IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イトーキの特許一覧

<>
  • 特開-椅子 図1
  • 特開-椅子 図2
  • 特開-椅子 図3
  • 特開-椅子 図4
  • 特開-椅子 図5
  • 特開-椅子 図6
  • 特開-椅子 図7
  • 特開-椅子 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006863
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/026 20060101AFI20230111BHJP
   A47C 3/20 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A47C3/026
A47C3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109696
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】河本 誠太郎
(72)【発明者】
【氏名】西上 真凪
(72)【発明者】
【氏名】春田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】北方 誉之
【テーマコード(参考)】
3B091
【Fターム(参考)】
3B091AA04
3B091AB03
3B091GA00
(57)【要約】
【課題】操作レバーの動きがチューブに挿通されたケーブルを介して伝達される椅子において、リクライニングに際してチューブのコネクタ部材が支持部から外れることを防止する。
【解決手段】昇降操作レバー32は、支軸55を支点にして回動するように第1ケーブル43に取り付けられて、昇降操作レバー32に第1ケーブル43の一端(先端)が連結されている。第1ケーブル43は第1チューブ45に挿通しており、第1チューブ45の先端に設けたコネクタ47の環状溝46が、リブ状の支持部65に形成した突状65aに嵌合している。リクライニング時に連動して中間部材14が後傾動すると、第1ケーブル43及び第1チューブ45が膨れ変形してコネクタ部材47が上昇することがあるが、支持部65は、コネクタ部材47との嵌合状態が保持される高さに設定されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子の1つの構成部材に回動自在に取り付けられた操作レバーと、一端が前記操作レバーに連結されたケーブルと、前記ケーブルがその一端部を露出させた状態でスライド自在に挿通されているチューブと、前記ケーブル及びチューブの他端が連結された他の構成部材と、を有し、
前記1つの構成部材に設けた支持部に、前記チューブの一端に設けた係合部が、前記チューブの長手方向には移動不能で前記チューブと交叉した一定方向には移動を許容するように嵌合しており、
前記1つの構成部材と他の構成部材との相対動によって前記ケーブル及びチューブの一端部と他端とが相対動しても、前記チューブの一端の係合部は前記支持部に嵌合した状態が維持されている、
椅子。
【請求項2】
前記係合部は、前記ケーブルの一端に固定されたコネクタ部材に形成された環状溝であり、前記支持部には、前記環状溝が遊嵌する突条を形成している、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
脚支柱の上端に設けたベース体に、座を支持する中間部材が後傾動可能に連結されており、
前記操作レバーは、前記中間部材の側部に装着されて、前記支持部は、前記係合部を上から嵌め込みできるように上下長手の姿勢に形成されている一方、
前記ケーブルの他端は、前記ベース体に配置された部材に連結されている、
請求項1又は2に記載した椅子。
【請求項4】
前記ケーブル及びチューブは巻かれずに緩く湾曲しており、背もたれが後傾すると前記ケーブル及びチューブに曲げ力が作用するようになっている、
請求項3に記載した椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、操作レバーを備えた椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子には、座を昇降させるための操作レバーや背もたれの後傾姿勢を制御するための操作レバーなどが配置されている。操作レバーは、回転式も使用されているが一般には回動式が多い。そして、操作レバーの動きを被作動部(例えば、座の昇降の場合はガスシリンダのブッシュバルブ)に伝える連動手段としては、リンク機構等の剛体部材を使用する場合と、曲がり変形自在なチューブ(アウター)にケーブル(インナー、ワイヤー)がスライド自在に挿通された索導管を使用する場合とに大別される。
【0003】
背もたれがばね手段に抗して後傾動する椅子において、座が背もたれに連動して後傾するタイプの椅子では、座は、ベース体に後傾動自在に連結された中間部材(座アウターシェル)に取り付けられており、この場合は、座の昇降用等の操作レバーは中間部材の側部に配置されるが、座の昇降や背もたれの後傾制御を行う作動部(被操作部)はベース体に配置されているため、操作レバーの動きを作動部に伝える連動手段としては索導管が使用されている。その例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-58758号後公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、索導管を構成するチューブの両端は、椅子の構成部材に形成された支持部に嵌合している。すなわち、一般に、チューブの両端には環状溝を形成したコネクタ部材が固定されている一方、支持部は、コネクタ部材の環状溝に嵌入する一対の突条(リブ)を有するU形溝に形成されており、チューブの両端のコネクタ部材は、支持部への取り付けは許容されつつ、チューブの軸方向には移動不能に保持されている。
【0006】
索導管は撓み変形するが、ケーブルの自由なスライドを許容できる曲率半径は自ずと限度がある。許容される曲率半径は、ケーブル及びチューブの外径によって相違するが、椅子に使用される索導管の場合は、曲率半径は10cm程度かそれ以上必要であることが多い。
【0007】
他方、椅子において、操作レバーの位置や姿勢と作動部の位置や姿勢との関係は様々であるのみならず、索導管の取り回しについても他の部材の制約を受けることになる。このため、索導管を大きく曲げることができずに、緩く湾曲させただけにせねばならない場合があるが、この場合、チューブ(及びケーブル)には自身の弾性復元力が突っ張り力として強く作用することがある。
【0008】
例えば、座が背もたれの後傾動に連動して後傾動する椅子では、リクライニング時に座に取り付いた操作レバーが前後方向や上下方向に移動することになるが、昇降操作レバー用等のケーブル及びチューブは、その一端は座が固定されている中間部材に連結されて、他端はベースに設けた部材に連結されているため、座が中間部材に対して相対移動するとケーブル及びチューブに曲げ力が作用し、すると、ケーブル及びチューブに弾性復元力が蓄積されて、ケーブル及びチューブの一端と他端とを突っ張らせるように作用することがある。
【0009】
そして、コネクタ部材の係合溝を中間部材に設けた支持部のリブに嵌合させるにおいて、支持部のリブはコネクタ部材の嵌め込みを許容するため外側に露出しているため、上記のようにチューブが緩く湾曲しているだけであると、その弾性復元力(突っ張り力)が、係合部を支持部から離脱させることを助長させるように作用することがあり、このため、チューブの一端が支持部から外れて座の昇降等の制御が不能になってしまうことが懸念される。
【0010】
この点に対しては、コネクタ部材が支持部から外れないようにストッパー部材を後付けで設けたり、支持部に対する係合部の嵌め込み方向をケーブル及びチューブの曲がり変形によるコネクタの移動方向と完全に異なる方向に設定したりしたよいと考えられるが、前者の対策では別部材を要するためコストが嵩むという問題があり、後者の対策では、係合部の装着に手間がかかる問題や、成形のための金型が複雑化する問題がある。また、いずれの対策でも、ケーブルの動きがスムースでなくなって、操作レバーの動きが悪くなるおそれもある。
【0011】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明の椅子は、
「椅子の1つの構成部材に回動自在に取り付けられた操作レバーと、一端が前記操作レバーに連結されたケーブルと、前記ケーブルがその一端部を露出させた状態でスライド自在に挿通されているチューブと、前記ケーブル及びチューブの他端が連結された他の構成部材と、を有し、
前記1つの構成部材に設けた支持部に、前記チューブの一端に設けた係合部が、前記チューブの長手方向には移動不能で前記チューブと交叉した一定方向には移動を許容するように嵌合しており、
前記1つの構成部材と他の構成部材との相対動によって前記ケーブル及びチューブの一端部と他端とが相対動しても、前記チューブの一端の係合部は前記支持部に嵌合した状態が維持されている」
と構成である。
【0013】
本願発明は、様々に具体化できる。その例として、請求項2では、
「前記係合部は、前記ケーブルの一端に固定されたコネクタ部材に形成された環状溝であり、前記支持部には、前記環状溝が遊嵌する突条を形成している」
という構成になっている。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
「脚支柱の上端に設けたベース体に、座を支持する中間部材が後傾動可能に連結されており、
前記操作レバーは、前記中間部材の側部に装着されて、前記支持部は、前記係合部を上から嵌め込みできるように上下長手の姿勢に形成されている一方、
前記ケーブルの他端は、前記ベース体に配置された部材に連結されている」
という構成になっている。請求項3では、中間部材は請求項1に記載した1つの構成部材に該当して、ベース体に配置された部材が他の構成部材に該当する。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3において、
「前記ケーブル及びチューブは巻かれずに緩く湾曲しており、背もたれが後傾すると前記ケーブル及びチューブに曲げ力が作用するようになっている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0016】
本願発明では、背もたれのリクラニング等に起因してケーブル及びチューブに曲げ力が作用してチューブの一端の係合部が支持部に対して動いても、支持部と係合部との嵌合状態が維持されているため、操作機能は維持される。
【0017】
従って、後付け方式のストッパーは不要であってそれだけコストを抑制できる。また、支持部を複雑な形態にする必要はないため、支持部を有する部材を製造する金型が複雑化する問題やケーブル、チューブの取り付けが厄介になるといった問題も生じない。また、ケーブル及びチューブは湾曲状態を変えるものではないため、レバーの動きのスムース性も確保できる。
【0018】
既述のとおり、チューブの端に設けたコネクタ部材には係合部として環状溝を形成されていることが普通であるため、請求項2の構成を採用すると、市販の索導管をそのまま使用できて現実的である。
【0019】
請求項3の構成では、リクライニング時に中間部材が下降しても係合部が支持部から外れることはないため、座のシンクロ機能を保持して椅子の商品価値を維持しつつ、操作レバーによる制御機能を確保できる。
【0020】
請求項4の構成では、ケーブル及びチューブを最小長さに設定しつつ、チューブの係合部が支持部から外れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る椅子の外観を示す図で、(A)は前方斜視図、(B)は下方斜視図、(C)は座クッションを分離した斜視図、(D)は中間部材とベース体との関係を示す前方斜視図である。
図2】(A)は背もたれと座とを省略した斜視図、(B)は座の支持機構部を示す分離斜視図である。
図3】(A)は要部の分離斜視図、(B)は操作レバーの上方斜視図、(C)は操作レバーの下方斜視図である。
図4】(A)は中間部材を横下方から見た斜視図、(B)は座部を前下方から見た斜視図である。
図5】(A)は作動部の上方斜視図、(B)は作動部の分離下方斜視図である。
図6】(A)は操作レバーを装着した状態での要部平面図、(B)は操作レバーを省略した状態での要部平面図、(C)は操作レバー及びストッパーを分離した斜視図である。
図7】(A)は要部の上方斜視図、(B)は要部の分離上方斜視図、(C)は操作レバーを分離した下方斜視図である。
図8図4(B)及び図6(A)の VIII-VIII視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、方向を特定するため前後や左右の文言を使用するが、この方向は普通に着座した人から見た状態を基準にしている。正面視方向は、着座した人と対向した方向である。
【0023】
(1).椅子の概要
まず、椅子の概要を説明する。この椅子は、オフィス等で多用されている回転椅子であり、図1に示すように、主要部材として、座1と背もたれ2、背もたれ2が取り付けられたバックフレーム3、及びキャスタ付きの脚装置4を備えている。背もたれ2は、樹脂製の背板5の表裏両面にクッションを張ってこれを袋状の表皮材で覆った構造になっている。
【0024】
バックフレーム3は、図2に示すように、左右中間部に位置した背支柱6と、背支柱6の上端に取り付けた左右長手のアッパサポート7と、背支柱6の下端から左右に張り出したロアサポート8とを備えている。図2に示すように、バックフレーム3の下端から左右一対の傾動フレーム9が前向きに突出しており、傾動フレーム9の前端は、脚装置4の上端に固定されたベース体10に、左右長手の支軸11(図3(B)、図4(B)参照)によって後傾動可能に連結されている。
【0025】
図3(A)に示すように、ベース体10は金属板製で上向きに開口した形態であり、内部には、背もたれの後傾動に抵抗を付与するばねユニット12が配置されている。ばねユニット12の硬さは、ベース体10から右向きに突出したハンドル13の回転操作によって調節できる。
【0026】
例えば図3(A)から容易に理解できるように、ベース体10の上方に、座1よりも大きい横幅の中間部材(固定アウターシェル)14が配置されている。中間部材14は合成樹脂製であり、その前部にスライドサポート(可動アウターシェル)15を前後動自在に装着して、中間部材14とスライドサポート15で座板16を支持している。ベース体10の前端には左右のフロントブラケット17が固定されており、フロントブラケット17で中間部材14の前部が支持されている。
【0027】
詳細は省略するが、中間部材14の後部は傾動フレーム9に相対回動可能に連結されて、中間部材14の前部は既述のフロントブラケット17に後退動可能に連結されている。従って、中間部材14及び座1は、背もたれ2が後傾すると、これに連動して後傾しつつ後退する。図3(A)に示すように、フロントブラケット17に、中間部材14の後退動をガイドする湾曲したガイド面18が形成されている。
【0028】
図3(A)に示すように、中間部材14は前後左右に大きく広がっている。図4(A)において、符号19は座板16を支持するボス体、符号20は座板16を固定する上向き爪、符号21は座板16に設けた下向き爪が係合する係合穴、符号22はスライドサポート15のレールが嵌入するガイド溝、符号23はスライドサポート15を抜け止めするT型突起、符号24は、スライドサポート15を上向き離反不能に保持するガイドリブである。
【0029】
更に、図3(A)に示すように、中間部材14の右前部には前後長手の長穴25が空いており、この長穴25に、図1(B)に示すスライド摘み26が露出している。スライド摘み26はスライドサポート15の右側部に装着されており、スライド摘み27を前後動させると、スライドサポート15が前後動して座板16の前部の巻き込み量が変化して、座の前後長さを調節できる。
【0030】
図4(A)や図1(D)に示すように、中間部材14のうちやや後ろ寄り部位には、平面視8角形の大きな開口28が形成されて、開口28の下方にベース体10の後部が位置している。脚装置4を構成する脚支柱29は、ベース体10の後部に配置されている。図3(A)に示すように、ベース体10の後部内にはリアブラケット30が配置固定されており、リアブラケット30とベース体10とに溶接で接合されたブッシュ(図示せず)に、ガスシリンダより成る脚支柱29の上端が下方から嵌着している。
【0031】
図2(A)に示すように、脚支柱29の上端にはロックを解除するためのプッシュバルブ31が突出しており、例えば図2(B)や図4に示すように、中間部材14の右側部に、プッシュバルブ31を押し下げ操作するための昇降操作レバー32が配置されている。また、中間部材14の右側部で昇降操作レバー32の後ろには、背もたれ2の後傾動を制御する角度調節レバー33が配置されている。従って、本実施形態では、中間部材14が請求項に記載した1つの構成部材になる。
【0032】
(2).昇降制御装置
昇降操作レバー32は請求項に記載した操作レバーに相当するものであり、昇降操作レバー32を含む昇降制御装置を次に説明する。図3(A)に示すように、リアブラケット30の上面に、昇降操作及び角度調節を司る操作ユニットブロック34が固定されている。操作ユニットブロック34の構造は図5に明示しているので、次に、図5を参照して説明する。操作ユニットブロック34は請求項に記載した他の構成部材である。
【0033】
操作ユニットブロック34は、左右の下向きボス34aによって位置決めされていると共に、左右のビス35でリアブラケット30に固定されている。操作ユニットブロック34には、昇降操作用の第1ガイド部36と、角度調節用の第2ガイド部37とが形成されている。
【0034】
第1ガイド部36は、平面視において前に行くほど右にずれるように傾斜しており、かつ上向きに開口した樋状に形成されている。そして、第1ガイド部36に、プッシュバルブ31を押し下げるテコ杆38が装着されている。テコ杆38は、平面視で第1ガイド部36の長手方向に細長い形状であり、横向きに突出した一対の支軸39を有して、支軸39が、第1ガイド部36の側板に形成された切り開き穴40に下向き動不能に嵌入している。従って、テコ杆38は、支軸39を支点にして回動する。
【0035】
テコ杆38の前端部は、プッシュバルブ31の真上に位置した押動部41になって、後端部には、第1ケーブル43の基端(他端)が連結される筒状ボス42を形成している。すなわち、筒状ボス42に、その一端に開口した切り開き溝43を形成して、第1ケーブル43の基端に固定されたボール状固定子44を嵌め入れている。第1ケーブル43はテコ杆38の上を通って第1ガイド部36の内部を通っており、第1ケーブル43は、その基端部を第1ガイド部36の内部に露出させた状態で、第1チューブ45にスライド自在に挿通されている。
【0036】
第1チューブ45の基端(他端)には、環状溝46を形成したコネクタ部材47が固定されており、コネクタ部材47の環状溝46は、第1ガイド部36の内面に形成された上下長手の一対の突条48に嵌入している。従って、第1チューブ45はその長手方向にずれ不能に保持されており、第1ケーブル43が引かれると、テコ杆38は押動部41が下降するように回動し、プッシュバルブ31が押し下げられる。すなわち、脚支柱28のロックが解除されてフリー状態になる。ロック状態では、テコ杆38はプッシュバルブ31で押し上げられている。第1ケーブル43の基端部は、テコ杆38から遠ざかるほど高くなるように傾斜している。
【0037】
第1ガイド部36の前端には、コネクタ部材47を上から囲うドーム部36aが形成されている。従って、第1ガイド部36のコネクタ部材47は上向き外れ不能に保持されている。なお、第1ガイド部材36へのコネクタ部材47の取り付けは、斜め下向きの姿勢にしてドーム部36aに後ろから挿通してのち、姿勢を起こして環状溝46を突条48に嵌め込むという手順で行われる。
【0038】
第2ガイド部37は、ベース体10の左側面に沿って前後長手の姿勢に配置されており、その前端に、第2ケーブル49をスライド自在に挿通した第2チューブ50の基端(他端)が、コネクタ部材47を介して係止されている。また、操作ユニットブロック34の下面には、水平回動するようにロックプレート(図示せず)が取り付けられている一方、傾動フレーム9には、ロックプレートと対向するようにロックブロックが配置されて、ロックブロックに、ロックプレートが水平回動して選択的に係合する複数段のロック溝が形成されている。
【0039】
そして、第2ガイド部37の内部には、ばねを備えた作動部が配置されており、第2ケーブル49の基端(他端)がロックプレートの一端部に連結されている。ロックプレートは、第2ケーブル49の引き操作により、ロックブロックに向けて前進した姿勢と、ロックブロックから離脱した状態とに交互に切り替わるようになっている。従って、背もたれ2は、特定の後傾角度に保持され得るロック状態と、自在に回動し得るフリー状態とに交互に切り換えられる。
【0040】
(3).昇降操作レバー
次に、昇降操作レバー32,33に関連した構造を説明する。例えば図7(C)に示すように、中間部材14の右側部に、昇降操作レバー32を保持する第1レバー受け部53と、角度調節レバー33を保持する第2レバー受け部54とが前後に並べて膨出した状態に形成されている。
【0041】
図4(C)や図6(C)に示すように、昇降操作レバー32の基部には、前後に突出した支軸55と、下向きに突出した引き操作部56とが一体に形成されている。例えば図6(C)に示すように、昇降操作レバー32は、第1レバー受け部53に上から挿入されて右側に露出させるようになっており、第1レバー受け部53の内部には、図7(C)に示すように、支軸55が上向き移動不能に嵌まる第1支持部57と、昇降操作レバー32における奥部の前後両側を下向き動不能に保持するランド部58とが形成されており、これにより、昇降操作レバー32は上下動不能に保持されている。
【0042】
更に、例えば図6に示すように、第1レバー受け部53に、上から側面視門型の第1ストッパー59を挿入して、第1ストッパー59によって支軸55を内向きに移動不能に保持している。従って、昇降操作レバー32の支軸55は、前後・左右・上下のいずれにも移動不能に保持されており、これにより、昇降操作レバー32を支軸55の軸心回りに(すなわち、前後長手の軸心回りに)回動させることができる。
【0043】
なお、図6(A)において、第1ストッパー59と昇降操作レバー32とに平行斜線を施しているが、これは、配置位置と外形とを明瞭化するための措置であり、断面の表示ではない。
【0044】
図6(C)に明示するように、第1ストッパー59は、上向きに延びる正面視ト字形の係合爪60を有しており、係合爪60が第1レバー受け部53の内壁53aに形成された横穴61(段部)に係合することにより、第1ストッパー59は上向き抜け不能に保持されている。また、図6(C)に明示するように、第1レバー受け部53の内壁53aには、第1ケーブル43の挿通を許容するための通路53bが切り開き形成されている。
【0045】
図7(C)に示すように、第1レバー受け部53の下面には、射出成形法によって第1支持部57を形成するための第1抜き違い穴62と、横穴61を形成するための第1抜き違い穴63とが開口している。
【0046】
例えば図3(C)に示すように、昇降操作レバー32の引き操作部56には、前向きに開口した係合穴63と、係合穴63に連通したスリット64とが形成されて、係合穴63に、第1ケーブル43の一端(前端)が固定したボール状固定子44を嵌入し、第1ケーブル43の一端をスリット64から内側に引き出している。
【0047】
第1チューブ43の先端(一端)にもコネクタ部材47が固定されており、コネクタ部材47に形成された環状溝46が、中間部材14に形成された一対の第1支持部65に設けた突条65aに上から嵌合している。第1支持部65には、前後長手の補強リブ66が繋がっている。補強リブ66は縦横に延びるように多数形成されているが、第1支持部65の内側(左側)では、前後長手の補強リブ66が切り開かれて、第1チューブ45の通路67が形成されている。
【0048】
第1支持部65は、第1ケーブル43の一端部と交叉した上下方向(請求項の一定方向)に延びている。従って、第1ケーブル43のコネクタ部材47は、第1ケーブル43の軸方向には移動不能に保持されて、上下方向には移動可能である。
【0049】
更に、中間部材14には、図3(A)や図6図7(A),図8に示すように、八角形の開口28の右側に位置した逃がし穴68が開口しており、第1チューブ45は、逃がし穴68を通って中間部材14の上側に引き出されている。図3(A)に示すように、開口28の内周は壁69で構成されているが、壁69のうち逃がし穴68を区画する部位の下端には、第1チューブ45をできるだけ上に位置させるための切欠き70が形成されている。
【0050】
図1(D)から理解できるように、中間部材14の開口28は操作ユニットブロック34よりもかなり上に位置しているため、第1ケーブル43及び第1チューブ45の基端(他端)と先端(一端)との間にはかなりの高低差がある。そこで、第1ケーブル43及び第1チューブ45の曲がりをできるだけ抑制できるように、中間部材14に逃がし穴68を形成している。また、操作ユニットブロック34の第1ガイド部36は前に向けて高さが高くなっているが、これも、第1ケーブル43及び第1チューブ45の全体を傾斜姿勢にして、曲がりを緩くするための措置である。
【0051】
図3(B)(C)に示すように、角度調節レバー33は下向きに開口したポケット部71を有しており、ポケット部71の下部後端に支軸72が形成されている。角度調節レバー33も昇降操作レバー32と同様に、第2レバー受け部54に回動自在に保持されて門型のストッパー73によって抜け止めされている。
【0052】
第1ケーブル43は昇降操作レバー32に直接連結されていたが、図3(C)に示すように、角度調節レバー33では、角度調節レバー33の内部にテコ部材74が配置されて、第2ケーブル49の先端はテコ部材74に係止されている。
【0053】
図7(A)に示すように、第2チューブ50の先端は、中間部材14の補強リブ66に形成された第2支持部75に係止されているが、第2支持部75は前向きに開口して、その上面と下面とに、コネクタ部材47の環状溝46に嵌入する突条76が形成されている。また、図3(A)のとおり、操作ユニットブロック34の第2ガイド部37はベース体10の左側部において前後長手の姿勢になっているため、第2ケーブル49及び第2チューブ50は、手前に延びてから大きく曲がって後ろ向きに延びている。このため、第2ケーブル49及び第2チューブ50の曲がりの曲率半径は大きくて、第2ケーブル49は第2チューブ50の内部をスムースにスライドする。
【0054】
(4).まとめ
以上の構成において、昇降操作レバー32が引き回動されると第1ケーブル43が引かれてテコ杆28が回動し、プッシュバルブ31が押されて脚支柱29のロックが解除される。昇降操作レバー31から指を離すと、テコ杆28はプッシュバルブ31で押されて第1ケーブル43が逆方向に押され、昇降操作レバー32は元の姿勢に戻る。
【0055】
図3から理解できるように、第1チューブ45の先端は基端よりも少し前でかつ高くなっている。そして、第1ケーブル43及び第1チューブ45は緩く曲がっているに過ぎないため、背もたれ2の後傾動(リクライニング)に連動して座1及び中間部材14が後傾動(後退及び下降)すると、第1ケーブル43及び第1チューブ45は、その先端と基端との間隔が狭められるような作用を受けて図8に一点鎖線で示すように弾性変形し、その弾性復元力による突っ張り力により、第1チューブ45の先端のコネクタ部材47を上向き動させられる傾向を呈するため、リクライニングニ際して弾みで第1チューブ45の始端が上昇動してしまうことがある。
【0056】
この点について本実施形態では、第1チューブ45の始端のコネクタ部材37の上昇動を規制するのではなく、コネクタ部材47に対して突条65aが嵌合する範囲を長くして、第1チューブ45の始端が大きく上昇しても嵌合状態が保持されるように設定している。そして、突条65aを長くすることは金型の寸法設定で足りるため、別体の押さえ部材を設ける対策に比べてコストを抑制できると共に、第1ケーブル43の動きのスムース性も確保できる。一般には、突条65aの長さ(高さ)は、コネクタ部材47の外径の2~3倍程度あれば足りる。
【0057】
実施形態のように、中間部材14に逃がし穴68を形成すると、第1ケーブル43及び第1チューブ45のうち先端寄りの部位の上昇が規制されるため、第1ケーブル43及び第1チューブ45の踊り現象を防止して、突条65aを過剰な長さにすることなくコネクタ部材47の抜け防止を確実化できる利点がある。
【0058】
実施形態は昇降操作レバー32に適用したが、角度調節レバー33に適用したり、昇降操作レバー32と角度調節レバー33との両方に適用したりすることも可能である。また、係合部が動いても支持部と係合部との嵌合状態が維持されるように支持部の長さを設定することは、操作ユニットブロック34の側で行ってもよいし、中間部材14と操作ユニットブロック34の側との両方で行ってもよい。すなわち、ケーブル及びチューブの一端と他端とが相対動することに起因した係合部の逃げ作用の吸収は、少なくともいずれか一方の構成部材において行ったらよい。
【0059】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、操作レバーが取り付く部材は中間部材(座アウターシェル)である必要はないのであり、座板の側部に取り付けたりバックフレームに取り付けたりすることも可能である。
座の高さ調節用のチューブの場合、座の下降によってコネクタ部材が支持部から外れやすくなることも想定される、この対策として支持部の長さを長くすることも可能であるが、この場合は、背もたれは後傾しない方式であってもよい。チューブの一端と支持部との嵌合手段としては、チューブの一端に環状突起を設けて支持部に溝条を形成するなどしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本願発明は、椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 座
10 ベース体
14 中間部材(座アウターシェル、1つの構成部材)
16 座板
30 リアブラケット
32 昇降操作レバー(請求項の操作レバー)
33 角度調節レバー
34 操作ユニットブロック(他の構成部材)
36 第1ガイド部
37 第2ガイド部
38 テコ杆
39 支軸
43 第1ケーブル
44 固定子
45 第2チューブ
46 環状溝
47 コネクタ部材
49 第2ケーブル
50 第2チューブ
53 第1レバー受け部
55 支軸
65 第1支持部
65a 突条
68 逃がし穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8