IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEスチール株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-フロアクロスメンバ 図1
  • 特開-フロアクロスメンバ 図2
  • 特開-フロアクロスメンバ 図3
  • 特開-フロアクロスメンバ 図4
  • 特開-フロアクロスメンバ 図5
  • 特開-フロアクロスメンバ 図6
  • 特開-フロアクロスメンバ 図7
  • 特開-フロアクロスメンバ 図8
  • 特開-フロアクロスメンバ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068734
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】フロアクロスメンバ
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B62D25/20 G
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180005
(22)【出願日】2021-11-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】樋貝 和彦
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 毅
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB06
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB20
3D203BB22
3D203CA02
3D203CA07
3D203CA25
3D203CA52
3D203CA53
3D203CA69
3D203CB04
(57)【要約】
【課題】軽量化が可能で、制振性にも優れるフロアクロスメンバを提供する。
【解決手段】本発明に係るフロアクロスメンバ1は、フロア3と、フロア3の車体幅方向の両端部に設けられて車体前後方向に延在する一対のサイドシル5と、フロア3の車体幅方向中央部に位置して車体前後方向に延在するフロアトンネル7と、フロアトンネル7とサイドシル5との間で車体前後方向に延在してフロア3の下面に固定されるフロアフレーム9とを備えた車体構造において、フロア3の上面において、一端がサイドシル5に、他端がフロアトンネル7にそれぞれ固定され、平面視でフロアフレーム9と交差するように配置されるものであって、天板部11a、縦壁部11b及びフランジ部11cを有するハット断面部材11と、ハット断面部材11の内面及び/又は外面に貼付又は塗布された樹脂13と、樹脂13を覆うように配設されて樹脂13と接着された補強板15とを備えてなる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の床部分の少なくとも一部を構成するフロアと、該フロアの車体幅方向の両端部に設けられて車体前後方向に延在する一対のサイドシルと、前記フロアの車体幅方向中央部に位置して車体前後方向に延在するフロアトンネルと、該フロアトンネルと前記サイドシルとの間で車体前後方向に延在して前記フロアの下面に固定されるフロアフレームとを備えて構成された車体構造において、
前記フロアの上面において、一端が前記サイドシルに、他端が前記フロアトンネルにそれぞれ固定され、平面視で前記フロアフレームと交差するように配置されるフロアクロスメンバであって、
天板部、縦壁部及びフランジ部を有するハット断面部材と、
該ハット断面部材の内面及び/又は外面に貼付又は塗布された樹脂と、
該樹脂を覆うように配設されて該樹脂と接着された補強板とを備えたことを特徴とするフロアクロスメンバ。
【請求項2】
前記樹脂は、前記フロアの上面に配置した状態において、前記ハット断面部材における前記フロアフレームよりも車体幅方向外側に位置する範囲にのみ設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフロアクロスメンバ。
【請求項3】
前記樹脂は、前記ハット断面部材の前記縦壁部のみに設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフロアクロスメンバ。
【請求項4】
前記樹脂の厚みが0.1~5mm、前記補強板の厚みが0.15~1mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフロアクロスメンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の下部を構成する骨格部品であるフロアクロスメンバに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の骨格部品の一つであるフロアクロスメンバ19は、図9に示すように、自動車床を構成するフロア3(フロアパネル)上において車体幅方向に延在することで車体の剛性や強度を向上させる機能を有するものである。また、フロア3下にバッテリーケースが搭載される電気自動車においては、側面衝突時に生じるサイドシル5側からの入力荷重がバッテリーケースに入力することを防ぐ機能も有する。
【0003】
したがって、フロアクロスメンバ19は高レベルな強度が求められる部品である。そこでフロアクロスメンバ19の剛性を向上させるため、厚肉化やHP1.5GPを超える超ハイテン化が進んでいるが、これに伴う重量アップや製造コストが課題となっている。そこで下記のように車両構造変更に関わる多くの技術が存在している。
【0004】
例えば特許文献1では、「車両のフロアパネルと、前記フロアパネルの下方に車幅方向に互いに離間して配置され車両前後方向に延びる一対のサイドメンバと、前記フロアパネルの上方に前記車幅方向に延びて配置されるフロアクロスメンバと、を備えた車体のフロア構造であって、前記一対のサイドメンバの間において、前記フロアクロスメンバの下部には前記サイドメンバの外側の下部より上方に位置する凹部を有し、前記フロアパネルは前記凹部に沿って形成され、前記一対のサイドメンバに着脱可能に連結される強度部材を備えたことを特徴とする車体のフロア構造」が開示されている。
上記技術は、フロアクロスメンバの下部に、上側に凹む凹部が設けられていることにより、フロアパネル下のスペースを増加させて電池ユニットの搭載スペースを確保する効果がある。また、エンジン車においては、上記強度部材(ブレース)によって一対のサイドメンバを連結することで、側面衝突に対する強度を確保できる。
【0005】
また、特許文献2では、「車両のフロアと、前記フロア下に搭載されたバッテリパックと、前記バッテリパック上方を横切るように車両左右方向に延びて前記フロアに設けられたクロスメンバと、備え、前記クロスメンバは、右半分および左半分のそれぞれに中央に向けて高くなる傾斜部を有する、車両の下部車体構造」が開示されている。
上記技術は、側面衝突時、傾斜部が衝突荷重を中央部に伝えて中央部を押し上げ、クロスメンバが上方に向けて屈曲するので、バッテリパックがある下方への変形が抑止される。これにより、バッテリパックへの衝突荷重の入力が抑制される。
【0006】
特許文献3では、「車両のフロアパネルの車両幅方向の両外側にそれぞれ配設され、車両前後方向に沿って延在された一対のロッカと、車両幅方向を長手方向として配置されると共に長手方向の両端部が前記一対のロッカにそれぞれ固定され、車両前後方向に離間して配置された複数のクロスメンバと、を備え、車両前後方向に隣り合うクロスメンバの離間距離は、前記車両の側面衝突時に入力された入力荷重に対する前記ロッカの曲げ反力が前記入力荷重以上となるように設定されている車両側部構造」が開示されている。
上記技術は、車両の側面衝突時において必要なサイドシル(ロッカ)の曲げ反力Nを確保することができ、例えばポール衝突の際に、ポールの車両幅方向の内側への侵入を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-161934号公報
【特許文献2】特開2019-151294号公報
【特許文献3】特開2019-31219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1の技術は、側面衝突に対して一定の効果をもたらす一方で、部品点数の増加によって重量やコストが増加し、車体製造が複雑化する。
また、特許文献2の技術は、バッテリーケースの変形が抑えられるが、フロアクロスメンバが上方(車両内部方向)に向かって凸となるように屈曲しているため、キャビン容積が低下して設計自由度が著しく低下する。
また、特許文献3の技術は、車両の側面衝突時において必要なサイドシルの曲げ反力Nを確保することができるが、フロアクロスメンバの設置位置が限定される。フロアクロスメンバはシートレールの固定にも使用されるので、フロアクロスメンバの設置位置が限定されると車両設計の自由度が大幅に低下する。
【0009】
上述のように、フロアクロスメンバの剛性及び強度向上や、バッテリーを搭載するバッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)やハイブリッド車(HV)等の自動車の側面衝突時に発生するサイドシルからの大荷重がバッテリーケースに入力することを防ぐ機能向上の技術開示は多くあるが、大幅な重量アップや製造コストアップを伴ったり、車両設計の自由度を低下させたりするという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、側面衝突時にバッテリーを搭載した自動車のバッテリーケースの変形を抑制するとともに、軽量化が可能で、制振性にも優れ、キャビン容積を低下させたり車両設計の自由度を低下させたりすることのないフロアクロスメンバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係るフロアクロスメンバは、車体の床部分の少なくとも一部を構成するフロアと、該フロアの車体幅方向の両端部に設けられて車体前後方向に延在する一対のサイドシルと、前記フロアの車体幅方向中央部に位置して車体前後方向に延在するフロアトンネルと、該フロアトンネルと前記サイドシルとの間で車体前後方向に延在して前記フロアの下面に固定されるフロアフレームとを備えて構成された車体構造において、前記フロアの上面において、一端が前記サイドシルに、他端が前記フロアトンネルにそれぞれ固定され、平面視で前記フロアフレームと交差するように配置されるものであって、天板部、縦壁部及びフランジ部を有するハット断面部材と、該ハット断面部材の内面及び/又は外面に貼付又は塗布された樹脂と、該樹脂を覆うように配設されて該樹脂と接着された補強板とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記樹脂は、前記フロアの上面に配置した状態において、前記ハット断面部材における前記フロアフレームよりも車体幅方向外側に位置する範囲にのみ設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記樹脂は、前記ハット断面部材の前記縦壁部のみに設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記樹脂の厚みが0.1~5mm、前記補強板の厚みが0.15~1mmであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るフロアクロスメンバは、天板部、縦壁部及びフランジ部を有するハット断面部材と、該ハット断面部材の内面及び/又は外面に貼付又は塗布された樹脂と、該樹脂を覆うように配設されて該樹脂と接着された補強板とを備えたことにより、剛性が向上するとともに、軽量化が可能であり、制振性にも優れる。
また、フロアクロスメンバの設置位置を限定するものではないので、車両設計の自由度を低下させることがない。さらに、従来のフロアクロスメンバの形状を大きく変える必要もないのでキャビン容積が小さくなることもない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係るフロアクロスメンバを説明する図である。
図2図1のフロアクロスメンバの比較例として、従来のフロアクロスメンバの断面を示す図である。
図3図1のフロアクロスメンバの縦壁部の面剛性を評価するためのモデル(発明モデル)と、図2の従来のフロアクロスメンバの縦壁部の面剛性を評価するためのモデル(従来モデル)を説明する図である。
図4図3の従来モデルと発明モデルの面剛性を評価した結果を示すグラフである。
図5】側面衝突時におけるフロアクロスメンバの変形状態を説明する図である。
図6図1のフロアクロスメンバの他の態様を説明する図である。
図7】実施例に係る試験体の一例を示す図である。
図8】実施例に係る発明例4及び比較例1の衝突試験時の荷重-ストローク曲線を示す図である。
図9】車体の下部構造を示す斜視図であり、フロアクロスメンバの設置状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施の形態に係るフロアクロスメンバ1は、図9に示したような車体の下部構造において、フロア3上に車体幅方向に延在するように設けられ、車体の剛性や強度を向上させるものである。
以下、図1を用いて具体的に説明する。なお、図1の斜視図は、図9における一対のサイドシル5の一方からフロアトンネル7までの間の部分を拡大して示したものであり、図9で図示を省略したフロアフレーム9も図中に示されている。図1において図9と対応する部分には同一の符号を付す。
【0018】
本実施の形態のフロアクロスメンバ1は、図1に示すように、車体の床部分の少なくとも一部を構成するフロア3と、フロア3の車体幅方向の両端部に設けられて車体前後方向に延在する一対のサイドシル5と、フロア3の車体幅方向中央部に位置して車体前後方向に延在するフロアトンネル7と、フロアトンネル7とサイドシル5との間で車体前後方向に延在してフロア3の下面に固定されるフロアフレーム9とを備えて構成された車体構造において、フロア3の上面において、一端がサイドシル5に、他端がフロアトンネル7にそれぞれ固定され、平面視でフロアフレーム9と交差するように配置されるものである。
なお、これらの部材は、図1の黒点で示す部分でスポット溶接されている。
【0019】
上述したフロアクロスメンバ1は、図1のA-A断面図に示すように、ハット断面形状の部品であり、金属製のハット断面部材11と、ハット断面部材11の内面に貼付又は塗布された樹脂13と、樹脂13を覆うように配設された補強板15とを備えている。
フロアクロスメンバ1の各構成について詳細に説明する。
【0020】
<ハット断面部材>
ハット断面部材11は、天板部11a、縦壁部11b及びフランジ部11cを有するハット断面形状の金属製(例えば鋼板製)の部材である。ハット断面部材11のフランジ部11cがフロア3の上面に接合されており、天板部11a及び縦壁部11bに連続する接合しろ11dがサイドシル5(具体的にはサイドシル5を構成し、車体内側に配置されるサイドシルインナ5a)に接合されている。ハット断面部材11の素材としては、強度及び剛性を高めるため、例えば980MPa以上の高強度ハイテン材が用いられる。
【0021】
<樹脂>
樹脂13は、ハット断面部材11の内面に所定の接着強度で貼付又は塗布されたものである。樹脂13は、予め成形されたもの(射出成形樹脂部品)をハット断面部材11に貼付してもよいし、成形前の材料をハット断面部材11に塗布して焼付することによって形成してもよい。
【0022】
樹脂13の厚みの下限は、樹脂13を塗布して形成する場合には均一に塗布可能な0.1mm程度、フィルム状の樹脂13を貼付する場合には20μm程度となる。
また、樹脂13の厚みの上限は、コストの観点から5mm程度とするのが好ましい。
【0023】
<補強板>
補強板15は、樹脂13を覆うように設けられるものであり、樹脂13と補強板15は所定の強度で接着されている。また、補強板15の端部は、ハット断面部材11の縦壁部11bにスポット溶接によって固定されている。
補強板15は、ハット断面部材11の縦壁部11bより樹脂13が剥離するのを防止し、後述するように樹脂と協働して縦壁部11bの面剛性を向上して、フロアクロスメンバ1の剛性を向上するものである。
【0024】
本実施の形態における縦壁部11bの面剛性向上の効果は、後述するように補強板15の素材の引張強度に大きく依存しないため、ハット断面部材11の素材よりも引張強度は低くてもよく、製造コスト低減の観点から、引張強度270MPa級~590MPa級でよい。また、補強板15は、樹脂13がハット断面部材11の縦壁部11bから剥離するのを防止すればよいので、補強板15の板厚はハット断面部材11の素材の板厚よりも薄肉でよく、軽量化及び製造コスト低減の観点から、板厚0.15~1mmの鋼板がよい。
引張強度270MPa級~590MPa級としたのは、270MPa級が通常使用される鋼板において最も引張強度が低く、590MPa級を越えるとコストが大きく上昇するためである。この範囲の中では、特にJIS規格SPCC等の普通鋼と呼ばれる安価な一般的な冷間圧延鋼板のグレードである270MPa級(いわゆる、軟鋼)がコスト面から好ましい。また、板厚0.15~1mmとしたのは、0.15mm未満では製造コストが上昇し、1mmを超えると軽量化効果が低下するためである。
【0025】
上述した本実施の形態のフロアクロスメンバ1が、従来の一般的なフロアクロスメンバ19と比べて、剛性を向上させ、かつ軽量化も可能である理由について以下に説明する。
【0026】
従来の一般的なフロアクロスメンバ19は、図2に示すように、金属製のハット断面部材11のみで構成されていたが、この場合、強度及び剛性を高めるには、ハット断面部材11の板厚を厚くする必要があり、重量が増加していた。
【0027】
この点、ハット断面部材11に樹脂13と補強板15を設けた本実施の形態のフロアクロスメンバ1は、樹脂13と補強板15を設けた部分の見かけの板厚が厚くなっているが、金属よりも低密度の樹脂13を用いているので、従来のようにハット断面部材11自体の板厚を厚くする場合と比べて重量が増加しにくい。
【0028】
そして、金属製のハット断面部材11と補強板15で樹脂13を挟んでサンドイッチ構造としたことにより、縦壁部11bの面剛性を向上させることができる。ここで、縦壁部11bの面剛性とは、縦壁部11bの端部より縦壁部11bの面内方向に荷重が入力し、座屈変形が開始する前の剛性(曲げ剛性)である。この点について、図3図4に基づいて説明する。
【0029】
図3に、従来のフロアクロスメンバ19(図2参照)の面剛性を評価するためのモデルとして、鋼板(ハット断面部材11)のみから構成された従来モデルと、本実施の形態のフロアクロスメンバ1(図1(b)参照)の面剛性を評価するためのモデルとして、サンドイッチ構造とした発明モデルを示す。図3において図1図2と対応する部分には同一の符号を付す。
従来モデルのような鋼板単体の曲げ剛性(面剛性)は一般的に材料のヤング率Eと、断面2次モーメントIとの積EIで与えられる。
これに対し、発明モデルのようにサンドイッチ構造となっている場合の面剛性EIは、下記式(1)を用いて求めることができる。
【0030】
【数1】
【0031】
上記式(1)において、Lは積層材の幅、iは材料、nは層の数、Eiは材料iのヤング率、hiはi=1の材料から材料iの層までの厚み、λはi=1の材料の表面から積層材の中立面までの距離である。
【0032】
図3の従来モデルと発明モデルを略同一の重量とした場合の面剛性EIの違いを比較したのでその結果を図4に示す。
図4は、従来モデルのハット断面部材11の厚みを1.2t(総厚み1.2t)として算出した面剛性EIと、発明モデルのハット断面部材11の厚みを0.6t、樹脂13の厚みを1.5t、補強板15の厚みを0.3t(総厚み2.4t)とし、式(1)を用いて算出した面剛性EIを比較したものである。図4における両モデルの重量比は、従来モデルの重量を基準(1.00)としたとき、発明モデルは0.97であった。
図4に示されるように、発明モデルの面剛性(1.65×10-7GPa・m4)は従来モデル(0.31×10-7GPa・m4)の5.3倍に向上した。このように、発明モデルのハット断面部材11(金属製)の板厚を従来モデルよりも薄くして、金属よりも低密度でヤング率の低い樹脂13に置き換えて、補強板15とのサンドイッチ構造の総厚みを従来モデルの板厚よりも厚くすることにより、発明モデルは、従来モデルと同程度の重量でも面剛性を著しく上昇させることができる。
【0033】
樹脂13及び補強板15は、フロアクロスメンバ1の全長に亘って設けてもよいが、軽量化の観点から、側面衝突時に変形が生じやすい場所にのみ設けるようにしてもよい。そこで、側面衝突時における従来のフロアクロスメンバ1の変形状態を図5に基づいて説明する。
【0034】
図5は、車体の側面がポール17に衝突した場合のフロアクロスメンバ1の変形の様子を模式的に示した平面図である。図5(a)は衝突前の状態、図5(b)は図中の黒矢印方向に車体が移動してポール17に衝突した状態を示している。
フロアクロスメンバ1は、長手方向におけるフロアトンネル7寄りの範囲に図示しないFrフレームエクステンションやその他フレームが接合されていることが多いので、相対的にサイドシル5側の変形耐力が低くなり、変形が生じやすい。
【0035】
特に、フロア3の下面に固定されたフロアフレーム9よりも車体幅方向外側に位置する範囲に樹脂13及び補強板15を設けるようにするとよい。フロアフレーム9が固定された部分はフロア3が変形しにくいので、平面視でフロアフレーム9と交差するフロアクロスメンバ1においても、当該部分より車体幅方向外側の範囲が特に変形が生じやすい。
したがって、フロアフレーム9よりも車体幅方向外側に位置する範囲にのみ樹脂13及び補強板15を設けるようにすれば、特に変形が生じやすい範囲を補強しつつ、効率的に軽量化できるのでより好ましい。
また、平面視でフロアクロスメンバ1とフロアフレーム9と交差する位置は、フロアクロスメンバ1におけるサイドシル5側の端部から全長のおよそ50%以内の範囲であるので、この範囲に樹脂13及び補強板15を設けるようにすれば、変形が生じやすいサイドシル5側を補強すると共に軽量化を図れるので好ましい。
【0036】
また、図5(b)に示すように、衝突部分の両側のフロアクロスメンバ1の変形は、衝突部分に向かって屈曲する折れモードとなることが多い。
図5(b)のような折れモードの変形時には、天板部11aが面内変形となるのに対し、縦壁部11bは面外変形となるので、縦壁部11bは天板部11aより変形しやすい。
したがって、図6に示すように、ハット断面部材11の縦壁部11bのみに樹脂13及び補強板15を設けるようにすれば、折れモードの変形に効果的であると共に軽量化が期待できる。
【0037】
なお、ハット断面部材11と樹脂13と補強板15とが一体となって荷重を受けることで面剛性が効果的に向上するので、ハット断面部材11と樹脂13、及び、樹脂13と補強板15は所定の強度で接着されている必要がある。この点について具体例をあげて説明する。
【0038】
例えば、ハット断面部材11の板厚を1.0mm、樹脂13の厚みを1.0mm、補強板15(鉄製)の板厚を0.6mmとした場合、ハット断面部材11と樹脂13、樹脂13と補強板15とがそれぞれ接着されていれば、面剛性EIは271.5GPa・mm4となる(鉄のヤング率を206GPa、樹脂13のヤング率を2GPaとした)。ここで、樹脂13と補強板15が接着されていない場合には、接着されているハット断面部材11と樹脂13の面剛性EIは19.3GPa・mm4、補強板15単体の面剛性EIは3.7GPa・mm4であるので、合計しても23GPa・mm4となり、全体としての面剛性が著しく低下する。
したがって、ハット断面部材11と樹脂13と補強板15が一体で荷重を受けられるよう、ハット断面部材11と樹脂13が十分な強度で接着され、かつ、樹脂13と補強板15が十分な強度で接着されていることが重要である。
【0039】
接着強度としては、例えば5MPa以上が好ましい。接着強度が5MPa以上あれば、図5のような折れモードの変形において、90°程度までの曲げ変形であれば、鋼板から接着剤が剥離しない。
なお、フロアクロスメンバ1の端部に関しては、衝突の初期に軸圧壊して蛇腹状に座屈変形する場合があり(図5(b)参照)、曲げ変形よりも変形量が大きくなる。変形の初期に樹脂13が剥離すると、次の(蛇腹)変形時の耐力が低下するため、軸圧壊のように大きな変形が想定される部位は接着強度を10MPa以上とするのがより好ましい。
また、図5のように2つのフロアクロスメンバ1の間にポール17が衝突するような場合は、フロアクロスメンバ1の変形が折れモードとなるが、1つのフロアクロスメンバ1の軸方向にポール17が衝突する場合には、フロアクロスメンバ1の変形量は図5(b)の場合よりもさらに大きくなる。そのような場合にも接着強度を10MPa以上としておけば、樹脂13の剥離を防止できる。
【0040】
<樹脂厚の決定方法>
前述したように、本発明はフロアクロスメンバ1の樹脂13の厚みを限定するものではないが、樹脂13が薄すぎると縦壁部11bの面剛性向上の効果が低くなり、厚すぎると軽量化の効果が低くなる場合がある。よって、両者のバランスを考慮して樹脂厚を決定するのが好ましい。以下に、そのような樹脂厚の決定方法の一例について説明する。
【0041】
まず、検討のベースとなるようなハット断面部材11を用意し、重量と、縦壁部11bの面剛性を求める。
ここでは、板厚1.6mmの鋼板製のハット断面部材13を用意し、重量(フロアの重量を含む)と縦壁部11bにおける面剛性を求めた(下記表1の≪ベース≫参照)。
【0042】
次に、本実施の形態に係るフロアクロスメンバ1を構成するハット断面部材11として、上記ベースとなるハット断面部材11の板厚よりも板厚が薄いものを用意する。
ここでは、板厚0.8mm≪No.1≫、1.0mm≪No.2≫、1.2mm≪No.3≫の3種類のハット断面部材11を用意した。補強板15は、板厚0.4mmの鋼板製のものを用いることした(≪No.1≫~≪No.3≫で共通)。
【0043】
上記≪No.1≫~≪No.3≫のハット断面部材11と補強板15を用いて図1のようなフロアクロスメンバ1を構成する場合に、縦壁部11bの面剛性が≪ベース≫の面剛性と同程度になるように調整したときの樹脂厚を求めた(A)。
また、フロアクロスメンバ1の重量が≪ベース≫の重量と同程度になるように調整したときの樹脂厚を求めた(B)。その結果を表1に示す。
なお、表1の重量にはフロア3の重量(0.9kg共通)も含まれている。また、面剛性は縦壁部11bにおけるものとする。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示す≪No.1≫~≪No.3≫のAは、ハット断面部材11の板厚を≪ベース≫よりも薄くして、鋼板よりもヤング率の低い樹脂13を設け、補強板15とのサンドイッチ構造の総厚みを≪ベース≫の板厚よりも厚くして≪ベース≫の面剛性(70GPa・mm4)と同程度の面剛性を確保しつつ、鋼板よりも低密度の樹脂を用いることによる軽量化の効果を最大化したものである。その軽量化率は、≪No.1≫で21%、≪No.2≫で12%、≪No.3≫で4%となっている。
【0046】
一方、≪No.1≫~≪No.3≫のBは、≪ベース≫の重量(3.59kg)と同程度の重量となるまで樹脂厚を厚くし、Aよりもサンドイッチ構造の総厚みを厚くして、面剛性向上の効果を最大化したものである。その面剛性向上率は、≪No.1≫で1599%、≪No.2≫で796%、≪No.3≫で171%となっている。
【0047】
表1の結果に基づき、≪ベース≫よりも面剛性を低下させずに最大限軽量化できるAの場合の樹脂厚を下限値とし、≪ベース≫よりも重量を増加させずに最大限面剛性を向上できるBの場合の樹脂厚を上限値として、樹脂厚を決定する。したがって、≪No.1≫(ハット断面部材11の板厚hc=0.8mm、補強板15の板厚hp=0.4mm)の場合は、0.45mm~4.0mmの範囲内で樹脂厚を設定すればよい。同様に、≪No.2≫(ハット断面部材11の板厚hc=1.0mm、補強板15の板厚hp=0.4mm)の場合は、0.25mm~2.5mmの範囲内、≪No.3≫(ハット断面部材11の板厚hc=1.2mm、補強板15の板厚hp=0.4mm)の場合は、0.02mm~0.8mmの範囲内で樹脂厚を設定すればよい。
上記のようにすることで、軽量化と面剛性(曲げ剛性)向上のバランスを考慮して樹脂13の厚みを決定することができる。
【0048】
以上のように、本実施の形態によれば、ハット断面部材11の内面に貼付又は塗布された樹脂13と、樹脂13を覆うように配設されて接着された補強板15とを備えたことにより、剛性が向上すると共にフロアクロスメンバ1の軽量化も可能である。
また、フロアクロスメンバ1の設置位置を限定するものではないので、車両設計の自由度を低下させることもなく、キャビン容積を小さくするものでもない。
なお、本実施の形態は、制振性も向上させることができる。この点については、後述の実施例で具体的に説明する。
【0049】
上記の実施の形態ではフロアクロスメンバ1のハット断面部材11の内面に樹脂13及び補強板15が設けられた例を用いて説明したが、本発明はこれに限らず、ハット断面部材11の外面に樹脂13及び補強板15が設けられたものでもよい。また、ハット断面部材11の内面及び外面にそれぞれ樹脂13及び補強板15が設けられたものでもよい。
【実施例0050】
本発明の作用効果を評価する具体的な実験を行ったので、その結果について以下に説明する。
本実施例においては、フロアクロスメンバ1に相当するハット断面形状の部品と、フロア3に相当する平板とからなる筒状の試験体(長さ200mm)を用意し、衝突特性を評価する衝突試験と、振動特性を評価する打撃振動試験を行った。
【0051】
上記試験体には、発明例として、図7のようにハット断面部材11の天板部11aと縦壁部11bの内側に樹脂13と補強板15を設けたものや、図6のように縦壁部11bの内側のみに樹脂13と補強板15を設けたものを用意した。
また、比較例として、図2のようにハット断面部材11のみから構成されるものを用意した。
試験体におけるハット断面部材11に鋼板を用い、平板には、いずれも板厚1.0mmの440MPaの鋼を用いた。
なお、図7において、図1と対応する部分には同一の符号を付す。
【0052】
衝突試験では、試験体の軸方向(長手方向)に試験速度8.9m/sの打撃パンチで荷重を入力し、試験体を200mmから180mmまで20mm軸方向に変形させた。その際の荷重とストローク(軸圧壊変形量)を計測して荷重-ストローク曲線を取得し、該荷重-ストローク曲線の最大荷重(kN)を試験体の衝突に対する耐力(衝突耐力と称す)とした。衝突耐力の最大値は、軸圧壊変形の開始直後の弾性変形を経て塑性変形に転じる際の荷重を示すものであり、この値が高いほど衝突時の変形が生じにくく、衝突特性が良好であると言える。
【0053】
打撃振動試験では、吊り下げた試験体の天板部11aのエッジ付近に加速度センサー(小野測器製:NP-3211)を取り付け、インパクトハンマ(小野測器製:GK-3100)で試験体の縦壁部11bを打撃加振し、インパクトハンマから得られる加振力と試験体で計測した加速度をFFTアナライザ(小野測器製:CF-7200A)に取り込み、周波数応答関数を算出した。ここで、周波数応答関数は、5回の打撃試験結果の平均化処理とカーブフィットにより算出した。そして、算出した周波数応答関数により振動モード解析を行い200HzにおけるAccelerance(m/s2/N)を算出した。
【0054】
試験体である発明例及び比較例の詳細(ハット断面部材11と補強板15の鋼板の引張強度と板厚、及び樹脂厚)と上記試験の結果を表2に示す。また、衝突試験において得られる荷重-ストローク曲線の一例として、発明例4と比較例1の荷重-ストローク曲線を図8に示す。
なお、表2において、「断面方向の樹脂・補強板の貼付け位置」に記載の「全周」とは、図7のようにハット断面部材11の天板部11aと縦壁部11bの内側に樹脂13と補強板15を設けたことを示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2に示すように、発明例1~4は、ハット断面部材11の長手方向全長に亘って、天板部11aと縦壁部11bに樹脂13と補強板15を設けた例である(図7参照)。
また、発明例5は、ハット断面部材11の全長の40%の範囲にのみ、天板部11aと縦壁部11bに樹脂13と補強板15を設けた例である(図7参照)。
また、発明例6は、ハット断面部材11の長手方向全長に亘って、縦壁部11bにのみ樹脂13と補強板15を設けた例である(図6参照)。
【0057】
発明例1は、比較例と比較して重量が-0.09kg(-3%)軽量化されつつ、衝突耐力は+60kN(+19%)増加し、制振性も大幅に低下した。
また、発明例2は樹脂厚が他の発明例よりも薄い例であるが、この場合にも比較例と比較して重量が-0.13kg(-4%)軽量化されつつ、衝突耐力は+10kN(+3%)増加し、制振性も大幅に低下した。
【0058】
上述のように発明例1、2は、比較例よりも軽量化しつつ、衝突耐力も向上できることが示された。
【0059】
発明例3は、比較例と比較して衝突耐力は同等(±0%)であるが、発明例1、2と比較して-0.35kg(-10%)減と、最も軽量化しており、制振性も大幅に向上した。
また、発明例4は、比較例と比較して+1.11kg(+31%)重量増とはなったが、衝突耐力は+290kN(+94%)増加し、比較例の約2倍となった。制振性も大幅に低下した。
【0060】
上述のように発明例3は、比較例と同等の衝突耐力で、重量を大きく低減できることが示された。
また、発明例4は、比較例よりも若干の重量増で、衝突耐力を大きく向上できることが示された。
【0061】
発明例5は、他の発明例よりも長手方向の樹脂13の貼付範囲が少ない例であるが、この場合にも比較例と比較して重量が-0.47kg(-13%)軽量化されつつ、衝突耐力は+20kN(+6%)増加し、制振性も大幅に低下した。
また、発明例6は、縦壁部11bのみに樹脂13を設けた例であるが、この場合にも比較例と比較して重量が-0.39kg(-11%)軽量化されつつ、衝突耐力は+30kN(+10%)増加し、制振性も大幅に低下した。
【0062】
上述のように長手方向の全長に亘って樹脂13を設けていない発明例5の場合にも、一定の衝突耐力向上効果があることが示された。
同様に、縦壁部11bのみに樹脂13を設けた発明例6の場合にも、一定の衝突耐力向上効果があることが示された。
【符号の説明】
【0063】
1 フロアクロスメンバ
3 フロア
5 サイドシル
5a サイドシルインナ
7 フロアトンネル
9 フロアフレーム
11 ハット断面部材
11a 天板部
11b 縦壁部
11d 接合しろ
11c フランジ部
13 樹脂
15 補強板
17 ポール
19 フロアクロスメンバ(従来例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の床部分の少なくとも一部を構成するフロアと、該フロアの車体幅方向の両端部に設けられて車体前後方向に延在する一対のサイドシルと、前記フロアの車体幅方向中央部に位置して車体前後方向に延在するフロアトンネルと、該フロアトンネルと前記サイドシルとの間で車体前後方向に延在して前記フロアの下面に固定されるフロアフレームとを備えて構成された車体構造において、
前記フロアの上面において、一端が前記サイドシルに、他端が前記フロアトンネルにそれぞれ固定され、平面視で前記フロアフレームと交差するように配置されるフロアクロスメンバであって、
天板部、縦壁部及びフランジ部を有する金属製のハット断面部材と、
該ハット断面部材の縦壁部の内面及び/又は外面にのみ貼付又は塗布された樹脂と、
該樹脂を覆うように配設されて該樹脂と接着された金属製の補強板とのサンドイッチ構造を備え、該縦壁部の面剛性を向上させたものであり、
前記ハット断面部材は、前記樹脂及び前記補強板を備えたことによる前記フロアクロスメンバの重量の増加を抑え、前記縦壁部の面剛性を低下させない範囲で、該ハット断面部材の板厚を薄くしたことを特徴とするフロアクロスメンバ。
【請求項2】
車体の床部分の少なくとも一部を構成するフロアと、該フロアの車体幅方向の両端部に設けられて車体前後方向に延在する一対のサイドシルと、前記フロアの車体幅方向中央部に位置して車体前後方向に延在するフロアトンネルと、該フロアトンネルと前記サイドシルとの間で車体前後方向に延在して前記フロアの下面に固定されるフロアフレームとを備えて構成された車体構造において、
前記フロアの上面において、一端が前記サイドシルに、他端が前記フロアトンネルにそれぞれ固定され、平面視で前記フロアフレームと交差するように配置され、
天板部、縦壁部及びフランジ部を有する金属製のハット断面部材と、
該ハット断面部材の縦壁部の内面及び/又は外面にのみ貼付又は塗布された樹脂と、
該樹脂を覆うように配設されて該樹脂と接着された金属製の補強板とのサンドイッチ構造を備えたフロアクロスメンバの製造方法であって、
必要な面剛性を有するベースとなる金属製のハット断面部材のベース板厚、ベース面剛性及びベース重量を設定し、
板厚が前記ベース板厚より薄く、面剛性が前記ベース面剛性よりも低下させない場合の樹脂厚を下限値として求め、
重量がベース重量より増加せずに最大限面剛性を向上できる場合の樹脂厚を上限値として求め、
前記下限値と上限値の間で樹脂厚を設定することを特徴とするフロアクロスメンバの製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の床部分の少なくとも一部を構成するフロアと、該フロアの車体幅方向の両端部に設けられて車体前後方向に延在する一対のサイドシルと、前記フロアの車体幅方向中央部に位置して車体前後方向に延在するフロアトンネルと、該フロアトンネルと前記サイドシルとの間で車体前後方向に延在して前記フロアの下面に固定されるフロアフレームとを備えて構成された車体構造において、
前記フロアの上面において、一端が前記サイドシルに、他端が前記フロアトンネルにそれぞれ固定され、平面視で前記フロアフレームと交差するように配置され、
天板部、縦壁部及びフランジ部を有する金属製のハット断面部材と、
該ハット断面部材の縦壁部の内面及び/又は外面にのみ貼付又は塗布された樹脂と、
該樹脂を覆うように配設されて該樹脂と接着された金属製の補強板とのサンドイッチ構造を備えたフロアクロスメンバの製造方法であって、
必要な面剛性を有するベースとなる金属製のハット断面部材のベース板厚、ベース面剛性及びベース重量を設定し、
板厚が前記ベース板厚より薄く、面剛性が前記ベース面剛性よりも低下させない場合の樹脂厚を下限値として求め、
重量がベース重量より増加せずに最大限面剛性を向上できる場合の樹脂厚を上限値として求め、
前記下限値と上限値の間で樹脂厚を設定することを特徴とするフロアクロスメンバの製造方法。