(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068885
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】車両の床部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B62D25/20 L
B62D25/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180311
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 秀昭
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB23
3D203BB29
3D203CA51
3D203CA52
3D203CA57
(57)【要約】
【課題】ジャッキアップ荷重が加わる際、フロアパネルの窪み成形部の曲がり部に対する応力集中を抑制する。
【解決手段】車両の床部構造であって、フロアパネルの窪み成形部110は、窪みの周縁に形成された周縁フランジ部112fと、その周縁フランジ部112fに対して下向きに曲げられている側壁部112と、周縁フランジ部112fと側壁部112間に形成された曲がり部Kとを備え、窪み成形部110の周縁フランジ部112fが床上補強部材192の端縁フランジ部192yに接合されており、床上補強部材192の端縁フランジ部192zには、窪み成形部110の周縁フランジ部112fから曲がり部Kを跨いで側壁部112まで覆い、窪み成形部110を介して床下骨格部材20,24fと接合される張り出しフランジ部192zが設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネル本体部と、前記フロアパネル本体部に対して下方に窪んだ状態で形成された窪み成形部とを備えるフロアパネルと、前記フロアパネルの窪み成形部を床下側から補強するとともに、ジャッキアップポイントを備える床下骨格部材と、前記フロアパネル本体部と窪み成形部間で前記フロアパネルを床上側から補強し、一部が前記フロアパネルを介して前記床下骨格部材と接合される床上補強部材とを有する車両の床部構造であって、
前記フロアパネルの窪み成形部は、窪みの周縁に形成された周縁フランジ部と、その周縁フランジ部に対して下向きに曲げられている側壁部と、前記周縁フランジ部と側壁部間に形成された曲がり部とを備え、前記窪み成形部の周縁フランジ部が前記床上補強部材の端縁フランジ部に接合されており、
前記床上補強部材の端縁フランジ部には、前記窪み成形部の周縁フランジ部から前記曲がり部を跨いで前記側壁部まで覆い、前記窪み成形部を介して前記床下骨格部材と接合される張り出しフランジ部が設けられている車両の床部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の床部構造であって、
前記床下骨格部材は、車幅方向中央位置で車両前後方向に延び、幅方向における両側にフランジ部を備えており、
前記床上補強部材は、車幅方向に延び、その床上補強部材の後側の端縁フランジ部から後方に張り出した一対の張り出しフランジ部が前記床下骨格部材の両側のフランジ部と前記フロアパネルの窪み成形部を介してそれぞれ接合されている車両の床部構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の床部構造であって、
前記床上補強部材の張り出しフランジ部は、前記床下骨格部材のフランジ部よりも幅広に構成されており、前記床下骨格部材のフランジ部に対して幅方向外側に突出した前記張り出しフランジ部の一部は前記フロアパネルの窪み成形部に接合されている車両の床部構造。
【請求項4】
請求項2又は請求項3のいずれかに記載された車両の床部構造であって、
前記床下骨格部材は、前記フロアパネルの窪み成形部の前部を補強する部分が側面L字状に形成されて、前端上部に位置するフランジ部で前記窪み成形部の曲がり部、及びその近傍を補強しており、
前記床下骨格部材の前部下面に前記ジャッキアップポイントが設けられている車両の床部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアパネルの窪み成形部を床下側から補強するとともに、ジャッキアップポイントが設けられた床下骨格部材を備える車両の床部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の床部構造に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の車両の床部構造は、
図7に示すように、リヤフロアパネル100を備えている。リヤフロアパネル100は、平坦なフロアパネル本体部102と、そのフロアパネル本体部102に対して下方に窪んだ状態で形成された窪み成形部103とを備えている。リヤフロアパネル100の窪み成形部103は、スペアタイヤTを水平に収納する部分であり、フロアパネル本体部102とフロアクロスメンバ105を介して接続されている。フロアクロスメンバ105は、車幅方向に延びる骨格部材であり、リヤフロアパネル100のフロアパネル本体部102の後部と窪み成形部103の周縁フランジ部103fとを下方から支持した状態で、リヤフロアパネル100を補強している。
【0003】
さらに、フロアクロスメンバ105の車幅方向中央部には、ジャッキアップポイントを備えるジャッキアップ用ブラケット107が取り付けられている。ジャッキアップ用ブラケット107は、側面略U字形に成形されて、底板部分にジャッキアップ荷重Fを受ける荷重受け部107j(ジャッキアップポイント)が形成されている。そして、ジャッキアップ用ブラケット107の前端上部には、フロアクロスメンバ105の前側面に接合される斜めフランジ部107uが形成されている。また、ジャッキアップ用ブラケット107の後端部には、リヤフロアパネル100の窪み成形部103の前部下面に接合される水平フランジ部107fが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した車両の床部構造では、ジャッキアップ荷重Fは、ジャッキアップ用ブラケット107の斜めフランジ部107uを介してフロアクロスメンバ105の前側面に加わり、水平フランジ部107fを介してリヤフロアパネル100の窪み成形部103の前部下面に加わる。ジャッキアップ荷重Fがリヤフロアパネル100の窪み成形部103の前部下面に加わると、ジャッキアップ荷重Fにより窪み成形部103の前部下面が押し上げられる。このため、ジャッキアップ荷重Fにより、窪み成形部103の側面板と底板間の曲がり部Wが折り曲げられるように変形し易くなる。即ち、リヤフロアパネル100の窪み成形部103の曲がり部Wに応力が集中して、リヤフロアパネル100の窪み成形部103の耐久性が低下する。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ジャッキアップ荷重が加わる際、フロアパネルの窪み成形部の曲がり部に対する応力集中を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、フロアパネル本体部と、前記フロアパネル本体部に対して下方に窪んだ状態で形成された窪み成形部とを備えるフロアパネルと、前記フロアパネルの窪み成形部を床下側から補強するとともに、ジャッキアップポイントを備える床下骨格部材と、前記フロアパネル本体部と窪み成形部間で前記フロアパネルを床上側から補強し、一部が前記フロアパネルを介して前記床下骨格部材と接合される床上補強部材とを有する車両の床部構造であって、前記フロアパネルの窪み成形部は、窪みの周縁に形成された周縁フランジ部と、その周縁フランジ部に対して下向きに曲げられている側壁部と、前記周縁フランジ部と側壁部間に形成された曲がり部とを備え、前記窪み成形部の周縁フランジ部が前記床上補強部材の端縁フランジ部に接合されており、前記床上補強部材の端縁フランジ部には、前記窪み成形部の周縁フランジ部から前記曲がり部を跨いで前記側壁部まで覆い、前記窪み成形部を介して前記床下骨格部材と接合される張り出しフランジ部が設けられている。
【0008】
本発明によると、床上補強部材の端縁フランジ部には、フロアパネルの窪み成形部の周縁フランジ部から曲がり部を跨いで側壁部まで覆い、前記窪み成形部を介して床下骨格部材と接合される張り出しフランジ部が設けられている。即ち、フロアパネルの窪み成形部の曲がり部が床上補強部材の張り出しフランジ部と床下骨格部材とに挟まれた状態で補強されている。このため、ジャッキアップ荷重が床下骨格部材を介してフロアパネルの窪み成形部に加わった場合に、その窪み成形部の曲がり部に対する応力集中を抑制できる。
【0009】
第2の発明によると、床下骨格部材は、車幅方向中央位置で車両前後方向に延び、幅方向における両側にフランジ部を備えており、床上補強部材は、車幅方向に延び、その床上補強部材の後側の端縁フランジ部から後方に張り出した一対の張り出しフランジ部が前記床下骨格部材の両側のフランジ部と前記フロアパネルの窪み成形部を介してそれぞれ接合されている。即ち、フロアパネルの窪み成形部の曲がり部が床上補強部材の張り出しフランジ部と床下骨格部材のフランジ部とに挟まれることで補強されている。
【0010】
第3の発明によると、床上補強部材の張り出しフランジ部は、床下骨格部材のフランジ部よりも幅広に構成されており、床下骨格部材のフランジ部に対して幅方向外側に突出した前記張り出しフランジ部の一部はフロアパネルの窪み成形部に接合されている。
【0011】
第4の発明によると、床下骨格部材は、フロアパネルの窪み成形部の前部を補強する部分が側面L字状に形成されて、前端上部に位置するフランジ部で前記窪み成形部の曲がり部、及びその近傍を補強しており、前記床下骨格部材の前部下面に前記ジャッキアップポイントが設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、ジャッキアップ荷重が加わる際、フロアパネルの窪み成形部の曲がり部に対する応力集中を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係る床部構造を備える車両の床下を斜め下前方から見た全体斜視図である。
【
図2】車両の床部構造におけるリヤフロア前クロスメンバと中央フレーム、及びジャッキアップポイントとを表す拡大斜視図(
図1のII矢視拡大斜視図)である。
【
図3】車両の床部構造におけるリヤフロア前クロスメンバと中央フレーム、及びジャッキアップポイントとを表す縦断面図(
図2のIII-III矢視断面図)である。
【
図5】
図4においてV方向(床下を下方)から見た平面図である。
【
図6】
図4においてVI方向(室内側を上方)から見た平面図である。
【
図7】従来の車両の床部構造を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、
図1から
図6に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両の床部構造の説明を行う。本実施形態に係る車両の床部構造は、車両の後部床下の車幅方向における中央部にジャッキアップポイントを備える車両の後部床部構造である。ここで、図中における前後左右及び上下は、車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0015】
<車両10の後部床下の概要について>
車両10の後部の床面を構成するフロアパネル11は、
図1等に示すように、ほぼ平坦なフロアパネル本体部11fと、そのフロアパネル本体部11fに対して下方に窪んだ状態(
図1では下方に突出する状態)で形成された窪み成形部110とを備えている。そして、車両10のフロアパネル11(フロアパネル本体部11f)の下側(床下)には、
図1に示すように、左右両側位置で車両前後方向に延びるフロアサイドメンバ12が設けられている。フロアサイドメンバ12は、後輪(図示省略)が収納されるリヤホイールハウス13の後部位置で同じく車両前後方向に延びるリヤサイドメンバ14に接続されている。また、フロアパネル11の下側の左右端部には、フロントホイールハウス(図示省略)とリヤホイールハウス13間で車両前後方向に延びるロッカーレール16がフロアサイドメンバ12の車幅方向外側に設けられている。ここで、ロッカーレール16上には、フロントピラー、センターピラー、及びリヤピラー等、車両10のルーフパネル(図示省略)を支持する支柱(図示省略)が立設されている。
【0016】
左右のフロアサイドメンバ12間には、
図1に示すように、ロッカーレール16の後端部の位置で、車幅方向(左右方向)に延びるフロアクロスメンバ17が設けられている。そして、フロアクロスメンバ17の延長線上の位置に左右のフロアサイドメンバ12と左右のロッカーレール16とをそれぞれつなぐアウトリガー17rが設けられている。また、フロアクロスメンバ17の後側には、左右のフロアサイドメンバ12をつなぐ後部クロスメンバ18が車幅方向に延びるように設けられている。さらに、左側のフロアサイドメンバ12とリヤサイドメンバ14との接続部位と、右側のフロアサイドメンバ12とリヤサイドメンバ14との接続部位間には、車幅方向に延びるリヤフロア前クロスメンバ19が設けられている。
【0017】
リヤフロア前クロスメンバ19と左右のリヤサイドメンバ14とにより囲まれた範囲には、
図1~
図3に示すように、フロアパネル11の窪み成形部110が設けられている。フロアパネル11の窪み成形部110は、フロアパネル本体部11fに対して一定寸法だけ下方に窪んだ状態で形成されており、例えば、スペアタイヤT等が水平に収納されている。また、フロアパネル11の窪み成形部110の車幅方向における中央部は、リヤフロア前クロスメンバ19の位置から車両後方に延びる中央フレーム20によって下側から補強されている。中央フレーム20は、フロアパネル11の窪み成形部110の前端部を側面略L字形に覆うL形前部20eと、窪み成形部110の下面平坦部に沿って後方に延びる後方延長部20yとから構成されている。
【0018】
中央フレーム20のL形前部20eの下面には、
図1等に示すように、左右のロッカーレール16の後端部に連結された左右の棒状のブレース30の基端部が固定されている。棒状のブレース30は、車両ボディの後部における捻じれ剛性を向上させるための部材である。左右のブレース30の基端部は、
図3に示すように、連結プレート34を介して中央フレーム20のL形前部20eの下面にボルトBにより固定されている。連結プレート34は、その連結プレート34の周縁が一定寸法だけ下方に折り曲げられることで下フランジ部34dが形成されている。そして、連結プレート34の下フランジ部34dの内側には、下方からカバープレート40が嵌め込まれた状態で固定されている。カバープレート40は、
図3に示すように、連結プレート34の補強、及びボルトBの頭部の保護を目的とした部材であり、そのカバープレート40の下面がリヤガレージジャッキ50の押し上げ金具53が当接するジャッキアップポイントとなっている。
【0019】
<フロアパネル11の窪み成形部110の具体的な構成について>
フロアパネル11の窪み成形部110は、
図2、
図3に示すように、外側が凸となるように湾曲した湾曲側壁部112と、その湾曲側壁部112に囲まれた半円状のほぼ平坦な底板部113(
図1参照)とから構成されている。そして、窪み成形部110の湾曲側壁部112の上端周縁に、
図3、
図4に示すように、周縁フランジ部112fが形成されている。ここで、フロアパネル11の窪み成形部110の湾曲側壁部112は、周縁フランジ部112fに対して下向きに折り曲げられており、周縁フランジ部112fと湾曲側壁部112間には折り曲げ部の稜線K(以下、折り曲げ部Kという
図2、
図4等参照)がその周縁フランジ部112fに沿って形成されている。フロアパネル11の窪み成形部110の周縁フランジ部112fは、リヤフロア前クロスメンバ19の後端フランジ部192y,194y(後記する)に挟まれた状態で接合されている。
【0020】
<リヤフロア前クロスメンバ19について>
リヤフロア前クロスメンバ19は、
図3、
図4に示すように、フロアパネル11のフロアパネル本体部11fの後端フランジ部11wと窪み成形部110の周縁フランジ部112fとをつないだ状態でフロアパネル11を補強する部材である。リヤフロア前クロスメンバ19は、床上側(室内側)のアッパーパネル192と、床下側のロアパネル194とから構成されている。アッパーパネル192とロアパネル194とは、前端縁に前端フランジ部192x,194xを備えており、後端縁に後端フランジ部192y,194yを備えている。そして、アッパーパネル192の前端フランジ部192xと後端フランジ部192yとがロアパネル194の前端フランジ部194xと後端フランジ部194yとにそれぞれ合わせられて接合されることで、リヤフロア前クロスメンバ19は車幅方向に延びる筒状に形成されている。また、床上側(室内側)のアッパーパネル192の後端フランジ部192yには、
図4、
図6に示すように、中央フレーム20のフランジ部(後記する)に対応する位置に角形の張り出しフランジ部192zが後下方に張り出すように形成されている。
【0021】
<中央フレーム20について>
中央フレーム20は、
図2等に示すように、底板部22と、その底板部22の左右両側で上方に折り曲げられた側板部23とから断面角形の溝状に形成されている。そして、中央フレーム20の側板部23の上端縁には、幅方向外側に折り曲げられたフランジ部24fが形成されている。ここで、中央フレーム20のL形前部20eでは、
図3に示すように、底板部22が側面略L字形に湾曲形成されており、その底板部22の上端位置にフランジ部24fが形成されている。そして、底板部22のフランジ部24fがリヤフロア前クロスメンバ19の後端フランジ部192y,194yに挟まれた状態で接合されている。
【0022】
中央フレーム20のL形前部20eにおける左右の側板部23は、
図3等に示すように、側面略L字形の底板部22とフロアパネル11の窪み成形部110の下面との形状に合わせて略三角形状に形成されている。そして、左右の側板部23の端縁に形成されたフランジ部24fがフロアパネル11の窪み成形部110の下面に合わせられた状態で接合されている。ここで、中央フレーム20のL形前部20eにおける底板部22の上端のフランジ部24fと左右の側板部23の端縁のフランジ部24fとは、
図5に示すように、連続した状態で形成されている。同様に、中央フレーム20の後方延長部20yにおける左右の側板部23のフランジ部24fもフロアパネル11の窪み成形部110の下面に接合されている。
【0023】
<リヤフロア前クロスメンバ19、窪み成形部110、及び中央フレーム20の接合手順について>
先ず、
図1~
図3に示すように、フロアパネル11の窪み成形部110の下面が中央フレーム20によって補強される。即ち、フロアパネル11の窪み成形部110の車幅方向における中央部位置に中央フレーム20が配置され、
図5に示すように、中央フレーム20の底板部22の上端のフランジ部24fが窪み成形部110の周縁フランジ部112fに外側(下側)から重ねられるように位置合わせされる。この状態で、中央フレーム20の底板部22の上端のフランジ部24fと左右の側板部23の端縁のフランジ部24fとがフロアパネル11の窪み成形部110に対して、例えば、スポット溶接等により接合される。
【0024】
次に、
図4、
図5に示すように、リヤフロア前クロスメンバ19の床下側のロアパネル194の後端フランジ部194yが下方から中央フレーム20の底板部22の上端のフランジ部24fとフロアパネル11の窪み成形部110の周縁フランジ部112fとに重ねられる。この状態で、リヤフロア前クロスメンバ19(ロアパネル194)の後端フランジ部194yと中央フレーム20のフランジ部24f、及びフロアパネル11の窪み成形部110の周縁フランジ部112fとが、スポット溶接等により接合される。
【0025】
次に、
図4、
図6に示すように、リヤフロア前クロスメンバ19の室内側のアッパーパネル192の後端フランジ部192yが上方からフロアパネル11の窪み成形部110の周縁フランジ部112fに重ねられる。このとき、アッパーパネル192の左右の張り出しフランジ部192zは、中央フレーム20の左右の側板部23におけるフランジ部24fと重なるように、前記アッパーパネル192が位置決めされる。そして、アッパーパネル192の左右の張り出しフランジ部192zは、
図6に示すように、フロアパネル11の窪み成形部110の周縁フランジ部112fから折り曲げ部Kを跨いで湾曲側壁部112の上部までを覆い、窪み成形部110を介して中央フレーム20の左右の側板部23のフランジ部24fと重なるようになる。
【0026】
ここで、アッパーパネル192の張り出しフランジ部192zの左右の幅寸法は、
図6に示すように、中央フレーム20の側板部23のフランジ部24fの幅寸法よりも大きく構成されている。このため、アッパーパネル192の左側の張り出しフランジ部192zと右側の張り出しフランジ部192zとは、中央フレーム20の側板部23の左右のフランジ部24fからそれぞれ幅方向外側(左右方向外側)に張り出すようになる。そして、アッパーパネル192の張り出しフランジ部192zと中央フレーム20の側板部23のフランジ部24fとがフロアパネル11の窪み成形部110を介してスポット溶接等により接合される。また、アッパーパネル192の張り出しフランジ部192zにおいて中央フレーム20のフランジ部24fと重ならない部分は、フロアパネル11の窪み成形部110にスポット溶接等により接合される。さらに、アッパーパネル192の後端フランジ部192yがフロアパネル11の窪み成形部110の周縁フランジ部112fと、中央フレーム20の底板部22の上端のフランジ部24fと、ロアパネル194の後端フランジ部194yとにスポット溶接等により接合される。
【0027】
これにより、フロアパネル11の窪み成形部110の折り曲げ部Kは、
図4に示すように、リヤフロア前クロスメンバ19(アッパーパネル192)の張り出しフランジ部192zと中央フレーム20の側板部23等のフランジ部24fとに挟まれた状態で補強される。
【0028】
<上記床部構造の働きについて>
図3に示すように、ジャッキアップポイント(カバープレート40の下面)にジャッキアップ荷重Fが加わると、ジャッキアップ荷重Fは中央フレーム20のL形前部20eのフランジ部24fを介してフロアパネル11の窪み成形部110の前部を押し上げる方向に加わる。これにより、フロアパネル11の窪み成形部110の周縁フランジ部112fと湾曲側壁部112間の折り曲げ部K(
図4参照)には、その折り曲げ部Kの曲がりを大きくするような応力が加わる。しかし、折り曲げ部Kとその近傍は、
図4、
図5に示すように、中央フレーム20のフランジ部24fとリヤフロア前クロスメンバ19(アッパーパネル192)の張り出しフランジ部192zとによって上下から挟まれた状態で補強されている。このため、フロアパネル11の窪み成形部110の前部に対してジャッキアップ荷重が加わっても、窪み成形部110の折り曲げ部Kの曲がりを大きくするような応力が加わり難くなる。これにより、フロアパネル11の窪み成形部110の耐久性が向上する。
【0029】
<本実施形態で使用した用語と本発明における用語との対応>
本実施形態におけるリヤフロア前クロスメンバ19(アッパーパネル192)が本発明の床上補強部材に相当し、アッパーパネル192の後端フランジ部192yが床上補強部材の端縁フランジ部に相当する。また、フロアパネル11の窪み成形部110の折り曲げ部Kが本発明のフロアパネルの窪み成形部の曲がり部に相当する。また、本実施形態における中央フレーム20が本発明の床下骨格部材に相当する。さらに、中央フレーム20の下面に固定される連結プレート34、及びカバープレート40が本発明のジャッキアップポイントに相当する。また、フロアパネル11の窪み成形部110の湾曲側壁部112が本発明のフロアパネルの窪み成形部の側壁部に相当する。
【0030】
<本実施形態に係る車両の床部構造の長所について>
本実施形態に係る車両の床部構造によると、リヤフロア前クロスメンバ19のアッパーパネル192(床上補強部材)の後端フランジ部192yには、フロアパネル11の窪み成形部110の周縁フランジ部112fから折り曲げ部Kを跨いで湾曲側壁部112(側壁部)まで覆い、窪み成形部110を介して中央フレーム20(床下骨格部材)のフランジ部24fと接合される張り出しフランジ部192zが設けられている。即ち、フロアパネル11の窪み成形部110の折り曲げ部Kがアッパーパネル192の張り出しフランジ部192zと中央フレーム20のフランジ部24fとに挟まれた状態で補強されている。このため、ジャッキアップ荷重が中央フレーム20を介してフロアパネル11の窪み成形部110に加わった場合に、その窪み成形部110の折り曲げ部Kに対する応力集中を抑制できる。
【0031】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、稜線を有する折り曲げ部Kを備えるフロアパネル11の窪み成形部110を例示した。しかし、稜線を有する折り曲げ部Kの代わりに稜線を有しない、例えば、断面円弧形の曲がり部を備える窪み成形部110について本発明を適用することも可能である。また、リヤフロア前クロスメンバ19(アッパーパネル192)の張り出しフランジ部192zを中央フレーム20の左右のフランジ部24fに対応する位置に左右一対設ける例を示した。しかし、リヤフロア前クロスメンバ19(アッパーパネル192)の左右の張り出しフランジ部192zをつなげた状態で幅広に形成することも可能である。さらに、本実施形態では、床上補強部材としてリヤフロア前クロスメンバ19のアッパーパネル192を例示した。しかし、床上補強部材としてリヤフロア前クロスメンバ19以外のクロスメンバ、あるいは他の骨格部材を使用することも可能である。また、本実施形態では、床下骨格部材として車両前後方向に延びる中央フレーム20を例示した。しかし、床下骨格部材として、例えば、車幅方向に延びる床下フレーム等を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
10・・・・・車両
11・・・・・フロアパネル
11f・・・・フロアパネル本体部
110・・・・窪み成形部
112・・・・湾曲側壁部(側壁部)
112f・・・周縁フランジ部
K・・・・・・折り曲げ部(曲がり部)
19・・・・・リヤフロア前クロスメンバ(床上補強部材)
192・・・・アッパーパネル(床上補強部材)
192z・・・張り出しフランジ部
192y・・・後端フランジ部(端縁フランジ部)
20・・・・・中央フレーム(床下骨格部材)
24f・・・・フランジ部
34・・・・・連結プレート(ジャッキアップポイント)
40・・・・・カバープレート(ジャッキアップポイント)