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特開2023-68685制御装置、制御方法、及び、制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068685
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、及び、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/04 20060101AFI20230511BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20230511BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20230511BHJP
   B23B 15/00 20060101ALI20230511BHJP
   B23B 25/00 20060101ALI20230511BHJP
   B23B 47/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B23Q7/04 A
B23Q17/00 B
B23Q11/00 N
B23Q11/00 P
B23B15/00 A
B23B25/00 A
B23B47/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179900
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 修平
(72)【発明者】
【氏名】福永 敏貴
(72)【発明者】
【氏名】二村 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】木野 裕也
【テーマコード(参考)】
3C011
3C029
3C033
3C036
3C045
【Fターム(参考)】
3C011BB11
3C011BB15
3C029EE06
3C033HH30
3C036CC01
3C045FB10
3C045HA04
(57)【要約】
【課題】ワーク自動搬送機に生じた動作不良の原因を自動的に解消する解消動作を制御する制御装置を提供すること。
【解決手段】制御装置は、把持部の動作不良を表す不良動作情報を取得する情報取得部と、不良動作情報を取得した場合、クランプ動作中の把持部をアンクランプ動作に切り替えて動作させる第一動作、又は、アンクランプ動作中の把持部をクランプ動作に切り替えて動作させる第二動作を含む解消動作を制御する解消動作制御部と、解消動作を行った後、第一動作を行った把持部を再度クランプ動作させる、又は、第二動作を行った把持部を再度アンクランプ動作させるリトライ動作を制御するリトライ制御部と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持するクランプ動作又は前記ワークを解放するアンクランプ動作を行う把持部を有して前記ワークを搬送するワーク自動搬送機に適用される制御装置であって、
前記把持部の動作不良を表す不良動作情報を取得する情報取得部と、
前記不良動作情報を取得した場合、前記クランプ動作中の前記把持部を前記アンクランプ動作に切り替えて動作させる第一動作、又は、前記アンクランプ動作中の前記把持部を前記クランプ動作に切り替えて動作させる第二動作を含む解消動作を制御する解消動作制御部と、
前記解消動作を行った後、前記第一動作を行った前記把持部を再度クランプ動作させる、又は、前記第二動作を行った前記把持部を再度アンクランプ動作させるリトライ動作を制御するリトライ制御部と、
を備えた、制御装置。
【請求項2】
前記解消動作制御部は、
前記解消動作として、前記第一動作後又は前記第二動作後に前記把持部を清掃する清掃装置の動作を制御する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記清掃装置が、前記ワーク自動搬送機を備えて前記ワークに機械加工を施す工作機械に設けられており、
前記解消動作制御部は、前記第一動作後又は前記第二動作後に前記工作機械に対して前記清掃装置による前記把持部の清掃を要求する清掃要求情報を出力する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記清掃装置は、
前記工作機械において前記ワークの加工部位に前記機械加工を施す際に発生する切粉の除去又は前記加工部位の冷却のためにクーラント液を供給するクーラント供給装置、又は、正圧エアを供給するエアブロー装置を含んで形成される、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記ワーク自動搬送機は、前記工作機械の機内に設けられて前記ワークに対して前記機械加工を施す加工室の内部に向けて前記ワークを搬送する、請求項3又は4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記工作機械は、前記機械加工として、前記ワークを切削する切削加工、及び、前記ワークに削孔する削孔加工のうちの少なくとも一つを行う、請求項3-5の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記清掃装置が前記ワーク自動搬送機に設けられており、
前記解消動作制御部は、前記第一動作後又は前記第二動作後に前記ワーク自動搬送機に対して前記清掃装置による前記把持部の清掃を要求する清掃要求情報を出力する、請求項2-6の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記リトライ動作後に再び前記情報取得部が前記不良動作情報を取得した場合、前記ワーク自動搬送機による前記ワークの搬送を停止する停止制御部を備えた、請求項1-7の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記情報取得部は、前記把持部の動作状態を検出する動作状態検出器から出力される信号に基づく前記不良動作情報を取得する、請求項1-8の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
ワークを把持するクランプ動作又は前記ワークを解放するアンクランプ動作を行う把持部を有して前記ワークを搬送するワーク自動搬送機に適用される制御方法であって、
前記把持部の動作不良を表す不良動作情報を取得する情報取得工程と、
前記不良動作情報を取得した場合、前記クランプ動作中の前記把持部を前記アンクランプ動作に切り替えて動作させる第一動作、又は、前記アンクランプ動作中の前記把持部を前記クランプ動作に切り替えて動作させる第二動作を含む解消動作を実行する解消動作工程と、
前記解消動作工程後、前記第一動作を行った前記把持部を再度クランプ動作させる、又は、前記第二動作を行った前記把持部を再度アンクランプ動作させるリトライ動作を実行するリトライ工程と、
を備えた、制御方法。
【請求項11】
ワークを把持するクランプ動作又は前記ワークを解放するアンクランプ動作を行う把持部を有して前記ワークを搬送するワーク自動搬送機を制御するコンピュータ装置によって実行される制御プログラムであって、
前記把持部の動作不良を表す不良動作情報を取得する情報取得ステップと、
前記不良動作情報を取得した場合、前記クランプ動作中の前記把持部を前記アンクランプ動作に切り替えて動作させる第一動作、又は、前記アンクランプ動作中の前記把持部を前記クランプ動作に切り替えて動作させる第二動作を含む解消動作を実行する解消動作ステップと、
前記解消動作ステップ後、前記第一動作を行った前記把持部を再度クランプ動作させる、又は、前記第二動作を行った前記把持部を再度アンクランプ動作させるリトライ動作を実行するリトライステップと、
を備えた、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、制御装置、制御方法及び制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に開示されたチャック異常時ローダ運転方法(以下、単に「ローダ運転方法」と称呼する。)が知られている。この従来のローダ運転方法は、主軸チャックにクーラント液又は正圧エアを吹き付けるチャック清掃装置が設けられた工作機械に対してワークの受け渡しを行うローダ(ワーク自動搬送機)の連続運転を可能とするものである。従来のローダ運転方法では、ローダから工作機械の主軸チャックにワークを受け渡したときに、主軸チャックに対するワークの密着を確認するようになっている。そして、主軸チャックに対する切粉等の付着に起因する密着不良の場合には、主軸チャックのワークをローダに戻し、空になった主軸チャックをチャック清掃装置によって清掃するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-123941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワーク自動搬送機が工作機械に対して機械加工前及び機械加工後のワークを搬送する場合、切粉等の異物が付着することによって、ワーク自動搬送機においてもワークを把持する(クランプする)際、或いは、ワークを解放する(アンクランプする)際に、これらの動作不良が発生する可能性がある。このような動作不良が生じた場合、ワーク自動搬送機による自動搬送を一時的に停止させて、原因を解消する必要がある。従って、ワークを連続的に工作機械に対して自動搬送するためには、ワーク自動搬送機に生じた動作不良の原因を自動的に解消できることが望ましい。
【0005】
本明細書は、ワーク自動搬送機に生じた動作不良の原因を自動的に解消する解消動作を制御する制御装置、制御方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、ワークを把持するクランプ動作又はワークを解放するアンクランプ動作を行う把持部を有してワークを搬送するワーク自動搬送機に適用され、把持部の動作不良を表す不良動作情報を取得する情報取得部と、不良動作情報を取得した場合、クランプ動作中の把持部をアンクランプ動作に切り替えて動作させる第一動作、又は、アンクランプ動作中の把持部をクランプ動作に切り替えて動作させる第二動作を含む解消動作を制御する解消動作制御部と、解消動作を行った後、第一動作を行った把持部を再度クランプ動作させる、又は、第二動作を行った把持部を再度アンクランプ動作させるリトライ動作を制御するリトライ制御部と、を備える制御装置を開示する。
【0007】
これによれば、把持部がワークを搬送しているときに、把持部に動作不良が発生しても、制御装置の解消動作制御部が動作不良の原因となる異物等を除去するように、把持部に解消動作を自動的に行わせることができる。これにより、例えば、把持部に機構上の異常が発生する等の致命的な不良ではなく、異物等の存在に伴う把持部の動作不良であれば、動作不良を解消するためにワーク自動搬送機によるワークの自動搬送を一時的に又は断続的に停止させる必要がない。従って、動作不良の原因を自動的に解消することができることにより、ワーク自動搬送機の自動搬送を停止することによって生じる無駄な時間を減少させることができる。その結果、不良の確認に要する作業者の負担を軽減することができると共に、ワーク自動搬送機の稼働率ひいてはワークを加工する際の生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ワーク自動搬送機がワークを搬送する加工システムを示す正面図である。
図2図1に示す旋盤モジュールを説明するための側面図である。
図3図1に示すドリミルモジュールを説明するための側面図である。
図4図1に示す加工前ストックモジュールを説明するための側面図である。
図5】ワーク自動搬送機を説明するための側面図である。
図6】ワーク自動搬送機を説明するための平面図である。
図7】ワーク自動搬送機のクランプ動作及びアンクランプ動作を説明するための図である。
図8】制御装置の構成を説明するためのブロック図である。
図9図8の解消動作制御部の構成を説明するためのブロック図である。
図10図8のリトライ制御部の構成を説明するためのブロック図である。
図11図8の停止制御部の構成を説明するためのブロック図である。
図12】制御プログラムを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、制御装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、工作機械を含む複数の作業機及び作業機に対してワークを搬送するワーク自動搬送機を備えて形成された加工システムに制御装置が適用される場合を例示して説明する。
【0010】
1.加工システム10の全体構成
加工システム10は、図1に示すように、複数のベース20と、ベース20に設けられた複数(本実施形態においては10個)の作業機モジュール30とを備える。又、加工システム10は、作業機モジュール30の各々に機械加工前(処理前)のワークを搬入すると共に作業機モジュール30の各々から機械加工後(処理後)のワークを搬出するワーク自動搬送機としての多関節ロボット70を備えている(図2等を参照)。尚、以下の説明においては、多関節ロボット70を、単に、「ロボット70」とも称呼する。ここで、以下の説明においては、加工システム10に関する「前後」、「左右」、「上下」を、加工システム10の正面側から見た場合における前後、左右、上下として扱うこととする。
【0011】
作業機モジュール30は、複数種類あり、例えば、工作機械である旋盤モジュール30A及びドリミルモジュール30Bや、加工前ストックモジュール30C、加工後ストックモジュール30D、検測モジュール30E、仮置モジュール30F等を例示することができる。
【0012】
1-1.旋盤モジュール30A
旋盤モジュール30Aは、旋盤がモジュール化されたものである。旋盤は、機械加工の対象物であるワークWを回転させて、切削加工する工作機械である。旋盤モジュール30Aは、図2に示すように、可動ヘッド41、主軸台42、工具台43、工具台移動装置44、加工室45、走行室46、クーラント供給装置47、エアブロー装置48、及び、モジュール制御装置49を有している。
【0013】
可動ヘッド41は、複数の車輪41aを介してベース20に設けられたレール(図示省略)上を前後方向に沿って移動する。主軸台42は、ワークWを回転可能に保持するものである。主軸台42は、前後方向に沿って水平に配置された主軸42aを回転可能に支持する。主軸42aの先端部にはワークWを把持するチャック42bが設けられる。主軸42aは、回転伝達機構42cを介してサーボモータ42dによって回転駆動される。
【0014】
工具台43は、切削工具43aを保持し、切削工具43aに送り運動を与える装置である。工具台43は、所謂、タレット型の工具台であり、ワークWを切削する複数の切削工具43aが装着される工具保持部43bを有している。又、工具台43は、工具保持部43bを回転可能に支持すると共に、所定の切削位置に位置決め固定可能である回転駆動部43cを有している。
【0015】
工具台移動装置44は、工具台43ひいては切削工具43aを上下方向(X軸方向)及び前後方向(Z軸方向)に沿って移動させる装置である。工具台移動装置44は、工具台43をX軸方向に沿って移動させるX軸駆動装置44aと、工具台43をZ軸方向に沿って移動させるZ軸駆動装置44bとを有している。
【0016】
X軸駆動装置44aは、可動ヘッド41に設けられたコラムに対して上下方向に沿って摺動可能に取り付けられたX軸スライダ44a1と、X軸スライダ44a1を移動させるためのサーボモータ44a2とを有している。Z軸駆動装置44bは、X軸スライダ44a1に対して前後方向に沿って摺動可能に取り付けられたZ軸スライダ44b1と、Z軸スライダ44b1を移動させるためのサーボモータ44b2とを有している。
【0017】
加工室45は、ワークWを加工するための空間であり、加工室45内には、チャック42b、工具台43(切削工具43a、工具保持部43b及び回転駆動部43c)が収容されている。加工室45は、前壁45a、天井壁45b、左右壁及び後壁(何れも図示省略)によって区画されている。前壁45aには、ワークWが入出される入出口45a1が形成されている。入出口45a1は、図示省略のモータによって駆動するシャッタ45cによって開閉される。尚、シャッタ45cの開状態(開位置)を実線により、閉状態(閉位置)を二点鎖線により示す。
【0018】
走行室46は、加工室45の入出口45a1に臨んで設けられた空間である。走行室46は、前壁45a及び全面パネル31によって区画されている。走行室46内は、後述するロボット70が走行可能である。
【0019】
清掃装置としてのクーラント供給装置47は、切削工具43aによるワークWの加工部位(切削点)に清掃及び冷却用のクーラント液を供給する。又、クーラント供給装置47は、ワークWの搬送時において、後述するロボット70の把持部としてのロボットハンド85に対してクーラント液の供給が可能であり、清掃装置としての機能も発揮する。
【0020】
このため、クーラント供給装置47は、タンク47a、ポンプ47b及びクーラント配管47cを備える。タンク47aは、クーラント液を貯留する。ポンプ47bは、タンク47aからクーラント液を汲み上げてクーラント配管47cに吐出する。クーラント配管47cは、加工室45まで延びており、切削工具43a、加工部位(切削点)及びロボットハンド85にクーラント液を吹き付けて供給する。尚、加工室45の内部に供給されたクーラント液は、一旦ベース20に設けられた図示省略の貯留槽に溜められる。そして、図示省略のフィルタによってろ過された後、タンク47aに送られるようになっている。
【0021】
清掃装置としてのエアブロー装置48は、切削加工前又は切削加工中の切削工具43a及びワークWに正圧エアを吹き付ける。又、エアブロー装置48は、ワークWの搬送時において、後述するロボット70のロボットハンド85に対して正圧エアの吹き付けが可能であり、清掃装置としての機能も発揮する。このため、エアブロー装置48は、例えば、工場エア配管(図示省略)に接続されて加工室45まで延びており、図示省略の切替弁が開状態のときに切削工具43a、加工部位(切削点)及びロボットハンド85に正圧エアを吹き付けて供給する。
【0022】
モジュール制御装置49は、CPU、ROM、RAM、各種インターフェース(何れも図示省略)を有するコンピュータ装置を主要構成部品とするものである。モジュール制御装置49は、回転駆動部43c、工具台移動装置44、クーラント供給装置47やエアブロー装置48等の作動を制御する。モジュール制御装置49は、後述するロボット制御装置90及び制御装置100と通信可能である。モジュール制御装置49は、制御装置100(又は、ロボット制御装置90)から出力される清掃要求情報(後に詳述する)を入力し、清掃要求情報に従って清掃装置としてのクーラント供給装置47及びエアブロー装置48を作動させる。これにより、ロボット70のロボットハンド85は、清掃装置によって清掃(洗浄)される。
【0023】
1-2.ドリミルモジュール30B
ドリミルモジュール30Bは、ドリルによる削孔加工(孔開け)やミーリング加工等を行うマシニングセンタがモジュール化されたものである。マシニングセンタは、固定したワークWに対し、回転工具を押し当てて加工する工作機械である。ドリミルモジュール30Bは、図3に示すように、可動ヘッド51、主軸ヘッド52、主軸ヘッド移動装置53、ワークテーブル54、加工室55、走行室56、クーラント供給装置57、エアブロー装置58、モジュール制御装置59を有している。
【0024】
可動ヘッド51は、複数の車輪51aを介してベース20に設けられたレール(図示省略)上を前後方向に沿って移動する。主軸ヘッド52は、主軸52aを回転可能に支持する。主軸52aの先端(下端)部には、ワークWを切削する切削工具52b(例えば、ドリルやエンドミル等)が装着可能である。主軸52aは、サーボモータ52cによって回転駆動される。
【0025】
主軸ヘッド移動装置53は、主軸ヘッド52ひいては切削工具52bを上下方向(X軸方向)及び前後・左右方向(Z-Y軸方向)に沿って移動させる装置である。主軸ヘッド移動装置53は、主軸ヘッド52をX軸方向に沿って移動させるX軸駆動装置53aと、主軸ヘッド52をZ-Y軸方向に沿って移動させるZ-Y軸駆動装置53bとを有している。X軸駆動装置53aは、Z-Y軸駆動装置53bに対して上下方向に沿って摺動可能に取り付けられている。Z-Y軸駆動装置53bは、可動ヘッド51に対して前後・左右方向に沿って摺動可能に取り付けられている。
【0026】
ワークテーブル54は、ワークWを固定保持する。ワークテーブル54は、ワークテーブル回転装置54aに固定されている。ワークテーブル回転装置54aは、前後方向に沿って延びる軸線まわりに回転駆動される。これにより、ワークWを所望の角度に傾斜させた状態で切削工具52bにより加工することができる。又、ワークテーブル54は、ワークWを把持するチャック54bが設けられている。
【0027】
加工室55は、ワークWを加工するための空間であり、加工室55内には、主軸52a、切削工具52b、ワークテーブル54、ワークテーブル回転装置54aが収容されている。加工室55は、前壁55a、天井壁55b、左右壁及び後壁(何れも図示省略)によって区画されている。前壁55aには、ワークWが入出される入出口55a1が形成されている。入出口55a1は、図示省略のモータによって駆動するシャッタ55cによって開閉される。尚、シャッタ55cの開状態(開位置)を破線により、閉状態(閉位置)を二点鎖線により示す。
【0028】
走行室56は、加工室55の入出口55a1に臨んで設けられた空間である。走行室56は、前壁55a及び全面パネル31によって区画されている。走行室56内は、後述するロボット70が走行可能である。尚、隣り合う走行室46(又は走行室56)は、加工システム10の並設方向全長に亘って連続する空間を形成する。
【0029】
清掃装置としてのクーラント供給装置57は、切削工具52bによるワークWの加工部位(加工点)に清掃及び冷却用のクーラント液を供給する。又、クーラント供給装置57は、ワークWの搬送時において、後述するロボット70の把持部としてのロボットハンド85に対してクーラント液の供給が可能であり、清掃装置としての機能も発揮する。
【0030】
このため、クーラント供給装置57は、タンク57a、ポンプ57b及びクーラント配管57cを備える。タンク57aは、クーラント液を貯留する。ポンプ57bは、タンク57aからクーラント液を汲み上げてクーラント配管57cに吐出する。クーラント配管57cは、加工室55まで延びており、切削工具52b、加工部位(加工点)及びロボットハンド85にクーラント液を吹き付けて供給する。尚、加工室55の内部に供給されたクーラント液は、一旦ベース20に設けられた図示省略の貯留槽に溜められる。そして、図示省略のフィルタによってろ過された後、タンク57aに送られるようになっている。
【0031】
清掃装置としてのエアブロー装置58は、削孔加工やミーリング加工等の機械加工前又は加工中の切削工具52b及びワークWに正圧エアを吹き付ける。又、エアブロー装置58は、ワークWの搬送時において、後述するロボット70のロボットハンド85に対して正圧エアの吹き付けが可能であり、清掃装置としての機能も発揮する。このため、エアブロー装置58は、例えば、工場エア配管(図示省略)に接続されて加工室55まで延びており、図示省略の切替弁が開状態のときに切削工具52b、加工部位(切削点)及びロボットハンド85に正圧エアを吹き付けて供給する。
【0032】
モジュール制御装置59は、CPU、ROM、RAM、各種インターフェース(何れも図示省略)を有するコンピュータ装置を主要構成部品とするものである。モジュール制御装置59は、主軸52a(サーボモータ52c)、主軸ヘッド移動装置53、クーラント供給装置57やエアブロー装置58等の作動を制御する。モジュール制御装置59は、旋盤モジュール30Aのモジュール制御装置49、後述するロボット制御装置90及び後述する制御装置100と通信可能である。モジュール制御装置59は、制御装置100から出力される清掃要求情報(後に詳述する)を入力し、清掃要求情報に従って清掃装置としてのクーラント供給装置57及びエアブロー装置58を作動させる。これにより、ロボット70のロボットハンド85は、清掃装置によって清掃(洗浄)される。
【0033】
1-3.加工前ストックモジュール30C
加工前ストックモジュール30Cは、加工システム10にワークWを投入するモジュールである。加工前ストックモジュール30Cは、図4に示すように、外装パネル61、ワークプール62、投入テーブル63、リフト64及びシリンダ装置65を有している。外装パネル61は、加工前ストックモジュール30Cの前部を覆うパネルであり、内部にストック室66が設けられている。ストック室66内には、投入テーブル63が収容されている。ストック室66は、外装パネル61の側面に設けられた入出口61aを介して隣接する作業機モジュール30の走行室46,56に連通(開口)している。
【0034】
ワークプール62は、前後方向(Z軸方向)に延設されて、上下方向に重ねられる複数の収納段62aを有している。収納段62aは複数のワークWを収納可能である。投入テーブル63は、ワークWを載置可能であり、ワークプール62の前後方向における前端の上方側に設けられている。投入テーブル63は、ロボット70にワークWを受け取らせる位置(即ち、投入位置)に配置されている。
【0035】
リフト64は、ワークプール62の前方に設けられている。リフト64は、ワークプール62からワークWを1つずつ受け取り、投入テーブル63の高さまで搬送する。シリンダ装置65は、ワークプール62の前方上方に設けられている。シリンダ装置65は、リフト64上のワークWを投入テーブル63上まで押し出す。
【0036】
1-4.加工後ストックモジュール30D
加工後ストックモジュール30Dは、加工システム10によって実施されるワークWに対する一連の加工が完了した完成品を収納して排出するモジュールである。加工後ストックモジュール30Dも、投入テーブル63と同様にワークWを載置して搬出するための搬出テーブル又は搬出コンベア(何れも図示省略)を有している。搬出テーブル又は搬出コンベアは、ストック室66と同様のストック室(図示省略)に収容されている。
【0037】
1-5.検測モジュール30E及び仮置モジュール30F
検測モジュール30Eは、ワークW(例えば、機械加工後のワークW)を検測するものである。仮置モジュール30Fは、加工システム10による一連の加工工程中において、ワークWを仮置きするためのものである。検測モジュール30E及び仮置モジュール30Fは、旋盤モジュール30A及びドリミルモジュール30Bと同様に、走行室(図示省略)を有している。
【0038】
2.多関節ロボット70
多関節ロボット70は、加工システム10を構成する作業機モジュール30の各々に対し、ワークWを搬入及び搬出して搬送するワーク自動搬送機である。多関節ロボット70は、図5に示すように、走行可能であり、走行部71及び本体部72を有している。
【0039】
2-1.走行部71
走行部71は、走行室46,56内を左右方向(作業機モジュール30の並設方向:Y軸方向)に沿って走行可能である。走行部71は、主として図5に示すように、走行部本体71aと、走行部本体71aを左右方向に直動させる走行駆動装置71bと、走行駆動装置71bを走行可能に支持する走行駆動軸71cとを有している。
【0040】
走行駆動装置71bは、走行部本体71aに設けられている。走行駆動装置71bは、ロボット制御装置90によって駆動制御される駆動源(例えば、サーボモータ)及び駆動力伝達機構(例えば、ピニオン及びラック等)を主に有する。走行駆動装置71bは、ロボット制御装置90からの指示に従って駆動源が駆動制御される。これにより、走行部本体71aは、走行室46,56内を左右方向に沿って走行することができる。
【0041】
走行駆動軸71cは、ベース20の前側面に設けられて水平方向(左右方向)に沿って延在するレール71c1と、レール71c1に摺動可能に係合する複数のスライダ71c2とを有する。尚、スライダ71c2は、走行部本体71aの背部(後部)に設けられる。
【0042】
2-2.本体部72
本体部72は、主として図5,6に示すように、旋回テーブル73と、旋回テーブル73に設けられたアーム部74とから構成されている。
【0043】
2-2-1.旋回テーブル73
旋回テーブル73は、図6に示すように、テーブル駆動軸73aと、テーブル駆動軸73aを回転駆動するテーブル駆動装置73bとを有している。テーブル駆動装置73bは、走行部本体71aに設けられている。テーブル駆動装置73bは、テーブル駆動軸73aに駆動力を伝達する。
【0044】
テーブル駆動装置73bは、ロボット制御装置90に接続されている。テーブル駆動装置73bは、ロボット制御装置90からの指示に従ってサーボモータ(図示省略)が回転駆動され、ピニオン(図示省略)がテーブル駆動軸73aを回転する。これにより、旋回テーブル73は、テーブル駆動軸73aの回転軸まわりに回転可能である。
【0045】
又、旋回テーブル73には、図5に示すように、ワークWを反転する反転装置75が設けられている。反転装置75は、ワークWを保持可能な把持部としてのロボットハンド85から受け取ったワークWを反転し、反転したワークWをロボットハンド85に受け渡すことができる。反転装置75は、図5に示すように、取付台75a、回転装置75b、把持装置75c、一対の把持爪75d、75dから構成されている。
【0046】
2-2-2.アーム部74
アーム部74は、駆動軸(又はアーム)が直列に並んでいる、所謂、シリアルリンク型のアームである。アーム部74は、主として図5及び図6に示すように、第一アーム81、第一アーム駆動軸82、第二アーム83、第二アーム駆動軸84、ロボットハンド85、及びハンド駆動軸86から構成されている。
【0047】
第一アーム81は、棒状に形成されており、旋回テーブル73に第一アーム駆動軸82を介して回転可能に連結されている。具体的には、第一アーム駆動軸82は、旋回テーブル73上に設けられた支持部材73cに回転可能に支持されている。第一アーム駆動軸82は、第一アーム81の基端部に固定されている。第一アーム駆動軸82は、第一アーム駆動装置81aにより回転駆動される。第一アーム駆動装置81aは、ロボット制御装置90に接続されており、ロボット制御装置90からの指示に従って回転駆動され、第一アーム駆動軸82を回転する。これにより、第一アーム81は、第一アーム駆動軸82の回転軸回りに回転可能である。
【0048】
第二アーム83も、第一アーム81と同様に、棒状に形成されており、第一アーム81に第二アーム駆動軸84を介して回転可能に連結されている。具体的には、第二アーム駆動軸84は、第一アーム81の先端部に回転可能に支持されている。第二アーム駆動軸84は、第二アーム83の基端部に固定されている。第二アーム駆動軸84は、第二アーム駆動装置83aにより回転駆動される。第二アーム駆動装置83aは、ロボット制御装置90に接続されており、ロボット制御装置90からの指示に従って回転駆動され、第二アーム駆動軸84を回転する。これにより、第二アーム83は、第二アーム駆動軸84の回転軸回りに回転可能である。
【0049】
ロボットハンド85は、第二アーム83にハンド駆動軸86を介して回転可能に連結されている。ロボットハンド85は、図5図6及び図7に示すように、ハンド本体部85aとアクチュエータ85bとを有する。ハンド本体部85aは、ワークWを把持するロボットチャック85cを備える。ここで、ロボットチャック85cは、ハンド本体部85aの前面及び前面の反対側の後面に設けられる。
【0050】
アクチュエータ85bは、ロボット制御装置90に接続されている。アクチュエータ85bは、ロボット制御装置90からの指示に従って作動して駆動力を発生する。これにより、ロボットチャック85cは、アクチュエータ85bの駆動力により、例えば、図示省略の案内溝に沿って、或いは、支持軸回りに回転して互いに接近又は離間が可能であり、図7に示すように、接近方向に移動することでワークWを把持し、離間方向に移動することでワークWを解放する。
【0051】
ここで、本実施形態においては、ロボットハンド85にロボットチャック85cの動作状態、即ち、ワークWを把持するクランプ動作及びワークWを解放するアンクランプ動作を検出する動作状態検出器として、ロボットチャック動作端スイッチ85d(以下、単に「動作端スイッチ85d」とも称呼する。)が設けられている。動作端スイッチ85dは、機械加工に供するワークWに応じて、ロボットチャック85cがワークWを把持する把持位置(端)と、ロボットチャック85cがワークWを解放する解放位置(端)とに対応して設けられる。
【0052】
これにより、動作端スイッチ85dは、ロボット制御装置90のワーク把持指示によりアクチュエータ85bが作動してロボットチャック85cが把持位置に存在する場合には、オン信号S11をロボット制御装置90又は制御装置100(後述の図8を参照)に出力する。一方、動作端スイッチ85dは、ロボット制御装置90のワーク把持指示によりアクチュエータ85bが作動してロボットチャック85cが把持位置に存在しない場合には、オフ信号S12をロボット制御装置90又は制御装置100(後述の図8を参照)に出力する。
【0053】
又、動作端スイッチ85dは、ロボット制御装置90のワーク解放指示によりアクチュエータ85bが作動してロボットチャック85cが解放位置に存在する場合には、オン信号S21をロボット制御装置90又は制御装置100(後述の図8を参照)に出力する。一方、動作端スイッチ85dは、ロボット制御装置90のワーク解放指示によりアクチュエータ85bが作動してロボットチャック85cが解放位置に存在しない場合には、オフ信号S22をロボット制御装置90又は制御装置100(後述の図8を参照)に出力する。
【0054】
従って、動作端スイッチ85dは、ロボットチャック85cの動作状態が正常、即ち、把持位置又は解放位置に存在する状態であれば、ロボット制御装置90又は制御装置100に正常であることを表すオン信号S11又はオン信号S21を出力する。ところで、例えば、ワークWの被把持部分とロボットチャック85cとの間に切粉等の異物が存在する場合や、ロボットチャック85cを案内する案内溝に切粉等の異物が存在する場合、或いは、アクチュエータ85bに故障が生じた場合等には、ロボットチャック85cが把持位置又は解放位置まで移動できない状況が生じる。
【0055】
この場合、ロボットチャック85cは、把持位置及び解放位置の何れにも存在しない状態となる。従って、動作端スイッチ85dは、ロボットチャック85cの動作状態が異常であることを表す不良動作情報としてオフ信号S12又はオフ信号S22をロボット制御装置90又は制御装置100に継続して出力する。
【0056】
ハンド駆動軸86は、第二アーム83の先端部に回転可能に支持されている。ハンド駆動軸86には、ロボットハンド85のハンド本体部85aが固定されている。ハンド駆動軸86は、例えば、ロボット制御装置90に接続されたサーボモータ等により回転駆動される。 これにより、ハンド本体部85aひいてはロボットハンド85は、ハンド駆動軸86の回転軸回りに回転可能である。
【0057】
2-3.ロボット制御装置90
ロボット制御装置90は、CPU、ROM、RAM、各種インターフェース(何れも図示省略)を有するコンピュータ装置を主要構成部品とするものである。ロボット制御装置90は、走行駆動装置71bを駆動して走行駆動軸71cを制御すると共に、テーブル駆動装置73bを駆動してテーブル駆動軸73aを制御する。又、ロボット制御装置90は、第一アーム駆動装置81aを駆動して第一アーム駆動軸82を制御すると共に、第二アーム駆動装置83aを駆動して第二アーム駆動軸84を制御する。更に、ロボット制御装置90は、アクチュエータ85bを駆動してロボットチャック85cの把持動作及び解放動作を制御する。
【0058】
ロボット制御装置90は、動作端スイッチ85dと接続されており、動作端スイッチ85dからのオン信号S11,S21及びオフ信号S12,S22に基づいて、アクチュエータ85bの駆動ひいてはロボットチャック85cの動作を制御する。そして、ロボット制御装置90は、後述する制御装置100から出力される各種要求情報及び要求信号に従ってアクチュエータ85bを動作させ、解消動作としてロボットチャック85cを動作させる。
【0059】
具体的に、ロボット制御装置90は、要求情報を取得した場合、アクチュエータ85bを動作させることにより、図7に示すように、ロボットチャック85cをワークWに接近させる接近方向への動作、即ち、ロボットチャック85cがワークWを把持するようにクランプ動作させる。又、ロボット制御装置90は、要求情報を取得した場合、アクチュエータ85bを動作させることにより、図7に示すように、ロボットチャック85cをワークWから離間させる離間方向への動作、即ち、ロボットチャック85cがワークWを解放するようにアンクランプ動作させる。そして、ロボット制御装置90は、解消動作として、クランプ動作とアンクランプ動作とを交互に少なくとも一回以上行うことができる。
【0060】
尚、本実施形態においては、ロボット70に対して専用のロボット制御装置90を設けるようにする。しかし、ロボット70の各種動作の制御については、作業機モジュール30のモジュール制御装置49,59を兼用(代用)することも可能である。
【0061】
2-4.加工システム10の入力装置11及び表示装置12
加工システム10は、図1に示すように、入力装置11及び表示装置12を有している。入力装置11は、作業機モジュール30の前面に設けられており、作業者が各種設定、各種指示等を加工システム10に入力するためのものである。表示装置12は、作業機モジュール30の前面に設けられており、作業者に対して運転状況や不良発生状況等の加工システム10の各種情報を表示するためのものである。
【0062】
3.制御装置100
次に、制御装置100について説明する。制御装置100は、主として、ロボット70がワークWを搬送する際に発生するロボットハンド85の動作不良に対応して、ロボットハンド85のロボットチャック85cを解消動作させると共に清掃する清掃処理を実行する。このため、制御装置100は、図8に示すように、情報取得部110、解消動作制御部120、リトライ制御部130、及び、停止制御部140を備えている。
【0063】
情報取得部110は、少なくとも、把持部としてのロボットハンド85の動作不良を表す不良動作情報を取得する。具体的に、情報取得部110は、動作状態検出器であるロボットチャック動作端スイッチ85dからの出力信号を取得可能に接続されている。そして、情報取得部110は、動作端スイッチ85dからオン信号S11,S21を取得すると共に、不良動作情報としてオフ信号S12,S22を取得する。
【0064】
解消動作制御部120は、情報取得部110によってオフ信号S12,S22(不良動作情報)が取得された場合、ロボットハンド85の動作不良を解消するための解消動作を制御する。即ち、解消動作制御部120は、情報取得部110によって不良動作情報即ちオフ信号S12,S22が取得された場合、取得時点におけるロボットハンド85のロボットチャック85cの動作状態に応じた動作に切り替えることにより、解消動作を制御する。
【0065】
又、解消動作制御部120は、解消動作として、ロボットハンド85のロボットチャック85cを清掃する清掃装置であるクーラント供給装置47,57、又は、エアブロー装置48,58の作動を制御する。尚、本実施形態においては、クーラント供給装置47及びエアブロー装置48(又は、クーラント供給装置57及びエアブロー装置58)の両方を清掃装置として作動させる場合を例示する。しかし、清掃装置としては、クーラント供給装置47及びエアブロー装置48の一方(又は、クーラント供給装置57及びエアブロー装置58の一方)であっても良い。以下、具体的に、解消動作を説明する。
【0066】
解消動作制御部120は、図9に示すように、切替動作制御部121と、清掃装置制御部122とを有する。切替動作制御部121は、ロボットハンド85のロボットチャック85cがクランプ動作中において情報取得部110がオフ信号S12を取得した場合、解消動作としてアンクランプ動作に切り替える第一動作を制御する。
【0067】
又、切替動作制御部121は、ロボットハンド85のロボットチャック85cがアンクランプ動作中において、情報取得部110がオフ信号S22を取得した場合、解消動作としてクランプ動作に切り替える第二動作を制御する。ここで、切替動作制御部121は、解消動作として、第一動作後に第二動作をさせたり、第二動作後に第一動作をさせたり、或いは、これらの連続動作を所定回数繰り返したりすることが可能である。
【0068】
ここで、本実施形態においては、切替動作制御部121は、ロボットハンド85を第一動作させるために、ロボット制御装置90に第一切替要求情報Rc1を出力する。又、切替動作制御部121は、ロボットハンド85を第二動作させるために、ロボット制御装置90に第二切替要求情報Rc2を出力する。
【0069】
清掃装置制御部122は、清掃装置としてのクーラント供給装置47,57及びエアブロー装置48,58の作動を制御する。
【0070】
具体的に、清掃装置制御部122は、切替動作制御部121によってロボットハンド85のロボットチャック85cが第一動作又は第二動作した後において、モジュール制御装置49,59に対して清掃要求情報Rwを出力する。これにより、モジュール制御装置49,59は、取得した清掃要求情報Rwに従い、クーラント供給装置47,57及びエアブロー装置48,58を作動させる。
【0071】
この場合、ロボットハンド85のロボットチャック85cは、加工室45,55の内部に存在している。又、ロボットハンド85によって搬入されたワークWも、加工室45,55の内部に存在している。このため、クーラント供給装置47,57が作動すると、クーラント液がロボットハンド85及びワークWに吹き付けられ、その結果、ハンド本体部85a、ロボットチャック85c及びワークWに付着している切粉等の異物が除去される。又、エアブロー装置48,58が作動すると、正圧エアがロボットハンド85及びワークWに吹き付けられ、その結果、ハンド本体部85a、ロボットチャック85c及びワークWに付着している切粉等の異物や、クーラント液が除去される。
【0072】
リトライ制御部130は、図10に示すように、カウント部131と、カウント数判定部132と、リトライ動作制御部133とを有する。カウント部は、解消動作制御部120の切替動作制御部121と通信することにより、ロボットハンド85がロボットチャック85cを第一動作及び第二動作により繰り返し動作させたカウント数Nをカウントする。尚、カウント部131は、図示省略の記憶装置に対して、カウント数Nを履歴として記憶することができる。カウント数判定部132は、カウント部131からカウント数Nを取得し、予め設定された判定カウント数Nbと比較する。そして、カウント数判定部132は、カウント数Nが判定カウント数Nbになった場合、リトライ実行信号Srをリトライ動作制御部133に出力する。
【0073】
リトライ動作制御部133は、リトライ実行信号Srを取得した場合、ロボットハンド85のロボットチャック85cを再度クランプ動作又は再度アンクランプ動作させる。又、リトライ動作制御部133は、清掃装置制御部122によって清掃要求情報Rwが出力され、清掃装置としてのクーラント供給装置47,57及びエアブロー装置48,58による清掃(洗浄)が完了した場合、ロボットハンド85のロボットチャック85cを再度クランプ動作又は再度アンクランプ動作させる。
【0074】
具体的に、リトライ動作制御部133は、情報取得部110がオフ信号S12,S22(不良動作情報)を取得した時点において把持部であるロボットハンド85がクランプ動作していた場合には、ロボット制御装置90に再度のクランプ動作を要求するクランプ動作要求情報Rhcを出力する。一方、リトライ動作制御部133は、情報取得部110がオフ信号S12,S22(不良動作情報)を取得した時点においてロボットハンド85がアンクランプ動作していた場合には、ロボット制御装置90に再度のアンクランプ動作を要求するアンクランプ動作要求情報Rhuを出力する。
【0075】
ここで、ロボット制御装置90は、リトライ動作制御部133からクランプ動作要求情報Rhcを入力した場合、ロボットハンド85のアクチュエータ85bを動作させることにより、ロボットチャック85cをクランプ動作させる。尚、この場合、ロボットハンド85においては、解消動作制御部120の切替動作制御部121の制御により、例えば、第一動作によってロボットチャック85cが解放位置に存在している。
【0076】
又、ロボット制御装置90は、リトライ動作制御部133からアンクランプ動作要求情報Rhuを入力した場合、ロボットハンド85のアクチュエータ85bを動作させることにより、ロボットチャック85cをアンクランプ動作させる。尚、この場合、ロボットハンド85においては、解消動作制御部120の切替動作制御部121の制御により、例えば、第二動作によってロボットチャック85cが把持位置に存在している。
【0077】
停止制御部140は、図11に示すように、正常判定部141と、停止要求情報出力部142とを有する。正常判定部141は、リトライ動作制御部133がロボット制御装置90にクランプ動作要求情報Rhcを出力した後において、情報取得部110がオン信号S11(又はオフ信号S12)を取得(入力)したか否かを判定する。同様に、正常判定部141は、リトライ動作制御部133がロボット制御装置90にアンクランプ動作要求情報Rhuを出力した後において、情報取得部110がオン信号S21(又はオフ信号S22)を取得(入力)したか否かを判定する。
【0078】
即ち、クランプ動作要求情報Rhcが出力された後において、情報取得部110が動作端スイッチ85dからオン信号S11を入力した場合は、ロボットチャック85cが適正に把持位置まで移動している、換言すれば、クランプ動作が適正に完了している。このため、正常判定部141は、クランプ動作要求情報Rhcが出力された状態で情報取得部110がオン信号S11を入力した場合には、ロボットハンド85におけるクランプ動作が正常であると判定する。
【0079】
一方、クランプ動作要求情報Rhcが出力された後において、情報取得部110が動作端スイッチ85dから再びオフ信号S12(即ち、不良動作情報)を入力した場合は、ロボットチャック85cが適正に把持位置まで移動していない、換言すれば、クランプ動作が適正に完了していない。このため、正常判定部141は、クランプ動作要求情報Rhcが出力された状態でオフ信号S12を入力した場合には、リトライ動作にもかかわらず、ロボットハンド85におけるクランプ動作が未だ不良であると判定する。
【0080】
又、アンクランプ動作要求情報Rhuが出力された後において、情報取得部110が動作端スイッチ85dからオン信号S21を入力した場合は、ロボットチャック85cが適正に解放位置まで移動している、換言すれば、アンクランプ動作が適正に完了している。このため、正常判定部141は、アンクランプ動作要求情報Rhuが出力された状態でオン信号S21を入力した場合には、ロボットハンド85におけるアンクランプ動作が正常であると判定する。
【0081】
一方、アンクランプ動作要求情報Rhuが出力された後において、情報取得部110が動作端スイッチ85dから再びオフ信号S22(即ち、不良動作情報)を入力した場合は、ロボットチャック85cが適正に解放位置まで移動していない、換言すれば、アンクランプ動作が適正に完了していない。このため、正常判定部141は、アンクランプ動作要求情報Rhuが出力された状態でオフ信号S22を入力した場合には、リトライ動作にもかかわらず、ロボットハンド85におけるアンクランプ動作が未だ不良であると判定する。
【0082】
尚、本実施形態の正常判定部141は、情報取得部110がオン信号S11(又はオフ信号S12)、又は、オン信号S21(又はオフ信号S22)を取得したか否かを判定するようにした。しかし、正常判定部141は、図8にて破線により示すように、動作端スイッチ85dから直接的にオン信号S11(又はオフ信号S12)、又は、オン信号S21(又はオフ信号S22)を取得するようにしても良い。
【0083】
停止要求情報出力部142は、正常判定部141によって未だ不良であると判定された場合、ロボット70によるワークWの自動搬送を停止させるために、ロボット制御装置90に対して停止要求情報Rsを出力する。これにより、ロボット制御装置90は、停止制御部140から停止要求情報Rsを取得した場合、未だロボットハンド85のロボットチャック85cによるワークWのクランプ動作又はアンクランプ動作に異常が生じているため、ロボット70の作動を停止する。
【0084】
4.制御装置100の作動
次に、制御装置100の作動について具体的に説明する。制御装置100は、図12に示す制御プログラムの実行をステップS100にて実行を開始する。
【0085】
制御装置100は、ステップS101にて、ロボット70のロボットハンド85がクランプ動作しているか否かを判定する。本実施形態においては、制御装置100がロボット制御装置90と通信することにより、現在、ロボット制御装置90がアクチュエータ85bを動作させてロボットチャック85cがクランプ動作していることを表す情報を取得することができる。これにより、制御装置100は、ロボットハンド85がクランプ動作していれば、「Yes」と判定してステップS102に進む。一方、制御装置100は、ロボットハンド85がクランプ動作していなければ、「No」と判定して後述のステップS109に進む。
【0086】
ステップS102においては、制御装置100は、情報取得部110が動作端スイッチ85dから取得した信号に基づき、クランプ動作中のロボットハンド85に動作不良を生じているか否かを判定する。尚、本実施形態においては、ロボット70のロボットハンド85が加工室45,55の内部にて、加工されたワークWをクランプ動作によって把持して取り出す状況を想定する。
【0087】
この状況において、例えば、ロボットチャック85cに切粉等の異物が付着している場合、或いは、ハンド本体部85aとロボットチャック85cとの間に異物が存在している場合、ロボットチャック85cがクランプ動作しても把持位置まで移動できない。従って、この場合には、動作端スイッチ85dからオフ信号S12が出力される。
【0088】
このため、制御装置100は、情報取得部110が動作端スイッチ85dからオフ信号S12即ち不良動作情報を取得した場合には、ロボットチャック85cのクランプ動作中に動作不良が発生していると判定する。従って、制御装置100は、ステップS102にて「Yes」と判定する。尚、制御装置100は、情報取得部110が所定時間以上にわたって継続してオフ信号S12を取得している場合に動作不良が発生している可能性が高いため、ステップS102にて「Yes」と判定するようにしても良い。そして、制御装置100は、続くステップS103のステップ処理を実行する。
【0089】
一方、制御装置100は、情報取得部110が動作端スイッチ85dからオン信号S11を取得した場合には、クランプ動作中のロボットチャック85cに動作不良が発生していないため、ステップS102にて「No」と判定する。この場合、制御装置100は、後述するステップS107のステップ処理により、ロボット制御装置90に対して、ロボット70によるワークWの自動搬送(自動運転)を継続するように、継続要求情報Rgを出力する。
【0090】
ステップS103においては、制御装置100は、クランプ動作中のロボットハンド85を第一動作させる、具体的に、クランプ動作中のロボットチャック85cをアンクランプ動作させる。即ち、制御装置100の解消動作制御部120は、切替動作制御部121がロボット制御装置90に対して第一切替要求情報Rc1を出力する。これにより、ロボット制御装置90は、入力した第一切替要求情報Rc1に従い、ロボットハンド85のアクチュエータ85bを駆動させ、ロボットチャック85cをアンクランプ動作させる。そして、制御装置100は、続くステップS104のステップ処理を実行する。
【0091】
ここで、ステップS103において、切替動作制御部121は、ロボットハンド85を解消動作させる場合、必要に応じて、例えば、第一切替要求情報Rc1を出力した後、第二切替要求情報Rc2を出力することによってアンクランプ動作中のロボットハンド85をクランプ動作に切り替えることができる。その後、切替動作制御部121は、更に、第一切替要求情報Rc1を出力してクランプ動作中のロボットハンド85をアンクランプ動作させることができ、これらの各動作を繰り返すことができる。
【0092】
即ち、切替動作制御部121は、ロボットハンド85を解消動作させる場合、第一切替要求情報Rc1と第二切替要求情報Rc2とを交互に繰り返し出力することが可能である。尚、第一切替要求情報Rc1及び第二切替要求情報Rc2を繰り返し出力する際において、情報取得部110が最初にオフ信号S12を取得した場合には、最後に第一切替要求情報Rc1を出力する。これにより、情報取得部110がオフ信号S12を取得する場合、即ち、ロボットハンド85がクランプ動作中に動作不良を生じた場合には、最終的にロボットハンド85はアンクランプ動作した状態になる。
【0093】
ステップS104においては、制御装置100は、第一動作(即ちアンクランプ動作)したロボットハンド85、より詳しくは、ハンド本体部85a及びロボットチャック85cと、把持対象のワークWとの清掃(或いは、洗浄)を実行する。即ち、制御装置100の清掃装置制御部122は、モジュール制御装置49,59に対して清掃要求情報Rwを出力する。これにより、モジュール制御装置49,59は、取得した清掃要求情報Rwに従い、クーラント供給装置47,57及びエアブロー装置48,58を作動させる。
【0094】
従って、特に、クランプ動作中に動作不良が発生する状況、換言すれば、旋盤モジュール30A及びドリミルモジュール30BによってワークWが加工された後においては、ハンド本体部85a、ロボットチャック85c及びワークWに付着している切粉等の異物や、クーラント液が除去される。そして、制御装置100は、続くステップS105のステップ処理を実行する。
【0095】
ステップS105においては、制御装置100は、前記ステップS104にて清掃(洗浄)が完了したロボットハンド85を、アンクランプ動作から再度クランプ動作させる。即ち、制御装置100のリトライ制御部130は、リトライ動作制御部133がロボット制御装置90に対してクランプ動作要求情報Rhcを出力する。これにより、ロボット制御装置90は、リトライ動作制御部133からクランプ動作要求情報Rhcを入力した場合、ロボットハンド85のアクチュエータ85bを駆動させることにより、ロボットチャック85cを再度クランプ動作させる。そして、制御装置100は、続くステップS106のステップ処理を実行する。
【0096】
ここで、前記ステップS103にて、第一切替要求情報Rc1及び第二切替要求情報Rc2を繰り返し出力してロボットハンド85を解消動作させる場合、リトライ制御部130のカウント部131がカウント数Nをカウントしている。そして、リトライ制御部130のカウント数判定部132は、カウント数Nが判定カウント数Nbとなると、リトライ実行信号Srをリトライ動作制御部133に出力する。これにより、リトライ動作制御部133は、リトライ実行信号Srに従ってロボットハンド85を再度クランプ動作させるために、ロボット制御装置90に対してクランプ動作要求情報Rhcを出力することができる。
【0097】
ところで、リトライ動作制御部133がカウント数判定部132からリトライ実行信号Srを取得する場合、ロボットハンド85においては判定カウント数Nbとなるまでクランプ動作とアンクランプ動作とを繰り返している。この場合、例えば、清掃装置による清掃(洗浄)が行われなくても、異物等が脱落して除去される場合がある。従って、例えば、清掃装置による清掃(洗浄)が省略される場合には、リトライ動作制御部133がリトライ実行信号Srを取得してロボット制御装置90に対してクランプ動作要求情報Rhcを出力することが特に有効になる。
【0098】
ステップS106においては、制御装置100は、ロボットハンド85におけるクランプ動作が正常に完了したか否かを判定する。即ち、クランプ動作要求情報Rhcが出力された後において情報取得部110がオン信号S11を入力した場合には、制御装置100の停止制御部140は、正常判定部141がロボットハンド85におけるクランプ動作が正常であるため「Yes」と判定する。そして、制御装置100は、続くステップS107のステップ処理を実行する。
【0099】
ステップS107においては、制御装置100は、ロボット制御装置90に対して、ロボット70によるワークWの自動搬送(自動運転)を継続するように、継続要求情報Rgを出力する。これにより、ロボット70は動作不良が解消された状態で、ワークWの自動搬送を継続することができる。
【0100】
一方、正常判定部141は、クランプ動作要求情報Rhcが出力された後において情報取得部110が再びオフ信号S12(不良動作情報)を入力した場合にはロボットハンド85におけるクランプ動作が未だ不良であるため、「No」と判定する。そして、制御装置100は、続くステップS108のステップ処理を実行する。
【0101】
尚、クランプ動作要求情報Rhcが出力された後において情報取得部110がオフ信号S12を入力する状況では、異物等によりロボットチャック85cが動作不良を生じる場合に加え、アクチュエータ85bに異常が発生している場合も考えられる。従って、再度クランプ動作させた後にオフ信号S12即ち不良動作情報を入力する場合には、例えば、作業者がロボットハンド85の状態を直接確認すると良い。
【0102】
ステップS108においては、制御装置100は、ロボット70によるワークWの自動搬送を停止させる。即ち、制御装置100の停止制御部140は、停止要求情報出力部142が、ロボット70によるワークWの自動搬送を停止させるために、ロボット制御装置90に対して停止要求情報Rsを出力する。これにより、ロボット制御装置90は、停止制御部140から停止要求情報Rsを取得してロボット70の作動を停止させ、ワークWの自動搬送を終了する。
【0103】
次に、ロボットハンド85がアンクランプ動作中に動作不良が生じた場合を説明する。前記ステップS101の判定処理における「No」判定に従い、制御装置100は、ステップS109のステップ処理を実行する。
【0104】
即ち、制御装置100は、ステップS109にて、ロボットハンド85がアンクランプ動作を行っているか否かを判定する。本実施形態においては、制御装置100がロボット制御装置90と通信することにより、現在、ロボット制御装置90がアクチュエータ85bを動作させてロボットチャック85cがアンクランプ動作を行っていることを表す情報を取得することができる。これにより、制御装置100は、ロボットハンド85がアンクランプ動作を行っていれば、「Yes」と判定してステップS110のステップ処理を実行する。
【0105】
一方、制御装置100は、ロボットハンド85がアンクランプ動作を行っていなければ、「No」と判定してステップS115にて制御プログラムの実行を終了する。即ち、制御装置100は、前記ステップS101の判定処理における「No」判定と、ステップS109の判定処理における「No」判定とに基づき、ロボットハンド85がクランプ動作もアンクランプ動作も行っていないため、制御プログラムに実行を一旦終了し、所定の時間の経過後に再びステップS100にて制御プログラムの実行を開始する。
【0106】
ステップS110においては、制御装置100は、情報取得部110が動作端スイッチ85dから取得した信号に基づき、アンクランプ動作中のロボットハンド85に動作不良を生じているか否かを判定する。尚、本実施形態においては、ロボット70のロボットハンド85が加工室45,55の内部にて、機械加工前のワークWを搬入してアンクランプ動作によってワークWを解放する状況を想定する。
【0107】
この状況において、例えば、ロボットチャック85cに切粉等の異物が付着している場合、或いは、ハンド本体部85aとロボットチャック85cとの間に異物が存在している場合、ロボットチャック85cがアンクランプ動作しても解放位置まで移動できない。従って、この場合には、動作端スイッチ85dからオフ信号S22が出力される。
【0108】
このため、制御装置100は、情報取得部110が動作端スイッチ85dからオフ信号S22即ち不良動作情報を取得した場合には、ロボットチャック85cのアンクランプ動作中に動作不良が発生していると判定する。従って、制御装置100は、ステップS110にて「Yes」と判定する。尚、制御装置100は、情報取得部110が所定時間以上にわたって継続してオフ信号S22を取得している場合に動作不良が発生している可能性が高いため、ステップS110にて「Yes」と判定するようにしても良い。そして、制御装置100は、続くステップS111のステップ処理を実行する。
【0109】
一方、制御装置100は、情報取得部110が動作端スイッチ85dからオン信号S21を取得した場合には、ロボットチャック85cのアンクランプ動作中に動作不良が発生していないため、ステップS110にて「No」と判定する。この場合、制御装置100は、前記ステップS107のステップ処理により、ロボット制御装置90に対して継続要求情報Rgを出力する。
【0110】
ステップS111においては、制御装置100は、アンクランプ動作中のロボットハンド85を第二動作させる、具体的に、アンクランプ動作中のロボットチャック85cをクランプ動作させる。即ち、制御装置100の解消動作制御部120は、切替動作制御部121がロボット制御装置90に対して第二切替要求情報Rc2を出力する。これにより、ロボット制御装置90は、入力した第二切替要求情報Rc2に従い、ロボットハンド85のアクチュエータ85bを駆動させ、ロボットチャック85cをクランプ動作させる。そして、制御装置100は、続くステップS112のステップ処理を実行する。
【0111】
ここで、ステップS111においても、前記ステップS103のステップ処理と同様に、切替動作制御部121は、ロボットハンド85を解消動作させる場合、第二切替要求情報Rc2と第一切替要求情報Rc1とを交互に繰り返し出力することが可能である。尚、第二切替要求情報Rc2及び第一切替要求情報Rc1を繰り返し出力する際において、情報取得部110が最初にオフ信号S22を取得した場合には、最後に第二切替要求情報Rc2を出力する。これにより、情報取得部110がオフ信号S22を取得する場合、即ち、ロボットハンド85がアンクランプ動作中に動作不良を生じた場合には、最終的にロボットハンド85はクランプ動作した状態になる。
【0112】
ステップS112においては、制御装置100は、第二動作(即ちクランプ動作)したロボットハンド85、より詳しくは、ハンド本体部85a及びロボットチャック85cの清掃(或いは、洗浄)を実行する。即ち、制御装置100の清掃装置制御部122は、モジュール制御装置49,59に対して清掃要求情報Rwを出力する。これにより、モジュール制御装置49,59は、取得した清掃要求情報Rwに従い、クーラント供給装置47,57及びエアブロー装置48,58を作動させる。
【0113】
従って、特に、アンクランプ動作中に動作不良が発生する状況、換言すれば、旋盤モジュール30A及びドリミルモジュール30BにワークWを搬送した後においては、ハンド本体部85a及びロボットチャック85cに付着している切粉等の異物や、クーラント液が除去される。そして、制御装置100は、続くステップS113のステップ処理を実行する。
【0114】
ステップS113においては、制御装置100は、前記ステップS112にて清掃(洗浄)が完了したロボットハンド85を、クランプ動作から再度アンクランプ動作させる。即ち、制御装置100のリトライ制御部130は、リトライ動作制御部133がロボット制御装置90に対してアンクランプ動作要求情報Rhuを出力する。これにより、ロボット制御装置90は、リトライ動作制御部133からアンクランプ動作要求情報Rhuを入力した場合、ロボットハンド85のアクチュエータ85bを駆動させることにより、ロボットチャック85cを再度アンクランプ動作させる。そして、制御装置100は、続くステップS114のステップ処理を実行する。
【0115】
ここで、ステップS113においても、前記ステップS106のステップ処理と同様に、リトライ制御部130のカウント部131がカウント数Nをカウントし、カウント数判定部132がリトライ実行信号Srをリトライ動作制御部133に出力することができる。これにより、リトライ動作制御部133は、リトライ実行信号Srに従ってロボットハンド85を再度アンクランプ動作させるために、ロボット制御装置90に対してアンクランプ動作要求情報Rhuを出力することができる。
【0116】
ステップS114においては、制御装置100は、ロボットハンド85におけるアンクランプ動作が正常に完了したか否かを判定する。即ち、アンクランプ動作要求情報Rhuが出力された後において情報取得部110がオン信号S21を入力した場合には、制御装置100の停止制御部140は、正常判定部141がロボットハンド85におけるクランプ動作が正常であるため「Yes」と判定する。
【0117】
そして、制御装置100は、前記ステップS107のステップ処理を実行することにより、ロボット制御装置90に対して、ロボット70によるワークWの自動搬送(自動運転)を継続するように、継続要求情報Rgを出力する。これにより、ロボット70は動作不良が解消された状態で、ワークWの自動搬送を継続することができる。
【0118】
一方、正常判定部141は、アンクランプ動作要求情報Rhuが出力された後において情報取得部110がオフ信号S22を入力した場合には、ロボットハンド85におけるアンクランプ動作が未だ不良であるため、「No」と判定する。そして、制御装置100は、続くステップS108のステップ処理を実行することにより、停止要求情報出力部142がロボット制御装置90に対して停止要求情報Rsを出力する。これにより、ロボット制御装置90は、停止制御部140から停止要求情報Rsを取得してロボット70の作動を停止させ、ワークWの自動搬送を終了する。
【0119】
尚、アンクランプ動作要求情報Rhuが出力された後において情報取得部110がオフ信号S22を入力する状況では、異物等によりロボットチャック85cが動作不良を生じる場合に加え、アクチュエータ85bに異常が発生している場合も考えられる。従って、再度アンクランプ動作させた後にオフ信号S22即ち不良動作情報を入力する場合には、例えば、作業者がロボットハンド85の状態を直接確認すると良い。
【0120】
ここで、上述した制御プログラムにおいて、前記ステップS102及び前記ステップS110の情報取得ステップが、制御方法における「情報取得工程」に対応する。又、上述した制御プログラムにおいて、前記ステップS103及び前記ステップS104、並びに、前記ステップS111及び前記ステップS112の解消動作ステップが、制御方法における「解消動作工程」に対応する。更に、上述した制御プログラムにおいて、前記ステップS105及び前記ステップS106、並びに、前記ステップS113及び前記ステップS114のリトライステップが、制御方法における「リトライ工程」に対応する。
【0121】
以上の説明からも理解できるように、制御装置100は、ワークWを把持するクランプ動作又はワークWを解放するアンクランプ動作を行う把持部としてのロボットハンド85を有してワークWを搬送するワーク自動搬送機である多関節ロボット70に適用され、ロボットハンド85の動作不良を表す不良動作情報であるオフ信号S12,S22を取得する情報取得部110と、オフ信号S12,S22を取得した場合、クランプ動作中のロボットハンド85をアンクランプ動作に切り替えて動作させる第一動作、又は、アンクランプ動作中のロボットハンド85をクランプ動作に切り替えて動作させる第二動作を含む解消動作を制御する解消動作制御部120と、解消動作を行った後、第一動作を行ったロボットハンド85を再度クランプ動作させる、又は、第二動作を行ったロボットハンド85を再度アンクランプ動作させるリトライ動作を制御するリトライ制御部130と、を備える。
【0122】
これによれば、ロボット70がワークWを搬送しているときに、ロボットハンド85に動作不良が発生しても、制御装置100の解消動作制御部120が動作不良の原因となる異物等を除去するように、ロボットハンド85に解消動作を自動的に行わせることができる。これにより、例えば、アクチュエータ85bに異常が発生する等の致命的な不良ではなく、異物等の存在に伴う動作不良であれば、動作不良を解消するためにロボット70によるワークWの自動搬送を一時的に又は断続的に停止させる必要がない。従って、ロボット70の自動搬送を停止することによって生じる無駄な時間を減少させることができ、その結果、作業者の負担を軽減することができると共に、ロボット70の稼働率ひいてはワークWを加工する加工システム10の生産効率を向上させることができる。
【0123】
又、解消動作制御部120は、解消動作として、第一動作後又は第二動作後にロボットハンド85を清掃する清掃装置としてのクーラント供給装置47,57及びエアブロー装置48,58の動作を制御することができる。これにより、ロボットハンド85に付着した異物等をより確実に除去することができ、動作不良の原因を自動的に解消することができる。
【0124】
5.変形例
5-1.第一変形例
上述した実施形態においては、モジュール制御装置49,59及びロボット制御装置90とは別に、制御装置100を設け、制御装置100が上述した制御プログラムを実行するようにした。即ち、上述した実施形態においては、専用の制御装置100がロボットハンド85の解消動作を制御し、且つ、清掃装置による清掃を制御するようにした。
【0125】
ところで、上述したように、コンピュータ装置を主要構成部品とするモジュール制御装置49,59とロボット制御装置90とは、共に通信可能に接続されている。従って、制御装置100を省略しても、例えば、モジュール制御装置49,59が上述した制御プログラムを実行したり、ロボット制御装置90が上述した制御プログラムを実行したりすることが可能である。この場合においては、専用の制御装置100を設ける必要がないため、例えば、加工システム10全体の設備コストの低減が可能であると共に、上述した本実施形態と同様の効果が得られる。
【0126】
5-2.第二変形例
上述した実施形態においては、制御装置100を加工システム10の近傍に配置するようにした。しかしながら、例えば、ネットワーク回線を利用することにより、制御装置100を加工システム10から離間した場所(例えば、他地域の他工場等)に配置することも可能である。この場合においても、ネットワーク回線を利用して、制御装置100、モジュール制御装置49,59及びロボット制御装置90を通信可能に接続することにより、制御装置100は、ロボットハンド85を解消動作させたり、清掃装置による清掃を制御したりすることも可能となる。従って、この場合も、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0127】
5-3.第三変形例
上述した実施形態においては、制御装置100の解消動作制御部120が切替動作制御部121及び清掃装置制御部122を備えるようにした。そして、解消動作として、切替動作制御部121が第一動作又は第二動作を制御した後、清掃装置としてのクーラント供給装置47,57及びエアブロー装置48,58による清掃を行うようにした。
【0128】
この場合、解消動作制御部120は、例えば、切替動作制御部121のみを備えて、即ち、清掃装置制御部122を省略して、第一動作又は第二動作のみを解消動作として制御するようにしても良い。又、解消動作制御部120の清掃装置制御部122は、例えば、クーラント供給装置47,57のみを作動させてクーラント液のみでの清掃、又は、エアブロー装置48,58のみを作動させて正圧エアのみでの清掃を行うようにしても良い。これらによっても、ロボットハンド85に発生した動作不良を解消することができ、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0129】
5-4.第四変形例
上述した実施形態においては、作業機モジュール30、より具体的には、旋盤モジュール30A及びドリミルモジュール30Bに清掃装置としてのクーラント供給装置47,57及びエアブロー装置48,58を設け、加工室45,55の内部に進入したロボットハンド85を清掃するようにした。これに代えて、又は、これに加えて、ロボット70のロボットハンド85に、例えば、クーラント供給装置47及びエアブロー装置48の少なくとも一方を設け、ロボットハンド85の清掃を行うことも可能である。
【0130】
これにより、例えば、制御装置100がロボット制御装置90に清掃要求情報Rwを出力することにより、クーラント供給装置又はエアブロー装置を作動させてロボットハンド85を清掃することが可能となり、上述した実施形態と同様の効果が得られる。又、この場合、ロボット70が、例えば、加工前ストックモジュール30C、加工後ストックモジュール30D、検測モジュール30E、仮置モジュール30FにワークWを搬送する際にも、ロボットハンド85を清掃することが可能となり、搬送時に生じるロボット70の異常停止等を防止することができる。従って、この場合においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0131】
5-5.第五変形例
上述した実施形態においては、加工システム10の作業機モジュール30として、ワークWに機械加工を施す工作機械として旋盤モジュール30A及びドリミルモジュール30Bを備えるようにした。これに代えて、又は、加えて、砥石車を備えワークWを研削加工する研削モジュールを設けることも可能である。この場合、研削モジュールにおいても、ワークWの研削点にクーラント液を供給するクーラント供給装置及び正圧エアを吹き付けるエアブロー装置を設けることができ、クーラント供給装置及びエアブロー装置が清掃装置としての機能を発揮することができる。従って、この場合においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0132】
10…加工システム、30…作業機モジュール(工作機械)、47,57…クーラント供給装置(清掃装置)、48,58…エアブロー装置(清掃装置)、49,59…モジュール制御装置、70…多関節ロボット(ワーク自動搬送機)、85…ロボットハンド(把持部)、85c…ロボットチャック、90…ロボット制御装置、100…制御装置、110…情報取得部、120…解消動作制御部、121…切替動作制御部、122…清掃装置制御部、130…リトライ制御部、131…カウント部、132…カウント数判定部、133…リトライ動作制御部、140…停止制御部、141…正常判定部、142…停止要求情報出力部、W…ワーク、S11,S21…オン信号、S12,S22…オフ信号(不良動作情報)、Rc1…第一切替要求情報、Rc2…第二切替要求情報、Rw…清掃要求情報、Rhc…クランプ動作要求情報、Rhu…アンクランプ動作要求情報、Rg…継続要求情報、Rs…停止要求情報
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図10
図11
図12