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  • 特開-気球及び温暖化防止システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068724
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】気球及び温暖化防止システム
(51)【国際特許分類】
   B64B 1/40 20060101AFI20230511BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20230511BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20230511BHJP
   B64G 1/44 20060101ALI20230511BHJP
   B64G 1/64 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B64B1/40
B64D27/24
B64D47/08
B64G1/44
B64G1/64 600
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179983
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】501385374
【氏名又は名称】竹嶋 義人
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(72)【発明者】
【氏名】竹嶋 義人
(57)【要約】
【課題】 地球に到達する前の段階で太陽光を阻止して、効率的に温暖化を抑制することができる気球及び温暖化防止システムを提供する。
【解決手段】 太陽20から放射されて地球10に到達した光のうち、前記気球100に入射する光は、逆円錐状の本体102の頂面に設けた反射板104によって宇宙空間に反射されるようになる。このため、地球10の地表に到達する光量(特に赤外線の光量)が減少し、全体として温暖化が低減されるようになる。一方、地表面からの放射熱は、逆円錐状の本体102の側面で反射されて、宇宙空間に放出される。このため、気球100の存在によって熱放射が妨げられる恐れはない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂面と側面とによって逆錐形状に形成されており、
前記頂面に太陽光を反射する反射板が設けられており、
前記側面に地表からの放射熱を宇宙に反射する反射面が設けられており、
その先端に逆錘形状で浮遊するための錘が設けられたことを特徴とする気球。
【請求項2】
頂面と側面とによって逆錐形状に形成されており、
前記頂面に太陽光によって発電する太陽電池パネルが設けられており、
前記側面に地表からの放射熱を宇宙に反射する反射面が設けられており、
その先端に逆錘形状で浮遊するための錘が設けられており、
前記太陽電池パネルで発電した電力を蓄電する蓄電池を備えたことを特徴とする気球。
【請求項3】
前記蓄電池が、前記錘を兼用したことを特徴とする請求項2記載の気球。
【請求項4】
前記蓄電池に蓄電された電力によって駆動される推進手段,撮像手段,放送用ないし通信用の基地手段,気象観測手段の少なくとも一つを備えたことを特徴とする請求項2又は3記載の気球。
【請求項5】
前記蓄電池に蓄電された電力を利用した居住空間とドッキング装置を備えており、
前記ドッキング装置に輸送用気球をドッキングすることで、前記居住空間に対する人の往来や物資の補給を行うことを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の気球。
【請求項6】
宇宙エレベーターシステムの中継基地として前記気球を使用し、エレベーターを前記輸送用気球として使用することを特徴とする請求項5記載の気球。
【請求項7】
前記頂面が形成されている頂部が厚みを有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の気球。
【請求項8】
前記逆錘形状の錘の部分が、円錐ないし多角錘であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の気球。
【請求項9】
上昇に伴って内部を減圧する減圧弁を設けたことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の気球。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の気球を多数浮遊させ、地表への太陽光の到達量を低減したことを特徴とする温暖化防止システム。
【請求項11】
前記反射面で地表からの放射熱を宇宙に反射することを特徴とする請求項10記載の温暖化防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球や都市などの温暖化を防止する気球及び温暖化防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球や都市の温暖化を防止するシステムとしては、例えば、下記特許文献1記載の「地球温暖化防止簡易緑化システム」がある。これは、消費者が容易に植物の発芽を行うことができ、生産者も極めて簡易に製作できて安価で市場に流通できることが可能であることを目的としたもので、植物の種子を生分解性繊維の積層で被覆し立体的あるいは平面的に成形した発芽地であり、該発芽地は積層の表面から対面側へ貫通する透気性と透根性を備えた穴隙を設け、該穴隙内に種子を嵌合することで種子が呼吸を成し、発芽後の根と芽が伸長により穴隙開口部を通過し外部へ生長できるよう成形されるようにしたものである。下記特許文献2には、パピルス,葦,い草,藁などで筵や畳による蒸発用浮体を、寒流に浮かべて周辺の砂漠に雨を降らせることで、砂漠の緑化を図ったり、河川、湖沼、海の水面に浮かべて、雲を発生させるようにした温暖化防止システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-099310号公報
【特許文献2】特開2020-079546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、火山が噴火して噴煙が地球上空を覆い、成層圏に長期間停滞することで、地球の気温が低下し、冷害などが発生することが知られている。してみると、火山の噴煙のように太陽光を遮ることができれば、地球温暖化を防止することができると考えられる。
【0005】
本発明は、以上のような点に着目したもので、地球に到達する前の段階で太陽光を阻止して、効率的に温暖化を抑制することができる気球及び温暖化防止システムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の気球は、頂面と側面とによって逆錐形状に形成されており、前記頂面に太陽光を反射する反射板が設けられており、前記側面に地表からの放射熱を宇宙に反射する反射面が設けられており、その先端に逆錘形状で浮遊するための錘が設けられたことを特徴とする。
【0007】
他の発明の気球は、頂面と側面とによって逆錐形状に形成されており、前記頂面に太陽光によって発電する太陽電池パネルが設けられており、前記側面に地表からの放射熱を宇宙に反射する反射面が設けられており、その先端に逆錘形状で浮遊するための錘が設けられており、前記太陽電池パネルで発電した電力を蓄電する蓄電池を備えたことを特徴とする。
【0008】
主要な形態の一つによれば、前記蓄電池が前記錘を兼用したことを特徴とする。あるいは、前記蓄電池に蓄電された電力によって駆動される推進手段,撮像手段,放送用ないし通信用の基地手段,気象観測手段の少なくとも一つを備えたことを特徴とする。あるいは、前記蓄電池に蓄電された電力を利用した居住空間とドッキング装置を備えており、前記ドッキング装置に輸送用気球をドッキングすることで、前記居住空間に対する人の往来や物資の補給を行うことを特徴とする。または、宇宙エレベーターシステムの中継基地として前記気球を使用し、エレベーターを前記輸送用気球として使用することを特徴とする。
【0009】
更に他の形態によれば、前記頂面が形成されている頂部が厚みを有することを特徴とする。あるいは、前記逆錘形状の錘の部分が、円錐ないし多角錘であることを特徴とする。更には、上昇に伴って内部を減圧する減圧弁を設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明の温暖化防止システムは、前記気球を多数浮遊させて、地表への太陽光の到達量を低減したことを特徴とする。主要な形態の一つによれば、前記反射面で地表からの放射熱を宇宙に反射することを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、逆錘形状の気球に設けた反射板で太陽光を反射し、あるいは太陽電池パネルで太陽発電を行うこととしたので、太陽光の地表への到達量が低減され、地球温暖化が抑制されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1を示す図である。(A)はシステムの全体を示し、(B)は気球を拡大して示す。
図2】本発明の実施例2を示す図である。
図3】本発明の実施例3を示す図である。
図4】本発明の他の実施例を示す図である。
図5】本発明の更に他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例0014】
最初に、図1を参照しながら、本発明の実施例1について説明する。図1(A)には、本実施例の全体が示されており、多数の気球100が、地球10の成層圏12に浮遊している。気球100は、同図(B)に示すように、全体が円錐を逆さにした逆円錐形状となっており、その本体102の内部には、空気よりも軽くて浮力を有するヘリウムなどの気体が充填されている。また、その太陽光入射側(地球10と反対側)に反射板104を備えている。本体102の逆円錐頂部には錘106が設けられており、反射板104が宇宙側を向くようになっている。逆円錐状の本体102は、例えばジュラルミンなどによって形成されており、表面が鏡面となっている。更に、本体102の適宜位置に減圧弁120が設けられており、気球100の高度の上昇に伴って内部の気体の圧力が減圧されるようになっている。これにより、外気と内部の気圧のとの差が調整され、気球100の膨張が防止されるようになっている。
【0015】
本実施例によれば、太陽20から放射されて地球10に到達した光のうち、前記気球100に入射する光は、反射板104によって宇宙空間に反射されるようになる。このため、地球10の地表に到達する光量(特に赤外線の光量)が減少し、全体として温暖化が低減されるようになる。一方、地表面からの放射熱は、同図(B)に示すように、逆円錐状の本体102の側面で反射されて、宇宙空間に放出される。このため、気球100の存在によって熱放射が妨げられる恐れはない。
【実施例0016】
次に、図2を参照して、本発明の実施例2について説明する。本実施例の気球200は、逆円錐形状の本体202の内部に浮遊気体が充填されており、太陽光入射側に太陽電池パネル204が設けられている。また、本体202の逆円錐頂部には錘206が設けられており、太陽電池パネル204が宇宙側を向くようになっている。更に、上記実施例と同様に、減圧弁220が本体202の適宜位置に設けられている。
【0017】
本体202内には、蓄電池208及び蓄電用回路(図示せず)が設けられており、太陽電池パネル204で発電した電力を蓄電できるようになっている。更に、気球200の太陽電池パネル204が設置された主面には、複数のプロペラ210が設けられており、前記蓄電池208によって駆動されるようになっている。なお、蓄電池208が低温で良好に蓄電しないときは、断熱パネルで蓄電池208を覆ったり、あるいは恒温槽に蓄電池208を設置するようにする。恒温槽は、蓄電池208の電力で駆動する。
【0018】
本実施例によれば、太陽20から放射された光は、太陽電池パネル204に入射し、ここで一部は発電に利用され、一部は宇宙空間に反射される。太陽電池パネル204で発電された電力は、蓄電池208に蓄電される。このため、前記実施例と同様に、地球10の地表に到達する光量が減少し、全体として温暖化が低減されるようになる。更に、本実施例によれば、蓄電池208の電力によってプロペラ210を駆動することで、ドローンのように気球200が移動することができ、例えば太陽20の軌跡に伴って気球200を移動させることで、効率的に太陽光による温暖化を低減することができる。
【0019】
前記実施例の変形例として、以下のものがある。
a,前記蓄電池208を、錘206の代わりに使用する。
b,前記錘206の代わりに(もしくは錘206とともに)、撮像手段として高性能カメラを搭載する。高性能カメラで、定点観測による天気予報や犯罪防止,国境の監視などを行うことができる。
c,あるいは、携帯電話の基地局や、テレビやラジオなどの放送用基地局を搭載することで、携帯電話の中継機能や放送電波の中継機能を備えることができる。それらの駆動電力は、蓄電池208から供給する。
d,気象レーダーや各種観測機器などの気象観測手段を搭載することで、各種の気象情報を得ることができる。以上の態様において、必要があれば、プロペラ210を駆動して気球200を移動し、高性能カメラによる撮影地点,中継地点,観測地点などを適宜変更するようにする。
【実施例0020】
次に、図3を参照して、本発明の実施例3について説明する。本実施例の気球300は、同図(A)に示すように、上述した実施例2の気球200の本体202に対して居住空間302を設けたものである。居住空間302は、宇宙線の影響を避けるため、例えば鉛などでシールドされている。蓄電池208の電力を利用して、人が居住空間302に滞在することができる。居住空間302には、ドッキング装置304が設けられており、輸送用気球310をドッキングして人の往来や物資の補給が行われる。
【0021】
同図(B)は、宇宙エレベーターの中継基地として気球300を利用した例である。宇宙エレベーター400は、地上ステーション402からケーブル404をカウンターウエイト406に接続したもので、カウンターウエイト406の遠心力によりケーブル404が地上から宇宙に向けて伸張されている。上述した気球300は、ケーブル404の適宜中間位置に設けられており、エレベータ408が上述した輸送用気球310の代わりに気球300にドッキングして人の移動や物資の補給が行われる。
【0022】
<他の実施例> なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例では、地球規模での温暖化防止の例を説明したが、太陽光の照射を抑制する小規模の太陽光抑制システムに対しても、本発明は適用可能である。例えば、図4(A)に示すように、都市部の上空にのみ気球200を配置し、都市部において重点的に太陽光の照射を抑制するようにしてもよい。このとき、必要に応じてプロペラ210を駆動することで、太陽の移動に応じて気球200の位置を修正する。同図(B)は、池やダムなどの上空に気球200を配置した例で、太陽光による水の蒸発を防ぐようにしたものである。
(2)上述した実施例の気球は、いずれも逆円錐状としたが、四角錘や三角錐を逆にした逆角錐状とするなど、適宜形状を変更してよい。
(3)前記実施例では、プロペラ210を使用したが、各種の推進手段を適用してよい。
(4)前記実施例を組み合わせるようにしてもよい。例えば、居住空間302に観測者が居住して気象観測手段により気象観測を行うといった具合である。
(5)上述した実施例は、気球本体が逆円錐形状の場合であるが、逆三角錐形状など、多様な形状としてよい。また、気球の浮力向上のため、頂部を厚くしてもよい。図5(A)に示す気球500は、上述した実施例2の気球200と比較して、頂部502が厚くなっており、気球500の容積が増大し、充填されるガス量が増大して、浮力が向上する。同図(B)の気球510は、同図(A)を逆三角錐形状としたもので、頂部512は三角筒形状となっており、本体514は逆三角錐形状となっている。同図(C)の気球520は、同図(A)を逆四角錐形状としたもので、頂部522は四角筒形状となっており、本体524は逆四角錐形状となっている。もちろん、上述した図1に対して図5の形状を適用してよいし、三角,四角以外の多角錘としてよいし、正多角錘とする必要もない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、逆錘形状の気球に設けた反射板で太陽光を反射し、あるいは太陽電池パネルで太陽発電を行うこととしたので、太陽光の地表への到達量が低減され、地球温暖化が抑制されるようになる。
【符号の説明】
【0024】
10:地球
12:成層圏
20:太陽
100:気球
102:本体
104:反射板
106:錘
120:減圧弁
200:気球
202:本体
204:太陽電池パネル
206:錘
208:蓄電池
210:プロペラ
220:減圧弁
300:気球
302:居住空間
304:ドッキング装置
310:輸送用気球
400:宇宙エレベーター
402:地上ステーション
404:ケーブル
406:カウンターウエイト
408:エレベータ
500,510,520:気球
502,512,522:頂部
514,524:本体
図1
図2
図3
図4
図5