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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068552
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】輻射率測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/00 20220101AFI20230510BHJP
   G01J 5/06 20220101ALI20230510BHJP
【FI】
G01J5/00 B
G01J5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179752
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友哉
(72)【発明者】
【氏名】白石 有司
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AB10
2G066AC01
2G066BA48
2G066BB01
2G066BB11
2G066CA15
(57)【要約】
【課題】
測定対象物の一部を切り出すことなく輻射率を測定することができる輻射率測定装置を提供する。
【解決手段】
輻射率測定装置は、測定対象の被測定部に面する内部空間を形成し、被測定部を含む面に当接する壁部を備え、壁部に外部からの赤外線の入射を阻止する保冷部を備える筐体部と、被測定部に接触することで当該被測定部の表面温度を測定する第1温度測定部と、内部空間に備えられ被測定部の表面温度を被測定部から輻射される赤外線の強度を測定することにより測定する第2温度測定部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の被測定部に面する内部空間を形成し、前記被測定部を含む面に当接する壁部を備え、前記壁部に外部からの赤外線の入射を阻止する保冷部を備える筐体部と、
前記被測定部に接触することで当該被測定部の表面温度を測定する第1温度測定部と、
前記内部空間に備えられ前記被測定部の表面温度を前記被測定部から輻射される赤外線の強度を測定することにより測定する第2温度測定部と、を備える輻射率測定装置。
【請求項2】
前記第1温度測定部が測定した温度と、前記第2温度測定部が測定した温度とを照合することで前記被測定部の輻射率を測定する請求項1に記載の輻射率測定装置。
【請求項3】
前記壁部は少なくとも3層の積層部として形成され、
前記保冷部は前記積層部の中間の層に配される請求項1または2に記載の輻射率測定装置。
【請求項4】
前記筐体部は前記壁部と前記壁部に接続される天井部により形成され、
前記壁部及び前記天井部は少なくとも3層の積層部として形成され、
前記保冷部は前記積層部の中間の層に配される請求項3に記載の輻射率測定装置。
【請求項5】
前記筐体部の内面部に黒体部が備えられている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の輻射率測定装置。
【請求項6】
前記内部空間の空気の温度を測定する第3温度測定部が備えられる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の輻射率測定装置。
【請求項7】
前記保冷部は保冷剤である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の輻射率測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射率の測定に用いるための輻射率測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高温環境下における、製品、半製品、部品、及び材料の動的性能、温度分布、熱応力分布、及び物性値などの計時変化の解明に数値シミュレーションを用いることがある。数値シミュレーションにおける熱計算に必要な物性値は文献などに掲載されている数値を用いることが多い。
【0003】
例えば工業用の乾燥炉の内部に載置された物体に与える熱影響について数値シミュレーションによる解明を試みる場合、当該乾燥炉の内部壁面の輻射率は、結果に与える影響が大きいので、文献に掲載されている数値を用いるのではなく、実測値を用いることが望ましい。
【0004】
例えば、特許文献1に係る放射率測定装置を用いて乾燥炉の内部壁面の放射率(輻射率)を測定する場合、当該放射率測定装置に対して乾燥炉の内部壁面は大き過ぎるので、乾燥炉の内部壁面に用いられている部材の一部を切り出す必要があり、場合によっては輻射率の測定後に乾燥炉の内部壁面の修復を行う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-153168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本開示は上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は測定対象物の一部を切り出すことなく輻射率を測定することができる輻射率測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、第1の態様に係る輻射率測定装置は、測定対象の被測定部に面する内部空間を形成し、被測定部を含む面に当接する壁部を備え、壁部に外部からの赤外線の入射を阻止する保冷部を備える筐体部と、被測定部に接触することで当該被測定部の表面温度を測定する第1温度測定部と、内部空間に備えられ被測定部の表面温度を被測定部から輻射される赤外線の強度を測定することにより測定する第2温度測定部と、を備える。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係る輻射率測定装置において、第1温度測定部が測定した温度と、第2温度測定部が測定した温度とを照合することで被測定部の輻射率を測定することとしてもよい。
【0009】
第3の態様は、第1または第2の態様に係る輻射率測定装置において、壁部は少なくとも3層の積層部として形成され、保冷部は積層部の中間の層に配されることとしてもよい。
【0010】
第4の態様は、第3の態様に係る輻射率測定装置において、筐体部は壁部と壁部に接続される天井部により形成され、壁部及び天井部は少なくとも3層の積層部として形成され、保冷部は積層部の中間の層に配されることとしてもよい。
【0011】
第5の態様は、第1ないし第4の態様のいずれか1の態様に係る輻射率測定装置において、筐体部の内面部に黒体部が備えられていてもよい。
【0012】
第6の態様は、第1ないし第5の態様のいずれか1の態様に係る輻射率測定装置において、内部空間の空気の温度を測定する第3温度測定部が備えられることとしてもよい。
【0013】
第7の態様は、第1ないし第6の態様のいずれか1の態様に係る輻射率測定装置において、保冷部は保冷剤であることとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、測定対象物の一部を切り出すことなく輻射率を測定することができる輻射率測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る非接触式温度計の測定視野について説明するための図である。
図2】第1実施形態に係る輻射率測定装置の全体構成の一例を説明するための図である。
図3】第1実施形態に係る輻射率測定装置の壁部の断面の一例を説明するための図である。
図4】第1実施形態に係る輻射率測定装置の壁部の断面の他の例を説明するための図である。
図5】第1実施形態に係る輻射率測定装置の使用状況の他の例を説明するための図である。
図6】第1実施形態に係る輻射率測定装置を用いた輻射率の測定手順を説明するためのフローチャートである。
図7】第2実施形態に係る輻射率測定装置の全体構成の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(輻射率測定装置の概要)
第1実施形態に係る輻射率測定装置1の概要について以下に説明する(図1以降参照)。
輻射率の測定は、測定対象から輻射される赤外線を感知する非接触式温度計(第2温度測定部)7となる、赤外線センサを用いて行う。輻射率を正確に測定するためには、測定対象から輻射される赤外線を遮るものを排除する必要があり、さらに赤外線センサが測定対象から輻射される赤外線以外の赤外線を感知しないようにすることが必要である。そこで、輻射率測定装置1は、測定対象の被測定部4bと非接触式温度計7とを覆う後述の筐体部2を備える(図2参照)。符号4aは測定対象の内部壁面である。
【0017】
赤外線センサは、熱型赤外線センサと量子型赤外線センサとがあり、非接触式温度計7は熱型赤外線センサである。熱型赤外線センサは、赤外線を受けることによって生じるセンサ素子(サーモパイル:不図示)の温度変化を熱起電力の物理的現象の変化として捉え、サーモパイル自身の温度を測る基準温度センサ(不図示)の出力信号とともに、電気信号として出力する。
【0018】
サーモパイル(不図示)は、複数の熱電対を直列に接続した熱電対列の温接点側を受光部としている。サーモパイルの受光部(温接点)に赤外線が入射すると、入射した赤外線の強度に応じて温接点と冷接点との間に温度差が生じ、この温度差に応じた熱起電力を発生する。温接点側の温度を知るために、冷接点側の温度を前出の基準温度センサで測定する。
【0019】
なお、非接触式温度計7として量子型赤外線センサを用いてもよい。量子型赤外線センサは、赤外線を受けるセンサ素子が赤外線の光量子によって直接励起され、この励起によって生じるセンサ素子の電圧などの電気的特性の変化を電気信号として出力する。
【0020】
非接触式温度計7は、輻射率(放射率)設定機能を備える。非接触式温度計7は、被測定部4bの表面から輻射される赤外線の強度を感知して温度を測定する。被測定部4bの表面から輻射される赤外線の強度は、被測定部4bの温度だけではなく輻射率(放射率)によって決まる。被接触式温度計7を用いて温度を測定する場合、輻射率を補正する機能となる輻射率(放射率)設定機能により非接触式温度計7が表示する温度の誤差を補正する。
【0021】
輻射率測定装置1の操作者は、後述の接触式温度計6が計測し表示する温度と被接触式温度計7が計測し表示する温度とを照合し、非接触式温度計7により表示される温度が接触式温度計6により表示される温度に一致するように輻射率(放射率)設定機能によって輻射率を調整する。非接触式温度計7により表示される温度が接触式温度計6により表示される温度に一致した時の輻射率が被測定部4bの輻射率となる。
【0022】
図1を参照して、非接触式温度計7の測定視野7cについて説明する。図1は第1実施形態に係る非接触式温度計7の測定視野7cについて説明するための図である。
【0023】
測定視野7cとは、非接触式温度計7が被測定部4bの表面温度を計測するために赤外線を集光する範囲のことをいう。非接触式温度計7が被測定部4bの温度を正確に測定するためには、測定視野7cは被測定部4bによって満たされている必要がある。従って、測定視野7cは被測定部4bに内包されている必要がある。
【0024】
測定視野7cが被測定部4bによって満たされていない状態を視野欠けといい、この状態では非接触式温度計7は被測定部4bの周囲を含めて温度を計測してしまうため、被測定部4bの正確な温度を計測できない要因となる。測定視野7cの大きさは、非接触式温度計7と被測定部4bとの距離Hによって定まる。従って、被測定部4bの大きさに応じて測定視野7c、延いては距離Hが決定される。一般的に、測定視野7cは、非接触式温度計7と被測定部4bとの距離Hが遠ざかるほど(大きくなるほど)に広くなる。
【0025】
(輻射率測定装置1の全体構成)
図2を参照して第1実施形態に係る輻射率測定装置1の全体構成について説明する。図2は、第1実施形態に係る輻射率測定装置1の全体構成の一例を説明するための図である。
【0026】
輻射率測定装置1は、工業用の乾燥炉(例えば、トンネルキルン、ロータリーキルン等)の炉壁4などを測定対象物とし、この輻射率を測定する装置である。輻射率測定装置1の測定対象物は、工業用の乾燥炉の炉壁に限定されるものではなく、測定対象物の被測定部が接触式温度計6および非接触式温度計7によって温度を計測できるものであれば特に制限されるものではない。
【0027】
輻射率測定装置1は、筐体部2、接触式温度計(第1温度測定部)6、非接触式温度計(第2温度測定部)7、及び大気温度湿度計(第3温度測定部)8などを備える。
【0028】
筐体部2は直方体であって、4つの側壁からなる壁部3を有し、壁部3に接続される天井部5を有する。壁部3は、第1側壁部3a、第2側壁部3b、第3側壁部(不図示)、及び第4側壁部(不図示)を備える(図2参照)。筐体部2は、天井部5と対向する面に開口部を有し、壁部3が測定対象となる炉壁4に当接することで、当該炉壁4に塞がれる。
【0029】
筐体部2は、測定対象の被測定部4bに面する内部空間5aを内包する。内部空間5aには、壁部3もしくは天井部5に支持部材7aを介して固定された非接触式温度計7が設置されている。非接触式温度計7は、受光部7bを炉壁4の内部壁面4aにある被測定部4bに向けて、被測定部4bの表面温度を非接触により計測する。
【0030】
なお、筐体部2は直方体に限定されるものではなく、上面を天井部とする円柱体もしくは三角柱でもよく、または5角形以上の多角形の天井部を持つ多角形柱でもよい。さらには、筐体部2はドーム型もしくは半球形状などでもよく、内部に空間を備え非接触式温度計7によって被測定部4bの温度を測定できるものであればその形状に制限はない。
【0031】
筐体部2の外部には、接触式温度計6が備えられている。接触式温度計6はワイヤ部6bを備え、ワイヤ部6bは被測定部4bに延設され、その先端部6aは被測定部4bの表面に接触されている。先端部6aは感温部になっており、先端部6aが被測定部4bの表面に接触することで接触式温度計6は被測定部4bの表面温度を測定する。接触式温度計6は熱電対を利用した温度計である。接触式温度計6は熱電対を利用した温度計に限定されるものではなく、被測定部4bの表面温度を測定できるものであれば特に制限はない。
【0032】
筐体部2の外部には、大気温度湿度計8が備えられている。大気温度湿度計8はワイヤ部8bを備え、ワイヤ部8bは内部空間5a内に延設され、その先端部8aは内部空間5a内に配置されている。大気温度湿度計8は内部空間5aの温度及び湿度を測定する。大気温度湿度計8が計測する内部空間5aの温度は、非接触式温度計7のセンサ素子であるサーモパイルの冷接点側の温度として用いられる。
【0033】
筐体部2の内面部には、その全て覆う様に黒体部10が備えられている。黒体部10は黒体塗料をスプレーなどにより塗ることで筐体部2の内面部に形成する。黒体塗料としては、カーボンブラック、黒色顔料等が挙げられる。筐体部2は筐体部2の外部から入射しようとする赤外線を遮光する目的で設けられている。さらに、筐体部2の外部から内部空間5aに入射した赤外線が有る場合に、当該赤外線が筐体部2の内面部によって乱反射して迷光になるのを抑制するため、当該赤外線は黒体部10により吸収される。黒体部10によって吸収された赤外線は熱エネルギーとなる筐体部2の外部に放熱される。内部空間5a内部であって、炉壁4の内部壁面4aの測定視野7cの外側から輻射される赤外線は、内部空間5a内で迷光になる前に黒体部10により吸収される。迷光とは、内部空間5a内部に生じ、非接触式温度計7の測温に悪影響を及ぼす光の散乱のことをいう。
【0034】
次に、図2を参照して、壁部3及び天井部5の構成について説明する。図2は第1実施形態に係る輻射率測定装置1の壁部3の断面の一例を説明するための図であり、図1におけるA-A’矢視の断面図である。なお、天井部5の構成は壁部3と同じであるため天井部5の構成の説明は省略する。
【0035】
壁部3は4層の積層部として形成される。壁部3は、内部空間5aから近い順に黒体部10、アルミニウムメッシュ部11、保冷部9、及び断熱部12の4層の積層部を備えている。アルミニウムメッシュ部11は、筐体部2の骨格をなすものであり、壁部3延いては筐体部2の形状を維持し構造的強度を担う部分である。アルミニウムメッシュ部11は、厚さ約1~数ミリ程度の網状の板状部材である。アルミニウムメッシュ部11は軽量で軟らかいため加工性がよく熱伝導性が良いという特徴を有する。
【0036】
保冷部9は保冷剤により形成される。当該保冷剤は水と高吸収性ポリマーを主要成分として含み、数時間程度0℃付近を維持する。
【0037】
断熱部12は真空断熱材13により形成される。真空断熱材13は真空部13aを備え、その外周に外包材13bを備える。真空部13aは、断熱材の内部を減圧して真空にして形成される。外包材13bは、真空部13aの真空状態を維持するためのものでありガスシールド性を備える。真空断熱材13は、内部に真空部13aを備えることで気体による熱伝達を抑制するものである。真空断熱材13は、ロックウール、グラスウール、セルロースファイバ、及びウレタンフォームなどの空気を内包する材料を用いる断熱材と比較して、高価であるが断熱効果は高い。
【0038】
断熱部12は、保冷部9の外側に配置されることで、保冷部9の冷気が筐体部2の外側に放出されるのを抑制する働きを持ち、筐体部2の温度を低温に維持するものである。なお、保冷部9もしくは断熱部12について硬質のものを用いることでアルミニウムメッシュ部11を省略し、壁部3を3層の積層構造にしてもよい。この場合、黒体部10は保冷部9の内面上に直接設ける。
【0039】
次に、図4を参照して、輻射率測定装置1の壁部3の断面の他の例について説明する。図4は輻射率測定装置1の壁部3の断面の他の例を説明するための図である。図4に示す壁部3は、図3に示した壁部3に対して断熱部12を構成する部材を異ならせたものであり、図4に示す壁部3の断熱部12以外の構成は図3に示した壁部3と同じである。従って、図4に示す壁部3の説明は、図3に示す壁部3と共通する部分については図3に示す壁部3と同じ符号を付しその説明は省略する。図4に示す壁部3の断熱部12は、その構成する部材としてロックウール14が用いられている。ロックウール14は、真空断熱材13と比較して断熱効果は劣るが安価である。なお、断熱部12に用いる部材としてロックウール14に代えて、グラスウール、セルロースファイバ、及びウレタンフォームを用いてもよく、これらの部材も、ロックウール14と同様に、真空断熱材13と比較して断熱効果は劣るが安価である。
【0040】
筐体部2は、壁部3及び天井部5に保冷部9を備えるので、筐体部2の温度を0℃付近の低い温度に維持される。従って、筐体部2の外部から入射しようとする赤外線は、筐体部2によって吸収されるので、内部空間5aに入射する赤外線を抑制することができる。
【0041】
次に、図5を参照して、第1実施形態に係る輻射率測定装置1の使用状況の他の例について説明する。図5は、輻射率測定装置1の使用状況の他の例を説明するための図である。図5に示す輻射率測定装置1は、トンネルキルン50の内部壁面51に用いられる部材の輻射率を測定するものである。輻射率測定装置1の壁部3を内部壁面51に当接することで、トンネルキルン50の内部壁面51の被測定部の輻射率を測定することができる。
【0042】
次に、図6を参照して、第1実施形態に係る輻射率測定装置1を用いた輻射率の測定手順について説明する。図6は、輻射率測定装置1を用いた輻射率の測定手順を説明するためのフローチャートである。輻射率測定装置1の測定対象として、工業用の乾燥炉の内部壁面4aの輻射率をその一例とする。
輻射率測定装置1を用いた輻射率の測定手順は「手順1」から「手順5」まである。
【0043】
「手順1」
接触式温度計6を被測定部4bに設置する。
輻射率測定装置1の筐体部2の開口部を塞ぐようにして、筐体部2を測定対象となる乾燥炉の内部壁面4aに当接させる。この状態を維持したまま、接触式温度計6の先端部6aを被測定部4bの表面に接着させた状態で固定する。被測定部4bの表面が滑らかであり、先端部6aが被測定部4bの表面と十分に接触している必要ある。
【0044】
「手順2」
被測定部4bに非接触式温度計7を向ける。
接触式温度計6の先端部6aを固定した被測定部4bに非接触式温度計7の受光部7bを向け、非接触式温度計7により被測定部4bの表面温度を測温できるようにする。
【0045】
「手順3」
この状態でおよそ30分間放置する。
接触式温度計6及び非接触式温度計7が検知し表示する温度が安定するまでの時間として30分を要する。
【0046】
「手順4」
接触式温度計6が表示している温度と等しくなるように非接触式温度計7の輻射率を調節する。
非接触式温度計7により表示される温度が接触式温度計6により表示される温度に一致するように輻射率(放射率)設定機能によって輻射率を調整する。非接触式温度計7により表示される温度が接触式温度計6により表示される温度に一致した時の輻射率が被測定部4bの輻射率となる。
【0047】
「手順5」
被測定部4bを変えて、手順1から手順4を2回実施する。合計3箇所の被測定部4bの輻射率を測定する。
【0048】
測定した3箇所の被測定部4bの輻射率の差が0.5以内の範囲にあれば、3つの輻射率の平均値を測定対象とした工業用の乾燥炉の内部壁面4aの輻射率とする。測定した3箇所の被測定部4bの輻射率の差が0.5を超えた場合、被測定部4bを変えて再度、輻射率測定装置1を用いて3つの被測定部4bの輻射率を測定する。
【0049】
(第2実施形態)
次に図7を参照して、第2実施形態に係る輻射率測定装置100について説明する。図7は第2実施形態に係る輻射率測定装置100の全体構成の一例を説明するための図である。
第2実施形態に係る輻射率測定装置100は、第1実施形態に係る輻射率測定装置1に対して筐体部200の構成が異なる。輻射率測定装置100の説明において、第1実施形態に係る輻射率測定装置1と同じ構成については、輻射率測定装置1と同じ符号を付してその説明は省略する。
【0050】
筐体部200は天井部がなく壁部3のみで構成されている。筐体部200は4角錐の形状をなし、第1側壁部3a、第2側壁部3b、第3側壁部(不図示)、及び第4側壁部(不図示)は、それぞれ隣接する他の側壁部と接続する。筐体部200は、壁部3に保冷部9を備える。そのため、筐体部200の温度は、0℃付近の低い温度に維持される。従って、筐体部200の外部から入射しようとする赤外線は、筐体部200によって吸収されるので、内部空間5aに入射する赤外線を抑制することができる。
【0051】
上記した第1及び第2実施形態によれば、輻射率の測定対象の被測定部4bに輻射率測定装置1、100を覆う様に設置することで、被測定部4bの輻射率を測定することができる。従って、輻射率の測定対象の一部を切り出すことなく輻射率を測定することができ、測定後に測定対象を補修することが不要となる。
【0052】
さらに、上記した第1及び第2実施形態によれば、筐体部2、200は保冷剤により冷却されるので筐体部2、200の外部からの赤外線の入射を抑制することができる。このため、輻射率測定装置1、100は測定する輻射率の誤差の要因となる赤外線を排除することができるため、輻射率の測定精度を向上させることができる。
【0053】
さらに、上記した第1及び第2実施形態によれば、筐体部2及び200は黒体部10を備えるので、内部空間5aに生じた迷光を黒体部10により吸収することができる。従って、輻射率測定装置1、100は測定する輻射率の誤差の要因となる赤外線を排除することができるため、輻射率の測定精度を向上させることができる。
【0054】
本開示は上記した第1及び第2実施形態に係る輻射率測定装置1及び100に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、若しくは応用例により実施可能である。
【符号の説明】
【0055】
1,100 輻射率測定装置
2,200 筐体部
3 壁部
3a 第1側壁部
3b 第2側壁部
4 炉壁(測定対象)
4a 内部壁面
4b 被測定部
5 天井部
5a 内部空間
6 接触式温度計(第1温度測定部)
6a 先端部
6b ワイヤ部
7 非接触式温度計(第2温度測定部)
7a 支持部材
7b 受光部
7c 測定視野
8 大気温度湿度計(第3温度測定部)
8a 先端部
8b ワイヤ部
9 保冷部
9a 第1保冷剤
9b 第2保冷剤
9c 第3保冷剤
10 黒体部
11 アルミニウムメッシュ部
12 断熱部
13 真空断熱材
13a 真空部
13b 外包材
14 ロックウール
50 トンネルキルン
51 内部壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7