(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068876
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】鉄道車両用腰掛け
(51)【国際特許分類】
B60N 2/20 20060101AFI20230511BHJP
B60N 2/12 20060101ALI20230511BHJP
A47C 1/032 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B60N2/20
B60N2/12
A47C1/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180292
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 武史
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BA12
3B087BB07
3B087BD04
3B099BA08
(57)【要約】
【課題】簡素な構成でありながら、リクライニング前の位置とリクライニング後の位置との両方で快適な姿勢を提供できる鉄道車両用腰掛けを提供する。
【解決手段】鉄道車両用腰掛けは、ユーザの臀部を下方から支持する座構造体と、前記ユーザの背中を背後から支持し、第1位置から第2位置にリクライニング可能な背ずり構造体と、を備える。前記背ずり構造体は、第1回転軸と、前記背ずり構造体のリクライニング時に前記第1回転軸周りに傾動する下背ずりと、第2回転軸と、前記下背ずりの上側に配置され、前記背ずり構造体のリクライニング時に前記第2回転軸周りに傾動する上背ずりと、を含む。前記第2回転軸は、前記第1回転軸よりも前記上背ずりから離れた位置に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの臀部を下方から支持する座構造体と、
前記ユーザの背中を背後から支持し、第1位置から第2位置にリクライニング可能な背ずり構造体と、を備え、
前記背ずり構造体は、
第1回転軸と、
前記背ずり構造体のリクライニング時に前記第1回転軸周りに傾動する下背ずりと、
第2回転軸と、
前記下背ずりの上側に配置され、前記背ずり構造体のリクライニング時に前記第2回転軸周りに傾動する上背ずりと、を含み、
前記第2回転軸は、前記第1回転軸よりも前記上背ずりから離れた位置に配置されている、鉄道車両用腰掛け。
【請求項2】
前記第2回転軸は、前記第1回転軸よりも下方に配置されている、請求項1に記載の鉄道車両用腰掛け。
【請求項3】
前記背ずり構造体は、前記上背ずりに一体化され、前記第2回転軸に連結された連結体を更に含み、
前記連結体及び前記下背ずりは、側面視における前記下背ずり及び前記上背ずりの配列方向に相対変位自在な状態で互いに係合されている、請求項1又は2に記載の鉄道車両用腰掛け。
【請求項4】
前記第1位置は、非リクライニング位置であり、かつ、前記第2位置は、最大リクライニング位置であり、
側面視において、前記第1回転軸及び前記第2回転軸を通過する仮想直線は、前記背ずり構造体が前記非リクライニング位置から前記最大リクライニング位置まで移動するときの前記下背ずりの上端の移動軌跡に交差する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鉄道車両用腰掛け。
【請求項5】
鉄道車両の客室の床面に設置される基台を更に備え、
前記座構造体は、
前記基台に支持されるシートと、
前記基台と前記シートとの間に配置され、前記基台に対して前記シートを前後スライド自在にするスライド構造と、を含み、
前記第1回転軸及び前記第2回転軸は、前記シートに連結されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鉄道車両用腰掛け。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両に用いられる腰掛けに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、鉄道車両の客室に設置される腰掛けを開示している。この腰掛けでは、背ずりの下端付近に配置された回転軸周りに背ずりが傾動することでリクライニングが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、リクライニング角度が大きくなるにつれて、ユーザの背中上部の支えが不足し、ユーザが仰け反った姿勢になる。そのため、ユーザは、自分の筋力で背中上部及び頭を起そうとして疲れやすくなる。他方、リクライニング角度が大きいときにユーザの背中上部を十分に支えるべく、背ずり上部を隆起させた形状に設計することも考えられる。しかし、その構成では、非リクライニング時にユーザの背中上部が背ずり上部により過度に前方に押されることになる。そのため、非リクライニング時にユーザが猫背姿勢を強いられ、ユーザにとって不快となる。このように、非リクライニング時と最大リクライニング時との両方でユーザに快適な姿勢を提供することは難しい。
【0005】
そこで本開示は、簡素な構成でありながら、リクライニング前とリクライニング後との両方で快適な姿勢を提供できる鉄道車両用腰掛けを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る鉄道車両用腰掛けは、ユーザの臀部を下方から支持する座構造体と、前記ユーザの背中を背後から支持し、第1位置から第2位置にリクライニング可能な背ずり構造体と、を備える。前記背ずり構造体は、第1回転軸と、前記背ずり構造体のリクライニング時に前記第1回転軸周りに傾動する下背ずりと、第2回転軸と、前記下背ずりの上側に配置され、前記背ずり構造体のリクライニング時に前記第2回転軸周りに傾動する上背ずりと、を含む。前記第2回転軸は、前記第1回転軸よりも前記上背ずりから離れた位置に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、リクライニング時に、ユーザの背中下部を支持する下背ずりの角変位量に比べ、ユーザの背中上部を支持する上背ずりの角変位量が小さくなる。そのため、背ずり構造体が第2位置になっても、ユーザの背中上部が良好に支えられ、ユーザが仰け反った姿勢になることを抑制できる。また、背ずり構造体が第1位置にあるときには、上背ずりがユーザの背中上部を過度に前方に押さないようできる。よって、簡素な構成の腰掛けとしながらも、ユーザは第1位置及び第2位置の両方で快適な姿勢をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る鉄道車両用腰掛けの側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の腰掛けのリクライニング時の側面図である。
【
図5】
図5は、
図1の背ずり構造体の変形例を示す部分側面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る鉄道車両用腰掛けの側面図である。
【
図7】
図7は、
図6の腰掛けのリクライニング時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鉄道車両用腰掛け1の側面図である。
図1に示すように、鉄道車両の客室の床面Fには、リクライニング式の腰掛け1が設置されている。腰掛け1は、その前後方向が鉄道車両の長手方向に向くように設置されるクロスシートである。即ち、腰掛け1の前後方向は、車両長手方向を意味する。腰掛け1の左右方向は、車幅方向を意味する。腰掛け1は、基台2、座構造体3及び背ずり構造体4を備える。基台2は、床面Fに設置されている。
【0011】
座構造体3は、基台2に下方から支持されている。座構造体3は、基台2に対して前後スライド可能または固定的に取り付けられている。座構造体3は、腰掛け1に着座したユーザの臀部を下方から支持するシート11を含む。シート11は、着座したユーザの臀部に直接的に対向するクッションと、前記クッションを支持するフレームと、を有する。
【0012】
座構造体3は、第1ブラケット12及び第2ブラケット13を含む。第1ブラケット12及び第2ブラケット13は、シート11のフレームに固定されている。即ち、第1ブラケット12及び第2ブラケット13は、基台2に間接的に固定されている。第2ブラケット13は、第1ブラケット12よりも下方にある。例えば、第1ブラケット12はシート11の上方に突出し、第2ブラケット13はシート11の下方に突出している。なお、第1ブラケット12及び第2ブラケット13の少なくとも一方は、基台2に直接的に固定されていてもよい。
【0013】
背ずり構造体4は、ユーザの背中を背後から支持する。背ずり構造体4は、リクライニング可能である。即ち、背ずり構造体4は、非リクライニング位置Xから最大リクライニング位置Y(
図2参照)に向けて後傾可能である。非リクライニング位置Xは、アップライト位置とも称し得る。
【0014】
背ずり構造体4は、下背ずり21、第1回転軸22、上背ずり23、連結体24、第2回転軸25及び係合構造26を含む。下背ずり21は、ユーザの背中下部を背後から支持する。下背ずり21は、ユーザの背中下部に直接的に対向するクッションと、前記クッションを支持するフレームと、を有する。第1回転軸22は、第1ブラケット12に対して下背ずり21のフレームを回転自在に連結する。第1回転軸22は、腰掛け1の左右方向に延びている。下背ずり21は、背ずり構造体4のリクライニング時に第1回転軸22周りに傾動する。
【0015】
上背ずり23は、下背ずり21の上側に配置されている。上背ずり23は、ユーザの背中上部を背後から支持する。上背ずり23は、下背ずり21に対して相対変位可能である。下背ずり21の上端と上背ずり23の下端との間には、隙間Gがある。上背ずり23は、ユーザの背中上部に直接的に対向するクッションと、前記クッションを支持するフレームと、を有する。下背ずり21及び上背ずり23は、互いに別体であり、互いに離間自在である。連結体24は、上背ずり23に一体化され、上背ずり23から下方に突出している。例えば、連結体24は、上背ずり23のフレームに固定されたものでもよいし、上背ずり23のフレームを下方に延長したものでもよい。連結体24は、下背ずり21から離間自在である。
【0016】
連結体24は、第1部分24b及び第2部分24cを有する。第1部分24bは、上背ずり23から下方に延び、下背ずり21及びシート11の後方に配置されている。第1部分24bは、第2回転軸25の後方の位置に向けて延び、シート11の後方を通過している。第2部分24cは、シート11の下方において、第1部分24bの下端から第2回転軸25に向けて延びている。連結体24は、例えば、全体として側面視でJ形状を有する。連結体24は、例えば、アーム状である。なお、連結体24は、下背ずり21及びシート11の左右方向外方を通過して第2回転軸25に連結されてもよい。その場合、連結体24は、全体として側面視で直線形状やL形状を有してもよい。
【0017】
第2回転軸25は、第2ブラケット13に対して連結体24の第2部分24cを回転自在に連結する。第2回転軸25は、腰掛け1の左右方向に延びている。即ち、第2回転軸25は、第1回転軸22と平行である。上背ずり23は、背ずり構造体4のリクライニング時に第2回転軸25周りに傾動する。
【0018】
係合構造26は、背ずり構造体4のリクライニング方向における上背ずり23と下背ずり21との間の相対変位を制限するように、連結体24を介して上背ずり23に下背ずり21を係合する。連結体24は被係合部24aを有し、下背ずり21は係合部21aを有する。係合構造26は、被係合部24a及び係合部21aによって構成されている。係合構造26によって、上背ずり23は、下背ずり21が第1回転軸22周りに傾動するのに機械的に連動し、第2回転軸25周りに傾動する。
【0019】
例えば、被係合部24aは、連結体24に形成された長孔であり、連結体24の延在方向に延びている。係合部21aは、下背ずり21のフレームに固定されたピンである。係合部21aは、下背ずり21のフレームの後方に配置されている。係合部21aは、被係合部24aに対し、背ずり構造体4のリクライニング方向において係合するが、下背ずり21及び上背ずり23の配列方向(背ずり構造体4の延在方向すなわち略上下方向)にはスライド自在である。なお、係合部21aを長孔として被係合部24aをピンとしてもよい。また、係合構造26は、省略されてもよい。
【0020】
第2回転軸25は、第1回転軸22よりも上背ずり23から遠い位置に配置されている。即ち、第2回転軸25から上背ずり23までの距離は、第1回転軸22から上背ずり23までの距離よりも大きい。第2回転軸25は、第1回転軸22よりも下方に配置されている。第2回転軸25は、シート11の下方に配置されている。第1回転軸22及び第2回転軸25は、シート11の前後方向中央よりも後方に配置されている。第2回転軸25は、シート11の後端よりも前方に配置されている。第2回転軸25は、第1回転軸22よりも前方に配置されている。
【0021】
図2は、
図1の腰掛け1のリクライニング時の側面図である。
図2に示すように、ユーザが背ずり構造体4のロックを解除して背中で背ずり構造体4を後方に押すと、背ずり構造体4が非リクライニング位置Xから最大リクライニング位置Yに向けてリクライニングする。このとき、下背ずり21が連結体24を後方に押すことで、上背ずり23は下背ずり21に連動する。連結体24が下背ずり21を後方に引っ張る場合、下背ずり21が上背ずり23に連動する。
【0022】
第2回転軸25を基準とした上背ずり23の角変位量βは、第1回転軸22を基準とした下背ずり21の角変位量αよりも小さくなる。そのため、最大リクライニング位置Yにおける下背ずり21の前面と上背ずり23の前面とがなす角度θ2は、非リクライニング位置Xにおける下背ずり21の前面と上背ずり23の前面とがなす角度θ1よりも小さくなる。
【0023】
図3は、
図2の部分拡大図である。
図2及び3に示すように、背ずり構造体4が非リクライニング位置Xから最大リクライニング位置Yまで移動するとき、側面視において、下背ずり21の上端の移動軌跡T1は、上背ずり23の下端の移動軌跡T2とは異なる。具体的には、移動軌跡T1の曲率半径は、移動軌跡T2の曲率半径よりも小さくなる。即ち、移動軌跡T1の曲率は、移動軌跡T2の曲率よりも大きくなる。よって、移動軌跡T1と移動軌跡T2との間の隙間寸法Sは、リクライニング角度の変化に伴って変化する。
【0024】
なお、下背ずり21の上端が平面状であるために側面視において下背ずり21の上端が直線をなす場合には、この直線の中心点の移動軌跡を下背ずり21の上端の移動軌跡T1とする。また、上背ずり23の下端が平面状であるために側面視において上背ずり23の下端が直線をなす場合には、この直線の中心点の移動軌跡を上背ずり23の下端の移動軌跡T2とする。
【0025】
側面視において、第1回転軸22及び第2回転軸25を通過する仮想直線Lは、背ずり構造体4が非リクライニング位置Xから最大リクライニング位置Yまで移動するときの下背ずり21の上端の移動軌跡T1に交差する。例えば、仮想直線Lは、移動軌跡T1の略中央を通過する。そのため、移動軌跡T1の略中央に対応する位置で、隙間寸法Sが最小値を示すことになる。よって、非リクライニング位置Xと最大リクライニング位置Yとの間での傾動動作において、隙間Gの寸法変動量が抑制される。
【0026】
以上に説明した構成によれば、リクライニング時には、上背ずり23の角変位量βが下背ずり21の角変位量αによりも小さくなる。即ち、最大リクライニング位置Yにおける下背ずり21の前面と上背ずり23の前面とがなす角度θ2は、非リクライニング位置Xにおける下背ずり21の前面と上背ずり23の前面とがなす角度θ1よりも小さくなる。そのため、背ずり構造体4が最大リクライニング位置Yになっても、上背ずり23によってユーザの背中上部が良好に支えられ、ユーザが仰け反った姿勢になることを抑制できる。また、背ずり構造体4が非リクライニング位置Xにあるときには、上背ずり23がユーザの背中上部を過度に前方に押さないようできる。よって、簡素な構成の腰掛け1でありながらも、ユーザは非リクライニング位置X及び最大リクライニング位置Yの両方で快適な姿勢をとることができる。
【0027】
第2回転軸25は、第1回転軸22よりも下方に配置されている。よって、リクライニング時において、第1回転軸22を基準とした下背ずり21の角変位量αに対し、第2回転軸25を基準とした上背ずり23の角変位量βを容易に小さくすることができる。また、第2回転軸25が第1回転軸22よりも下方に配置されることで、下背ずり21の前面と上背ずり23の前面とがなす角度θのリクライニング時の変化量が大きくなり過ぎることが防がれる。よって、非リクライニング位置Xでユーザが猫背姿勢になることと、最大リクライニング位置Yでユーザが仰け反りの姿勢になることとを防止できる。また、第1回転軸22と第2回転軸25が同一高さで横並びに配置されないことで、下背ずり21の前面と上背ずり23の前面とがなす角度θの変化量が小さくなり過ぎることが防がれるとともに隙間Gの変化を低減できる。
【0028】
係合部21a及び被係合部24aは、側面視において、下背ずり21及び上背ずり23の配列方向に相対変位自在な状態で互いに係合している。よって、下背ずり21の傾動に機械的に連動して上背ずり23が傾動する構成において、上背ずり23に対して下背ずり21を異なる角変位量で円滑に傾動させることができる。
【0029】
側面視において、第1回転軸22及び第2回転軸25を通過する仮想直線Lは、背ずり構造体4が非リクライニング位置Xから最大リクライニング位置Yまで移動するときの下背ずり21の上端の移動軌跡T1に交差する。よって、非リクライニング位置Xと最大リクライニング位置Yとの間でのリクライニング動作時に、下背ずり21及び上背ずり23の配列方向における下背ずり21と上背ずり23との間の相対変位の変動量を抑制できる。
【0030】
図4Aは、
図1の係合構造26の第1変形例を示す側面図である。
図4Aに示すように、第1変形例の係合構造126は、被係合部124b及び係合部121aによって構成されている。連結体124は、上背ずり23から下方に延びた連結体本体124aと、連結体本体124aから前方に側面視でL字状に突出した被係合部124bと、を有する。下背ずり121は、下背ずり121のフレームから後方に側面視で逆L字状に突出した係合部121aを有する。係合部121aは、被係合部124bに対し、リクライニング方向において係合するが、下背ずり121及び上背ずり23の配列方向にはスライド自在である。なお、係合部121a及び被係合部124bの形状を互いに逆転させてもよい。
【0031】
図4Bは、
図1の係合構造26の第2変形例を示す側面図である。
図4Bに示すように、第2変形例の係合構造226は、被係合部224b及び係合部221aによって構成されている。連結体224は、上背ずり23から下方に延びた連結体本体224aと、連結体本体224aから前方に側面視でU字状に突出した被係合部224bと、を有する。下背ずり221は、下背ずり221のフレームから後方に平面視でU字状又はL字状に突出した係合部221aを有する。係合部221aは、被係合部224bに対し、リクライニング方向において係合するが、下背ずり221及び上背ずり23の配列方向にはスライド自在である。なお、係合部221a及び被係合部224bの形状を互いに逆転させてもよい。
【0032】
図5は、
図1の背ずり構造体4の変形例を示す部分側面図である。
図5に示すように、本変形例では、下背ずり21と上背ずり23との間の隙間Gは、前方から見て、フレキシブル部材331によって隠されている。上背ずり23の下端又は下背ずり21の上端のいずれか一方には、布、ゴム又はゴム引布のようなフレキシブル部材331の一端部が固定されている。上背ずり23の下端又は下背ずり21の上端のいずれか他方には、フレキシブル部材331の他端部が着脱可能に取り付けられている。例えば、フレキシブル部材331の下端部は、面ファスナー等のような固定具332によって下背ずり21の上端に着脱可能に取り付けられている。その場合、フレキシブル部材331の上端部は上背ずり23の下端に縫製やステープラー等によって固定されている。なお、フレキシブル部材331の代わりに、下背ずり21の前面と隙間Gと上背ずり23の前面との全体を覆う布によって隙間Gが隠されてもよい。また、これらの変形例は、後述する第2実施形態にも適用され得る。
【0033】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る鉄道車両用腰掛け401の側面図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、腰掛け401は、第1実施形態の腰掛け1の構成に対して前後スライド機能が追加されたものである。腰掛け401の基台402は、基台本体440及びシェル441を有する。基台本体440は、床面Fに設置されている。シェル441は、基台本体440に固定され、背ずり構造体404の少なくとも下部を後方から覆っている。
【0034】
座構造体403は、シート11、後スライド構造414及び前スライド構造415を有する。なお、後スライド構造414及び前スライド構造415は、互いに前後に分かれた前後一対のスライド構造であるが、互いに合体させた1つのスライド構造としてもよい。シート11は、後スライド構造414及び前スライド構造415を介して基台402に下方から支持されている。後スライド構造414は、ガイドレール414a及びスライダ414bを有する。ガイドレール414aは、基台402の上面に固定され、前後方向に延びている。スライダ414bは、シート11の下面に固定され、前後スライド自在にガイドレール414aに案内される。前スライド構造415は、ガイドレール415a及びスライダ415bを有する。ガイドレール415aは、シート11の下面に固定され、前後方向に延びている。スライダ415bは、基台402の上面に固定され、前後スライド自在にガイドレール415aに案内される。
【0035】
第1回転軸22及び第2回転軸25は、シート11に連結されている。そのため、シート11が後スライド構造414及び前スライド構造415によって前後スライドすると、第1回転軸22及び第2回転軸25も前後方向に移動する。
【0036】
連結体424とシェル441とは、係合構造450によって互いに係合されている。シェル441は被係合部441aを有し、連結体424は係合部424aを有する。係合構造450は、被係合部441a及び係合部424aによって構成されている。例えば、被係合部441aは、シェル441のブラケットに形成された長孔であり、斜め前下方に延びている。係合部424aは、長孔である被係合部441aにスライド自在に係合されたピンである。なお、係合部424aを長孔として被係合部441aをピンとしてもよい。
【0037】
図7は、
図6の腰掛け401のリクライニング時の側面図である。
図7に示すように、ユーザがシート11を基台402に対して前方にスライドさせると、第1回転軸22及び第2回転軸25が前方に移動し、係合部424aが被係合部441aに対して係合を維持したまま前方かつ下方に斜めに移動する。これにより、背ずり構造体404が非リクライニング位置Xから最大リクライニング位置Yに向けてリクライニングする。
【0038】
このような構成によっても、第2回転軸25を基準とした上背ずり23の角変位量は、第1回転軸22を基準とした下背ずり21の角変位量よりも小さくできる。即ち、下背ずり21及び上背ずり23の相対角変位を、シート11の前後スライドに連動させることができる。なお、係合構造450の構成は、これに限られず、
図4A及び4Bのような構成としてもよい。また、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0039】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1,401 腰掛け
2,402 基台
3,403 座構造体
4,404 背ずり構造体
11 シート
21,121,221 下背ずり
21a,121a,221a,424a 係合部
22 第1回転軸
23 上背ずり
24,124,224 連結体
24a,124b,224b,441a 被係合部
25 第2回転軸
414 後スライド構造
415 前スライド構造
F 床面
L 仮想直線
T1,T2 移動軌跡
X 非リクライニング位置
Y 最大リクライニング位置