば時計本体11の厚みが厚い腕時計10に適用する場合に、長手方向の中央部から基端部1aに向かって徐々に厚みが増加するように芯材3を形成することで、高級感を表現すことができる。また、つく棒孔8等が形成される部分に補助芯材16,17を配置しない構成とすることにより、長年の使用で芯材3が伸縮した場合であっても、つく棒孔8を塞ぐことがない。さらに、より大きな変形量が求められるバンド1の先端部から中央部における厚みが薄くなることで、屈曲させ易くし、ユーザーの使い易さを向上できる。さらに、上述の補助芯材16,17を用いることにより、部分的に厚みが増加した部分においても屈曲性を高く維持することができる。また、バンド1と時計本体11との間の接続構造に応じてバンド1の厚みを変化させることができる。よって、時計10の汎用性を向上できる。
【0053】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係るバンド201の断面図である。
図6は、第2実施形態に係るバンド201の上面図である。
図7は、第2実施形態に係る補助芯材216の断面模式図である。
図6では、
図2と同様、バンド201の内部が見えるように表皮部材2の一部(表材12)の図示を省略している。
第2実施形態では、芯材3が単一の補助芯材216を有する点及び特殊部材222が可変性能部材221の片面のみに設けられる点で上述した第1実施形態と相違している。
【0054】
図5及び
図6に示すように、第2実施形態のバンド201の芯材3は、芯材本体15と、単一の補助芯材216と、を有する。芯材本体15の構成は第1実施形態の芯材本体15の構成と同等であるため、説明を省略する。
第2実施形態において、補助芯材216は1個設けられる。補助芯材216は、芯材本体15よりも表側に設けられている。補助芯材216は、芯材本体15の表側の面と接触するように設けられている。補助芯材216は、バンド201の長手方向のうち、時計本体11との接続部分である基端部1aに設けられている。補助芯材216は、バンド201の長手方向のうち、つく棒孔8が形成された部分よりも基端部1a側に設けられている。補助芯材216の幅寸法は、バンド201の幅寸法よりも小さい。補助芯材216は、バンド1の幅方向における中央部に設けられている。
【0055】
図5及び
図7に示すように、補助芯材216は、バンド201の長手方向の基端部1aから中央部へ向かうにつれて厚みが薄くなるように形成されている。よって、バンド201は、長手方向において中央部から基端部1aへ向かうにつれて厚みが増すように形成される。また、バンド201は、基端部1aにおいて、幅方向の両端部と比較して中央部の厚みが厚くなるように形成されている。
【0056】
図7に示すように、第2実施形態の補助芯材216は、可変性能部材221と、単一の特殊部材222と、を有する。可変性能部材221及び特殊部材222の材料は第1実施形態と同様である。可変性能部材221は、バンド201の長手方向の基端部1aから中央部へ向かうにつれて厚みが薄くなるように形成されている。特殊部材222は、可変性能部材221の表側の面に接合されている。
【0057】
第2実施形態のバンド201によれば、第1実施形態と比較して、基端部1aを含むバンド1全体の厚みが薄く形成される。よって、より薄型のバンド1として好適に使用できる。また、芯材3が補助芯材216を有するので、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0058】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の実施形態では、バンド1,201がレザーバンドである例について説明したが、これに限られない。バンド1,201は、ナイロンバンドやシリコンバンド等、皮革以外の部材により一体的に形成された構造であってもよい。また、本発明は、いかなるタイプのバンドにも適用可能である。
【0059】
上述の実施形態では、芯材3が1個又は2個の補助芯材16,17,216を有する例について説明したが、これに限られない。芯材3は、3個以上の補助芯材を有してもよい。芯材3が複数の補助芯材を有する場合、補助芯材ごとに可変性能部材21や特殊部材22の素材、厚み、形状、積層の順番や積層数等がそれぞれ異なっていてもよい。
【0060】
特殊部材22は、不織布以外に、例えば合皮や紙製の素材であってもよい。
可変性能部材21と特殊部材22とは、接着剤等を用いて接合してもよい。また、可変性能部材21と特殊部材22とを接合しなくてもよい。但し、芯材本体15、補助芯材16,17の型崩れ等をより抑制し、かつ接着作業を容易にできる点で、熱圧着により可変性能部材21と特殊部材22とを接合する本実施形態の構成は優位性がある。
【0061】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1,201 バンド
1a 基端部
2 表皮部材
3 芯材
10 時計
11 時計本体
15,115 芯材本体
16,17,216 補助芯材
21,121,221 可変性能部材(第一部材)
22,222 特殊部材(第二部材)