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特開2023-68907吸収装置、ガス処理装置、吸収方法及びガス処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068907
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】吸収装置、ガス処理装置、吸収方法及びガス処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/18 20060101AFI20230511BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B01D53/18 110
B01D53/14 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180357
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】504358148
【氏名又は名称】株式会社コベルコE&M
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】岸本 啓
(72)【発明者】
【氏名】前田 基秀
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦彦
【テーマコード(参考)】
4D020
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020AA04
4D020AA06
4D020AA10
4D020BA16
4D020BB03
4D020BC01
4D020CB01
4D020CC06
4D020CC09
4D020DA01
4D020DA02
4D020DB05
4D020DB15
(57)【要約】
【課題】処理液を用いて酸性化合物を吸収する際の反応熱の回収量を増加させる。
【解決手段】酸性化合物を含む被処理ガスと、酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを接触させて、処理液に酸性化合物を吸収させる吸収装置20であって、吸収容器21と、吸収容器21内で開口する処理液供給口13aを有し、吸収容器21内に処理液を供給する処理液供給路13と、吸収容器21の内部において処理液に浸漬されるように配置され、処理液が酸性化合物を吸収することにより発生する反応熱を回収する反応熱回収器60aと、反応熱回収器60aの高さ範囲内の位置から吸収容器21の内部に被処理ガスを供給するガス供給路11と、を備え、処理液供給口13aは、運転時に処理液の液面よりも下の位置になるように配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを接触させて、前記処理液に前記酸性化合物を吸収させる吸収装置であって、
容器と、
前記容器内で開口する処理液供給口を有し、前記容器内に前記処理液を供給する処理液供給路と、
前記容器の内部において前記処理液に浸漬されるように配置され、前記処理液が前記酸性化合物を吸収することにより発生する反応熱を回収する反応熱回収器と、
前記反応熱回収器の高さ範囲内の位置から前記容器の内部に前記被処理ガスを供給するガス供給路と、を備え、
前記処理液供給口は、運転時に前記処理液の液面よりも下の位置になるように配置されている、吸収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収装置であって、
前記処理液供給口は、前記処理液供給路が前記容器に接続される接続部分よりも前記反応熱回収器に近い位置に配置されている、吸収装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収装置であって、
前記処理液供給口は、前記液面と前記反応熱回収器の上端部との間に位置している、吸収装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の吸収装置であって、
前記処理液供給口は、前記反応熱回収器の高さ範囲内に配置されている、吸収装置。
【請求項5】
請求項1、2又は4のいずれか1項に記載の吸収装置であって、
前記処理液供給口は、前記反応熱回収器の下端又は下端近くに配置されている、吸収装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収装置であって、
前記容器の内部において前記処理液に浸漬されるように配置され、前記処理液中において前記被処理ガスを蛇行させながら上昇させる蛇行部をさらに備える、吸収装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の吸収装置であって、
前記容器において、前記被処理ガスと接触した前記処理液が、前記酸性化合物の含有率が高い第1相部分と前記酸性化合物の含有率が低く前記第1相部分よりも比重が小さい第2相部分とに相分離し、
前記容器は、第1排出部と、上下方向において前記第1排出部よりも高い位置に配置された第2排出部とを有する、吸収装置。
【請求項8】
請求項7に記載の吸収装置であって、
前記容器は、前記反応熱回収器を収容した状態で前記処理液により満たされるとともに上方に開口している吸収部を有し、
前記第2排出部は前記吸収部から溢れた前記第2相部分を含む処理液を排出し、前記第1排出部は前記第2排出部を通して排出される処理液以外の処理液を排出する、吸収装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の吸収装置であって、
前記容器の底部の外面に連結されており、前記反応熱を回収するための冷媒を前記反応熱回収器に導入する入口室及び前記冷媒を前記反応熱回収器から導出する出口室をさらに備え、
前記反応熱回収器は、逆U字状で前記底部の内面から縦長に起立する管を有し、前記管の一方の端部が前記入口室に連通しているとともに、前記管の他方の端部が前記出口室に連通している、吸収装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の吸収装置と、
前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して前記酸性化合物を分離させる再生装置と、
前記容器において前記被処理ガスと接触した前記処理液を前記再生装置に送る送液部と、を備える、ガス処理装置。
【請求項11】
酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを容器内で接触させて、前記処理液に前記酸性化合物を吸収させる吸収方法であって、
反応熱回収器を浸漬した状態で前記容器の内部に貯留された処理液に、当該処理液の液面よりも下に位置する処理液供給口から処理液を供給し、
前記被処理ガスを、前記反応熱回収器の高さ範囲内の位置から、前記容器の内部に貯留された前記処理液に供給し、
前記処理液が前記被処理ガス中の前記酸性化合物を吸収することにより生じる反応熱を前記反応熱回収器によって回収する、吸収方法。
【請求項12】
吸収装置において請求項11に記載の吸収方法を実施することにより被処理ガスに含まれる酸性化合物が吸収された処理液を前記吸収装置から再生装置に送る送液工程と、
前記再生装置において、前記処理液を加熱して、当該処理液から前記酸性化合物を分離する再生工程と、を備えるガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収装置、当該吸収装置を備えたガス処理装置、吸収方法及び当該吸収方法が実施されるガス処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、下記特許文献1に開示されているように、被処理ガスに含まれる酸性化合物を処理液と接触させることによって、酸性化合物を分離させるガス処理装置が知られている。特許文献1では、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに液相分離する処理液が用いられている。
【0003】
特許文献1に開示されたガス処理装置は、吸収器と、熱交換器と、再生器と、ヒートポンプと、を備えている。吸収器は、二酸化炭素を含む排出ガス(被処理ガス)と処理液とを接触させる。処理液は、二酸化炭素の含有率が高い第1相部分(COリッチ相)とCOの含有率が低い第2相部分(COリーン相)とに液相分離する。液相分離された処理液は熱交換器を経由して再生器に送られる。熱交換器は、吸収器と再生器とを連結する流路に配置されており、再生器に向かう処理液を予熱する。再生器は、処理液を加熱することにより、処理液から二酸化炭素を分離する。処理液から分離された二酸化炭素は、回収路を通して回収される一方、二酸化炭素を放出した処理液は、熱交換器を経由して吸収器に戻される。ヒートポンプは、閉ループ状の循環経路と、吸収器内に配置された蒸発器と、圧縮機と、再生器内に配置された凝縮器と、膨張器と、を有する。蒸発器、圧縮機、凝縮器及び膨張器内を循環経路に沿って冷媒が循環することによって吸収器において処理液と被処理ガス中の酸性化合物との発熱反応により生じた反応熱が再生器へ熱輸送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-187553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されたガス処理装置では、吸収器における被処理ガスと処理液との接触は、被処理ガスの流路に処理液を噴霧するもの、被処理ガスの流路に配置される充填剤を伝って処理液を流下させるもの等により行われている。このように被処理ガスと処理液とを接触させる構成では、十分な接触が行われず、酸性化合物が吸収されるときの反応熱を回収できないことがある。
【0006】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに相分離する処理液を用いて酸性化合物を吸収する際の反応熱の回収量を増加させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る吸収装置は、酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを接触させて、前記処理液に前記酸性化合物を吸収させる吸収装置であって、容器と、前記容器内で開口する処理液供給口を有し、前記容器内に前記処理液を供給する処理液供給路と、前記容器の内部において前記処理液に浸漬されるように配置され、前記処理液が前記酸性化合物を吸収することにより発生する反応熱を回収する反応熱回収器と、前記反応熱回収器の高さ範囲内の位置から前記容器の内部に前記被処理ガスを供給するガス供給路と、を備え、前記処理液供給口は、運転時に前記処理液の液面よりも下の位置になるように配置されている。
【0008】
本発明では、上記吸収装置において、容器内に処理液が貯留され、かつ処理液に浸漬された反応熱回収器の高さ範囲内の位置からガス供給路を通して被処理ガスが処理液中に供給される。このため、被処理ガスが処理液と接触することなく容器内を通過してしまうのを抑制することができる。よって、処理液と被処理ガス中の酸性化合物とが十分に反応することにより反応熱が増加するため、反応熱回収器による反応熱の回収量を増加させることができる。なお、反応熱回収器が処理液に浸漬されるように容器内に処理液が貯留されるため、液面が変動する場合でも反応熱回収器が処理液から露出するのを抑制することができる。すなわち、処理液内に反応熱回収器を浸漬させた状態を維持することができるため、反応熱回収器による反応熱の回収量の低下を抑制することができる。
【0009】
また、処理液供給口が液面より下から処理液を供給し、かつ処理液に浸漬された反応熱回収器の高さ範囲内の位置から被処理ガスが供給されるため、処理液供給口の近傍において発生する反応熱が反応熱回収器に伝わり易い。よって、反応熱回収器による反応熱の回収量を増加することができる。
【0010】
前記処理液供給口は、前記処理液供給路が前記容器に接続される接続部分よりも前記反応熱回収器に近い位置に配置されていてもよい。この態様では、処理液供給路が容器に接続される接続部分が反応熱回収器から離れている場合でも、処理液供給口を当該接続部分よりも反応熱回収器に近づけることができる。よって、反応熱回収器による反応熱の回収量を増加することができる。
【0011】
前記処理液供給口は、前記液面と前記反応熱回収器の上端部との間に位置していてもよい。この態様では、処理液供給口が処理液の液面よりも上の位置に配置されている場合に比べて、処理液供給口を反応熱回収器の上端部に近づけることができる。よって、処理液供給口の近傍においてより多く発生する反応熱を反応熱回収器の上端部に効率よく伝え、当該上端部によってより多くの反応熱を回収することができる。
【0012】
前記処理液供給口は、前記反応熱回収器の高さ範囲内に配置されていてもよい。この態様では、反応熱回収器の高さ範囲内に処理液供給口を配置することにより処理液回収口を反応熱回収器に近づけることができる。これにより、反応熱回収器による反応熱の回収量を増加することができる。
【0013】
前記処理液供給口は、前記反応熱回収器の下端又は下端近くに配置されていてもよい。この態様では、処理液供給口が反応熱回収器の下端又は下端近く処理液を供給し、かつ処理液に浸漬された反応熱回収器の高さ範囲内の位置から被処理ガスが供給されるため、反応熱回収器の近くにおいて処理液に酸性化合物を吸収させ、この吸収により生じる反応熱を回収することができる。
【0014】
前記吸収装置は、前記容器の内部において前記処理液に浸漬されるように配置され、前記処理液中において前記被処理ガスを蛇行させながら上昇させる蛇行部をさらに備えていてもよい。この態様では、蛇行部により被処理ガスを処理液中において蛇行させつつ上昇させることにより、被処理ガスが処理液中を即座に上昇する場合よりも処理液中の被処理ガスの滞留時間を長くすることができる。これにより、処理液と被処理ガスとの接触時間が増加する。よって、被処理ガス中の酸性化合物が処理液に多く吸収されることにより反応熱を多く発生させることができる。
【0015】
前記吸収装置は、前記容器の内部において前記処理液に浸漬されるように配置され、前記被処理ガスを通過させることにより前記被処理ガスを分散させる分散部をさらに備えていてもよい。この態様では、分散部により被処理ガスを分散させることにより被処理ガスの表面積を増加させることができる。これにより、処理液と被処理ガスとの接触面積が増加するため、被処理ガス中の酸性化合物が処理液に多く吸収されることにより反応熱を多く発生させることができる。
【0016】
前記容器において、前記被処理ガスと接触した前記処理液が、前記酸性化合物の含有率が高い第1相部分と前記酸性化合物の含有率が低く前記第1相部分よりも比重が小さい第2相部分とに相分離し、前記容器は、第1排出部と、上下方向において前記第1排出部よりも高い位置に配置された第2排出部とを有していてもよい。この態様では、被処理ガスと接触した処理液において相分離した第1相部分と第2相部分をそれぞれ第1排出部及び第2排出部を通して容器から取り出すことにより、取り出された処理液における第1相部分と第2相部分との比率を安定させることができる。すなわち、容器内において、酸性化合物を含む被処理ガスと接触した処理液は、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに相分離する。第2相部分は第1相部分よりも比重が小さいため、容器内において第2相部分は第1相部分よりも高い位置に存在する。そして、主として第1相部分を含む処理液は第1排出部を通して、また、主として第2相部分を含む処理液は第2排出部を通して、容器から取り出される。よって、容器から取り出された第1相部分及び第2相部分を含む処理液において第1相部分と第2相部分との比率を安定させることができる。
【0017】
前記容器は、前記反応熱回収器を収容した状態で前記処理液により満たされるとともに上方に開口している吸収部を有し、前記第2排出部は前記吸収部から溢れた前記第2相部分を含む処理液を排出し、前記第1排出部は前記第2排出部を通して排出される処理液以外の処理液を排出してもよい。この態様では、比重が第1相部分よりも小さい第2相部分を本体部から溢れさせることにより主として第2相部分を含む処理液を第2排出部を通して容器から取り出すことができるとともに、主として第1相部分を含む処理液を第1排出部を通して容器から取り出すことができる。
【0018】
前記容器の底部の外面に連結されており、前記反応熱を回収するための冷媒を前記反応熱回収器に導入する入口室及び前記冷媒を前記反応熱回収器から導出する出口室をさらに備え、前記反応熱回収器は、逆U字状で前記底部の内面から縦長に起立する管を有し、前記管の一方の端部が前記入口室に連通しているとともに、前記管の他方の端部が前記出口室に連通していてもよい。この態様では、反応熱回収器が逆U字状に容器の底部の内面に起立されているため、逆U字状の両端部それぞれを容器の底部の外面に連結された入口室及び出口室それぞれに連結することができる。また、反応熱回収器が縦長に起立しているため、処理液と被処理ガスとの接触による反応熱を反応熱回収器の縦長の長さ範囲に亘って十分に回収することができる。
【0019】
本発明に係るガス処理装置は、上記の吸収装置と、前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して前記酸性化合物を分離させる再生装置と、前記容器において前記被処理ガスと接触した前記処理液を前記再生装置に送る送液部と、を備える。
【0020】
本発明では、吸収装置において反応熱の回収量を増加させつつ、被処理ガスと接触した処理液から酸性化合物を分離することができる。
【0021】
本発明に係る吸収方法は、酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを容器内で接触させて、前記処理液に前記酸性化合物を吸収させる吸収方法であって、反応熱回収器を浸漬した状態で前記容器の内部に貯留された処理液に、当該処理液の液面よりも下に位置する処理液供給口から処理液を供給し、前記被処理ガスを、前記反応熱回収器の高さ範囲内の位置から、前記容器の内部に貯留された前記処理液に供給し、前記処理液が前記被処理ガス中の前記酸性化合物を吸収することにより生じる反応熱を前記反応熱回収器によって回収する。
【0022】
本発明では、吸収方法において、容器内に処理液が貯留され、かつ処理液に浸漬された反応熱回収器の高さ範囲内の位置からガス供給路を通して被処理ガスが処理液中に供給されるため、被処理ガスが処理液と接触することなく容器内を通過してしまうのを抑制することができる。よって、処理液と被処理ガス中の酸性化合物とが十分に反応することにより反応熱が増加するため、反応熱回収器による反応熱の回収量を増加させることができる。なお、反応熱回収器が処理液に浸漬されるように容器内に処理液が貯留されるため、液面が変動する場合でも反応熱回収器が処理液から露出するのを抑制することができる。すなわち、処理液内に反応熱回収器を浸漬させた状態を維持することができるため、反応熱回収器による反応熱の回収量の低下を抑制することができる。
【0023】
また、処理液供給口が液面より下から処理液を供給し、かつ処理液に浸漬された反応熱回収器の高さ範囲内の位置から被処理ガスが供給されるため、処理液供給口の近傍において発生する反応熱が反応熱回収器に伝わり易い。よって、反応熱回収器による反応熱の回収量を増加することができる。
【0024】
本発明に係るガス処理方法は、吸収装置において上記に記載の吸収方法を実施することにより被処理ガスに含まれる酸性化合物が吸収された処理液を前記吸収装置から再生装置に送る送液工程と、前記再生装置において、前記処理液を加熱して、当該処理液から前記酸性化合物を分離する再生工程と、を備える。
【0025】
本発明では、前記吸収方法を実施することにより反応熱の回収量を増加させつつ、被処理ガスと接触した処理液から酸性化合物を分離することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに相分離する処理液を用いて酸性化合物を吸収する際の反応熱の回収量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係るガス処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の第2実施形態に係るガス処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
図3】本発明の第2実施形態の変形例に係るガス処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
図4】本発明の第3実施形態に係るガス処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
図5】本発明の他の態様に係る吸収装置の構成を概略的に示す図である。
図6】本発明の他の態様に係るガス処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るガス処理装置10は、酸性化合物の吸収により相分離する処理液を用い、前記酸性化合物を含む被処理ガスから前記酸酸性化合物を分離するガス処理装置である。
【0030】
図1に示すように、ガス処理装置10は、吸収装置20と、再生装置30と、循環路40と、熱交換器50と、熱移送部60と、を備えている。循環路40は、吸収装置20から抜き出された処理液を再生装置30に導入させる第1流路41と、再生装置30から処理液を抜き出して吸収装置20に還流させる第2流路42とを含む。第2流路42にはポンプ46が、また第1流路41にはポンプ55が設けられている。なお、図6のように熱交換先が別途設けられている場合には(図6の例では、出口室25における冷媒の熱の熱交換先は再生装置30)、熱交換器50は省略することが可能である。
【0031】
吸収装置20は、被処理ガスと処理液とを接触させることにより、被処理ガス中の酸性化合物を処理液に吸収させ、酸性化合物が除去されたガスを排出する。吸収装置20は、吸収容器(容器)21と、入口室24及び出口室25と、を含む。
【0032】
吸収容器21は、本体部22と、本体部22を上から覆うように連結され本体部22よりも幅広の拡幅部23と、を含む。
【0033】
本体部22は、底部22aと、底部22aの周囲から上方に延びる側部22bと、側部22bの上端部において上方に開口する上端開口22cとを有する上下方向に高さを有する有底筒状に構成されている。
【0034】
拡幅部23は、上端開口22cを覆うように本体部22より幅広の蓋状に構成されている。拡幅部23は、本体部22の周囲に接続された下端部23aと、下端部23aから上方に延びる側部23bと、側部23bの上端部を封止するように上端部に連結された上部23cと、を有する。拡幅部23の下端部23aは、上端開口22cよりも下において本体部22の側部22bの外面に沿って周方向に延びている。本実施形態では、拡幅部23の下端部23aは、上端開口22cよりも下であり、かつ、本体部22の側部22bの上下方向の中央部よりも上方において本体部22の側部22bの外面に接続されている。本体部22の側部22bの外面と拡幅部23の側部23bの内面との間には空間S1が設けられている。また、上端開口22cと拡幅部23の上部23cの内面との間には空間S2が設けられている。
【0035】
本体部22の内部には、反応熱回収器60aが配置されている。反応熱回収器60aは、底部22aを貫通するとともに、内部に冷媒が通流可能な管を有する。本実施形態では、管は、逆U字状で本体部22の底部22aの内面から縦長に起立している。管は、逆U字状の両端部それぞれが入口室24及び出口室25それぞれに連結されている。すなわち、管の一方の端部は入口室24と連通しており、入口室24から管の一方の端部を通して管内に冷媒が導入される。管の他方の端部は出口室25と連通しており、管内の冷媒は管の他方の端部を通して出口室25に導出される。反応熱回収器60aは、例えば逆U字状の複数の管の束から構成されている。
【0036】
反応熱回収器60aの上下方向の長さ、つまり逆U字状の下端部から上端部までの長さは、反応熱回収器60aが本体部22の内部に収容されるように本体部22の上下方向の長さよりも短い。反応熱回収器60aの幅は本体部22の幅よりも小さく、反応熱回収器60aは本体部22の側部22bの内面から離隔するように配置されている。
【0037】
本体部22の内面には互い違いに配置された複数の邪魔板70が取り付けられている。複数の邪魔板70は、本体部22内の被処理ガス及び処理液を含む流体を蛇行させながら上昇させる蛇行部を構成する。複数の邪魔板70は、縦断面視において側部22bの一方の内面から他方の内面に向かって延びる第1板材と、他方の内面から一方の内面に向かって延びる第2板材とを有し、第1板材及び第2板材は交互に配置されている。これにより、本体部22内には蛇行した流路が形成されている。ここで、「縦断面」とは、図1の紙面に沿う方向の断面である。
【0038】
複数の邪魔板70は、反応熱回収器60aに干渉しないように反応熱回収器60aの周囲に配置されている。例えば、前記第1部材は前記一方の内面において反応熱回収器60aの約半分を取り囲む形態を有し、前記第2部材は前記他方の内面において反応熱回収器60aの約半分を取り囲む形態を有することができる。ただし、これに限らず、複数の邪魔板70は、反応熱回収器60aの内側にも配置されていてもよい。
【0039】
本体部22には、プロセスガス等の被処理ガスを供給するガス供給路11と、処理液の一部を本体部22から排出する第1排出部14と、が接続されている。ガス供給路11は、反応熱回収器60aの高さ範囲内の位置において本体部22に接続されている。本実施形態では、ガス供給路11は、反応熱回収器60aの下端部又は下端部近傍に対応する本体部22の底部22a又は底部22a近傍の側部22bに接続されている。第1排出部14は、側部22bのうち底部22a近傍に接続されている。
【0040】
拡幅部23には、処理後のガスを排出するガス排出路12と、処理液の一部を拡幅部23から排出する第2排出部15と、第2流路42と、が接続されている。ガス排出路12は、拡幅部23の上部23cに接続されている。第2排出部15は、第1排出部14よりも上下方向において高い位置であり、空間S1に連通する位置に接続されている。第2流路42は、拡幅部23の側部23bと接続されている。なお、ガス排出路12、第2排出部15及び第2流路42等の配管が拡幅部23等の対象物と「接続されている」には、一例として配管が対象物を貫通することにより配管内の空間が対象物内の空間とつながることが含まれる。
【0041】
拡幅部23内には、処理液を本体部22に供給する処理液供給路13が設けられている。処理液供給路13は、供給路本体部13aと、供給路本体部13aの先端部に設けられた供給配管と、を有する。供給路本体部13aは、第2流路42と接続されている。本実施形態では、供給路本体部13aは、拡幅部23の側部23bにおいて第2流路42と接続されている。供給路本体部13aと拡幅部23との接続部分(貫通部分)16は、上端開口22cの高さ位置よりも高い位置に設けられている。
【0042】
供給路本体部13aは、接続部分16から本体部22内に延びるように構成されている。具体的に、供給路本体部13aは、接続部分16から上端開口22cの上方まで延びているとともに、上端開口22cの上方から本体部22の内部に向かって下方に延びている。
【0043】
前記供給配管には、処理液供給口13bが形成されている。処理液供給口13bは、前記供給配管に形成された1つの開口であってもよいが、本実施形態では、前記供給配管の延びる方向に沿って間欠的に形成された下向きの複数の開口である。処理液供給口13bは、本体部22内で開口する。処理液供給口13bは、吸収装置20の運転時に本体部22内に貯留される処理液の液面よりも下の位置になるように配置されている。本実施形態では、処理液供給口13bは、本体部22内において、吸収装置20の運転時において処理液の液面と反応熱回収器60aの上端部との間に配置されている。処理液供給口13bは、本体部22内において、接続部分16よりも反応熱回収器60aに近い位置に配置されている。上面視において、前記供給配管において処理液供給口13bが形成されている範囲と反応熱回収器60aとは重畳している。
【0044】
上記の本体部22は、反応熱回収器60aを収容した状態で処理液により満たされるとともに上方に開口している吸収部28に相当する。
【0045】
吸収装置20には、空間S1内の処理液の液位を測定する液位計75が設けられている。本実施形態では、液位計75は、空間S1に連通するように拡幅部23の側部23bに接続されている。液位計75には処理液量制御部76が電気的に接続されている。処理液量制御部76は、処理液供給口13bから本体部22に供給される処理液の量を制御する。本実施形態では、処理液量制御部76は、液位計75が測定した空間S1内の処理液の液位と所定の液位閾値とを比較し、処理液の液位が所定の液位閾値となるようにポンプ46及びポンプ55を制御する。これにより、本体部22に供給される処理液量と、第1排出部14及び第2排出部15を通して吸収容器21から排出される処理液量との比率が概ね一致し、液位が所定範囲に収まる。
【0046】
ガス供給路11には、本体部22に供給される被処理ガスの流量を測定するガス流量計77が取り付けられている。ガス流量計77には冷媒量制御部78が電気的に接続されている。冷媒量制御部78は、ガス流量計77が測定した被処理ガスの流量と所定のガス量閾値とを比較し、比較結果に基づいて後述する熱移送部60の圧縮機60c及びポンプ60dの回転数を制御する。例えば、冷媒量制御部78は、被処理ガスの流量が所定のガス量閾値を上回る場合は圧縮機60c及びポンプ60dの回転数を上げて入口室24から反応熱回収器60aに供給する液状の冷媒の量を多くする。一方、冷媒量制御部78は、被処理ガスの流量が所定のガス量閾値を下回る場合は圧縮機60c及びポンプ60dの回転数を下げて入口室24から反応熱回収器60aに供給する液状の冷媒の量を少なくする。これにより、被処理ガスの本体部22への供給量に応じて冷媒量が調整される。なお、圧縮機60cにおいて十分に圧力が確保されている場合、ポンプ60dは不要である。
【0047】
再生装置30には、第1流路41と、第2流路42とが接続されている。第1流路41は、再生装置30の上部に接続されており、ポンプ55から導出された処理液を再生装置30内に導入させる。第2流路42は、再生装置30の下端部又は下端部近傍に接続されており、再生装置30に貯留された処理液を導出させる。
【0048】
再生装置30は、処理液が貯留され、この貯留された処理液を加熱することによって、酸性化合物を脱離させる。この処理液からの酸性化合物の脱離は、吸熱反応である。再生装置30は、処理液を加熱すると、酸性化合物が脱離するだけでなく、処理液中の水が蒸発する。
【0049】
再生装置30には、供給路80と加熱流路82とが接続されている。供給路80は、再生装置30内で得られた酸性化合物を供給先に供給する。供給路80には、処理液から蒸発した酸性化合物のガスと水蒸気との混合気体を冷却するコンデンサ84が設けられている。混合気体は冷却されると、水蒸気が凝縮するので、水蒸気を分離することができる。分離された水蒸気は再生装置30に還流される。コンデンサ84としては、川水等の安価な冷却水を用いた熱交換器を用いることができる。
【0050】
加熱流路82は、一端部が第2流路42に接続されているが、再生装置30の下端部又は下端部近傍に接続されていてもよい。加熱流路82の他端部は再生装置30の下部に接続されている。加熱流路82には、再生装置30に貯留される処理液を加熱するリボイラ86が設けられている。リボイラ86は、再生装置30の内部で処理液を加熱するよう配設してもよいが、図示するように、再生装置30から外部に抜き出された処理液を加熱するように構成してもよい。この場合、リボイラ86は、加熱後に再生装置30に還流させる加熱流路82に配設することができる。なお、リボイラ86としては、例えば電気、蒸気、バーナー等任意の熱源により直接又は間接的に処理液を加熱するものを用いることができる。
【0051】
熱移送部60は、出口室25の冷媒を熱交換器50に移送する。熱移送部60は、冷媒が封入された閉ループ状の循環流路60bを備えている。循環流路60bには、入口室24、反応熱回収器60a、出口室25、圧縮機60c、熱交換器50、ポンプ60d及び膨張機構60eがこの順に配置されている。熱交換器50内には凝縮器60fが配置されている。なお、ポンプ60dは省略することが可能である。
【0052】
熱交換器50は、第1流路41、第2流路42及び循環流路60bに接続され、第1流路41を流れる処理液と、第2流路42を流れる処理液と、循環流路60bを流れる冷媒と、の間で熱交換させる。熱交換器50は、例えばプレート熱交換器等によって構成されるが、温度差が比較的小さい流体間での熱交換が可能なマイクロチャネル熱交換器によって構成され得る。これにより、エネルギー効率を向上することができる。
【0053】
ガス処理装置10が分離する酸性化合物としては、水溶液が酸性となるものであれば特に限定されないが、例えば塩化水素、二酸化炭素、二酸化硫黄、二硫化炭素等が挙げられる。
【0054】
ガス処理装置10に用いる処理液は、酸性化合物を可逆的に吸収脱離することが可能な吸収剤である。処理液は、例えば、水、アミン化合物及び有機溶剤を含むアルカリ性の吸収剤である。アミン化合物は30wt%、有機溶剤は60wt%、水は10wt%とすることが望ましい。
【0055】
アミン化合物としては、例えば、2-アミノエタノール(MEA:溶解度パラメータ=14.3(cal/cm1/2)、2-(2-アミノエトキシ)エタノール(AEE:溶解度パラメータ=12.7(cal/cm1/2)等の1級アミン、例えば2-(メチルアミノ)エタノール(MAE)、2-(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2-(ブチルアミノ)エタノール(BAE)等の2級アミン、例えばトリエタノールアミン(TEA)、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル等の3級アミンなどが挙げられる。
【0056】
有機溶剤としては、例えば1-ブタノール(溶解度パラメータ=11.3(cal/cm1/2)、1-ペンタノール(溶解度パラメータ=11.0(cal/cm1/2)、オクタノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEGDEE)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)等が挙げられ、複数種を混合して用いてもよい。
【0057】
次に、上記のガス処理装置10を用いたガス処理方法について説明する。ガス処理方法には、吸収装置20において被処理ガスに含まれる酸性化合物を処理液に吸収させる吸収方法と、再生装置30において加熱によって当該処理液から酸性化合物を放出させる再生方法とが含まれる。
【0058】
吸収方法では、反応熱回収器60a及び複数の邪魔板70が本体部22(吸収部28)内において処理液に浸漬された状態で、吸収装置20に第2流路42から処理液が供給される。すなわち、第2流路42から導入された処理液が処理液供給路13の処理液供給口13bを通して吸収部28内に供給される。このとき、処理液供給口13bは、吸収部28内の処理液で浸された状態となっている。吸収部28内の処理液は、吸収部28の上端開口22cから溢れ拡幅部23の空間S1に流入する。すなわち、拡幅部23の内部に位置する吸収部28(本体部22)の側部22bは、上端開口22cから空間S1に処理液が溢れ出るまで吸収部28内に処理液を貯留する堰の役割を果たす。
【0059】
また、吸収装置20では、処理液が供給されている最中に被処理ガスが供給される。すなわち、ガス供給路11を通して反応熱回収器60aの下端部又は下端部近傍から被処理ガスが供給される。また、冷媒量制御部78により、ガス流量計77により測定された被処理ガスの流量に基づいて入口室24から反応熱回収器60aに導入される液状の冷媒の量が制御される。
【0060】
処理液中に被処理ガスが供給されると、被処理ガスと処理液とが接触して処理液に被処理ガス中の酸性化合物が吸収される。具体的に、吸収部28に処理液が貯留された状態において、気泡状の被処理ガスは、反応熱回収器60aの下端部又は下端部近傍から処理液内を浮力により上昇する。本実施形態では、被処理ガスは複数の邪魔板70により処理液中において蛇行しながら上昇する。これにより、被処理ガスが処理液中を即座に上昇する場合よりも、処理液と被処理ガスとの接触時間が増加する。したがって、被処理ガス中の酸性化合物が処理液に多く吸収される。
【0061】
処理液が被処理ガス中の酸性化合物を吸収するときの反応は発熱反応であり、反応熱が生じる。反応熱回収器60aは、この反応熱を回収する。すなわち、入口室24から反応熱回収器60aに導入された冷媒のうち、液状の冷媒が、前記反応熱により気化することによりガス状の冷媒となり、これにより反応熱回収器60aは反応熱を回収する。ガス状の冷媒は反応熱回収器60aから出口室25に導出される。複数の邪魔板70により処理液中における被処理ガスの滞留時間が長くなるため、反応熱回収器60aにより反応熱をより多く回収することができる。
【0062】
また、本実施形態では、上面視において前記供給配管において処理液供給口13bが形成されている範囲と反応熱回収器60aとは重畳しているため、処理液供給口13bを通して反応熱回収器60aの幅寸法の全体に亘って処理液が供給される。よって、反応熱回収器60aの近傍においてリーンな処理液と被処理ガスとを接触させ、反応熱を反応熱回収器60aにより回収することができる。
【0063】
被処理ガスと接触した処理液は、酸性化合物の含有率が高い第1相部分と酸性化合物の含有率が低い第2相部分とに相分離する。第2相部分の比重は第1相部分の比重よりも小さい。よって、第2相部分は吸収部28の上部に向かい、吸収部28の上端開口22cから溢れて拡幅部23内の空間S1に流入し、空間S1に溜まる。主として第2相部分を含む処理液は第2排出部15を通して拡幅部23から取り出される。一方、第1相部分は吸収部28の下部に向かい、主として第1相部分を含む処理液は第1排出部14を通して吸収部28から取り出される。このように、比重が第1相部分よりも小さい第2相部分を吸収部28から溢れさせて拡幅部23の空間S1に導入することにより主として第2相部分を含む処理液を第2排出部15を通して吸収部28から取り出すことができるとともに、主として第1相部分を含む処理液を第1排出部14を通して吸収部28から取り出すことができる。よって、吸収部28から取り出された第1相部分及び第2相部分を含む処理液において第1相部分と第2相部分との比率を安定させることができる。
【0064】
次に、吸収装置20において液相分離した処理液を再生装置30に送液する。具体的に、第1排出部14を通して吸収部28から取り出された主として第1相部分を含む処理液と、第2排出部15を通して吸収部28から取り出された主として第2相部分を含む処理液とを、合流させてポンプ55により第1流路41を通して再生装置30に送液する。すなわち、吸収装置20から取り出された処理液の全量を再生装置30に導入する。処理液を再生装置30に導入する前に熱交換器50により加熱する。
【0065】
なお、反応熱回収器60aから出口室25に導出されたガス状の冷媒は、圧縮機60cよって圧縮されて熱交換器50内の凝縮器60fに流入する。凝縮器60f内を流れるガス状の冷媒は、第1流路41を流れる処理液を加熱することにより温度が下がり、凝縮する。この凝縮した液状の冷媒はポンプ60dによって送液され、膨張機構60eによって膨張されて入口室24を通して反応熱回収器60aに流れ込む。このような冷媒の循環によって、吸収装置20の反応熱により再生装置30に送液される処理液が加熱される。よって、熱移送部60を用いることによって再生に要する再生エネルギーを低減することができる。なお、ポンプ60dは省略することが可能である。
【0066】
再生方法では、再生装置30内に導入された処理液を加熱することにより、処理液から酸性化合物を分離する。再生装置30内では、第1相部分及び第2相部分が混合された状態の処理液が流下しながら加熱される。これにより、処理液から酸性化合物が分離される。さらには、処理液から蒸発した水蒸気が得られることがある。処理液から分離された酸性化合物及び水蒸気は、供給路80を流れる。供給路80において、水蒸気はコンデンサ84で凝縮し、再生装置30に戻される。したがって、処理液から分離された酸性化合物のみが供給先に供給される。再生装置30内に貯留された処理液は、第2流路42を流れて吸収装置20に還流する。第2流路42を流れる処理液の熱は、熱交換器50において、第1流路41を流れる処理液の加熱に用いられるため、当該処理液の温度が下がる。
【0067】
なお、第1相部分を含む処理液及び第2相部分を含む処理液を含む処理液の全体を再生装置30に導入して1相の処理液に戻すことにより、1相に戻った処理液において、第1相部分に含まれる溶媒と第2相部分に含まれる溶媒との比率を安定させることができる。例えば、処理液が水、アミン化合物及び有機溶剤を含むアルカリ性の吸収剤の場合、水、アミン化合物及び有機溶剤の比率を安定させることができる。
【0068】
以上説明したように、第1実施形態では、吸収容器21内に処理液が貯留され、かつ処理液に浸漬された反応熱回収器60aの高さ範囲内の位置においてガス供給路11を通して被処理ガスが処理液中に供給される。このため、被処理ガスが処理液と接触することなく吸収容器21内を通過してしまうのを抑制することができる。よって、処理液と被処理ガス中の酸性化合物とが十分に反応することにより反応熱が増加するため、反応熱回収器60aによる反応熱の回収量を増加させることができる。なお、反応熱回収器60aが処理液に浸漬されるように吸収容器21内に処理液が貯留されるため、液面が変動する場合でも吸収容器21が処理液から露出するのを抑制することができる。すなわち、処理液内に吸収容器21を浸漬させた状態を維持することができるため、吸収容器21による反応熱の回収量の低下を抑制することができる。
【0069】
また、処理液の液面と反応熱回収器60aの上端部との間に配置されている処理液供給口13bから処理液が供給されるため、処理液供給口13bの近傍において発生する反応熱が反応熱回収器60aに伝わり易い。よって、反応熱回収器60aによる反応熱の回収量を増加することができる。すなわち、処理液供給口13bからは被処理ガスの中の酸性化合物の吸収率の高いリーンな処理液が吸収容器21に供給される。よって、処理液供給口13bの近傍において当該処理液に被処理ガス中の酸性化合物が多く吸収されることにより反応熱が多く発生する。そのため、処理液供給口13bが処理液の液面よりも上の位置に配置されている場合に比べて、処理液供給口13bの近傍においてより多く発生する反応熱を反応熱回収器60aに効率よく伝え、反応熱回収器60aによってより多くの反応熱を回収することができる。また、複数の邪魔板70により処理液と被処理ガスとの接触時間が増加することによっても反応熱回収器60aによる反応熱の回収量を増加することができる。
【0070】
また、本実施形態では、処理液供給路13が拡幅部23との接続部分16から吸収部28内に延びているため、接続部分16が反応熱回収器60aから離れている場合でも、処理液供給口13bを接続部分16よりも反応熱回収器60aに近づけることができる。よって、処理液を反応熱回収器60aにより近い位置に供給することができるため、反応熱回収器60aによる反応熱の回収量を増加することができる。
【0071】
さらに、反応熱回収器60aが縦長に起立しているため、処理液と被処理ガスとの接触による反応熱を被処理ガスが上昇する方向に沿って反応熱回収器60aの縦長の長さ範囲に亘って十分に回収することができる。
【0072】
また、吸収装置20は、上下方向に縦長の塔形状に構成されていることからも、被処理ガスが処理液と接触する時間を長くすることができるため、反応熱をより多く発生させて回収することができる。
【0073】
(第2実施形態)
図2は本発明の第2実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。第2実施形態に係る吸収装置20は、処理液供給口13bの位置において第1実施形態に係る吸収装置20とは異なっている。
【0074】
処理液供給口13bは、本体部22(吸収部28)内の処理液の液面よりもよりも下になるように配置されればよく、第2実施形態に係る吸収装置20では、処理液供給口13bは反応熱回収器60aの高さ範囲内に配置されている。すなわち、処理液供給口13bは反応熱回収器60aの上端部と下端部との間に配置されている。処理液供給口13bを反応熱回収器60aに近づけることにより、反応熱回収器60aによる反応熱の回収量を増加することができる。
【0075】
処理液供給口13bが反応熱回収器60aの高さ範囲内に配置されるように、本実施形態では、第2流路42は本体部22における反応熱回収器60aの高さ範囲内の部位(接続部分16)に接続されている。供給路本体部13aは、接続部分16において第2流路42と接続されており、接続部分16から本体部22内に延びている。処理液供給口13bは、供給路本体部13aの先端に開口し、反応熱回収器60aの高さ範囲内に位置している。供給路本体部13a及び処理液供給口13bは反応熱回収器60aに干渉しないように配置されている。すなわち、図2の例の場合、供給路本体部13aは接続部分16から反応熱回収器60aと干渉しないように反応熱回収器60aの内側まで延びており、処理液供給口13bは反応熱回収器60aの内側に位置している。ただし、これに限らず、供給路本体部13aは接続部分16から反応熱回収器60aの手前まで延びており、処理液供給口13bは反応熱回収器60aの手前に位置していてもよい。なお、図2の例では、処理液供給口13bは1つの開口であるが、複数の開口であってもよい。また、図2の例では、処理液供給口13bの開口の向きは水平方向であるが、下向きであってもよい。
【0076】
なお、図3に示すように、処理液供給口13bは、反応熱回収器60aの下端又は下端近く、すなわち吸収部28内の底部22a近傍に配置されていてもよい。これにより、酸性化合物の吸収率の高い処理液及び被処理ガスがともに反応熱回収器60aの下端又は下端近くから供給される。これにより、反応熱回収器60aの下端又は下端近くにおいて処理液に酸性化合物を吸収させ、この吸収により生じる反応熱を反応熱回収器60aにより回収することができる。
【0077】
なお、複数の処理液供給口13bは本体部22内に配置されていれば、図2及び図3に示す形態に限定されない。例えば、一の処理液供給口13bが処理液の液面と反応熱回収器60aの上端部との間に配置され、他の一の処理液供給口13bが反応熱回収器60aの下端又は下端近くに配置されていてもよい。
【0078】
(第3実施形態)
図4は本発明の第3実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。第1実施形態に係る吸収装置20では、本体部22が反応熱回収器60aを収容した状態で処理液により満たされるとともに上方に開口している吸収部28に相当するが、第3実施形態に係る吸収装置20では、本体部22内に配置された分離壁100が吸収部28として機能する点が異なる。
【0079】
本体部22の上端と拡幅部23の下端部23aとが連続するように本体部22に拡幅部23が連結されている。
【0080】
本体部22及び拡幅部23の内部には、分離壁100が配置されている。分離壁100は上方及び下方に開口する縦長の筒状に構成されている。分離壁100の幅は本体部22の側部22bの幅よりも小さく、分離壁100は本体部22の側部22bの内面及び拡幅部23の側部23bの内面から離隔して配置されている。分離壁100の外面と本体部22の側部22bの内面及び拡幅部23の側部23bの内面との間には空間S1が設けられている。分離壁100の上端と拡幅部23の上部23cの内面との間には空間S2が設けられている。分離壁100は、分離壁100の上端が本体部22の上端及び拡幅部23の下端部23aよりも上方となるように配置されている。そして、分離壁100の上端は、分離壁100の内側、すなわち吸収部28内の処理液を溢れさせる堰として構成されている。分離壁100の下端は本体部22の底部22aの内面から離隔している。この離隔した空間を利用して処理液供給路13を分離壁100の下端に延ばし、分離壁100の下端から分離壁100内に処理液供給口13bを挿入することもできる。
【0081】
分離壁100に囲まれる内部には、反応熱回収器60aが配置されている。すなわち、分離壁100は、反応熱回収器60aを収容した状態で処理液により満たされるとともに上方に開口している吸収部28を構成する。つまり、吸収容器21は、吸収部28を有する。反応熱回収器60aは、本体部22の底部22aの内面から逆U字状に縦長に起立する態様で分離壁100(吸収部28)内に概ね全体が挿入されている。
【0082】
また、分離壁100に囲まれる内部において、処理液供給口13bは、処理液の液面と反応熱回収器60aの上端部との間に配置されている。
【0083】
また、分離壁100の内面には複数の斜邪魔板110が取り付けられている。複数の斜邪魔板110は、本体部22内の被処理ガス及び処理液を含む流体の流れを螺旋状に蛇行させる蛇行部を構成する。図4の例では、各斜邪魔板110は、複数の孔が設けられた金属製の板材から構成されている。例えば、各板材は、孔を有する板状のSUSから構成されている。斜邪魔板110の孔には、反応熱回収器60aを構成する管の束が貫通している。本実施形態では、上下方向に隣接する板材が互いに傾斜の向きが異なるように分離壁100の内壁に傾斜状態で支持されている。なお、複数の斜邪魔板110は、反応熱回収器60aに接触するように分離壁100に取り付けられていてもよい。図4において実線で示される斜邪魔板110は平面視における吸収装置20の中心線を通る平面に対して紙面手前側に位置し、一方、破線で示される斜邪魔板110は前記中心線を通る平面に対して紙面奥側に位置する。
【0084】
第2排出部15は、第1排出部14よりも上下方向において高い位置であり、空間S1に連通する位置に接続されている。本実施形態では、第2排出部15は本体部22の側部22b及び拡幅部23の側部23bに接続されている。なお、第2排出部15は本体部22の側部22b及び拡幅部23の側部23bのうち少なくとも一方に接続されていればよい。
【0085】
分離壁100(吸収部28)内において反応熱回収器60a及び複数の斜邪魔板110が処理液に浸漬された状態で処理液が処理液供給口13bを通して吸収部28内に供給される。この状態で被処理ガスがガス供給路11から処理液に供給されると、被処理ガスは複数の斜邪魔板110の複数の孔を通過することにより分散されつつ処理液内を上昇する。本実施形態では、ガス供給路11は、断面視において対向する2方向から被処理ガスを吸収部28内に供給する。処理液と被処理ガスとが接触することにより、処理液が被処理ガス中の酸性化合物を吸収するとともに第1相部分及び第2相部分に液相分離する。この吸収により生じた反応熱を反応熱回収器60aが回収する。複数の斜邪魔板分散部110が吸収液及び被処理ガスを螺旋状に蛇行させるため、吸収部28内での吸収液及び被処理ガスの滞留時間を確保できるとともに反応熱の反応熱回収器60aへの伝熱速度が向上する。これにより、処理液と被処理ガスとの接触面積が増加する。よって、被処理ガス中の酸性化合物が処理液に多く吸収されることにより反応熱を多く発生させることができる。なお、複数の斜邪魔板110が反応熱回収器60aに接触している場合には、複数の斜邪魔板110が回収した熱を反応熱回収器60aに伝熱することができる。液相分離した第2相部分は吸収部28の上方の開口から溢れ、空間S1に流入して空間S1に溜まる。主として第2相部分を含む処理液は第2排出部15から取り出され、主として第1相部分を含む処理液は第1排出部14から取り出される。
【0086】
第3実施形態でも、処理液供給口13bの配置位置は図2及び図3に示す位置であってもよく、さらには、複数の処理液供給口13bが図1図3を組み合わせた位置に設けられていてもよい。
【0087】
なお、第1及び第2実施形態において、複数の邪魔板70に代えて複数の斜邪魔板110を設けてもよい。また、第3実施形態において複数の斜邪魔板110に代えて複数の邪魔板70を設けてもよい。
【0088】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の態様を採用することもできる。
【0089】
(A)蛇行部について
複数の邪魔板70は、上記第1及び第2実施形態に示すように本体部22(吸収部28)の内壁面に取り付けられる態様に限定されず、反応熱回収器60aに取り付けられてもよい。図5の例では、複数の邪魔板70は、反応熱回収器60aに取り付けられた第1邪魔板部分70aと、吸収部28の内壁面に取り付けられた第2邪魔板部分70bと、を含む。第1邪魔板部分70aは、反応熱回収器60aの逆U字状の一方の管と他方の管とに亘って取り付けられている。第1邪魔板部分70aは吸収部28の内壁面には取り付けられていない。第2邪魔板部分70bは、吸収部28において互いに対向する内壁面のうち一方から第1邪魔板部分70aに上下に重複するまで延びている。これにより、吸収部28内には蛇行した流路が形成されている。
【0090】
(B)熱移送部について
熱移送部60の凝縮器60fは熱交換器50に設けられている構成に代え、図6に示すように再生装置30内に配置されてもよい。反応熱回収器60a内から出口室25に導出された冷媒のうち液状の冷媒は、前記発熱反応における反応熱によって加熱されて気化する。ガス状の冷媒は圧縮機60cよって圧縮されて凝縮器60f内に流入する。凝縮器60f内を流れるガス状の冷媒は、再生装置30内での前記吸熱反応により凝縮する。この凝縮した液状の冷媒はポンプ60dによって送液され、膨張機構60eによって膨張されて入口室24を通して反応熱回収器60aに流れ込む。このように、冷媒の循環によって、吸収装置20の反応熱が再生装置30へ熱輸送される。熱移送部60を用いることによって再生に要する再生エネルギーを低減することができる。
【0091】
(C)その他
上記実施形態において、複数の邪魔板70と、液位計75及び処理液量制御部76と、ガス流量計77及び冷媒量制御部78と、は適宜省略することができる。また、反応熱回収器60aに冷媒を循環できればよく、入口室24及び出口室25もまた省略することができる。
【符号の説明】
【0092】
10 :ガス処理装置
11 :ガス供給路
13 :処理液供給路
13b :処理液供給口
14 :第1排出部
15 :第2排出部
16 :接続部分
20 :吸収装置
21 :吸収容器
22 :本体部
24 :入口室
25 :出口室
28 :吸収部
41 :第1流路
42 :第2流路
60a :反応熱回収器
70 :邪魔板
100 :分離壁
110 :斜邪魔板
図1
図2
図3
図4
図5
図6