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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068915
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】杭打機の施工管理装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/06 20060101AFI20230511BHJP
   E02D 7/22 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
E02D13/06
E02D7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180367
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 重希
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050CB23
2D050EE01
2D050FF04
2D050FF05
2D050FF07
(57)【要約】
【課題】センサの故障状態においても、施工状況の記録を継続することが可能な杭打機の施工管理装置を提供する。
【解決手段】杭打機の施工管理装置は、複数のセンサの測定結果に基づいて施工管理プログラムを実行する制御部33と、施工管理プログラムの実行結果を表示するディスプレイとを備え、回転駆動用油圧モータ31の駆動圧力を測定する駆動圧センサ35をベースマシンに、制御圧力を測定する制御圧センサ36を回転駆動装置26にそれぞれ設けてなり、制御部は、駆動圧力と制御圧力とに基づいて施工トルクを求めるとともに、制御圧センサの状態に基づいて応急措置の要否を判断し、応急措置を要する状態であるときは、電磁比例減圧弁32に対する制御指令を固定して、駆動圧力のみに基づいて施工トルクを求め、回転駆動用油圧モータは、制御指令を固定したときに、押しのけ容積が最大に調節される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧源を搭載したベースマシンに立設されるリーダと、該リーダに沿って昇降可能な回転駆動装置とを備えた杭打機に実装され、複数のセンサの測定結果に基づいて施工管理プログラムを実行する制御部と、前記施工管理プログラムの実行結果を表示するディスプレイとを備えた施工管理装置において、
前記回転駆動装置は、制御圧力によって押しのけ容積の変更が可能な可変容量型油圧モータと、前記制御部の制御指令に基づいて前記制御圧力を変化させる電磁比例減圧弁とを備え、
前記複数のセンサは、前記可変容量型油圧モータの駆動圧力を測定する駆動圧センサと、前記制御圧力を測定する制御圧センサとを含み、前記駆動圧センサを前記ベースマシンに、前記制御圧センサを前記回転駆動装置にそれぞれ設けてなり、
前記制御部は、前記駆動圧力と前記制御圧力とに基づいて施工トルクを求めるとともに、前記制御圧センサの状態に基づいて応急措置の要否を判断し、応急措置を要する状態であるときは、前記制御指令を固定して、前記駆動圧力のみに基づいて前記施工トルクを求め、
前記可変容量型油圧モータは、前記制御指令を固定したときに、前記押しのけ容積が最大に調節されることを特徴とする施工管理装置。
【請求項2】
油圧源を搭載したベースマシンに立設されるリーダと、該リーダに沿って昇降可能な回転駆動装置とを備えた杭打機に実装され、複数のセンサの測定結果に基づいて施工管理プログラムを実行する制御部と、前記施工管理プログラムの実行結果を表示するディスプレイとを備えた施工管理装置において、
前記回転駆動装置は、制御圧力によって押しのけ容積の変更が可能な可変容量型油圧モータと、前記制御部の制御指令に基づいて前記制御圧力を変化させる電磁比例減圧弁とを備え、
前記複数のセンサは、前記可変容量型油圧モータの駆動圧力を測定する駆動圧センサと、前記制御圧力を測定する制御圧センサとを含み、前記駆動圧センサと前記制御圧センサとを前記回転駆動装置にそれぞれ設けてなり、
前記制御部は、前記駆動圧力と前記制御圧力とに基づいて施工トルクを求めるとともに、前記制御圧センサの状態に基づいて応急措置の要否を判断し、応急措置を要する状態であるときは、前記制御指令を固定して、前記駆動圧力のみに基づいて前記施工トルクを求め、
前記可変容量型油圧モータは、前記制御指令を固定したときに、前記押しのけ容積が最大に調節されることを特徴とする施工管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機の施工管理装置に関し、詳しくは、施工管理装置の故障時応急対応に関する。
【背景技術】
【0002】
杭の埋設や地盤改良などを行う杭打機には、各種工法を制御するための施工管理プログラムを記憶した施工管理装置が搭載されている。施工管理装置は、鋼管杭や中空ロッドなどの施工部材を地中に圧入する場合に、運転室内に設けた制御装置によって施工管理プログラムを実行させて、リーダやオーガなどの各種部品に設けた複数のセンサから動作状態を表す各データを得るとともに、各データから、深度、速度、トルク、回転数などを求めてディスプレイに表示させ、メモリに記録しながら施工を行っている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
杭打機のなかでも小型のものは、可変容量型油圧モータを備えた油圧式オーガを使用しているのが一般的であり、この場合、駆動圧力及びモータ容積に基づいて施工トルクが求められる。また、モータの容積を把握するために必要な制御圧センサは、オーガに生じる振動を直接的に受けることから、通常、耐久性などの要求性能を満足するものが選定されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-190579号公報
【特許文献2】特開2019-199760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、杭長の長尺化や高出力化などといった杭打機の適用範囲の拡大に伴い、正常に稼働する施工管理装置の重要性が増してきている。特に小型杭打機の使用下においては、施工途中で制御圧センサが故障すると、掘削能力に影響はなく施工も可能であるが、施工トルクの記録を正しく行えないことから、施工を中断せざるを得ない状況に陥ってしまう。
【0006】
そこで本発明は、センサの故障状態においても、施工状況の記録を継続することが可能な杭打機の施工管理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機の第1の施工管理装置は、油圧源を搭載したベースマシンに立設されるリーダと、該リーダに沿って昇降可能な回転駆動装置とを備えた杭打機に実装され、複数のセンサの測定結果に基づいて施工管理プログラムを実行する制御部と、前記施工管理プログラムの実行結果を表示するディスプレイとを備えた施工管理装置において、前記回転駆動装置は、制御圧力によって押しのけ容積の変更が可能な可変容量型油圧モータと、前記制御部の制御指令に基づいて前記制御圧力を変化させる電磁比例減圧弁とを備え、前記複数のセンサは、前記可変容量型油圧モータの駆動圧力を測定する駆動圧センサと、前記制御圧力を測定する制御圧センサとを含み、前記駆動圧センサを前記ベースマシンに、前記制御圧センサを前記回転駆動装置にそれぞれ設けてなり、前記制御部は、前記駆動圧力と前記制御圧力とに基づいて施工トルクを求めるとともに、前記制御圧センサの状態に基づいて応急措置の要否を判断し、応急措置を要する状態であるときは、前記制御指令を固定して、前記駆動圧力のみに基づいて前記施工トルクを求め、前記可変容量型油圧モータは、前記制御指令を固定したときに、前記押しのけ容積が最大に調節されることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の杭打機の第2の施工管理装置は、油圧源を搭載したベースマシンに立設されるリーダと、該リーダに沿って昇降可能な回転駆動装置とを備えた杭打機に実装され、複数のセンサの測定結果に基づいて施工管理プログラムを実行する制御部と、前記施工管理プログラムの実行結果を表示するディスプレイとを備えた施工管理装置において、前記回転駆動装置は、制御圧力によって押しのけ容積の変更が可能な可変容量型油圧モータと、前記制御部の制御指令に基づいて前記制御圧力を変化させる電磁比例減圧弁とを備え、前記複数のセンサは、前記可変容量型油圧モータの駆動圧力を測定する駆動圧センサと、前記制御圧力を測定する制御圧センサとを含み、前記駆動圧センサと前記制御圧センサとを前記回転駆動装置にそれぞれ設けてなり、前記制御部は、前記駆動圧力と前記制御圧力とに基づいて施工トルクを求めるとともに、前記制御圧センサの状態に基づいて応急措置の要否を判断し、応急措置を要する状態であるときは、前記制御指令を固定して、前記駆動圧力のみに基づいて前記施工トルクを求め、前記可変容量型油圧モータは、前記制御指令を固定したときに、前記押しのけ容積が最大に調節されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、杭打機に実装される施工管理装置が、制御圧センサの故障などで応急措置を要する状態であるときに、電磁比例減圧弁に対する制御指令を固定して可変容量型油圧モータの押しのけ容積を最大に調節するので、制御圧力を正確に把握できずとも設定された押しのけ容積と駆動圧力とに基づいて施工トルクを求めることが可能となり、従来では中断を迫られていた施工を応急的に完遂することができる。しかも、不意に掘削抵抗が大きくなる状況におかれても、回転駆動装置の最大能力で掘削時間をかけて確実に掘削することができるので、地中で作業が進行する杭施工特有の応急対応として特に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1形態例における施工管理装置が適用される杭打機の側面図である。
図2】同じく制御回路を示す図である。
図3】同じく制御圧センサの故障状態を示す説明図である。
図4】本発明の第2形態例における制御回路を示す図である。
図5】同じく制御圧センサの故障状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図3は、本発明の第1形態例における施工管理装置を小型杭打機に適用した図である。杭打機11は、図1に示すように、鋼管杭施工と地盤改良施工とを切り替えて行うことができる兼用機であって、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持する起伏シリンダ16とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート17が設けられ、上部旋回体13の前部上方には、配管を支持する配管支持部材18が設けられている。さらに、上部旋回体13の右側部には運転室19が、左側部にはエンジンや油圧源となる油圧ポンプを搭載した動力部20がそれぞれ設けられている。
【0012】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を互いに連結したもので、リーダサポート17に設けられた車幅方向の支軸に回動可能に取り付けられている。リーダ15の上端部には、吊上げ用ロープが巻掛けられるトップシーブ21が、下部前方には、鋼管杭22の振れを防止するための開閉可能な振止部材23がそれぞれ配置されている。リーダ15の前面中央には、ラックピニオン式昇降装置の構成部品としてラックギヤ24が、両側面前端部には左右一対のガイドパイプ25,25が、リーダ15の全長にわたってそれぞれ連続的に設けられ、回転駆動装置の一例である油圧式オーガ26の装着部となる。
【0013】
各リーダ部材は、隣接する部分において、リーダ15の断面形状に対応した連結フランジ同士を当接させて形成され、複数のボルト及びナットを使用して安定的に結合されている。各フランジ結合部は、連結フランジの形状や、ボルト孔のサイズ、配置ピッチなどを共通にした同一構造であり、ボルト及びナットを外してフランジ結合を解除することにより、図示は省略するが、リーダ部材を多数で構成した長尺仕様と、リーダ部材を少数で構成した短尺仕様とに組み替え可能である。この場合、上部旋回体13とオーガ26との間を接続する複数本の油圧ホース27は、その長さがリーダ長に合わせて変更される。
【0014】
油圧ホース27は、上部旋回体13から立ち上がる配管支持部材18を経由して、リーダ15に沿った引き回しがなされており、配管支持部材18から先の部分がオーガ26の集中コネクタ28に無拘束で接続されている。この無拘束部分は、略U字状の弛み27aを有するとともに、オーガ26の昇降に追随して上下方向に移動可能であり、その長さは、オーガ26の高さ位置が最大となるときに合わせて設定されている(図1)。これにより、オーガ26が、リーダ15の上端部(上昇限界位置)又は下端部(下降限界位置)に到達したときに、弛み27aの形状が過度に変形することはない。
【0015】
オーガ26は、駆動シャフト29を回転可能に備えた装置本体26aを中心に構成され、リーダ15のガイドパイプ25,25に摺接する左右一対のガイドギブ26b,26bが後方に突出して設けられるとともに、ラックギヤ24に歯合する左右一対のピニオン(図示せず)を昇降用油圧モータ30によって回転駆動することにより、リーダ15の前面に沿って昇降する。
【0016】
また、オーガ26は、装置本体26a内の減速機構に接続される回転駆動用油圧モータ31と、これに付設される電磁比例減圧弁32とを備えている。回転駆動用油圧モータ31は、斜板の傾転角を変更することで容量の変更が可能な斜板式の可変容量型油圧モータである。斜板の傾転角、すなわち、押しのけ容積(モータ1回転当たりの吐出量)は、レギュレータによって調節される。このレギュレータは、電磁比例減圧弁32から出力される制御圧力によって制御される。
【0017】
電磁比例減圧弁32は、図2にも示すように、後述する施工管理装置の制御部33の制御指令に基づいて制御圧力を変化させる。具体的には、ソレノイドに入力される制御電流の増減に伴い減圧度を変更するように構成され、制御指令が入力されると、発生する指令パイロット圧(2次圧力)が大きくなっていき、レギュレータの作動によって押しのけ容積を漸次減少させてモータを稼動する。一方、制御指令を最小に固定する(例えば制御電流を切る)と、押しのけ容積を最大に調節してモータを稼動する。すなわち、電磁比例減圧弁32の制御電流と制御圧力とは比例関係にあるが、制御圧力と押しのけ容積とは反比例の関係にある。これにより、回転駆動用油圧モータ31は、流量一定ならば、押しのけ容積が小さいほどモータは高速回転し、押しのけ容積が大きいほど回転数は低くなるものの、多くの作動油を使用して回転することから、大きなトルクを発生させる。
【0018】
ここで、杭打機11を鋼管杭の埋設を目的として使用する場合には、施工部材に鋼管杭22が使用される。鋼管杭22は、駆動シャフト29の下端に設けられたアダプタ34を介して連結され、駆動シャフト29を回転させながらオーガ26を下降させることによって地中に圧入される。また、杭打機11を地盤改良を目的として使用する場合には、施工部材に中空ロッド(図示せず)が使用される。中空ロッドは、上端がオーガ26の上方でスイベルと連結されるとともに下端が掘削ヘッドと連結される。この中空ロッドを回転させながら、中空ロッドを通じて掘削ヘッドの先端から噴射したセメントミルクなどの地盤改良剤が地盤内に注入される。
【0019】
こうした杭の埋設や地盤改良などの各種工法を行うために、運転室19内には、走行や旋回、オーガ26の昇降・回転駆動などを行う操作レバーや操作ペダル、押しボタンスイッチ、タッチパネル式のディスプレイなどの機器が操作性を考慮して運転席の近傍に集約的に配置されており、さらに、これらの機器や杭打機11の動作センサなどと電気的に接続された施工管理装置が設置されている。
【0020】
施工管理装置は、各種工法制御のための施工管理プログラムを実行して、データ処理や判定などの演算処理を行う制御部(CPU)33を中心に構成されており、施工管理プログラムを記憶するFLASH ROMや処理中の各種データを一時的に記憶するRAM、さらには、施工現場における杭の埋設予定位置、目標深度などを設定した施工計画データ及び施工管理プログラムの実行により作成された実施工時の各種データを記憶する記憶部や、運転者が施工管理プログラムの実行結果を表示画面で確認したり、タッチパネル操作でデータ入力を行ったりするディスプレイなどを備えている。
【0021】
オーガ26の動作センサを構成する複数のセンサには、トルクセンサや深度センサ、回転センサなどが挙げられる。例えば、トルクセンサは、オーガ26に把持された施工部材のトルクを測定するセンサであって、図2に示すように、回転駆動用油圧モータ31の駆動圧力(ポンプ負荷圧力)を測定する駆動圧センサ35と、制御圧力を測定する制御圧センサ36とからなる。駆動圧センサ35は、上部旋回体13に設けられ、メイン油圧ポンプ37の出口の圧力を測定する。一方、制御圧センサ36は、オーガ26に設けられ、パイロット油圧ポンプ38からの圧油を電磁比例減圧弁32で減圧して得た圧力を測定する。
【0022】
各センサによって測定された信号は制御部33に伝達され、例えば、回転駆動用油圧モータ31の駆動圧力と、制御圧力に対応する押しのけ容積とに基づき、施工負荷として施工トルクが算出される。深度や積算回転数、回転速度についても、各部に設けられたエンコーダや近接センサなどで測定した信号に基づいてそれぞれ算出される。
【0023】
このように構成された施工管理装置を使用して杭施工(鋼管埋設)を行う場合、施工地点に杭打機11を移動した状態で、施工管理装置の表示を施工画面に切り替え、施工データを作成しながら目標深度に到達するまで計画通りに杭打ち作業が進められる。オペレータの運転操作は、例えば、レバーを傾動操作して、オーガ26の右回転操作と下降操作とを行い、運転操作を維持した状態のままで、掘削抵抗に合わせてトルク調整用のボリュームを操作する。ここで、掘削開始時はトルクを小さくし、回転数を上げて効率重視の施工が進められる。そして、目標深度に近づき、地盤が硬くなってくると、掘削抵抗が大きくなってオーガ26の回転数が低下してくるため、ボリュームを上げて徐々にトルクを大きくしていく。
【0024】
このとき、制御部33では、回転駆動用油圧モータ31の駆動圧力と、制御圧力に対応する押しのけ容積とに基づき、施工トルクを算出し、画面中に「杭番号」や「目標深度」などと共に「施工トルク」を表示させる。この表示は、例えば、縦軸を深度、横軸を施工トルクの大きさで示した二次元座標の折れ線グラフで表され、地盤の状況を知るための表示、すなわち、オペレータの予測可能性を高める表示となる。こうしたリアルタイムの表示と同時に、深度毎の施工トルクと、対象の杭番号とが関連付けられて施工管理装置の記憶部に逐次記憶される。
【0025】
ところで、近年では、杭長の長尺化や高出力化などといった杭打機11の適用範囲の拡大に伴い、正常に稼働する施工管理装置の重要性が増してきている。特に小型杭打機の使用下においては、モータ容積を把握するために必要な制御圧センサ36が故障すると、施工トルクの記録を正しく行えないことから、施工を中断せざるを得ない状況に陥ってしまう。そこで、杭打機11の施工管理装置には、追加的に組み込まれる制御プログラムを実行させることで、制御圧センサ36の故障時に応急対応を行う機能が備わっている。以下では、応急対応の具体的な動作について、図2及び図3を参照しながら説明する。
【0026】
制御部33は、図2に示すように、杭打機11の運転操作に従って、施工トルクを求めるとともに、制御圧センサ36からの信号が正常な範囲のものであるか否か、すなわち、応急措置を要するか否かを判断するための状態監視を行っている。例えば、経年劣化で制御圧センサ36が故障状態になると、制御部33ではその異常信号を検知して、応急措置を要する状態であると判断する。この場合、制御部33は、図3に示すように、制御圧センサ36からの信号を無視して受信不要な状態に切り替えるとともに、電磁比例減圧弁32への制御指令を最小に固定して、換言すれば、制御電流を切って、回転駆動用油圧モータ31の駆動圧力のみに基づいて施工トルクを求める制御を行う。これにより、回転駆動用油圧モータ31は、押しのけ容積を最大に調節してモータを稼動し、最大トルクを出力しながら低速で杭打機11の施工を継続させる。
【0027】
このように、本発明の第1の構成によれば、杭打機11に実装される施工管理装置が、制御圧センサ36の故障などで応急措置を要する状態であるときに、電磁比例減圧弁32に対する制御指令を固定して可変容量型油圧モータ31の押しのけ容積を最大に調節するので、制御圧力を正確に把握できずとも設定された押しのけ容積と駆動圧力とに基づいて施工トルクを求めることが可能となり、従来では中断せざるを得ない状況でも、施工を応急的に完遂することができる。しかも、地盤の状況により不意に掘削抵抗が大きくなる状況におかれても、回転駆動装置26の最大能力で掘削時間をかけて確実に掘削することができるので、地中で作業が進行する杭施工特有の応急対応として特に有益である。
【0028】
また、制御圧センサ36を回転駆動装置26に設ける一方で、駆動圧センサ35を、振動や雨水などの影響を直接受けることのないベースマシン14(例えば運転席のフロア下)に設けているので、駆動圧センサ35の故障リスクを低減することが可能となり、施工管理の品質の確保に寄与するものである。
【0029】
図4及び図5は、本発明の杭打機11の施工管理装置の第2形態例を示している。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した施工管理装置の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0030】
第2形態例に示す施工管理装置は、第1形態例の構成に対して、駆動圧センサの取付位置のみを変更するもので、駆動圧センサ39は、図4に示すように、制御圧センサ36と同じくオーガ26に設けられ、2つ1組で回転駆動用油圧モータ31の出入口の差圧(1次圧力と2次圧力の圧力差)を測定している。制御部33では、測定した差圧に基づいて回転駆動用油圧モータ31の駆動圧力を決定し、この駆動圧力と制御圧力に対応する押しのけ容積とに基づき、施工トルクを算出する。また、制御部33は、制御圧センサ36の状態に基づいて応急措置の要否を判断し、図5に示すように、応急措置を要する故障状態であるときは、制御圧センサ36からの信号を無視して受信不要な状態に切り替えるとともに、電磁比例減圧弁32への制御指令を最小に固定して、回転駆動用油圧モータ31の駆動圧力のみに基づいて施工トルクを求める制御を行う。
【0031】
そして、このように構成された本形態例においても、制御圧センサ36の故障時に、従来では中断せざるを得ない状況でも、施工を応急的に完遂することができ、さらに、本形態例の場合には、駆動圧センサ39をオーガ26に設けているので、油圧回路の圧力損失による影響を抑えることが可能となり、高い精度を重視した施工管理や、杭長の長尺化、高出力化といったニーズに適う施工管理装置が達成される。
【0032】
なお、本発明は、前記各形態例に限定されるものではなく、制御圧センサの状態に基づく応急対応は、既存の施工管理装置にアドオンして機能させる簡易な構成であればよく、杭打機の仕様に応じて適宜変更することができる。また、実施例では、鋼管埋設を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、地盤改良にも適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…起伏シリンダ、17…リーダサポート、18…配管支持部材、19…運転室、20…動力部、21…トップシーブ、22…鋼管杭、23…振止部材、24…ラックギヤ、25…ガイドパイプ、26…オーガ、26a…装置本体、26b…ガイドギブ、27…油圧ホース、27a…弛み、28…集中コネクタ、29…駆動シャフト、30…昇降用油圧モータ、31…回転駆動用油圧モータ、32…電磁比例減圧弁、33…制御部、34…アダプタ、35…駆動圧センサ、36…制御圧センサ、37…メイン油圧ポンプ、38…パイロット油圧ポンプ、39…駆動圧センサ
図1
図2
図3
図4
図5