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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068624
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】オペレータ不正検知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/00 20060101AFI20230510BHJP
   G08B 13/196 20060101ALI20230510BHJP
   G06Q 30/016 20230101ALI20230510BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20230510BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20230510BHJP
【FI】
G08B25/00 510M
G08B13/196
G06Q30/00 330
H04N7/18 D
H04N7/18 E
H04N5/232 290
H04N5/232 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162031
(22)【出願日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2021179182
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100216677
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】廣戸 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 晴貴
(72)【発明者】
【氏名】堀内 悠生
(72)【発明者】
【氏名】上原 賢太
(72)【発明者】
【氏名】徳永 匡臣
【テーマコード(参考)】
5C054
5C084
5C087
5C122
5L049
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC12
5C054FC13
5C054FC14
5C054FE28
5C054FF02
5C054GB01
5C054GB05
5C054HA19
5C084AA02
5C084AA13
5C084DD11
5C084EE01
5C084GG78
5C084HH10
5C087AA09
5C087AA10
5C087DD03
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG02
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG10
5C087GG52
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
5C087GG84
5C122DA11
5C122EA07
5C122FH06
5C122FH11
5C122FH14
5C122FH21
5C122FK35
5C122GC14
5C122HB05
5L049AA02
(57)【要約】
【課題】リモートで業務を行うオペレータの室内全体を監視し、不正を検知して管理者に通報する。
【解決手段】オペレータ端末20に接続され、オペレータ2および作業環境を撮影する魚眼カメラ23と、魚眼カメラ23により撮影された画像からオペレータ2もしくは作業環境における不正もしくは異常の事象を検知するカメラ監視部と221、カメラ監視部221により前記事象が検知された場合に、オペレータ2に対して警告を出力し、オペレータ端末20におけるコンタクトセンター業務に係る箇所をロックする警告処理部222とを有し、カメラ監視部221は、動画像から画像認識処理によりオペレータ2が把持する略矩形の物体を識別し、さらに略矩形の物体がスマートフォンであるか否かを判別して、スマートフォンであった場合に前記事象を検知したものとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモートの作業環境に設置されたオペレータ端末を使用してコンタクトセンター業務を行うオペレータおよび前記作業環境を監視するオペレータ不正検知システムであって、
前記オペレータ端末に接続され、前記オペレータおよび前記作業環境を撮影するカメラと、
前記カメラにより撮影された画像から前記オペレータもしくは前記作業環境における不正もしくは異常の事象を検知するカメラ監視部と、
前記カメラ監視部により前記事象が検知された場合に、前記オペレータに対して警告を出力し、前記オペレータ端末における前記コンタクトセンター業務に係る箇所をロックして、前記コンタクトセンター業務に係るサーバに通知する警告処理部と、を有し、
前記カメラ監視部は、
前記画像から画像認識処理により前記オペレータが把持する略矩形の物体を識別し、識別できた場合にさらに画像認識処理により前記略矩形の物体がスマートフォンであるか否かを判別して、スマートフォンであった場合に前記事象を検知したものとする、オペレータ不正検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載のオペレータ不正検知システムにおいて、
前記カメラ監視部は、
前記画像から画像認識処理により前記作業環境に存在する前記オペレータ以外の人物を識別し、識別できた場合に前記事象を検知したものとする、オペレータ不正検知システム。
【請求項3】
請求項1に記載のオペレータ不正検知システムにおいて、
前記カメラ監視部は、
前記画像から画像認識処理により前記オペレータの顔を識別し、識別できた場合に前記オペレータにより事前に登録されている前記オペレータの画像と同一人のものであるか否かを判別して、同一人のものでない場合に前記事象を検知したものとする、オペレータ不正検知システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のオペレータ不正検知システムにおいて、
前記カメラ監視部は、
前記画像について、画像周縁部の歪みを補正した上で画像認識処理を行う、オペレータ不正検知システム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のオペレータ不正検知システムにおいて、
前記警告処理部は、
前記カメラ監視部により前記事象が検知された場合に、前記オペレータ端末における前記コンタクトセンター業務に係る箇所を含む画面のスクリーンショットを取得して、前記サーバに送信する、オペレータ不正検知システム。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のオペレータ不正検知システムにおいて、
前記警告処理部は、
前記カメラ監視部により前記事象が検知された場合に、前記オペレータ端末における不正もしくは異常の事象を検知した画面を取得して、前記サーバに送信する、オペレータ不正検知システム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載のオペレータ不正検知システムにおいて、
前記カメラ監視部は、
前記画像から画像認識処理によりプライバシーオブジェクトを識別し、当該識別したプライバシーオブジェクトを視認不可とする画像処理を行う、オペレータ不正検知システム。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載のオペレータ不正検知システムにおいて、
前記カメラ監視部は、
前記画像において画像認識処理により識別したスマートフォンまたは前記オペレータ以外の人物以外を視認不可とする画像処理を行う、オペレータ不正検知システム。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載のオペレータ不正検知システムにおいて、
前記カメラ監視部は、
前記画像において画像認識処理によりスマートフォンまたは前記オペレータ以外の人物を識別した場合に、前記カメラにより画像を撮影する間隔を変更する、オペレータ不正検知システム。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載のオペレータ不正検知システムにおいて、
前記カメラ監視部は、
所定の時間以上の連続した複数の前記画像においてそれぞれ、画像認識処理によりスマートフォンまたはオペレータ以外の人物を識別した場合に前記事象を検知したものとする、オペレータ不正検知システム。
【請求項11】
リモートの作業環境に設置された端末を使用して業務を行う利用者および前記作業環境を監視する不正検知システムであって、
前記端末に接続され、前記利用者および前記作業環境を撮影するカメラと、
前記カメラにより撮影された画像から前記利用者もしくは前記作業環境における不正もしくは異常の事象を検知するカメラ監視部と、
前記カメラ監視部により前記事象が検知された場合に、前記利用者に対して警告を出力し、前記端末をロックして、前記業務に係るサーバに通知する警告処理部と、を有し、
前記カメラ監視部は、
前記画像から画像認識処理により前記利用者が把持する略矩形の物体を識別し、識別できた場合にさらに画像認識処理により前記略矩形の物体が所定の電子機器であるか否かを判別して、所定の電子機器であった場合に前記事象を検知したものとする、不正検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトセンターのセキュリティの技術に関し、特に、リモートで業務を行うオペレータの不正を検知するオペレータ不正検知システムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電話その他の手段による顧客からの問合せに対応するコンタクトセンター(コールセンター、ヘルプデスク等各種の名称のものを含んだ総称を言うものとする。以下「CC」と記載する場合がある)では、顧客の連絡先等を含む個人情報を取り扱う場合があることから、オペレータが不正に顧客の情報を持ち出さないようにするため、業務エリアに入室する際にスマートフォン等の携帯情報端末や記録媒体の持込みを禁止する等のセキュリティ対策が講じられる。
【0003】
人が不正な手段で画像や音声を取得しようとする行為を検知する手段として、例えば、特開2002-122678号公報(特許文献1)には、盗聴器又は盗撮器に盗聴・盗撮されたデータが記録されているだけで、常時には無線送信されないで、所定時間帯にまとめて無線送信される場合や、盗聴・盗撮されたデータが無線でなく有線回線により送信される場合などにおいても、ユーザーが、カメラによりプライバシーや秘密情報を侵害されたり、マイクによりプライバシーや秘密情報を侵害されたりすることを防止できる仕組みが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-122678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、例えば、CC業務を行う業務エリア内で、オペレータ端末上に表示・出力される個人情報をオペレータが盗聴・盗撮により不正に取得するのを防止・抑止することができる。
【0006】
一方、昨今のコロナ禍の影響で、企業としては、在宅勤務が強く要請されるような事態になったとしてもCCのサービスを継続できるようにするため、オペレータがCCの業務を在宅で行うという形態が恒常化することを視野に入れたインフラ構築を検討する必要が生じている。その場合、オペレーションの在宅化と業務セキュリティの両立を図るため、在宅勤務するオペレータの室内全体を監視し、オペレータや第三者による不正や異常を検知した場合に管理者に通報するような仕組みが必要となる。
【0007】
そこで本発明の目的は、リモートで業務を行うオペレータの室内全体を監視し、不正を検知して管理者に通報するオペレータ不正検知システムを提供することにある。
【0008】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記載および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0010】
本発明の代表的な実施の形態であるオペレータ不正検知システムは、リモートの作業環境に設置されたオペレータ端末を使用してコンタクトセンター業務を行うオペレータおよび前記作業環境を監視するオペレータ不正検知システムであって、前記オペレータ端末に接続され、前記オペレータおよび前記作業環境を撮影するカメラと、前記カメラにより撮影された画像から前記オペレータもしくは前記作業環境における不正もしくは異常の事象を検知するカメラ監視部と、前記カメラ監視部により前記事象が検知された場合に、前記オペレータに対して警告を出力し、前記オペレータ端末における前記コンタクトセンター業務に係る箇所をロックして、前記コンタクトセンター業務に係るサーバに通知する警告処理部と、を有する。
【0011】
そして、前記カメラ監視部は、前記動画像から画像認識処理により前記オペレータが把持する略矩形の物体を識別し、識別できた場合にさらに画像認識処理により前記略矩形の物体がスマートフォンであるか否かを判別して、スマートフォンであった場合に前記事象を検知したものとする。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0013】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、リモートで業務を行うオペレータの室内全体を監視し、不正を検知して管理者に通報することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態であるオペレータ不正検知システムの構成例について概要を示した図である。
図2】(a)~(c)は、本発明の一実施の形態における不正や異常の検知手法について概要を示した図である。
図3】本発明の一実施の形態におけるオペレータが把持する略矩形の物体を識別した例について概要を示した図である。
図4】本発明の一実施の形態におけるオペレータ端末で不正や異常を検知した場合に表示される警告画面の例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0016】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態であるオペレータ不正検知システムの構成例について概要を示した図である。オペレータ不正検知システム1は、例えば、CC業務に係る各種機能を提供するサーバ装置からなるCCサーバ10と、在宅勤務でCCの業務をリモートで行う各オペレータ2がそれぞれ使用する情報処理端末からなるオペレータ端末20とがインターネットや専用回線等のネットワーク30を介してVPN(Virtual Private Network)等により相互に接続する構成を有する。
【0017】
CCサーバ10は、例えば、サーバ機器やクラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバ等により構成され、図示しないCPU(Central Processing Unit)により、HDD(Hard Disk Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)、Webサーバプログラム等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、CC業務に係る各種機能を実現する。
【0018】
このCCサーバ10は、例えば、ソフトウェアとして実装されたCC処理部11およびオペレータ管理部12などの各部を有する。CC処理部11は、例えば、顧客からの電話等による問合せを受け付けて、空き状態のオペレータに割り当て、対応内容を履歴として記録したり、オペレータが顧客対応するために必要となる情報を保持して適宜提供したり、オペレータの空き状況を管理したり等のCC業務自体を実行・支援する機能を有する。本実施の形態はCC業務の内容自体とは直接関連しないため、CC業務の内容についてこれ以上の詳細な説明は行わない。
【0019】
オペレータ管理部12は、後述するオペレータ端末20において不正や異常が検知され、その旨の通知を受けた場合に、オペレータ2への対応を行う機能を有する。ここでの機能の内容は特に限定されず、運用設計次第で適宜の機能を実装することができる。例えば、不正や異常を検知した時点でのオペレータ端末20の画面のスクリーンショットの画像データや、後述する魚眼カメラ23により撮影した画像データの取得と保存、対象のオペレータ2やオペレータ端末20との間の通信、管理者やスーパーバイザー(以下「SV」と記載する場合がある)への通知、オペレータ端末20のロックの解除など各種の機能を実装することができる。
【0020】
オペレータ端末20は、例えば、PC(Personal Computer)やタブレット端末等の情報処理端末により構成され、図示しないCPUにより、HDDやSSD(Solid State Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、オペレータ2がCC業務を行うための各種機能を実現する。
【0021】
このオペレータ端末20は、例えば、ソフトウェアとして実装されたCCクライアント21、オペレータ監視部22および稼働監視部24などの各部を有する。また、オペレータ端末20はUSB(Universal Serial Bus)等により接続された魚眼カメラ23を備える。魚眼カメラ23は、例えば、市販されている視野角が170度や180度の超広角のものを適宜使用することができ、オペレータ端末20のディスプレイ上部など、オペレータ2の顔を含む正面と、その背景のオペレータ2が業務を行う作業環境(オペレータ2が在宅でCC業務を行う部屋)全体もしくは大半の領域を撮影することができる位置に設置される。
【0022】
なお、魚眼カメラ23は、魚眼レンズや超広角レンズを備えるものに限られず、視野角が標準レンズよりも広い広角レンズを備えたカメラを適宜使用することができる。視野角が広いという表現は、画角が広い、焦点距離が短いとも言い換えることができる。また、魚眼カメラ23は、レンズを交換可能なものに限られず、該当するレンズが固定的に配設されているカメラであってもよい。
【0023】
CCクライアント21は、オペレータ2に対してCC業務を行うために必要となる各種機能や画面を提供する機能を有する。内部的な処理をCCサーバ10のCC処理部11で行い、CCクライアント21はCC処理部11と通信を行ってその処理結果に係る画面表示と入力の受付けのみ行うシンクライアントとして実装し、オペレータ端末20側にCC業務に係る顧客情報等のデータが保持されないようにする。
【0024】
オペレータ監視部22は、魚眼カメラ23により撮影された映像に基づいてオペレータ2およびオペレータ2の作業環境を監視し、不正や異常な事象を検知する機能を有する。魚眼カメラ23を使用することにより、作業環境に対して死角がない状態でオペレータ2と作業環境内の動きを監視することができる。また、魚眼カメラ23の存在が抑止力として機能することで、オペレータ2が不正行為を行うことを未然に防ぐ効果も期待することができる。このオペレータ監視部22は、さらにカメラ監視部221および警告処理部222などの各部を有する。なお、オペレータ監視部22をシンクライアントとして実装することも可能である。
【0025】
カメラ監視部221は、魚眼カメラ23により撮影された映像データを取得して、AI(Artificial Intelligence、人工知能)により分析を行い、不正や異常を検知する機能を有する。AIエンジンは特に限定されず、一般に利用可能なものを適宜用いることができる。
【0026】
本実施の形態では、AIによる不正や異常の検知手法として、(1)スマートフォンの検知、(2)作業環境への別人の侵入の検知、(3)オペレータ本人の顔識別の各機能を備えるものとする。上記(1)および(2)の各機能により、オペレータ端末20のディスプレイ上にCCクライアント21により表示された画面の盗撮や覗き見による情報流出を防ぐ。また、上記(3)の機能により、オペレータ2とは別の人によるオペレータ端末20の操作を防ぐ。
【0027】
すなわち、これらの各手法は、主に盗撮等の不正行為が実際に行われたことを検知するのではなく、これらの不正行為を未然に防止するために禁止されるべき不正・異常な事象を検知するものである。そして、上記(1)~(3)の各手法はそれぞれ相互に独立しており、すべての手法を備えている必要はなく、いずれか1つ以上の手法を備えていればよい。
【0028】
図2は、本発明の一実施の形態における不正や異常の検知手法について概要を示した図である。図2(a)は、上記(1)のスマートフォンの検知の例について概要を示した図である。円形の図は、魚眼カメラ23で撮影したオペレータ2および作業環境の画像を模式的に示しており、魚眼カメラ23の特性として、円形画像の周縁部(図2の例では網掛けの部分(例えば、作業環境の壁や天井、机等を示す))が円周に沿って歪んだ状態で撮影されていることを示している。ここでは、中心に映っているオペレータ2がスマートフォンを取り出してオペレータ端末20の画像を撮影しようとしている状況を示している。
【0029】
カメラ監視部221は、魚眼カメラ23が撮影した画像データを取得して常時(より正確には一定の時間間隔で)AIの画像認識によりスマートフォンが写っているか否かを判別する。図2(a)の例ではスマートフォンが矩形で囲まれており、スマートフォンが認識された状態を示している。なお、矩形で囲んでいるのは説明の便宜のためであり、実際は内部的に識別できていればよい。また、説明の便宜のため、スマートフォンの前面を魚眼カメラ23側に向けている状況を示しているが、スマートフォンにより撮影する際の一般的な動作からすると、スマートフォンの背面を向けている状況の方が一般的であると考えられる。
【0030】
AIによるスマートフォンの画像認識について、魚眼カメラ23により撮影された周縁部が歪んだ円形の画像からスマートフォンを直接識別する学習モデルを構築してもよいが、本実施の形態では、魚眼カメラ23により撮影された画像から、まずオペレータ2が手に持った状態の略矩形の物体を識別し、次に識別された略矩形の物体がスマートフォンか否かを識別する2段階の画像認識を行うものとし、各段階での学習モデルをそれぞれ構築しておくものとする。これにより、オペレータ2がスマートフォンを持ってオペレータ端末20の画面を盗撮しようとする不正をより精度よく検知することができる。
【0031】
ここで、AIによる画像認識の追加機能としてプライバシーの観点からプライバシーオブジェクトを画像認識する機能を更に具備する構成であってもよい。例えば、オペレータの顔、体、オペレータの自宅のインテリア等がプライバシーオブジェクトに該当する。この追加機能により特定されたプライバシーオブジェクトに対しては、モザイク、ぼかし等のプライバシーオブジェクトを視認不可とする画像処理を実施して画像、動画を保存する追加の構成であってもよい。
【0032】
上記のようなプライバシーオブジェクトを画像認識して視認不可とする画像処理をする構成に代えて、スマートフォンやオペレータ2以外の第三者のような不正オブジェクトをAIによる画像認識により特定し、この不正オブジェクト以外を全て視認不可とする画像処理を行う構成であってもよい。
【0033】
なお、上記のような部分的に視認不可とする画像処理を実施した画像または動画を本実施の形態において記録する場合には、視認不可の画像処理を実施した画像または動画に加え、視認不可の画像処理を実施していないオリジナルの画像または動画も記録する構成であってもよい。例えば、プライバシーを保護しつつ前者の画像または動画を管理者が閲覧可能とし、後者の画像または動画は通常閲覧不可とすることもできる。通常閲覧不可であってもインシデントが発生した場合や外部の捜査機関が公式に捜査する場合などでは閲覧不可の画像または動画を取り出して閲覧することが想定される。
【0034】
図3は、本発明の一実施の形態におけるオペレータ2が把持する略矩形の物体を識別した例について概要を示した図である。図3の例では、第1段階の画像識別によりオペレータ2が手に持った略矩形の物体としてコーヒーのテイクアウトカップを識別し、第2段階の画像識別により当該物体がスマートフォンではないと判断したことを破線の矩形により示している。オペレータ2が手に持つ(把持する)略矩形の物体がスマートフォンであるとは限らず、図3の例に示すような他の物品である場合も多いため、2段階の画像認識を行うことでスマートフォンの識別精度を上げることができる。
【0035】
図2に戻り、図2(b)は、上記(2)の作業環境への別人の侵入の検知の例について概要を示した図である。ここではオペレータ2の背後に別人が侵入していて、オペレータ端末20の画面が覗き見されるリスクがある状況を示している。
【0036】
カメラ監視部221は、魚眼カメラ23が撮影した画像データに対してAIの画像認識によりオペレータ2以外に人物が写っているか否かを判別する。図2(b)の例ではオペレータ2の背後に侵入してきた人物が矩形で囲まれており、別人として識別された状態を示している。オペレータ2の背後の人物は、図示するように魚眼カメラ23が撮影した円形画像の周縁部に写る場合も多く、歪んだ画像となる可能性が高いと考えられる。そこで、例えば、事前にAIに学習させる教師データとして、魚眼カメラ等により撮影されて歪んだ状態の人物のデータも用いるものとして画像識別の精度を向上させる。もしくは、カメラ監視部221において、AIによる画像認識に先立って周縁部の画像の歪みを画像処理により補正して歪みを可能な限り除去した画像とするようにしてもよい。
【0037】
図2(c)は、上記(3)のオペレータ本人の顔認証の例について概要を示した図である。ここではオペレータ端末20を操作する人物がなりすまし等により本来のオペレータ2とは異なる者となっている状況を示している。
【0038】
カメラ監視部221は、魚眼カメラ23が撮影した画像データに対してAIの画像認識によりオペレータ端末20を操作する人物の顔を識別する。図2(c)の例では、オペレータ端末20を操作する人物の顔として識別された部分が矩形で囲まれているが、当該人物は図2(a)、(b)の例におけるオペレータ2とは異なる人物である状態を示している。そして、カメラ監視部221は、識別された顔が事前に登録されたオペレータ2の顔と一致するか否か、すなわち事前に登録されているオペレータ2と異なる人物がオペレータ端末20を操作していないかをAIにより判定する。オペレータ2の顔識別を顔認証機能として実装し、顔認証が成功したことでCCクライアント21を始めとする各種機能にアクセスできるようにしてもよい。
【0039】
図1に戻り、警告処理部222は、カメラ監視部221により不正や異常が検知された場合に、オペレータ2に対する警告を出力するとともに、少なくともCCクライアント21に係る画面や機能についてロックして操作・使用できないようにする機能を有する。ロックする手法については特に限定されず、CCクライアント21に係る画面が視認できないような状態とするものであればよい。CCクライアント21に係る画面や機能等だけでなくオペレータ端末20全体をロックするようにしてもよい。本実施の形態では、例えば、オペレータ端末20のディスプレイに図4の例に示すような警告画面を常に最前面になるように表示して、CCクライアント21により表示される画面を隠蔽し、もしくは消去するとともに、オペレータ端末20を操作できないようにする。
【0040】
警告処理部222は、オペレータ端末20をロックするとともに、不正や異常を検知した旨をCCサーバ10のオペレータ管理部12に通知する。通知を受けたオペレータ管理部12は、SVへの通知を行い、SVからの指示に基づいて警告処理部222に対してロックの解除を指示する。すなわち、SVからの指示がない限りオペレータ端末20を操作できないようにする。SVがロック解除の可否を判断できるようにするため、CCサーバ10のオペレータ管理部12は、対象のオペレータ端末20の警告処理部222を介してオペレータ2と音声通話やチャット等によりやり取りができるようにしてもよい。
【0041】
また、不正や異常を検知した根拠となった画像または動画像(AIが不正や異常と判断した画像または動画像)、もしくは不正や異常を検知した時点でのオペレータ端末20の画面のスクリーンショットの画像データを、必要に応じて、現在のオペレータ2のリアルタイムの画像または動画として、SVが使用する端末に画面出力する構成でもよく、SVはその画像または動画を参照してロック解除の可否を判断してもよい。ここで、検知はAIを用いて行うものとして説明したが、(1)スマートフォンの検知、(2)作業環境への別人の侵入の検知、(3)オペレータ本人の顔認識の各AIモデルについて、それぞれ、検知感度のレベル毎にAIモデルを設けて運用してもよい。
【0042】
例えば、(1)スマートフォンの検知に関するAIモデルとして、高感度、中感度、低感度のAIモデルを構築し、デフォルトで高感度のAIモデルを利用した場合に、高感度がゆえに誤検知が多いとSVが判断した場合には、高感度のモデルから中感度のモデルに設定変更可能な構成としてもよい。このAIモデルの設定変更は、全てのオペレータ2を対象にしてもよいし、監視対象のオペレータ2毎に設定変更可能としてもよい。ここでは前記(1)の具体例を説示したが、前記(2)、(3)も同様である。
【0043】
さらに、SVからロック解除をする場合に解除の時間指定を受け付け、指定された時間の間、異常検知/不正検知機能をオフとする構成であってもよく、対象のオペレータ2はその時間の間、例えば、業務上必要な範囲でスマートフォンを用いることができる。ただし、ロックが解除されている間は、例えば魚眼カメラ23によりオペレータ2を撮影し、その動画像をCCサーバ10側で保存するか、SVが使用する端末に画面出力し続けることが望ましい。
【0044】
稼働監視部24は、オペレータ監視部22のプロセスの稼働状況を監視し、プロセスが落ちた/落ちていることを検知した場合にこれを再起動する機能を有する。これにより、本実施の形態において中心的で重要な機能が実装されているオペレータ監視部22が起動しておらず、そのために不正や異常の検知ができないという状況を可能な限り生じさせないようにして可用性を高めることができる。
【0045】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態であるオペレータ不正検知システム1によれば、魚眼カメラ23により撮影された映像に基づいてオペレータ2の作業環境を死角がない状態で監視し、AIによる画像認識により、(1)スマートフォンの検知、(2)作業環境への別人の侵入の検知、(3)オペレータ本人の顔認識という手法によって、オペレータ2や第三者による盗撮や覗き見、なりすまし等の不正行為につながる不正や異常な事象を未然に検知して、これらの不正行為を防止することができる。
【0046】
以上の説明では、コンタクトセンターのオペレータ2とSVを例にとって説明したが、在宅勤務時の部下(利用者)と上司(利用監視者)においても本発明を適用することができる。その場合には、本実施の形態で説明したCCクライアント21に代えて、汎用的なシンクライアント機能をオペレータ端末20が具備し、サーバ(CCサーバ10)もCC処理部11ではなくシンクライアント機能を提供する処理部を備える構成となる。言い換えれば、通常のシンクライアントシステムにおいて、サーバ側にオペレータ管理部12を備え、魚眼カメラ23を備えたクライアント側にオペレータ監視部22を備えた構成となる。ここで、上述したが、オペレータ監視部22自体もシンクライアント構成としてサーバ側に機能を移管する構成であってもよい。
【0047】
また、以上の説明では、検知対象をスマートフォンとしたが、携帯電話、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistant)、カメラ等、本実施の形態のオペレータ不正検知システム1を利用する企業等が検知対象とした電子機器であれば特に制限はなく、複数の電子機器を一つのAIモデルまたは複数のAIモデルで検知することも可能である。電子機器のうち、スマートフォンやカメラ等、撮影または撮像する機能を有する撮像装置を検知対象とすることも可である。
【0048】
また、以上の説明では、対象画像における検知対象をスマートフォンまたはオペレータ2以外の第三者としてこれを画像認識により識別し、不正を検知するという説明を行ったが、対象画像1枚のみだけで不正を検知したとみなすのではなく、時間的に連続する複数の対象画像で検知対象を画像認識により識別したときに不正を検知する構成であってもよい。例えば、1秒間に1枚対象画像を撮像する場合、5秒間に5枚の対象画像を撮像し、その時間的に連続する5枚全てで検知対象を識別したときに不正検知とみなす一方、例えば、最初の1枚のみで検知対象を識別し、残りの4枚で検知対象を識別できない場合には不正と検知しないようにすることもできる。これにより、検知対象の誤検知を回避することができる。なお、撮像のインターバル(撮影インターバル、撮影間隔とも言う)として1枚/1秒を例示したが、これに限らず、動画を撮像している場合の所定FPS(Frame per second)のうちの1フレームを対象画像として用いてもよい。さらに、検知対象を識別した場合、または不正を検知した場合に、撮像インターバルを通常より短くする構成であってもよい。
【0049】
また、以上の説明では、不正を検知した画像や動画像を本実施の形態のオペレータ不正検知システム1で記録して、SV等が確認できることを説明したが、オペレータ端末20またはCCサーバ10で通信不可の状態になった場合には、オペレータ端末20からCCサーバ10側へ不正検知した画像または動画像を送信することができないことも想定される。この場合には、例えば、所定時間または通信回復するまでの間、不正検知した画像または動画像をオペレータ端末20で継続して記録し、通信回復後に記録した不正検知した画像または動画像をCCサーバ10へ送信する構成であってもよい。
【0050】
また、以上の説明では、不正検知の手法、撮像インターバル、セキュリティオブジェクトの視認不可の画像処理等は全てのオペレータ2に対して同じ設定で動作することを想定して説明したが、オペレータ2またはオペレータ2が所属する部署毎に設定を変更することも可能であり、例えば、オペレータ端末20のオペレータ監視部22の起動時に対象のオペレータ2または対象部署の設定をCCサーバ10側から読み込んで実行する構成であってもよい。
【0051】
また、以上の説明では、特にオペレータ2の所在の如何を問わず、本実施の形態による不正検知を行うことを想定して説明してきたが、オペレータ2の所在に基づき不正検知動作を行うかどうかを判断した上で不正検知動作を実行する構成であってもよい。例えば、オペレータ2が所定の所在地にいる場合には不正検知動作を行わず、それ以外の場合には不正検知動作を行うものとしてもよいし、逆に、オペレータ2が所定の所在地にいない場合には不正検知動作を行い、それ以外の場合には不正検知動作を行わないものとしてもよい。例えば、社内のセキュリティレベルの高い所在地にいる場合や、顧客先での常駐の場合などが不正検知動作を行わない所在地の例である。オペレータ端末20の所在地を特定する技術は公知慣用技術が様々あり、それらの技術を用いることで実現できる。例えば、オペレータ端末20のGPSセンサーを用いる手法や、オペレータ端末20に割り当てられているIPアドレスから推定する手法、オペレータ端末20と通信接続しているアクセスポイントの配備位置を所在地とみなす方法等がある。
【0052】
また、以上の説明では、オペレータ端末20はシンクライアント端末であるとして説明したが、非シンクライアント端末(FAT端末)であってもよい。さらに補足すると、シンクライアント端末の種類によっては通信遮断が生じた場合でもシンクライアント端末のローカル環境は動作可能であり、そのローカル環境に適宜プログラムをインストールして実行させることもでき、加えて、ローカル環境のプログラムと、シンクライアントのプログラムとが協調して実行することも可能である。つまり、本実施の形態のオペレータ不正検知システム1に係る各手段の全部又は一部をそれらのプログラムにて実装することも可能である。
【0053】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0054】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0055】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0056】
さらに、画像とは、静止画、動画を含む概念であり、動画は複数の静止画からなる動画方式もある。AIモデルに関し、対象の静止画を入力して不正または異常を検知する構成としてもよいし、動画像を入力して不正または異常を検知する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、リモートで業務を行うオペレータの不正を検知するオペレータ不正検知システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…オペレータ不正検知システム、2…オペレータ、
10…CCサーバ、11…CC処理部、12…オペレータ管理部、
20…オペレータ端末、21…CCクライアント、22…オペレータ監視部、23…魚眼カメラ、24…稼働監視部、
30…ネットワーク、
221…カメラ監視部、222…警告処理部
図1
図2
図3
図4