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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068921
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】塗装ロボット
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20230511BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230511BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20230511BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B05B12/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180379
(22)【出願日】2021-11-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】多和田 孝達
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 徳夫
【テーマコード(参考)】
4F035
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F035AA03
4F035BC02
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA34
4F042AA09
4F042AB00
4F042CA01
4F042CA06
4F042CA07
4F042CB02
4F042CB08
4F042CB20
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】ロボットアームの先端側に取り付けられた塗装ヘッドを用いて塗装を行う場合において、良好に脱泡することが可能な塗装ロボットを提供する。
【解決手段】塗装ロボット10は、ロボットアームR1の先端側に取り付けられる塗装ヘッド53と、塗装ヘッド53の塗料供給側に接続される塗料供給路103と、ノズル54から吐出されなかった塗料を回収する戻り流路104と、ロボットアームR1に設けられ、塗装ヘッドと並列状態で塗料を流通させるバイパス流路115と、バイパス流路115を流通する塗料の流れの可否を切り替える開閉弁116と、開閉弁116の開閉を制御する制御部130と、ロボットアームR1外の姿勢が変化しない安定部位に設けられ、塗料供給路103または戻り流路104に塗料を供給可能に設けられると共に、塗料に含まれる気泡を除去する第1気泡除去部材101および第2気泡除去部材106とを備えている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームを備え、当該ロボットアームの作動によって塗装対象物に対して塗装を行う塗装ロボットであって、
前記ロボットアームの先端側に取り付けられ、塗料を吐出する複数のノズルを備えると共に、圧電基板の駆動によって前記ノズルから前記塗料を吐出させる塗装ヘッドと、
前記塗装ヘッドの塗料供給側に接続される塗料供給路と、
前記塗装ヘッドの塗料排出側に接続され、前記ノズルから吐出されなかった前記塗料を回収する戻り流路と、
前記ロボットアームに設けられ、前記塗装ヘッドと並列状態で前記塗料を流通させるバイパス流路と、
前記バイパス流路に設けられ、当該バイパス流路を流通する前記塗料の流れの可否を切り替える開閉弁と、
前記開閉弁の開閉を制御する弁制御手段と、
前記ロボットアーム外の姿勢が変化しない安定部位に設けられ、前記塗料供給路または前記戻り流路に前記塗料を供給可能に設けられると共に、前記塗料に含まれる気泡を除去する気泡除去手段と、
を備えていることを特徴とする塗装ロボット。
【請求項2】
請求項1記載の塗装ロボットであって、
前記気泡除去手段は、前記塗料を貯留するタンク本体を備えると共に、
前記タンク本体の塗料貯留部位よりも上方側には、当該タンク本体内の気体を排出する排出口が設けられていて、
前記タンク本体の塗料貯留部位における下方側には、前記塗料を下流側に流通させる流出口が設けられている、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項3】
請求項2記載の塗装ロボットであって、
前記排出口には、開閉可能なエア排出弁が設けられていて、
前記エア排出弁は、一定時間の経過または前記タンク本体内の前記気体の圧力が一定量となった際に、前記弁制御手段の制御によって開放される制御弁である、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項4】
請求項2記載の塗装ロボットであって、
前記排出口には、開閉可能なエア排出弁が設けられていて、
前記エア排出弁は、前記タンク本体内の前記気泡の流入による内部圧力が所定圧力まで上昇した際に、自動的に開放するリリーフ弁である、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
前記タンク本体の内部には、塗料導入管路を介して前記塗料が供給され、
前記タンク本体の内部の前記塗料は、塗料排出管路を介して当該タンク本体の内部から排出され、
前記タンク本体の内部には、前記塗料が通過する際に前記気泡を除去する仕切りフィルタが設置されていて、
前記仕切りフィルタは、前記タンク本体の内部を前記塗料導入管路側と前記塗料排出管路側とに区分することで、前記タンク本体の内部の前記塗料導入管路側の前記塗料は、前記仕切りフィルタを通過して前記塗料排出管路側へ流れ込む、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項6】
請求項2から4のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
前記タンク本体には、スターラーが取り付けられていて、
前記スターラーは、撹拌子と、撹拌子駆動装置とを備え、
前記撹拌子駆動装置は、前記撹拌子との間で磁気吸引力を生じさせる駆動マグネットと、当該駆動マグネットを回転させるモータとを備えると共に、
前記撹拌子は、前記タンク本体の内部に配置され、
前記駆動マグネットは、前記タンク本体の外部において前記撹拌子と対向する状態で配置されると共に、
前記モータの駆動によって前記駆動マグネットを回転させることで、前記撹拌子を回転させ、その撹拌子の回転に伴って前記タンク本体の内部の前記塗料を回転させる、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
前記塗料供給路、前記戻り流路および前記バイパス流路によって構成される塗料循環路のいずれかの部位には、前記塗料を下流側に排出するギヤポンプが設けられていて、
前記ギヤポンプの回転数を制御するポンプ制御手段が設けられ、
前記ギヤポンプよりも前記塗料循環路の上流側と下流側の少なくとも一方には、当該塗料循環路を流れる前記塗料の圧力を測定する圧力センサが設けられ、
前記ポンプ制御手段での制御に基づいて前記ギヤポンプが駆動させられる制御回転数と、前記圧力センサで測定された測定圧力とに基づいて、前記塗料中に気泡が入り込んでいる場合に気泡混入と判定すると共に、
前記制御回転数に対応する設定圧力値に対して、前記測定圧力が所定の上限値を上回るか、または所定の下限値を下回る場合に、エア混入と判定する判定手段が設けられていて、
前記判定手段で前記エア混入と判定された際に、当該エア混入であることを通知する通知手段が設けられている、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
前記塗料供給路、前記戻り流路および前記バイパス流路によって構成される塗料循環路のいずれかの部位には、前記塗料を下流側に排出するギヤポンプが設けられていて、
前記ギヤポンプの回転数を制御するポンプ制御手段が設けられ、
前記ギヤポンプよりも前記塗料循環路の上流側と下流側の少なくとも一方には、当該塗料循環路を流れる前記塗料の流量を測定する流量計が設けられ、
前記ポンプ制御手段での制御に基づいて前記ギヤポンプが駆動させられる制御回転数と、前記流量計で測定された前記塗料の測定流量とに基づいて、前記塗料中に気泡が入り込んでいる場合に気泡混入と判定すると共に、
前記制御回転数に対応する設定流量値に対して、前記測定流量が所定の上限値を上回るか、または所定の下限値を下回る場合に、エア混入と判定する判定手段が設けられていて、
前記判定手段で前記エア混入と判定された際に、当該エア混入であることを通知する通知手段が設けられている、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項9】
請求項7または8記載の塗装ロボットであって、
前記弁制御手段は、前記判定手段でエア混入と判定された場合に、前記バイパス流路を前記塗料が流れるように前記開閉弁を開放させると共に、
前記ポンプ制御手段は、前記塗装対象物に対して塗装を行う状態よりも多く流れるように、前記ギヤポンプの作動を制御する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の塗装ラインにおいては、ロボットを用いたロボット塗装が主流となっている。このロボット塗装では、多関節ロボットの先端に回転霧化型の塗装ヘッドを取り付けた塗装機(回転霧化型の塗装機)が用いられている。また、たとえば特許文献1に開示のように、プリントヘッド(10)において必要でないコーティング剤を循環させるために、コーティング剤帰還器(11)を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-501883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロボットアームの先端にインクジェット式のプリントヘッドを取り付けて塗装を行う場合、プリントヘッドに備わる塗料吐出ノズル単体には弁体などの封止機構が無いため、プリントヘッドの姿勢や、一次側と二次側の圧力差によりエア(気泡)を引込む場合がある。また、塗料の色替えを行う場合や、塗料を塗装ヘッドに充填する際に、ノズルを経由してノズルからエア(気泡)を引き込むことがある。このようなエア(気泡)の引き込みが生じると、ノズル内部に排出が困難なエア(気泡)が溜まってしまい、塗料を圧電素子の駆動によっては押し出すことが困難となる問題が生じる。しかしながら、このような問題は、特許文献1によっては解決することが困難である。
【0005】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、ロボットアームの先端側に取り付けられた塗装ヘッドを用いて塗装を行う場合において、良好に脱泡することが可能な塗装ロボットを提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、ロボットアームを備え、当該ロボットアームの作動によって塗装対象物に対して塗装を行う塗装ロボットであって、ロボットアームの先端側に取り付けられ、塗料を吐出する複数のノズルを備えると共に、圧電基板の駆動によってノズルから塗料を吐出させる塗装ヘッドと、塗装ヘッドの塗料供給側に接続される塗料供給路と、塗装ヘッドの塗料排出側に接続され、ノズルから吐出されなかった塗料を回収する戻り流路と、ロボットアームに設けられ、塗装ヘッドと並列状態で塗料を流通させるバイパス流路と、バイパス流路に設けられ、当該バイパス流路を流通する塗料の流れの可否を切り替える開閉弁と、開閉弁の開閉を制御する弁制御手段と、ロボットアーム外の姿勢が変化しない安定部位に設けられ、塗料供給路または戻り流路に塗料を供給可能に設けられると共に、塗料に含まれる気泡を除去する気泡除去手段と、を備えていることを特徴とする塗装ロボットが提供される。
【0007】
また、上述の発明において、気泡除去手段は、塗料を貯留するタンク本体を備えると共に、タンク本体の塗料貯留部位よりも上方側には、当該タンク本体内の気体を排出する排出口が設けられていて、タンク本体の塗料貯留部位における下方側には、塗料を下流側に流通させる流出口が設けられている、ことが好ましい。
【0008】
また、上述の発明において、排出口には、開閉可能なエア排出弁が設けられていて、エア排出弁は、一定時間の経過またはタンク本体内の気体の圧力が一定量となった際に、弁制御手段の制御によって開放される制御弁である、ことが好ましい。
【0009】
また、上述の発明において、排出口には、開閉可能なエア排出弁が設けられていて、エア排出弁は、タンク本体内の気泡の流入による内部圧力が所定圧力まで上昇した際に、自動的に開放するリリーフ弁である、ことが好ましい。
【0010】
また、上述の発明において、タンク本体の内部には、塗料導入管路を介して塗料が供給され、タンク本体の内部の塗料は、塗料排出管路を介して当該タンク本体の内部から排出され、タンク本体の内部には、塗料が通過する際に気泡を除去する仕切りフィルタが設置されていて、仕切りフィルタは、タンク本体の内部を塗料導入管路側と塗料排出管路側とに区分することで、タンク本体の内部の塗料導入管路側の塗料は、仕切りフィルタを通過して塗料排出管路側へ流れ込む、ことが好ましい。
【0011】
また、上述の発明において、タンク本体には、スターラーが取り付けられていて、スターラーは、撹拌子と、撹拌子駆動装置とを備え、撹拌子駆動装置は、撹拌子との間で磁気吸引力を生じさせる駆動マグネットと、当該駆動マグネットを回転させるモータとを備えると共に、撹拌子は、タンク本体の内部に配置され、駆動マグネットは、タンク本体の外部において撹拌子と対向する状態で配置されると共に、モータの駆動によって駆動マグネットを回転させることで、撹拌子を回転させ、その撹拌子の回転に伴ってタンク本体の内部の塗料を回転させる、ことが好ましい。
【0012】
また、上述の発明において、塗料供給路、戻り流路およびバイパス流路によって構成される塗料循環路のいずれかの部位には、塗料を下流側に排出するギヤポンプが設けられていて、ギヤポンプの回転数を制御するポンプ制御手段が設けられ、ギヤポンプよりも塗料循環路の上流側と下流側の少なくとも一方には、当該塗料循環路を流れる塗料の圧力を測定する圧力センサが設けられ、ポンプ制御手段での制御に基づいてギヤポンプが駆動させられる制御回転数と、圧力センサで測定された測定圧力とに基づいて、塗料中に気泡が入り込んでいる場合に気泡混入と判定すると共に、制御回転数に対応する設定圧力値に対して、測定圧力が所定の上限値を上回るか、または所定の下限値を下回る場合に、エア混入と判定する判定手段が設けられていて、判定手段でエア混入と判定された際に、当該エア混入であることを通知する通知手段が設けられている、ことが好ましい。
【0013】
また、上述の発明において、塗料供給路、戻り流路およびバイパス流路によって構成される塗料循環路のいずれかの部位には、塗料を下流側に排出するギヤポンプが設けられていて、ギヤポンプの回転数を制御するポンプ制御手段が設けられ、ギヤポンプよりも塗料循環路の上流側と下流側の少なくとも一方には、当該塗料循環路を流れる塗料の流量を測定する流量計が設けられ、ポンプ制御手段での制御に基づいてギヤポンプが駆動させられる制御回転数と、流量計で測定された塗料の測定流量とに基づいて、塗料中に気泡が入り込んでいる場合に気泡混入と判定すると共に、制御回転数に対応する設定流量値に対して、測定流量が所定の上限値を上回るか、または所定の下限値を下回る場合に、エア混入と判定する判定手段が設けられていて、判定手段でエア混入と判定された際に、当該エア混入であることを通知する通知手段が設けられている、ことが好ましい。
【0014】
また、上述の発明において、弁制御手段は、判定手段でエア混入と判定された場合に、バイパス流路を塗料が流れるように開閉弁を開放させると共に、ポンプ制御手段は、塗装対象物に対して塗装を行う状態よりも多く流れるように、ギヤポンプの作動を制御する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ロボットアームの先端側に取り付けられた塗装ヘッドを用いて塗装を行う場合において、良好に脱泡することが可能な塗装ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係る塗装ロボットの全体構成を示す概略図である。
図2図1に示す塗装ロボットのうち、塗料を吐出させるノズル形成面を正面視した状態を示す図である。
図3図1に示す塗装ロボットにおいて、複数の塗装ヘッドを千鳥状に配置した状態を示す図である。
図4図1に示す塗装ロボットにおいて、各ノズルへ塗料を供給する概略的な構成について示す図である。
図5図4に示す、列方向供給流路、ノズル加圧室および列方向排出流路付近の構成を示す断面図である。
図6図2に示す塗装ヘッドユニットとは異なる他の塗装ヘッドユニットにおけるノズル形成面の構成を示す平面図である。
図7図1に示す塗装ロボットが備える脱気モジュールの概略的な構成を示す断面図である。
図8図1に示す塗装ロボットが備える第1構成例に係る塗料供給機構等の概略的な構成を示す図である。
図9図8に示す塗料供給機構に存在する第1気泡除去部材および第2気泡除去部材の構成を示す図である。
図10図9に示す第1気泡除去部材および第2気泡除去部材の変形例の構成を示す図である。
図11図8に示す第1構成例に係る塗料供給機構とは異なる第2構成例に係る塗料供給機構等の概略的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施の形態に係る塗装ロボット10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、必要に応じて、X方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の長手方向とし、X1側は図2における右側、X2側は図2における左側とする。また、Y方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の短手方向(幅方向)とし、Y1側は図2における紙面上側、Y2側は図2における紙面下側とする。
【0018】
本実施の形態の塗装ロボット10は、自動車製造の工場における塗装ラインに位置する車両または車両部品(以下、車両の一部となる車両部品も車両として説明する)といった塗装対象物に対して、「塗装」を行うものであり、塗膜を塗装対象物の表面に形成して、その表面の保護や美観を与えることを目的としている。したがって、所定時間毎に、塗装ラインに沿って移動してくる車両に対し、一定の時間内に所望の塗装品質にて、塗装を行う必要がある。
【0019】
また、本実施の形態の塗装ロボット10では、上述した塗膜を形成するのみならず、各種のデザインや画像を、車両や車両部品といった塗装対象物に対して形成することが可能である。
【0020】
(1-1.インクジェット式の車両用塗装機の全体構成について)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る塗装ロボット10の全体構成を示す概略図である。図1に示すように、塗装ロボット10は、ロボット本体20と、塗装ヘッドユニット50とを主要な構成要素としている。
【0021】
(1-2.塗装装置本体について)
図1に示すように、ロボット本体20は、基台21と、脚部22と、回転軸部23と、回転アーム24と、第1回動アーム25と、第2回動アーム26と、リスト部27と、これらを駆動させるための不図示のモータと、を主要な構成要素としている。なお、回転軸部23からリスト部27までの部分は、ロボットアームR1に対応するが、脚部22等のようなそれ以外の部分も、ロボットアームR1に対応するものとしても良い。
【0022】
これらのうち、基台21は床面等の設置部位に設置される部分であるが、この基台21が設置部位に対して走行可能であっても良い。また、脚部22は、基台21から上部に向かい立設された部分である。なお、脚部22と基台21の間に関節部を設けて、脚部22が基台21に対して回動可能としても良い。
【0023】
また、脚部22の上端には、回転軸部23が設けられている。この回転軸部23には、回転アーム24が回転自在な状態で取り付けられている。また、回転アーム24は、モータ(第1モータ)の駆動により回転させられるが、そのようなモータとしては、電気モータやエアモータを用いることが可能である。
【0024】
また、回転アーム24には、第1回動アーム25の一端側が回動可能な状態で取り付けられている。なお、第1回動アーム25を回転アーム24に対して相対的に回転させる第2モータ(図示省略)は、回転アーム24のハウジング内に収納されていても良く、第1回動アーム25のハウジング内に収納されていても良い。
【0025】
また、第1回動アーム25の他端側には、第2回動アーム26の一端側が軸部を介して揺動自在な状態で取り付けられている。この第2回動アーム26を第1回動アーム25に対して相対的に回転させる第3モータ(図示省略)は、第1回動アーム25のハウジング内に収納されていても良く、第2回動アーム26のハウジング内に収納されていても良い。
【0026】
ここで、第2回動アーム26には、モジュール取付部261が設けられている。モジュール取付部261は、後述する脱気モジュール80を取り付けるための部分である。なお、モジュール取付部261は、脱気モジュール80を嵌合固定によって取り付けることが可能であるが、たとえばネジ固定や、脱気モジュール80を覆う不図示のカバーをモジュール取付部261にネジ等によって固定し、そのカバーを介して脱気モジュール80を固定するようにしても良い。なお、モジュール取付部261は、脱気モジュール80を取り付けるための係合部に対応する。
【0027】
なお、上記の説明では、脱気モジュール80は、第2回動アーム26のモジュール取付部261に取り付けられている。しかしながら、脱気モジュール80は、後述する塗装ヘッドユニット50側に設けるようにしても良い。また、脱気モジュール80は、ロボットアームR1外の安定的な部位に設けるようにしても良い。
【0028】
なお、第2回動アーム26の中途部分のうち、上記の脱気モジュール80よりも下流側には、後述するような第1流量計FM1が取り付けられている。また、第2回動アーム26の中途部分のうち、後述するペイントレギュレータ119よりも下流側には、後述するような第2流量計FM2が取り付けられている。
【0029】
また、第2回動アーム26の他端側には、リスト部27が取り付けられている。リスト部27は、複数(たとえば3つ)の異なる向きの軸部を中心に、回転運動を可能としている。それにより、塗装ヘッドユニット50の向きを精度良くコントロールすることが可能となっている。なお、軸部の個数は、2つ以上であれば幾つでも良い。
【0030】
かかるリスト部27のそれぞれの軸部を中心とした回転運動を可能とするために、モータ(第4モータ~第6モータ;図示省略)が設けられている。なお、第4モータ~第6モータは、第2回動アーム26のハウジング内に収納されているが、その他の部位に収納されていても良い。
【0031】
また、リスト部27には、不図示のホルダ部を介して塗装ヘッドユニット50が取り付けられている。すなわち、塗装ヘッドユニット50は、ホルダ部を介して、リスト部27に着脱自在に設けられている。
【0032】
なお、上記のような、回転軸部23と、回転アーム24と、第1回動アーム25と、第2回動アーム26と、リスト部27と、これらを駆動させる第1モータ~第6モータと、を備える塗装ロボット10は、6軸で駆動可能なロボットである。しかしながら、塗装ロボット10は、4軸以上であれば、何軸で駆動するロボットであっても良い。
【0033】
(1-3.塗装ヘッドユニットについて)
次に、塗装ヘッドユニット50について説明する。リスト部27には、図示を省略するチャック部を介して塗装ヘッドユニット50が取り付けられる。
【0034】
図2は、塗装ヘッドユニット50のうち、塗料を吐出させるノズル形成面52を正面視した状態を示す図である。図2に示すように、塗装ヘッドユニット50は、不図示のヘッドカバーを備え、そのヘッドカバー内に、種々の構成が内蔵されている。図2に示すように、ノズル形成面52には、ノズル54が塗装ヘッドユニット50の長手方向に対して傾斜する方向に連なるノズル列55が複数設けられている。かかるノズル列55には、本実施の形態では、主走査方向(Y方向)の一方側(Y2側)に存在する第1ノズル列55Aと、主走査方向の他方側(Y1側)に存在する第2ノズル列55Bとが設けられている。
【0035】
なお、塗料を吐出する場合、第1ノズル列55Aにおける隣り合うノズル54から吐出される液滴の間に、第2ノズル列55Bにおけるノズル54から吐出される液滴が着弾されるように、各ノズル54の駆動タイミングが制御される。それにより、塗装の際にドット密度を向上させることができる。
【0036】
ところで、図2に示すように、ノズル形成面52には、単一の塗装ヘッド53が存在している。しかしながら、ノズル形成面52には、複数の塗装ヘッド53から構成されるヘッド群が存在するようにしても良い。この場合、一例として、図3に示すように、複数の塗装ヘッド53を位置合わせしつつ千鳥状に配置する構成が挙げられるが、ヘッド群における塗装ヘッド53の配置は千鳥状でなくても良い。
【0037】
図4は、各ノズル54へ塗料を供給する概略的な構成について示す図である。図5は、列方向供給流路58、ノズル加圧室59および列方向排出流路60付近の構成を示す断面図である。図4および図5に示すように、塗装ヘッド53は、供給側大流路57と、列方向供給流路58と、ノズル加圧室59と、列方向排出流路60と、排出側大流路61とを備えている。供給側大流路57は、後述する塗料供給機構100の塗料供給路103から塗料が供給される流路である。また、列方向供給流路58は、供給側大流路57内の塗料が、分流される流路である。
【0038】
また、ノズル加圧室59は、列方向供給流路58とノズル供給流路59aを介して接続されている。それにより、ノズル加圧室59には、列方向供給流路58から塗料が供給される。このノズル加圧室59は、ノズル54の個数に対応して設けられていて、内部の塗料を後述する圧電基板62を用いてノズル54から吐出させることができる。
【0039】
また、ノズル加圧室59は、ノズル排出流路59bを介して列方向排出流路60と接続されている。したがって、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59内からノズル排出流路59bを介して、列方向排出流路60へと排出される。また、列方向排出流路60は、排出側大流路61と接続されている。排出側大流路61は、それぞれの列方向排出流路60から、排出された塗料が合流する流路である。この排出側大流路61は、後述する塗料供給機構100の戻り流路104と接続されている。
【0040】
このような構成により、後述する塗料供給機構100の塗料供給路103から供給された塗料は、供給側大流路57、列方向供給流路58、ノズル供給流路59aおよびノズル加圧室59を経て、ノズル54から吐出される。また、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59からノズル排出流路59b、列方向排出流路60および排出側大流路61を経て、後述する塗料供給機構100の戻り流路104へと戻される。
【0041】
なお、図4に示す構成では、1本の列方向供給流路58には、1本の列方向排出流路60が対応するように配置されている。しかしながら、1本の列方向供給流路58に、複数本(たとえば2本)の列方向排出流路60が対応するように配置されていても良い。また、複数本の列方向供給流路58に、1本の列方向排出流路60が対応するように配置されていても良い。
【0042】
また、図5に示すように、ノズル加圧室59の天面(ノズル54とは反対側の面)には、圧電基板62が配置されている。この圧電基板62は、圧電体である2枚の圧電セラミック層63a,63bを備え、さらに共通電極64と、個別電極65とを備えている。圧電セラミック層63a,63bは、外部から電圧を印加することで、伸縮可能な部材である。このような圧電セラミック層63a,63bとしては、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTiO3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系等のセラミックス材料を用いることができる。
【0043】
また、図5に示すように、共通電極64は、圧電セラミック層63aと圧電セラミック層63bの間に配置されている。また、圧電基板62の上面には、共通電極用の表面電極(不図示)が形成されている。これら共通電極64と共通電極用表面電極とは、圧電セラミック層63aに存在する不図示の貫通導体を通じて、電気的に接続されている。また、個別電極65は、上記のノズル加圧室59と対向する部位にそれぞれ配置されている。さらに、圧電セラミック層63aのうち、共通電極64と個別電極65とに挟まれた部分は、厚さ方向に分極している。したがって、個別電極65に電圧を印加すると、圧電効果によって圧電セラミック層63aが歪む。このため、所定の駆動信号を個別電極65に印加すると、ノズル加圧室59の体積を減少させるように圧電セラミック層63bが相対的に変動し、それによって塗料が吐出される。
【0044】
なお、図5において、共通電極64がノズル加圧室59の天面に配置されているが、共通電極64は、図5に示すような、ノズル加圧室59の天面に配置されている構成には限られない。たとえば、共通電極64は、ノズル加圧室59の側面(上記の天面と直交または概ね直交する面)に配置される構成を採用しても良く、その他、塗料をノズル54から良好に吐出可能であれば、どのような構成を採用しても良い。
【0045】
(1-4.塗装ヘッドユニットの他の構成について)
次に、塗装ヘッドユニット50の他の構成について説明する。図6は、他の塗装ヘッドユニット50のノズル形成面52の構成を示す平面図である。図6に示すように、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;Y方向)に沿って並ぶことでノズル列55を構成するようにしても良い。なお、図6に示す構成では、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;主走査方向)に並んでノズル列55を構成しているが、1つの(単一の)ノズル54のみが塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;主走査方向)に配置される構成としても良い。すなわち、ノズル列55が1つのノズル54から構成されていても良い。
【0046】
また、図6に示すような塗装ヘッド53を用いて車両に塗装を行う場合、塗装ヘッド53の長手方向が、塗装ヘッド53の主走査方向に対して若干傾斜させた状態で塗装を実行するようにしても良い。たとえば、図2に示す塗装ヘッド53の構成では、ノズル列55は主走査方向に対して角度αだけ傾斜しているとすると、塗装ヘッド53の長手方向を、塗装ヘッド53の主走査方向に対して角度αだけ傾斜させるようにしても良い。このように傾斜させる場合には、各ノズル54からの塗料の吐出タイミングを調整するだけで、図2に示す塗装ヘッド53と同等の塗装を実現することができる。
【0047】
(1-5.脱気モジュールについて)
次に、脱気モジュール80の構成に関して説明する。図7は、脱気モジュール80の概略的な構成を示す断面図である。脱気モジュール80は、後述する除去フィルタ90よりも塗料供給路103の下流側に配置されていて、塗料に溶存している溶存気体を除去(脱気)するための部材である。なお、脱気モジュール80は、第2フィルタに対応する。この脱気モジュール80は、図7に示すように、筐体81と、中空糸膜束82と、流入側封止部材84と、排気側封止部材85とを有している。
【0048】
筐体81は、中空糸膜束82、流入側封止部材84および排気側封止部材85を収容している筒状の部材である。この筐体81の図示を省略する中心線に沿った一端側には、塗料供給口81aが設けられていて、この塗料供給口81aが塗料供給路103の上流側に接続されている。また、筐体81の中心線に沿った他端側には、吸引口81bが設けられていて、この吸引口81bは後述する真空ポンプ110に吸引管路109を介して接続されている。このため、筐体81の内部は減圧され、その減圧によって塗料に溶存している溶存気体が吸引口81bから排出(脱気)される。
【0049】
また、筐体81の側面には、塗料排出口81cが設けられていて、この塗料排出口81cは塗料供給路103の下流側に接続されている。したがって、筐体81内に流入した塗料は、この塗料排出口81cから下流側に向かって流れる。
【0050】
中空糸膜束82は、多数の中空糸膜83を、たとえば円筒状に束ねた部材であるが、その一端側(塗料が流入する側の端部)は、流入側封止部材84に固定されると共に、その他端側(気体が排出される側の端部)は、排気側封止部材85に固定されている。この中空糸膜束82を構成する中空糸膜83は、気体は透過するが、気体よりも大きな分子の液体は透過しない中空糸状の膜である。なお、中空糸膜83の材質としては、たとえば、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルペンテン-1)などのポリオレフィン系樹脂、ポリジメチルシロキサンその共重合体などのシリコン系樹脂、PTFE、フッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、が挙げられる。しかしながら、中空糸膜83の材質は、これらに限定されるものではなく、その他の材質を用いても良い。
【0051】
また、中空糸膜83の膜形状としては、たとえば、多孔質膜、微多孔膜、多孔質を有さない非多孔膜等が挙げられるが、その膜形状は、これらに限定されるものではない。また、中空糸膜83の膜形態としては、たとえば、膜全体の化学的あるいは物理的構造が均質な対称膜(均質膜)、膜の化学的あるいは物理的構造が膜の部分によって異なる非対称膜(不均質膜)、が挙げられるが、膜形態は、これらに限定されるものではない。
【0052】
なお、中空糸膜束82は、複数の中空糸膜83を並べてシート状に形成した中空糸膜シートを用いることができ、その中空糸膜シートをたとえば円筒状に形成する。そして、直径の異なる円筒状の中空糸膜シートを筐体81の内部に多数配置することで、図7に示すような中空糸膜束82が形成されている。なお、中空糸膜束82の中心側には、塗料が供給される中央供給部82aが設けられている。
【0053】
また、流入側封止部材84は、たとえば樹脂を用いて形成されている。この流入側封止部材84の径方向の中央には、塗料を中央供給部82aに供給するための供給孔84aが設けられている。なお、流入側封止部材84を形成するための樹脂は、供給孔84a以外への塗料の流入を防ぐことが可能であれば、どのようなものであっても良い。
【0054】
また、排気側封止部材85も、流入側封止部材84と同様に、たとえば樹脂を用いて形成されている。しかしながら、排気側封止部材85は、流入側封止部材84とは異なり、その径方向の中央には孔は形成されていない。このため、塗料は、排気側封止部材85を通過して、吸引口81b側に流出されるのが困難となっている。
【0055】
しかしながら、上記の排気側封止部材85の存在により、中央供給部82aに供給された塗料は、中空糸膜束82を構成する中空糸膜83の間を通って、筐体81の径方向の外側へと流れる。このとき、真空ポンプ110を作動させて、吸引口81bを介して中空糸膜83の内部を減圧することで、中空糸膜83の間を塗料が通過する際に、塗料に溶存している気体が、中空糸膜束82の内部へと引き込まれることで、塗料から溶存気体が除去(脱気)される。このようにして脱気された塗料が、塗料排出口81cから塗料供給路103の下流側へと供給される。
【0056】
なお、脱気モジュール80は、上述した第2回動アーム26のモジュール取付部261に取り付けられるが、筐体81をさらに覆うケーシングを介して、モジュール取付部261に脱気モジュール80を取り付けるようにしても良い。
【0057】
(1-6.除去フィルタについて)
次に、除去フィルタ90について説明する。上述した脱気モジュール80よりも塗料供給路103の上流側には、除去フィルタ90が設けられている。除去フィルタ90は、塗料供給路103を流れる塗料に含まれている異物を除去するものである。
【0058】
ここで、水性塗料、溶剤系塗料のいずれも、その塗料中に顔料成分を含むのが通常であるが、除去フィルタ90には、そのような顔料が含まれる塗料中から、粗大異物や顔料凝集物を確実に除去することで、塗装ヘッド53が正常に作動し続けるのを保つことが求められる。また、溶剤系塗料においては、その塗料中にゲル状異物が含まれることが多く、さらに塗料中には所定以上の大きさの気泡が含まれる場合も多い。したがって、除去フィルタ90には、そのようなゲル状異物や所定以上の気泡を除去することも求められる。
【0059】
以上のような、粗大異物、顔料凝集物、ゲル状異物や気泡を除去するための除去フィルタ90は、以下のものから適宜選択することができる。具体的には、除去フィルタ90は、たとえば金網や樹脂性の網等の網目状体、多孔質体や、微細な貫通孔を穿設した金属板を用いることができる。網目状体としては、たとえば金属メッシュフィルターや金属繊維、たとえばSUSといった金属の細線をフェルト状にしたもの、圧縮焼結させた金属焼結フィルタ、エレクトロフォーミング金属フィルタ、電子線加工金属フィルタ、レーザービーム加工金属フィルタなどを用いることができる。
【0060】
なお、除去フィルタ90は、全体的に一定以上の粒径の異物を確実に除去するべく、高精度な穴径を有している。また、塗料中の異物をノズル54に到達させないようにするために、上記の穴径は、たとえばノズル54の開口が円形の場合、ノズル54の開口の直径よりも小さいことが好ましい。
【0061】
なお、上記の除去フィルタ90は、たとえばその周縁部が図示を省略する固定ハウジング等の固定手段によって固定されることで、塗料が除去フィルタ90を通過するのを阻害しない状態としている。
【0062】
(1-7.塗料供給機構、気泡除去部材および流量計の第1構成例について)
次に、第1構成例に係る塗料供給機構100Aおよびその塗料供給機構100Aが備える気泡除去部材および流量計について説明する。なお、以下の説明では、第1構成例に係る塗料供給機構100Aと第2構成例に係る塗料供給機構100Bとを特に区別する必要がない場合には、単に塗料供給機構100と称呼する場合があるものとする。
【0063】
図8は、第1構成例に係る塗料供給機構100A等の概略的な構成を示す図である。この塗料供給機構100Aは、気泡除去部材101と、外部供給路102と、塗料供給路103と、戻り流路104と、供給ポンプ105と、圧力センサS1~S8と、第1流量計FM1と、第2流量計FM2とを有している。
【0064】
図9は、気泡除去部材101の構成を示す図である。なお、気泡除去部材101は気泡除去手段に対応する。また、気泡除去部材101は、ロボットアームR1外の、たとえば基台21、脚部22や、その他ロボット本体20が設置されている設置面等の安定部位に設けられている。図9に示すように、気泡除去部材101は、タンク本体101aと、塗料導入管路101bと、気体排出管路101cと、エア排出弁101dと、塗料排出管路101eとを有している。タンク本体101aは、その内部に塗料を貯留可能な中空の容器状の部材である。
【0065】
また、塗料導入管路101bは、タンク本体101aの内部に塗料を導入するための管路である。なお、その塗料導入管路101bのタンク本体101a内の端部(出口)は、タンク本体101aの下方に存在していることが好ましい。また、塗料導入管路101bのタンク本体101a内の端部(出口)は、タンク本体101aの内壁に近接していることが好ましい。
【0066】
また、気体排出管路101cは、タンク本体101aの内部に溜まった気体(気泡の破裂等によるものを含む)を排出するための管路である。この気体排出管路101cのタンク本体101a内の端部は、気体の排出性を良好にするために、タンク本体101aの上方に位置していることが好ましい。なお、気体排出管路101cのタンク本体101a内の端部は、排出口に対応する。
【0067】
また、気体排出管路101cの所定部位には、エア排出弁101dが設けられている。このエア排出弁101dは、たとえば制御部130での制御によって開閉可能な制御弁を用いることができる。なお、この場合、制御部130は、弁制御手段に対応する。また、エア排出弁101dは、制御部130での制御によらずに、タンク本体101a内の圧力が所定以上に上昇した場合に、自動的に開放可能なリリーフ弁を用いることもできる。
【0068】
なお、このようなエア排出弁101dを設けない構成を採用しても良い。たとえば、気体排出管路101cを吸引ポンプ等に接続して、タンク本体101aを若干陰圧に保つようにして、タンク本体101a内から気体の排出を促進するようにしても良い。
【0069】
また、塗料排出管路101eは、タンク内部に蓄えられている塗料を、塗料供給路103側に排出する(流す)ための管路である。すなわち、気泡除去部材101は、塗料供給路103に塗料を供給可能に設けられている。なお、気体を塗料排出管路101eから外部供給路102に排出しないためには、塗料排出管路101eのタンク本体101a内の端部が、塗料の液面よりも下方に位置する必要があるので、塗料排出管路101eのタンク本体101a内の端部は、タンク本体101aの下方側に位置していることが好ましい。なお、塗料排出管路101eのタンク本体101a内の端部は、流出口に対応する。
【0070】
ところで、単に、塗装ヘッドユニット50に向けて塗料を供給するだけであれば、外部供給路102と塗料供給路103とを直接接続することが考えられる。このことを、現状の塗装工場に即して説明すると、現状の塗装工場においては、サーキュレーションタンクのような、大掛かりな塗料の貯留部位から、メイン配管へと流れ、さらには各塗装ラインの塗装ブースには、メイン配管から分岐された分岐配管(外部供給路102または外部供給路102が接続されている管路)を介して塗装ロボットに塗料を供給している。かかる供給経路では、塗料に比較的高い圧力を付与しているが、そのような高い圧力のまま、塗装ヘッドユニット50に塗料を供給すると、圧力が高いことによって、たとえば塗装ヘッドユニット50のノズル54から塗料が噴出してしまう。
【0071】
そこで、本実施の形態では、塗料供給機構100Aにタンク本体101aを備える気泡除去部材101を設けることで、この気泡除去部材101(タンク本体101a)は、上記の高い圧力が塗装ヘッドユニット50に直接作用するのを防止する、バッファとして機能する。すなわち、外部の塗料貯留部位から塗料を供給するための外部供給路102は、気泡除去部材101(タンク本体101a)に接続されており、当該外部供給路102は、直接的に塗料供給路103とは接続されていない。そして、この気泡除去部材101(タンク本体101a)よりも塗料供給路103の下流側では、外部供給路102を介して気泡除去部材101(タンク本体101a)に塗料が供給されるよりも、低圧で塗料が塗装ヘッドユニット50に向けて、供給ポンプ105によって送り出されている。
【0072】
また、上記のように、気泡除去部材101(タンク本体101a)を設ける構成を採用する場合、塗料に塵埃等が混入してしまうのを防ぐ必要がある。このため、塗料を一時的に貯留する部分としては、上部側が開放した容器ではなく、上部を含めて、全体が外部から閉塞されているタンク本体101aを用いている。
【0073】
しかしながら、タンク本体101aのような、全体が外部から閉塞されている構成では、タンク本体101a内での塗料の残量に応じて、タンク本体101a内の圧力が変動してしまい、一定にはならない。
【0074】
また、ロボットアームR1に塗装ヘッドユニット50を取り付けている構成では、通常は、ロボットアームR1の外部に、気泡除去部材101(タンク本体101a)を設置する構成を採用している。その場合、タンク本体101aからロボットアームR1側の塗装ヘッドユニット50までの距離が長くなるので、タンク本体101a側から適切な圧力を掛けて、塗装ヘッドユニット50側まで塗料を送ることが好ましい。
【0075】
その場合、タンク本体101aは、圧送タンクのような、内部の塗料を加圧可能なタンクであることが好ましいが、本実施の形態では、上記のように、外部から閉塞されたタンク本体101aを用いると共に、制御部130で駆動制御された供給ポンプ105(たとえばギヤポンプ等)によってタンク本体101aの内部の塗料を塗装ヘッドユニット50に向けて加圧して送り出している。それにより、タンク本体101a内での圧力変動を防ぎつつ、適切な圧力で塗装ヘッドユニット50に向けて塗料を送り出している。
【0076】
なお、ここでいう「適切な圧力」とは、メイン配管から分岐された分岐配管(外部供給路102または外部供給路102が接続されている管路)における塗料の供給圧力よりも、低い圧力であると共に、その「適切な圧力」を付与しても、ノズル54に塗料が供給され、かつ塗料が勝手にノズル54から噴出してしまうのを防止できる程度の圧力を指す。
【0077】
ところで、たとえば直径が50μm以下の直径の小さな泡(マイクロバブル)は、液体中から直ぐには浮上せず、液体中を漂う性質がある。そのようなマイクロバブルが、塗料中に混入している場合には、再び、塗料排出管路101eから塗料供給路103へと気泡が流れてしまう虞がある。
【0078】
そこで、たとえば図9に示すように、タンク本体101aの内部には、仕切りフィルタ101fを設置するようにしても良い。この仕切りフィルタ101fは、タンク本体101a内において、塗料導入管路101b側と、塗料排出管路101e側とを完全に区分するように配置されている。このため、塗料導入管路101bからタンク本体101aに流れ込んだ塗料は、仕切りフィルタ101fを通過しない限り、塗料排出管路101eから塗料供給路103へと流れない状態となる。
【0079】
ここで、仕切りフィルタ101fは、上記のようなマイクロバブルよりも細かな孔径を有するフィルタとすることが好ましい。この場合、マイクロバブルの多くが、仕切りフィルタ101fを通過することができず、仕切りフィルタ101fで捕捉されるので、この仕切りフィルタ101fを透過する塗料中に入り込んでいる塗料中の気泡の量を低減することができる。なお、仕切りフィルタ101fは、上記の除去フィルタ90と同様に、たとえば金網や樹脂性の網等の網目状体、多孔質体や、微細な貫通孔を穿設した金属板を用いることができる。網目状体としては、たとえば金属メッシュフィルターや金属繊維、たとえばSUSといった金属の細線をフェルト状にしたもの、圧縮焼結させた金属焼結フィルタ、エレクトロフォーミング金属フィルタ、電子線加工金属フィルタ、レーザービーム加工金属フィルタなどを用いることができる。
【0080】
また、マイクロバブルのような細かな気泡は、通常は負の電荷を帯びている。このため、仕切りフィルタ101fに正の電荷を帯びるように帯電させて気泡を捕捉させたり、それとは逆に負の電荷を帯電させて気泡が仕切りフィルタ101fを通過するのを妨げるようにしても良い。また、別途の帯電手段を正の電荷に帯電させて、気泡を捕捉するようにしても良い。
【0081】
また、図10に示すように、気泡除去部材101に、スターラー200を配置して、塗料を回転させるようにしても良い。かかるスターラー200は、撹拌子201と、撹拌子駆動装置202を備える。また、撹拌子駆動装置202は、筐体202aと、その筐体202aに収納されているモータ202bおよび駆動マグネット202cを有する。
【0082】
これらのうち、撹拌子201は、タンク本体101aの内部に配置される長尺状のマグネット部材である。図10に示す構成では、撹拌子201の一端側の厚み方向と他端側の厚み方向において、異なる磁極に着磁されている。しかしながら、撹拌子201の一端側と他端側とで異なる磁極に着磁される構成としても良い。筐体202aは、モータ202bおよび駆動マグネット202cを収納する部材である。モータ202bは駆動マグネット202cを回転させる駆動力を与える。
【0083】
また、駆動マグネット202cはモータ202bによって回転させられる長尺状のマグネット部材であり、その一端側の厚み方向と他端側の厚み方向において、異なる磁極に着磁されている。ただし、上記の撹拌子201と同様に、駆動マグネット202cの一端側と他端側とで異なる磁極に着磁される構成としても良い。すなわち、駆動マグネット202cの着磁部分は、撹拌子201の着磁部分と磁着するように設けられている。
【0084】
このような構成により、駆動マグネット202cと撹拌子201の着磁部分が、磁力によって吸引された状態で、モータ202bが駆動して駆動マグネット202cが回転させられると、タンク本体101aの内部の撹拌子201も回転する。それにより、タンク本体101a内の塗料が回転させられるが、その際に、密度の高い塗料は遠心力の作用によって外側に移動すると共に、密度の低い気泡は回転している塗料の中央側に集められる。そのため、タンク本体101aで回転している塗料の外側の部分を、塗料排出管路101eから塗料供給路103側に排出することで、塗料中から気泡を除去することが可能となる。
【0085】
なお、上記のようにタンク本体101a内で塗料を回転させることにより、塗料内のせん断速度が上昇するので、塗料の粘度を低下させることも可能となっている。また、塗料に含まれる顔料の沈降も防止することが可能となっている。
【0086】
また、上記の気泡除去部材101(タンク本体101a)には、外部供給路102が接続されている。外部供給路102は、サーキュレーションタンクのような塗料の貯留部位側から供給される塗料を、タンク本体101aの内部に供給するための管路である。
【0087】
また、塗料供給路103は、気泡除去部材101から塗装ヘッド53に向けて塗料を供給するための流路であり、上述した供給側大流路57と接続されている。
【0088】
また、戻り流路104は、塗装ヘッド53の排出側大流路61と接続されていて、塗装ヘッド53で吐出されなかった塗料を、気泡除去部材101へと戻すための流路である。
【0089】
また、供給ポンプ105は塗料供給路103の中途部分に接続されていて、この塗料供給路103を流れる塗料に正圧を加えるための手段である。なお、供給ポンプ105としては、回転数を制御することで、塗料の供給量を制御することが可能なギヤポンプを用いることが好ましい。しかしながら、供給ポンプ105は、ギヤポンプ以外のポンプを用いるようにしても良い。
【0090】
ここで、塗料供給路103において供給ポンプ105の上流側には圧力センサS1が配置されている。加えて、塗料供給路103において供給ポンプ105よりも下流側であって除去フィルタ90よりも上流側には圧力センサS2が配置されている。圧力センサS1は供給ポンプ105への塗料の供給圧力を測定し、その測定結果を制御部130へ送信する。また、圧力センサS2は供給ポンプ105から吐出される塗料の圧力を測定し、その測定結果を制御部130へ送信する。
【0091】
このように、圧力センサS1,S2によって、供給ポンプ105の上流側と下流側で塗料の圧力を測定することで、供給ポンプ105の作動による除去フィルタ90側への塗料の正圧の印加を精度良く調整することが可能となっている。したがって、規定以上の圧力が除去フィルタ90に印加されることで、除去フィルタ90が損傷したり、異物が除去フィルタ90を通過してしまうのを防止可能となっている。
【0092】
また、脱気モジュール80には、吸引管路109を介して真空ポンプ110が接続されている。真空ポンプ110は、上述したように、脱気モジュール80の筐体81の内部(中空糸膜83の内部)を減圧するための装置である。この減圧により、筐体81の内部に供給されている塗料に溶存している溶存気体を除去(脱気)される。なお、吸引管路109は、真空ポンプ110以外に、上述した筐体81の吸引口81bに接続されている。
【0093】
また、圧力センサS3は、真空ポンプ110と脱気モジュール80の間の吸引管路109の圧力を測定している。
【0094】
なお、塗料供給路103において脱気モジュール80よりも下流側であって、ペイントレギュレータ112よりも上流側には、第1流量計FM1が配置されている。第1流量計FM1は、ペイントレギュレータ112へ送り込まれる塗料の流量を測定し、その測定結果を制御部130へ送信する。この第1流量計FM1は、たとえば超音波方式、光学式、電磁式、熱式等のような、可動部分が存在しない非接触型の流量計であるので、塗料供給路103の外部に第1流量計FM1が設置されている。なお、第1流量計FM1は、可動部分の存在する流量計を用いるようにしても良い。
【0095】
ここで、第1流量計FM1が光学式である場合には、塗料供給路103のうち少なくとも第1流量計FM1で流量を測定する部分は、透明に設けられる。しかしながら、第1流量計FM1が光学式以外の超音波方式である場合には、塗料供給路103のうち少なくとも第1流量計FM1で流量を測定する部分は、透明に設ける必要がない。
【0096】
また、第1流量計FM1よりも下流側には、圧力センサS4が設けられていて、塗料供給路103のこの部分の圧力を測定していて、この圧力の測定結果に基づいて、後述する制御部130は供給ポンプ105の作動をフィードバック制御している。すなわち、除去フィルタ90および脱気モジュール80の詰まり具合に応じて、供給ポンプ105が作動しても、除去フィルタ90および脱気モジュール80よりも下流側において、圧力降下が変動する。このため、圧力センサS2と圧力センサS4との圧力差に基づいて、制御部130は、除去フィルタ90と脱気モジュール80に、どの程度の圧力が加わっているのかを判定する。それにより、供給ポンプ105が適切な圧力を除去フィルタ90および脱気モジュール80に及ぼすように制御することができる。また、除去フィルタ90および脱気モジュール80の詰まり具合によっては、制御部130は、これらの交換時期をアナウンスする。
【0097】
なお、塗料供給機構100Aには、上記の圧力センサS4が設けられることが好ましいが、この圧力センサS4を省略する構成を採用しても良い。また、圧力センサS4は、塗装ヘッドユニット50側に設けても良いが、第2回動アーム26側(ロボットアームR1側)に設けても良い。また、圧力センサS4は、第1流量計FM1よりも上流側に設けるようにしても良い。
【0098】
また、塗料供給路103において脱気モジュール80よりも下流側には、ペイントレギュレータ112が配置されている。ペイントレギュレータ112は、供給ポンプ105での脈動を緩和して、一定の圧力で塗料を供給するものである。このペイントレギュレータ112は、制御エア圧や電気信号に応じて開度を調整可能な開閉弁を有していて、この開閉弁の弁開度を調整することにより、塗料供給路103を流れる塗料の圧力、吐出量を制御する。なお、ペイントレギュレータ112としては、たとえばエア作動式の開閉弁を備えるペイントレギュレータを用いることができるが、電気式または電磁式の開閉弁を備えるものを用いても良い。なお、開閉弁としては、たとえば比例制御弁を用いることができるが、サーボ弁を用いるようにしても良い。
【0099】
なお、圧力センサS5はペイントレギュレータ112の下流側かつバイパス流路115よりも上流側の塗料供給路103の圧力を測定している。
【0100】
また、塗料供給路103は、ペイントレギュレータ112よりも下流側で三方弁113に接続されている。この三方弁113は、塗料供給路103の中途部に接続されると共に、バイパス流路115にも接続されている。したがって、塗装時には塗料供給路103の三方弁113よりも上流側と下流側とが開状態となって、塗装ヘッド53へ塗料が供給される。一方、塗装を行わない場合には、塗料供給路103からバイパス流路115へと塗料が流れるが、塗料供給路103の下流側(塗装ヘッド53側)には塗料が供給されないように切り替えられる。
【0101】
また、バイパス流路115は、塗料供給路103と戻り流路104とを接続する流路である。すなわち、バイパス流路115は、塗装ヘッド53と並列状態で設けられていて、塗装ヘッド53から塗料が不吐出となる場合には、上記の三方弁113の作動を切り替えることで、このバイパス流路115に塗料が流される。
【0102】
このバイパス流路115の中途部分には、開閉弁116が設けられている。この開閉弁116を開くように作動させることで、塗料はバイパス流路115を流れることが可能となっている。
【0103】
さらに、開閉弁116よりもバイパス流路115の下流側には、三方弁117が接続されていて、さらにこの三方弁117には戻り流路104の上流側(すなわち戻り流路104の塗装ヘッド53側)と下流側(すなわち戻り流路104の後述する吸引ポンプ側)とが接続されている。このため、塗装を行う場合には、戻り流路104の三方弁117よりも上流側と下流側とが開状態となり、塗装ヘッド53から吐出されなかった塗料が戻り流路104の下流側へと流れる。一方、塗装を行わない場合には、三方弁117は、バイパス流路115を流れる塗料が、戻り流路104の下流側(吸引ポンプ側)に塗料が流れるように切り替えられる。
【0104】
また、戻り流路104において上述した三方弁117よりも下流側には、ペイントレギュレータ119が配置されている。ペイントレギュレータ119は、吸引ポンプ120での脈動を緩和して、一定の圧力で塗料を吸引するものである。それにより、吸引ポンプ120での脈動によって負圧が大きくなった際にノズル54からエアが引き込まれ、塗料中にエアが混入するのを防止することが可能となっている。なお、ペイントレギュレータ119は、上述したペイントレギュレータ112と同様に、制御エア圧や電気信号に応じて開度を調整可能な開閉弁を有していて、この開閉弁の弁開度を調整することにより、戻り流路104を流れる塗料に及ぼす負圧を制御する。なお、ペイントレギュレータ119としては、たとえばエア作動式の開閉弁を備えるペイントレギュレータを用いることができるが、電気式または電磁式の開閉弁を備えるものを用いても良い。なお、開閉弁としては、たとえば比例制御弁を用いることができるが、サーボ弁を用いるようにしても良い。
【0105】
なお、圧力センサS6はペイントレギュレータ119の上流側かつ三方弁117よりも下流側の戻り流路104の圧力を測定している。
【0106】
また、戻り流路104においてペイントレギュレータ119よりも下流側には、第2流量計FM2が配置されている。第2流量計FM2は、吸引ポンプ120へ送り込まれる塗料の流量を測定し、その測定結果を制御部130へ送信する。この第2流量計FM2も、上記の第1流量計FM1と同様に、たとえば超音波方式、光学式、電磁式、熱式等のような、可動部分が存在しない非接触型の流量計であるので、その詳細についての説明は省略する。なお、第2流量計FM2も、可動部分の存在する流量計を用いるようにしても良い。
【0107】
また、戻り流路104において上記の第2流量計FM2よりも下流側には、吸引ポンプ120が接続されていて、この戻り流路104を流れる塗料に負圧を及ぼしている。なお、吸引ポンプ120としては、上記の供給ポンプ105と同様に、回転数を制御することで、塗料の供給量を制御することが可能なギヤポンプを用いることが好ましい。しかしながら、吸引ポンプ120は、ギヤポンプ以外のポンプを用いるようにしても良い。
【0108】
また、戻り流路104において吸引ポンプ120の上流側には圧力センサS7が配置されている。加えて、戻り流路104において吸引ポンプ120よりも下流側であって後述する切替弁121よりも上流側には圧力センサS8が配置されている。圧力センサS7は吸引ポンプ120へ送り込まれる塗料の圧力(負圧)を測定し、その測定結果を制御部130へ送信する。また、圧力センサS8は吸引ポンプ120から吐出される塗料の圧力を測定し、その測定結果を制御部130へ送信する。
【0109】
また、戻り流路104において吸引ポンプ120よりも下流側には、切替弁121が配置されている。この切替弁121も三方弁であり、戻り流路104の上流側および下流側以外に、排出路122にも接続されている。この切替弁121は、通常の状態では、戻り流路104の上流側と下流側とで、塗料が流れる状態となっている。しかしながら、たとえば洗浄用の液体が塗料供給路103から塗装ヘッド53またはバイパス流路115を介して戻り流路104まで流れた場合に、切替弁121の作動が切り替えられて、上記の洗浄用の液体(廃液)が排出路122を介して排出される。
【0110】
なお、戻り流路104は、切替弁121よりも下流側で、上述した気泡除去部材101に接続されている。
【0111】
また、塗装ロボット10には、制御部130が設けられている。制御部130は、塗料供給機構100Aの各種の駆動部位の作動を司る部分である。また、制御部130には、塗料供給機構100Aの各種のセンサからの検出信号が入力され、そのセンサに対応した駆動部位の作動が制御される。具体的には、図8に示すように、制御部130には、圧力センサS1~S8で測定された圧力の測定結果が送信される。また、制御部130は、三方弁113,117、供給ポンプ105、真空ポンプ110、ペイントレギュレータ112,119、開閉弁116、吸引ポンプ120および切替弁121の作動を制御している。なお、制御部130は、ロボットアームR1の各駆動部位の作動を司るようにしても良いが、別途の制御手段によって、ロボットアームR1の各駆動部位の作動を司るようにしても良い。
【0112】
なお、制御部130は、CPU、メモリ(ROM、RAM、不揮発メモリ等)、その他の要素から構成されている。また、メモリには、所望の制御を実行するためのプログラムおよびデータが記憶されている。この制御部130は、弁制御手段、ポンプ制御手段に対応すると共に、圧力センサS1,S2の測定結果や、第1流量計FM1、第2流量計FM2の測定結果に基づいて、塗料に気泡が混入しているか否かの判定を行う判定手段に対応する。
【0113】
また、制御部130には、通知手段140が接続されている。通知手段140は、塗料に気泡が混入していると判定された場合に、制御部130から気泡混入していることに対応する信号を受信した際に、使用者に気泡が混入していることを通知するための手段であり、たとえばブザーや通知用のディスプレイ等が該当する。
【0114】
(1-8.塗料供給機構、気泡除去部材および流量計の第2構成例について)
以下、第1構成例に係る塗料供給機構100Aとは異なる、第2構成例に係る塗料供給機構100Bについて説明する。第2構成例に係る塗料供給機構100Bの構成の大部分は、上述した第1構成例に係る塗料供給機構100Aの構成と共通しているが、一部が異なっている。そのため、以下の第2構成例に係る塗料供給機構100Bの構成の説明では、主として、第1構成例に係る塗料供給機構100Aとは異なる構成に関して、説明する。
【0115】
図11は、第2構成例に係る塗料供給機構100B等の概略的な構成を示す図である。この第2構成例に係る塗料供給機構100Bは、上述した気泡除去部材101と、外部供給路102と、塗料供給路103と、戻り流路104と、供給ポンプ105と、圧力センサS1~S8と、第1流量計FM1と、第2流量計FM2とを備えると共に、さらに、第2気泡除去部材106と、接続路107と、三方弁108とを備えている。なお、以下では、気泡除去部材101を、第1気泡除去部材101と称呼することがある。
【0116】
上記の構成のうち、第1気泡除去部材101は、上述した第1構成例における気泡除去部材101と同様に、外部供給路102に接続されていて、外部の塗料貯留部位からの塗料がタンク本体101aの内部に入り込む。
【0117】
ここで、第2構成例に係る気泡除去部材101は、上述した第1構成例における気泡除去部材101とは異なり、戻り流路104には接続されておらず、塗料供給路103にも接続されていない。ただし、第2構成例に係る第1気泡除去部材101においては、タンク本体101aからの塗料は、接続路107および三方弁108を介して、塗料供給路103に供給される構成となっている。接続路107は、第1気泡除去部材101と三方弁108とを結ぶ塗料の流路である。そのため、塗料は、第1気泡除去部材101から接続路107および三方弁108を介して塗料供給路103に供給されるが、戻り流路104からは吐出されなかった塗料は、第1気泡除去部材101のタンク本体101aには入り込まずに、三方弁108を介して塗料供給路103へと流れ込む。
【0118】
また、三方弁108は、塗料供給路103と、戻り流路104と、接続路107とに接続されている弁部材である。この三方弁108は、塗料の消費量が大きな塗装時には、接続路107を介して第1気泡除去部材101から塗料供給路103側へ塗料を流すように作動を切り替えることが可能となっている。一方、塗装ヘッド53から塗料が吐出されない場合には、塗装ヘッド53で吐出されずに戻り流路104に戻ってきた塗料を、塗料供給路103に流すように、その作動を切り替えることが可能となっている。なお、三方弁108の作動は、制御部130によって制御される。
【0119】
また、第2構成例に係る塗料供給機構100Bは、第2気泡除去部材106を備えている。具体的には、第2気泡除去部材106は、塗料供給路103において第1気泡除去部材101よりも下流側に設けられている。第2気泡除去部材106は、上述した第1気泡除去部材101と同様に、その内部で気泡を除去する構成となっている。なお、第2気泡除去部材106も、上記の第1気泡除去部材101と同様に気泡除去手段に対応する。この第2気泡除去部材106も、上記の第1気泡除去部材101と同様に、ロボットアームR1外の、たとえば基台21、脚部22や、その他ロボット本体20が設置されている設置面等の安定部位に設けられている。
【0120】
かかる第2気泡除去部材106は、上述した第1気泡除去部材101と同様の構成を採用しても良いが、第1気泡除去部材101とは別途の構成を採用しても良い。たとえば、第2気泡除去部材106は、第1気泡除去部材101と同様の図9図10に示す構成を採用しても良いが、図9図10に示す構成のうち第1気泡除去部材101とは別の構成を採用しても良く、図9図10以外の構成を採用しても良い。
【0121】
なお、図9および図10においては、第2気泡除去部材106のうちタンク本体101aに相当する部分をタンク本体106aとし、塗料導入管路101bに相当する部分を塗料導入管路106bとし、気体排出管路101cに相当する部分を気体排出管路106cとし、エア排出弁101dに相当する部分をエア排出弁106dとし、塗料排出管路101eに相当する部分を塗料排出管路106eとし、仕切りフィルタ101fに相当する部分を仕切りフィルタ106fとしている。
【0122】
なお、第2気泡除去部材106は、上記の第1気泡除去部材101と同様に、エア排出弁106dを設けない構成を採用しても良い。たとえば、気体排出管路106cを吸引ポンプ等に接続して、タンク本体106aを若干陰圧に保つようにして、タンク本体106a内から気体の排出を促進するようにしても良い。
【0123】
なお、第1気泡除去部材101に加えて、第2気泡除去部材106を設ける構成を採用する場合、第2気泡除去部材106は、次の機能も備えることになる。すなわち、第1気泡除去部材101から後述する接続路107を介して供給された塗料は、後述する三方弁108を過ぎた後には、再び接続路107側に戻ることができない。そのため、仮に供給ポンプ105の駆動によって、塗装ヘッド53からの塗料の吐出量よりも多くの塗料が供給されると、塗料の循環停止等の不良の原因となってしまう虞がある。そこで、塗料供給路103の中途部に、塗料を蓄えるバッファとしても機能するように、第2気泡除去部材106を配置することで、第2気泡除去部材106の内部で塗料の貯留量が変動しても、塗料供給路103から塗装ヘッド53を経て戻り流路104を経由する循環経路内での塗料の循環に支障を生じさせることがない状態で、塗装ヘッド53から塗料を吐出させることができる。
【0124】
なお、その他の構成は、上述した第1構成例に係る塗料供給機構100Aと同様となっている。
【0125】
[2.作用について]
次に、上述のような構成を有する塗装ロボット10の作用について、以下に説明する。なお、以下の説明では、第1構成例に係る塗料供給機構100Aに基づいて説明する。
(2-1.車両へ塗装する場合の塗料の(供給)流れについて)
不図示の車両への塗装を実行する場合、ロボットアームR1の各部位を作動させると共に、塗装ヘッド53も作動させる。このとき、制御部130は、圧力センサS1,S2の測定結果に基づいて供給ポンプ105の作動を制御する。それにより、気泡除去部材101に蓄えられている塗料は、塗料供給路103を介して除去フィルタ90へ向かって流れる。
【0126】
また、上記の除去フィルタ90を通過した塗料は、脱気モジュール80へと供給される。ここで、制御部130の制御によって真空ポンプ110が作動し、中空糸膜83の内部を減圧している。このため、筐体81の内部において、塗料が中空糸膜83の間を通過する際に、塗料から溶存気体が除去(分離)される。そして、溶存気体の脱気がなされた塗料は、塗料供給路103の下流側(ペイントレギュレータ112側)へと供給される。なお、制御部130は、圧力センサS3での塗料の圧力の測定結果に基づいて、真空ポンプ110の作動を制御している。
【0127】
また、ペイントレギュレータ112では、供給ポンプ105による塗料供給の脈動を緩和しつつ、塗装ヘッド53へ供給される塗料の供給圧力や供給量が適切なものへと調整される。なお、制御部130は、圧力センサS5での塗料の圧力の測定結果に基づいて、ペイントレギュレータ112の作動を制御している。
【0128】
ここで、塗料を塗装ヘッド53に供給する場合には、制御部130は、塗料を塗装ヘッド53に供給するように三方弁113を切り替えて、塗装ヘッド53に塗料が供給されることで、ノズル54から塗料が吐出される。なお、ノズル54から塗料を吐出する際にも、圧力センサS5で塗料供給路103を流れる塗料の圧力を測定することで、ノズル54からの塗料の吐出が適切に行われているのかを検出することができる。
【0129】
なお、上記のようにノズル54から塗料を吐出する状態のときには、開閉弁116は閉じた状態となっているが、三方弁117は吸引ポンプ120側に塗料を流すことが可能となっている。
【0130】
一方、塗装ヘッド53側に塗料は供給するものの、ノズル54から塗料が吐出されない場合、塗料は塗装ヘッド53内の供給側大流路57、列方向供給流路58、列方向排出流路60および排出側大流路61といった塗装ヘッド53内の循環経路C1(図8参照)を経た後に、戻り流路104へと流れる。このとき、制御部130は吸引ポンプ120を作動させると共に、ペイントレギュレータ119の作動を制御する。具体的には、圧力センサS7,S8での圧力の測定結果に基づいて、制御部130は、適切な負圧が戻り流路104に及ぼされるように、吸引ポンプ120の作動を制御する。
【0131】
このとき、制御部130は、ペイントレギュレータ119の作動を制御する。ペイントレギュレータ119では、吸引ポンプ120による塗料供給の脈動を緩和しつつ、塗装ヘッド53へ及ぼされる負圧が適切なものへと調整される。このとき、制御部130は、圧力センサS6での塗料の圧力の測定結果に基づいて、ペイントレギュレータ119の作動を制御している。
【0132】
なお、塗料は、戻り流路104から気泡除去部材101へと流れ込み、この気泡除去部材101から再び塗料供給路103へと塗料が供給される。
【0133】
(2-2.車両へ塗装が実行されない場合の塗料の供給について)
次に、塗装ヘッド53側に塗料が供給されずに、車両への塗装が実行されない場合について、塗装ロボット10の作用を説明する。車両への塗装が実行されない待機状態の場合には、塗料供給路103内部の塗料が流れない状態となると、その塗料中の所定の成分が沈降したり、粘度が増加する等してしまう。このため、待機状態においても、塗料供給路103内部の塗料は流し続ける必要がある。したがって、制御部130は、塗装時と同様に、供給ポンプ105およびペイントレギュレータ112を作動させ、さらに真空ポンプ110を作動させて塗料の脱気を行いながら、三方弁113側に塗料を供給する。
【0134】
しかしながら、ノズル54から塗料を吐出しないにも係らず、図8に示すような塗装ヘッド53側の循環経路C1を経て、塗料が吸引ポンプ120によって吸引されると、ノズル54からエアが引き込まれてしまう虞がある。
【0135】
そこで、本実施の形態では、上記の待機状態の場合、制御部130は、バイパス流路115に塗料が流れるように三方弁113を切り替えて、塗装ヘッド53には塗料が供給されない状態とする。これと共に、制御部130は開閉弁116を開状態とする。さらに、制御部130は、バイパス流路115から戻り流路104の吸引ポンプ120に塗料が流れるように三方弁117を切り替える。
【0136】
上記の状態に加えて、制御部130は、上述した塗装時のように吸引ポンプ120を作動させると共に、ペイントレギュレータ119の作動を制御する。すると、塗料は、バイパス流路115から三方弁117を経由して、戻り流路104を流れ、気泡除去部材101に再び蓄えられる。また、制御部130が上述した供給ポンプ105やペイントレギュレータ112を作動させることによって、塗料は再び三方弁113に向かって塗料供給路103を流れる。
【0137】
このため、塗料は、塗料供給路103、バイパス流路115および戻り流路104を循環する状態となり、除去フィルタ90および脱気モジュール80をその循環の度に通過する。そのため、塗料から異物が一層除去されると共に、塗料の脱気が一層促進される。
【0138】
(2-3.塗料に気泡が混入しているか否かの判定について)
次に、制御部130において、制御部130は、圧力センサS1,S2の測定結果や、第1流量計FM1、第2流量計FM2の測定結果に基づいて、塗料に気泡が混入しているか否かの判定を行う場合について説明する。
【0139】
まず、圧力センサS2の圧力の測定結果を用いて、気泡が混入したと判定する場合について説明する。制御部130が所定の回転数で供給ポンプ105を制御駆動した場合においては、気泡がほとんど混入していない正常な状態では、圧力センサS2での圧力の測定値は、上記の所定の回転数に対応する圧力閾値を超える。しかしながら、仮に塗料供給路103のいずれかの部位に気泡が混入していると、圧力センサS2において圧力閾値を超えるまで、圧力が上昇しない。したがって、圧力センサS2において圧力閾値を超えずに下回る場合には、制御部130は、気泡が混入していると判定する。
【0140】
なお、圧力センサS2の圧力の測定結果を用いて、気泡が混入したと判定するのに代えて、圧力センサS1と圧力センサS2の両方の圧力の測定結果を用いて、気泡が混入したと判定するようにしても良い。
【0141】
次に、第1流量計FM1を用いて、気泡の混入を判定する場合について説明する。この場合、塗料供給路103を流れる塗料に気泡が存在すると、流量の測定値が異常(エラー)を示す。たとえば、第1流量計FM1が超音波方式の場合には、塗料供給路103を横切るように配置された2つの超音波センサからそれぞれ超音波信号を送受信し、2つの超音波センサにおける伝播時間の差を測定するが、気泡が存在すると上記の伝播時間が正常値とは異なる異常値となる。また、第1流量計FM1が光学式の場合、たとえばレーザ光を投光および反射光を受光する際のドップラー効果を用いて塗料の流速を測定するが、この場合も、気泡が存在すると、流速の測定結果が異常値となる。このような第1流量計FM1からの異常に関する情報を制御部130が受信することで、制御部130が気泡が混入していると判定する。
【0142】
また、圧力センサS7の圧力の測定結果を用いて、気泡が混入したと判定する場合も、上記の圧力センサS2を用いての測定と同様である。この場合も、制御部130が所定の回転数で吸引ポンプ120を制御駆動した場合においては、気泡がほとんど混入していない正常な状態では、圧力センサS7での圧力の測定値は、上記の所定の回転数に対応する圧力閾値を下回る。しかしながら、仮に戻り流路104のいずれかの部位に気泡が混入していると、圧力センサS7において圧力閾値を超えて圧力が上昇してしまう。したがって、圧力センサS7において圧力閾値を上回る場合には、制御部130は、気泡が混入していると判定する。
【0143】
なお、圧力センサS7の圧力の測定結果を用いて、気泡が混入したと判定するのに代えて、圧力センサS7と圧力センサS8の両方の圧力の測定結果を用いて、気泡が混入したと判定するようにしても良い。
【0144】
次に、第2流量計FM2を用いて、気泡の混入を判定する場合について説明する。この場合も、上記の第1流量計FM1と同様に、戻り流路104を流れる塗料に気泡が存在すると、流量の測定値が異常(エラー)を示す。なお、流量の測定値が異常(エラー)となる点については、上記の第1流量計FM1と同様であるので、その詳細についての説明は省略する。このような第2流量計FM2からの異常に関する情報を制御部130が受信することで、制御部130が気泡が混入していると判定する。
【0145】
なお、上記のように、塗料に気泡が混入していると判定した場合、車両の塗装を正常に行えない可能性が高いので、車両への塗装を中断するようにしても良い。この塗装中断においては、塗料から気泡を取り除くために、制御部130は、脱泡処理モードを実行するようにしても良い。この脱泡処理モードでは、制御部130は、バイパス流路115に塗料が流れるように三方弁113を切り替えて、塗装ヘッド53には塗料が供給されない状態とする。これと共に、制御部130は開閉弁116を開状態とする。さらに、制御部130は、バイパス流路115から戻り流路104の吸引ポンプ120に塗料が流れるように三方弁117を切り替える。
【0146】
その状態で、塗料が通常の塗装を行う状態よりも多く流れるように(高速で流れるように)、供給ポンプ105および吸引ポンプ120を作動させる。すると、気泡除去部材101で気泡が塗料から除去されて、当該気泡の破裂等による気体が気体排出管路101cから排出される。以上のようにして、制御部130が塗料に気泡が混入していると判定した場合に、塗料から気泡を取り除くための脱泡処理モードが実行される。
【0147】
[3.効果について]
以上のように、ロボットアームR1を備え、当該ロボットアームR1の作動によって塗装対象物に対して塗装を行う塗装ロボット10は、ロボットアームR1の先端側に取り付けられ、塗料を吐出する複数のノズル54を備えると共に、圧電基板62の駆動によってノズル54から塗料を吐出させる塗装ヘッド53と、塗装ヘッド53の塗料供給側に接続される塗料供給路103と、塗装ヘッド53の塗料排出側に接続され、ノズル54から吐出されなかった塗料を回収する戻り流路104と、ロボットアームR1に設けられ、塗装ヘッドと並列状態で塗料を流通させるバイパス流路115と、バイパス流路115に設けられ、当該バイパス流路115を流通する塗料の流れの可否を切り替える開閉弁116と、開閉弁116の開閉を制御する制御部130(弁制御手段)と、ロボットアームR1外の姿勢が変化しない安定部位に設けられ、塗料供給路103または戻り流路104の中途部に塗料を供給可能に設けられると共に、塗料に含まれる気泡を除去する第1気泡除去部材101(気泡除去部材101)および/または第2気泡除去部材106(気泡除去手段)とを備えている。
【0148】
このように構成する場合には、塗料供給機構100内を塗料が流れると、第1気泡除去部材101(気泡除去部材101)および/または第2気泡除去部材106(気泡除去手段)によって、塗料に含まれる気泡を除去することが可能となる。また、塗装を実行していない塗装の休止状態では、塗料供給路103、バイパス流路115および戻り流路104を塗料が循環する。そのため、塗装の休止状態の際に、塗料を循環させることで、第1気泡除去部材101(気泡除去部材101)および/または第2気泡除去部材106(気泡除去手段)を用いて、塗料中から気泡を効果的に除去することが可能となる。
【0149】
また、ロボットアームR1の先端側に塗装ヘッド53が取り付けられている場合、塗装ヘッド53の姿勢変化によって、塗装ヘッド53内で気泡が発生する虞があるが、そのような場合でも、ロボットアームR1外の安定部位に設けられている第1気泡除去部材101(気泡除去部材101)および/または第2気泡除去部材106(気泡除去手段)によって、気泡を効果的に除去することが可能となる。
【0150】
また、本実施の形態では、第1気泡除去部材101(気泡除去部材101)および/または第2気泡除去部材106(気泡除去手段)は、塗料を貯留するタンク本体101a,106aを備えると共に、タンク本体101a,106aの塗料貯留部位よりも上方側には、当該タンク本体101a,106a内の気体を排出する気体排出管路101c,106cのタンク本体101a,106a内の端部(排出口)が設けられていて、タンク本体101a,106aの塗料貯留部位における下方側には、塗料を下流側に流通させる塗料排出管路101e,106eのタンク本体101a,106a内の端部(流出口)が設けられている。
【0151】
このように構成する場合には、タンク本体101a,106aの内部においては、液面よりも上部に気泡が存在するが、塗料の流入に伴って塗料貯留部位よりも上方側に気泡が集まり、時間経過に伴う気泡の消失等によって気体排出管路101c,106cのタンク本体101a,106a内の端部(排出口)から気体が排出される。このように、タンク本体101a,106a内に塗料を流入させることで、塗料から気泡を除去することができる。また、塗料貯留部位の下方側に塗料排出管路101e,106eのタンク本体101a,106a内の端部(流出口)が存在することにより、塗装ヘッド53に向かう下流側に、気泡が入り込むのを防止することができる。
【0152】
また、本実施の形態では、気体排出管路101c,106cのタンク本体101a,106a内の端部(排出口)には、開閉可能なエア排出弁101d,106dを設ける構成を採用することができる。さらに、エア排出弁101d、106dは、一定時間の経過またはタンク本体101a,106a内の気体の圧力が一定量となった際に、制御部130(弁制御手段)の制御によって開放される制御弁とすることができる。
【0153】
このように構成する場合には、タンク本体101a,106aの気体の圧力が上昇した場合のみ、エア排出弁101d,101dが開くように、制御部130(弁制御手段)によってエア排出弁101d,106dの作動を制御することで、例えば気泡の発生量が少ない場合にエア排出弁101d,106dを閉じておくことで、塗料が外部の雰囲気にさらされて塗料から溶剤等の成分が蒸発するのを防止することができる。また、エア排出弁101d,106dは、一定時間の経過またはタンク本体101a,106a内の圧力が一定量となった際に、開放されるように、制御部130(弁制御手段)によって制御駆動されるので、タンク本体101a,106aの内部の圧力が高まり過ぎるのを防止することができる。
【0154】
また、本実施の形態では、気体排出管路101c,106cのタンク本体101a,106a内の端部(排出口)には、タンク本体101a,106a内の気泡の流入による内部圧力が所定圧力まで上昇した際に、自動的に開放するリリーフ弁とすることができる。
【0155】
このように構成する場合には、エア排出弁101d,106dがリリーフ弁であるので、タンク本体101a,106a内の気体が一定の圧力に到達した場合には、そのエア排出弁101d,106dを自動的に開放して、気体を外部に排出することができる。それにより、タンク本体101a,106a内の圧力を一定に保つことが可能となる。
【0156】
また、本実施の形態では、タンク本体101a,106aの内部には、塗料導入管路101b,106bを介して塗料が供給され、タンク本体101a,106aの内部の塗料は、塗料排出管路101e,106eを介して当該タンク本体101a,106aの内部から排出される。また、タンク本体101a,106aの内部には、塗料が通過する際に気泡を除去する仕切りフィルタ101f,106fが設置される構成とすることができ、かかる構成の場合、仕切りフィルタ101f,106fは、タンク本体101a,106aの内部を塗料導入管路101b,106b側と塗料排出管路101e,106e側とに区分することで、タンク本体101a,106aの内部の塗料導入管路101b,106b側の塗料は、仕切りフィルタ101f,106fを通過して塗料排出管路101e,106e側へ流れ込む。
【0157】
このように構成することで、塗料導入管路101b,106bを介してタンク本体101a,106aの内部に供給された塗料は、仕切りフィルタ101f,106fを確実に通過する。そのため、仕切りフィルタ101f,106fの存在によって、塗料中の気泡を除去することが可能となる。
【0158】
また、本実施の形態では、タンク本体101a,106aには、スターラー200が取り付けられる構成とすることができる。かかる構成の場合、スターラー200は、撹拌子201と、撹拌子駆動装置202とを備え、撹拌子駆動装置202は、撹拌子201との間で磁気吸引力を生じさせる駆動マグネット202cと、当該駆動マグネット202cを回転させるモータ202bとを備えると共に、撹拌子201は、タンク本体101a,106aの内部に配置され、駆動マグネット202cは、タンク本体101a,106aの外部において撹拌子201と対向する状態で配置される。また、モータ202bの駆動によって駆動マグネット202cを回転させることで、撹拌子201を回転させ、その撹拌子201の回転に伴ってタンク本体101a,106aの内部の塗料を回転させる。
【0159】
このように構成することで、駆動マグネット202cと撹拌子201の着磁部分が、磁力によって吸引された状態で、モータ202bが駆動することで、駆動マグネット202cおよびタンク本体101aの内部の撹拌子201も回転する。それにより、タンク本体101a内の塗料が回転させられるが、その際に、密度の高い塗料は遠心力の作用によって外側に移動すると共に、密度の低い気泡は回転している塗料の中央側に集められる。そのため、タンク本体101aで回転している塗料の外側の部分を、塗料排出管路101eから塗料供給路103側に排出することで、塗料中から気泡を除去することができる。
【0160】
また、タンク本体101a内で塗料を回転させることにより、塗料内のせん断速度が上昇するので、塗料の粘度を低下させることも可能となる。また、塗料に含まれる顔料の沈降も防止することが可能となる。
【0161】
また、本実施の形態では、次のようにすることもできる。すなわち、塗料供給路103、戻り流路104およびバイパス流路115によって構成される塗料循環路のいずれかの部位には、塗料を下流側に排出するギヤポンプである供給ポンプ105および吸引ポンプ120が設けられている。また、供給ポンプ105および吸引ポンプ120(ギヤポンプ)の回転数は、制御部130(ポンプ制御手段)によって制御される。また、供給ポンプ105および吸引ポンプ120(ギヤポンプ)よりも塗料循環路の上流側と下流側の少なくとも一方には、当該塗料循環路を流れる塗料の圧力を測定する圧力センサS1,S2,S7,S8が設けられ、制御部130(ポンプ制御手段)での制御に基づいて供給ポンプ105および吸引ポンプ120(ギヤポンプ)が駆動させられる制御回転数と、圧力センサS1,S2,S7,S8で測定された測定圧力とに基づいて、塗料中に気泡が入り込んでいる場合に気泡混入と判定する。また、上記の制御回転数に対応する設定圧力値に対して、測定圧力が所定の上限値を上回るか、または所定の下限値を下回る場合に、制御部130(判定手段)によってエア混入と判定し、制御部130(ポンプ制御手段)でエア混入と判定された際に、当該エア混入であることを通知手段140によって通知する。
【0162】
このように構成する場合には、供給ポンプ105および吸引ポンプ120(ギヤポンプ)の制御回転数に対応する設定圧力値に対して、圧力センサS1,S2,S7,S8での測定圧力が所定の上限値を上回るか、または所定の下限値を下回る場合に、制御部130(判定手段)でエア混入と判定する。そのため、塗装ヘッド53からの塗料の吐出不良が生じているか否かを良好に検知することが可能となる。また、エア混入である場合には、通知手段140によって通知されるので、その後に塗装を継続するか、塗装ヘッド53の気泡を排出する動作を行うか、または塗装ヘッドを交換するか等の判断を行い易くなる。
【0163】
また、本実施の形態では、次のようにすることもできる。すなわち、塗料供給路103、戻り流路104およびバイパス流路115によって構成される塗料循環路のいずれかの部位には、塗料を下流側に排出するギヤポンプである供給ポンプ105および吸引ポンプ120が設けられている。また、供給ポンプ105および吸引ポンプ120(ギヤポンプ)の回転数は、制御部130(ポンプ制御手段)によって制御される。また、供給ポンプ105および吸引ポンプ120(ギヤポンプ)よりも塗料循環路の上流側と下流側の少なくとも一方には、当該塗料循環路を流れる塗料の流量を測定する第1流量計FM1および第2流量計FM2(流量計)が設けられ、制御部130(ポンプ制御手段)での制御に基づいて供給ポンプ105および吸引ポンプ120(ギヤポンプ)が駆動させられる制御回転数と、第1流量計FM1および第2流量計FM2(流量計)で測定された測定流量とに基づいて、塗料中に気泡が入り込んでいる場合に気泡混入と判定する。また、上記の制御回転数に対応する設定流量値に対して、測定流量が所定の上限値を上回るか、または所定の下限値を下回る場合に、制御部130(判定手段)によってエア混入と判定し、制御部130(ポンプ制御手段)でエア混入と判定された際に、当該エア混入であることを通知手段140によって通知する。
【0164】
このように構成する場合には、供給ポンプ105および吸引ポンプ120(ギヤポンプ)の制御回転数に対応する設定圧力値に対して、第1流量計FM1および第2流量計FM2(流量計)での測定流量が所定の上限値を上回るか、または所定の下限値を下回る場合に、制御部130(判定手段)でエア混入と判定する。そのため、塗装ヘッド53からの塗料の吐出不良が生じているか否かを良好に検知することが可能となる。また、エア混入である場合には、通知手段140によって通知されるので、その後に塗装を継続するか、塗装ヘッド53の気泡を排出する動作を行うか、または塗装ヘッドを交換するか等の判断を行い易くなる。
【0165】
また、本実施の形態では、制御部130(弁制御手段)は、当該制御部130(判定手段)でエア混入と判定した場合に、バイパス流路115を塗料が流れるように開閉弁116を開放させると共に、制御部130(ポンプ制御手段)は、塗装対象物に対して塗装を行う状態よりも多く流れるように、供給ポンプ105および吸引ポンプ120(ギヤポンプ)の作動を制御することができる。
【0166】
このようにすることで、エア混入と判定された場合に、バイパス流路115を介して塗料が通常よりも多く流れるので、第1気泡除去部材101(気泡除去部材101)および/または第2気泡除去部材106に多くの塗料が流入する。そのため、第2気泡除去部材106により、多くの気泡を塗料から除去することが可能となる。
【0167】
[4.変形例について]
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態以外に、種々変形可能である。以下に、変形例について説明する。
【0168】
上述した実施の形態では、圧力センサS1~S8と、第1流量計FM1、第2流量計FM2を備える構成を採用している。しかしながら、第1流量計FM1および第2流量計FM2を備える場合には、圧力センサS1~S8のうち少なくとも1つを省略しても良く、圧力センサS1~S8を備える場合には、第1流量計FM1と第2流量計FM2のうち少なくとも1つを省略しても良い。
【0169】
また、上述した実施の形態では、第2フィルタに対応する脱気モジュール80は、外部灌流方式について図7に示している。しかしながら、脱気モジュールは、内部灌流方式を採用する構成であっても良い。
【0170】
また、上述の実施の形態では、塗料供給機構100の戻り流路104には、ペイントレギュレータ119や圧力センサS6が設けられている。しかしながら、ペイントレギュレータ119や圧力センサS6等を省略する構成を採用しても良い。
【0171】
また、上述の実施の形態では、脱気モジュール80は、ロボットアームR1の中途部に取り付けられる構成としている。しかしながら、脱気モジュール80は、ロボットアームR1以外の部位に取り付けられても良い。たとえば、基台21側や脚部22側に脱気モジュール80が取り付けられても良く、塗装ロボット10が設置される設置面に脱気モジュール80が配置されても良い。
【0172】
また、上述の実施の形態においては、気泡除去部材101(第1気泡除去部材101)および第2気泡除去部材106は、塗料供給路103の中途部に設ける構成を採用しても良く、戻り流路104の中途部に設ける構成を採用しても良い。
【符号の説明】
【0173】
10…塗装ロボット、20…ロボット本体、21…基台、22…脚部、23…回転軸部、24…回転アーム、25…第1回動アーム、26…第2回動アーム、27…リスト部、50…塗装ヘッドユニット、52…ノズル形成面、53…塗装ヘッド、54…ノズル、55…ノズル列、55A…第1ノズル列、55B…第2ノズル列、57…供給側大流路、58…列方向供給流路、59…ノズル加圧室、59a…ノズル供給流路、59b…ノズル排出流路、60…列方向排出流路、61…排出側大流路、62…圧電基板、63a…圧電セラミック層、63b…圧電セラミック層、64…共通電極、65…個別電極、80…脱気モジュール、81…筐体、81a…塗料供給口、81b…吸引口、81c…塗料排出口、82…中空糸膜束、82a…中央供給部、83…中空糸膜、84…流入側封止部材、84a…供給孔、85…排気側封止部材、90…除去フィルタ、100,100A,100B…塗料供給機構、101…気泡除去部材、第1気泡除去部材(気泡除去手段に対応)、101a,106a…タンク本体、101b,106b…塗料導入管路、101c,106c…気体排出管路、101d,106d…エア排出弁、101e,106e…塗料排出管路、101f,106f…仕切りフィルタ、102…外部供給路、103…塗料供給路、104…戻り流路、105…供給ポンプ(ギヤポンプに対応)、106…第2気泡除去部材(気泡除去手段に対応)、107…接続路、108…三方弁、109…吸引管路、110…真空ポンプ、112…ペイントレギュレータ、113…三方弁、115…バイパス流路、116…開閉弁、117…三方弁、119…ペイントレギュレータ、120…吸引ポンプ(ギヤポンプに対応)、121…切替弁、122…排出路、130…制御部(弁制御手段、ポンプ制御手段および判定手段に対応)、140…通知手段、200…スターラー、201…撹拌子、202…撹拌子駆動装置、202a…筐体、202b…モータ、202c…駆動マグネット、261…モジュール取付部、C1…循環経路、FM1…第1流量計、FM2…第2流量計、R1…ロボットアーム、S1~S8…圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームを備え、当該ロボットアームの作動によって塗装対象物に対して塗装を行う塗装ロボットであって、
前記ロボットアームの先端側に取り付けられ、塗料を吐出する複数のノズルを備えると共に、圧電基板の駆動によって前記ノズルから前記塗料を吐出させる塗装ヘッドと、
前記塗装ヘッドの塗料供給側に接続される塗料供給路と、
前記塗装ヘッドの塗料排出側に接続され、前記ノズルから吐出されなかった前記塗料を回収する戻り流路と、
前記ロボットアームに設けられ、前記塗装ヘッドと並列状態で前記塗料を流通させるバイパス流路と、
前記バイパス流路に設けられ、当該バイパス流路を流通する前記塗料の流れの可否を切り替える開閉弁と、
前記開閉弁の開閉を制御する弁制御手段と、
前記ロボットアーム外の姿勢が変化しない安定部位に設けられ、前記塗料供給路または前記戻り流路に前記塗料を供給可能に設けられると共に、前記塗料に含まれる気泡を除去する気泡除去手段と、
を備え
前記気泡除去手段は、
前記塗料を貯留すると共に外部から閉塞されているタンク本体と、
前記タンク本体の内部に少なくとも一部が入り込んで設けられ、前記塗料を前記タンク本体の内部に供給する塗料導入管路と、
前記タンク本体の内部から前記塗料を排出する塗料排出管路と、
前記タンク本体において前記塗料導入管路の端部よりも上方に設けられ、前記タンク本体の内部に溜まった気体を排出する気体排出管路と、
を備えることを特徴とする塗装ロボット。
【請求項2】
請求項1記載の塗装ロボットであって、
記タンク本体の塗料貯留部位よりも上方側には、当該タンク本体内の気体を排出する排出口が設けられていて、
前記タンク本体の塗料貯留部位における下方側には、前記塗料を下流側に流通させる流出口が設けられている、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項3】
請求項2記載の塗装ロボットであって、
前記排出口には、開閉可能なエア排出弁が設けられていて、
前記エア排出弁は、一定時間の経過または前記タンク本体内の前記気体の圧力が一定量となった際に、前記弁制御手段の制御によって開放される制御弁である、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項4】
請求項2記載の塗装ロボットであって、
前記排出口には、開閉可能なエア排出弁が設けられていて、
前記エア排出弁は、前記タンク本体内の前記気泡の流入による内部圧力が所定圧力まで上昇した際に、自動的に開放するリリーフ弁である、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
記タンク本体の内部には、前記塗料が通過する際に前記気泡を除去する仕切りフィルタが設置されていて、
前記仕切りフィルタは、前記タンク本体の内部を前記塗料導入管路側と前記塗料排出管路側とに区分することで、前記タンク本体の内部の前記塗料導入管路側の前記塗料は、前記仕切りフィルタを通過して前記塗料排出管路側へ流れ込む、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項6】
請求項2から4のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
前記タンク本体には、スターラーが取り付けられていて、
前記スターラーは、撹拌子と、撹拌子駆動装置とを備え、
前記撹拌子駆動装置は、前記撹拌子との間で磁気吸引力を生じさせる駆動マグネットと、当該駆動マグネットを回転させるモータとを備えると共に、
前記撹拌子は、前記タンク本体の内部に配置され、
前記駆動マグネットは、前記タンク本体の外部において前記撹拌子と対向する状態で配置されると共に、
前記モータの駆動によって前記駆動マグネットを回転させることで、前記撹拌子を回転させ、その撹拌子の回転に伴って前記タンク本体の内部の前記塗料を回転させる、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
前記塗料供給路、前記戻り流路および前記バイパス流路によって構成される塗料循環路のいずれかの部位には、前記塗料を下流側に排出するギヤポンプが設けられていて、
前記ギヤポンプの回転数を制御するポンプ制御手段が設けられ、
前記ギヤポンプよりも前記塗料循環路の上流側と下流側の少なくとも一方には、当該塗料循環路を流れる前記塗料の圧力を測定する圧力センサが設けられ、
前記ポンプ制御手段での制御に基づいて前記ギヤポンプが駆動させられる制御回転数と、前記圧力センサで測定された測定圧力とに基づいて、前記塗料中に気泡が入り込んでいる場合に気泡混入と判定すると共に、
前記制御回転数に対応する設定圧力値に対して、前記測定圧力が所定の上限値を上回るか、または所定の下限値を下回る場合に、エア混入と判定する判定手段が設けられていて、
前記判定手段で前記エア混入と判定された際に、当該エア混入であることを通知する通知手段が設けられている、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
前記塗料供給路、前記戻り流路および前記バイパス流路によって構成される塗料循環路のいずれかの部位には、前記塗料を下流側に排出するギヤポンプが設けられていて、
前記ギヤポンプの回転数を制御するポンプ制御手段が設けられ、
前記ギヤポンプよりも前記塗料循環路の上流側と下流側の少なくとも一方には、当該塗料循環路を流れる前記塗料の流量を測定する流量計が設けられ、
前記ポンプ制御手段での制御に基づいて前記ギヤポンプが駆動させられる制御回転数と、前記流量計で測定された前記塗料の測定流量とに基づいて、前記塗料中に気泡が入り込んでいる場合に気泡混入と判定すると共に、
前記制御回転数に対応する設定流量値に対して、前記測定流量が所定の上限値を上回るか、または所定の下限値を下回る場合に、エア混入と判定する判定手段が設けられていて、
前記判定手段で前記エア混入と判定された際に、当該エア混入であることを通知する通知手段が設けられている、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項9】
請求項7または8記載の塗装ロボットであって、
前記弁制御手段は、前記判定手段でエア混入と判定された場合に、前記バイパス流路を前記塗料が流れるように前記開閉弁を開放させると共に、
前記ポンプ制御手段は、前記塗装対象物に対して塗装を行う状態よりも多く流れるように、前記ギヤポンプの作動を制御する、
ことを特徴とする塗装ロボット。