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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068769
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】エレベータかご装置及びエレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/04 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B66B5/04 B
B66B5/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180075
(22)【出願日】2021-11-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 知
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304DA23
3F304DA29
3F304DA41
3F304EA18
(57)【要約】
【課題】 かごが設定加速度で下方へ移動した場合に、停止装置によってかごをかごレールに停止させることができるエレベータかご装置を提供する。
【解決手段】 エレベータかご装置においては、保持部は、移動部を当て止めする保持当止部と、第1方向と交差する第2方向への弾性復元力を保持当止部に加える保持弾性部と、を備え、移動部及び保持当止部は、互いに接触し合う接触面をそれぞれ備え、移動部及び保持当止部の接触面の少なくとも一方は、移動部が第1方向へ移動することに伴って保持当止部が第2方向と反対方向へ移動するように、第1方向へ行くにつれて第2方向へ行くように形成される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごと、
前記かごをかごレールに停止させる停止装置と、を備え、
前記停止装置は、
前記かごに固定される停止固定部と、
前記停止固定部と協働して前記かごを停止させる停止位置と、前記停止位置より下方である待機位置と、の間で、前記停止固定部に対して可動である停止可動部と、
前記停止可動部を前記停止位置へ移動させるために、前記停止可動部に上方への弾性復元力を加える停止弾性部と、
前記停止可動部と一体となって可動であり、前記停止可動部が上方へ移動することに伴って第1方向へ移動する移動部と、
前記移動部を保持し、前記かごが設定加速度で下方へ移動したときに前記移動部の保持を解除する保持部と、を備え、
前記保持部は、前記移動部を当て止めする保持当止部と、前記第1方向と交差する第2方向への弾性復元力を前記保持当止部に加える保持弾性部と、を備え、
前記移動部及び前記保持当止部は、互いに接触し合う接触面をそれぞれ備え、
前記移動部及び前記保持当止部の前記接触面の少なくとも一方は、前記移動部が前記第1方向へ移動することに伴って前記保持当止部が前記第2方向と反対方向へ移動するように、前記第1方向へ行くにつれて前記第2方向へ行くように形成される、エレベータかご装置。
【請求項2】
前記移動部の前記接触面は、前記第1方向へ行くにつれて前記第2方向へ行くような凸面のみで形成され、
前記保持当止部の前記接触面は、前記第1方向へ行くにつれて前記第2方向へ行くような凸面のみで形成される、請求項1に記載のエレベータかご装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記停止可動部が前記待機位置に位置するときに、起動前位置に位置し、前記停止可動部が前記停止位置に位置するときに、起動後位置に位置し、
前記保持当止部は、前記移動部が前記起動前位置と前記起動後位置との間の解除位置に位置するときに、前記移動部の保持を解除し、
前記かごが設定加速度未満で下方へ移動し、且つ、前記移動部が前記起動前位置に位置するときに、前記停止弾性部が前記移動部を介して前記保持当止部に前記第2方向と反対方向へ加える第1の力は、前記保持弾性部が前記保持当止部に前記第2方向へ加える第2の力以下であり、
前記かごが設定加速度で下方へ移動し、且つ、前記移動部が前記起動前位置から前記解除位置まで位置するときに、前記第1の力は、前記第2の力よりも、大きい、請求項2に記載のエレベータかご装置。
【請求項4】
前記停止装置は、前記かごが設定速度で移動したときに、前記停止可動部を前記停止位置まで移動させるように、前記保持当止部に前記第2方向と反対方向への力を加える停止加力部を備える、請求項1~3の何れか1項に記載のエレベータかご装置。
【請求項5】
前記停止加力部は、前記かごが設定速度で移動したときに、前記保持当止部に前記第2方向と反対方向への力を加えることを開始する、請求項4に記載のエレベータかご装置。
【請求項6】
前記停止装置は、前記かごが設定速度で移動したときに、前記停止可動部を前記停止位置まで移動させるように、前記移動部に前記第1方向への力を加える停止加力部を備える、請求項1~3の何れか1項に記載のエレベータかご装置。
【請求項7】
前記停止加力部は、前記かごが設定速度で移動したときに、前記移動部に前記第1方向への力を加えることを開始する、請求項6に記載のエレベータかご装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載のエレベータかご装置と、
前記かごをガイドするかごレールと、を備える、エレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エレベータかご装置及びエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、エレベータかご装置は、かごと、かごをかごレールに停止させる停止装置と備えている(例えば、特許文献1)。ところで、例えば、かごが設定加速度(例えば、定格加速度よりも大きい過加速度)で下方へ移動した場合に、停止装置によってかごをかごレールに停止させたいという要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-262472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、課題は、かごが設定加速度で下方へ移動した場合に、停止装置によってかごをかごレールに停止させることができるエレベータかご装置及びエレベータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
エレベータかご装置は、かごと、前記かごをかごレールに停止させる停止装置と、を備え、前記停止装置は、前記かごに固定される停止固定部と、前記停止固定部と協働して前記かごを停止させる停止位置と、前記停止位置より下方である待機位置と、の間で、前記停止固定部に対して可動である停止可動部と、前記停止可動部を前記停止位置へ移動させるために、前記停止可動部に上方への弾性復元力を加える停止弾性部と、前記停止可動部と一体となって可動であり、前記停止可動部が上方へ移動することに伴って第1方向へ移動する移動部と、前記移動部を保持し、前記かごが設定加速度で下方へ移動したときに前記移動部の保持を解除する保持部と、を備え、前記保持部は、前記移動部を当て止めする保持当止部と、前記第1方向と交差する第2方向への弾性復元力を前記保持当止部に加える保持弾性部と、を備え、前記移動部及び前記保持当止部は、互いに接触し合う接触面をそれぞれ備え、前記移動部及び前記保持当止部の前記接触面の少なくとも一方は、前記移動部が前記第1方向へ移動することに伴って前記保持当止部が前記第2方向と反対方向へ移動するように、前記第1方向へ行くにつれて前記第2方向へ行くように形成される。
【0006】
また、エレベータかご装置においては、前記移動部の前記接触面は、前記第1方向へ行くにつれて前記第2方向へ行くような凸面のみで形成され、前記保持当止部の前記接触面は、前記第1方向へ行くにつれて前記第2方向へ行くような凸面のみで形成される、という構成でもよい。
【0007】
また、エレベータかご装置においては、前記移動部は、前記停止可動部が前記待機位置に位置するときに、起動前位置に位置し、前記停止可動部が前記停止位置に位置するときに、起動後位置に位置し、前記保持当止部は、前記移動部が前記起動前位置と前記起動後位置との間の解除位置に位置するときに、前記移動部の保持を解除し、前記かごが設定加速度未満で下方へ移動し、且つ、前記移動部が前記起動前位置に位置するときに、前記停止弾性部が前記移動部を介して前記保持当止部に前記第2方向と反対方向へ加える第1の力は、前記保持弾性部が前記保持当止部に前記第2方向へ加える第2の力以下であり、前記かごが設定加速度で下方へ移動し、且つ、前記移動部が前記起動前位置から前記解除位置まで位置するときに、前記第1の力は、前記第2の力よりも、大きい、という構成でもよい。
【0008】
また、エレベータかご装置においては、前記停止装置は、前記かごが設定速度で移動したときに、前記停止可動部を前記停止位置まで移動させるように、前記保持当止部に前記第2方向と反対方向への力を加える停止加力部を備える、という構成でもよい。
【0009】
また、エレベータかご装置においては、前記停止加力部は、前記かごが設定速度で移動したときに、前記保持当止部に前記第2方向と反対方向への力を加えることを開始する、という構成でもよい。
【0010】
また、エレベータかご装置においては、前記停止装置は、前記かごが設定速度で移動したときに、前記停止可動部を前記停止位置まで移動させるように、前記移動部に前記第1方向への力を加える停止加力部を備える、という構成でもよい。
【0011】
また、エレベータかご装置においては、前記停止加力部は、前記かごが設定速度で移動したときに、前記移動部に前記第1方向への力を加えることを開始する、という構成でもよい。
【0012】
また、エレベータは、前記のエレベータかご装置と、前記かごをガイドするかごレールと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態に係るエレベータの要部正面図である。
図2図2は、同エレベータの要部正面図であって、(a)は停止装置が作動していない状態を示す図であり、(b)は停止装置が作動した状態を示す図である。
図3図3は、同停止装置の要部概要図である。
図4図4は、同停止装置の要部概要図であって、かごが加速度を有して下方へ移動した状態を示す図である。
図5図5は、同停止装置の要部概要図であって、かごが設定加速度で下方へ移動した状態を示す図である。
図6図6は、同停止装置の移動部及び保持当止部の移動の軌跡を示す図である。
図7図7は、同移動部及び保持当止部の拡大図である。
図8図8は、かごが設定加速度で下方へ移動したときに、同移動部の位置と同保持当止部に加えられる力との関係を示す図である。
図9図9は、同停止装置の要部概要図であって、かごが設定速度で移動した状態を示す図である。
図10図10は、図9の状態から、停止可動部が停止位置へ移動した状態を示す図である。
図11図11は、図10の状態から、かごが停止した状態を示す図である。
図12図12は、図11の状態から、停止可動部が待機位置へ移動した状態を示す図である。
図13図13は、他の実施形態に係る停止装置の要部概要図である。
図14図14は、同停止装置の要部概要図であって、かごが設定加速度で下方へ移動した状態を示す図である。
図15図15は、同停止装置の要部概要図であって、かごが設定速度で移動し、停止可動部が停止位置へ移動した状態を示す図である。
図16図16は、図15の状態から、かごが停止した状態を示す図である。
図17図17は、図16の状態から、停止可動部が待機位置へ移動した状態を示す図である。
図18図18は、さらに他の実施形態に係る移動部及び保持当止部の概要図である。
図19図19は、同移動部及び保持当止部の移動の軌跡を示す図である。
図20図20は、さらに他の実施形態に係る移動部及び保持当止部の概要図である。
図21図21は、同移動部及び保持当止部の移動の軌跡を示す図である。
図22図22は、さらに他の実施形態に係る移動部及び保持当止部の概要図である。
図23図23は、同移動部及び保持当止部の移動の軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、エレベータ及びエレベータかご装置における一実施形態について、図1図12を参照しながら説明する。なお、各図(図13図23も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0015】
図1に示すように、エレベータ1は、例えば、本実施形態のように、人が乗るかご2と、上下方向Zに沿って延び、かご2を上下方向Zへガイドするかごレール3,3と、かご2をかごレール3,3に停止させる停止装置4とを備えていてもよい。なお、かご2及び停止装置4を備える装置は、例えば、エレベータかご装置1aという。
【0016】
なお、図示していないが、エレベータ1は、例えば、かご2を上下方向Zへ移動させるかご駆動部を備えていてもよい。特に限定されないが、例えば、かご駆動部は、リニアモータであって、エレベータ1は、リニアモータ式の駆動方式であり、例えば、かご2に接続されるロープ等を備えていない、という構成でもよい。また、エレベータ1は、例えば、ロープ式の駆動方式である、という構成でもよく、また、例えば、油圧式の駆動方式である、という構成でもよい。
【0017】
かご2は、例えば、本実施形態のように、人が乗るかご室2aと、かご室2aの周囲に配置され、かご室2aに接続されるかご枠2bとを備えていてもよい。なお、かご枠2bは、例えば、図示しているかご室2aの下方だけでなく、かご室2aの上方及び側方にも配置されていてもよい。
【0018】
停止装置4は、例えば、かご2に固定される停止固定部5と、停止固定部5に対して可動である停止可動部6と、停止可動部6に上方への弾性復元力を加える停止弾性部7と、停止可動部6に接続され、停止弾性部7の弾性復元力を停止可動部6に伝達する伝達部8とを備えていてもよい。なお、本実施形態においては、停止装置4は、かご室2aよりも下方のかご枠2bに接続されているが、例えば、かご室2aよりも上方のかご枠2bに接続されていてもよい。
【0019】
停止可動部6は、例えば、停止固定部5と協働してかご2を停止させる停止位置(図2(b)参照)と、停止位置よりも下方である待機位置(図1及び図2(a)参照)との間で、停止固定部5に対して可動であってもよい。そして、例えば、停止可動部6が停止位置に位置するときに、停止可動部6と停止固定部5とが協働することによって、かご2は、かごレール3に停止する、という構成でもよい。
【0020】
特に限定されないが、例えば、停止可動部6は、楔状に形成されていてもよい。そして、例えば、停止可動部6が待機位置に位置する場合に、停止可動部6は、かごレール3から離れており、停止可動部6が停止位置まで移動した場合に、停止可動部6は、停止固定部5と接触し、停止固定部5と協働してかごレール3を挟み込むことによって、かご2をかごレール3に停止させる、という構成でもよい。
【0021】
なお、かごレール3の個数は、特に限定されず、例えば、本実施形態のように、二つでもよく、また、例えば、四つでもよい。また、停止固定部5及び停止可動部6の個数は、特に限定されず、例えば、本実施形態のように、二つでもよく、また、例えば、一つでもよく、かご2をかごレール3に停止できる個数であればよい。また、例えば、本実施形態のように、停止固定部5及び停止可動部6の個数は、かごレール3の個数と同じであってもよい。
【0022】
伝達部8は、例えば、本実施形態のように、かご枠2bに回転可能に接続される第1及び第2回転材8a,8bと、各端部が第1及び第2回転材8a,8bにそれぞれ回転可能に接続される長尺材8cとを備えていてもよい。そして、例えば、第1の停止可動部6は、第1回転材8aに回転可能に接続されており、第2の停止可動部6は、第2回転材8bに回転可能に接続されている、という構成でもよい。
【0023】
また、伝達部8は、例えば、本実施形態のように、かご枠2bに固定されて且つ停止弾性部7の第1端を保持する第1保持材8dと、長尺材8cに固定されて且つ停止弾性部7の第2端を保持する第2保持材8eとを備えていてもよい。そして、停止弾性部7は、例えば、本実施形態のように、長尺材8cの長手方向へ弾性変形する、という構成でもよい。
【0024】
これにより、停止弾性部7の弾性復元力は、伝達部8によって、停止可動部6に上方への力として伝達される。そして、各停止可動部6は、停止弾性部7の弾性復元力によって、連動して上方へ移動する。なお、特に限定されないが、停止弾性部7は、例えば、本実施形態のように、弦巻ばねとしてもよい。
【0025】
なお、停止装置4は、例えば、本実施形態のように、停止可動部6と一体となって停止固定部5に対して可動である移動部9と、移動部9を保持する保持部10とを備えていてもよい。特に限定されないが、移動部9は、例えば、本実施形態のように、第1回転材8aに配置されていてもよい。
【0026】
これにより、図2(a)に示すように、保持部10が移動部9を保持し、停止可動部6が停止位置に位置している場合には、停止弾性部7は、弾性変形しており、停止弾性部7の弾性復元力は、伝達部8を経由して、停止可動部6に加えられている。即ち、停止弾性部7は、停止可動部6に、待機位置から停止位置まで移動するような上方への弾性復元力を加えている。
【0027】
一方で、図2(b)に示すように、保持部10による移動部9の保持が解除された場合には、移動部9と停止可動部6とは、停止弾性部7の弾性復元力によって一体となって移動する。具体的には、移動部9は、第1方向D1(図3参照)へ移動し、停止可動部6は、停止位置まで上方へ移動する。
【0028】
これにより、停止可動部6と停止固定部5とが協働することによって、かご2は、かごレール3に停止する。このように、停止弾性部7の弾性復元力が、停止可動部6に加えられており、保持部10による移動部9の保持が解除された場合に、停止可動部6が停止位置へ移動することによって、かご2をかごレール3に停止させることができる。
【0029】
特に限定されないが、移動部9が移動する第1方向D1は、例えば、本実施形態のように、上方向D1(詳細には、第1回転材8aの上方への回転方向)としてもよい。即ち、停止可動部6が上方へ移動することに伴って、移動部9は、上方向D1へ移動する、という構成でもよい。なお、第1方向D1は、例えば、下方向でもよく、また、例えば、横方向でもよい。
【0030】
ところで、図1及び図2に示すように、停止装置4は、例えば、本実施形態のように、かご2が設定加速度で下方へ移動したときに、停止可動部6を停止位置へ移動させる第1停止機構4aと、かご2が設定速度で移動したときに、停止可動部6を停止位置へ移動させる第2停止機構4bとを備えていてもよい。
【0031】
ここで、第1停止機構4aの構成について、図3を参照しながら説明する。なお、第1停止機構4aは、過加速度停止機構ともいう。また、第1停止機構4aの構成は、以下の構成に限定されない。
【0032】
第1停止機構4aは、例えば、本実施形態のように、停止固定部5、停止可動部6、停止弾性部7、伝達部8、移動部9、及び保持部10によって、構成されていてもよい。そして、第1停止機構4aは、例えば、かご2が設定加速度で下方へ移動したときに、保持部10による移動部9の保持を解除させることによって、停止可動部6を停止位置へ移動させる、という構成でもよい。
【0033】
図3に示すように、保持部10は、例えば、本実施形態のように、移動部9を当て止めする保持当止部11と、保持当止部11に固定される保持本体部10aと、保持当止部11に弾性復元力を加える保持弾性部10bと、かご枠2b(図1及び図2参照)に固定されて且つ保持弾性部10bの第1端を保持する第1保持材10cと、保持本体部10aに固定されて且つ保持弾性部10bの第2端を保持する第2保持材10dとを備えていてもよい。
【0034】
そして、保持弾性部10bは、例えば、本実施形態のように、第1方向D1と交差する第2方向D2と反対方向D2a(「第2反対方向」ともいう)に弾性変形する、という構成でもよい。これにより、保持弾性部10bは、第2方向D2への弾性復元力を、保持本体部10aを経由して保持当止部11に加えている。なお、特に限定されないが、保持弾性部10bは、例えば、本実施形態のように、弦巻ばねとしてもよい。
【0035】
また、保持当止部11は、第1方向D1と反対方向D1a(「第1反対方向」ともいう)から、移動部9を当て止めするように、例えば、本実施形態のように、上方から移動部9を当て止めしていてもよい。これにより、移動部9及び保持当止部11は、互いに接触し合う接触面9a,11aをそれぞれ備えている。
【0036】
移動接触面9a及び保持接触面11aのそれぞれは、例えば、第1方向D1へ行くにつれて第2方向D2へ行くように、形成されていてもよい。これにより、移動部9が第1方向D1へ移動することに伴って、保持当止部11は、第2反対方向D2aへ移動することになる。
【0037】
例えば、本実施形態のように、移動接触面9aは、凸面のみで形成されており、保持接触面11aは、凸面のみで形成されている、という構成でもよい。具体的には、例えば、本実施形態のように、移動接触面9aは、凸曲面のみで形成されており、保持接触面11aは、凸曲面のみで形成されている、という構成でもよい。
【0038】
また、特に限定されないが、保持当止部11は、保持本体部10aに回転可能に接続される転動体であって、保持接触面11aは、転動体の外周面で構成されている、という構成でもよい。これにより、接触面9a,11a同士が加圧して接触するにも関わらず、接触移動部9及び保持当止部11の移動を円滑にすることができる。
【0039】
ここで、第1停止機構4aの動作について、図3図8を参照しながら説明する。なお、第1停止機構4aの動作は、以下の動作に限定されない。
【0040】
停止弾性部7が停止可動部6に上方向への弾性復元力を加えていることによって、第1方向D1への力が移動部9に加えられていることに対して(図1及び図2参照)、図3に示すように、保持当止部11は、移動部9を第1反対方向D1aから当て止めし、保持弾性部10bは、第2方向D2への弾性復元力を保持当止部11に加えている。
【0041】
これにより、保持部10が移動部9を保持するため、移動部9は、第1方向D1へ移動することを規制されている。なお、停止可動部6が待機位置に位置するときの移動部9の位置は、起動前位置という。
【0042】
そして、例えば、かご2が加速度を有して下方へ移動した場合には、停止可動部6に対して上方の慣性力が働くため、図4に示すように、移動部9は、保持弾性部10bの弾性復元力に反して、保持当止部11を押して第1方向D1へ移動し、それに伴って、保持当止部11は、第2反対方向D2aへ移動する。
【0043】
そして、かご2が設定加速度で下方へ移動した場合には、移動部9が第1方向D1へ移動し、移動部9が、当て止めされない位置まで保持当止部11を第2反対方向D2aへ移動させることによって、保持部10は、移動部9の保持を解除する。これにより、図5に示すように、移動部9が第1方向D1へさらに移動し、停止可動部6は、停止位置まで上方へ移動する(図2(b)参照)。
【0044】
したがって、停止可動部6は、停止固定部5と協働して、かご2をかごレール3に停止させる。その結果、かご2が設定加速度で下方へ移動した場合に、電気信号を用いることなく、停止装置4によってかご2をかごレール3に停止させることができる。なお、停止可動部6が停止位置に位置するときの移動部9の位置は、起動後位置という。また、特に限定されないが、設定加速度は、例えば、重力加速度の70%~90%としてもよい。
【0045】
ここで、図6は、本実施形態における移動部9及び保持当止部11の移動の軌跡を示している。図6(a)は、移動部9が起動前位置に位置する状態を示し、図6(d)は、移動部9が解除位置に位置する状態を示している。なお、解除位置とは、起動前位置と起動後位置との間の位置であって、保持当止部11による保持が解除される位置である。
【0046】
図6及び図7に示すように、本実施形態においては、移動接触面9a及び保持接触面11aは、第1方向D1へ行くにつれて第2方向D2へ行くように、形成されている。これにより、停止弾性部7が移動部9に加える第1方向D1への力F0(F0a~F0d)は、第2反対方向D2aへの第1の力F1(F1a~F1d)として、保持当止部11に加えられる。
【0047】
しかも、本実施形態においては、移動接触面9aは、凸面のみで形成されており、保持接触面11aは、凸面のみで形成されている。なお、各接触面9a,11aとは、移動部9が起動前位置から解除位置まで位置するときに、お互いに接触する範囲S1,S2のみを含み、接触しない範囲を含まない概念である。
【0048】
これにより、基準方向D3と第1方向D1との間の角度を分力角度θ(θ1~θ3)としたときに、以下の式のように、第1の力F1(F1a~F1d)は、第1方向D1への力F0(F0a~F0d)と分力角度θの正接(tanθ)との積となる。なお、基準方向D3は、各接触面9a,11aの接触位置における法線方向である。
F1=F0×tanθ
【0049】
そして、図6に示すように、移動部9が起動前位置から解除位置へ、即ち、第1方向D1へ移動することに伴って、分力角度θが大きくなるため(θ1<θ2<θ3)、第1方向D1への力F0に対する第1の力F1の比tanθは、大きくなる(tanθ1<tanθ2<tanθ3)。なお、図6(d)の第1の力F1dは、移動部9が解除位置に位置する直前の状態(θ≒90、tanθ=∞、F1d=∞)を示している。
【0050】
したがって、保持当止部11が移動部9への当て止めを解除するときに、移動部9の移動を円滑にすることができる。その結果、例えば、保持当止部11が移動部9への当て止めを解除するときに、移動部9を単位距離だけ移動するために必要となる力、即ち、必要となるかご2の下方への加速度は、さらに小さくなる。
【0051】
したがって、保持当止部11が移動部9への当て止めを解除するときに、移動部9の移動をさらに円滑にすることができる。したがって、例えば、保持当止部11が移動部9への当て止めを解除する加速度、即ち、保持部10が移動部9の保持を解除する加速度のばらつきを小さくすることができるため、当該保持を解除する加速度が設定加速度からずれることを抑制することができる。
【0052】
ところで、移動部9が第1方向D1へ移動することに伴って、停止弾性部7(図2参照)の弾性変形量は、小さくなる。これにより、第1方向D1への力F0は、小さくなる(F0a>F0b>F0c>F0d)。
【0053】
一方で、移動部9が第1方向D1へ移動することに伴って、保持当止部11が第2反対方向D2aへ移動するため、保持弾性部10b(図3図5参照)の弾性変形量は、大きくなる。これにより、保持弾性部10bが保持当止部11に第2方向D2へ加える第2の力F2は、大きくなる(F2a<F2b<F2c<F2d)。
【0054】
それに対して、本実施形態においては、移動部9が第1方向D1へ移動することに伴って、分力角度θ(θ1<θ2<θ3)は、大きくなる。これにより、例えば、本実施形態のように、移動部9が第1方向D1へ移動することに伴って、第1の力F1は、大きくなっていてもよい(F1a<F1b<F1c<F1d)。
【0055】
ここで、図8は、かご2が設定加速度で下方へ移動したときに、本実施形態における移動部9及び保持当止部11に加えられる各力F0,F1,F2の関係を示している。なお、各力F0,F1,F2の関係は、以下の関係に限定されない。
【0056】
図8に示すように、かご2が設定加速度で下方へ移動し、且つ、移動部9が起動前位置から解除位置まで位置するときに、例えば、本実施形態のように、第1の力F1は、第2の力F2よりも、大きくなっていてもよい。これにより、かご2が設定加速度で下方へ移動したときに、移動部9が起動前位置から第1方向D1へ移動する。
【0057】
そして、移動部9が第1方向D1へ移動しても、第1の力F1が第2の力F2よりも常に大きくなっているため、移動部9は、解除位置まで移動し、その後、起動後位置まで移動する。したがって、かご2が設定加速度で下方へ移動した場合に、移動部9を起動前位置から起動後位置まで連続して移動させることができるため、停止可動部6を待機位置から停止位置まで連続して移動させることができる。
【0058】
しかも、図8に示すように、かご2の下方への移動の加速度が設定加速度になったときに、第1の力F1は、第2の力F2よりも、初めて大きくなってもよい。即ち、移動部9が起動前位置から第1方向D1へ移動するための、かご2の加速度は、設定加速度であり、保持当止部11が移動部9の保持を解除するための、かご2の加速度と、同じである。
【0059】
これにより、かご2が設定加速度で下方へ移動した場合に、移動部9は、起動前位置から第1方向D1への移動を開始する。そして、かご2が設定加速度で下方へ移動している場合には、移動部9が第1方向D1へ移動しても、第1の力F1が第2の力F2と釣り合うことがないため、移動部9は、停止することなく、起動前位置から起動後位置まで一気に移動する。
【0060】
また、かご2の下方への移動の加速度が設定加速度になったときに、第1の力F1が第2の力F2よりも初めて大きくなるため、かご2の下方への加速度が設定加速度未満であり、且つ、移動部9が起動前位置に位置する場合に、第1の力F1は、第2の力F2以下となる。これにより、かご2が設定加速度未満で下方へ移動したときに、移動部9は、起動前位置で保持される。
【0061】
したがって、かご2が設定加速度未満で下方へ移動した場合に、移動部9が起動前位置から移動することを抑制することができ、それに伴って、停止可動部6が待機位置から移動することを抑制することができる。その結果、例えば、移動部9及び停止可動部6を不必要に移動することを抑制することができる。
【0062】
また、例えば、かご室2aの内部で乗客が飛び跳ねた場合等に、かご2の下方への加速度は、瞬間的に、大きくなることがある。それに対して、かご2の下方への加速度が設定加速度未満であれば、移動部9が第1方向D1へ移動しないため、移動部9を起動前位置で保持することができる。これにより、停止可動部6を停止位置で保持することができる。
【0063】
なお、特に限定されないが、各力F0,F1,F2の関係は、例えば、停止弾性部7の構成及び保持弾性部10bの構成等によって、自由に設定することができる。例えば、各弾性部7,10bにおける、自然長(復元したときの長さ)、ばね係数、停止可動部6が停止位置に位置する(移動部9が起動前位置に位置する)ときの弾性変形量等を調整することによって、各力F0,F1,F2の関係は、設定できる。
【0064】
なお、例えば、第1停止機構4aが動作して、かご2が停止装置4によってかごレール3に停止した後に、エレベータ1を復旧させるために、停止可動部6は、停止位置から待機位置まで下方へ移動される。特に限定されないが、例えば、解除装置(図示していない)や手動操作によって、停止可動部6に力が加えられ、停止可動部6が下方へ移動してもよい。
【0065】
このとき、停止可動部6が、停止弾性部7の弾性復元力に反して、下方へ移動することによって、移動部9が、第1反対方向D1aへ移動し、それに伴って、保持当止部11が、第2方向D2へ移動する。これにより、停止可動部6が停止位置から待機位置まで移動することによって、移動部9は、起動後位置から起動前位置まで、第1反対方向D1aへ自動的に移動し、それに伴って、保持当止部11も、起動前の位置まで、第2方向D2へ自動的に移動する。
【0066】
これにより、移動部9及び保持当止部11(第1停止機構4a)は、電気信号等を用いることなく、起動前の状態に自動的に復旧する。なお、移動部9及び保持当止部11(第1停止機構4a)は、例えば、手動操作されることによって、起動前の状態に復旧する、という構成でもよい。
【0067】
次に、図3に戻り、第2停止機構4bの構成について、説明する。なお、第2停止機構4bは、過速度停止機構ともいう。また、第2停止機構4bの構成は、以下の構成に限定されない。
【0068】
図3に示すように、第2停止機構4bは、例えば、本実施形態のように、かご2の移動速度を検出する調速部12と、保持当止部11に第2反対方向D2aへの力を加える停止加力部13と、調速部12の検出に基づいて、停止加力部13が保持当止部11に力を加えることを起動する起動部14とを備えていてもよい。なお、例えば、本実施形態のように、停止固定部5、停止可動部6、停止弾性部7、伝達部8、移動部9、及び保持部10は、第2停止機構4bを構成していてもよい。
【0069】
調速部12は、例えば、本実施形態のように、かご枠2b(図1及び図2参照)に対して回転可能に接続されるガバナローラ12aと、ガバナローラ12aが回転することに伴って、公転軸を軸にして公転する錘12b,12bと、ガバナローラ12aと錘12bとを接続する錘接続部12cと、公転軸へ近づく方向への弾性復元力を錘12bに加える調速弾性部12dとを備えていてもよい。
【0070】
ガバナローラ12aは、例えば、本実施形態のように、かごレール3に接触するように配置されていてもよい(図1参照)。これにより、かご2が移動することに伴って、ガバナローラ12aは、回転する。したがって、かご2の移動速度が速いほど、錘12bに働く遠心力が大きくなるため、錘12bの位置は、公転軸から離れることになる。そして、かご2が設定速度で移動した場合に、錘12bは、設定位置に位置する。
【0071】
なお、例えば、ガバナローラ12aは、かごレール3とは別のレールに接触することによって、かご2の移動に伴って回転する、という構成でもよい。このように、特に限定されないが、本実施形態に係る停止装置4においては、ガバナロープがない調速部12、即ち、ガバナロープレスの調速部12とすることができる。また、錘接続部12cは、例えば、本実施形態のように、錘12bが公転軸から離れることに伴って、第2方向D2へ移動する調速動作部12eを備えていてもよい。
【0072】
また、例えば、本実施形態のように、保持部10は、停止加力部13から力を受けるために、保持本体部10aに固定される保持係合部10eを備え、停止加力部13は、保持部係合部10eに当たって保持係合部10eを押す第1加力係合部13aを備えている、という構成でもよい。これにより、停止加力部13の動作は、かご2が加速度を有して移動するときに移動部9が保持弾性部10bの弾性復元力に反して移動する第1停止機構4aの動作から、分離されている。
【0073】
停止加力部13は、例えば、本実施形態のように、第1加力係合部13aと一体となって移動する加力本体部13bと、保持当止部11に弾性復元力を加えるために、加力本体部13bに弾性復元力を加える加力弾性部13cと、かご枠2bに固定されて且つ加力弾性部13cの第1端を保持する第1保持材13dと、加力本体部13bに固定され、加力弾性部13cの第2端を保持する第2保持材13eとを備えていてもよい。
【0074】
加力弾性部13cは、例えば、本実施形態のように、第1加力係合部13aが保持係合部10eに当たる方向と反対方向(具体的には、第2方向D2)へ、弾性変形してもよい。これにより、加力弾性部13cの第2反対方向D2aへの弾性復元力は、加力本体部13bを経由して、第1加力係合部13aに加えられる。なお、特に限定されないが、加力弾性部13cは、例えば、本実施形態のように、弦巻ばねとしてもよい。
【0075】
起動部14は、例えば、本実施形態のように、かご枠2bに回転可能に接続される回転部15と、回転部15の回転を阻止するために、回転部15の第1端部を当て止めする回転阻止部16とを備えていてもよい。なお、停止加力部13は、例えば、本実施形態のように、加力本体部13bに固定されて回転部15の第2端部に当たる第2加力係合部13fを備えていてもよい。
【0076】
これにより、回転阻止部16が回転部15の回転を阻止しているため、第2加力係合部13fが回転部15に当て止めされることによって、加力本体部13bの移動は、阻止されている。一方、回転阻止部16が回転部15の回転の阻止を解除することによって、回転部15が回転可能になるため、加力本体部13bは、加力弾性部13cの弾性復元力によって、移動する。
【0077】
回転部15は、例えば、本実施形態のように、第1端部に配置されて且つ回転阻止部16に当て止めされる被当止部15aと、第2端部に配置されて且つ第2加力係合部13fを当て止めする当止部15bと、被当止部15aと当止部15bとの間に配置され、回転の軸となる軸部15cとを備えていてもよい。
【0078】
特に限定されないが、回転部15は、例えば、本実施形態のように、内部に配置する第2加力係合部13fを内周面でガイドするガイド孔15dを備え、当止部15bは、ガイド孔15dの内周面に配置されている、という構成でもよい。これにより、回転部15は、ガイド孔15dの内周面に、当止部15bと反対側から第2加力係合部13fと当たる回転係合部15eを備えている。
【0079】
なお、例えば、本実施形態のように、回転部15のテコの原理によって、回転部15が回転阻止部16に加える力は、加力弾性部13cが加力本体部13bに加える力よりも、小さくなっていてもよい。これにより、回転部15と回転阻止部16との間に生じる摩擦力を小さくすることができるため、調速動作部12eの移動を円滑にすることができる。
【0080】
しかも、回転阻止部16は、例えば、本実施形態のように、回転部15の被当止部15aを上方から当て止めしていてもよい。これにより、回転阻止部16が回転部15の自重を受けないため、回転部15と回転阻止部16との間に生じる摩擦力をさらに小さくすることができる。したがって、調速動作部12eの移動をさらに円滑にすることができる。
【0081】
また、被当止部15aは、例えば、本実施形態のように、転動可能な転動体(例えば、ローラ)としてもよい。これにより、回転部15と回転阻止部16との間に生じる摩擦力を効率的に小さくすることができる。したがって、調速動作部12eの移動を効率的に円滑にすることができるため、例えば、調速部12でかご2の速度の検出を正確に行うことができる。
【0082】
ここで、第2停止機構4bの動作について、図3及び図9図12を参照しながら説明する。なお、第2停止機構4bの動作は、以下の動作に限定されない。
【0083】
まず、かご2の移動速度が設定速度未満である場合には、図3に示すように、回転阻止部16が回転部15を当て止めしているため、回転部15の回転は、阻止されている。これにより、回転部15は、起動前の位置に位置しており、停止可動部6は、待機位置に位置している(図2(a)参照)。
【0084】
それに対して、例えば、かご2が設定速度で下方へ移動し、図9に示すように、錘12bが設定位置まで移動したときに、回転阻止部16は、回転部15の当て止めを解除する位置まで、調速動作部12eと一体となって、第2方向D2へ移動する。したがって、回転部15の回転が可能となる。
【0085】
これにより、図10に示すように、加力弾性部13cが復元するため、加力弾性部13cの弾性復元力は、加力本体部13b、第1加力係合部13a、保持係合部10eを経由して、保持弾性部10bに加えられる。そして、加力弾性部13cの弾性復元力が、保持弾性部10bの弾性復元力よりも、大きい場合には、第1加力部係合部13aは、保持係合部10eを押して、第2反対方向D2aへ移動する。
【0086】
それに伴って、保持当止部11は、保持係合部10e及び保持本体部10aと一体となって、第2反対方向D2aに移動する。そして、保持当止部11が移動部9を当て止めしない位置まで移動することによって、保持部10は、移動部9の保持を解除する。これにより、移動部9が第1方向D1へ移動し、停止可動部6は、停止位置まで上方へ移動する(図2(b)参照)。
【0087】
したがって、停止可動部6は、停止固定部5と協働して、かご2をかごレール3に停止させる。その結果、かご2が設定速度で移動した場合に、電気信号を用いることなく、停止装置4によってかご2をかごレール3に停止させることができる。なお、特に限定されないが、設定速度は、例えば、かご2の定格速度(通常運転時の最大速度)よりも大きくしてもよく、例えば、かご2の定格速度の110%~120%としてもよい。
【0088】
このように、かご2の移動速度が設定速度未満である場合には、調速動作部12eが移動しても、停止加力部13による力が保持当止部11に加えられない。これにより、第1停止機構4aの動作は、第2停止機構4bの動作から独立しており、影響を受けない。したがって、例えば、停止可動部6が停止位置に位置するときの加速度が、設定加速度からずれることを抑制することができる。
【0089】
しかも、かご2が設定速度で移動したときに、停止加力部13が保持当止部11に力を加えることを開始して、保持当止部11は、移動部9の当て止めを解除する位置まで一気に移動する。これにより、第2停止機構4bの動作も、第1停止機構4aの動作から独立しており、影響を受けない。これにより、例えば、停止可動部6が停止位置に位置するときの速度が、設定速度からずれることを抑制することができる。
【0090】
なお、例えば、第2停止機構4bが動作して、かご2が停止装置4によってかごレール3に停止した後に、エレベータ1を復旧させるために、停止可動部6は、停止位置から待機位置まで下方へ移動される。特に限定されないが、例えば、解除装置(図示していない)や手動操作によって、停止可動部6に力が加えられ、停止可動部6が下方へ移動してもよい。
【0091】
まず、図10に示すように、停止可動部6が停止位置に位置しているときに、回転部15は、起動後の位置に位置している。そして、かご2がかごレール3に停止することによって、かご2の移動速度がゼロになるため、図11に示すように、調速動作部12e及び回転阻止部16が戻るように、第2反対方向D2aへ移動する。これにより、回転阻止部16に固定される阻止係合部17が、回転部15の被当止部15aに当たる。
【0092】
そして、停止可動部6が、停止弾性部7及び加力弾性部13cの弾性復元力に反して、下方へ移動することに伴って、図12に示すように、移動部9が第1反対方向D1aへ移動し、保持当止部11が第2方向D2へ移動する。これに伴って、保持本体部10a、保持係合部10e、第1加力係合部13a、加力本体部13b、及び第2加力係合部13fは、第2方向D2へ移動する。
【0093】
このとき、回転部15の回転係合部15eが第2加力係合部13fに当てられている。したがって、回転部15に加えられる力が、調速弾性部12dの弾性復元力よりも大きい場合には、回転阻止部16が第2方向D2へ移動し、回転部15は、起動前の位置へ戻る方向(図12においては、反時計回り方向)へ回転する。これにより、停止可動部6に加えられる力によって、回転部15は、回転する。
【0094】
そして、停止可動部6が待機位置まで下方へ移動することによって、回転部15が回転阻止部16を押しつつ起動前の位置まで回転する。その後、調速弾性部12dが復元し、調速動作部12e及び回転阻止部16が第2反対方向D2aへ移動して戻ることによって、回転阻止部16が回転部15の回転を阻止する(図3参照)。
【0095】
これにより、起動部14(第2停止機構4b)は、電気信号等を用いることなく、起動前の状態に自動的に復旧する。なお、起動部14(第2停止機構4b)は、例えば、手動操作されることによって、起動前の状態に復旧する、という構成でもよい。
【0096】
以上より、本実施形態のように、エレベータ1は、前記のエレベータかご装置1aと、前記かご2をガイドするかごレール3と、を備える。
【0097】
そして、本実施形態のように、エレベータかご装置1aは、かご2と、前記かご2をかごレール3に停止させる停止装置4と、を備え、前記停止装置4は、前記かご2に固定される停止固定部5と、前記停止固定部5と協働して前記かご2を停止させる停止位置と、前記停止位置より下方である待機位置と、の間で、前記停止固定部5に対して可動である停止可動部6と、前記停止可動部6を前記停止位置へ移動させるために、前記停止可動部6に上方への弾性復元力を加える停止弾性部7と、前記停止可動部6と一体となって可動であり、前記停止可動部6が上方へ移動することに伴って第1方向D1へ移動する移動部9と、前記移動部9を保持し、前記かご2が設定加速度で下方へ移動したときに前記移動部9の保持を解除する保持部10と、を備え、前記保持部10は、前記移動部9を当て止めする保持当止部11と、前記第1方向D1と交差する第2方向D2への弾性復元力を前記保持当止部11に加える保持弾性部10bと、を備え、前記移動部9及び前記保持当止部11は、互いに接触し合う接触面9a,11aをそれぞれ備え、前記移動部9及び前記保持当止部11の前記接触面9a,11aの少なくとも一方(本実施形態においては、移動部9及び保持当止部11の両方の接触面)9a,11aは、前記移動部9が前記第1方向D1へ移動することに伴って前記保持当止部11が前記第2方向D2と反対方向D2aへ移動するように、前記第1方向D1へ行くにつれて前記第2方向D2へ行くように形成される、という構成が好ましい。
【0098】
斯かる構成によれば、停止弾性部7が停止可動部6に上方への弾性復元力を加えていることによって、第1方向D1への力が移動部9に加えられていることに対して、保持当止部11は、移動部9を当て止めし、保持弾性部10bは、保持当止部11に弾性復元力を加えている。これにより、移動部9が、保持部10によって第1方向D1へ移動することを規制されているため、停止可動部6は、移動部9と一体となって上方へ移動することを規制されている。
【0099】
そして、かご2が加速度を有して下方へ移動した場合には、停止可動部6に対して上方の慣性力が働くため、移動部9は、保持当止部11を第1方向D1へ押して移動することになる。このとき、移動部9及び保持当止部11の接触面9a,11aの少なくとも一方が、第1方向D1へ行くにつれて第2方向D2へ行くように形成されているため、移動部9が第1方向D1へ移動することに伴って、保持当止部11は、第2方向D2と反対方向D2aへ移動する。
【0100】
そして、かご2が設定加速度で下方へ移動した場合には、移動部9が、当て止めされない位置まで保持当止部11を移動することによって、保持部10は、移動部9の保持を解除する。これにより、移動部9が第1方向D1へさらに移動し、停止可動部6は、停止位置まで上方へ移動する。したがって、停止可動部6が、停止固定部5と協働して、かご2をかごレール3に停止させる。その結果、かご2が設定加速度で下方へ移動した場合に、停止装置4によってかご2をかごレール3に停止させることができる。
【0101】
また、本実施形態のように、エレベータかご装置1aにおいては、前記移動部9の前記接触面9aは、前記第1方向D1へ行くにつれて前記第2方向D2へ行くような凸面のみで形成され、前記保持当止部11の前記接触面11aは、前記第1方向D1へ行くにつれて前記第2方向D2へ行くような凸面のみで形成される、という構成が好ましい。
【0102】
斯かる構成によれば、停止弾性部7が移動部9に加える第1方向D1への力F0は、第2方向D2と反対方向D2aへの力F1となって、保持当止部11に加えられる。そして、移動部9が第1方向D1へ移動することに伴って、当該第1方向D1への力F0に対する当該反対方向D2aへの力F1の比tanθは、大きくなる。これにより、保持当止部11が移動部9への当て止めを解除するときに、移動部9の移動を円滑にすることができる。
【0103】
また、本実施形態のように、エレベータかご装置1aにおいては、前記移動部9は、前記停止可動部6が前記待機位置に位置するときに、起動前位置に位置し、前記停止可動部6が前記停止位置に位置するときに、起動後位置に位置し、前記保持当止部11は、前記移動部9が前記起動前位置と前記起動後位置との間の解除位置に位置するときに、前記移動部9の保持を解除し、前記かご2が設定加速度未満で下方へ移動し、且つ、前記移動部9が前記起動前位置に位置するときに、前記停止弾性部7が移動部9を介して前記保持当止部11に前記第2方向D2と反対方向D2aへ加える第1の力F1は、前記保持弾性部7が前記保持当止部11に前記第2方向D2へ加える第2の力F2以下であり、前記かご2が設定加速度で下方へ移動し、且つ、前記移動部9が前記起動前位置から前記解除位置まで位置するときに、前記第1の力F1は、前記第2の力F2よりも、大きい、という構成が好ましい。
【0104】
斯かる構成によれば、かご2が設定加速度未満で下方へ移動したときに、第1の力F1が第2の力F2以下であるため、移動部9は、起動前位置で保持される。これにより、かご2が設定加速度未満で下方へ移動した場合に、移動部9が起動前位置から移動することを抑制することができる。
【0105】
一方で、かご2が設定加速度で下方へ移動したときに、第1の力F1が第2の力F2よりも大きいため、移動部9は、起動前位置から解除位置まで移動する。これにより、かご2が設定加速度で下方へ移動した場合に、移動部9を解除位置まで移動させることができるため、その結果、移動部9を起動後位置まで移動させることができる。
【0106】
また、本実施形態のように、エレベータかご装置1aにおいては、前記停止装置4は、前記かご2が設定速度で移動したときに、前記停止可動部6を前記停止位置まで移動させるように、前記保持当止部11に前記第2方向D2と反対方向D2aへの力を加える停止加力部13を備える、という構成が好ましい。
【0107】
斯かる構成によれば、停止加力部13が保持当止部11に第2方向D2と反対方向D2aへの力を加えるため、保持当止部11が第2方向D2と反対方向D2aへ移動し、それに伴って、移動部6は、第1方向D1へ移動する。これにより、保持部10が移動部9の保持を解除するため、かご2が設定速度で移動したときに、停止可動部6は、停止位置まで移動する。
【0108】
これにより、停止可動部6は、停止固定部5と協働して、かご2をかごレール3に停止させる。したがって、かご2が設定加速度で下方へ移動した場合だけでなく、かご2が設定速度で移動した場合にも、停止装置4によってかご2をかごレール3に停止させることができる。
【0109】
また、本実施形態のように、エレベータかご装置1aにおいては、前記停止加力部13は、前記かご2が設定速度で移動したときに、前記保持当止部11に前記第2方向D2と反対方向D2aへの力を加えることを開始する、という構成が好ましい。
【0110】
斯かる構成によれば、かご2が設定速度で移動したときに、停止加力部13が保持当止部11に第2方向D2と反対方向D2aへの力を加えることを開始するため、かご2が設定速度未満で移動しているときに、保持当止部11は、停止加力部13から力を受けない。これにより、かご2が設定速度で移動したときにかご2をかごレール3に停止させる機構4bの動作は、かご2が設定加速度で下方へ移動したときにかご2をかごレール3に停止させる機構4aの動作から独立しており、影響を受けない。
【0111】
なお、エレベータ1及びエレベータかご装置1aは、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、エレベータ1及びエレベータかご装置1aは、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0112】
(1)上記実施形態に係るエレベータ1においては、停止加力部13は、かご2が設定速度で移動したときに、保持当止部11に力を加えることを開始する、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。例えば、停止加力部13は、調速部12の調速動作部12eの移動が開始したときに、第2反対方向D2aへの力を保持当止部11に加えることを開始する、という構成でもよい。
【0113】
(2)また、上記実施形態に係るエレベータ1においては、かご2が設定速度で移動したときに、停止加力部13は、保持当止部11に第2反対方向D2aへの力を加える、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。例えば、図13図17に示すように、かご2が設定速度で移動したときに、停止加力部13は、移動部9に第1方向D1への力を加える、という構成でもよい。
【0114】
(2-1)ここで、図13図17の停止加力部13について、以下に説明する。
【0115】
図13に示すように、停止加力部13は、移動部9に当たって移動部9を第1方向D1へ押すために、加力本体部13bに固定される第3加力係合部13gを備えていてもよい。これにより、停止加力部13の動作は、かご2が加速度を有して移動するときに移動部9が保持弾性部10bの弾性復元力に反して移動する第1停止機構4aの動作から、分離されている。
【0116】
加力弾性部13cは、例えば、第3加力係合部13gが移動部9に当たる方向と反対方向(具体的には、第1反対方向D1a)へ、弾性変形してもよい。これにより、加力弾性部13cの第1方向D1への弾性復元力は、加力本体部13b及び第3加力係合部13gを経由して、移動部9に加えられる。
【0117】
起動部14は、例えば、第1端部が加力本体部13bに固定される固定部18と、調速動作部12eに固定され、固定部18の移動を阻止するために、固定部18の第2端部を当て止めする移動阻止部19とを備えていてもよい。なお、固定部18は、例えば、移動阻止部19に当て止めされる被当止部18a(例えば、ローラ)を備えていてもよい。
【0118】
これにより、移動阻止部19が固定部18の移動を阻止しているため、加力本体部13bの移動は、阻止されている。一方、移動阻止部19が固定部18の移動の阻止を解除することによって、固定部18が移動可能になるため、加力本体部13bは、加力弾性部13cの弾性復元力によって、移動する。
【0119】
そして、図13に係る構成によれば、例えば、かご2が設定加速度で下方へ移動した場合には、図14に示すように、移動部9は、第1方向D1へ移動し、それに伴って、保持当止部11は、第2反対方向D2aへ移動する。そして、移動部9が、当て止めされない位置まで保持当止部11を第2反対方向D2aへ移動させることによって、保持部10は、移動部9の保持を解除する。
【0120】
これにより、移動部9が第1方向D1へさらに移動し、停止可動部6は、停止位置まで上方へ移動する(図2(b)参照)。また、かご2の移動速度が設定速度未満である場合には、調速動作部12eが移動しても、停止加力部13による力が移動部9に加えられない。したがって、第1停止機構4aの動作は、第2停止機構4bの動作から独立しており、影響を受けない。
【0121】
そして、例えば、解除装置(図示していない)や手動操作によって、力が加えられた停止可動部6が、停止弾性部7の弾性復元力に反して、下方へ移動した場合には、図13に示すように、移動部9は、起動前位置aまで、第1反対方向D1aへ自動的に移動し、それに伴って、保持当止部11は、起動前の位置まで第2方向D2へ自動的に移動する。これにより、移動部9及び保持当止部11(第1停止機構4a)は、電気信号等を用いることなく、起動前の状態に自動的に復旧する。
【0122】
また、例えば、かご2の移動速度が設定速度未満である場合には、図13に示すように、移動阻止部19が固定部18を当て止めしているため、固定部18の移動は、阻止されている。それに対して、例えば、かご2が設定速度で下方へ移動した場合には、図15に示すように、錘12bが設定位置まで移動し、移動阻止部19は、固定部18の当て止めを解除する位置まで、調速動作部12eと一体となって第2方向D2へ移動する。
【0123】
これにより、加力弾性部13cの弾性復元力が、加力本体部13b及び第3加力係合部13gを経由して、移動部9に加えられるため、移動部9は、第1方向D1へ移動し、それに伴って、保持当止部11は、第2反対方向D2aへ移動する。そして、移動部9が、当て止めされない位置まで保持当止部11を第2反対方向D2aへ移動させることによって、保持部10は、移動部9の保持を解除する。
【0124】
これにより、移動部9が第1方向D1へさらに移動し、停止可動部6は、停止位置まで上方へ移動する(図2(b)参照)。このように、かご2が設定速度で移動したときに、停止加力部13が可動部9に力を加えることを開始して、保持当止部11は、移動部9の保持を解除する位置まで一気に移動する。これにより、第2停止機構4bの動作も、第1停止機構4aの動作から独立しており、影響を受けない。
【0125】
その後、かご2の移動速度がゼロになるため、図16に示すように、調速動作部12e及び移動阻止部19は、戻るように第2反対方向D2aへ移動する。これにより、固定部18が起動後の位置に位置しているため、移動阻止部19に固定される阻止係合部17は、固定部18の被当止部18aに当たる。
【0126】
そして、例えば、解除装置(図示していない)や手動操作によって、力が加えられた停止可動部6が、停止弾性部7及び加力弾性部13cの弾性復元力に反して、下方へ移動した場合には、図17に示すように、移動部9は、第1反対方向D1aへ移動する。それに伴って、保持当止部11は、第2方向D2へ移動し、第3加力係合部13g、加力本体部13b及び固定部18は、第1反対方向D1aへ移動する。これにより、固定部18は、停止可動部6に加えられる力によって、移動する。
【0127】
そして、停止可動部6が待機位置まで移動することによって、固定部18が阻止係合部部17を押しながら起動前の位置まで移動する。その後、調速弾性部12dが復元し、調速動作部12e及移動阻止部19が、戻るように第2反対方向D2aへ移動することによって、移動阻止部19が固定部18の移動を阻止する(図13参照)。これにより、起動部14(第2停止機構4b)は、電気信号等を用いることなく、起動前の状態に自動的に復旧する。
【0128】
このように、図13図17に示すように、エレベータかご装置1aにおいては、前記停止装置4は、前記かご2が設定速度で移動したときに、前記停止可動部6を前記停止位置まで移動させるように、前記移動部9に前記第1方向D1への力を加える停止加力部13を備える、という構成が好ましい。
【0129】
斯かる構成によれば、停止加力部13が移動部9に第1方向D1への力を加えるため、移動部9が第1方向D1へ移動し、それに伴って、保持当止部11は、第2方向D2と反対方向D2aへ移動する。これにより、保持部10が移動部9の保持を解除するため、かご2が設定速度で移動したときに、停止可動部6は、停止位置まで移動する。
【0130】
これにより、停止可動部6は、停止固定部5と協働して、かご2をかごレール3に停止させる。したがって、かご2が設定加速度で下方へ移動した場合だけでなく、かご2が設定速度で移動した場合にも、停止装置4によってかご2をかごレール3に停止させることができる。
【0131】
また、図13図17に示すように、エレベータかご装置1aにおいては、前記停止加力部13は、前記かご2が設定速度で移動したときに、前記移動部9に前記第1方向D1への力を加えることを開始する、という構成が好ましい。
【0132】
斯かる構成によれば、かご2が設定速度で移動したときに、停止加力部13が移動部9に第1方向D1への力を加えることを開始するため、かご2が設定速度未満で移動しているときに、移動部9は、停止加力部13から力を受けない。これにより、かご2が設定速度で移動したときにかご2をかごレール3に停止させる機構4bの動作は、かご2が設定加速度で下方へ移動したときにかご2をかごレール3に停止させる機構4aの動作から独立しており、影響を受けない。
【0133】
(2-2)なお、図13図17に係るエレベータ1においては、停止加力部13は、かご2が設定速度で移動したときに、移動部9に力を加えることを開始する、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。例えば、停止加力部13は、調速部12の調速動作部12eの移動が開始したときに、第1方向D1への力を移動部9に加えることを開始する、という構成でもよい。
【0134】
(3)また、上記実施形態に係るエレベータ1においては、移動接触面9aは、凸面のみで形成されており、保持接触面11aは、凸面のみで形成されている、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。
【0135】
例えば、図18図23に示すように、移動接触面9a及び保持接触面11aは、移動部9が第1方向D1へ移動することに伴って保持当止部11が第2反対方向D2aへ移動するように、さまざまな形状とすることができる。なお、図19図21、及び図23において、(a)は、移動部9が起動前位置に位置する状態を示す図であり、(b)及び(c)は、移動部9が起動前位置から第1方向D1へ移動した状態を示す図である。
【0136】
(3-1)例えば、図18及び図19に示すように、移動接触面9aは、凸面(具体的には、凸曲面)のみで形成され、保持接触面11aは、平面のみで形成されている、という構成でもよい。図18及び図19に係る構成においては、移動接触面9a及び保持接触面11aのそれぞれが、第1方向D1(図18及び図19においては、上方向)へ行くにつれて第2方向D2(図18及び図19においては、左方向)へ行くように、形成されている。
【0137】
斯かる構成においては、図19(a)及び(b)に示すように、移動部9が起動前位置からに中間位置に位置するときに、分力角度θ1,θ2は、同じである(θ1=θ2)。このとき、基準方向D3は、移動接触面9aの接触位置における法線方向で、且つ、保持接触面11aの接触位置における垂線方向となる。また、中間位置とは、図18及び図19(b)に示すように、保持接触面11aの接触位置が初めて保持接触面11aの端縁となった位置である。
【0138】
そして、移動部9が中間位置から第1方向D1へ移動することに伴って、図19(c)に示すように、分力角度θ3は、大きくなる(θ2<θ3)。このとき、基準方向D3は、移動接触面9aの接触位置における法線方向となる。なお、移動部9が第1方向D1へ移動することに伴って、第1方向D1への力F0が小さくなるが、図19において、第1方向への力F0は、同じ大きさとして図示している。
【0139】
(3-2)また、例えば、図20及び図21に示すように、移動接触面9aは、平面のみで形成され、保持接触面11aは、凸面(具体的には、凸曲面)のみで形成されている、という構成でもよい。図20及び図21に係る構成においては、移動接触面9a及び保持接触面11aのそれぞれが、第1方向D1(図20及び図21においては、上方向)へ行くにつれて第2方向D2(図20及び図21においては、左方向)へ行くように、形成されている。
【0140】
斯かる構成においては、図21(a)及び(b)に示すように、移動部9が起動前位置からに中間位置に位置するときに、分力角度θ1,θ2は、同じである(θ1=θ2)。このとき、基準方向D3は、移動接触面9aの接触位置における垂線方向で、且つ、保持接触面11aの接触位置における法線方向となる。また、中間位置とは、図20及び図21(b)に示すように、移動接触面9aの接触位置が初めて移動接触面9aの端縁となった位置である。
【0141】
そして、移動部9が中間位置から第1方向D1へ移動することに伴って、図21(c)に示すように、分力角度θ3は、大きくなる(θ2<θ3)。このとき、基準方向D3は、移動接触面9aの接触位置における法線方向となる。なお、移動部9が第1方向D1へ移動することに伴って、第1方向D1への力F0が小さくなるが、図21において、第1方向への力F0は、同じ大きさとして図示している。
【0142】
(3-3)また、例えば、図22及び図23に示すように、移動接触面9aは、平面のみで形成され、保持接触面11aは、平面のみで形成されている、という構成でもよい。図22及び図23に係る構成においては、移動接触面9a及び保持接触面11aのそれぞれが、第1方向D1(図22及び図23においては、上方向)へ行くにつれて第2方向D2(図22及び図23においては、左方向)へ行くように、形成されている。
【0143】
斯かる構成においては、図23に示すように、移動部9が起動前位置からに第1方向へ移動しても、分力角度θ1,θ2,θ3は、同じである(θ1=θ2=θ3)。このとき、基準方向D3は、移動接触面9aの垂線方向で、且つ、保持接触面11aの垂線方向となる。なお、移動部9が第1方向D1へ移動することに伴って、第1方向D1への力F0が小さくなるが、図23において、第1方向への力F0は、同じ大きさとして図示している。
【0144】
(3-4)また、例えば、移動接触面9aは、第1方向D1へ行くにつれて第2方向D2へ行くように、凹面(例えば、凹曲面)のみで形成されている、という構成でもよい。また、例えば、保持接触面11aは、第1方向D1へ行くにつれて第2方向D2へ行くように、凹面(例えば、凹曲面)のみで形成されている、という構成でもよい。
【0145】
(3-5)また、例えば、移動接触面9aは、第1方向D1へ行くにつれて第2方向D2へ行くように、凸面、平面及び凹面のうち、少なくとも二つで形成されている、という構成でもよい。特に限定されないが、例えば、図20及び図21に係る移動接触面9aの端部が凸曲面(R面)に変更されることによって、移動接触面9aは、凸面及び平面で形成されていてもよい。
【0146】
また、例えば、保持接触面11aは、第1方向D1へ行くにつれて第2方向D2へ行くように、凸面、平面及び凹面のうち、少なくとも二つで形成されている、という構成でもよい。特に限定されないが、例えば、図18及び図19に係る保持接触面11aの端部が凸曲面(R面)に変更されることによって、保持接触面11aは、凸面及び平面で形成されていてもよい。
【0147】
(3-6)また、例えば、移動接触面9aは、第1方向D1へ行くにつれて第2方向D2へ行くように、異なる曲率半径である複数の凸曲面で形成されている(即ち、凸面のみで形成されている)、という構成でもよい。また、例えば、保持接触面11aは、第1方向D1へ行くにつれて第2方向D2へ行くように、異なる曲率半径である複数の凸曲面で形成されている(即ち、凸面のみで形成されている)、という構成でもよい。
【0148】
(4)また、上記実施形態に係るエレベータ1においては、起動部14は、停止可動部6に加えられる力によって、電気信号等を用いることなく、起動前の状態に自動的に復旧する、という構成である。具体的には、回転部15の回転係合部15eが第2加力係合部13fに当てられるため、停止可動部6に加えられる力によって、回転部15が回転する、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。
【0149】
例えば、回転部15が回転係合部15eを備えておらず、起動部14は、回転部15の重量によって、電気信号等を用いることなく、起動前の状態に自動的に復旧する、という構成でもよい。具体的には、回転部15は、例えば、起動前の位置へ戻る方向へ回転するような重量バランスであり、回転部15の重量によって阻止係合部17に加えられる力は、調速弾性部12dの弾性復元力よりも大きい、という構成でもよい。
【0150】
斯かる構成によれば、回転部15の被当止部15aが阻止係合部17に当たり、回転部15の重量による力が、阻止係合部17に加えられることによって、阻止係合部17は、調速弾性部12dの弾性復元力に反して移動する。これにより、停止可動部6が停止位置から待機位置へ移動することによって、回転部15が起動前の位置まで回転するため、起動部14は、電気信号等を用いることなく、起動前の状態に自動的に復旧する。
【0151】
(5)また、上記実施形態に係るエレベータ1は、電気信号を用いることなく、停止可動部6を停止位置まで移動する第2停止機構4bを備えている、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。例えば、エレベータ1は、第2停止機構4bを備えていない、という構成でもよい。
【0152】
また、例えば、第2停止機構4bは、電気信号を用いて、停止可動部6を停止位置まで移動する、という構成でもよい。斯かる構成の一例として、第2停止機構4bは、ガバナローラ12aの回転を検出する回転検出部(例えば、エンコーダ)を備え、回転検出部の検出に基づいて、かご2が設定速度で移動した場合に、保持当止部11に力を加えることによって、保持当止部11を移動させて、保持部10による移動部9の保持を解除させる、という構成でもよい。
【符号の説明】
【0153】
1…エレベータ、1a…エレベータかご装置、2…かご、2a…かご室、2b…かご枠、3…かごレール、4…停止装置、4a…第1停止機構、4b…第2停止機構、5…停止固定部、6…停止可動部、7…停止弾性部、8…伝達部、8a…第1回転材、8b…第2回転材、8c…長尺材、8d…第1保持材、8e…第2保持材、9…移動部、9a…移動接触面、10…保持部、10a…保持本体部、10b…保持弾性部、10c…第1保持材、10d…第2保持材、10e…保持係合部、11…保持当止部、11a…保持接触面、12…調速部、12a…ガバナローラ、12b…錘、12c…錘接続部、12d…調速弾性部、12e…調速動作部、13…停止加力部、13a…第1加力係合部、13b…加力本体部、13c…加力弾性部、13d…第1保持材、13e…第2保持材、13f…第2加力係合部、13g…第3加力係合部、14…起動部、15…回転部、15a…被当止部、15b…当止部、15c…軸部、15d…ガイド孔、15e…回転係合部、16…回転阻止部、17…阻止係合部、18…固定部、18a…被当止部、19…移動阻止部、D1…第1方向、D1a…第1反対方向、D2…第2方向、D2a…第2反対方向、D3…基準方向、θ…分力角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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