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特開2023-68944金属フィルタの再利用方法及び再利用装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068944
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】金属フィルタの再利用方法及び再利用装置
(51)【国際特許分類】
   D06H 7/00 20060101AFI20230511BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20230511BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20230511BHJP
   D06C 7/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
D06H7/00
B01D39/20 A
B08B3/02 F
D06C7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180416
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100092853
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一
(72)【発明者】
【氏名】文野 佳門
(72)【発明者】
【氏名】三坂 浩司
【テーマコード(参考)】
3B154
3B201
4D019
【Fターム(参考)】
3B154AA13
3B154AB20
3B154AB22
3B154BA17
3B154BA47
3B154BB12
3B154BB47
3B154BB54
3B154BB76
3B154BC31
3B154BC47
3B154DA24
3B201AA46
3B201BB21
3B201BB92
4D019AA01
4D019BA02
4D019BB03
4D019CA03
4D019CB06
4D019CB09
(57)【要約】
【課題】金属フィルタを廃棄することなく金属繊維製品の素材として有効に再利用することによって、省資源や環境保全に資することができる金属フィルタの再利用方法及び再利用装置を提供すること。
【解決手段】金属フィルタ6の再利用方法は、金属フィルタ6を解繊する解繊工程を経て金属フィルタ6を金属繊維製品の素材として再利用することを特徴とする。ここで、金属フィルタ6は、例えば集塵機1に備えられるものであって、集塵機1から取り外した金属フィルタ6を解繊工程において金属繊維と当該金属フィルタ6に付着した有価物aとに分離し、分離された有価物aを回収して再利用する。また、金属フィルタ6の再利用装置は、金属フィルタ6を金属繊維に解繊する解繊部30と、解繊部30において解繊された金属繊維を貯留する貯留部50と、貯留部50において貯留された金属繊維を新たな基材6Aに植え込む植込部80とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集塵機に備えられる金属フィルタを解繊する解繊工程を経て前記金属フィルタを金属繊維製品の素材として再利用することを特徴とする金属フィルタの再利用方法。
【請求項2】
前記集塵機から取り外した前記金属フィルタを前記解繊工程において金属繊維と当該金属フィルタに付着した有価物とに分離し、分離された前記有価物を回収して再利用することを特徴とする請求項1に記載の金属フィルタの再利用方法。
集塵機
【請求項3】
前記解繊工程の前に、前記金属フィルタを加熱する加熱工程を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の金属フィルタの再利用方法。
【請求項4】
前記解繊工程において解繊された前記金属繊維を貯留する貯留工程と、
前記貯留工程において貯留された前記金属繊維を新たな基材に植え込む植込工程と、
を設けたことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の金属フィルタの再利用方法。
【請求項5】
前記解繊工程と前記貯留工程との間に、前記金属繊維を洗浄する洗浄工程を設けたことを特講とする請求項4に記載の金属フィルタの再利用方法。
【請求項6】
前記貯留工程と前記植込工程との間に、前記貯留工程において貯留された前記金属繊維を圧縮・梱包する圧縮・梱包工程と、該圧縮・梱包工程において圧縮・梱包された前記金属繊維をほぐして前記植込工程へと搬送する搬送工程を設けたことを特徴とする請求項4または5に記載の金属フィルタの再利用方法。
【請求項7】
前記金属繊維製品は、再生された金属フィルタであることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の金属フィルタの再利用方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の金属フィルタの再利用方法を実施するための装置であって、
前記金属フィルタを解繊する解繊部と、
前記解繊部において解繊された前記金属繊維を貯留する貯留部と、
前記貯留部において貯留された前記金属繊維を新たな基材に植え込む植込部と、
を備えることを特徴とする金属フィルタの再利用装置。
【請求項9】
前記貯留部において貯留された前記金属繊維を圧縮・梱包する圧縮・梱包部と、該圧縮・梱包部において圧縮・梱包された前記金属繊維をほぐして前記植込部へと搬送する搬送部を備えることを特徴とする請求項8に記載の金属フィルタの再利用装置。
【請求項10】
前記金属フィルタを加熱する加熱部を備えることを特徴とする請求項8または9に記載の金属フィルタの再利用装置。
【請求項11】
前記解繊部において解繊された前記金属繊維を洗浄する洗浄部を備えることを特講とする請求項8~10の何れかに記載の金属フィルタの再利用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属繊維または該金属繊維を含んで構成される金属フィルタの再利用方法及び再利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高炉や電炉、廃棄物処理炉などから排出される各種ガスにはダストなどの異物が含まれているため、この異物を集塵機によって除去するようにしている。
【0003】
上記集塵機としては、外面濾過式のバグフィルタを用いたものが一般的に使用されている(例えば、特許文献1参照)が、この種の集塵機においては、ガスが有底筒状(袋状)のバグフィルタの外部から内部に流入することによって当該ガスに含まれる異物が除去(集塵)される。したがって、集塵の進行に伴ってバグフィルタの外周面に異物が付着し、バグフィルタを通過するガスの通気抵抗(圧損)が大きくなって当該集塵機の処理能力が低下するという問題が発生する。
【0004】
そこで、高圧の圧縮エアを各バグフィルタ内に瞬間的に噴射し、該バグフィルタに付着している異物を定期的に払い落として除去する逆洗が行われている。
【0005】
ところが、バグフィルタは、一般的にはポリエステルなどから成る布(不織布)製のものが使用されているため(例えば、特許文献2参照)、逆洗を定期的に行っても、長期の使用によってバグフィルタの性能が回復せず、性能が低下したバグフィルタは、最終的には廃棄して新しいものと交換せざるを得ず、経済的損失が大きいという問題がある。
【0006】
一方、不織布よりも耐久性の高い金属繊維で構成された金属フィルタを用いることが考えられ、特許文献3には、金属繊維不織布の製造方法が提案されている。この製造方法は、金属繊維糸条を気体流によって開繊させる点に特徴を有しており、より詳細には、金属繊維を筒中に導く工程と、筒中に気体流を積極的に供給する工程と、筒中から気体流を金属繊維糸条に対して対称方向に吸引して筒外に排出することによって該金属繊維糸条を開繊する工程と、金属繊維糸を捕集する工程を経て金属繊維不織布を製造する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-296128号公報
【特許文献2】特開2008-068152号公報
【特許文献3】特公平3-021663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、不織布よりも耐久性の高い金属繊維で構成された金属フィルタを用いる場合であっても、長時間の使用によって金属フィルタに付着物(有価物)が付着すると、この金属フィルタを産業廃棄物としてそのまま廃棄せざるを得ず、資源の無駄や環境汚染を招くという問題がある。
【0009】
そこで、付着物が付着した金属フィルタを有機溶剤などで洗浄処理して有機物を除去する方法が考えられるが、この方法を実施するためには、水処理設備などが必要になるために装置が大型化及び高コスト化するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、金属フィルタを廃棄することなく金属繊維製品の素材として有効に再利用することによって、省資源や環境保全に資することができる金属フィルタの再利用方法及び再利用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る金属フィルタの再利用方法は、集塵機に備えられる金属フィルタを解繊する解繊工程を経て前記金属フィルタを金属繊維製品の素材として再利用することを特徴とする。
【0012】
ここで、前記金属フィルタは、前記集塵機から取り外した前記金属フィルタを前記解繊工程において金属繊維と当該金属フィルタに付着した有価物とに分離し、分離された前記有価物を回収して再利用するようにしても良い。また、前記解繊工程の前に、前記金属フィルタを加熱する加熱工程を設けても良い。
【0013】
さらに、本発明に係る金属フィルタの再利用方法は、前記解繊工程において解繊された前記金属繊維を貯留する貯留工程と、前記貯留工程において貯留された前記金属繊維を新たな基材に植え込む植込工程とを含んでいても良い。ここで、前記解繊工程と前記貯留工程との間に、前記金属繊維を洗浄する洗浄工程を設けても良い。また、前記貯留工程と前記植込工程との間に、前記貯留工程において貯留された前記金属繊維を圧縮・梱包する圧縮・梱包工程と、該圧縮・梱包工程において圧縮・梱包された前記金属繊維をほぐして前記植込工程へと搬送する搬送工程を設けても良い。前記金属繊維製品は、再生された金属フィルタであっても良い。
【0014】
本発明に係る金属フィルタの再生装置は、金属フィルタを解繊する解繊部と、前記解繊部において解繊された金属繊維を貯留する貯留部と、前記貯留部において貯留された前記金属繊維を新たな基材に植え込む植込部とを備えることを特徴とする。
【0015】
ここで、再利用装置は、前記貯留部において貯留された前記金属繊維を圧縮・梱包する圧縮・梱包部と、該圧縮・梱包部において圧縮・梱包された前記金属繊維をほぐして前記植込部へと搬送する搬送部を備えていても良い。また、前記金属フィルタを加熱する加熱部を備えていても良い。さらに、前記解繊部において解繊された前記金属繊維を洗浄する洗浄部を備えていても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、付着物の付着によって性能が低下した金属フィルタを廃棄することなく金属繊維製品の素材として有効に再利用するようにしたため、天然資源の持続可能な資源循環システムを構築することができ、省資源や環境保全、天然資源の効率的な利用、廃棄物の発生防止と削減、持続可能な生産消費に資することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】集塵機の通常運転時(集塵時)の状態を示す縦断面図である。
図2図1のA部拡大断面図である。
図3】集塵機の逆洗時の状態を示す縦断面図である。
図4】本発明に係る金属フィルタの再利用装置の一部を示すシステム構成図である。
図5】本発明に係る金属フィルタの再利用装置の他の一部を示すシステム構成図である。
図6】(a),(b)は図5のB部拡大詳細図である。
図7】本発明に係る金属フィルタの再利用方法をその工程順に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
[集塵機]
先ず、本発明の適用対象である金属フィルタを備える集塵機の構成を図1図3に基づいて以下に説明する。
【0020】
図1は集塵機の通常運転時(集塵時)の状態を示す縦断面図、図2図1のA部拡大詳細断面図、図3は同集塵機の逆洗時の状態を示す縦断面図である。
【0021】
図示の集塵機1は、密閉容器状の本体(筐体)2を備えており、この本体2の内部は、水平な隔壁3によって下部の集塵室S1と上部の浄化ガス室S2とに区画されている。ここで、本体2の下部は、下方に向かって細くなる漏斗状とされており、その下端部に開口する異物排出口2aには、ロータリバルブ4が設けられている。また、本体2の側部の中間高さ位置には、ガス流入管5が接続されており、このガス流入管5の一端は、ガスを排出する不図示の高炉や電炉、廃棄物処理炉などに接続され、他端は、前述のように集塵機1の本体2に接続されて該本体2内の集塵室S1に開口している。
【0022】
また、本体2内の集塵室S1には、下端が閉じられた有底筒状(袋状)の複数の金属フィルタ6が収容されている。ここで、各金属フィルタ6は、その上端部が隔壁3によって支持された状態で垂直に吊下げられており、その内部には、図2に示すように、当該金属フィルタ6の形状を保持するための円筒枠状(籠状)のリテーナ7が上方から組み込まれて収容されている。なお、金属フィルタ6は、ナイロンフェルトやポリエステルフェルトなどの基材に例えばステンレス鋼(SUS)やチタン、アルミニウムなどの金属繊維(短繊維)をニードルパンチ加工によって植え込むことによって製作されたものである。また、リテーナ7の材質には、電気抵抗が比較的大きなステンレス鋼(SUS)や鉄、アルミニウムなどの導電性金属が使用されている。
【0023】
他方、本体2内の上部に形成された浄化ガス室S2の側部には、ガス流出管8が接続されており、このガス流出管8の一端は、浄化ガス室S2内に開口しており、他端は、吸引ファン9の吸入側に接続されている。
【0024】
ところで、集塵機1には、各金属フィルタ6の外周面に付着したダストなどの異物を高圧の圧縮エアを用いて定期的に払い落として除去するための逆洗装置10が設けられている。この逆洗装置10は、本体2の外部に設置されたコンプレッサなどの圧縮空気供給源11と、該圧縮空気供給源11から延びるインジェクタパイプ12を含んで構成されている。
【0025】
上記インジェクタパイプ12は、本体2内の上部に形成された浄化ガス室S2に導入されて該浄化ガス室S2内を水平に延びており、このインジェクタパイプ12の本体2と圧縮空気供給源11との間には開閉バルブ13が設けられている。そして、このインジェクタパイプ12の本体2内に挿入された部分の複数箇所(各金属フィルタ6の上端開口部6aに対向する位置)には、各金属フィルタ6の上端開口部6aに向かって開口するエアノズル14がそれぞれ取り付けられている。なお、本実施の形態では、インジェクタパイプ12には、SGP管(配管用炭素鋼鋼管)が使用されている。
【0026】
次に、以上のように構成された集塵機1の作用を通常運転時(集塵時)と逆洗時についてそれぞれ以下に説明する。
1)通常運転時(集塵時)の作用:
集塵機1の通常運転時(集塵時)においては、図1に示すように、本体2の下端部に設けられたロータリバルブ4は閉じられており、逆洗装置10は、停止(非作動)状態にある。この状態で吸引ファン9が回転駆動されると、本体2内の集塵室S1と浄化ガス室S2が共に負圧となり、この負圧に引かれて不図示の廃棄物処理炉などから排出されるガスが図1に矢印にて示すようにガス流入管5から本体2内の集塵室S1へと流入する。
【0027】
上述のように、集塵室S1内へと流入したガスは、複数の各金属フィルタ6を通過し、これに含まれるダストなどの異物が各金属フィルタ6によって捕集されて各金属フィルタ6の外周面に付着する。そして、異物が金属フィルタ6によって除去されて浄化されたガスは、図1に矢印にて示すように、各金属フィルタ6の上端開口部6aから浄化ガス室S2へとそれぞれ排出され、ガス流出管8から本体2外へと流出し、吸引ファン9に吸引されて不図示の処理装置へと送出される。
【0028】
以上の集塵作用が繰り返されると、各金属フィルタ6の外周面にダストなどの異物が次第に付着して堆積し、各金属フィルタ6を通過するガスの通気抵抗が増大する。そして、各金属フィルタ6を通過するガスの通気抵抗が所定値に達したことが不図示の圧力計によって検知されたとき、或いは所定の時間が経過した後に逆洗装置10が駆動されて各金属フィルタ6が圧縮エアによって逆洗される。
【0029】
次に、この逆洗時における集塵機1の作用を図3に基づいて以下に説明する。
2)逆洗時の作用:
図3は集塵機1の逆洗時の状態を示す縦断面図であり、各金属フィルタ6の逆洗は、逆洗装置10を駆動することによって次のように行われる。すなわち、不図示のコンプレッサなどの圧縮空気供給源11が駆動され、開閉バルブ13が開けられると、圧縮空気供給源11から吐出される高圧の圧縮空気がインジェクタパイプ12を図示矢印方向に流れ、各エアノズル14から各金属フィルタ6の上端開口部6aに向かってそれぞれ瞬間的に噴射される。すると、各金属フィルタ6の外周面に付着している異物が圧縮空気によって払い落とされて除去される。そして、各金属フィルタ6の外周面から払い落とされたダストなどの異物は、図3に矢印にて示すように集塵室S2内を自重で落下し、本体2の下部へと集められ、ロータリバルブ4が開くことによって異物排出口2aから本体2外へと排出されて回収される。
【0030】
以上の逆洗によって金属フィルタ6の浄化性能が或る程度回復するが、この逆洗によっても金属フィルタ6の繊維間が目詰まりし、該金属フィルタ6の浄化性能が回復しない場合には、この金属フィルタ6は、廃棄されることなく金属繊維製品の素材として再利用される。なお、金属フィルタ6の再利用は、該金属フィルタ6の内外の差圧が所定値(例えば、1.5KPa)を超えたとき、或いは定期的(例えば、3年ごと)に行われる。
【0031】
[金属フィルタの再利用方法及び再利用装置]
次に、集塵機1に備えられた金属フィルタ6の再利用方法及び再利用装置を図4図7に基づいて以下に説明する。
【0032】
図4は本発明に係る金属フィルタの再利用装置の一部を示すシステム構成図、図5は同再利用装置の他の一部を示すシステム構成図、図6(a),(b)は図5のB部拡大詳細図、図7は本発明に係る金属フィルタの再利用方法をその工程順に示すブロック図である。
【0033】
本発明方法は、基本的には、金属フィルタ6を解繊する解繊工程を経て当該金属フィルタ6を金属繊維製品の素材として再利用することを特徴とするものであって、本実施の形態では、図1に示す集塵機1に設けられた金属フィルタ6に対して本発明を適用している。先ず、本発明方法を実施するための再利用装置を図4及び図5に基づいて以下に説明する。
(再利用装置)
本実施の形態に係る再利用装置は、金属フィルタ6の再利用工程に沿って順次配置された図4に示す加熱部20と、解繊部30と、洗浄部40と、貯留部50及び圧縮・梱包部60と、図5に示す搬送部70及び植込部80を備えている。
【0034】
上記加熱部20は、高周波加熱装置やエアブロー装置(何れも不図示)を含んで構成されており、前記解繊部30は、回転型解繊機31を備えている。この回転型解繊機31は、図示矢印方向(反時計方向)に回転駆動される回転刃ローラ32と、この回転刃ローラ32の下方に水平に配置されたプレート33を含んで構成されている。なお、回転刃ローラ32は、外周にガーネットワイヤーなどの刃を全周に亘って設けることによって構成されている。また、加熱部20の前後(図4の左右)には、図示矢印方向(反時計方向)に回転駆動される一対のフィードローラ21が配置されている。さらに、加熱部20に設けられる加熱手段としては、誘導加熱装置やマイクロ波加熱装置などを採用することができる。
【0035】
ところで、解繊部30の下方には、床面FL上に斜めに設置された振動ふるい機34と、水平に設置されたベルトコンベア35と、押圧機36が設置されている。ここで、振動ふるい機34は、内部にメッシュ状のふるい34aを収容して構成されており、押圧機36は、内部に回転スクリュー36aを収容して構成されている。そして、この押圧機36の内部には、振動ふる機34の出口が開口している。
【0036】
また、前記貯留部50は、ブロア51と貯留タンク52を備えており、ブロア51の吸入側に接続された吸引パイプ53のベルマウス状の端部は、前記解繊部30に向かって開口している。
【0037】
また、ブロア51の吐出側には吐出パイプ54の一端が接続されており、この吐出パイプ54は、ブロワ51の吐出側から上方に延びた後、直角に折り曲げられて水平に延び、その端部が再び直角に折り曲げられて下方に向かって垂直に延びて貯留タンク52の上端に接続されて該貯留タンク52の内部に連通している。
【0038】
上記貯留タンク52は、縦長のタンクであって、その下部には、互いに逆方向(図示矢印方向)に回転駆動される一対のフィードローラ55と、図示矢印方向(時計方向)に回転駆動される送り出しローラ56が収容されている。そして、貯留タンク52の側壁の下部であって、送り出しローラ56に対向する位置には、排出口52aが開口しており、貯留タンク52の上壁には、エア抜き孔52bが開口している。
【0039】
ところで、貯留部50に設けられた吐出パイプ54の途中には、例えば、水などを噴射する前記洗浄部40が設けられている。なお、この洗浄部40と前記加熱部20は、本発明に係る再利用装置に必須のものではなく、これらは必要に応じて設けられる。
【0040】
前記圧縮・梱包部60は、圧縮機構61と不図示の梱包機構及び送り出し機構62を備えており、圧縮機構61は、油圧シリンダによって構成されており、圧縮ケース63上に垂直に立設されたシリンダ61aと、該シリンダ61aに作用する油圧によって上下動するピストンロッド61bを備えており、ピストンロッド61bの下端には、ピストンロッド61bと共に圧縮ケース63内を上下動する押圧フランジ61cが取り付けられている。なお、貯留タンク52の下部側壁に形成された排出口52aは、圧縮ケース63内に開口している。
【0041】
また、前記送り出し機構62は、圧縮機構61と不図示の梱包機構によって圧縮・梱包された金属短繊維のブロック(以下、「ベール」と称する)Wを送出す機能を果たすものであって、水平に設置された油圧シリンダによって構成されている。具体的には、この送り出し機構は、水平に設置されたシリンダ62aと、このシリンダ62a内に作用する油圧によって水平方向に往復動するピストンロッド62bによって構成されている。なお、本実施の形態では、圧縮機構61と送り出し機構62を油圧シリンダで構成したが、これらを空圧シリンダで構成しても良い。
【0042】
次に、前記搬送部70と前記植込部80の構成を図5に基づいて以下に説明する。
【0043】
前記搬送部70は、ブロワ71と、該ブロワ71の吸入側に接続された吸引パイプ72と、ブロワ71の吐出側に接続された吐出パイプ73を含んで構成されている。ここで、吸引パイプ72の先端部には、下方に向かって広がりながら開口するフード74が取り付けられており、吐出パイプ73の端部は、植込ライン上に設置されたホッパ75に向かって開口している。なお、フード74の内部には、図示矢印方向(時計方向)に回転駆動される巻上げローラ76が設けられている。
【0044】
また、前記植込部80は、高速で上下動を繰り返すニードルパンチ81を備えており、このニードルパンチ81には、多数のニードル81aが植設されている。
【0045】
[金属フィルタの再利用方法]
次に、本発明に係る金属フィルタ6の再利用方法を図4図7にしたがって以下に説明する。なお、図6(a),(b)は図5のB部拡大詳細図、図7は本発明に係る金属フィルタの再利用方法をその工程順に示すブロック図である。
【0046】
本発明に係る金属フィルタ6の再生方法は、金属フィルタ6を解繊する解繊工程を経て当該金属フィルタ6を金属繊維製品の素材として再利用することを特徴とするものである。本実施の形態では、図1に示す集塵機1に設けられた金属フィルタ6を取り外し、この金属フィルタ6を解繊して新たな金属フィルタ6の素材として再利用する、つまり、金属繊維製品として金属フィルタ6を製作する方法について説明する。この方法は、図7に示すように、1)加熱工程、2)解繊工程、3)洗浄工程、4)貯留工程、5)圧縮・梱包工程、6)搬送工程、7)植込工程をこの順に順次経て実施される。以下、各工程についてそれぞれ説明する。
【0047】
1)加熱工程:
金属フィルタ6の再利用に際しては、この金属フィルタ6を図1に示す集塵機1から取り外し、取り外した金属フィルタ6を図4に示すように架台15上に設置し、一対のフィードローラ21を図示矢印方向(反時計方向)に回転駆動する。すると、金属フィルタ6は、フィードローラ21によって解繊部30に向かって図示矢印方向へと送られるが、その過程で加熱部20に設けられた不図示の高周波加熱装置によって加熱され、該金属フィルタ6に付着している付着物が分離され、分離された付着物がエアブロー装置から噴出するエアによって吹き飛ばされて除去される。
【0048】
2)解繊工程:
解繊部30へと搬送された金属フィルタ6は、解繊部30に設けられた回転型解繊機31の回転刃ローラ32の図示矢印方向(反時計方向)の回転によってプレート33との間で綿状の金属繊維に解繊される。
【0049】
ここで、前記加熱部20は、本発明に係る再利用装置には必須のものではなく、この加熱部20が設けられていない場合には、金属フィルタ6に含まれる付着物が解繊部30において金属繊維と共に解繊されるが、付着物は、綿状の金属繊維よりも比重が大きいため、プレート33と架台15との間の空間を落下する。この付着物には、鉄や鉛、亜鉛などの再利用可能な有価物aとその他の再利用不可能な残渣bが含まれる。
【0050】
付着物に含まれる有価物aと残渣bは、振動ふるい機34へと落下し、振動するふるい34aによって有価物aと残渣bとに分別される。すなわち、ふるい34aを通過しない有価物aは、押圧機36へと投入され、この押圧機36において回転する回転スクリュー36aの回転によって押圧されることによってペレットとして粒状化し、このペレットは、回収されて有効に再利用される。これに対して、ふるい34aを通過した微細な残渣bは、ベルトコンベア35上に落下し、ベルトコンベア35によって不図示の処理部へと搬送されて廃棄処理される。
【0051】
3)洗浄工程:
貯留部50に設けられたブロワ51が駆動されると。解繊部30における解繊によって得られた綿状の金属繊維は、ブロワ51の吸入側に接続された吸引パイプ53によって吸い込まれ、この吸い込まれた金属繊維は、ブロワ51によって吐出パイプ54へと吐出され、この吐出パイプ54を通って貯留部50の貯留タンク52内へと投入されるが、その過程で洗浄部40によって洗浄される。洗浄部40においては、吐出パイプ54内に例えば水が噴射され、吐出パイプ54内を搬送される金属繊維が水洗されて清浄化される。このように、吐出パイプ54内を流れる金属繊維が洗浄されることによって、該金属繊維に含まれる不純物が取り除かれるため、貯留タンク52には不純物の少ない清浄な金属繊維が投入される。
【0052】
なお、本発明に係る金属フィルタ6の再利用方法においては、洗浄工程は、必須のものではなく、必要に応じて適宜実施される。
【0053】
4)貯留工程:
貯留工程においては、前述のように、解繊部30における解繊によって得られた綿状の金属繊維が吸引パイプ53によって吸い込まれ、この吸い込まれた金属繊維が吐出パイプ54へと吐出され、この吐出パイプ54を通って貯留部50の貯留タンク52内へと投入されて該貯留タンク52内に貯留される。なお、この貯留タンク52内への金属繊維の投入による貯留タンク52の内圧の上昇は、貯留タンク52に開口するエア抜き孔52bから貯留タンク52内の空気が外部へと排出されることによって防がれる。
【0054】
貯留タンク52内においては、一対のフィードローラ55が互いに逆方向に回転駆動されることによって、貯留タンク52内に貯留された金属繊維が送り出しローラ56へと送られる。そして、送り出しローラ56へと送り出された金属繊維は、該送り出しローラ56が図示矢印方向(時計方向)に回転駆動されることによって、貯留タンク52の側壁下部に開口する排出口52aを通って圧縮・梱包部60の圧縮ケース63内に投入される。
【0055】
5)圧縮・梱包工程:
圧縮・梱包工程においては、貯留部50の貯留タンク52から圧縮ケース63内へと投入された金属繊維が圧縮機構61によって圧縮される。すなわち、圧縮機構61を構成する油圧シリンダのピストンロッド61bが圧縮ケース63内を下動すると、圧縮ケース63内に投入された金属繊維がピストンロッド61bと共に一体に下動する押圧フランジ61cによって圧縮され、矩形ブロック状のベールWとして成形される。
【0056】
上述のように矩形ブロック化された金属繊維は、不図示の梱包機構によって紐掛けされて梱包されることによってブロック状のベールWとされる。そして、このベールWは、送り出し機構62に設けられたピストンロッド62bの水平方向のストロークによって送り出されて床面FL上の台車90の上に載置される。
【0057】
6)搬送工程:
前述のように、圧縮・梱包部60において台車90上に載置されたベールWは、図5に示すように、梱包を解かれた状態で搬送部70へと搬入され、この搬送部70のブロア71が駆動されるとともに、巻上げローラ76が図示矢印方向(反時計方向)に回転駆動される。すると、ベールWに含まれる金属繊維が巻上げローラ76によって上部のものから順次ほぐされてフード74内へと巻き上げられ、この巻き上げられた金属繊維は、吸引パイプ72からブロワ71を通って吐出パイプ73へと流れ込み、吐出パイプ73の端部からホッパ75へと投入される。
【0058】
7)植込工程:
植込工程においては、ホッパ75に投入された金属繊維6aが植え込みライン上を図示矢印方向(図5の右方向)へと搬送される基材6A上に重ねられる。ここで、基材6Aは、ロール状に巻かれており、搬送ローラ16が図示矢印方向(時計方向)に回転駆動されることによって、基材6Aが植込ラインに沿って植込部80に向かって直線状に送り出される。
【0059】
植込部80においては、ニードルパンチ81が高速で上下動を繰り返しており、上面に金属繊維6aが重ねられた基材6Aがニードルパンチ81を通過することによって、金属繊維6aが多数のニードル81aによって基材6Aに植え込まれ、図6(a)に示すような素材6’が作製される。なお、図6(b)に示すように、基材6Aの表面と裏面に金属繊維6aをそれぞれ植え込んで素材6”を作製するようにしても良い。
【0060】
ところで、本実施の形態では、以上説明した一連の工程を経て金属フィルタ6から図6(a)に示す素材6’または図6(b)に示す素材6”が得られ、これらの素材6または6”を用いて金属フィルタ6を新たに作製するようにしている。すなわち、付着物が付着しているために浄化性能が低下した金属フィルタ6を再利用して新たに金属フィルタ6を作製するようにしている。
【0061】
したがって、本発明に係る金属フィルタ6の再利用方法によれば、付着物の付着によって性能が低下した金属フィルタ6を廃棄することなく金属繊維製品(本実施の形態では、新たな金属フィルタ6)の素材6または6”(図6参照)として有効に再利用するようにしたため、天然資源の持続可能な資源循環システムを構築することができ、省資源や環境保全、天然資源の効率的な利用、廃棄物の発生防止と削減、持続可能な生産消費に資することができるという効果が得られる。
【0062】
なお、以上は本発明を集塵機に備えられた金属フィルタに対して適用した形態について説明したが、本発明は、集塵機以外の他の任意の機器に備えられた金属フィルタに対しても同様に適用可能である。
【0063】
また、以上は集塵機に備えられた金属フィルタの解繊によって得られる金属繊維を素材として同じ金属繊維製品である集塵機用の金属フィルタとして再生する形態を例として説明したが、本発明は、金属フィルタの解繊によって得られる金属繊維を素材とする金属フィルタ以外の任意の金属繊維製品とする形態に対しても同様に適用可能である。
【0064】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1 集塵機
6 金属フィルタ
6’,6” 金属フィルタの素材
6A 基材
6a 金属繊維
20 加熱部
30 解繊部
31 回転型解繊機
40 洗浄部
50 貯留部
52 貯留タンク
60 圧縮・梱包部
61 圧縮機構
62 送り出し機構
70 搬送部
80 植込部
81 ニードルパンチ
a 有価物
b 残渣
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7