(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068731
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】金属被覆樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B32B15/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179994
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 幸志郎
(72)【発明者】
【氏名】森岡 信博
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB16B
4F100AB17B
4F100AK01A
4F100AK42A
4F100AK48A
4F100BA02
4F100CA08A
4F100DE01A
4F100EH36A
4F100EH71B
4F100EJ15B
4F100GB41
4F100JA04A
4F100JG04A
4F100JJ01
4F100JJ07
4F100JK00
4F100JK02
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4F100JK09
4F100JL01
4F100JL03
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】軽量性、成形加工性、機械特性、耐久性を維持しつつ、難燃性および熱伝導性(放熱性)に優れた樹脂成形体を提供する。
【解決手段】IEC60093で測定する体積抵抗値が1.0×1013Ω・m以上を有する樹脂成形体の表面全体に、金属層が形成されている金属被覆成形体において、金属層の厚さが30μm以上100μm未満であって、ホットディスク法/スラブモードで測定したときの熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつUL94で評価される燃焼レベルがV0であることを特徴とする金属被覆樹脂成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IEC60093で測定する体積抵抗値が1.0×1013Ω・m以上を有する樹脂成形体の表面全体に金属層が形成された金属被覆樹脂成形体において、金属層の厚さが30μm以上100μm未満であって、ホットディスク法/スラブモードで測定したときの熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつUL94で評価される燃焼レベルがV0であることを特徴とする金属被覆樹脂成形体。
【請求項2】
前記樹脂成形体を構成する樹脂の融点が200℃以上であることを特徴とする請求項1記載の金属被覆樹脂成形体。
【請求項3】
前記樹脂成形体が、樹脂成形体を構成する樹脂100重量部に対し、難燃剤を5重量部未満含有することを特徴とする請求項1または2に記載の金属被覆樹脂成形体。
【請求項4】
前記樹脂成形体を構成する樹脂のISO4589で測定する限界酸素指数が25未満であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の金属被覆樹脂成形体。
【請求項5】
金属被覆樹脂成形体の最薄肉部の厚みが0.5mmt以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の金属被覆樹脂成形体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の金属被覆樹脂成形体と他の樹脂成形体とを複合してなる、複合樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた熱伝導性と難燃性を兼ね備えた金属被覆樹脂成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂部材を用いた樹脂成形体は、軽量性、成形加工性、機械特性、耐久性に優れていることから、OA機器、通信機器、電気・電子機器、自動車電装機器の筐体に幅広く使用され、その需要は年々増加している。
【0003】
一方で、より安全で快適な社会の実現に向けて、5G通信や自動運転技術の普及が進むにつれ、それらに使用される通信機器、自動車電装機器の高性能化、高出力化が益々進んでいる。電気・電子機器の高性能化、高出力化にあたり、内部部品のICに使用される半導体については、より高い電圧、大きな電流を扱うことで高出力化できるパワー半導体の適用などが進んでおり、電気・電子機器の高性能化、高出力化が実現される一方、消費電力と発熱量の増加により、ICに使用されている半導体素子の寿命が低下する課題が発生している。これにより、近年の電気・電子機器には、発生した熱を逃がす放熱対策が必要となる場合が増えており、電気・電子機器に使用される筐体、構造部材に対しても、従来の軽量性、成形加工性、機械特性、耐久性を維持し、かつ優れた熱伝導性(放熱性)を有することが求められる。
【0004】
さらには、信頼性、安全性向上の観点において、高性能化、高出力化された電気・電子機器の異常発熱を起因とした発火・燃焼に耐えるため、筐体や構造部材に使用される樹脂部材には難燃性が求められることも多い。
【0005】
そこで、パワー半導体の搭載に対応し、放熱性が求められる配線板に好適な積層板として、樹脂絶縁層の両面に銅箔ないし銅板を一体化した積層板が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、難燃性に優れた金属皮膜体として、難燃剤を含む樹脂組成物の少なくとも一部の表面にめっき被膜が形成されためっき被覆体が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特許第4192870号
【特許文献2】特許第4641446号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、高度な熱伝導率を実現するものの、樹脂絶縁層に対し、金属層の厚みが相対的に大きいため、十分な軽量化効果が得られず、また、ガラス繊維織布などのシート状の繊維基材に絶縁樹脂を含浸させ、銅板を重ねて加熱乾燥して積層板を得るため、加工工程が複雑となり、筐体や構造部材への実用には適さない。
【0008】
また、特許文献2に開示されためっき被覆体は、樹脂組成物に難燃剤を含むことで高い難燃性を備えているが、難燃剤を含んでいるため、製品加工時や、製品の使用環境下において、樹脂組成物から発生するガスによるめっき被膜の腐食が進み、機械特性や耐久性が悪いという課題があった。
【0009】
そこで本発明の課題は、かかる従来技術に鑑み、軽量性、成形加工性、機械特性、耐久性を維持しつつ、難燃性および熱伝導性(放熱性)に優れた樹脂成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る金属被覆樹脂成形体は次の構成からなる。すなわち、IEC60093で測定する体積抵抗値が1.0×1013Ω・m以上を有する樹脂成形体の表面全体に金属層が形成された金属被覆樹脂成形体において、金属層の厚さが30μm以上100μm未満であって、ホットディスク法/スラブモードで測定したときの熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつUL94で評価される燃焼レベルがV0であることを特徴とする金属被覆樹脂成形体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来技術では困難であった、優れた難燃性と熱伝導性とを兼ね備えた樹脂成形体を得ることができる。発熱体から発生した熱は、金属被覆樹脂成形体の表面に被覆された金属層を介して伝わり放散される。このとき、金属被覆成形体における金属層の厚みを上記のように規定しておくことが、難燃性、熱伝導性、および耐久性を両立する観点で重要である。
【0012】
したがって、本発明の金属被覆樹脂成形体は、通信機器、自動車電装機器などの電気・電子機器の筐体や構造部材、特に放熱性が求められる部品、部材に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の金属被覆樹脂成形体について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
【0014】
本発明の樹脂成形体を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、成形加工性の観点で、熱可塑性樹脂が望ましい。
【0015】
かかる熱可塑性樹脂としては、その種類に特に制限はないが、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリイミドから選ばれることが好ましい。なかでも金属被覆層形成の観点からは、ポリアミド、ポリエステルが好ましい。
【0016】
さらに、かかる熱可塑性樹脂に、要求される特性に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で他の充填材や添加剤を含有した樹脂組成物を使用してもよい。例えば、衝撃改良剤、無機充填材、難燃剤、難燃助剤、結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、抗菌剤、着色剤、顔料、染料、帯電防止剤、導電付与剤、滑剤、可塑剤、撥水剤、摺動化剤などが挙げられる。実用面においては、電気・電子機器に要求される各種要求を満足する観点で、本発明の樹脂成形体を構成する樹脂は、無機充填材や安定剤、添加剤等を含有する樹脂組成物が好ましい。
【0017】
本発明の樹脂成形体を構成する樹脂の融点は200℃以上であることが好ましい。融点が200℃以上とすることでw放熱性を要求される筐体や構造部材に必要な耐熱性を有する。なお、樹脂成形体が樹脂組成物により構成される場合は、樹脂組成物の融点を指す。
【0018】
本発明の樹脂成形体は、樹脂成形体を構成する樹脂100重量部に対し、難燃剤を5重量部未満含有することが好ましい。より好ましくは樹脂100重量部に対し、難燃剤含有量が1重量部未満であり、一層好ましくは、樹脂成形体中における難燃剤の含有量が実質的にゼロである。樹脂成形体中における難燃剤の含有量が少なければ少ないほど、機械特性の低下が抑制でき、金属被覆樹脂成形体としての耐久性(耐乾熱性)が向上する。ここでいう耐久性(耐乾熱性)は、自動車部品の使用環境下における温度に対して著しい外観の変化や強度低下が起きないことを示し、例えばエンジン周辺部品であれば150℃、自動車内装部品であれば60℃程度の温度に対する耐久性が求められる。難燃剤には、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。
【0019】
本発明の樹脂成形体を構成する樹脂のISO4589に従い測定する限界酸素指数は25未満であることが好ましい。一般的に成形体として使用される樹脂の限界酸素指数は18が下限であり、限界酸素指数が高い方が、難燃性は高くなるが、同時に耐薬品性や耐久性が向上するため、金属層を形成させるための樹脂成形体の表面処理が難しくなる場合がある。より好ましくは22以下である。なお、樹脂成形体が樹脂組成物により構成される場合は、樹脂組成物の限界酸素指数を指す。
【0020】
本発明の樹脂成形体を構成する樹脂および樹脂組成物は、慣用の方法、すなわち、(1)タンブラーやヘンシェルミキサー、リボンミキサー、押出混合機などで各成分を予備混合して溶融混練機(一軸または二軸押出機など)で溶融混練し、ペレット化手段(ペレタイザー)でペレット化する方法、(2)所望の成分のマスターバッチを調整し、必要により他の成分と混合して溶融混練機で溶融混練してペレット化する方法、(3)各成分を溶融混練機に供給して溶融混練してペレット化する方法、(4)溶融混練機で溶融混練する際に、所定の成分(例えば、無機充填材など)を溶融混練機の途中から投入して溶融混練する方法などにより調整できる。
【0021】
本発明の樹脂成形体の製造方法は、特に限定されず、樹脂組成物について一般的に採用されている成形方法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、押出成形法、熱成形法、プレス成形法、ブロー成形法、発泡成形法(超臨界流体も含む)、インサート成形法、インモールディングコーティング成形法などが挙げられる。その中でも、本発明においては、経済性および加工性の観点において射出成形法が好ましい。
【0022】
本発明における樹脂成形体は、その体積抵抗値が1.0×1013Ω・m以上である。絶縁性と機械特性の観点で、より好ましくは1.0×1014Ω・m以上である。体積抵抗率はIEC60093に準拠して測定した値である。一般的に成形体として使用される樹脂の体積抵抗率は1.0×1016Ω・mが最大である。体積抵抗値が1.0×1013Ω・m未満だと、樹脂の熱伝導率は高くなる一方、機械特性が失われるため好ましくない。例えば、導電付与剤を配合すると、引張強度、引張伸びが低下してしまうため好ましくない。
【0023】
本発明における、樹脂成形体の表面全体に金属層を形成させる方法は、特に限定されず、樹脂成形体について一般的に採用されている表面処理方法を任意に採用できる。その代表例を挙げると、めっき法、塗装法、コーティング法、金属印刷法などが挙げられるが、本発明において、金属皮膜を均一に厚く形成できる観点において、めっき法が好ましい。めっき法には、電気めっき、無電解めっき、スパッタリング、真空蒸着等が含まれる。
【0024】
本発明における、樹脂成形体の表面全体に金属層を形成させるめっき法におけるめっき被膜は、少なくとも金属または合金、例えば、銅、ニッケル、亜鉛、クロムなどの金属、またはこれらの金属の合金(銅-ニッケル合金、銅-コバルト合金などの銅基合金;ニッケル-亜鉛合金、ニッケル-スズ合金、ニッケル-リン合金などのニッケル合金;鉄-亜鉛合金、亜鉛-コバルト合金などの亜鉛基合金;鉄-ニッケル合金であるパーマロイ)などで構成される。
【0025】
樹脂成形体の表面全体に形成される金属層の厚さは、30μm以上100μm未満である。好ましくは、30μm以上90μm未満、さらに好ましくは30μm以上80μm未満である。金属層の厚みが30μm未満だと、十分な難燃性と熱伝導性を得られないため好ましくない。金属層の厚みが100μm以上になると、樹脂成形体を構成する樹脂および樹脂組成物と金属層との金属の線膨張係数の差により、低温環境下と高温環境下を繰り返す耐冷熱性試験において、金属層でのクラックが発生しやすくなり、難燃性と熱伝導性が発現できなくなり好ましくない。なお、無電解めっきと電気めっきとにより、金属層を形成する場合、無電解めっきによる金属層の厚みは、0.1μm以上5μm未満、好ましくは、0.3μm以上3μm未満であってもよい。金属層の厚さが金属層を形成させる方法によって、裏面と表面で厚さに違いが生じる場合は、少なくとも厚さが薄い面が30μm以上あり、かつ厚さが厚い面が100μm未満であり、どの部分の厚さを測定しても30μm以上100μm未満である。
【0026】
樹脂成形体に形成された金属層は、めっき法等の表面処理法によって、樹脂成形体の表面全体に形成される。樹脂成形体の表面全体に金属層が形成されることで、高度な難燃性、熱伝導性が発現するためである。ただし、成形品の形状、仕様対応によっては、成形体の表面一部に金属層が形成されてなくてもよい。製品仕様上、表面の一部に金属層を形成しない制約を受ける場合、発熱体から熱を伝える熱伝導パスが十分に形成されるためには、金属層の占める割合は表面全体の50%以上が好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0027】
本発明における、金属被覆樹脂成形体の最薄肉部の厚みは0.5mmt以上である。より好ましくは0.8mmt以上であり、さらに好ましくは1mmt以上である。薄肉部の厚みが0.5mmt以上とすることで、電気・電子機器の筐体や構造部材としての強度が十分となり好ましい。薄肉部の厚みが大きい方が、機械特性、難燃性に優れるため好ましい。
【0028】
本発明の金属被覆樹脂成形体は、ホットディスク法/スラブモードで測定したときの熱伝導率が10W/m・K以上であることを特徴とする。係る熱伝導率を有することで、電気・電子機器の筐体や構造部材、特に放熱性が求められる部品において好適に用いることができる。熱伝導率が10W/m・K未満の場合、基板など発熱体からの熱を効果的に放熱させることができないため好ましくない。熱伝導率は、10W/m・K以上が好ましく、より好ましくは13W/m・K以上である。なお、金属被覆樹脂成形体としての熱伝導率の上限値は30W/m・K未満が好ましい。金属層が厚い方が、熱伝導率は高くなり放熱性の観点では好ましいが、高温と低温を繰り返す環境下において金属層と樹脂の収縮差によって、樹脂成形体から金属層が剥離し、耐冷熱性が低下するため好ましくない。より好ましくは20W/m・K未満であり、さらに好ましくはより好ましくは18W/m・K未満である。
【0029】
金属被覆樹脂成形体の熱伝導率を10W/m・K以上とするための方法は、特に限定はされないが、たとえば樹脂成形体に、無電解めっきと電気めっき処理を施すことで表面に35μm以上100μm未満の金属層を形成させる方法が挙げられる。
【0030】
本発明の金属被覆樹脂成形体は、UL94で評価される燃焼レベルがV0である。係る燃焼レベルを有することで、電気・電子機器が異常発熱により発火・燃焼したときに、樹脂成形体への延焼が抑制でき、部品全体として耐えられるため好ましい。燃焼レベルがV0ではない場合は、電気・電子機器の発火・燃焼と共に、樹脂成形体へ延焼し、部品が燃えてしまうため好ましくない。
【0031】
金属被覆樹脂成形体の燃焼レベルをV0とする方法としては、特に限定はされないが、たとえば樹脂成形体に、無電解めっきと電気めっき処理を施すことで表面に35μm以上100μm未満の金属層を形成させる方法が挙げられる。
【0032】
本発明における金属被覆樹脂成形体は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができ、特に通信機器や車載電装部品周辺で必要となる熱マネジメント機能を付与する部材として好適である。
【0033】
また、本発明の金属被覆樹脂成形体は、他の樹脂成形体と組み合わせた複合樹脂成形体として使用することもできる。係る複合樹脂成形体は、熱伝導性が高い特徴を生かし、ミリ波レーダー等のセンシング部品用の基板放熱部材や、ジャンクションボックスや、電気自動車充電用コネクターなど電気の充放電や電圧変換により大きな熱が発生する部品など放熱対策が必要な用途に好適である。
【0034】
具体的な用途としては、インバーター、リアクトル、バスバー、DC-DCコンバータ、ジャンクションボックス、LiB、ワイヤレス給電、インシュレーター、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、HUDハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、圧力センサー、加速度センサー、ミリ波レーダー、超音波センサーなどのセンシング部品、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクター、電気用コネクター、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、基地局、データ・コミュニケーション・モジュール、各種アンテナなどに代表される通信用電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD-R、DVD-RW、DVD-RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの内部部品などとして有用である。
【実施例0035】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
[使用した樹脂組成物]
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂
A-1:ポリブチレンテレフタレート(MFR:35g/10分(250℃、1000gf、ISO1133準拠)
A-2:ポリブチレンテレフタレート(MFR:9.6g/10分(250℃、1000gf、ISO1133準拠)
(B)ポリアミド6樹脂
B-1:ポリアミド6(VN:130ml/g(96%硫酸、ISO307準拠))
(C)難燃剤
C-1:トリブロモフェノール・テトラブロモビスフェノールA・テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル重縮合物(阪本薬品工業株式会社製 SRT3040(商品名))を用いた。
(D)難燃助剤
D-1:三酸化アンチモン(鈴裕化学株式会社製“ファイアカット”(登録商標)AT-3(商品名)を用いた。
(E)強化繊維
E-1:チョップドストランド(日本電気硝子(株)製 T-187(商品名) 3mmt、平均繊維長13μm)を用いた。
E-2:チョップドストランド(日本電気硝子(株)製 T-249(商品名) 3mmt、平均繊維長13μm)を用いた。
(F)導電付与剤
F-1:鱗状黒鉛(日本黒鉛工業製“F#シリーズ”F#2(商品名)、体積平均粒子径(MV):85μm)を用いた。
【0037】
[比較例5の樹脂組成物の作製]
PBT樹脂と導電付与剤成分をそれぞれ秤量し、PBT樹脂を二軸押出機(日本プラコン社製、SCM45)の元込めから供給し、押出機内で溶融した後で、導電付与剤を押出機の途中に設置したサイドフィーダーより供給し、PBT樹脂と導電付与剤からなる樹脂組成物ペレットを作製した。二軸押出機の温度設定は、250℃とした。
【0038】
[樹脂成形体の作製]
各実施例・比較例において、下記表1および表2に記載の樹脂組成物を用いて、シリンダ温度260~270℃、金型温度80℃にて射出成形を行い、各種成形試験片を得た。得られた試験片を用いて、以下の方法で樹脂組成物の体積抵抗率、限界酸素指数を評価し、その後めっき処理を行った。
【0039】
(1)体積抵抗率
各実施例および比較例に示す樹脂組成物を射出成形して得られた80mm×80mm×3mm厚の成形品について、IEC60093に準拠して体積抵抗値を測定した。体積抵抗値は、絶縁性を示す指標となるが、電気・電子機器の絶縁用途では1.0×1013Ω・m以上の絶縁性が要求される。一方で、体積抵抗値が低い方が、導電性が高いため、熱伝導性も高くなるが、樹脂組成物の体積抵抗率を低下させるためには、一般的に、導電付与剤の配合が必要であり、樹脂組成物としての機械特性低下を伴う。
【0040】
(2)融点
各実施例および比較例で使用する樹脂組成物について、示差走査熱量計を用いて、20℃/分の昇温速度で40℃から260℃まで加熱して融解熱量を測定し、融解吸熱ピークの頂点に相当する温度から融点を求めた。融点が200℃以上であれば、放熱性が要求されるような電気・電子部品に使用される樹脂の耐熱性として十分と判断できる。
【0041】
(3)限界酸素指数
各実施例および比較例に示す樹脂組成物を射出成形して得られた125mm×6.5mm×3mm厚の成形品について、ISO4589に準拠して限界酸素指数を測定した。限界酸素指数は、成形品が燃焼し続けるために必要な酸素濃度(vоl%)であり、数字が大きい方が燃焼するために酸素が多く必要となり、樹脂組成物として難燃性が高いことを示す。一般的には、燃焼性を高めるために難燃剤を配合すると限界酸素指数も上がるため難燃性は向上する。
【0042】
[金属被覆樹脂成形体の作製]
[実施例1~3、比較例1~4の金属被覆樹脂成形体の作製]
射出成形で得られた試験片を用いて、以下の手順で無電解めっきと電気めっき処理を行った。すなわち、130℃で1時間アニール処理し、界面活性剤で脱脂処理した試験片を、無水クロム酸及び硫酸の混合液を用いて化学エッチング処理し、水洗した後、水酸化ナトリウムを主成分とするエッチング液でエッチング処理し、塩酸で中和処理を行った。次に、得られた試験片を再度水洗し、パラジウム系触媒を用いて触媒化した後、無電解銅めっきを行った。その後、さらにその上に、めっき厚みが30μm以上になるように、硫酸銅を用いた電気めっきとニッケルめっき処理を行い、金属被覆樹脂成形体を得た。
【0043】
[実施例4、比較例5の金属被覆樹脂成形体の作製]
射出成形で得られた試験片を用いて、以下の手順で、スパッタリングと電気めっき処理を行った、すなわち、スパッタリング用真空チャンバー装置内に試験片を仕込み、真空になったチャンバー装置内にアルゴンガスを導入イオン化し、マイナス電圧を印加された銅プレートに衝突させることで銅イオンを発生させ、樹脂成形体に銅の微粒子粒子を付着させ成膜させた。その後、さらにその上に、めっき厚みが30μm以上になるように、硫酸銅を用いた電気めっきとニッケルめっき処理を行い、金属被覆樹脂成形体を得た。
得られた金属被覆樹脂成形体を用いて、引張特性、耐乾熱性、耐冷熱性、熱伝導率、難燃性を評価した。
【0044】
(4)金属被覆樹脂成形体の金属膜層の厚さ測定
各実施例および比較例に示す樹脂組成物を用いて、上記樹脂成形体の作製に記載の条件と同条件で射出成形を行い、125mm×13mm×0.8mm厚の棒状試験片を作成した。その試験片を実施例および比較例に記載の方法で金属被覆した試験片を作成した。得られた金属被覆試験片を切削加工し、研磨により断面出しを行った後、日本電子(株)製、走査型電子顕微鏡(SEM) JSM-IT700HRを用いて、めっき層を観察し、金属層の厚さを測定した。
【0045】
(5)引張特性
各実施例および比較例に示す樹脂組成物を用いて、上記樹脂成形体の作製に記載の条件と同条件で射出成形を行い、ISO3167:タイプ1Aのダンベル形状試験片を成形した。その試験片を実施例および比較例に記載の方法で金属被覆した試験片を作成した。得られた金属被覆試験片を、ISO527-1,2:2012年に準拠し、引張強度及び引張伸びを測定した。引張強度が50MPa以上あれば、樹脂成形体の機械強度として良好である判断できる。引張ひずみが1.5%以上であれば、樹脂成形体の靭性として良好である判断できる。
【0046】
(6)耐乾熱性
各実施例および比較例に示す樹脂組成物を用いて、上記樹脂成形体の作製に記載の条件と同条件で射出成形を行い、80mm×80mm×3mm厚の試験片を成形した。その試験片を実施例および比較例に記載の方法で金属被覆した試験片を作成した。得られた金属被覆試験片を、(株)TABAI ESPEC製パーフェクトオーブン PHH-202恒温器を用いて、150℃の乾熱処理を1000時間行った後、試験片の表面外観を観察した。乾熱処理後の表面外観に大きな変色が見られければ、耐乾熱性が良好と判断できる。一方、樹脂組成物から発生するガス等の影響により、めっき面の酸化劣化が進むと変色が進むため、電気・電子機器の筐体、構造部材として好ましくない。表面外観に変色がみられなかったときを〇、腐食による赤褐色などへの変色がみられたときを×と判定した。
【0047】
(7)耐冷熱性
各実施例および比較例に示す樹脂組成物を用いて、上記樹脂成形体の作製に記載の条件と同条件で射出成形を行い、80mm×80mm×3mm厚の試験片を作成した。その試験片を実施例および比較例に記載の方法で金属被覆した試験片を作成した。得られた金属被覆試験片を、(株)TABAI ESPEC製THERMAL SHOCK CHAMBER TSA-103ES冷熱試験機を用いて、-40℃で1時間冷却し、その後130℃で1時間加熱することを1サイクルとする条件で、冷却-加熱を繰り返し、めっき面のクラック発生有無を確認した。クラックの発生の有無については10サイクルに1回の頻度で目視確認を行った。クラックが発生するサイクル回数が、100サイクル以上であれば耐冷熱性は良好と判断できる。200サイクル以上が好ましく、500サイクル以上がより好ましい。クラック発生が100サイクル以上を〇、100サイクル未満を×と判定した。
【0048】
(8)熱伝導率
各実施例および比較例に示す樹脂組成物を用いて、上記樹脂成形体の作製に記載の条件と同条件で射出成形を行い、80mm×80mm×3mm厚の試験片を作成した。その試験片を実施例および比較例に記載の方法で金属被覆した試験片を作成した。得られた金属被覆試験片を、ホットディスク法熱物性測定装置(京都電子工業製 TPS-2500S)のスラブ法により熱伝導率を測定した。ホットディスク法で得られる熱伝導率が10W/m・K以上であれば、熱伝導性が良好であると判断できる。
【0049】
(9)難燃性
各実施例および比較例に示す樹脂組成物を用いて、上記樹脂成形体の作製に記載の条件と同条件で射出成形を行い、125mm×13mm×0.8mm厚の棒状試験片を作成した。その試験片を実施例および比較例に記載の方法で金属被覆した試験片を作成した。得られた金属被覆試験片を、UL94に準拠して燃焼性を評価した。試験は10本を行い、UL94に従って判定を行った。
【0050】
【0051】
【0052】
実施例および比較例の結果より、以下のことが明らかである。
【0053】
実施例1~4と比較例1~3の比較から、金属層の厚さが30μm以上100μm未満である金属被覆樹脂成形体が、機械特性、耐冷熱性、熱伝導性、難燃性に優れることがわかる。
【0054】
実施例1と比較例4の比較から、前記樹脂成形体を構成する樹脂100重量部に対し、難燃剤含有量が5重量部未満である金属被覆樹脂成形体が、耐乾熱性に優れることがわかる。
【0055】
実施例4と比較例5の比較から、体積抵抗値が1.0×1013Ω・m以上を有する樹脂成形体の表面全体に、金属層が形成されている金属被覆成形体が、機械特性に優れることがわかる。