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特開2023-68776ソール用緩衝構造体およびこれを備えたシューズ用ソール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068776
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ソール用緩衝構造体およびこれを備えたシューズ用ソール
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/18 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
A43B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180088
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】北 憲二郎
(72)【発明者】
【氏名】梶原 遥
(72)【発明者】
【氏名】大森 一寛
(72)【発明者】
【氏名】浦田 一生
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050BA02
4F050BA42
(57)【要約】
【課題】クッション性を向上できかつ反発性を向上できるとともに、耐久性を向上できるソール用緩衝構造体を提供する。
【解決手段】ソール用緩衝構造体1において、波形状を有する波形シート20を上下に3層以上積層してなる波形シート積層体2と、波形シート積層体2の波形状の進行方向一端側に設けられ、複数の波形シート20を拘束する一端側壁部3と、波形シート積層体2の波形状の進行方向他端側に設けられ、複数の波形シート20を拘束する他端側壁部4と、複数の波形シート20の接触個所の少なくとも一部が互いに結合される結合部位10とを設ける。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソール用緩衝構造体であって、
波形状を有する波形シートを上下に3層以上積層してなる波形シート積層体と、
前記波形シート積層体の前記波形状の進行方向一端側に設けられ、複数の前記波形シートを拘束する一端側壁部と、
前記波形シート積層体の前記波形状の進行方向他端側に設けられ、複数の前記波形シートを拘束する他端側壁部と、
複数の前記波形シートの接触個所の少なくとも一部が互いに結合される結合部位と、
を備えたソール用緩衝構造体。
【請求項2】
請求項1において、
前記波形シート積層体の上側および下側には、前記波形シート積層体の上側および下側をそれぞれ覆う上側壁部および下側壁部が配設されるとともに、前記上側壁部および前記下側壁部が前記一端側壁部および前記他端側壁部に連結されており、前記一端側壁部、前記他端側壁部、前記上側壁部および前記下側壁部により、前記波形シート積層体が囲繞されている、
ことを特徴とするソール用緩衝構造体。
【請求項3】
請求項1において、
前記接触個所が、上側に配置された前記波形シートの波形状の谷部と、下側に配置された前記波形シートの波形状の山部との接触による個所である、
ことを特徴とするソール用緩衝構造体。
【請求項4】
請求項1において、
前記波形シート積層体が、当該波形シート積層体の前記波形状の進行方向および上下方向の双方と直交する方向の一端側または他端側の少なくともいずれか一方に配置され、前記波形シートの変形を制御する制御部材をさらに備えた、
ことを特徴とするソール用緩衝構造体。
【請求項5】
請求項1において、
前記波形シート積層体が、当該波形シート積層体の前記波形状の進行方向および上下方向の双方と直交する方向の一端側および他端側の間に配置され、前記波形シートの変形を制御する制御部材をさらに備えた、
ことを特徴とするソール用緩衝構造体。
【請求項6】
請求項1において、
前記波形シート積層体、前記一端側壁部および前記他端側壁部が弾性素材から構成されている、
ことを特徴とするソール用緩衝構造体。
【請求項7】
請求項1において、
前記波形シート積層体、前記一端側壁部および前記他端側壁部が一体成形されている、
ことを特徴とするソール用緩衝構造体。
【請求項8】
請求項1において、
前記波形シート積層体、前記一端側壁部および前記他端側壁部が3Dプリンターで成形されている、
ことを特徴とするソール用緩衝構造体。
【請求項9】
請求項8において、
前記3Dプリンターが熱溶解積層方式である、
ことを特徴とするソール用緩衝構造体。
【請求項10】
請求項1において、
前記波形シート積層体の上側には、接足面を有する板状部材が設けられている、
ことを特徴とするソール用緩衝構造体。
【請求項11】
請求項1において、
前記波形シート積層体が、前記波形シートを上下に4層以上積層して構成されている、
ことを特徴とするソール用緩衝構造体。
【請求項12】
請求項1に記載の前記ソール用緩衝構造体を備えたシューズ用ソールであって、
前記ソール用緩衝構造体がソール踵領域またはソール前足領域の少なくともいずれか一方の領域に配置されている、
ことを特徴とするシューズ用ソール。
【請求項13】
請求項1に記載の前記ソール用緩衝構造体を備えたシューズ用ソールであって、
前記ソール用緩衝構造体がソール踵領域からソール中足領域をへてソール前足領域まで配置されている、
ことを特徴とするシューズ用ソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソール用緩衝構造体およびこれを備えたシューズ用ソールに関し、詳細には、クッション性、反発性および耐久性を向上させるための構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第3337971号公報には、緩衝構造体として、複数の帯状波形シートを横方向(左右方向)に並設するとともに、隣り合う各帯状波形シートを連結バーにより連結したものが記載されている(段落[0053]、[0054]および図1図2参照)。
【0003】
上記緩衝構造体に上方から衝撃荷重が作用すると、各帯状波形シートが上下方向に圧縮変形するが(段落[0056]および図3参照)、このとき、変形する各帯状波形シートにより連結バーが捩じられることによって、連結バーがトーションバーとして作用するので、各帯状波形シートの各波形状の変形と相俟って衝撃荷重を吸収できる(段落[0057]参照)。
【0004】
また、上記特許公報には、各帯状波形シートの前後方向端部を連結部により連結したものが記載されている(段落[0059]、図5参照)。この場合、衝撃荷重の作用時には、各帯状波形シートの圧縮変形にともなう前後方向の伸びが連結部により抑制され、これにより、各帯状波形シートの各波形状の変形および連結バーの捩じり変形と相俟って衝撃荷重をより効果的に吸収できる(段落[0060]参照)。
【0005】
特開2021-70358号公報に記載のエネルギー吸収構造体は、マルチコプターの航空機用座席の座席本体と床部との間に設けられており、マルチコプターの不時着等の際の着地衝撃を緩衝するためのものである(段落[0044]および図2参照)。エネルギー吸収構造体は、シートクッションの下面と床部との間で上下方向から挟持された異形ハニカム構造を有しており、当該異形ハニカム構造は、各々が波形状をなす複数のコルゲート構造を上下方向に積層して構成されている(段落[0074]および図13参照)。
【0006】
上記エネルギー吸収構造体に上下方向の着地衝撃が加わった際には、各コルゲート構造が上下方向に潰れるように変形する。これにより、短いストロークで大きなエネルギー吸収をすることができる(段落[0076]および図14A図14E参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許第3337971号公報に記載の緩衝構造体においては、左右方向に隣り合う各帯状波形シートが連結バーにより連結されており、各帯状波形シートの圧縮変形のたびに連結バーが捩じられることになるので、各帯状波形シートの耐久性に加えて連結バーの耐久性が要求される。
【0008】
また、上記特開2021-70358号公報に記載のエネルギー吸収構造体においては、異形ハニカム構造の変形時には、各コルゲート構造が上下方向に潰れるように変形するので、不時着等の際の着地衝撃を吸収する観点から構成されており、衝撃吸収時の反発性については、考慮されていない。
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、クッション性を向上できかつ反発性を向上できるとともに、耐久性を向上できるソール用緩衝構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るソール用緩衝構造体は、波形状を有する波形シートを上下に3層以上積層してなる波形シート積層体と、波形シート積層体の波形状の進行方向一端側に設けられ、複数の波形シートを拘束する一端側壁部と、波形シート積層体の波形状の進行方向他端側に設けられ、複数の波形シートを拘束する他端側壁部と、複数の波形シートの接触個所の少なくとも一部が互いに結合される結合部位とを備えている。
【0011】
ここで、説明の便宜上、波形シートが3層積層された場合を例にとり、積層された各波形シートを上から順に第1の波形シート、第2の波形シートおよび第3の波形シートと呼称することにする。
【0012】
本発明によれば、第1の波形シートに作用した荷重は、第1および第2の波形シートとの接触個所を介して第2の波形シートに作用するとともに、第2および第3の波形シートとの接触個所を介して、第3の波形シートに作用する。これにより、荷重の作用時には、上下に積層された各波形シートが荷重を分散しつつそれぞれ上下方向に圧縮変形するので、荷重を効果的に吸収でき、クッション性を向上できる。
【0013】
しかも、本発明によれば、波形シート積層体の波形状の進行方向一端側および進行方向他端側にそれぞれ一端側壁部および他端側壁部が設けられており、それぞれ複数の波形シートを拘束しているので、荷重の載荷時において各波形シートの圧縮変形時には、各波形シートの進行方向の一方側および他方側への伸びが抑制される。これにより、各波形シートの圧縮変形時には、各波形シートが弾性エネルギーを効率よく蓄積することができ、その結果、蓄積された弾性エネルギーを荷重の除荷後に解放することができるようになって、反発性を向上できる。
【0014】
さらに、本発明によれば、上下に積層された各波形シートは、波形シートと異なる部材を介することなく、各波形シート同士の接触個所の少なくとも一部が結合部位として互いに結合されているので、ソール用緩衝構造体全体として耐久性を向上できる。
【0015】
本発明では、波形シート積層体の上側および下側には、波形シート積層体の上側および下側をそれぞれ覆う上側壁部および下側壁部が配設されるとともに、上側壁部および下側壁部が一端側壁部および他端側壁部に連結されており、一端側壁部、他端側壁部、上側壁部および下側壁部により、波形シート積層体が囲繞されている。
【0016】
本発明では、複数の各波形シートの接触個所が、上側に配置された波形シートの波形状の谷部と、下側に配置された波形シートの波形状の山部との接触による個所である。
【0017】
本発明では、波形シート積層体が、当該波形シート積層体の波形状の進行方向および上下方向の双方と直交する方向の一端側または他端側の少なくともいずれ一方に配置され、波形シートの変形を制御する制御部材をさらに備えている。
【0018】
本発明では、波形シート積層体が、当該波形シート積層体の波形状の進行方向および上下方向の双方と直交する方向の一端側および他端側の間の中間に配置され、波形シートの変形を制御する制御部材をさらに備えている。
【0019】
本発明では、波形シート積層体、一端側壁部および他端側壁部が弾性素材から構成されている。
【0020】
本発明では、波形シート積層体、一端側壁部および他端側壁部が一体成形されている。
【0021】
本発明では、波形シート積層体、一端側壁部および他端側壁部が3Dプリンターで成形されている。
【0022】
本発明では、3Dプリンターが熱溶解積層方式である。
【0023】
本発明では、波形シート積層体の上側には、接足面を有する板状部材が設けられている。
【0024】
本発明では、波形シート積層体が、波形シートを上下に4層以上積層して構成されている。
【0025】
本発明に係るシューズ用ソールは、上述したソール用緩衝構造体を備え、ソール用緩衝構造体がソール踵領域またはソール前足領域の少なくともいずれか一方の領域に配置されている。
【0026】
本発明では、ソール用緩衝構造体がソール踵領域からソール中足領域をへてソール前足領域まで配置されている。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、クッション性を向上できかつ反発性を向上できるとともに、耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施例によるソール用緩衝構造体を備えたシューズ(右足用)を内甲側の斜め下方から見た全体斜視図である。
図2】前記ソール用緩衝構造体(図1)の内甲側側面図である。
図3】前記ソール用緩衝構造体(図1)の概略構成を模式的に示す側面図である。
図4】前記ソール用緩衝構造体(図3)を斜め前方から見た斜視図である。
図5】前記ソール用緩衝構造体(図3)において荷重の載荷前または除荷後の状態を示す側面図であって、波形シートが3層の場合を例にとっている。
図6】前記ソール用緩衝構造体(図5)において荷重の載荷時の状態を示す側面図である。
図7】前記ソール用緩衝構造体(図3)において荷重の載荷前または除荷後の状態を示す側面図であって、一端側壁部が傾斜壁で波形シートが3層の場合を例にとっている。
図8】前記ソール用緩衝構造体(図7)において荷重の載荷時の状態を示す側面図である。
図9】本発明の第2の実施例によるソール用緩衝構造体を備えたシューズ(右足用)を内甲側の斜め下方から見た全体斜視図である。
図10】前記ソール用緩衝構造体(図9)の内甲側側面図である。
図11】本発明の第3の実施例によるソール用緩衝構造体を内甲側の斜め下方から見た全体斜視図である。
図11A】前記ソール用緩衝構造体(図11)の概略構成を示す平面概略図である。
図11B】前記ソール用緩衝構造体(図11A)の第1のバリエーションを示す平面概略図である。
図11C】前記ソール用緩衝構造体(図11A)の第2のバリエーションを示す平面概略図である。
図11D】前記ソール用緩衝構造体(図11A)の第3のバリエーションを示す平面概略図である。
図11E】前記ソール用緩衝構造体(図11A)の第4のバリエーションを示す平面概略図である。
図11F】前記ソール用緩衝構造体(図11A)の第5のバリエーションを示す平面概略図である。
図11G】前記ソール用緩衝構造体(図11A)の第6のバリエーションを示す平面概略図である。
図11H】前記ソール用緩衝構造体(図11A)の第7のバリエーションを示す平面概略図である。
図11I】前記ソール用緩衝構造体(図11A)の第8のバリエーションを示す平面概略図である。
図11J】前記ソール用緩衝構造体(図11A)の第9のバリエーションを示す平面概略図である。
図12】本発明の第4の実施例によるソール用緩衝構造体を内甲側の斜め下方から見た全体斜視図である。
図13】本発明の第5の実施例によるソール用緩衝構造体を構成する波形シート積層体を内甲側の斜め下方から見た全体斜視図である。
図14】本発明の第6の実施例によるソール用緩衝構造体を構成する波形シート積層体を内甲側の斜め上方から見た全体斜視図である。
図15】前記波形シート積層体(図14)を斜め下方から見た全体斜視図である。
図16】本発明の第7の実施例によるソール用緩衝構造体を構成する波形シート積層体の概略構成を模式的に示す側面図である。
図17】本発明の第8の実施例によるソール用緩衝構造体を内甲側の斜め下方から見た全体斜視図である。
図18】前記ソール用緩衝構造体(図17)の踵後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
<第1の実施例>
図1ないし図8は、本発明の第1の実施例によるソール用緩衝構造体を説明するための図である。ここでは、シューズとしてランニングシューズを例にとる。なお、以下の説明中、上方(上側/上)および下方(下側/下)とは、シューズの上下方向の位置関係を表し、前方(前側/前)および後方(後側/後)とは、シューズの前後方向の位置関係を表しており、幅方向とはシューズの左右方向を指すものとする。すなわち、上方および下方は、図2に示すようにシューズのソール底面を水平面上に配置した状態を例にとった場合、各図の上方および下方をそれぞれ指しており、前方および後方は、各図の左方および右方をそれぞれ指しており、幅方向は、各図の紙面奥行方向を指している。なお、図2では、図示の便宜上、図の背景をグレーに着色して示している。
【0030】
図1および図2に示すように、シューズSは、ソール用緩衝構造体1と、その上に取り付けられ、着用者の足を覆うアッパーUとを備えている。ソール用緩衝構造体1は、足の踵部、中足部(土踏まず部)、前足部にそれぞれ対応する踵部領域H、中足部領域M、前足部領域Fを有しており、踵後端からつま先先端まで前後方向に延びるとともに、幅方向に延在している。
【0031】
ソール用緩衝構造体1は、前後方向に進む波形状を有する波形シート20を上下に複数層積層してなる波形シート積層体2と、波形シート積層体2の波形状の進行方向一端側(図1図2左端側)に設けられ、複数の波形シート20を拘束する一端側壁部3(グレー着色領域)と、波形シート積層体2の波形状の進行方向他端側(同各図右端側)に設けられ、複数の波形シート20を拘束する他端側壁部4(グレー着色領域)とを有している。
【0032】
波形シート積層体2は、踵後端からつま先先端まで前後方向に延設されるとともに、幅方向に延在している。また、波形シート積層体2は、3層以上の波形シート20から構成されているのが好ましく、より好ましくは、4層以上の波形シート20から構成されている。図示例では、波形シート積層体2は、つま先先端を除いて4層以上の波形シート20から構成されている。一端側壁部3は、この例では、つま先部の下方に配置され、つま先先端に向かって斜め上方に延びるとともに、ソール幅方向に延設されている。他端側壁部3は、この例では、踵部領域Hの下方に配置され、踵後端に向かって斜め上方に延びるとともに、ソール幅方向に延設されている。
【0033】
波形シート積層体2の上側には、波形シート積層体2の上側を覆う上側壁部5が配設されており、波形シート積層体2の下側には、波形シート積層体2の下側を覆う下側壁部6が配設されている。上側壁部5は、着用者の足裏が直接またはインソール(板状部材)IS等を介して間接的に接触する足裏当接面(接足面)5aを有する部材であって、ソール幅方向に延設されている。上側壁部5には、着用者の足の踵部の周囲をサポートするように、中足部領域Mから踵部領域Hにかけて徐々に上方に立ち上がるアウトカウンター部HCが設けられている。下側壁部6は、路面と接地する接地面を有する部材であって、ソール幅方向に延設されている。下側壁部6の接地面には、下方に突出する多数の凸部からなるアウトソールOSが設けられている。
【0034】
上側壁部5および下側壁部6は、前後方向に沿って延びるとともに、一端側壁部3および他端側壁部4にそれぞれ連結されている。一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5および下側壁部6により、波形シート積層体2を囲繞するボックス状構造体が構成されている。また、これら一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5、下側壁部6および波形シート積層体2により、シューズ用ソールが構成されている。シューズSは、足裏当接面5aおよびアウトカウンター部HCにアッパーUの下部を接着等で固着することにより作製されている。なお、波形シート積層体2の内外甲側端面は、一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5および下側壁部6の内外甲側端面に対して、面一になっており、または、若干量内方に後退した位置に配置されている。
【0035】
図3および図4は、ソール用緩衝構造体1を模式的に表したものである。ここでは、波形シート積層体2が、上下に積層された7層の波形シート20~20から構成された例が示されている。各波形シート20~20は薄肉のシート状部材であって、いずれも正弦波状の波形状を有しており、各波形状の波長および振幅は、各波形シート20~20間で等しくなっているが、各波形シート20、20、20、20の各波形状の位相は、各波形シート20、20、20の各波形状の位相と異なっており、πだけずれている。これにより、各波形シート20、20、20、20の各波形状の谷部t(白丸参照)が、各波形シート20、20、20の各波形状の山部r(黒丸参照)と接触している(図3では、谷部tおよび山部rの一部のみ図示)。これらの接触個所は、双方の波形シートが互いに結合される結合部位10になっている(図3では、結合部位10の一部のみ図示)。各結合部位10は、ここでは、双方の波形シートが一体成形されることにより結合されている。また、この例では、すべての波形シート20~20において、各波形状の谷部tおよび山部rが結合部位10により結合している。一方、上側に配置された波形シートの波形状の山部と、下側に配置された波形シートの波形状の谷部との間には、ソール幅方向に延びる空隙cが形成されている。なお、各波形シート20~20において、波形状の山部rを連ねた稜線はソール幅方向に延びており、同様に、波形状の谷部tを連ねた谷線はソール幅方向に延びている。
【0036】
なお、各波形シート20~20の波形状の波長および振幅の具体的数値としては、波長15mm以下、振幅7.5mm以下が好ましい。また、各波形シート20~20の厚みの具体的数値としては、1.5mm以下が好ましく、1mm前後がより好ましい。このように、本実施例による波形シート積層体2は、シューズ用ソールにおいて、積層マイクロウェーブ構造を有している。
【0037】
図3および図4において、各波形シート20~20の波形状の進行方向は、各図左右方向であり、進行方向一端側(各図左端側)には一端側壁部3が配置され、進行方向他端側(各図右端側)には他端側壁部4が配置されている。各図には、一端側壁部3および他端側壁部4がいずれも上下方向に延びる壁部として示されている。また、この例では、すべての波形シート20~20について、波形状の進行方向一端側が一端側壁部3に結合し、波形状の進行方向他端側が他端側壁部4に結合している。
【0038】
ソール用緩衝構造体1(よって、これを構成する波形シート積層体2、一端側壁部3および他端側壁部4)は、好ましくは、弾性素材から構成されており、この例では、弾性素材を用いて一体成形されている。弾性素材としては、エラストマー樹脂が好ましく、これには、エステル系、ウレタン系、スチレン系、アミド系、オレフィン系等が含まれる。なお、ソール用緩衝構造体1の成形時には、上側壁部5および下側壁部6についても一体成形されている。
【0039】
ソール用緩衝構造体1(よって、これを構成する波形シート積層体2、一端側壁部3および他端側壁部4)は、好ましくは、3Dプリンターにより造形(成形/3Dプリント)されている。3Dプリンターとしては、好ましくは、FDM(Fused Deposition Modeling: 熱溶解積層)方式のものが用いられる。この方式で使用される樹脂としては、たとえばナイロン、ポリエステル、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、PU(ポリウレタン)、熱可塑性エラストマー等の熱可塑性樹脂やラバー等が挙げられるが、軟質材料が好ましく、アスカーAスケールで90A以下の軟質材料がより好ましい。
【0040】
3Dプリンターによるソール用緩衝構造体1の成形時には、上側壁部5および下側壁部6についても、3Dプリンターで同時に成形(同時プリント)されている。これにより、一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5および下側壁部6からなるボックス状構造体で囲繞された空間に波形シート積層体2を配置して固着する等の作業が不要になって、コストを低減できる。また、3Dプリンターによるソール用緩衝構造体1の成形時には、アウトカウンター部HCおよびアウトソールOSについても、3Dプリンターで同時に成形(同時プリント)されている。これにより、シューズ用ソールが3Dプリンターで一度に成形できるようになるので、製造工程を簡略化でき、コストを一層削減できる。なお、図示していないが、3Dプリンターによる成形時には、多数の樹脂フィラメントを上下左右方向を含む種々の方向に配設してなる3次元の樹脂フィラメント構造を上側壁部5の上方に設けるようにしてもよい。このような樹脂フィラメント構造は、積層網目構造、立体網目構造等の3次元の立体的なフィラメント構造を有していて、前後・左右・上下方向のみならず、あらゆる方向において良好な弾性を発揮できる。この場合、樹脂フィラメント構造の上面またはインソール上面が足裏当接面(接足面)を形成することになる。
【0041】
次に、本実施例の作用効果について、図5ないし図8を用いて説明する。
各図には、ソール用緩衝構造体1の波形シート積層体2が3層の波形シート20~20から構成された例が示されるとともに、図5および図6には一端側壁部3が上下方向に延びる壁部の例が、図7および図8には一端側壁部3が斜め方向に延びる壁部の例がそれぞれ示されている。また、図5および図7には荷重の載荷前または除荷後の状態(すなわち、荷重が作用していない状態)が、図6および図8には荷重の載荷後の状態がそれぞれ示されている。
【0042】
図5に示すようにソール用緩衝構造体1に荷重が作用していない状態から、シューズ着地時に上下方向の荷重が作用すると、図6に示すように、ソール用緩衝構造体1が変形する。
【0043】
このとき、波形シート20に作用した荷重は、波形シート20との接触個所を介して波形シート20に作用するとともに、波形シート20との接触個所を介して波形シート20に作用する。これにより、荷重の作用時には、上下に積層された各波形シート20~20が荷重を分散しつつそれぞれ上下方向に圧縮変形するので、荷重を効果的に吸収でき、クッション性を向上できる。
【0044】
しかも、この場合には、各波形シート20~20の波形状の進行方向一端側および進行方向他端側にそれぞれ一端側壁部3および他端側壁部4が設けられており、それぞれ各波形シート20~20の一端側および他端側を拘束しているので、荷重の載荷時において各波形シート20~20の圧縮変形の際には、各波形シート20~20の進行方向一端側および進行方向他端側への伸びが抑制される。これにより、各波形シート20~20の圧縮変形時には、各波形シート20~20の波形状の振幅(つまり、図6中の上下方向高さ)がゼロになりにくいので、各波形シート20~20が弾性エネルギーを効率よく蓄積することができ、その結果、蓄積された弾性エネルギーを荷重の除荷後に解放することができるようになって、反発性を向上できる。このようにして、ソール用緩衝構造体1の変形時の変形量を小さくできるので、ソール用緩衝構造体1において、曲げ剛性を向上できるとともに、捩じり剛性をも向上できる。
【0045】
さらに、上下に積層された各波形シート20~20は、波形シート20~20と異なる部材を介することなく、各波形シート20~20同士の接触個所が結合部位10として互いに結合されているので、ソール用緩衝構造体全体として耐久性を向上できる。しかも、この場合には、各波形シート20~20の圧縮変形時には、各波形シート20~20の波形状が圧縮変形前と比べて扁平な形状に移行しようとするので、各波形シート20~20同士の接触個所(つまり接触面積)が拡がることになり、これにより、各波形シート20~20同士の接触個所での剥がれや剥離を防止でき、その結果、耐久性をさらに向上できる。
【0046】
次に、一端側壁部3が斜め方向に延びる傾斜壁である場合も同様に、図7に示すようにソール用緩衝構造体1に荷重が作用していない状態から、シューズ着地時に上下方向の荷重が作用すると、図8に示すように、ソール用緩衝構造体1が変形する。
【0047】
このとき、波形シート20に作用した荷重は、波形シート20との接触個所を介して波形シート20に作用するとともに、波形シート20との接触個所を介して波形シート20に作用する。これにより、荷重の作用時には、上下に積層された各波形シート20~20が荷重を分散しつつそれぞれ上下方向に圧縮変形するので、荷重を効果的に吸収でき、クッション性を向上できる。なお、この場合、一端側壁部3が傾斜壁であることにより、各波形シート20~20間で波形状の数が異なってくるので、クッション性を調整できる。
【0048】
しかも、この場合には、各波形シート20~20の波形状の進行方向一端側および進行方向他端側にそれぞれ一端側壁部3および他端側壁部4が設けられており、それぞれ各波形シート20~20の一端側および他端側を拘束しているので、荷重の載荷時において各波形シート20~20の圧縮変形の際には、各波形シート20~20の進行方向一端側および進行方向他端側への伸びが抑制される。これにより、各波形シート20~20の圧縮変形時には、各波形シート20~20の波形状の振幅(つまり、図8中の上下方向高さ)がゼロになりにくいので、各波形シート20~20が弾性エネルギーを効率よく蓄積することができ、その結果、蓄積された弾性エネルギーを荷重の除荷後に解放することができるようになって、反発性を向上できる。なお、この場合、一端側壁部3が傾斜壁であることにより、各波形シート20~20間で波形状の数が異なってくるので、反発性を調整できる。
【0049】
さらに、上下に積層された各波形シート20~20は、波形シート20~20と異なる部材を介することなく、各波形シート20~20同士の接触個所が結合部位10として互いに結合されているので、ソール用緩衝構造体全体として耐久性を向上できる。
【0050】
また、第1の実施例では、ソール用緩衝構造体1がソールの踵部領域Hから中足部領域Mをへて前足部領域Fまで延設されているので、踵で着地してつま先で蹴り出す走行時に荷重が踵部領域Hから中足部領域Mをへて前足部領域Fまで移行していく際、各領域においてクッション性および反発性を向上できるとともに、耐久性を向上できる。また、踵から着地するヒールストライカーのみならず、前足部から着地するフォアフットストライカーや、中足部から着地するミッドフットストライカーにも対応できるようになる。
【0051】
なお、一端側壁部3の傾きとしては、図7図8に示すものには限定されず、上下方向に対して直交する方向(つまり前後方向)を除く任意の方向を採用し得る。また、斜め方向に傾ける壁部は、他端側壁部4に設けるようにしてもよく、あるいは、一端側壁部3および他端側壁部4の双方に設けるようにしてもよい(図1図2参照)。
【0052】
<第2の実施例>
図9および図10は、本発明の第2の実施例によるソール用緩衝構造体を説明するための図である。各図において、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。なお、図10では、図示の便宜上、図の背景をグレーに着色して示している。
【0053】
前記第1の実施例では、ソール用緩衝構造体が踵部領域H、中足部領域Mおよび前足部領域Fを有しており、踵後端から中足部をへてつま先先端まで前後方向に延設されている例を示したが、この第2の実施例では、ソール用緩衝構造体は、踵部領域Hおよび前足部領域Fに設けられていて前後方向に分離しており、中足部領域Mには設けられていない。
【0054】
図9および図10に示すように、第2の実施例によるソール用緩衝構造体は、踵部領域Hに配置されたソール用緩衝構造体1と、前足部領域Fに配置されたソール用緩衝構造体1とから構成されている。
【0055】
ソール用緩衝構造体1は、前後方向に進む波形状を有する波形シート20を上下に複数層積層してなる波形シート積層体2と、波形シート積層体2の波形状の進行方向一端側に設けられ、複数の波形シート20を拘束する一端側壁部3(グレー着色領域)と、波形シート積層体2の波形状の進行方向他端側に設けられ、複数の波形シート20を拘束する他端側壁部4(グレー着色領域)とを有している。波形シート積層体2は、踵後端から中足部後端まで前後方向に延設されるとともに、幅方向に延在している。一端側壁部3は、この例では、中足部後端の下方に配置され、曲面状に形成されている。他端側壁部4は、この例では、踵部領域Hの下方に配置され、踵後端に向かって斜め上方に延びている。
【0056】
波形シート積層体2の上側には、波形シート積層体2の上側を覆う上側壁部5が配設されており、波形シート積層体2の下側には、波形シート積層体2の下側を覆う下側壁部6が配設されている。上側壁部5は、着用者の足裏が直接またはインソール(板状部材)IS等を介して間接的に接触する足裏当接面(接足面)5aを有する部材である。上側壁部5には、着用者の足の踵部の周囲をサポートするように、中足部領域Mから踵部領域Hにかけて徐々に上方に立ち上がるとアウトカウンター部HCが設けられている。下側壁部6は、路面と接地する接地面を有する部材であって、接地面には、下方に突出する多数の凸部からなるアウトソールOSが設けられている。
【0057】
上側壁部5および下側壁部6は、前後方向に沿って延びるとともに、一端側壁部3および他端側壁部4にそれぞれ連結されている。一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5および下側壁部6により、波形シート積層体2を囲繞するボックス状構造体が構成されている。また、これら一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5、下側壁部6および波形シート積層体2により、踵部領域Hのシューズ用ソールが構成されている。
【0058】
ソール用緩衝構造体1は、前後方向に進む波形状を有する波形シート20を上下に複数層積層してなる波形シート積層体2と、波形シート積層体2の波形状の進行方向一端側に設けられ、複数の波形シート20を拘束する一端側壁部3(グレー着色領域)と、波形シート積層体2の波形状の進行方向他端側に設けられ、複数の波形シート20を拘束する他端側壁部4(グレー着色領域)とを有している。波形シート積層体2は、中足部前端からつま先先端まで前後方向に延設されるとともに、幅方向に延在している。一端側壁部3は、この例では、つま先部の下方に配置され、つま先先端に向かって斜め上方に延びている。他端側壁部4は、この例では、中足部前端の下方に配置され、曲面状に形成されている。
【0059】
波形シート積層体2の上側には、波形シート積層体2の上側を覆う上側壁部5が配設されており、波形シート積層体2の下側には、波形シート積層体2の下側を覆う下側壁部6が配設されている。上側壁部5は、着用者の足裏が直接またはインソール(板状部材)IS等を介して間接的に接触する足裏当接面(接足面)5aを有する部材である。下側壁部6は、路面と接地する接地面を有する部材であって、接地面には、下方に突出する多数の凸部からなるアウトソールOSが設けられている。
【0060】
上側壁部5および下側壁部6は、前後方向に沿って延びるとともに、一端側壁部3および他端側壁部4にそれぞれ連結されている。一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5および下側壁部6により、波形シート積層体2を囲繞するボックス状構造体が構成されている。。また、これら一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5、下側壁部6および波形シート積層体2により、前足部領域Fのシューズ用ソールが構成されている。
【0061】
ソール用緩衝構造体1において、波形シート積層体2の波形シートの波形状の進行方向一端側は一端側壁部3に結合し、波形状の進行方向他端側は他端側壁部4に結合している。同様に、ソール用緩衝構造体1において、波形シート積層体2の波形シートの波形状の進行方向一端側は一端側壁部3に結合し、波形状の進行方向他端側は他端側壁部4に結合している。また、波形シート積層体2の上側および下側は上側壁部5および下側壁部6に結合し、波形シート積層体2の上側および下側は上側壁部5および下側壁部6に結合している。
【0062】
ソール用緩衝構造体1(よって、これを構成する波形シート積層体2、一端側壁部3および他端側壁部4)は、好ましくは、エラストマー樹脂等の弾性素材を用いて一体成形されている。ソール用緩衝構造体1は、より好ましくは、FDM(Fused Deposition Modeling: 熱溶解積層)方式の3Dプリンターにより造形(成形/3Dプリント)されている。ソール用緩衝構造体1の成形時には、上側壁部5および下側壁部6についても一体成形されている。
【0063】
同様に、ソール用緩衝構造体1(よって、これを構成する波形シート積層体2、一端側壁部3および他端側壁部4)は、好ましくは、エラストマー樹脂等の弾性素材を用いて一体成形されている。ソール用緩衝構造体1は、より好ましくは、FDM方式の3Dプリンターにより造形(成形/3Dプリント)されている。ソール用緩衝構造体1の成形時には、上側壁部5および下側壁部6についても一体成形されている。
【0064】
また、ソール用緩衝構造体1および1の成形時には、ソール用緩衝構造体1および1間の中足部領域Mについても一体成形されている。これにより、一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5および下側壁部6で囲繞された空間に波形シート積層体2を配置して固着する等の作業や、一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5および下側壁部6で囲繞された空間に波形シート積層体2を配置して固着する等の作業が不要になることに加えて、シューズ用ソールが3Dプリンターで一度に成形できるようになるので、製造工程を簡略化でき、コストを一層削減できる。
【0065】
この第2の実施例においても、前記第1の実施例と同様の作用効果を奏する。
シューズの踵着地時に上下方向の荷重が作用すると、ソール用緩衝構造体1の波形シート積層体2において、上側の波形シート20に作用した荷重は、下側の波形シート20との接触個所を介して下側の波形シート20に作用するとともに、さらに下側の波形シート20との接触個所を介してさらに下側の波形シート20に作用する。これにより、荷重の作用時には、上下に積層された各波形シート20が荷重を分散しつつそれぞれ上下方向に圧縮変形するので、荷重を効果的に吸収でき、踵部領域Hのクッション性を向上できる。なお、この場合、一端側壁部3が曲面状の壁であって、他端側壁部4が傾斜壁になっており、上下に積層された各波形シート20間で波形状の数が異なっているので、踵部領域Hのクッション性を調整できる。
【0066】
しかも、この場合には、各波形シート20の波形状の進行方向一端側および進行方向他端側にそれぞれ一端側壁部3および他端側壁部4が設けられており、それぞれ各波形シート20の一端側および他端側を拘束しているので、荷重の載荷時において各波形シート20の圧縮変形時には、各波形シート20の進行方向一端側および進行方向他端側への伸びが抑制される。これにより、各波形シート20の圧縮変形時には、各波形シート20の波形状の振幅がゼロになりにくいので、各波形シート20が弾性エネルギーを効率よく蓄積することができ、その結果、蓄積された弾性エネルギーを荷重の除荷後に解放することができるようになって、踵部領域Hの反発性を向上できる。このようにして、ソール用緩衝構造体1の踵部領域Hにおいて曲げ剛性を向上でき、捩じり剛性を向上できる。なお、この場合、一端側壁部3が曲面状の壁であって、他端側壁部4が傾斜壁になっており、上下に積層された各波形シート20間で波形状の数が異なっているので、踵部領域Hの反発性を調整できる。
【0067】
さらに、上下に積層された各波形シート20は、波形シート20と異なる部材を介することなく、各波形シート20同士の接触個所が互いに結合されているので、ソール用緩衝構造体全体として耐久性を向上できる。しかも、この場合には、各波形シート20の圧縮変形時には、各波形シート20の波形状が圧縮変形前と比べて扁平な形状に移行しようとするので、各波形シート20同士の接触個所(つまり接触面積)が拡がることになり、これにより、各波形シート20同士の接触個所での剥がれや剥離を防止でき、その結果、耐久性をさらに向上できる。
【0068】
一方、シューズの前足着地時に上下方向の荷重が作用すると、ソール用緩衝構造体1の波形シート積層体2において、上側の波形シート20に作用した荷重は、下側の波形シート20との接触個所を介して下側の波形シート20に作用するとともに、さらに下側の波形シート20との接触個所を介してさらに下側の波形シート20に作用する。これにより、荷重の作用時には、上下に積層された各波形シート20が荷重を分散しつつそれぞれ上下方向に圧縮変形するので、荷重を効果的に吸収でき、前足部領域Fのクッション性を向上できる。なお、この場合、一端側壁部3が傾斜壁であって、他端側壁部4が曲面状の壁になっており、上下に積層された各波形シート20間で波形状の数が異なっているので、前足部領域Fのクッション性を調整できる。
【0069】
しかも、この場合には、各波形シート20の波形状の進行方向一端側および進行方向他端側にそれぞれ一端側壁部3および他端側壁部4が設けられており、それぞれ各波形シート20の一端側および他端側を拘束しているので、荷重の載荷時において各波形シート20の圧縮変形時には、各波形シート20の進行方向一端側および進行方向他端側への伸びが抑制される。これにより、各波形シート20の圧縮変形時には、各波形シート20の波形状の振幅がゼロになりにくいので、各波形シート20が弾性エネルギーを効率よく蓄積することができ、その結果、蓄積された弾性エネルギーを荷重の除荷後に解放することができるようになって、反発性を向上できる。このようにして、ソール用緩衝構造体1の前足部領域Fにおいて曲げ剛性を向上でき、捩じり剛性を向上できる。なお、この場合、一端側壁部3が曲面状の壁であって、他端側壁部4が傾斜壁になっており、上下に積層された各波形シート20間で波形状の数が異なっているので、前足部領域Fの反発性を調整できる。
【0070】
さらに、上下に積層された各波形シート20は、波形シート20と異なる部材を介することなく、各波形シート20同士の接触個所が互いに結合されているので、ソール用緩衝構造体全体として耐久性を向上できる。しかも、この場合には、各波形シート20の圧縮変形時には、各波形シート20の波形状が圧縮変形前と比べて扁平な形状に移行しようとするので、各波形シート20同士の接触個所(つまり接触面積)が拡がることになり、これにより、各波形シート20同士の接触個所での剥がれや剥離を防止でき、その結果、耐久性をさらに向上できる。
【0071】
<第3の実施例>
図11は、本発明の第3の実施例によるソール用緩衝構造体を説明するための図である。同図において、前記第2の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0072】
この第3の実施例では、前記第2の実施例によるソール用緩衝構造体1において、波形シート積層体2の左右両側(つまり内外甲側)に正弦波状の波形状部21、22(図11では、内甲側のみ図示)が配設されている点が、前記第2の実施例と異なっている。なお、波形状部21、22は、波形シート積層体2の左右いずれかの側(つまり内甲側または外甲側)に配設するようにしてもよい。また、波形状部21、22は、波形シート積層体2の左右両側または左右いずれかの側に配設されるようにしてもよく、波形シート積層体2、2の双方の左右両側または左右いずれかの側に配設されるようにしてもよい。
【0073】
各波形状部21、22は、波形シート20と比べて、波形状の波長および振幅が大きくなっており、波形状部22の位相は波形状部21の位相に対してπだけずれている。また、この例では、各波形状部21、22の厚みは波形シート20の厚みよりも厚くなっている。各波形状部21、22は、波形シート20の内外甲側端部に結合している。各波形状部21、22の進行方向の一端側および他端側は、それぞれ一端側壁部3、他端側壁部4に結合している。
【0074】
この場合、各波形状部21、22は、各波形シート20の変形を抑制することができるため、各波形状部21、22の材料や厚み、形状等に応じて、各波形シート20の変形度合を制御するとともに、ソール用緩衝構造体自体の硬さ(または柔らかさ)を制御する制御部材として機能し得る。なお、波形状部21、22のうちのいずれか一方のみを設けるようにしてもよく、各波形状部21、22に加えて別の波形状部を設けるようにしてもよい。
【0075】
ここで、各波形シート20に対する各波形状部21、22の配置および延設方向の各種バリエーションについて、図11Aないし図11Jを用いて説明する。これらの図は、各波形シート20および各波形状部21、22を模式的に示す平面概略図である。各図においては、図示の便宜上、各波形状部21、22を一点鎖線で示している。
【0076】
図11Aに示す第1のバリエーションでは、各波形状部21、22がソール幅方向(同図左右方向)全体にわたって延設されており、各波形状部21、22は、各波形シート20と交差しつつ各波形シート20をソール幅方向に挿通して内甲側端の外方位置から外甲側端の外方位置まで延設されている。また、各波形状部21、22は、各波形シート20の後側端から前側端まで前後方向に延設されている。
【0077】
各波形状部21、22の内外甲側端面は、一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5および下側壁部6図11)の内外甲側端面に対して、たとえば面一になっており、あるいは、若干量外方に突出(または内方に後退)した位置に配置されている。
【0078】
図11Bに示す第2のバリエーションでは、各波形状部21、22が、各波形シート20の内甲側端の外方位置から幅方向中央部を越えた位置(つまり外甲側端の内方位置)まで幅方向に延設されるとともに、各波形シート20の後側端から前側端まで前後方向に延設されている。
【0079】
図11Cに示す第3のバリエーションでは、各波形状部21、22が、各波形シート20の外甲側端の外方位置から幅方向中央部を越えた位置(つまり内甲側端の内方位置)まで幅方向に延設されるとともに、各波形シート20の後側端から前側端まで前後方向に延設されている。
【0080】
図11Dに示す第4のバリエーションでは、各波形状部21、22が、各波形シート20の内甲側端の外方位置から外甲側端の外方位置まで幅方向に延設されるとともに、各波形シート20の後側端から前後方向中央部を越えた位置まで前後方向に延設されている。
【0081】
図11Eに示す第5のバリエーションでは、各波形状部21、22が、各波形シート20の内甲側端の外方位置から外甲側端の外方位置まで幅方向に延設されるとともに、各波形シート20の前側端から前後方向中央部を越えた位置まで前後方向に延設されている。
【0082】
図11Fに示す第6のバリエーションでは、各波形状部21、22が、各波形シート20の内甲側端の内方位置から外甲側端の内方位置まで幅方向に延設されるとともに、各波形シート20の後側端から前側端まで前後方向に延設されている。
【0083】
図11Gに示す第7のバリエーションでは、各波形状部21、22が、各波形シート20の内甲側端の内方位置から幅方向中央部を越えた位置(つまり外甲側端の内方位置)まで幅方向に延設されるとともに、各波形シート20の後側端から前側端まで前後方向に延設されている。
【0084】
図11Hに示す第8のバリエーションでは、各波形状部21、22が、各波形シート20の外甲側端の内方位置から幅方向中央部を越えた位置(つまり内甲側端の内方位置)まで幅方向に延設されるとともに、各波形シート20の後側端から前側端まで前後方向に延設されている。
【0085】
図11Iに示す第9のバリエーションでは、各波形状部21、22が、各波形シート20の内甲側端の内方位置から外甲側端の内方位置まで幅方向に延設されるとともに、各波形シート20の後側端から前後方向中央部を越えた位置まで前後方向に延設されている。
【0086】
図11Jに示す第10のバリエーションでは、各波形状部21、22が、各波形シート20の内甲側端の内方位置から外甲側端の内方位置まで幅方向に延設されるとともに、各波形シート20の前側端から前後方向中央部を越えた位置まで前後方向に延設されている。
【0087】
<第4の実施例>
図12は、本発明の第4の実施例によるソール用緩衝構造体を説明するための図である。同図において、前記第2の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0088】
この第4の実施例では、前記第2の実施例によるソール用緩衝構造体1において、波形シート積層体2の左右両側(つまり内外甲側)に斜め格子状部21’、22’(図12では、内甲側のみ図示)が配設されている点が、前記第2の実施例と異なっている。
なお、斜め格子状部21’、22’は、波形シート積層体2の左右いずれかの側(つまり内甲側または外甲側)に配設するようにしてもよい。また、斜め格子状部21’、22’は、波形シート積層体2の左右両側または左右いずれかの側に配設されるようにしてもよく、波形シート積層体2、2の双方の左右両側または左右いずれかの側に配設されるようにしてもよい。
【0089】
各斜め格子状部21’、22’の厚みは、波形シート20の厚みと比べて厚くなっている。各斜め格子状部21’、22’は、波形シート20の内外甲側端部に結合している。各斜め格子状部21’、22’の前後端は、それぞれ一端側壁部3、他端側壁部4に結合している。
【0090】
この場合、各斜め格子状部21’、22’は、各波形シート20の変形を抑制することができるため、各斜め格子状部21’、22’の材料や厚み、形状等に応じて、各波形シート20の変形度合を制御するとともに、ソール用緩衝構造体自体の硬さ(または柔らかさ)を制御する制御部材として機能し得る。なお、斜め格子状部21’、22’のうちのいずれか一方のみを設けるようにしてもよく、各斜め格子状部21’、22’に加えて別の斜め格子状部を設けるようにしてもよい。
【0091】
各斜め格子状部21’、22’の内外甲側端面は、一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5および下側壁部6の内外甲側端面に対して、たとえば面一になっており、あるいは、若干量外方に突出(または内方に後退)した位置に配置されている。また、各斜め格子状部21’、22’は、波形シート積層体2の左右両側(つまり内外甲側)に配設されるようにしてもよい。
【0092】
ここで、各波形シート20に対する各斜め格子状部21’、22’の配置および延設方向の各種バリエーションについては、各波形状部21、22の場合と同様である(図11Aないし図11J参照)。したがって、各斜め格子状部21’、22’は、各波形シート20の内甲側端および外甲側端間で幅方向全体にわたって延設されていてもよく、左右いずれかまたは双方の端部が各波形シート20の内甲側端または(および)外甲側端の内方位置に配置されていてもよい。また、各斜め格子状部21’、22’は、後側端から前側端まで前後方向に延設されていてもよく、前後いずれかの端部が各波形シート20の前側端または後側端の内方位置に配置されていてもよい。
【0093】
<第5の実施例>
図13は、本発明の第5の実施例によるソール用緩衝構造体を構成する波形シート積層体を示しており、同図において、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0094】
前記第1の実施例では、ソール用緩衝構造体1が、波形シート積層体2、一端側壁部3および他端側壁部4を一体成形することにより構成された例を示したが、この第5の実施例では、波形シート積層体2が、一端側壁部3および他端側壁部4とは別個に成形されている。この場合、別工程で、ソール用緩衝構造体1の一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5および下側壁部6を一体成形したものを用意し、一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5および下側壁部6で囲繞された空間内に波形シート積層体2を挿入配置して、接着等で各壁部に固着するようにすればよい。または、波形シート積層体2を予め成形して用意しておき、ソール用緩衝構造体1の一端側壁部3、他端側壁部4、上側壁部5および下側壁部6の成形時に波形シート積層体2をインサートとして用いることにより、インサート成形するようにしてもよい。
【0095】
なお、3Dプリンターにより上側壁部5を成形する際には、多数の樹脂フィラメントを上下左右方向に配設してなる樹脂フィラメント構造部を上側壁部5の上方に設けるようにしてもよい。このような樹脂フィラメント構造部は、立体的なフィラメント構造を有していて、前後・左右・上下方向のみならず、あらゆる方向において良好な弾性を発揮できる。この場合、樹脂フィラメント構造部の上面またはインソール上面が足裏当接面(接足面)を形成することになる。また、一端側壁部3および他端側壁部4と別個に成形される波形シート積層体2は、踵部領域Hまたは前足部領域Fの少なくともいずれか一方に配置されるようにしてもよい。
【0096】
<第6の実施例>
図14および図15は、本発明の第6の実施例によるソール用緩衝構造体を構成する波形シート積層体を示しており、同図において、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0097】
この第6の実施例では、図14および図15に示すように、波形シート積層体2の各波形シート20に上下方向の多数の貫通孔20aが形成されている。図示例では、貫通孔20aは、中足部領域Mおよび前足部領域Fに穿孔されているが、踵部領域Hに穿孔するようにしてもよく、あるいは、すべての領域に穿孔するようにしてもよく、穿孔する領域および位置は任意である。このような貫通孔20aを形成することにより、波形シート20の剛性を下げてクッション性を向上できるとともに、波形シート積層体2を軽量化することができる。なお、各貫通孔20aは、上下方向に整列していなくてもよい。また、上下に積層されたすべての波形シート20に穿孔されていなくてもよく、たとえば1枚おきの波形シート20に穿孔するようにしてもよい。
【0098】
<第7の実施例>
図16は、本発明の第7の実施例によるソール用緩衝構造体を構成する波形シート積層体の概略構成を模式的に示しており、同図において、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0099】
前記第1の実施例では、複数層の波形シート20を上下に積層してなる波形シート積層体2が一体成形された例を示したが、この第7の実施例では、各波形シート20をそれぞれ別工程で成形した後、これらの波形シート20を接着等で互いに固着するようにしている。図16に示す例では、各波形シート20~20が結合部位10において互いに接着された状態が示されている。各結合部位10では、前記第1の実施例の場合と同様に、上側に配置された波形シートの谷部tと、下側に配置された波形シートの山部rとが位置決めされて接着されている。同図に示す例では、この状態から、各波形シート20、20が同様の手順で接着されようとしている状態が示されている。
【0100】
なお、波形シート積層体2を構成するすべての波形シートを接着するようにしなくてもよく、たとえば、波形シート20~20を一体成形した後、別工程で成形された波形シート20、20を接着するようにしてもよい。
【0101】
<第8の実施例>
図17および図18は、本発明の第8の実施例によるソール用緩衝構造体を示しており、各図において、前記第1、第2の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0102】
前記第1、第2の実施例では、波形シート積層体2(または2、2)構成する各波形シート20(または20~20、20~20)の波形状が前後方向に進行する(すなわち、波形状の稜線および谷線が幅方向に延びる)ように配置された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。
【0103】
この第8の実施例では、図18に示すように、踵部領域Hの波形シート積層体2を構成する各波形シート20の波形状が左右方向(幅方向)に進行する(すなわち、波形状の稜線および谷線が前後方向に延びる)ように配置された例が示されている。図示していないが、前足部領域Fの波形シート積層体2を構成する各波形シート20の波形状についても、左右方向(幅方向)に進行する(すなわち、波形状の稜線および谷線が前後方向に延びる)ように配置されている。また、踵部領域Hおよび前足部領域Fのいずれにおいても、上下に積層される各波形シート20は互いの接触個所で結合されている。
【0104】
また、踵部領域Hにおいて、波形シート積層体2の各波形シート20の各波形状の進行方向一端側には、一端側壁部7が配置され、進行方向他端側には他端側壁部7が配置されている。各波形シート20の進行方向一端側は一端側壁部7に結合されて拘束されており、進行方向他端側は他端側壁部7に結合されて拘束されている。同様に、前足部領域Fにおいても、波形シート積層体2の各波形シート20の各波形状の進行方向一端側には、一端側壁部8が配置され、進行方向他端側には他端側壁部(図示せず)が配置されている。各波形シート20の進行方向一端側は一端側壁部8に結合されて拘束されており、進行方向他端側は他端側壁部(図示せず)に結合されて拘束されている。
【0105】
第8の実施例においても、前記第1および第2の実施例と同様の作用効果を奏する。
シューズの踵着地時に上下方向の荷重が作用すると、ソール用緩衝構造体1の波形シート積層体2において、上側の波形シート20に作用した荷重は、下側の波形シート20との接触個所を介して下側の波形シート20に作用するとともに、さらに下側の波形シート20との接触個所を介してさらに下側の波形シート20に作用する。これにより、荷重の作用時には、上下に積層された各波形シート20が荷重を分散しつつそれぞれ上下方向に圧縮変形するので、荷重を効果的に吸収でき、踵部領域Hのクッション性を向上できる。
【0106】
しかも、この場合には、各波形シート20の波形状の進行方向一端側および進行方向他端側にそれぞれ一端側壁部7および他端側壁部7が設けられており、それぞれ各波形シート20の進行方向の一端側および他端側を拘束しているので、荷重の載荷時において各波形シート20の圧縮変形時には、各波形シート20の進行方向一端側および進行方向他端側への伸びが抑制される。これにより、各波形シート20の圧縮変形時には、各波形シート20の波形状の振幅がゼロになりにくいので、各波形シート20が弾性エネルギーを効率よく蓄積することができ、その結果、蓄積された弾性エネルギーを荷重の除荷後に解放することができるようになって、踵部領域Hの反発性を向上できる。このようにして、ソール用緩衝構造体1の踵部領域Hにおいて曲げ剛性を向上でき、捩じり剛性を向上できる。
【0107】
さらに、上下に積層された各波形シート20は、波形シート20と異なる部材を介することなく、各波形シート20同士の接触個所が互いに結合されているので、ソール用緩衝構造体全体として耐久性を向上できる。しかも、この場合には、各波形シート20の圧縮変形時には、各波形シート20の波形状が圧縮変形前と比べて扁平な形状に移行しようとするので、各波形シート20同士の接触個所(つまり接触面積)が拡がることになり、これにより、各波形シート20同士の接触個所での剥がれや剥離を防止でき、その結果、耐久性をさらに向上できる。
【0108】
一方、シューズの前足着地時に上下方向の荷重が作用すると、ソール用緩衝構造体1の波形シート積層体2において、上側の波形シート20に作用した荷重は、下側の波形シート20との接触個所を介して下側の波形シート20に作用するとともに、さらに下側の波形シート20との接触個所を介してさらに下側の波形シート20に作用する。これにより、荷重の作用時には、上下に積層された各波形シート20が荷重を分散しつつそれぞれ上下方向に圧縮変形するので、荷重を効果的に吸収でき、前足部領域Fのクッション性を向上できる。
【0109】
しかも、この場合には、各波形シート20の波形状の進行方向一端側および進行方向他端側にそれぞれ一端側壁部8および他端側壁部(図示せず)が設けられており、それぞれ各波形シート20の進行方向の一端側および他端側を拘束しているので、荷重の載荷時において各波形シート20の圧縮変形時には、各波形シート20の進行方向一端側および進行方向他端側への伸びが抑制される。これにより、各波形シート20の圧縮変形時には、各波形シート20の波形状の振幅がゼロになりにくいので、各波形シート20が弾性エネルギーを効率よく蓄積することができ、その結果、蓄積された弾性エネルギーを荷重の除荷後に解放することができるようになって、反発性を向上できる。このようにして、ソール用緩衝構造体1の前足部領域Fにおいて曲げ剛性を向上でき、捩じり剛性を向上できる。
【0110】
さらに、上下に積層された各波形シート20は、波形シート20と異なる部材を介することなく、各波形シート20同士の接触個所が互いに結合されているので、ソール用緩衝構造体全体として耐久性を向上できる。しかも、この場合には、各波形シート20の圧縮変形時には、各波形シート20の波形状が圧縮変形前と比べて扁平な形状に移行しようとするので、各波形シート20同士の接触個所(つまり接触面積)が拡がることになり、これにより、各波形シート20同士の接触個所での剥がれや剥離を防止でき、その結果、耐久性をさらに向上できる。
【0111】
<変形例1>
前記第1ないし第8の実施例では、一端側壁部3(または3、3、7)が、波形シート積層体2(または2、2)の波形状の進行方向一端側においてすべての波形シート20を結合して拘束する例を示したが、一端側壁部3(または3、3、7)により結合されて拘束されるのは、一部(たとえば、少なくとも2層)の波形シート20でもよい。同様に、前記第1ないし第8の実施例では、他端側壁部4(または4、4、7)が、波形シート積層体2(または2、2)の波形状の進行方向他端側においてすべての波形シート20を結合して拘束する例を示したが、他端側壁部4(または4、4、7)により結合されて拘束されるのは、一部(たとえば、少なくとも2層)の波形シート20でもよい。
【0112】
また、一端側壁部3(または3、3、7)は、波形シート積層体2(または2、2)の波形状の進行方向一端との間に隙間を介して配置されていてもよく、同様に、後端側壁部4(または4、4、7)は、波形シート積層体2(または2、2)の波形状の進行方向他端との間に隙間を介して配置されていてもよい。これらの場合、荷重の載荷時には、波形シート積層体2(または2、2)は波形状の進行方向一端側および進行方向他端側に向かって前記隙間分だけ伸長し得るが、波形状の進行方向一端および進行方向他端がそれぞれ一端側壁部3(または3、3、7)、他端側壁部4(または4、4、7)に当接した後は、波形シート積層体2(または2、2)の伸びが規制されて、拘束されることになる。
【0113】
<変形例2>
前記第1ないし第8の実施例では、波形シート積層体2(または2、2)において、上下に積層される各波形シート20(または20~20、20~20)の接触個所がすべて結合部位10によって結合される例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。結合部位10によって結合される部位は、各波形シートシート20(または20~20、20~20)のすべての接触個所のうちの一部でもよい。
【0114】
<変形例3>
前記第1ないし第8の実施例では、各波形シート20(または20~20、20~20)の接触個所が、上側に配置された波形シートの波形状の谷部tと、下側に配置された波形シートの波形状の山部rとの接触による個所である場合を例にとって示したが、各波形シート20(または20~20、20~20)の接触個所はこれに限定されない。各波形シート(または20~20、20~20)は、波形状の谷部tと山部rの間の中間領域において互いに接触するようにしてもよい。
【0115】
<変形例4>
前記第1ないし第8の実施例では、各波形シート20(または20~20、20~20)の波形状が正弦波状であって、波形状の波長、振幅および厚みがすべての波形シート20(または20~20、20~20)において同じである場合を例にとって説明したが、波形状の波長/振幅/厚みは、各波形シート20(または20~20、20~20)によって、または同じ波形シート(または20~20、20~20)内において前後方向/幅方向で部分的に異ならせるようにしてもよい。さらに、上下に重なり合う各波形シート20(または20~20、20~20)の波形状の位相のずれは、前記第1ないし第8の実施例に示したπには限定されない。
【0116】
<変形例5>
前記第1ないし第8の実施例では、各波形シート20(または20~20、20~20)の波形状が正弦波状の場合を例にとって説明したが、各波形シート20(または20~20、20~20)の波形状はこれに限定されず、矩形波、三角波、のこぎり波、台形波等のその他の任意の適切な波形状を採用し得る。また、形状の異なる複数の波形状を組み合わせるようにしてもよい。
【0117】
<変形例6>
前記第1ないし第7の実施例では、各波形シート20(または20~20、20~20)がソール幅方向全体にわたって連続して延設されている例を示したが、各波形シート20(または20~20、20~20)は、ソール幅方向において、分断されて配設されていてよい。たとえば、各波形シート20(または20~20、20~20)を内甲側領域および外甲側領域のそれぞれに配設するとともに、内外甲側領域間の中央領域において左右の各波形シート20を分断するようにしてもよい。
【0118】
また、前記第8の実施例では、各波形シート20が踵部領域Hまたは前足部領域Fにおいてソール前後方向に連続して延設されている例を示したが、各波形シート20は、ソール前後方向において、分断されて配設されていてもよい。たとえば、各波形シート20を踵後部領域および踵前部領域のそれぞれに配設するとともに、踵中央部領域において前後の各波形シート20を分断するようにしてもよく、各波形シート20を前足後部領域および前足前部領域のそれぞれに配設するとともに、前足中央部領域において前後の各波形シート20を分断するようにしてもよい。
【0119】
前記第1ないし第7の実施例では、各波形シート20(または20~20、20~20)がソール左右両側方から視認できるようにした例を示したが、ソール用緩衝構造体1、1、1の左右両側部をカバー(図示せず)で覆うことにより、各波形シート20(または20~20、20~20)がソール左右両側方から視認できないようにしてもよい。あるいは、各波形シート20(または20~20、20~20)をソールに内蔵させることにより、各波形シート20(または20~20、20~20)がソール左右両側方から視認できないようにしてもよい。
【0120】
<変形例7>
前記第2の実施例では、ソール用緩衝構造体が踵部領域Hおよび前足部領域Fの双方に配置された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。ソール用緩衝構造体は、踵部領域Hまたは前足部領域Fのいずれか一方にのみ配置されるようにしてもよい。
【0121】
<その他の変形例>
上述した各実施例および各変形例はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施例を構築し得る。
【0122】
<他の適用例>
前記各実施例および前記各変形例では、当該ソール構造体がランニングシューズに適用された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、本発明は、ウォーキングシューズを含む種々のスポーツシューズや、その他のシューズ、サンダルにも同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上のように、本発明は、クッション性および反発性を向上できるとともに、耐久性を向上できるようにするためのソール用緩衝構造体に有用である。
【符号の説明】
【0124】
1、1、1: ソール用緩衝構造体

2、2、2: 波形シート積層体
20、20~20: 波形シート
21、22: 波形状部(制御部材)
21’、22’: 斜め格子状部(制御部材)

3、3、3: 一端側壁部

4、4、4: 他端側壁部

5: 上側壁部
5a: 足裏当接面(接足面)

6: 下側壁部

10: 結合部位

r: 山部
t: 谷部

IS: インソール(板状部材)

H: 踵部領域(ソール踵領域)
M: 中足部領域(ソール中足領域)
F: 前足部領域(ソール前足領域)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0125】
【特許文献1】特許第3337971号公報(段落[0053]、[0054]、[0056]、[0057]、[0059]、[0060]および図1図2図3図5参照)
【特許文献2】特開2021-70358号公報(段落[0044]、[0074]、[0076]および図2図13図14A図14E参照)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図11H
図11I
図11J
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18