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特開2023-68644手持ち式外科手術デバイスに使用するための高周波電極、電極器具およびレゼクトスコープ
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  • 特開-手持ち式外科手術デバイスに使用するための高周波電極、電極器具およびレゼクトスコープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068644
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】手持ち式外科手術デバイスに使用するための高周波電極、電極器具およびレゼクトスコープ
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230510BHJP
   A61K 50/00 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A61B18/14
A61K50/00 100
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022174326
(22)【出願日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】63/274,752
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/276,904
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510320416
【氏名又は名称】オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・クノップ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ブロックマン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ホルン
(72)【発明者】
【氏名】イジー・ラヴィチュカ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C160
【Fターム(参考)】
4C084AA30
4C084NA20
4C160KK03
4C160KK13
4C160KK36
4C160KK39
4C160MM54
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造コストが低減され、処置中における電極の信頼性が保証される、高周波電極、電極器具およびレゼクトスコープを提供する。
【解決手段】とりわけ泌尿器科で、膀胱、前立腺および尿道における電気外科手術ワークで使用されている手持ち式外科手術デバイスのための高周波電極18は白金-タングステン合金から製造される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち式外科手術デバイス、詳細にはレゼクトスコープ(10)に使用するための高周波電極(18)であって、少なくとも1つの導電体(20)を介して前記高周波電極(18)に電気エネルギーが供給されるように構成され、前記高周波電極(18)が白金-タングステン合金からなる、高周波電極。
【請求項2】
前記合金のタングステンの比率が5%~12%である、請求項1に記載の高周波電極。
【請求項3】
前記合金のタングステンの比率が9%~11%、好ましくは10%である、請求項1に記載の高周波電極。
【請求項4】
前記高周波電極(18)がループ、ストリップ、またはピンとして形成される、請求項1から3の何れか一項に記載の高周波電極。
【請求項5】
前記ループが0.25mm~0.35mm、好ましくは0.27mm~0.30mmのワイヤ径を有する、請求項4に記載の高周波電極。
【請求項6】
前記合金が1300N/mm~1700N/mm、好ましくは1400N/mm~1600N/mm、とりわけ1500N/mm+-50N/mmの引張り強さを有する、請求項1から5の何れか一項に記載の高周波電極。
【請求項7】
前記合金の破断時の伸びが2%~10%、好ましくは4%~8%である、請求項1から6の何れか一項に記載の高周波電極。
【請求項8】
手持ち式外科手術デバイス、特にレゼクトスコープ(10)に使用するための電極器具(16)、モノポーラまたはバイポーラ電極器具(16)であって、前記電極器具(16)が2つの支持アームを有する細長いシャフトセクションを有し、前記細長いシャフトセクションを通って少なくとも1つの導体(20)が延在し、前記導体(20)は前記電極器具(16)の遠位端(19)に、請求項1から7の何れか一項に記載の高周波電極(18)を形成し、前記高周波電極(18)に高周波電流が印加されるように構成され、かつ、前記高周波電極(18)が前記支持アームの遠位端の間に配置される、電極器具。
【請求項9】
請求項8に記載の電極器具(16)を有するレゼクトスコープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文による、手持ち式外科手術デバイスに使用するための高周波電極に関する。さらに、本発明は、請求項8に記載の、手持ち式外科手術デバイスに使用するための電極器具、および請求項9に記載のレゼクトスコープに関する。
【背景技術】
【0002】
汎用タイプの手持ち式デバイス、詳細にはレゼクトスコープ(切除鏡)のための高周波電極は、とりわけ泌尿器科で、膀胱、前立腺および尿道における電気外科手術ワークで使用されている。また、これらの高周波電極は、他の外科手術および整形外科処置および介入のために同様に使用することができる。一般に、これらの電極は、組織、例えば下部尿路における組織の切除および蒸発ならびに電気凝固法のために使用されている。この目的のために、手持ち式デバイスまたはレゼクトスコープは汎用高周波電極または電極器具を備えており、この汎用高周波電極または電極器具は、縦方向に変位することができ、かつ、手持ち式デバイスのシャフトまたはレゼクトスコープのシャフト内で回転することができるように取り付けられている。外科手術用高周波電極は、電極器具の遠位動作端に配置されている。
【0003】
このような電極はモノポーラ電極またはバイポーラ電極として構成できる。電極には、用途または実施形態に応じて、導電体を介して電気エネルギーが供給され、すなわちこの目的のために導電体を介して電気高周波電圧が供給される。高周波電流の供給は、高周波発生器によって、手持ち式デバイスまたはレゼクトスコープを介して生じる。電極がモノポーラ電極として設計されている場合、中性電極は処置される人の上に配置される。別法としては、中性電極はレゼクトスコープの一部であってもよい。その場合、シャフト、トランスポータおよび光ユニットは、電位の中性電極として働く。別法としては、電極キャリアを中性または戻り電極として同じく使用することができ、また、とりわけそのように使用することができる。詳細には延在した電極では、これは、潅注液を通る最短電流経路を表す。
【0004】
バイポーラ電極器具では、典型的な高周波電圧が電極に印加されるため、電気的に帯電した粒子のプラズマが電極の周り、または電極の特定部分の周りに形成される。このプラズマは電極で直接局所化され、また、高温または高エネルギー密度を所々に有する。
【0005】
当該タイプの高周波電極は白金-イリジウム合金から製造されることが知られている。この合金により、電極の長寿命で、それと同時に高水準の機械的安定性を保証することができる。2つの貴金属白金およびイリジウムでできたこの合金は、プラズマ浸食中の劣化の主な影響に対してとりわけ耐性を有することが分かっている。したがってこれらの電極は、電気化学酸化、熱蒸発に対して、また、原子スパッタリングに対して極めて耐性があることが分かっている。とりわけ使い捨て電極として使用する場合は、材料が長寿命であることの重要性は二次的なものであるが、とりわけここで説明されている使用法の領域では、高周波電極が少なくとも処置の継続期間にわたって完璧に機能することが保証されなければならない。
【0006】
これらの材料のコストはとりわけ不利であることが分かっている。詳細には、希少な貴金属イリジウムに対する需要の増加は著しいコストの増加をもたらしている。これらの材料コストの増加は、高周波電極全体の製造コストにも波及している。機械的安定性が過度に影響されることになるため、電極におけるイリジウムの比率を小さくすることは選択肢にない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、製造コストが低減され、かつ、処置中の電極の信頼性が保証される高周波電極、電極器具およびレゼクトスコープを提供する目的に基づいている。
【0008】
この目的の達成の1つは請求項1の特徴によって説明される。したがって上で説明したタイプの手持ち式外科手術デバイスに使用するための、白金-タングステン合金からなる、詳細にはその合金から製造される高周波電極が提供される。この合金により、電極の十分に高水準の機械的安定性を達成することができ、化学的耐性は不変である。したがって、電極は、処置中、より大きい機械的な力に同じく耐えることを保証することができる。したがって湾曲し、あるいは破壊し、破片が患者の中に落下する危険を取り除くことができる。また、言及されている特徴により、電極の過度に強い変形による短絡を同じく回避することができる。さらに、この材料選択は、タングステンを追加することによって高い融点を有している。したがって貴金属白金と相俟って、電気化学酸化に対する、また、熱蒸発に対する極度に強い耐性を達成することができる。貴金属白金と卑金属タングステンの組合せにより、知られている白金-イリジウム合金と比較すると、プラズマの点火による劣化の程度が大きくなるが、上で言及したタイプの処置に対しては、依然として定義済み手順要求事項を超えている。タングステンはイリジウムよりも入手および取扱いが著しく安価であるため、高周波電極を製造するためのコストを低減することができる。したがってタングステンを使用することにより、高周波電極に対する要求事項を満たし、また、それと同時にコストを低減することができる。
【0009】
詳細には、本発明は、タングステンの比率が5%~12%である合金を提供する。タングステンの比率は9%~11%または10%であることを同じく想定することができることが好ましい。合金におけるタングステンのこれらの比率値は、化学的および物理的影響に対する機能性、安定性および耐性のためにとりわけ有利であることが分かっている。
【0010】
本発明のさらに好ましい例示的実施形態は、ループの直径が0.25mm~0.35mm、好ましくは0.27mm~0.30mmである電極を提供する。さらに、電極が製造される合金は、1300N/mm~1700N/mm、好ましくは1400N/mm~1600N/mm、とりわけ1500N/mm+/-50N/mmの引張り強さを有することを想定することができる。さらに、本発明によれば、合金の破断時の伸びは2%~10%、好ましくは4%~8%であることを想定することができる。本発明による合金のこの寸法およびこれらの機械的特性は、上で言及した処置ステップを実施するのにとりわけ適しており、また、したがって必要な安定性を同時に達成することができる。
【0011】
言及されている目的を達成するための電極器具は請求項8の特徴を有する。したがって手持ち式外科手術デバイス、詳細にはレゼクトスコープに使用するための電極器具が提供され、電極器具は2つの支持アームを有する細長いシャフトセクションを有しており、この細長いシャフトセクションを通って少なくとも1つの導体が延在し、導体は器具の遠位端で、請求項1から7の何れか一項に記載の高周波電極に接続され、あるいは高周波電極に接続することができる。高周波電極は、支持アームの遠位端の間に配置される。
【0012】
冒頭で言及した目的を達成するためのレゼクトスコープは請求項9の特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るレゼクトスコープを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい例示的実施形態について、1つの図面に基づいてより詳細に説明する。
【0015】
レゼクトスコープ10は、図1には、手持ち式外科手術デバイスの例として示されている。このレゼクトスコープ10は、本質的にトランスポータ11、ハンドルユニット12およびシャフト13から構成され、患者を処置するために対応する身体開孔に導かれる。ここで示されている例示的実施形態では、シャフト13は、外部シャフト管、光ユニット15および電極器具16から構成されている。光ユニット15は長い管からなっており、中にレンズまたはガラスファイバを配置して、シャフト13の近位に配置されたアイピース17を通してシャフト13の遠位端19の処置部位を観察することができる。レゼクトスコープについてのより詳細な説明については、知られている従来技術を参照されたい。
【0016】
電極器具16は、本質的に高周波電極18および少なくとも1つの導電体20から構成されている。少なくとも1つの導電体20は、一方では高周波電極18に高周波電圧を供給し、また、他方では導電体20および恐らく他の要素は、電極18を電極器具16に取り付ける働きをしている。導電体20は、レゼクトスコープ10の遠位端19からシャフト13を通って導かれ、他の線を介して、高周波電磁エネルギーを生成するための高周波発生器(図示せず)に接続されている。ここでは、電極器具16の少なくとも1つの導電体20は、シャフト13の内側のマウント14によって、好ましくは光ユニット15の上に固定されることを想定することができる。
【0017】
身体組織は例えば高周波電極18によって操作することができる。そのために、高周波電極18はモノポーラ電極またはバイポーラ電極のいずれかとして設計することができる。バイポーラ電極の場合、電極は2つの導電体20に接続される。モノポーラ電極の例示的実施形態では、電極18は1つの導電体20に接続されるだけである。他の中性電極は患者に取り付けられるか、あるいはレゼクトスコープに統合される。高周波電極18に電気エネルギーを印加することによって電極18にプラズマが生成され、このプラズマにより、電極器具16の対応する動きによって組織が操作される。
【0018】
本発明による高周波電極18はループまたはカッティングループとして形成される。しかしながら高周波電極18は、ノブ、バー、ストリップ(帯状片)、ピンなどとして形成することもできる。この高周波電極18は、上で説明した高周波アプリケーションのために、化学的および物理的影響に対する十分な耐性と、機械的な力に対する耐久性の両方を有するように特殊な合金から製造される。本発明の概念によれば、高周波電極18は白金-タングステン合金から構成される。この合金は、白金およびイリジウムでできた知られている合金に優る利点を有しており、材料入手コストが著しく安価であり、その上、電極の製造がそれほど複雑ではなく、かつ、より安価である。さらに、高周波電極18は、必要なプロセス要求事項を少なくとも満たすこの合金によって実施される。
【符号の説明】
【0019】
10 レゼクトスコープ
11 トランスポータ
12 ハンドルユニット
13 シャフト
14 マウント
15 光ユニット
16 電極器具
17 アイピース
18 高周波電極
19 遠位端
20 導体
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち式外科手術デバイス、詳細にはレゼクトスコープ(10)に使用するための高周波電極(18)であって、少なくとも1つの導電体(20)を介して前記高周波電極(18)に電気エネルギーが供給されるように構成され、前記高周波電極(18)が白金-タングステン合金からなる、高周波電極。
【請求項2】
前記合金のタングステンの比率が5%~12%である、請求項1に記載の高周波電極。
【請求項3】
前記合金のタングステンの比率が9%~11%、好ましくは10%である、請求項1に記載の高周波電極。
【請求項4】
前記高周波電極(18)がループ、ストリップ、またはピンとして形成される、請求項1に記載の高周波電極。
【請求項5】
前記ループが0.25mm~0.35mm、好ましくは0.27mm~0.30mmのワイヤ径を有する、請求項4に記載の高周波電極。
【請求項6】
前記合金が1300N/mm~1700N/mm、好ましくは1400N/mm~1600N/mm、とりわけ1500N/mm+-50N/mmの引張り強さを有する、請求項1に記載の高周波電極。
【請求項7】
前記合金の破断時の伸びが2%~10%、好ましくは4%~8%である、請求項1に記載の高周波電極。
【請求項8】
手持ち式外科手術デバイス、特にレゼクトスコープ(10)に使用するための電極器具(16)、モノポーラまたはバイポーラ電極器具(16)であって、前記電極器具(16)が2つの支持アームを有する細長いシャフトセクションを有し、前記細長いシャフトセクションを通って少なくとも1つの導体(20)が延在し、前記導体(20)は前記電極器具(16)の遠位端(19)に、請求項1から7の何れか一項に記載の高周波電極(18)を形成し、前記高周波電極(18)に高周波電流が印加されるように構成され、かつ、前記高周波電極(18)が前記支持アームの遠位端の間に配置される、電極器具。
【請求項9】
請求項8に記載の電極器具(16)を有するレゼクトスコープ。
【外国語明細書】