IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎車両株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-鉄道車両用腰掛け 図1
  • 特開-鉄道車両用腰掛け 図2A
  • 特開-鉄道車両用腰掛け 図2B
  • 特開-鉄道車両用腰掛け 図3
  • 特開-鉄道車両用腰掛け 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068875
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】鉄道車両用腰掛け
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/12 20060101AFI20230511BHJP
   B60N 2/75 20180101ALI20230511BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20230511BHJP
   A47C 1/032 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B60N2/12
B60N2/75
A47C7/54 B
A47C1/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180291
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葉田 良洋
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BA12
3B087BB07
3B087DC01
3B099BA08
3B099BA10
(57)【要約】
【課題】リクライニング角度に応じて肘掛けを快適に使うことのできる鉄道車両用腰掛けを提供する。
【解決手段】鉄道車両用腰掛けは、ユーザの臀部を下方から支持する座構造体と、前記ユーザの背中を背後から支持し、回転軸周りに第1位置から第2位置にリクライニング可能な背ずり構造体と、前記背ずり構造体の側方かつ前記座構造体の上方に配置され、前記ユーザの前腕を下方から支持する肘掛け構造体と、を備える。前記肘掛け構造体は、肘掛けと、前記肘掛けの後部を左右方向に延びた軸線周りに回動自在に前記背ずり構造体に連結するピボットと、前記ピボットよりも前方において、前記肘掛けを前後スライド自在に支持するサポートと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの臀部を下方から支持する座構造体と、
前記ユーザの背中を背後から支持し、回転軸周りに第1位置から第2位置にリクライニング可能な背ずり構造体と、
前記背ずり構造体の側方かつ前記座構造体の上方に配置され、前記ユーザの前腕を下方から支持する肘掛け構造体と、を備え、
前記肘掛け構造体は、
肘掛けと、
前記肘掛けの後部を左右方向に延びた軸線周りに回動自在に前記背ずり構造体に連結するピボットと、
前記ピボットよりも前方において、前記肘掛けを前後スライド自在に支持するサポートと、を含む、鉄道車両用腰掛け。
【請求項2】
前記肘掛けは、前記サポートによって前後スライド自在に係合されるガイドを有する、請求項1に記載の鉄道車両用腰掛け。
【請求項3】
前記肘掛けの下方に配置された側壁を含むベースを更に備え、
前記肘掛けは、
前記ユーザの前腕を支持する肘掛け本体部と、
前記肘掛け本体部から下方に突出する突出部と、を有し、
前記側壁は、上方に開口して前記突出部が上下スライド自在に上方から挿入される収容空間を画定し、
前記突出部は、前記背ずり構造体が前記第1位置と前記第2位置との間で移動するときに、前記収容空間への挿入が維持される突出量を有する、請求項1又は2に記載の鉄道車両用腰掛け。
【請求項4】
前記座構造体は、シートと、前記シートを支持するシートフレームと、前記シートフレームを前後方向にスライドさせるスライド構造と、を含み、
前記背ずり構造体は、前記回転軸を介して前記シートフレームに接続されており、
前記スライド構造は、前記非リクライニング位置から前記最大リクライニング位置に向かう前記背ずり構造体のリクライニングに伴って前記背ずり構造体の下端を降下させる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鉄道車両用腰掛け。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両用腰掛けに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、背ずりをリクライニング可能とした鉄道車両用腰掛けが開示されている。背ずりの下端付近に配置された回転軸周りに背ずりが傾動することで、リクライニングが実現される。背ずりの側方かつ前方には、ユーザの前腕を置くための肘掛けが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-344097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
肘掛けは、リクライニングとは無関係に固定的に配置されている。肘掛けは、背ずりが非リクライニング位置にあるときを基準にして設計されている場合、リクライニング角度が大きくなるにつれて、ユーザが肘掛けを快適に使いづらくなる。
【0005】
そこで本開示の一態様は、リクライニング角度に応じて肘掛けを快適に使うことのできる鉄道車両用腰掛けを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る鉄道車両用腰掛けは、ユーザの臀部を下方から支持する座構造体と、前記ユーザの背中を背後から支持し、回転軸周りに第1位置から第2位置にリクライニング可能な背ずり構造体と、前記背ずり構造体の側方かつ前記座構造体の上方に配置され、前記ユーザの前腕を下方から支持する肘掛け構造体と、を備える。前記肘掛け構造体は、肘掛けと、前記肘掛けの後部を左右方向に延びた軸線周りに回動自在に前記背ずり構造体に連結するピボットと、前記ピボットよりも前方において、前記肘掛けを前後スライド自在に支持するサポートと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、リクライニング時には、肘掛けがサポートによって支持された状態でありながら肘掛けの後部が背ずり構造体に追従して移動する。よって、ユーザは、リクライニング角度に応じて肘掛けを快適に使うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る鉄道車両用腰掛けを示す斜視図である。
図2A図2Aは、図1の腰掛けの骨格を示す斜視図である。
図2B図2Bは、図2Aの骨格の側面図である。
図3図3は、図1の腰掛けの非リクライニング時の側面図である。
図4図4は、図1の腰掛けのリクライニング時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る鉄道車両用腰掛け1を示す斜視図である。図1に示すように、腰掛け1は、リクライニング式であり、鉄道車両の客室に配置されるものである。腰掛け1は、その前後方向が鉄道車両の長手方向に向くように設置されるクロスシートである。即ち、腰掛け1の前後方向は、車両長手方向を意味する。腰掛け1の左右方向は、車幅方向を意味する。腰掛け1は、ベース2、座構造体3、背ずり構造体4及び肘掛け構造体5を備える。
【0011】
ベース2は、鉄道車両の客室の床面に直接的又は間接的に固定される。ベース2は、左右一対の側壁11を含む。座構造体3は、ベース2に支持されている。座構造体3は、ユーザの臀部を下方から支持するシート21を含む。シート21は、クッションを含む。背ずり構造体4は、座構造体3の後端部から上方に延びている。背ずり構造体4は、ユーザの背中を背後から支持する背ずり31を含む。背ずり構造体4は、リクライニング可能である。肘掛け構造体5は、背ずり構造体4の側方かつ座構造体3の上方に配置されている。肘掛け構造体5は、ユーザの前腕を下方から支持する肘掛け41を含む。肘掛け41は、側壁11の上方に配置されている。なお、肘掛け構造体5は、背ずり構造体4の前方に配置されているが、肘掛け構造体5が全体的に背ずり構造体4の前方に位置していなくても、肘掛け構造体5が部分的に背ずり構造体4の前方に位置していてもよい。
【0012】
肘掛け41は、肘掛け本体部41a及び突出部41bを有する。肘掛け本体部41aは、ユーザの前腕を支持するために前後方向に延びている。肘掛け本体部41aは、クッション部である。突出部41bは、肘掛け本体部41aの下面から下方に突出している。突出部41bは、前後方向に延びた左右一対の側板を有する。突出部41bは、例えば、箱形状を有する。
【0013】
突出部41bの前後方向長さは、肘掛け本体部41aの前後方向長さよりも短い。突出部41bの前後方向長さは、肘掛け本体部41aの前後方向長さの半分よりも長い。側壁11は、上方に開口する収容空間Sを画定している。肘掛け41の突出部41bは、上方から収容空間Sに挿入されている。肘掛け41の突出部41bは、収容空間Sに収容された状態で上下スライド自在である。
【0014】
図2Aは、図1の腰掛け1の骨格を示す斜視図である。図2Bは、図2Aの骨格の側面図である。図2A及びBに示すように、ベース2(図1参照)は、一対の板フレーム12及び一対のパイプフレーム13を含む。一対の板フレーム12は、一対の側壁11の内側面にそれぞれ固定されている。一対のパイプフレーム13は、座構造体3の下方において左右方向に延び、一対の板フレーム12を互いに連結している。
【0015】
座構造体3は、シート21(図1参照)と、シートフレーム22と、前スライド構造23と、後スライド構造24と、を含む。シートフレーム22は、シート21の下側に配置されてシート21を支持し、前スライド構造23及び後スライド構造24を介してベース2の板フレーム12に支持されている。即ち、シートフレーム22に支持されたシート21は、前スライド構造23及び後スライド構造24によってベース2に対して前後方向にスライド可能になっている。
【0016】
前スライド構造23は、ピン51及びスライダ52を有する。ピン51は、板フレーム12から左右方向内方に突出するように板フレーム12に固定されている。スライダ52は、シートフレーム22に固定されている。スライダ52は、前後方向に延びたガイド穴52aを有する。ガイド穴52aにはピン51が前後スライド自在に挿入されている。即ち、スライダ52は、前後スライド自在にピン51に案内される。
【0017】
後スライド構造24は、レール55及びスライダ56を有する。レール55は、シートフレーム22に固定され、前後方向に延びている。スライダ56は、板フレーム12に固定され、前後スライド自在にレール55に案内される。後スライド構造24では、レール55が前方かつ下方に向けて斜めに延びている。即ち、後スライド構造24は、非リクライニング位置から最大リクライニング位置に向かう背ずり構造体4のリクライニングに伴って背ずり構造体4の下端を降下させるように構成されている。
【0018】
背ずり構造体4は、背ずりフレーム32及び回転軸33を含む。背ずりフレーム32は、シートフレーム22の後部から上方に延びている。回転軸33は、背ずりフレーム32の下部をシートフレーム22の後部に回動自在に連結している。回転軸33の軸線は左右方向に延びている。背ずりフレーム32は、回転軸33周りに傾動可能となっている。背ずりフレーム32に固定された背ずり31は、回転軸33周りに傾動してリクライニング可能となっている。
【0019】
肘掛け構造体5は、ピボット42及びサポート43を含む。ピボット42は、肘掛け41の後端部を、左右方向に延びた軸線周りに回動自在に背ずりフレーム32に連結している。ピボット42は、回転軸33よりも上方に配置されている。具体的には、ピボット42は、肘掛け本体部41aよりも下方に配置され、肘掛け41の突出部41bの後端部を背ずりフレーム32に連結している。肘掛け41の突出部41bの前部には、ガイド41cが形成されている。ガイド41cは、例えば、前後方向に延びて左右方向に開口した長孔である。
【0020】
サポート43は、側壁11の収容空間S(図1参照)に配置されている。サポート43は、側壁11に固定されている。サポート43は、ピボット42よりも前方に配置されている。サポート43は、肘掛け41を前後スライド自在に支持する。サポート43は、例えば、肘掛け41のガイド41cに左右方向に挿入されたピンである。即ち、ガイド41cは、サポート43によって前後スライド自在に係合されている。
【0021】
図3は、図1の腰掛け1の非リクライニング時の側面図である。図4は、図1の腰掛けのリクライニング時の側面図である。図3及び4に示すように、ユーザ100が背ずり構造体4のロックを解除して背中で背ずり構造体4を後方に押すと、背ずり構造体4が非リクライニング位置X(第1位置)から最大リクライニング位置Y(第2位置)に向けてリクライニングする。非リクライニング位置Xは、アップライト位置とも称し得る。背ずり構造体4がリクライニングすると、前スライド構造23及び後スライド構造24によって座構造体3が前方に移動するとともに、背ずり構造体4の下端が前方かつ下方に移動する。
【0022】
背ずり構造体4が非リクライニング位置Xから最大リクライニング位置Yまで動作する全範囲において、肘掛け41の突出部41bが収容空間Sに挿入された状態が維持される。言い換えると、肘掛け本体部41aからの突出部41bの下方への突出量は、リクライニング全範囲において突出部41bが収容空間Sに挿入された状態が維持される量に設定されている。ピボット42は、非リクライニング位置Xでは収容空間Sよりも上方に位置するが、最大リクライニング位置Yでは収容空間S内に位置する。
【0023】
背ずり構造体4が非リクライニング位置Xから最大リクライニング位置Yまで移動するとき、肘掛け本体部41aの後端の上下変位量は、肘掛け本体部41aの前端の上下変位量よりも大きい。背ずり構造体4が非リクライニング位置Xから最大リクライニング位置Yまで移動するとき、肘掛け本体部41aの後端は、前方かつ下方に移動する。背ずり構造体4が非リクライニング位置Xから最大リクライニング位置Yまで移動するとき、肘掛け本体部41aの前端は、前方かつ上方に移動する。背ずり構造体4が非リクライニング位置Xから最大リクライニング位置Yまで移動するときのピボット42の上下変位量Lは、50mm以上90mm以下の値、好ましくは60mm以上80mm以下に設定されている。
【0024】
以上に説明した構成によれば、リクライニング時には、肘掛け41がサポート43によって支持された状態でありながら肘掛け41の後部が背ずり構造体4に追従して移動する。よって、ユーザ100は、リクライニング角度に応じて肘掛け41を快適に使うことができる。
【0025】
肘掛け41のガイド41cがサポート43に前後スライド自在に係合されているので、リクライニング時に肘掛け41を円滑に移動させながらも、肘掛け41をサポート43に連結させることができる。
【0026】
背ずり構造体4が非リクライニング位置Xと最大リクライニング位置Yとの間で移動するときに、肘掛け41の突出部41bが側壁11の収容空間Sに挿入された状態が維持されるので、リクライニングに関わらず、側面視における肘掛け41及び側壁11の視覚的一体性を保つことができ、外観を良好にすることができる。
【0027】
背ずり構造体4が非リクライニング位置Xから最大リクライニング位置Yまで移動するときのピボット42の上下変位量は50mm以上90mm以下の値であるので、リクライニングに伴って肘掛け41が十分に上下動し、ユーザ100はリクライニングに応じて肘掛け41を快適に使うことができる。
【0028】
前スライド構造23及び後スライド構造24は非リクライニング位置Xから最大リクライニング位置Yに向かう背ずり構造体4のリクライニングに伴って背ずり構造体4の下端を降下させるので、リクライニング時に肘掛け41を十分に降下させることができる。
【0029】
なお、サポート43は、肘掛け41に係合されずに下方から支持するように構成されてもよい。肘掛け41の突出部41bは省略されてもよい。その場合、側壁11の上面にサポートを設けて当該サポートが肘掛けの下面を支持してもよい。ガイド41cをピンとしてサポート43をガイド穴としてもよい。
【0030】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1 腰掛け
3 座構造体
4 背ずり構造体
5 肘掛け構造体
21 シート
22 シートフレーム
23 前スライド構造
24 後スライド構造
33 回転軸
41 肘掛け
41a 肘掛け本体部
41b 突出部
42 ピボット
43 サポート
X 非リクライニング位置
Y 最大リクライニング位置
S 収容空間
図1
図2A
図2B
図3
図4