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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006866
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】機械式ストッパ装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
B25J19/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109700
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】平井 淑隆
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707CX09
3C707CY17
(57)【要約】
【課題】機械式ストッパ装置において、2つの部材の相対回転可能範囲が狭くなることを抑制しつつ、より大きな衝撃を吸収可能にする。
【解決手段】第1部材(60)と第2部材(20)との機械的な回転限界を設定する機械式ストッパ装置(30)であって、第1部材に設けられ、相対回転により第2部材に対して所定軌道(W)を相対移動する第1ストッパ(31)と、金属の板材により形成され、所定軌道から外れた位置で第2部材に固定された第1被固定部(42)、第1被固定部から所定軌道に向けて屈曲して板材の板面を所定軌道に対向させるように延びる第1延長部(43)、第1延長部から第2部材に向けて屈曲して所定軌道から外れた位置まで延びる第2延長部(44)、及び第2延長部から屈曲して所定軌道から外れた位置で第2部材に固定された第2被固定部(45)を備える第2ストッパ(41)と、を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定回転軸心を中心として第1部材と第2部材とが相対回転するロボットの回転軸部に設けられ、前記第1部材と前記第2部材との機械的な回転限界を設定する機械式ストッパ装置であって、
前記第1部材に設けられ、前記相対回転により前記第2部材に対して所定軌道を相対移動する第1ストッパと、
金属の板材により形成され、前記所定軌道から外れた位置で前記第2部材に固定された第1被固定部、前記第1被固定部から前記所定軌道に向けて屈曲して前記板材の板面を前記所定軌道に対向させるように延びる第1延長部、前記第1延長部から前記第2部材に向けて屈曲して前記所定軌道から外れた位置まで延びる第2延長部、及び前記第2延長部から屈曲して前記所定軌道から外れた位置で前記第2部材に固定された第2被固定部を備える第2ストッパと、
前記所定軌道から外れた位置に設けられ、前記第1被固定部を前記第2部材に固定する第1固定部材と、
前記所定軌道から外れた位置に設けられ、前記第2被固定部を前記第2部材に固定する第2固定部材と、
を備える、機械式ストッパ装置。
【請求項2】
前記第2延長部は、前記第2被固定部から前記所定軌道に向けて屈曲して前記第2固定部材に沿って延びる沿設部を含む、請求項1に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項3】
前記第2固定部材は、前記所定軌道に向けて延び且つ前記沿設部に対向する対向部を含み、
前記沿設部は、前記第2被固定部から離れた部分ほど前記第2固定部材から離れるように傾斜している、請求項2に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項4】
前記第2部材は、前記所定軌道から外れた位置において前記第2固定部材を介して前記第2延長部の方を向いた第1受部を含み、
前記第2ストッパは、前記第2被固定部から前記第2固定部材に対して前記第2延長部と反対側に屈曲して前記第1受部に沿って延びる第1被受部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項5】
前記第1被受部は、前記第2被固定部から離れた部分ほど前記第1受部に近付くように傾斜している、請求項4に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項6】
前記第2部材は、前記第1受部における前記所定軌道の側の端部に接続して前記所定軌道から外れた位置で前記所定軌道の方を向いた第2受部を含み、
前記第2ストッパは、前記第1被受部から屈曲して前記第2受部に沿って延びる第2被受部を含む、請求項5に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項7】
前記第1ストッパと前記第2ストッパとは、前記相対回転により正方向及び逆方向において互いに近付くことが可能である、請求項1~6のいずれか1項に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項8】
前記第1固定部材及び前記第2固定部材は、頭部が円柱状のボルトである、請求項1~7のいずれか1項に記載の機械式ストッパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに適用される機械式ストッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、突出したストッパが設けられた可動部材と、異常動作時にストッパが衝突するストッパ受が設けられた固定部材と、ストッパ受のストッパに対向する対向面に設けられて衝突による衝撃を緩和する緩衝部材と、を備える機械式ストッパ装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-264069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の機械式ストッパ装置において、より大きな衝撃を吸収可能にしようとすると、緩衝部材をより大きくする必要がある。その場合、緩衝部材を大きくした分だけ、可動部材の可動範囲(2つの部材の相対回転可能範囲)が狭くなることが避けられない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、機械式ストッパ装置において、2つの部材の相対回転可能範囲が狭くなることを抑制しつつ、より大きな衝撃を吸収可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
所定回転軸心を中心として第1部材と第2部材とが相対回転するロボットの回転軸部に設けられ、前記第1部材と前記第2部材との機械的な回転限界を設定する機械式ストッパ装置であって、
前記第1部材に設けられ、前記相対回転により前記第2部材に対して所定軌道を相対移動する第1ストッパと、
金属の板材により形成され、前記所定軌道から外れた位置で前記第2部材に固定された第1被固定部、前記第1被固定部から前記所定軌道に向けて屈曲して前記板材の板面を前記所定軌道に対向させるように延びる第1延長部、前記第1延長部から前記第2部材に向けて屈曲して前記所定軌道から外れた位置まで延びる第2延長部、及び前記第2延長部から屈曲して前記所定軌道から外れた位置で前記第2部材に固定された第2被固定部を備える第2ストッパと、
前記所定軌道から外れた位置に設けられ、前記第1被固定部を前記第2部材に固定する第1固定部材と、
前記所定軌道から外れた位置に設けられ、前記第2被固定部を前記第2部材に固定する第2固定部材と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、ロボットの回転軸部において、所定回転軸心を中心として第1部材と第2部材とが相対回転する。機械式ストッパ装置は、ロボットの回転軸部に設けられ、前記第1部材と前記第2部材との機械的な回転限界を設定する。
【0008】
ここで、第1ストッパは、前記第1部材に設けられ、前記相対回転により前記第2部材に対して所定軌道を相対移動する。第2ストッパは、金属の板材により形成され、前記所定軌道から外れた位置で前記第2部材に固定された第1被固定部、前記第1被固定部から前記所定軌道に向けて屈曲して前記板材の板面を前記所定軌道に対向させるように延びる第1延長部、前記第1延長部から前記第2部材に向けて屈曲して前記所定軌道から外れた位置まで延びる第2延長部、及び前記第2延長部から屈曲して前記所定軌道から外れた位置で前記第2部材に固定された第2被固定部を備えている。第1被固定部及び第2被固定部は、前記所定軌道から外れた位置でそれぞれ第1固定部材及び第2固定部材により前記第2部材に固定されている。第1固定部材及び第2固定部材は、前記所定軌道から外れた位置に設けられている。このため、第1被固定部、第2被固定部、第1固定部材、及び第2固定部材は、第1ストッパに当接(衝突)せず、第1部材及び第2部材の相対回転可能範囲を狭くしない。
【0009】
そして、異常動作時に、第2部材の第1延長部に第1ストッパが衝突すると、金属の板材により形成された第2ストッパが変形することにより衝撃が吸収される。このため、第2ストッパ以外に別の緩衝部材を設けない場合であっても、より大きな衝撃を吸収可能になる。したがって、第1部材及び第2部材の相対回転可能範囲が狭くなることを抑制しつつ、より大きな衝撃を吸収可能にすることができる。
【0010】
第2の手段では、前記第2延長部は、前記第2被固定部から前記所定軌道に向けて屈曲して前記第2固定部材に沿って延びる沿設部を含んでいる。このため、第1ストッパと第2ストッパとの衝突による衝撃を、第2固定部材に沿設部がより広い面積で当たることで吸収しやすくなる。したがって、第1部材及び第2部材の相対回転可能範囲が狭くなることを抑制しつつ、より大きな衝撃を吸収可能にすることができる。
【0011】
第3の手段では、前記第2固定部材は、前記所定軌道に向けて延び且つ前記沿設部に対向する対向部を含み、前記沿設部は、前記第2被固定部から離れた部分ほど前記第2固定部材から離れるように傾斜している。こうした構成によれば、第2固定部材の対向部と沿設部とを面で当てやすくなるとともに、型を用いた圧延により第2ストッパを形成した場合に型から沿設部を外しやすくなる。なお、上記の傾斜は、沿設部が前記第2固定部材に沿って延びているとみなせる範囲である。
【0012】
第4の手段では、前記第2部材は、前記所定軌道から外れた位置において前記第2固定部材を介して前記第2延長部の方を向いた第1受部を含み、前記第2ストッパは、前記第2被固定部から前記第2固定部材に対して前記第2延長部と反対側に屈曲して前記第1受部に沿って延びる第1被受部を含む。
【0013】
上記構成によれば、前記第2部材は、前記所定軌道から外れた位置において前記第2固定部材を介して前記第2延長部の方を向いた第1受部を含んでいる。このため、第2部材の第1延長部に第1ストッパが衝突した時に、第2ストッパが第1受部に近付くことになる。そして、前記第2ストッパは、前記第2被固定部から前記第2固定部材に対して前記第2延長部と反対側に屈曲して前記第1受部に沿って延びる第1被受部を含んでいる。このため、第2部材の第1延長部に第1ストッパが衝突した時に、第1被受部を第1受部により受け止めることきができ、より大きな衝撃を吸収可能にすることができる。
【0014】
第5の手段では、前記第1被受部は、前記第2被固定部から離れるほど前記第1受部に近付くように傾斜している。こうした構成によれば、第1受部と第1被受部とを面で当てやすくなるとともに、型を用いた圧延により第2ストッパを形成した場合に型から第1被受部を外しやすくなる。なお、上記の傾斜は、第1被受部が前記第1受部に沿って延びているとみなせる範囲である。
【0015】
第2部材の第1延長部に第1ストッパが衝突すると、第2被固定部の一部を支点として第2ストッパを回転させるモーメントが発生する。
【0016】
この点、第6の手段では、前記第2部材は、前記第1受部における前記所定軌道の側の端部に接続して前記所定軌道から外れた位置で前記所定軌道の方を向いた第2受部を含み、前記第2ストッパは、前記第1被受部から屈曲して前記第2受部に沿って延びる第2被受部を含んでいる。このため、第2部材の第1延長部に第1ストッパが衝突した時に、第2被受部を第2受部により受け止めることきができ、より大きな衝撃を吸収可能にすることができる。
【0017】
第7の手段では、前記第1ストッパと前記第2ストッパとは、前記相対回転により正方向及び逆方向において互いに近付くことが可能である。このため、機械式ストッパ装置は、正方向及び逆方向のいずれの方向で異常動作した場合であっても、衝突による衝撃を吸収することができる。
【0018】
前記第1固定部材及び前記第2固定部材に頭部が六角柱状のボルトを使用した場合は、ボルトの回転角度に応じて衝突時におけるボルトの頭部と第2延長部との当たり方が変化する。このため、衝突による衝撃を安定して吸収することができないおそれがある。
【0019】
この点、第8の手段では、前記第1固定部材及び前記第2固定部材は、頭部が円柱状のボルトである。こうした構成によれば、衝突時におけるボルトの頭部と第2延長部との当たり方を一定にすることができ、衝突による衝撃を安定して吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】機械式ストッパ装置の斜視図。
図2図1の機械式ストッパ装置の平面図。
図3図2のIII-III線断面図。
図4】機械式ストッパ装置の変更例の断面図。
図5】機械式ストッパ装置の他の変更例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、垂直多関節型のロボットの関節(回転軸部)に設けられた機械式ストッパ装置に具現化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1に示すように、ロボットは、例えば6軸の垂直多関節型ロボットとして構成されている。ロボットは、ベース11(基台)、ショルダ部12、下アーム(以下図示略)、第1上アーム、第2上アーム、手首部、及びフランジを備えている。ショルダ部12は、ベース11により、図示しない第1軸線J1(所定回転軸心)を中心として回転可能に支持されている。以下では、図1の上下左右方向をロボットの上下左右方向として説明するが、ロボットの設置方向はこれに限られない。
【0023】
ベース11は、筐体20等を備えている。筐体20(第2部材)は、例えばアルミ合金(金属)の鋳物により形成されている。
【0024】
ショルダ部12は、筐体60等を備えている。筐体60(第1部材)は、例えばアルミ合金(金属)の鋳物により形成されている。
【0025】
機械式ストッパ装置30は、筐体20と筐体60との機械的な回転限界を設定している。以下、機械式ストッパ装置30の構成を詳細に説明する。
【0026】
機械式ストッパ装置30は、第1ストッパ31、第2ストッパ41、ボルト70等を備えている。
【0027】
第1ストッパ31は、例えばアルミ合金(金属)の鋳物により形成されており、筐体60の鋳造時に筐体60と一体成形されている。第1ストッパ31は、筐体60の外周面から四角柱状に突出している。第1ストッパ31の長手方向は、第1軸線J1と平行になっている。
【0028】
図2は機械式ストッパ装置30の平面図であり、図3図2のIII-III線断面図である。
【0029】
ショルダ部12が第1軸線J1を中心として回転することにより、第1ストッパ31は円状(環状)の所定軌道Wを移動する。すなわち、筐体20と筐体60とが相対回転することにより、第1ストッパ31は筐体20に対して所定軌道Wを相対移動する。
【0030】
第2ストッパ41は、例えば鉄(金属)の板材により、略「W」字状に形成されている。第2ストッパ41は、金型(型)を用いた圧延により形成されている。詳しくは、第2ストッパ41は、所定軌道Wに沿って全体が緩やかな円弧状に湾曲している。第2ストッパ41は、第1被固定部42、第1延長部43、第2延長部44、第2被固定部45、及び第1被受部46,47を備えている。
【0031】
第1被固定部42には、ボルト70の軸部70bを挿通する貫通孔42aが形成されている。第2被固定部45には、ボルト70の軸部70bを挿通する貫通孔45aが形成されている。ボルト70は、円柱状の頭部70aと、頭部70aの径よりも小さい径の円柱状の軸部70bとを備えている。貫通孔45aとボルト70の軸部70bとの間には、隙間が形成されている。
【0032】
筐体20には、第1被固定部42、第2被固定部45、第1被受部46,47、及びボルト70の頭部70aを収納する溝21が形成されている。溝21は、第1被固定部42及び第2被固定部45の形状に対応して全体が円弧状に湾曲している。
【0033】
2つのボルト70(第1固定部材、第2固定部材)は、それぞれ貫通孔42a,45aに挿通され、筐体20に形成された雌ねじ部にねじ込まれることで、それぞれ第1被固定部42及び第2被固定部45を筐体20に固定している。2つのボルト70は、所定軌道Wから外れた位置に配置されている(設けられている)。
【0034】
第1被固定部42は、所定軌道Wから外れた位置に配置されて筐体20に固定されている。
【0035】
第1延長部43は、第1被固定部42から所定軌道Wに向けて屈曲して板材の板面を所定軌道Wに対向させるように延びている。すなわち、第1延長部43は、第1被固定部42から所定軌道Wに交差する位置まで延びている。これにより、第1延長部43は、筐体20と筐体60との相対回転により、第1ストッパ31に当接可能になっている。
【0036】
第1延長部43は、第1被固定部42から所定軌道Wに向けて屈曲してボルト70の頭部70aに沿って延びる沿設部43aを含んでいる。沿設部43aは、ボルト70の頭部70aにおける沿設部43aに対向する対向部70cと略平行になっている。詳しくは、沿設部43aは、第1被固定部42から離れた部分ほどボルト70の頭部70aから離れるように傾斜している。ボルト70の頭部70aの対向部70cに対する沿設部43aの傾斜角度は、1.0~1.5[°]である。この傾斜角度は、金型を用いて第2ストッパ41を圧延した後に、金型から沿設部43a(第2ストッパ41)を外しやすくするために設定されている。すなわち、この傾斜角度は、沿設部43aがボルト70の頭部70aの対向部70cに沿って延びているとみなせる範囲に設定されている。また、ボルト70の頭部70aと沿設部43aとの隙間のうち最も大きい隙間は、第1被固定部42の貫通孔42aとボルト70の軸部70bとの隙間よりも小さくなっている。
【0037】
第2延長部44は、第1延長部43から筐体20に向けて屈曲して所定軌道Wから外れた位置まで延びている。第2ストッパ41は、左右対称の形状に形成されている。このため、第2延長部44は、上記沿設部43aと同様の沿設部44aを含んでいる。沿設部44aとボルト70の頭部70aの対向部70cとの関係は、沿設部43aとボルト70の頭部70aの対向部70cとの関係と同様である。
【0038】
第2被固定部45は、沿設部44a(第2延長部44)から屈曲して所定軌道Wから外れた位置に配置されて筐体20に固定されている。
【0039】
溝21の長手方向の側壁21a(第1受部)は、所定軌道Wから外れた位置においてボルト70の頭部70aを介して第1延長部43の方を向いている。溝21の長手方向の側壁21b(第1受部)は、所定軌道Wから外れた位置においてボルト70の頭部70aを介して第2延長部44の方を向いている。
【0040】
第2ストッパ41は、第1被固定部42からボルト70に対して第1延長部43と反対側に屈曲して側壁21aに沿って延びる第1被受部46を含んでいる。第1被受部46は、側壁21aと略平行になっている。詳しくは、第1被受部46は、第1被固定部42から離れた部分ほど側壁21aに近付くように傾斜している。側壁21aに対する第1被受部46の傾斜角度は、1.0~1.5[°]である。この傾斜角度は、金型を用いて第2ストッパ41を圧延した後に、金型から第1被受部46(第2ストッパ41)を外しやすくするために設定されている。すなわち、この傾斜角度は、第1被受部46が側壁21aに沿って延びているとみなせる範囲に設定されている。また、側壁21aと第1被受部46との隙間のうち最も大きい隙間は、第1被固定部42の貫通孔42aとボルト70の軸部70bとの隙間よりも小さくなっている。
【0041】
第1被受部47と側壁21bとの関係は、第1被受部46と側壁21aとの関係と同様である。
【0042】
上記構成において、第1ストッパ31(筐体60)は、第2ストッパ41(筐体20)に対して±170[°]の範囲で回転するように制御される。すなわち、第1ストッパ31と第2ストッパ41とは、相対回転により正方向及び逆方向において互いに近付くことが可能である。そして、何らかの異常が生じ、第1ストッパ31が第2ストッパ41に対して+172[°]を超えて回転すると、第1ストッパ31が第1延長部43に当接(衝突)する。また、第1ストッパ31が第2ストッパ41に対して-172[°]を超えて回転すると、第1ストッパ31が第2延長部44に当接(衝突)する。以下では、何らかの異常が生じ、第1ストッパ31が第2ストッパ41に対して+172[°]を超えて回転した場合を例として、機械式ストッパ装置30の作用効果について説明する。
【0043】
第1ストッパ31が第2延長部44に衝突すると、第2ストッパ41が所定軌道Wに沿って側壁21bの方向へ移動させられる。
【0044】
ここで、側壁21bと第1被受部47との隙間のうち最も大きい隙間は、第2被固定部45の貫通孔45aとボルト70の軸部70bとの隙間よりも小さくなっている。このため、貫通孔45aの内壁がボルト70の軸部70bに当たるよりも前に、第1被受部47が側壁21bに当たる。これにより、衝突による衝撃が、第1被受部47及び側壁21bにより吸収される。
【0045】
また、ボルト70の頭部70aと沿設部44aとの隙間のうち最も大きい隙間は、第2被固定部45の貫通孔45aとボルト70の軸部70bとの隙間よりも小さくなっている。このため、貫通孔45aの内壁がボルト70の軸部70bに当たるよりも前に、沿設部44aがボルト70の頭部70aの対向部70cに当たる。これにより、衝突による衝撃が、沿設部43a及びボルト70により吸収される。なお、第1被受部47が側壁21bに当たることと、沿設部44aがボルト70の頭部70aの対向部70cに当たることとは、いずれが先であってもよい。
【0046】
また、第1ストッパ31が第1延長部43に衝突すると、第2被固定部45において所定軌道Wに平行な方向への移動を規制する部分(第2被固定部45の一部)を支点として、第2ストッパ41を回転させるモーメントが発生する。このとき、第2被固定部45が溝21の底部21cで受け止められることにより、衝撃が吸収される。
【0047】
そして、第1ストッパ31が所定軌道Wに沿ってさらに第1延長部43に衝突すると、板材により形成された第2ストッパ41が変形することで衝撃がさらに吸収される。
【0048】
第1ストッパ31は鋳物で形成されているため、第1ストッパ31の形状や寸法にばらつきが生じることがある。このため、第1ストッパ31と第1延長部43とが当接(衝突)する位置がばらついて、衝突による衝撃を第2ストッパ41により適切に吸収できないおそれがある。
【0049】
そこで、第1ストッパ31における第1延長部43に対向する平面である第1対向面31aは、所定軌道Wに垂直に配置されている。第1延長部43における第1ストッパ31に対向する平面である第2対向面43bは、第1延長部43の先端側ほど第1対向面31aから離れるように傾斜している。このため、第1ストッパ31の形状や寸法にばらつきが生じたとしても、第1ストッパ31の第1対向面31aの第1被固定部42側の端部31bが第1延長部43に当接し易くなる。また、第2対向面43bの傾斜角度を調節することにより、衝突による衝撃を側壁21b及びボルト70と、溝21の底部21cとに割り振る配分が調節されている。
【0050】
第1延長部43が延びている方向(上下方向)において、第1ストッパ31の長さL1は第2ストッパ41の長さL2よりも長く設定されている。すなわち、第1延長部43が延びている方向において、第1ストッパ31の長さL1は、第1延長部43と重複する部分の長さL3よりも長く、望ましくは第1延長部43のうち沿設部43a以外の部分の長さL4よりも長く、さらに望ましくは第2ストッパ41の長さL2よりも長く設定されている。これにより、第1延長部43が延びている方向において、第1ストッパ31と筐体60との接続部分の長さL1が長く設定されている。
【0051】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0052】
・第1ストッパ31は、筐体60に設けられ、相対回転により筐体20に対して所定軌道Wを相対移動する。第2ストッパ41は、金属の板材により形成され、所定軌道Wから外れた位置で筐体20に固定された第1被固定部42、第1被固定部42から所定軌道Wに向けて屈曲して板材の板面を所定軌道Wに対向させるように延びる第1延長部43、第1延長部43から筐体20に向けて屈曲して所定軌道Wから外れた位置まで延びる第2延長部44、及び第2延長部44から屈曲して所定軌道Wから外れた位置で筐体20に固定された第2被固定部45を備えている。第1被固定部42及び第2被固定部45は、所定軌道Wから外れた位置でそれぞれ2つのボルト70により筐体20に固定されている。2つのボルト70は、所定軌道Wから外れた位置に設けられている。このため、第1被固定部42、第2被固定部45、及びボルト70は、第1ストッパ31に当接(衝突)せず、筐体60及び筐体20の相対回転可能範囲を狭くしない。
【0053】
・異常動作時に、筐体20の第1延長部43に第1ストッパ31が衝突すると、金属の板材により形成された第2ストッパ41が変形することにより衝撃が吸収される。このため、第2ストッパ41以外に別の緩衝部材を設けない場合であっても、より大きな衝撃を吸収可能になる。したがって、筐体60及び筐体20の相対回転可能範囲が狭くなることを抑制しつつ、より大きな衝撃を吸収可能にすることができる。
【0054】
・第2延長部44は、第2被固定部45から所定軌道Wに向けて屈曲してボルト70に沿って延びる沿設部44aを含んでいる。このため、第1ストッパ31と第2ストッパ41との衝突による衝撃を、ボルト70に沿設部44aがより広い面積で当たることで吸収しやすくなる。したがって、筐体60及び筐体20の相対回転可能範囲が狭くなることを抑制しつつ、より大きな衝撃を吸収可能にすることができる。
【0055】
・ボルト70は、所定軌道Wに向けて延び且つ沿設部44aに対向する対向部70cを含み、沿設部44aは、第2被固定部45から離れた部分ほどボルト70から離れるように傾斜している。こうした構成によれば、ボルト70の対向部70cと沿設部44aとを面で当てやすくなるとともに、型を用いた圧延により第2ストッパ41を形成した場合に型から沿設部44aを外しやすくなる。なお、上記の傾斜は、沿設部44aがボルト70に沿って延びているとみなせる範囲である。
【0056】
・筐体20は、所定軌道Wから外れた位置においてボルト70を介して第2延長部44の方を向いた側壁21bを含んでいる。このため、筐体20の第1延長部43に第1ストッパ31が衝突した時に、第2ストッパ41が側壁21bに近付くことになる。そして、第2ストッパ41は、第2被固定部45からボルト70に対して第2延長部44と反対側に屈曲して側壁21bに沿って延びる第1被受部47を含んでいる。このため、筐体20の第1延長部43に第1ストッパ31が衝突した時に、第1被受部47を側壁21bにより受け止めることきができ、より大きな衝撃を吸収可能にすることができる。
【0057】
・第1被受部47は、第2被固定部45から離れるほど側壁21bに近付くように傾斜している。こうした構成によれば、側壁21bと第1被受部47とを面で当てやすくなるとともに、型を用いた圧延により第2ストッパ41を形成した場合に型から第1被受部47を外しやすくなる。なお、上記の傾斜は、第1被受部47が側壁21bに沿って延びているとみなせる範囲である。
【0058】
・第1ストッパ31と第2ストッパ41とは、相対回転により正方向及び逆方向において互いに近付くことが可能である。このため、機械式ストッパ装置30は、正方向及び逆方向のいずれの方向で異常動作した場合であっても、衝突による衝撃を吸収することができる。
【0059】
・2つのボルト70に頭部が六角柱状のボルトを使用した場合は、ボルト70の回転角度に応じて衝突時におけるボルト70の頭部と沿設部43a(第2延長部44)との当たり方が変化する。このため、衝突による衝撃を安定して吸収することができないおそれがある。この点、2つのボルト70は、頭部70aが円柱状のボルトである。こうした構成によれば、衝突時におけるボルト70の頭部70aと沿設部43aとの当たり方を一定にすることができ、衝突による衝撃を安定して吸収することができる。なお、ボルト70の回転角度を管理した上で、2つのボルト70に頭部が六角柱状のボルトを使用することもできる。
【0060】
・第1ストッパ31における第1延長部43に対向する平面である第1対向面31aは、所定軌道Wに垂直に配置され、第1延長部43における第1ストッパ31に対向する平面である第2対向面43bは、第1延長部43の先端側ほど第1対向面31aから離れるように傾斜している。こうした構成によれば、第1ストッパ31の形状や寸法にばらつきが生じたとしても、第1ストッパ31の第1対向面31aの第1被固定部42側の端部31bが第1延長部43に当接し易くなる。このため、第1ストッパ31と第1延長部43とが当接(衝突)する位置を安定させることができ、衝突による衝撃を適切に吸収することができる。さらに、第2対向面43bの傾斜角度を調節することにより、衝突による衝撃を側壁21b及びボルト70と、溝21の底部21cとに割り振る配分を調節することができる。
【0061】
・第1延長部43が延びている方向において、第1ストッパ31の長さL1は第2ストッパ41の長さL2よりも長い。こうした構成によれば、第1延長部43が延びている方向において、第1ストッパ31と筐体60との接続部分の長さを長くすることきができる。したがって、第1ストッパ31と第2ストッパ41の第1延長部43との衝突時に、第1ストッパ31が破損することを抑制することができる。なお、第2ストッパ41は、衝突時に破損したとしても取り替えが容易である。
【0062】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0063】
・第1延長部43が延びている方向において、第1ストッパ31の長さL1を、第2ストッパ41の長さL2よりも短く設定したり、第1延長部43のうち沿設部43a以外の部分の長さL4よりも短く設定したりすることもできる。
【0064】
・ボルト70の頭部70aの対向部70cと沿設部43aとが平行であってもよい。
【0065】
・側壁21aと第1被受部46とが平行であってもよい。
【0066】
図4に示すように、第1延長部43が沿設部43aを含まず、第2延長部44が沿設部44aを含まない構成を採用することもできる。こうした構成によれば、第2ストッパ41の形状を簡潔にすることができる。また、図3,4以外にも、板材の屈曲させ方を適宜変更して、第2ストッパ41の形状を適宜変更することができる。
【0067】
図5に示すように、筐体20は、側壁21bにおける所定軌道Wの側の端部に接続して所定軌道Wから外れた位置で所定軌道Wの方を向いた上面部21e(第2受部)を含んでいる。そして、第2ストッパ41は、第1被受部47から屈曲して上面部21eに沿って延びる第2被受部49を含んでいてもよい。筐体20の第1延長部43に第1ストッパ31が衝突すると、第2被固定部45の一部を支点として第2ストッパ41を回転させるモーメントが発生する。上記構成によれば、筐体20の第1延長部43に第1ストッパ31が衝突した時に、第2被受部49を上面部21eにより受け止めることきができ、より大きな衝撃を吸収可能にすることができる。なお、第2ストッパ41の左側においても同様に、筐体20は、側壁21aにおける所定軌道Wの側の端部に接続して所定軌道Wから外れた位置で所定軌道Wの方を向いた上面部21d(第2受部)を含んでいる。そして、第2ストッパ41は、第1被受部46から屈曲して上面部21dに沿って延びる第2被受部48を含んでいてもよい。
【0068】
・第1ストッパ31と第2ストッパ41とは、相対回転により正方向(一方向)においてのみ互いに近付くことが可能であってもよい。
【0069】
・第2ストッパ41を形成する金属の板材の材質として、銅、アルミ、銅合金、アルミ合金、鉄の合金等を採用することもできる。また、吸収したい衝撃の大きさに応じて、板材の厚みを調節したり、第2ストッパ41の形状を変更したりすることもできる。
【0070】
・機械式ストッパ装置30は、ベース11とショルダ部12とを連結する関節に限らず、ロボットの任意の関節に適用することができる。
【0071】
なお、上記の各変更例を組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0072】
20…筐体(第2部材)、30…機械式ストッパ装置、31…第1ストッパ、41…第2ストッパ、42…第1被固定部、43…第1延長部、44…第2延長部、45…第2被固定部、70…ボルト(第1固定部材、第2固定部材)、60…筐体(第1部材)。
図1
図2
図3
図4
図5