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特開2023-68795河川データ予測変数選択装置、河川データ予測変数選択方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068795
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】河川データ予測変数選択装置、河川データ予測変数選択方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20120101AFI20230511BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180122
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 江里子
(72)【発明者】
【氏名】山口 悟史
(72)【発明者】
【氏名】山保 成仁
(72)【発明者】
【氏名】楠田 尚史
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】河川の状態を予測するための変数を適切に選択できる河川データ予測変数選択装置を提供する。
【解決手段】複数の河川の接続状態を表す河川情報D11と、複数の前記河川に設けられた複数の観測点の位置情報を表す観測点情報D12と、複数の前記観測点における観測対象量の時系列データである観測情報D20と、に基づいて、何れかの前記観測点を含む複数の地点の相互間の関係を表す関連性データD40を算出する地点関連性算出部120と、前記関連性データD40に基づいて、指定された予測地点Yおよび予測時間Tに対応する予測変数を選択する予測変数選択部140と、を河川データ予測変数選択装置100に備えた。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の河川の接続状態を表す河川情報と、複数の前記河川に設けられた複数の観測点の位置情報を表す観測点情報と、複数の前記観測点における観測対象量の時系列データである観測情報と、に基づいて、何れかの前記観測点を含む複数の地点の相互間の関係を表す関連性データを算出する地点関連性算出部と、
前記関連性データに基づいて、指定された予測地点および予測時間に対応する予測変数を選択する予測変数選択部と、を備える
ことを特徴とする河川データ予測変数選択装置。
【請求項2】
前記河川情報は、さらに、複数の前記河川が属する水系と、複数の前記河川の流れの向きと、を含み、
前記観測点情報は、さらに、複数の前記観測点が属する水系を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の河川データ予測変数選択装置。
【請求項3】
前記関連性データは、
複数の前記地点の相互間における流量または水位の相互関連度を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の河川データ予測変数選択装置。
【請求項4】
前記地点関連性算出部は、前記観測点以外の地点であって前記河川の分岐点における前記観測対象量の推定値の時系列データである分岐点データを算出する機能をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の河川データ予測変数選択装置。
【請求項5】
前記予測変数選択部は、何れかの前記地点と、前記予測地点との間における前記観測対象量の相互関連度を算出する機能をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の河川データ予測変数選択装置。
【請求項6】
前記予測変数選択部は、前記予測時間に対応して使用可能なデータを有する一または複数の前記地点である関連地点群を選択する機能をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の河川データ予測変数選択装置。
【請求項7】
前記予測変数選択部は、前記関連地点群の中から、下流側に位置する一または複数の前記地点である適用地点群を選択する機能をさらに有する
ことを特徴とする請求項6に記載の河川データ予測変数選択装置。
【請求項8】
前記予測変数選択部は、前記適用地点群に属する各々の前記地点における前記観測情報のうち、前記予測地点との相互関連度が最大となる時刻のデータを、前記予測変数として選択する
ことを特徴とする請求項7に記載の河川データ予測変数選択装置。
【請求項9】
前記地点関連性算出部は、前記観測情報を前記観測情報の値に応じた複数のグループに分類し、前記グループ毎に相互関連度を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の河川データ予測変数選択装置。
【請求項10】
前記地点関連性算出部は、
前記分岐点のうち分流が生じるものについては、分流直後の分岐毎の前記観測対象量を推定する
ことを特徴とする請求項4に記載の河川データ予測変数選択装置。
【請求項11】
複数の河川の接続状態を表す河川情報と、複数の前記河川に設けられた複数の観測点の位置情報を表す観測点情報と、複数の前記観測点における観測対象量の時系列データである観測情報と、に基づいて、何れかの前記観測点を含む複数の地点の相互間の関係を表す関連性データを算出する地点関連性算出ステップと、
前記関連性データに基づいて、指定された予測地点および予測時間に対応する予測変数を選択する予測変数選択ステップと、を備える
ことを特徴とする河川データ予測変数選択方法。
【請求項12】
コンピュータを、
複数の河川の接続状態を表す河川情報と、複数の前記河川に設けられた複数の観測点の位置情報を表す観測点情報と、複数の前記観測点における観測対象量の時系列データである観測情報と、に基づいて、何れかの前記観測点を含む複数の地点の相互間の関係を表す関連性データを算出する地点関連性算出手段、
前記関連性データに基づいて、指定された予測地点および予測時間に対応する予測変数を選択する予測変数選択手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川データ予測変数選択装置、河川データ予測変数選択方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、下記特許文献1の要約には、「本発明は、時間的な先後性を有する変数に関するデータを対象としたデータ分析方法であり、変数間の先後性を考慮しながら変数選択できる回帰法を適用することにより、変数間に存在する特定の変数に関係する因果関係構築に適した疎な条件付き独立関係の抽出ステップを備える。抽出ステップは、設定した目的変数に対して先行する変数中から説明変数を選択すると共に、選択された説明変数を新たな目的変数に再設定して新たな目的変数に対して先行する変数中から新たな説明変数を再選択する選択ステップにより行える。こうして各変数間に存在する的確な条件付き独立関係ひいては因果関係を明らかにできる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-191634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1においては河川の状態を予測するための変数を適切に選択する点については特に記載されていない。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、河川の状態を予測するための変数を適切に選択できる河川データ予測変数選択装置、河川データ予測変数選択方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の河川データ予測変数選択装置は、複数の河川の接続状態を表す河川情報と、複数の前記河川に設けられた複数の観測点の位置情報を表す観測点情報と、複数の前記観測点における観測対象量の時系列データである観測情報と、に基づいて、何れかの前記観測点を含む複数の地点の相互間の関係を表す関連性データを算出する地点関連性算出部と、前記関連性データに基づいて、指定された予測地点および予測時間に対応する予測変数を選択する予測変数選択部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、河川の状態を予測するための変数を適切に選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】河川ネットワーク情報の一例を示す図である。
図2】観測点の配置例を示す図である。
図3】観測情報の一例を示す図である。
図4】第1実施形態による河川データ予測変数選択装置のブロック図である。
図5】コンピュータのブロック図である。
図6】地点関連性処理ルーチンのフローチャートである。
図7】予測変数選択処理ルーチンのフローチャートである。
図8】分岐点データを算出する処理の具体例を示す模式図である。
図9】関連性データを算出する処理の具体例を示す模式図である。
図10】予測変数を決定する処理内容を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
河川管理やダム管理においては、様々な各地点での流量または水位を予測する。そのために、水位計や雨量計などの各観測点データを使用して、流量または水位を求めたい地点と各観測点との間の流下遅れ時間や、河川の関係性を考慮して変数を設定し、求めたい地点の流量や水位を予測している。時間の先後性のあるデータを対象とした変数選択方法としては、例えば上述の特許文献1の内容を応用できる。すなわち、特許文献1を応用すると、時間的な先後性のあるデータを対象とし、回帰法を用いて因果関係を明らかにして説明変数を選択することが可能であると考えられる。
【0009】
しかし、特許文献1を応用した上述の技術において、河川データ(流量、水位等)を予測するための変数を選択する際、単に河川の時系列データを用いたのでは因果関係の薄い変数が選択される可能性がある。また、ある河川の時系列データを単に比較すると、例えば本川にある予測地点に対して支川にあるデータは関連性がない変数として選択されないという問題も生じ得る。そこで、後述する実施形態では、河川ネットワーク情報および観測情報と、予測地点の位置情報と、予測対象時間とを用いることで、河川データ予測モデルに使用する変数を自動で選択できるようにしている。これにより、後述する実施形態によれば、河川のネットワーク関係を加味しながら、河川データ予測モデルに使用する変数を自動選択することができる。
【0010】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態について、添付図面に基づいて説明する。以下の記載および図面は、第1実施形態を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、実施形態の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本実施形態は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
また、同一または同様な機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。但し、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0011】
〈データ構成〉
まず、第1実施形態において適用されるデータ構成について説明する。
図1は、河川ネットワーク情報D10の一例を示す図である。
河川ネットワーク情報D10は、予測対象となる複数の河川に対する河川情報D11と、観測点情報D12とを含んでいる。
河川情報D11は、水系30,40のうち何れかに属している複数の河川の接続状態を示すものである。以下の説明において、「水系」とは相互に交わっていない河川群を表す。図示の例においても、水系30,40は、相互に交わっていない。水系30の河川は、本川32(河川)と、支川34(河川)と、を含んでいる。また、水系40の河川は、本川42(河川)と、支川44~49(河川)と、を含んでいる。
【0012】
各河川に沿って示した破線矢印は、各河川の流れの向きを示しており、何れも図中で左から右に向かう向きになっている。水系30,40においては、複数の河川が分流または合流する箇所が存在する。これらの箇所を総称して分岐点と呼ぶ。図1において、水系30には分岐点am1(地点)が含まれている。また、水系40には、分岐点bn1~bn4(地点)が含まれている。このように、河川情報D11は、各河川の形状、属する水系、流れの向き、本川または支川の区別、分岐点の位置等を表す情報である。
【0013】
水系30,40には、それぞれ一または複数の観測点が設けられる。後述する図2の例においては、水系30に観測点a1(地点)、水系40に観測点b1~b8(地点)が設けられている。各観測点には、水位計、流量計等の計測機器(図示せず)が設けられる。図1に示すように、観測点情報D12は、各観測点a1,b1~b8について、当該観測点が属する水系(30または40)と、当該観測点の設置位置の位置情報と、を含んでいる。ここで、位置情報には、各観測点の緯度、経度および標高が含まれる。但し、位置情報は各観測点の位置を特定できる情報であればよく、図示のものに限定されるわけではない。
【0014】
図2は、観測点の配置例を示す図である。
図2において、水系30には、観測点a1が設けられている。また、水系40には、観測点b1~b8が設けられている。上述したように、各観測点a1,b1~b8には、図示せぬ水位計、流量計等の計測機器が設置されている。これにより、各観測点においては、水位Hと、流量Qと、の時系列情報である水位H(t)と、流量Q(t)と、が計測される。これら観測点における水位H(t)および流量Q(t)を総称して観測情報D20と呼ぶ。
【0015】
図3は、観測情報D20の一例を示す図である。
観測情報D20は、全ての観測点a1,b1~b8図2参照)に対応して存在するが、図3においては、観測点a1に対応する観測情報D20である観測情報D20-a1のみを図示する。
図3において、観測情報D20-a1は、観測日時に対する観測情報を含んでいる。観測情報は、水位Hと、流量Qと、を含んでいる。但し、観測情報D20は図示のものに限られず、他の情報を含んでいてもよい。
【0016】
〈第1実施形態の構成〉
図4は、第1実施形態による河川データ予測変数選択装置100のブロック図である。
図4において、河川データ予測変数選択装置100(以下、単に装置100と呼ぶことがある)は、データ記憶部110と、地点関連性算出部120(地点関連性算出ステップ、地点関連性算出手段)と、入力部130と、予測変数選択部140(予測変数選択手段、予測変数選択ステップ)と、を備えている。
【0017】
入力部130は、ユーザ等の操作に基づいて、予測変数選択部140に対して、予測地点Yと、予測時間Tと、を入力する。ここで、予測地点Yとは、流量Qおよび/または水位Hの予測対象となる地点である。また、予測時間Tとは、予測地点Yにおける現時点から何時間後の流量Qおよび/または水位Hを予測するかを表すものである。データ記憶部110は、河川ネットワーク情報D10と、上述した観測情報D20と、を記憶する。図1に示したように、河川ネットワーク情報D10は、河川情報D11と、観測点情報D12と、を含む。
【0018】
地点関連性算出部120は、分岐点データD30と、関連性データD40と、を算出し、これらを観測情報D20とともに予測変数選択部140に供給する。ここで、分岐点データD30とは、観測点ではない分岐点について算出されたデータであって、観測情報D20(図3参照)に対応する項目を有する時系列データである。また、関連性データD40は、各観測点と各分岐点との関係を表すデータである。予測変数選択部140は、予測地点Yの予測時間Tにおける流量Qおよび/または水位Hを予測するために用いる予測変数を選択する。ここで、予測変数とは、観測情報D20または分岐点データD30の一部である。その他、装置100における各部の具体的な機能については後述する。
【0019】
図5は、コンピュータ900のブロック図である。図4に示した装置100は、図5に示すコンピュータ900を備えている。
図5において、コンピュータ900は、CPU901と、RAM902と、ROM903と、HDD904と、通信I/F905と、入出力I/F906と、メディアI/F907とを備える。通信I/F905は、通信回路915に接続される。入出力I/F906は、入出力装置916に接続される。
【0020】
メディアI/F907は、記録媒体917からデータを読み書きする。ROM903には、CPUによって実行される制御プログラム、各種データ等が格納されている。CPU901は、RAM902に読み込んだアプリケーションプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。先に図4に示した、装置100の内部は、アプリケーションプログラム等によって実現される機能をブロックとして示したものである。
【0021】
〈第1実施形態の動作〉
図6は地点関連性処理ルーチンのフローチャートである。なお、本ルーチンは、地点関連性算出部120(図4参照)おいて実行される。
図6において処理がステップS12に進むと、地点関連性算出部120は、分岐点データD30を算出する。ここで、分岐点データD30は、観測点情報D12(図3参照)と同様のデータ構成を有し、分岐点am1,bn1~bn4図1参照)における流量および水位の推定値を列挙した時系列データである。
【0022】
分岐点データD30は、例えば次のように推定することができる。まず、分岐点の上流側に位置する一または複数の観測点における観測情報D20を、時間をシフトしながら合成する。次に、この合成結果を、分岐点の下流側に位置する観測点における観測情報D20と比較して両者の相互関連度を求める。このようにして、最も相互関連度が高くなるシフト時間を求める。次に、上流側の観測点、下流側の観測点、および分岐点の位置情報に基づいて、分岐点におけるシフト時間を推定する。上流側の観測情報D20に対して、この推定したシフト時間だけシフトした結果によって、分岐点データD30を推定することができる。
【0023】
また、分岐点の中には、例えば図1に示した分岐点bn2のように、河川が分流する分岐点も存在する。この種の分岐点について、地点関連性算出部120は、分流直後の分岐毎の流量Q(t)および水位H(t)も推定する。すなわち、分流直後の分岐毎の流量Q(t)および水位H(t)も分岐点データD30に含まれる。分流直後の分岐毎の流量Q(t)および水位H(t)は、例えば、分岐点の上流における観測点および分岐点の下流における複数の観測点とにおける観測情報D20と、これら観測点および分岐点の相互間の距離と、に応じて推測可能である。但し、分岐点データD30の推定方法は、上述したものに限定されるものではない。分岐点データD30を推定する処理の具体例については後述する。
【0024】
次に、処理がステップS14に進むと、地点関連性算出部120は、関連性データD40を算出する。ここで、関連性データD40は、観測点a1,b1~b8と、分岐点am1,bn1~bn4との関連性を示すデータである。関連性データD40は、上流のある地点(例えば観測点)から下流の他の地点(例えば分岐点)へ流れつくまでの時間である「流下遅れ時間」と、地点間における時系列情報の関係である「相互関連度」と、を含む。なお、「相互関連度」は、例えば相関係数を適用できるが、これに限られるものではない。また、「流下遅れ時間」は、例えば「相互関連度」が最大になる時間である。
【0025】
図7は、予測変数選択部140で実行される予測変数選択処理ルーチンのフローチャートである。
図7において処理がステップS22に進むと、予測変数選択部140は、地点関連性算出部120から分岐点データD30と、関連性データD40と、を取得する。さらに、予測変数選択部140は、入力部130から予測時間Tと、予測地点Yと、を取得する。
【0026】
次に、処理がステップS24に進むと、予測変数選択部140は、入力部130から入力した予測地点Yの位置情報に基づいて、河川ネットワーク情報D10のうち予測地点Yと同一水系にある地点群を選択する。選択された地点群を同一水系地点群GAと呼ぶ。例えば、予測地点Yが水系40(図2参照)に属する場合は、同一水系地点群GAには、観測点b1~b8と分岐点bn1~bn4と、が含まれることになる。
【0027】
次に、処理がステップS26に進むと、予測変数選択部140は、予測地点Yが同一水系地点群GAに含まれるか否かを判定する。例えば、予測地点Yが水系40に含まれる場合は、予測変数選択部140は、予測地点Yが観測点b1~b8または分岐点bn1~bn4の何れかと一致するか否かを判定する。
【0028】
ステップS26において「No」と判定されると、処理はステップS28に進む。ここでは、予測変数選択部140は、予測地点Yの位置情報と、同一水系地点群GAの各位置情報と、に基づいて、予測地点情報D50を算出する。予測地点情報D50は、同一水系地点群GAに含まれる上流側の最寄りの地点から予測地点Yに至るまでの流下遅れ時間と、相互関連度と、を含んでいる。その算出方法は、ステップS12(図6参照)において説明した方法を採用することができる。また、例えば隣接する上流の観測点を基準とした他の観測点同士の相互関連度を代用して、予測地点Yにおける相互関連度として用いることも考えられる。但し、予測地点Yにおける相互関連度を求める方法は、これらの方法に限定されるわけではない。
【0029】
次に、処理がステップS30に進むと、予測変数選択部140は、予測時間Tが経過した際の予測地点Yにおける流量Qおよび/または水位Hに対して、使用可能なデータ有する地点を、同一水系地点群GAの中から選択する。選択された一または複数の地点の集合を関連地点群GBと呼ぶ。ここで、「使用可能」とは、予測時間Tから流下遅れ時間分だけ過去にずらした場合でも水位Hおよび/または流量Qのデータが存在し、変数として使用できることを指す。
【0030】
次に、処理がステップS32に進むと、予測変数選択部140は、関連地点群GBの中から適用地点群GCを選択する。適用地点群GCは、次のようにして選択される。まず、予測変数選択部140は、関連地点群GBの各地点と予測地点Yとを結ぶ範囲内における分岐(本川および/または支川)を特定する。そして、各分岐における最も下流側の地点群(観測点および/または分岐点)を選択する。この選択された地点群が適用地点群GCである。
【0031】
次に、処理がステップS34に進むと、予測変数選択部140は、予測変数を決定する。その手順を説明する。まず、予測変数選択部140は、適用地点群GCに対する観測情報D20または分岐点データD30のうち、予測時間Tに対応して使用可能であって相互関連度が最大になる一つの時刻を選択する。ここで、「使用可能」の意義は、先にステップS30において説明したものと同義であり、予測時間Tから流下遅れ時間分だけ過去にずらした場合でも水位Hおよび/または流量Qのデータが存在し、変数として使用できることを指す。例えば、予測時間Tが「3時間」であって、予測地点Yと、上流の観測点との流下遅れ時間が「4時間」であった場合を想定してみる。この場合、上流の観測点における現在時刻から1時間前のデータが必要になるが、そのデータは存在するため「使用可能」である。
【0032】
また、適用地点群GCに、予測地点Yの上流における分岐点が含まれている場合を想定してみる。分岐点における分岐点データD30は、上述したように、さらに上流に位置する観測点における観測情報D20に基づいて推定されたものである。従って、これら上流の観測点から分岐点に至るまでの流下遅れ時間に相当するデータも分岐点データD30には含まれる。これにより、分岐点から予測地点Yまでの流下遅れ時間より予測時間Tが長い場合であっても、当該分岐点データD30が「使用可能」になる場合もある。このように、図7のステップS34では、予測地点Yの上流における一または複数の観測情報D20および/または分岐点データD30において、それぞれ一つの時刻tにおける流量Qおよび/または水位Hが選択される。予測変数選択部140は、これら選択された流量Qおよび/または水位Hを予測変数として出力する。
【0033】
図8は、分岐点データD30を算出する処理(図6のステップS12)の具体例を示す模式図である。
図8において、水系40の分岐点bn1における流量を求める手順について説明する。分岐点bn1は、観測点ではないため、分岐点bn1における流量は直接的な計測値としては得られない。そこで、地点関連性算出部120(図4参照)は、上流の観測点b1,b2における流量Qb1,Qb2に基づいて、分岐点bn1における予測流量Qbn1を算出する。より具体的には、地点関連性算出部120は、下式(1)に基づいて時系列データである予測流量Qbn1(t)を算出する。
【0034】
bn1(t)=k1・Qb1(t-Sb1,bn1)+k2・Qb2(t-Sb2,bn1) …式(1)
【0035】
式(1)において、Qb1,Qb2は、観測点b1,b2における流量である。Sb1,bn1は観測点b1から分岐点bn1までの流下遅れ時間であり、Sb2,bn1は観測点b2から分岐点bn1までの流下遅れ時間である。また、k1,k2は観測点b1,b2に対する重み係数である。
予測流量Qbn1は、現在時刻よりも、「流下遅れ時間Sb1,bn1,Sb2,bn1のうち短い側」だけ将来のデータまで取得できているとみなせる。例えば、「Sb1,bn1>Sb2,bn1」が成立する場合には、図8に示すように、予測流量Qbn1は、現在時刻tnowよりも未来の「tnow+Sb2,bn1」まで取得できているとみなせる。
【0036】
ところで、図8に示す本川42においては、分岐点bn1の下流には観測点b4が設けられており、当該観測点b4における流量Qb4も計測される。これにより、流量Qb1,Qb2,Qb4と、観測点b1,b2,b4の位置情報と、分岐点bn1の位置情報と、に基づいて、上述の式(1)における流下遅れ時間Sb1,bn1,Sb2,bn1等を求めることができる。その手順を以下説明する。
【0037】
まず、式(1)における重み係数k1,k2が「1」であると仮定する。次に、観測点b1,b2の流量Qb1,Qb2の時刻をずらして合成し、合成データを求める。次に、様々な合成パターンによる合成データと、流量Qb4との相互関連度を求め、最大の相互関連度を有する合成パターンを特定する。そして、特定した合成パターンと、各観測点の位置情報と、に基づいて、式(1)における流下遅れ時間Sb1,bn1,Sb2,bn1等を推定することができる。
【0038】
例えば、「最大の相互関連度を有する合成パターン」において、流量Qb1,Qb2の間に2時間のずれが存在し、Qb1(t-2)+Qb2(t)に対する流量Qb4(t)の流下遅れ時間が7時間であったとする。また、観測点b1と分岐点bn1との距離をLb1,bn1(図示せず)とし、観測点b2と分岐点bn1との距離をLb2,bn1(図示せず)とし、分岐点bn1と観測点b4との距離をLbn1,b4(図示せず)としたとき、「Lb1,bn1/Lbn1,b4=2」、「Lb2,bn1/Lbn1,b4=4/3」であったとする。ここで、各河川の流速が一定であると仮定すると、流下遅れ時間の比は距離の比に等しくなる。
【0039】
従って、流下遅れ時間Sb1,bn1は「6時間」、流下遅れ時間Sb2,bn1は「4時間」であると推定できる。また、分岐点bn1から観測点b4までの流下遅れ時間Sbn1,b4は、「3時間」であると推定できる。このように、流下遅れ時間Sb1,bn1,Sb2,bn1が推定されると、上述の式(1)によって、分岐点bn1の予測流量Qbn1(t)を算出することができる。また、予測流量Qbn1(t)と同様に、分岐点bn1における予測水位Hbn1(t)も算出することができる。但し、予測流量Qbn1(t)および予測水位Hbn1(t)の推定方法は上述したものに限定されるわけではない。
【0040】
図9は、関連性データD40を算出する処理(図6のステップS14)の具体例を示す模式図である。
図9に示すテーブル202は、水系40における各地点間の流下遅れ時間を記憶するテーブルである。地点関連性算出部120は、上述した流下遅れ時間Sb1,bn1,Sb2,bn1と同様に、他の流下遅れ時間も計算し、テーブル202を作成する。さらに、地点関連性算出部120は、流下遅れ時間を計算した地点間の相互関連度も算出する。その一例として、図9に示すグラフ204は、分岐点bn1と、観測点b4との間の相互関連度を示す。流下遅れ時間(図示の例では3時間)には、相互関連度の最大値(max)におけるずれ時間が採用される。
【0041】
ここで、相互関連度としては、ある一定期間内の二地点の観測情報D20に対して求めた相関係数を採用することができる。ここで、相互関連度は流量にかかわらず一定にしてもよいが、流量に応じて相互関連度を定めると一層好ましい。すなわち、流量が大きくなるほど、流下遅れ時間が短くなるように相互関連度を定めることが好ましい。例えば、数個の流量閾値を用いて、流量の大きさごとに観測情報D20を分割し、分割した観測情報D20に応じて、各流量における相互関連度を算出するとよい。なお、水位についても同様であり、水位が高くなるほど流下遅れ時間が短くなるように相互関連度を定めることが好ましい。これにより、河川の状態に適合した相互関連度を適用することができ、より適切に予測変数を定めることができる。
【0042】
図10は、予測変数を決定する処理内容を模式的に示す図である。
図10の水系40において、予測地点Y1,Y2が指定されたとする。ここで、予測地点Y1は、観測点b5と一致しており、予測地点Y2は観測点の無い位置である。以下説明する例においては、予測対象および予測変数として何れも流量Qを採用した例を説明する。しかし、水位Hなど、他の河川データを予測対象および予測変数として採用してもよい。
【0043】
図10においてテーブル10Y1は、予測地点Y1について、予測時間Tが5時間、6時間、10時間、および13時間である場合の予測変数を示すテーブルである。また、テーブル10Y2は、予測地点Y2について、予測時間Tが1時間、2時間、6時間、および9時間である場合の予測変数を示すテーブルである。以下、これらテーブル10Y1,10Y2に示すように予測変数が決定される理由を説明する。
【0044】
(Y1の5時間後の予測)
まず、5時間後の予測地点Y1について検討する。上述したステップS24(図7参照)では、水系40に属する全ての地点が同一水系地点群GAとして選択される。すなわち、同一水系地点群GAには、観測点b1~b8と分岐点bn1~bn4とが含まれる。図10に示す例において予測地点Y1は観測点b5に一致するため、図7においてステップS28はスキップされ、次のステップS30において関連地点群GBが選択される。上記例においては、5時間の予測時間Tが経過した際、流下遅れ時間に鑑みて使用可能なデータ有する地点は、観測点b1~b4および分岐点bn1であるため、これらの地点が関連地点群GBとして選択される。
【0045】
次に、図7のステップS32においては、適用地点群GCが選択される。上述した例では、適用地点群GCは、関連地点群GBのうち最も下流側に位置する観測点b4のみになる。次に、図7のステップS34においては、予測変数が決定される。図10に示す水系40において、観測点b4から予測地点Y1(すなわち観測点b5)までの流下遅れ時間は5時間であるため、予測地点Y1における5時間後の予測流量QY1(t+5)を算出するために選択される予測変数は、現時点の観測点b4の流量Qb4(t)になる。
【0046】
(Y1の6時間後の予測)
次に、6時間後の予測地点Y1について検討する。
この場合も、図7のステップS24においては、「5時間後」の場合と同一の同一水系地点群GAが選択される。但し、6時間の予測時間Tが経過した際、流下遅れ時間に鑑みて使用可能なデータ有する地点は、観測点b1~b3および分岐点bn1であり、観測点b4のデータは使用に適さなくなる。従って、ステップS30では、観測点b1~b3および分岐点bn1が関連地点群GBとして選択される。
【0047】
次に、図7のステップS32においては、関連地点群GBが属する各分岐のうち、最も下流側に位置する観測点b3および分岐点bn1が適用地点群GCとして選択される。図10に示す水系40において、観測点b3から予測地点Y1までの流下遅れ時間は8+5=13時間であり、分岐点bn1から予測地点Y1までの流下遅れ時間は3+5=8時間である。このため、観測点b3の7時間前の流量Qb3(t-7)と、分岐点bn1の2時間前の予測流量Qbn1(t-2)と、が予測地点Y1における6時間後の予測流量QY1(t+6)を算出するための予測変数として選択される。
【0048】
(Y1の10時間後の予測)
次に、10時間後の予測地点Y1について検討する。10時間の予測時間Tが経過した際、流下遅れ時間に鑑みて使用可能なデータ有する地点は、観測点b1~b3および分岐点bn1であり、これらが関連地点群GBとして選択される。すなわち、関連地点群GBは、予測時間Tが6時間の場合と同一になる。関連地点群GBに分岐点bn1が含まれている理由は、分岐点bn1のデータは、上流側の観測点b1,b2のデータを合成したものであり、4時間先まで未来の予測流量Qbn1が得られているためである。
【0049】
次に、図7のステップS32においては、関連地点群GBに係る各分岐のうち、最も下流側に位置する観測点b3および分岐点bn1が適用地点群GCとして選択される。すなわち、適用地点群GCも、予測時間Tが6時間である場合と同一になる。上述したように、観測点b3から予測地点Y1までの流下遅れ時間は13時間であり、分岐点bn1から予測地点Y1までの流下遅れ時間は8時間である。このため、観測点b3の3時間前の流量Qb3(t-3)と、分岐点bn1の2時間後の予測流量Qbn1(t+2)と、が予測地点Y1における10時間後の予測流量QY1(t+10)を算出するための予測変数として選択される。
【0050】
(Y1の13時間後の予測)
次に、13時間後の予測地点Y1について検討する。13時間の予測時間Tが経過した際、流下遅れ時間に鑑みて使用可能なデータ有する地点は、観測点b1,b3であり、これらが関連地点群GBとして選択される。次に、図7のステップS32においては、関連地点群GBが属する各分岐のうち、最も下流側に位置する観測点b1,b3が適用地点群GCとして選択される。
【0051】
図示のように、観測点b3から予測地点Y1までの流下遅れ時間は13時間であり、観測点b1から予測地点Y1までの流下遅れ時間は14時間である。このため、観測点b3の現在の流量Qb3(t)と、観測点b1の1時間前の流量Qb1(t-1)と、が予測地点Y1における13時間後の予測流量QY1(t+13)を算出するための予測変数として選択される。
【0052】
(Y2の1時間後の予測)
次に、1時間後の予測地点Y2について検討する。上述したステップS24(図7参照)では、水系40に属する全ての地点が同一水系地点群GAとして選択される。予測地点Y2は同一水系地点群GAに含まれないため、処理はステップS28に進む。ここで、「観測点b4から予測地点Y2までの距離」と「予測地点Y2から観測点b5までの距離」との比が1:4であり、観測点b4から観測点b5までの流下遅れ時間Sb4,b5が5時間であったとする。図7のステップS28では、予測変数選択部140は、流下遅れ時間Sb4,b5と距離の比率とに基づいて、観測点b4から予測地点Y2までの流下遅れ時間Sb4,Y2は1時間であると算出する。また、予測変数選択部140は、上流の各地点と観測点b4との相互関連度を1時間ずらしたものを、上流の各地点と予測地点Y2との相互関連度として採用する。
【0053】
1時間の予測時間Tが経過した際、流下遅れ時間に鑑みて使用可能なデータ有する地点は、観測点b1~b4および分岐点bn1である。従って、次のステップS30では、これらの地点が関連地点群GBとして選択される。次に、図7のステップS32においては、適用地点群GCが選択される。上述した例では、適用地点群GCは、関連地点群GBのうち最も下流側に位置する観測点b4のみになる。次に、図7のステップS34においては、予測変数が決定される。先に、観測点b4から予測地点Y2までの流下遅れ時間は1時間であると推定されたため、予測地点Y2における1時間後の予測流量QY2(t+1)を算出するために選択される予測変数は、現時点の観測点b4の流量Qb4(t)になる。
【0054】
(Y2の2時間後の予測)
次に、2時間後の予測地点Y2について検討する。2時間の予測時間Tが経過した際、流下遅れ時間に鑑みて使用可能なデータ有する地点は、観測点b1,b2,b3および分岐点bn1である。従って、図7のステップS30では、これらの地点が関連地点群GBとして選択される。次に、ステップS32においては、これらのうち最も下流側に位置する観測点b3および分岐点bn1が適用地点群GCとして選択される。次に、図7のステップS34においては、予測変数が決定される。先に、観測点b4から予測地点Y2までの流下遅れ時間は1時間であると推定されたため、予測地点Y2における2時間後の予測流量QY2(t+2)を算出するために選択される予測変数は、2時間前の予測流量Qbn1(t-2)と、7時間前の流量Qb3(t-7)と、になる。
【0055】
(Y2の6時間後の予測)
次に、6時間後の予測地点Y2について検討する。6時間の予測時間Tが経過した際、流下遅れ時間に鑑みて使用可能なデータ有する地点は、観測点b1,b2,b3および分岐点bn1であり、これらが関連地点群GBとして選択される。なお、上述したように、分岐点bn1のデータは、上流側の観測点b1,b2のデータを合成したものであり、4時間先まで未来の予測流量Qbn1が得られている。次に、図7のステップS32においては、関連地点群GBのうち最も下流側に位置する観測点b3および分岐点bn1が適用地点群GCとして選択される。次に、図7のステップS34においては、予測変数が決定される。先に、観測点b4から予測地点Y2までの流下遅れ時間は1時間であると推定されたため、予測地点Y2における6時間後の予測流量QY2(t+6)を算出するために選択される予測変数は、2時間先の予測流量Qbn1(t+2)と、3時間前の流量Qb3(t-3)と、になる。
【0056】
(Y2の9時間後の予測)
次に、9時間後の予測地点Y2について検討する。9時間の予測時間Tが経過した際、流下遅れ時間に鑑みて使用可能なデータ有する地点は、観測点b1,b3であり、これらが関連地点群GBとして選択される。次に、図7のステップS32においては、関連地点群GBのうち最も下流側に位置する観測点b1,b3が、適用地点群GCとして選択される。次に、図7のステップS34においては、予測変数が決定される。先に、観測点b4から予測地点Y2までの流下遅れ時間は1時間であると推定されたため、予測地点Y2における9時間後の予測流量QY2(t+9)を算出するために選択される予測変数は、1時間前の流量Qb1(t-1)と、現在の流量Qb3(t)と、になる。
【0057】
[実施形態の効果]
以上のように上述の実施形態によれば、河川データ予測変数選択装置(100)は、複数の河川(32,34,42,44~49)の接続状態を表す河川情報(D11)と、複数の河川(32,34,42,44~49)に設けられた複数の観測点(a1,b1~b8)の位置情報を表す観測点情報(D12)と、複数の観測点(a1,b1~b8)における観測対象量(Q(t),H(t))の時系列データである観測情報(D20)と、に基づいて、何れかの観測点(a1,b1~b8)を含む複数の地点(a1,b1~b8,am1,bn1~bn4)の相互間の関係を表す関連性データ(D40)を算出する地点関連性算出部(120)と、関連性データ(D40)に基づいて、指定された予測地点(Y)および予測時間(T)に対応する予測変数を選択する予測変数選択部(140)と、を備える。
【0058】
これにより、関連性データ(D40)に基づいて、指定された予測地点(Y)および予測時間(T)に対応する予測変数を予測できるため、河川の状態を予測するための予測変数を適切に選択できる。より具体的には、河川のネットワーク関係を加味しながら河川データ予測モデルに使用する予測変数を自動選択することができる。
【0059】
また、河川情報(D11)は、さらに、複数の河川(32,34,42,44~49)が属する水系(30,40)と、複数の河川(32,34,42,44~49)の流れの向きと、を含み、観測点情報(D12)は、さらに、複数の観測点(a1,b1~b8)が属する水系(30,40)を含むと一層好ましい。これにより、河川が属する水系および河川の流れの向きに対応して、予測変数を一層適切に選択できる。
【0060】
また、関連性データ(D40)は、複数の地点(a1,b1~b8,am1,bn1~bn4)の相互間における流量(Q(t))または水位(H(t))の相互関連度を含むと一層好ましい。これにより、流量(Q(t))または水位(H(t))に対応する予測変数を一層適切に選択できる。
【0061】
また、地点関連性算出部(120)は、観測点(a1,b1~b8)以外の地点であって河川(32,34,42,44~49)の分岐点(am1,bn1~bn4)における観測対象量(Q(t),H(t))の推定値の時系列データである分岐点データ(D30)を算出する機能をさらに有すると一層好ましい。これにより、分岐点(am1,bn1~bn4)の状態を適切に予測できるため、予測変数を一層適切に選択できる。
【0062】
また、予測変数選択部(140)は、何れかの地点(a1,b1~b8,am1,bn1~bn4)と、予測地点(Y)との間における観測対象量(Q(t),H(t))の相互関連度を算出する機能をさらに有すると一層好ましい。これにより、算出した相互関連度に基づいて、予測変数を一層適切に選択できる。
【0063】
また、予測変数選択部(140)は、予測時間(T)に対応して使用可能なデータを有する一または複数の地点(a1,b1~b8,am1,bn1~bn4)である関連地点群(GB)を選択する機能をさらに有すると一層好ましい。これにより、使用可能なデータを有する地点に基づいて、予測変数を一層適切に選択できる。
【0064】
また、予測変数選択部(140)は、関連地点群(GB)の中から、下流側に位置する一または複数の地点(a1,b1~b8,am1,bn1~bn4)である適用地点群(GC)を選択する機能をさらに有すると一層好ましい。これにより、予測地点(Y)に近接する地点を適用地点群(GC)として選択できるため、予測変数を一層適切に選択できる。
【0065】
また、予測変数選択部(140)は、適用地点群(GC)に属する各々の地点(a1,b1~b8,am1,bn1~bn4)における観測情報(D20)のうち、予測地点(Y)との相互関連度が最大となる時刻のデータを、予測変数として選択すると一層好ましい。これにより、予測変数を一層適切に選択できる。
【0066】
また、地点関連性算出部(120)は、観測情報(D20)を観測情報(D20)の値に応じた複数のグループに分類し、グループ毎に相互関連度を算出すると一層好ましい。これにより、観測情報(D20)の値に応じた相互関連度を算出できるため、予測変数を一層適切に選択できる。
【0067】
また、地点関連性算出部(120)は、分岐点(am1,bn1~bn4)のうち分流が生じるもの(bn2)については、分流直後の分岐毎の観測対象量(Q(t),H(t))を推定すると一層好ましい。これにより、分岐点(am1,bn1~bn4)よりも下流の予測地点(Y)に対応して、予測変数を一層適切に選択できる。
【0068】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記実施形態の構成に他の構成を追加してもよく、構成の一部について他の構成に置換をすることも可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0069】
(1)上記実施形態における河川データ予測変数選択装置100のハードウエアは一般的なコンピュータによって実現できるため、図6図7に示したフローチャート、その他上述した各種処理を実行するプログラム等を記憶媒体に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【0070】
(2)図6図7に示した処理、その他上述した各処理は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。
【0071】
(3)上記実施形態において実行される各種処理は、図示せぬネットワーク経由でサーバコンピュータが実行してもよく、上記実施形態において記憶される各種データも該サーバコンピュータに記憶させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
30,40 水系
32 本川(河川)
34,42,44~49 支川(河川)
100 河川データ予測変数選択装置
120 地点関連性算出部(地点関連性算出ステップ、地点関連性算出手段)
140 予測変数選択部(予測変数選択手段、予測変数選択ステップ)
900 コンピュータ
T 予測時間
Y 予測地点
GB 関連地点群
GC 適用地点群
D11 河川情報
D12 観測点情報
D20 観測情報
D30 分岐点データ
D40 関連性データ
1,b1~b8 観測点(地点)
m1,bn1~bn4 分岐点(地点)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10