IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成エレクトロニクス株式会社の特許一覧

特開2023-68566アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路
<>
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図1
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図2
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図3
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図4
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図5
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図6
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図7
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図8
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図9
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図10
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図11
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図12
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図13
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図14
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図15
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図16
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図17
  • 特開-アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068566
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/181 20060101AFI20230510BHJP
   H03H 11/04 20060101ALI20230510BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
H03F3/181
H03H11/04 F
H03F3/45 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179816
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 徹
【テーマコード(参考)】
5J098
5J500
【Fターム(参考)】
5J098AA01
5J098AA11
5J098AA14
5J098AB02
5J098AB31
5J098AB34
5J098AD12
5J098AD25
5J098AD26
5J098CA04
5J098CB10
5J500AA02
5J500AA12
5J500AA47
5J500AC91
5J500AC92
5J500AF17
5J500AH10
5J500AH17
5J500AH25
5J500AH29
5J500AK01
5J500AK02
5J500AK05
5J500AK46
5J500AM13
5J500AT01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小面積で歪みを抑制可能なアナログフロントエンド回路及び大規模集積回路を提供する。
【解決手段】アナログフロントエンド回路100は、入力端子N1,N2に一端が接続される第1容量C1,C2と、第1容量C1の他端に接続され、第1容量を介して信号源80からの第1入力信号を入力する第1入力部と、第1入力信号に応じた第1出力信号を出力する第1出力部とを有する完全差動アンプ12と、第1出力部から出力された第1出力信号の直流ゲインを減衰させる減衰器50と、減衰器により減衰された第1出力信号が入力され、減衰器により減衰された第1出力信号を第1入力部に出力する第1抵抗回路Rと,を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力端子に一端が接続される第1容量と、
前記第1容量の他端に接続され、前記第1容量を介して信号源からの第1入力信号を入力する第1入力部と、前記第1入力信号に応じた第1出力信号を出力する第1出力部とを有する演算増幅器と、
前記第1出力部から出力された前記第1出力信号の直流ゲインを減衰させる減衰器と、
前記減衰器により減衰された前記第1出力信号が入力され、前記減衰器により減衰された前記第1出力信号を前記第1入力部に出力する第1抵抗回路と
を備えるアナログフロントエンド回路。
【請求項2】
前記第1抵抗回路は、抵抗素子、ダイオード接続されたトランジスタ、線形領域のトランジスタ、またはスイッチトキャパシタを含む、請求項1に記載のアナログフロントエンド回路。
【請求項3】
前記減衰器は、抵抗分圧回路を含む、請求項1または2に記載のアナログフロントエンド回路。
【請求項4】
前記減衰器は、前記抵抗分圧回路の後段に設けられるローパスフィルタ回路をさらに含む、請求項3に記載のアナログフロントエンド回路。
【請求項5】
前記減衰器は、反転増幅回路を含む、請求項1または2に記載のアナログフロントエンド回路。
【請求項6】
前記第1入力信号は、シングルエンド信号である、請求項1から5の何れか1つに記載のアナログフロントエンド回路。
【請求項7】
第2入力端子に一端が接続される第2容量をさらに備え、
前記演算増幅器は、前記第2容量の他端に接続され、前記信号源からの第2入力信号を入力する第2入力部と、前記第2入力信号に応じた第2出力信号を出力する第2出力部とをさらに有し、
前記減衰器は、前記第2出力部から出力された前記第2出力信号の直流ゲインを減衰させ、
前記アナログフロントエンド回路は、
前記減衰器により減衰された前記第2出力信号が入力され、前記減衰器により減衰された前記第2出力信号を前記第2入力部に出力する第2抵抗回路をさらに備える、請求項1から5の何れか1つに記載のアナログフロントエンド回路。
【請求項8】
前記第1入力部は、第1非反転入力部であり、
前記第1出力部は、第1反転出力部であり、
前記第2入力部は、第2反転入力部であり、
前記第2出力部は、第2非反転出力部である、
請求項7に記載のアナログフロントエンド回路。
【請求項9】
前記第2抵抗回路は、抵抗素子、ダイオード接続されたトランジスタ、線形領域のトランジスタ、またはスイッチトキャパシタを含む、請求項7または8に記載のアナログフロントエンド回路。
【請求項10】
前記第1入力信号及び前記第2入力信号は、差動信号である、請求項7から9の何れか1つに記載のアナログフロントエンド回路。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1つに記載のアナログフロントエンド回路と、
前記アナログフロントエンド回路から出力される信号を処理する信号処理回路と
を備える大規模集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログフロントエンド回路、及び大規模集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、信号源より互いに逆極性の入力信号がコンデンサを介して入力される差動演算増幅器が開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 米国特許第7924089号公報
[特許文献2] 米国特許第9374049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
小面積で歪みを抑制可能なアナログフロントエンド回路が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
アナログフロントエンド回路は、第1入力端子に一端が接続される第1容量を備えてよい。アナログフロントエンド回路は、第1容量の他端に接続され、第1容量を介して信号源からの第1入力信号を入力する第1入力部と、第1入力信号に応じた第1出力信号を出力する第1出力部とを有する演算増幅器を備えてよい。アナログフロントエンド回路は、第1出力部から出力された第1出力信号の直流ゲインを減衰させる減衰器を備えてよい。アナログフロントエンド回路は、減衰器により減衰された第1出力信号が入力され、減衰器により減衰された第1出力信号を第1入力部に出力する第1抵抗回路を備えてよい。
【0005】
第1抵抗回路は、抵抗素子、ダイオード接続されたトランジスタ、線形領域のトランジスタ、またはスイッチトキャパシタを含んでよい。
【0006】
減衰器は、抵抗分圧回路を含んでよい。
【0007】
減衰器は、抵抗分圧回路の後段に設けられるローパスフィルタ回路をさらに含んでよい。
【0008】
減衰器は、反転増幅回路を含んでよい。
【0009】
第1入力信号は、シングルエンド信号でよい。
【0010】
アナログフロントエンド回路は、第2入力端子に一端が接続される第2容量をさらに備えてよい。演算増幅器は、第2容量の他端に接続され、信号源からの第2入力信号を入力する第2入力部と、第2入力信号に応じた第2出力信号を出力する第2出力部とをさらに有してよい。減衰器は、第2出力部から出力された第2出力信号の直流ゲインを減衰させてよい。アナログフロントエンド回路は、減衰器により減衰された第2出力信号が入力され、減衰器により減衰された第2出力信号を第2入力部に出力する第2抵抗回路をさらに備えてよい。
【0011】
第1入力部は、第1非反転入力部でよい。第1出力部は、第1反転出力部でよい。第2入力部は、第2反転入力部でよい。第2出力部は、第2非反転出力部でよい。
【0012】
第2抵抗回路は、抵抗素子、ダイオード接続されたトランジスタ、線形領域のトランジスタ、またはスイッチトキャパシタを含んでよい。
【0013】
第1入力信号及び第2入力信号は、差動信号でよい。
【0014】
本発明の一態様に係る大規模集積回路は、上記アナログフロントエンド回路と、アナログフロントエンド回路から出力される信号を処理する信号処理回路とを備えてよい。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】アナログフロントエンド回路の回路構成の一例を示す図である。
図2】アナログフロントエンド回路の回路構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係るアナログフロントエンド回路の機能ブロックを示す図である。
図4】本実施形態に係るアナログフロントエンド回路の回路構成の一例を示す図である。
図5図4に示すアナログフロントエンド回路のより詳細な回路構成の一例を示す図である。
図6図2に示すアナログフロントエンド回路の一部分を示す図である。
図7図4に示すアナログフロントエンド回路の一部分を示す図である。
図8】ダイオード接続したトランジスタの一例を示す図である。
図9】線形領域のトランジスタの一例を示す図である。
図10】減衰器の回路構成の一例を示す図である。
図11】減衰器の回路構成の一例を示す図である。
図12図5に示すアナログフロントエンド回路の各ノードの電圧波形及び電流波形を示す図である。
図13】他の実施形態に係るアナログフロントエンド回路の機能ブロックを示す図である。
図14図13に示すアナログフロントエンド回路の回路構成の一例を示す図である。
図15図14に示すアナログフロントエンド回路のより詳細な回路構成の一例を示す図である。
図16】シングルエンド入力で、かつ差動出力を前提したアナログフロントエンド回路の回路構成の一例を示す図である。
図17】正転増幅回路を差動増幅回路として用いたアナログフロントエンド回路の回路構成の一例を示す図である。
図18】正転増幅回路を差動増幅回路として用いたアナログフロントエンド回路の回路構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
大規模集積回路(LSI)がセンサ素子などの外部素子から信号を受け取り、信号処理する場合、容量を用いて外部素子及びLSIのバイアス電圧を分離する「直流カット(DCカット)」が行われる。例えば、図1に示すようなオーディオ処理用のアナログフロントエンド回路では、信号源80と入力端子N3及び入力端子N4との間に、DCカットのために外付け容量Cextが挿入されている。交流信号は、外付け容量Cextを通過して負帰還増幅回路10で信号処理される。このようなDCカットを行う外付け容量Cext及び負帰還増幅回路10は、ハイパスフィルタのように振る舞う。したがって、信号処理を行いたい周波数帯域に合わせてカットオフ周波数を設定しなければならず、オーディオ処理用のアナログフロントエンド回路の場合には、20Hz以下にカットオフ周波数を設定する場合が多い。図1に示す回路では、LSIとは別にμFオーダーの外付け容量Cextを実装することで、カットオフ周波数を著しく低くして低周波の信号を通過させている。しかしながら、外付け部品は、モジュールの実装面積及び製造コストを増加させる要因となる場合がある。
【0019】
図2は、外付け容量Cextの代わりに、入力端子N1及び入力端子N2と、負帰還増幅回路10との間に容量Cが挿入されたアナログフロントエンド回路を示す。DCカットは、外付け容量Cextの代わりに、容量Cにより行われる。出力端子N5及び出力端子N6の後段には、信号処理回路が接続される。抵抗R及び容量Cの両端は、完全差動アンプ12の非反転入力部と反転出力部との間、及び完全差動アンプ12の反転入力部と非反転出力部との間に接続される。容量C、容量C、及び完全差動アンプ12は、反転増幅回路を構成しており、容量C、容量C、及び完全差動アンプ12の非反転入力部及び反転入力部の接続点であるノードN3及びノードN4は、オペアンプの作用により仮想接地の状態となっている。
【0020】
図2に示すアナログフロントエンド回路もハイパスフィルタとして機能し、カットオフ周波数fCUTは、fCUT=1/(2πRC)である。このように、カットオフ周波数fCUTは、抵抗値と容量値との積RCに反比例するため、低周波成分を通過させるためには、非常に大きな抵抗値及び容量値が必要となる。そのため、アナログフロントエンド回路の面積増加につながり、ウェハコストの増加を招く。
【0021】
また、大きな抵抗値を実現する場合、MOSダイオードまたは線形領域のMOSを用いた抵抗のような能動素子を使用する場合がある。このような能動素子を用いた抵抗は、高抵抗化しやすいが、抵抗の両端に印加される電圧によって抵抗値が著しく変化してしまう。図2に示すアナログフロントエンド回路に振幅が大きい信号が入力されると、完全差動アンプ12の反転出力部及び非反転出力部に接続された出力端子N5及び出力端子N6の電圧が大きく変動してしまう。そのため、MOSダイオードなどの能動素子を用いた抵抗の抵抗値が著しく変化する可能性がある。このような抵抗値の変化は、主に低周波側でアナログフロントエンド回路の線形性の劣化を引き起こす要因となり得る。
【0022】
そこで、本実施形態では、小面積で歪みを抑制可能なアナログフロントエンド回路を提供する。
【0023】
図3は、本実施形態に係るアナログフロントエンド回路100の機能ブロックを示す図である。
【0024】
アナログフロントエンド回路100は、大規模集積回路に内蔵される。大規模集積回路は、アナログフロントエンド回路100から出力される信号を処理する信号処理回路をさらに内蔵してよい。アナログフロントエンド回路100は、完全差動アンプ12、DCカット容量20、帰還抵抗回路30、及び減衰器50を備える。一方のDCカット容量20は、完全差動アンプ12の非反転入力部12aに接続され、他方のDCカット容量20は、完全差動アンプ12の反転入力部12bに接続される。完全差動アンプ12の反転出力部12cは、帰還抵抗回路30を介して非反転入力部12aと一方のDCカット容量20との接続点に接続され、完全差動アンプ12の非反転出力部12dは、帰還抵抗回路30を介して反転入力部12bと他方のDCカット容量20との接続点に接続される。反転出力部12c及び非反転出力部12dと、帰還抵抗回路30との間には、減衰器50が接続される。
【0025】
大規模集積回路の外部の信号源からDCカット容量20を介して完全差動アンプ12の非反転入力部12a及び非反転入力部12aに入力信号が入力される。完全差動アンプ12の反転出力部12c及び反転入力部12bから出力された出力信号は、アナログフロントエンド回路100の後段の信号処理回路に入力される。
【0026】
図4は、本実施形態に係るアナログフロントエンド回路100の回路構成の一例を示す図である。
【0027】
アナログフロントエンド回路100は、入力端子N1及び入力端子N2を介して、センサ素子などの信号源80に接続されている。入力端子N1及び入力端子N2は、信号源80からの差動信号を入力する。容量Cは、DCカット容量20として機能する。
【0028】
一方の容量Cの一端は、入力端子N1に接続され、一方の容量Cの他端は、完全差動アンプ12の非反転入力部に接続される。他方の容量Cの一端は、入力端子N2に接続され、他方の容量Cの他端は、完全差動アンプ12の反転入力部に接続される。
【0029】
一方の容量Cの一端は、ノードN3を介して完全差動アンプ12の非反転入力部に接続され、一方の容量Cの他端は、完全差動アンプ12の反転出力部、及び出力端子N5に接続される。他方の容量Cの一端は、ノードN4を介して完全差動アンプ12の反転入力部に接続され、他方の容量Cの他端は、完全差動アンプ12の非反転出力部、及び出力端子N6に接続される。出力端子N5及び出力端子N6は、アナログフロントエンド回路100の後段の信号処理回路に接続される。
【0030】
抵抗Rは、帰還抵抗回路30として機能する。一方の抵抗Rの一端は、ノードN3を介して完全差動アンプ12の非反転入力部に接続される。他方の抵抗Rの一端は、ノードN4を介して完全差動アンプ12の反転入力部に接続される。一方の抵抗Rの他端と、完全差動アンプ12の反転出力部との間、及び他方の抵抗Rの他端と、完全差動アンプ12の非反転出力部との間に、減衰器50が接続される。一方の抵抗Rの他端は、ノードN7を介して減衰器50に接続され、他方の抵抗Rの他端は、ノードN8を介して減衰器50に接続される。
【0031】
DCカットは、入力端子N1及び入力端子N2に一端が接続されたそれぞれの容量Cにより行われる。すなわち、DCカットを行うために外付け容量は、使用されない。
【0032】
図2に示す回路と同様に、容量C、容量C、及び完全差動アンプ12は、容量を用いた反転増幅回路を構成しており、ノードN3及びノードN4は、オペアンプ作用により仮想接地の状態となっている。ここで、ノードN3の電圧VN3及びノードN4の電圧VN4は、0と仮定する。完全差動アンプ12の入力側のノードN3及びノードN4、容量C、並びに容量Cへのバイアス電圧の供給は、抵抗Rを介して行われる。
【0033】
図5は、図4に示すアナログフロントエンド回路100のより詳細な回路構成の一例を示す。
【0034】
アナログフロントエンド回路100は、クロック生成回路60を備える。完全差動アンプ12は、トランジスタM1、M2,M3、及びM4、電流源121、122、123、124、及び125を有する。
【0035】
トランジスタM1及びトランジスタM2は、差動対を構成し、NチャネルMOSトランジスタである。トランジスタM1のソース端子が、ノードN00を介して差動対のテール電源である電流源123に接続される。トランジスタM1のドレイン端子が、ノードN01を介してトランジスタM1の負荷となる電流源121に接続される。トランジスタM1のゲート端子が、ノードN3を介して一方の容量Cの一端に接続される。トランジスタM2のソース端子が、ノードN00を介して電流源123に接続される。トランジスタM2のドレイン端子が、ノードN02を介してトランジスタM2の負荷となる電流源122に接続される。トランジスタM2のゲート端子が、ノードN4を介して他方の容量Cの一端に接続される。
【0036】
トランジスタM3及び電流源124、並びにトランジスタM4及び電流源125はそれぞれ、反転増幅器を構成する。トランジスタM3及びトランジスタM4は、PチャネルMOSトランジスタである。トランジスタM3のソース端子が電源線に接続される。トランジスタM3のドレイン端子が電流源124及び出力端子N6に接続される。トランジスタM3のゲート端子が、ノードN01を介してトランジスタM1のドレイン端子に接続される。トランジスタM4のソース端子が電源線に接続される。トランジスタM4のドレイン端子が電流源125及び出力端子N5に接続される。トランジスタM4のゲート端子が、ノードN02を介してトランジスタM2のドレイン端子に接続される。
【0037】
帰還抵抗回路30は、スイッチトキャパシタにより構成される。帰還抵抗回路30は、容量Cと、容量Cの両端に接続されたスイッチSW1及びスイッチSW2を有する。スイッチSW1及びスイッチSW2は、クロック生成回路60で生成されるサンプリングクロックΦ1及びサンプリングクロックΦ2に従って動作する。サンプリングクロックΦ1がHighで、サンプリングクロックΦ2がLowのとき、スイッチSW1は、容量Cの一端を減衰器50に接続し、スイッチSW2は、容量Cの他端をトランジスタM1のゲート端子またはトランジスタM2のゲート端子に接続する。サンプリングクロックΦ1がLowで、サンプリングクロックΦ2がHighのとき、スイッチSW1は、容量Cの一端をグランドに接続し、スイッチSW2は、容量Cの他端をグランドに接続する。
【0038】
減衰器50は、直列に接続された分圧抵抗回路52a及び分圧抵抗回路52bを有する。分圧抵抗回路52a及び分圧抵抗回路52bは、直列に接続された抵抗R及び抵抗(A-1)Rを含む。分圧抵抗回路52aの抵抗Rの一端は、分圧抵抗回路52bの抵抗Rの一端に接続され、分圧抵抗回路52aの抵抗Rの他端は、ノードN7を介して分圧抵抗回路52aの抵抗(A-1)Rの一端に接続される。分圧抵抗回路52aの抵抗(A-1)Rの他端は、出力端子N5、トランジスタM4のドレイン端子、一方の容量Cの一端に接続される。分圧抵抗回路52bの抵抗Rの他端は、分圧抵抗回路52bの抵抗(A-1)Rの一端に接続される。分圧抵抗回路52bの抵抗(A-1)Rの他端は、出力端子N6、トランジスタM3のドレイン端子、他方の容量Cの一端に接続される。
【0039】
分圧抵抗回路52aの抵抗Rと分圧抵抗回路52aの抵抗(A-1)Rとの間のノードN7を介して分圧抵抗回路52aは、一方の帰還抵抗回路30に接続される。分圧抵抗回路52bの抵抗Rと分圧抵抗回路52bの抵抗(A-1)Rとの間のノードN8を介して分圧抵抗回路52bは、他方の帰還抵抗回路30に接続される。
【0040】
本実施形態では、抵抗Rの帰還パスに減衰器50が挿入されている。完全差動アンプ12が動作するためには、ノードN3及びノードN4の両方にDC(直流)成分が入力される必要がある。そのため、減衰器50は、DC成分を含む出力端子N5及び出力端子N6の差動信号を1/Aに減衰させて、ノードN7及びノードN8に出力する。ここで、A>1である。図1または図2に示す回路構成では、抵抗Rに印加される電圧は、VN5である。一方、図4に示す回路構成では、抵抗Rに印加される電圧は、VN7/Aである。帰還抵抗回路30の抵抗値Rと、減衰器50の抵抗Raの抵抗値Raとの関係は、R≪Rでよいので、減衰器50は、小面積で実装できる。
【0041】
図6は、図2に示すアナログフロントエンド回路の一部分を示す。図7は、図4に示すアナログフロントエンド回路100の一部分を示す。図6に示すアナログフロントエンド回路では、抵抗Rは、出力端子N5からノードN3に帰還電流ifb=VN5/Rを流す。一方、図7に示すアナログフロントエンド回路100では、抵抗Rは、ノードN7からノード3に帰還電流ifb=VN7/R=VN5/ARを流す。すなわち、減衰器50の作用により、DCを含む低周波信号について、帰還電流ifb図2に示すアナログフロントエンド回路に比べて1/A倍になる。その結果、抵抗RがA倍されたように見え、カットオフ周波数fCUTが、fCUT=1/(2πARC)となる。
【0042】
したがって、本実施形態に係るアナログフロントエンド回路100によれば、あるカットオフ周波数を実現する場合、要求される抵抗値と容量値との積を1/A倍にすることができる。つまり、低カットオフ周波数を実現する場合に懸念となる抵抗及び容量の集積化コストを大幅に削減することができる。
【0043】
また、図2に示すアナログフロントエンド回路では、大振幅を扱うとき、抵抗Rに印加される電圧が著しく変化する。そのため、能動素子を利用した抵抗は抵抗値が大きく変化してしまい、低周波側の線形性が劣化してしまう場合がある。一方、図5に示すアナログフロントエンド回路100では、抵抗Rにかかる電圧は減衰器50の作用により1/A倍に低下するので、後段の信号処理回路への信号振幅が大きい場合でも抵抗値の変動量は大幅に抑制される。したがって、図5に示すアナログフロントエンド回路100では、図2に示すようなアナログフロントエンド回路よりも、線形性が改善される。
【0044】
図5に示すアナログフロントエンド回路100では、帰還抵抗回路30として、スイッチトキャパシタを用いる例について説明した。帰還抵抗回路30として、スイッチトキャパシタ以外に、例えば、図8に示すように、ドレイン端子とソース端子とを接続したトランジスタ、すなわちダイオード接続したトランジスタ、または図9に示すように、線形領域のトランジスタが用いられてもよい。線形領域とは、ドレイン-ソース間電圧を上げていくと、ドレイン電流が増える領域、すなわちドレイン-ソース間電圧にドレイン電流が比例する領域のことをいう。
【0045】
減衰器50は、図10に示すように、分圧抵抗回路52a及び分圧抵抗回路52bの後段に、ローパスフィルタ回路54をさらに備えてよい。ローパスフィルタ回路54は、抵抗(A-1)Rと抵抗Rとの間にそれぞれ一端が接続される2つの抵抗Rと、2つの抵抗Rの他端に両端が接続される容量C/2を含む。
【0046】
減衰器50は、図11に示すように、反転増幅回路で構成してもよい。反転増幅回路は、ノード5とノード8との間に直列に接続された抵抗R及び抵抗ARと、ノード6とノード7との間とに直列に接続された抵抗Rと抵抗ARとを含む、さらに、反転増幅回路は、非反転入力部に一方の抵抗Rの一端が接続され、反転出力部に一方の抵抗Rの他端が接続され、反転入力部に他方の抵抗Rの一端が接続され、非反転出力部に他方の抵抗Rの他端が接続された完全差動アンプをさらに含む。
【0047】
図12は、図5に示すアナログフロントエンド回路100の各ノードの電圧波形及び電流波形を示す。抵抗Rが、スイッチトキャパシタの場合、サンプリングクロックΦ1がHighのタイミングで、ノードN3とノードN7との間に容量Cが接続される。したがって、このタイミングで、瞬間的に、電流ifbが流れ、電流ifbの平均値は、以下となる。
【数1】
【0048】
よって、容量Cは、R=1/(Fclk)の抵抗として振る舞う。減衰器50の作用により、電圧VN7及びVN8は、電圧VN5及びVN6より減衰しており、電流ifbの平均値は、減衰した電圧VN7に基づいて決まる。
【0049】
図13は、他の実施形態に係るアナログフロントエンド回路100の機能ブロックを示す図である。
【0050】
図3に示すアナログフロントエンド回路100は、差動入力を前提としている。一方、図13に示すアナログフロントエンド回路100Aは、シングルエンド入力を前提としている。アナログフロントエンド回路100Aは、信号源から出力された単相信号(シングルエンド信号)がDCカット容量20を介して増幅回路14に入力される。増幅回路14からの出力信号は、減衰器50、及び帰還抵抗回路30を介して増幅回路14の入力側に帰還される。
【0051】
図14は、図13に示すアナログフロントエンド回路100Aの回路構成の一例を示す。
【0052】
アナログフロントエンド回路100Aは、増幅回路14、容量C、容量C、抵抗R、及び減衰器50を備える。容量Cの一端は、入力端子N1に接続され、容量Cの他端は、ノードN3を介して増幅回路14の反転入力部に接続される。増幅回路14の非反転入力部はノードN4を介して接地される。
【0053】
容量Cの一端は、増幅回路14の出力部に接続され、容量Cの他端は、ノードN3を介して増幅回路14の反転入力部に接続される。増幅回路14の出力部は、減衰器50を介して、抵抗Rの一端に接続される。抵抗Rの他端は、ノードN3を介して増幅回路14の反転入力部に接続される。
【0054】
図15は、アナログフロントエンド回路100Aのより詳細な回路構成の一例を示す。増幅回路14は、トランジスタM1、M2、M3、M4、及びM5、電流源141、及び142を備える。
【0055】
トランジスタM1、トランジスタM2、及びトランジスタM5は、NチャネルMOSトランジスタである。トランジスタM3、及びトランジスタM4は、PチャネルMOSトランジスタである。トランジスタM1のソース端子が、ノードN0を介して、テール電源である電流源141に接続される。トランジスタM1のドレイン端子が、トランジスタM3のドレイン端子に接続される。トランジスタM1のゲート端子が、ノードN3、容量Cを介して入力端子N1に接続される。
【0056】
トランジスタM3のソース端子は、電源線に接続される。トランジスタM2のソース端子が、ノードN0を介して、電流源141に接続される。トランジスタM2のドレイン端子が、トランジスタM4のドレイン端子に接続される。トランジスタM2のゲート端子が接地される。
【0057】
トランジスタM4のソース端子は、電源線に接続される。トランジスタM4のゲート端子は、トランジスタM3のゲート端子、及びトランジスタM3のドレイン端子に接続される。
【0058】
トランジスタM5のソース端子は電源線に接続される。トランジスタM5のドレイン端子は、テール電源である電流源142に接続される。トランジスタM5のゲート端子は、トランジスタM4のドレイン端子、及びトランジスタM2のドレイン端子に接続される。
【0059】
トランジスタM5のドレイン端子は、出力端子N5、及び容量Cの一端に接続される。容量Cの他端は、ノードN3を介してトランジスタM1のゲート端子に接続される。
【0060】
減衰器50は、抵抗R及び抵抗(A-1)Rからなる分圧抵抗回路を含む。抵抗Rと抵抗(A-1)Rとの間のノードN7に帰還抵抗である抵抗Rの一端が接続され、抵抗Rの他端がノードN3を介してトランジスタM1のゲート端子に接続される。
【0061】
以上のように構成されたアナログフロントエンド回路100Aでも、抵抗Rは、ノードN7からノードN3に帰還電流ifb=VN7/R=VN5/ARを流す。すなわち、減衰器50の作用により、DCを含む低周波信号について、帰還電流ifb図2に示すアナログフロントエンド回路に比べて1/A倍になる。その結果、抵抗RがA倍されたように見え、カットオフ周波数fCUTが、fCUT=1/(2πARC)となる。
【0062】
したがって、あるカットオフ周波数を実現する場合、要求される抵抗値と容量値との積を1/A倍にすることができる。つまり、低カットオフ周波数を実現する場合に懸念となる抵抗及び容量の集積化コストを大幅に削減することができる。
【0063】
なお、抵抗Rは、抵抗素子の他、ダイオード接続されたトランジスタ、線形領域のトランジスタ、またはスイッチトキャパシタでよい。減衰器50は、分圧抵抗回路の他、分圧抵抗回路及びローパスフィルタ回路で構成されてもよいし、反転増幅回路で構成されてもよい。ただし、図5に示すアナログフロントエンド回路100では、減衰器50は、差動出力間の抵抗分圧で仮想的なアナログコモン電圧を生成していた。しかしながら、図15に示すアナログフロントエンド回路100Aは、単相出力のため、代替えとして、アナログコモン電源を使用する。
【0064】
図16は、シングルエンド入力で、かつ差動出力を前提したアナログフロントエンド回路100Bの回路構成の一例を示す。一端が完全差動アンプ12の反転入力部に接続された容量Cの他端が、接地されている点で、図4に示すアナログフロントエンド回路100と異なる。
【0065】
図17及び図18は、正転増幅回路を差動増幅回路として用いたアナログフロントエンド回路100Cの回路構成の一例を示す。アナログフロントエンド回路100Cは、容量Cと、抵抗Rと、差動増幅回路16と、抵抗Rと、抵抗Rと、減衰器50とを備える。図18において、容量Cの一端は、入力端子N1に接続され、容量Cの他端は、差動増幅回路16の非反転入力部に接続される。抵抗Rの一端は、差動増幅回路16の出力部に接続され、抵抗Rの他端は、ノードN4を介して差動増幅回路16の非反転入力部と、抵抗Rの一端に接続される。抵抗Rの一端は、ノードN7を介して抵抗Rの一端、及び抵抗(A-1)Rの一端に接続される。抵抗Rの他端は、ノードN3を介して差動増幅回路16の非反転入力部に接続される。
【0066】
アナログフロントエンド回路100Cにおいて、抵抗R及び容量Cによってハイパスフィルタが構成されている。通常、抵抗Rはアナロググランド(AGND)に接続される。しかし、アナログフロントエンド回路100Cにおいて、差動増幅回路16の出力部から減衰器50を介して減衰された振幅の信号が抵抗Rに入力される。減衰器50は、ノードN5に入力される信号の振幅を減衰させて、VN7={(A-1)/A}×VN4を満たす振幅の信号を出力する。ただし、ノードN7に入力される信号の振幅は、ノードN4に入力される信号の振幅より小さいので、図18に示す回路構成に示す通り、減衰器50は、正転増幅回路に含めて実装することもできる。
【0067】
差動増幅回路16の仮想短絡作用により、
【数2】
とすると、ノードN7の電圧は、
【数3】
となり、抵抗Rを流れる電流は、
【数4】
となる。結果として、ハイパスフィルタのカットオフ周波数は次のようになる。
【数5】
【0068】
このように、正転増幅回路において、減衰器50で信号の振幅を小さくして帰還させることで、通常1/(2πRC)で決まるカットオフ周波数を1/A倍にすることができる。
【0069】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0070】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0071】
10 負帰還増幅回路
12 完全差動アンプ
12a 非反転入力部
12b 反転入力部
12c 反転出力部
12d 非反転出力部
14 増幅回路
16 差動増幅回路
20 DCカット容量
30 帰還抵抗回路
50 減衰器
52a 分圧抵抗回路
52b 分圧抵抗回路
54 ローパスフィルタ回路
60 クロック生成回路
80 信号源
100,100A,100B,100C アナログフロントエンド回路
121,122,123,124,125,141,142 電流源
M1,M2,M3,M4,M5 トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18