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特開2023-68961把持本体、把持装置及び産業用ロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068961
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】把持本体、把持装置及び産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B25J15/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180454
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 篤史
(72)【発明者】
【氏名】波多野 至
(72)【発明者】
【氏名】岩田 俊介
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS02
3C707ES03
3C707ES10
3C707ET03
3C707HS14
(57)【要約】
【課題】把持本体がケースから脱落せず、かつ、液溜まりの発生を防止することができる把持本体、把持装置及び産業用ロボットを提供する。
【解決手段】把持本体28Aは、掌部30と、掌部30の周囲に突出して設けられ、掌部30を厚さ方向に変形させることにより掌部30に向かって倒れる複数の指部32と、掌部30及び複数の指部32が設けられている一端側とは反対の他端側に設けられた開口部34とを備え、開口部34は、開口を画定する開口端50と、開口の中心に向けて湾曲した内面51とを有する。把持装置10Aは、把持本体28Aと、底部41と、底部41の外縁に設けられた筒状部42Aと、底部41と筒状部42Aとを接続する角部43とを有し、開口部34に挿入されるケース40Aとを備え、角部43は、ケース40Aの中心に向けて湾曲した外面52を有し、内面51と外面52とが接触している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持する把持装置に用いられる袋状の把持本体であって、
掌部と、
前記掌部の周囲に突出して設けられ、前記掌部を厚さ方向に変形させることにより前記掌部に向かって倒れる複数の指部と、
前記掌部及び前記複数の指部が設けられている一端側とは反対の他端側に設けられた開口部と
を備え、
前記開口部は、開口を画定する開口端と、前記開口の中心に向けて湾曲した内面とを有する把持本体。
【請求項2】
前記開口部は、前記開口端に向けて厚さが徐々に薄くなっている請求項1に記載の把持本体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の把持本体と、
底部と、前記底部の外縁に設けられた筒状部と、前記底部と前記筒状部とを接続する角部とを有し、前記開口部に挿入されるケースと
を備え、
前記角部は、前記ケースの中心に向けて湾曲した外面を有し、
前記内面と前記外面とが接触している把持装置。
【請求項4】
前記開口部に前記ケースが挿入されている状態において、前記内面の曲率は、前記外面の曲率と同一である請求項3に記載の把持装置。
【請求項5】
前記開口部から前記ケースが取り出されている状態において、前記内面の曲率は、前記外面の曲率よりも大きい請求項3または4に記載の把持装置。
【請求項6】
前記把持本体は、リブを有し、
前記ケースは、前記リブと係合する溝を有する請求項3~5のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項7】
前記リブの幅は、前記溝の幅よりも小さい請求項6に記載の把持装置。
【請求項8】
請求項3~7のいずれか1項に記載の把持装置を備えた、産業用ロボット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持本体、把持装置及び産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを把持することを目的とした把持装置として、袋状の把持本体を備えた把持装置が知られている(特許文献1)。特許文献1に係る把持装置の把持本体は、掌部と、掌部の周囲に突出して設けられた複数の指部とを有する。把持本体は、掌部及び指部が設けられている一端側とは逆の他端側に開口が設けられており、開口の周縁に形成されたフランジ部においてケースに固定され、ケースによって開口が密閉されている。ケースは、配管を介して真空発生装置と接続している。特許文献1に係る把持装置は、把持本体の内部が減圧されることにより、掌部が厚さ方向に変形し、複数の指部が掌部へ向かって倒れるように弾性変形する。これにより、複数の指部がワークの表面に接触し、ワークを把持する。例えば食品のような柔軟なワークを簡便に優しく把持することができる。
【0003】
特許文献2には、把持本体の外周にバンドが巻き付けられており、このバンドの締め付けにより把持本体とケースとをより確実に固定した把持装置が開示されている。特許文献2に係る把持装置は、把持本体とケースとをバンドで締め付ける構造を有することにより、掌部が厚さ方向に変形するのに伴って複数の指部が掌部へ向かって倒れるように弾性変形する際に、把持本体のケースからの脱落が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-062038号公報
【特許文献2】特開2019-150892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に係る把持装置は、バンドと把持本体との間に段差が形成されるため、この段差に液溜まりが発生し易い。液溜まりは、かびが繁殖する原因となるため、衛生上好ましくない。特許文献1に係る把持装置は、把持本体の開口の周縁に形成されたフランジ部とケースとの間に段差が形成されるため、特許文献2と同様に液溜まりが発生し易い構造となっている。
【0006】
本発明は、把持本体がケースから脱落せず、かつ、液溜まりの発生を防止することができる把持本体、把持装置及び産業用ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る把持本体は、ワークを把持する把持装置に用いられる袋状の把持本体であって、掌部と、前記掌部の周囲に突出して設けられ、前記掌部を厚さ方向に変形させることにより前記掌部に向かって倒れる複数の指部と、前記掌部及び前記複数の指部が設けられている一端側とは反対の他端側に設けられた開口部とを備え、前記開口部は、開口を画定する開口端と、前記開口の中心に向けて湾曲した内面とを有する。
【0008】
本発明に係る把持装置は、上記把持本体と、底部と、前記底部の外縁に設けられた筒状部と、前記底部と前記筒状部とを接続する角部とを有し、前記開口部に挿入されるケースとを備え、前記角部は、前記ケースの中心に向けて湾曲した外面を有し、前記内面と前記外面とが接触している。
【0009】
本発明に係る産業用ロボットは、上記把持装置を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、把持本体の開口部が開口の中心に向けて湾曲した内面を有し、ケースの角部がケースの中心に向けて湾曲した外面を有し、開口部の内面と角部の外面とが接触していることにより、把持本体がケースから脱落せず、かつ、液溜まりの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る把持装置を適用した産業用ロボットの例を示す模式図である。
図2】実施形態に係る把持装置を示す部分断面図である。
図3】把持本体の開口部からケースが取り出されている状態を示す斜視図である。
図4】把持本体の開口部からケースが取り出されている状態を示す断面図である。
図5】把持本体の開口部にケースを挿入している状態を示す断面図である。
図6】実施形態に係る把持装置の使用状態を示す部分断面図である。
図7】実施形態の変形例に係る把持装置を示す分解斜視図である。
図8】実施形態の変形例に係る把持装置を示す部分断面図である。
図9】実施形態の変形例に係る把持装置の使用状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。以下に示す実施形態及び変形例は、本発明の一例であり、本発明はこれに限られるものではない。実施形態及び変形例に関する以下の説明において、同様の構成については同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
1.実施形態
(全体構成)
図1に、本実施形態に係る把持装置10Aを適用した産業用ロボット12の構成を示す。産業用ロボット12は、直交ロボットであって、レール14と、レール14に沿って移動する移動体16と、移動体16に固定されたエアシリンダー18とを備える。レール14は、図中Y軸方向に移動可能に設けられている。
【0014】
エアシリンダー18は、シリンダーチューブ19と、シリンダーチューブ19に対し進退可能に設けられたピストンロッド20とを有する。シリンダーチューブ19には、配管21,22が設けられている。配管21,22を通じて、気体が給排気されることにより、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19に対し進退可能となっている。ピストンロッド20の先端には、アダプタプレート23に接続された脱着部24を介して把持装置10Aが設けられている。アダプタプレート23は、図示しないボルトによってピストンロッド20の先端に固定されている。
【0015】
産業用ロボット12は、水平な基台26上に置かれたワークWを、把持装置10Aで把持すると共に、X軸、Y軸、及びZ軸方向に移動することができる。
【0016】
図2に、把持装置10Aの部分断面図を示す。図2は、把持装置10Aを脱着部24から取り外した状態を示している。把持装置10Aは、脱着部24を介してピストンロッド20に取り付けられる袋状の把持本体28Aを備える。把持本体28Aは、気密性と弾性と柔軟性とを有する材料、例えば、天然ゴムや合成ゴム、各種エラストマーなどで形成することができる。把持本体28Aの材料は、かならずしも一種の材料である必要はなく、異種材料を組み合わせた複合材料でもよい。把持本体28AのJIS K6253のデュロメータ硬さ試験(タイプA)に準じて測定した硬度は、60~90程度であるのが好ましい。
【0017】
把持本体28Aは、掌部30と、掌部30の周囲に突出して設けられた複数の指部32と、掌部30及び複数の指部32が設けられている一端側とは反対の他端側に設けられた開口部34とを備える。掌部30は略円盤状をなしている。指部32は、掌部30と一体に形成されており、掌部30を挟むように2つ設けられている。指部32同士の間には、所定の間隔が形成されている。指部32は、掌部30を囲むように放射状に3つ以上設けられていてもよい。
【0018】
指部32の内側の面32Aは掌部30と一体に形成されている。指部32は中実である。指部32の材質は、掌部30と同じ材質、又は異なる材質でもよく、さらに均一である必要はなく、異種材料を組み合わせた複合材、フィラーなどの添加物を含んでもよい。
【0019】
開口部34は、ケース40Aによって密閉されている。把持本体28Aの内側面とケース40Aとによって内部空間29が形成されている。
【0020】
ケース40Aは、ステンレスなどの金属製、又はプラスチックなどの硬質の樹脂製であるのが好ましい。ケース40Aは、底部41と、底部41の外縁に設けられた筒状部42Aと、底部41と筒状部42Aとを接続する角部43とを有する。底部41は板状の部材であり、この例では円盤状に形成されている。筒状部42Aは、筒状の部材であり、この例では円筒状に形成されている。底部41と筒状部42Aと角部43とは一体に形成されている。底部41は、当該底部41の厚さ方向に貫通する貫通穴44を有している。貫通穴44には継手45が設けられている。継手45は、シール材46を介して底部41にねじ止めされている。継手45は、脱着部24とワンタッチで着脱自在に連結される。
【0021】
脱着部24は、ワンタッチ継手であり、一端がアダプタプレート23に接続され、他端が継手45に接続される。脱着部24は、継手45が差し込み方向に差し込まれると継手45と接続され、リリース部47が差し込み方向に押されることによって継手45との接続が解除される。脱着部24は、ワンタッチ継手に限らず、ねじによって継手45と接続される継手でもよい。
【0022】
脱着部24には給排気口48が設けられている。給排気口48は、不図示の配管の一端に接続される。この配管の他端は、例えば三方弁を介して、真空ポンプや真空エジェクタなどの真空発生器に接続される。この例では、真空発生器として真空ポンプが用いられる。三方弁は、真空ポート、給排気ポート及び大気解放ポートを有し、真空ポートが真空ポンプに、給排気ポートが把持装置10Aに、及び大気解放ポートが大気圧空間にそれぞれ接続される。給排気口48に接続される配管を通じて、気体が、内部空間29から真空ポンプへ、及び大気圧空間から内部空間29へ、流通する。脱着部24は、天面に設けられた図示しない取り付け穴を通じてボルトをアダプタプレート23にねじ込むことによって、アダプタプレート23に固定される。
【0023】
把持本体28Aの開口部34は、開口を画定する開口端50と、開口の中心に向けて湾曲した内面51とを有する。開口部34の内面51は凹状の湾曲面である。ケース40Aの角部43は、ケース40Aの中心に向けて湾曲した外面52を有する。角部43の外面52は凸状の湾曲面である。開口部34の内面51と角部43の外面52とは接触している。開口部34の凹状の内面51と角部43の凸状の外面52とが接触することにより、内面51と外面52との間に摩擦力が生じ、把持本体28Aの開口部34がケース40Aの角部43に引っ掛けられた状態となる。これにより、バンドを使用することなく、把持本体28Aをケース40Aに取り付けることができる。把持本体28Aの脱落防止の観点から、開口部34の内面51の全面と角部43の外面52の全面とが接触することが望ましい。開口部34の内面51の少なくとも一部と角部43の外面52の少なくとも一部とが接触していれば、把持本体28Aをケース40Aに取り付けることができる。
【0024】
開口部34は、開口部34の開口端50に向けて厚さが徐々に薄くなっている。すなわち、開口部34の肉厚は、把持本体28Aの一端側から他端側に向けて漸減している。これにより、把持装置10Aは、把持本体28Aの開口部34とケース40Aの底部41との間に段差を有しておらず、開口部34と底部41とが滑らかに接続されている。
【0025】
開口部34の内面51及び角部43の外面52は、いずれも丸みを帯びたフィレット部である。開口部34にケース40Aが挿入されている状態において、開口部34の内面51の曲率は、角部43の外面52の曲率と同一である。これにより、開口部34の内面51と角部43の外面52とは全面で接触し、内面51と外面52との接触による摩擦力が向上する。なお、ここでの「同一」とは、開口部34の内面51の曲率と角部43の外面52の曲率とが完全に同一である場合だけでなく、略同一である場合、例えば設計上の誤差等を考慮し、所定の誤差範囲(例えば数%程度の誤差範囲)である場合を含むものとする。
【0026】
図3に、把持本体28Aの開口部34からケース40Aが取り出されている状態の斜視図を示す。図4に、把持本体28Aの開口部34からケース40Aが取り出されている状態の断面図を示す。図5に、把持本体28Aの開口部34にケース40Aを挿入している状態の断面図を示す。
【0027】
開口部34からケース40Aが取り出されている状態において、開口部34の内面51の曲率は、角部43の外面52の曲率よりも大きい(図4参照)。開口部34にケース40Aを挿入する際に、開口部34の開口端50は、ケース40Aの筒状部42Aの外側面に沿って拡大する(図5参照)。開口部34にケース40Aが挿入されると、開口部34の開口端50は、ケース40Aの角部43の外面52に沿って縮小する。この結果、開口部34の内面51と角部43の外面52とが全面で接触し、上述したように開口部34の内面51の曲率が角部43の外面52の曲率と同一となる(図2参照)。開口部34からケース40Aが取り出されている状態で開口部34の内面51の曲率が角部43の外面52の曲率よりも大きいことにより、開口部34にケース40Aが挿入された状態ではケース40Aの角部43が把持本体28Aの開口部34により締め付けられる。
【0028】
(動作及び効果)
上記のように構成された把持装置10Aが設けられた産業用ロボット12の動作及び効果について説明する。なお、以下に示す条件は、一例である。図1に示すように、産業用ロボット12は、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19内に退避し、エアシリンダー18が収縮した状態を原点とする。把持装置10Aは、初期状態において把持本体28Aにおける内部空間29(図2参照)の圧力が大気圧である。すなわち、給排気口48と接続している三方弁は、給排気ポートが真空ポートから遮断され大気解放ポートと繋がっている状態である。
【0029】
産業用ロボット12は、移動体16がレール14に沿って移動することで、基台26上に置かれたワークWの鉛直線上に把持装置10Aを位置決めする。次いで、産業用ロボット12は、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19から進出することにより、指部32がワークWに到達するまで、エアシリンダー18を伸長させる。
【0030】
次いで三方弁は、給排気ポートが大気解放ポートから遮断され真空ポートと繋がった状態に切り替えられる。これにより把持装置10Aは、配管を通じて、把持本体28A内の気体を吸引し、把持本体28Aにおける内部空間29の圧力を例えば-0.03MPa以下に減圧する。
【0031】
図6に示すように、掌部30は、内部空間29へ吸い込まれるようにして厚さ方向(Z方向)に変形する。掌部30が厚さ方向へ変形するのに伴い、指部32の内側の面32Aが掌部30の中心へ引っ張られる。このとき、開口部34の内面51と角部43の外面52とが擦れ合いながら、開口部34の開口端50が把持本体28Aの他端側から一端側へ移動する。これにより、指部32は、掌部30へ向かって倒れるように弾性変形し、ワークWの表面に接触する。このように、把持装置10Aは、把持本体28A内を減圧することにより、指部32が閉じて、ワークWを把持する。
【0032】
次いで産業用ロボット12は、ピストンロッド20をシリンダーチューブ19内に退避させてエアシリンダー18を収縮することにより、ワークWを基台26から持ち上げることができる。さらに産業用ロボット12は、移動体16がレール14に沿って移動したり、レール14がY軸方向に移動したりすることにより、水平方向へワークWを自在に移動することができる。
【0033】
所望の場所へ移動した後、産業用ロボット12は、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19から進出することにより、ワークWが基台26に接触するまでエアシリンダー18を伸長させる。次いで、三方弁は、給排気ポートが真空ポートから遮断され大気解放ポートと繋がっている状態に切り替えられる。そうすると把持本体28Aの内部空間29へ大気解放ポートから配管を通じて気体が流入する。把持本体28Aの内部空間29の圧力が大気圧に戻るのに伴い、掌部30が押し出され元の状態に戻る。このとき、開口部34の内面51と角部43の外面52とが擦れ合いながら、開口部34の開口端50が把持本体28Aの一端側から他端側へ移動する。これにより、指部32が開いて、ワークWを手放す。
【0034】
次いで、産業用ロボット12は、ピストンロッド20をシリンダーチューブ19内に退避させてエアシリンダー18を収縮することにより、把持装置10AをワークWから切り離す。以上のようにして産業用ロボット12は、基台26上に置かれたワークWを、把持装置10Aで把持することにより、所望の位置へ移動することができる。
【0035】
把持装置10Aは、把持本体28Aの開口部34が、開口の中心に向けて湾曲した内面51を有し、ケース40Aの角部43が、ケース40Aの中心に向けて湾曲した外面52を有し、開口部34の内面51と角部43の外面52とが接触している。これにより、把持本体28Aの開口部34がケース40Aの角部43に引っ掛けられた状態となるので、バンドを使用せずに、把持本体28Aをケース40Aに取り付けることができる。また、バンドを使用しないので、液溜まりの原因となる段差がない。したがって、把持装置10Aは、把持本体28Aがケース40Aから脱落せず、かつ、液溜まりの発生が防止されている。
【0036】
把持装置10Aは、バンドを使用しないことにより、部品点数を減らすことができ、かつ、バンドを締め付けるための専用の工具が不要となるので、製造コストが抑えられる。
【0037】
把持装置10Aは、開口部34が開口端50に向けて厚さが徐々に薄くなっていることにより、把持本体28Aの開口部34とケース40Aの底部41とが滑らかに接続されている。把持装置10Aは、把持本体28Aとケース40Aとの間に段差を有しないので、液溜まりの発生がより確実に防止されている。
【0038】
開口部34にケース40Aが挿入されている状態において、開口部34の内面51の曲率は、角部43の外面52の曲率と同一である。把持装置10Aは、開口部34の内面51と角部43の外面52とが全面で接触することにより、開口部34の内面51と角部43の外面52との間の摩擦力が向上し、把持本体28Aがケース40Aから脱落することがより確実に防止されている。
【0039】
開口部34からケース40Aが取り出されている状態においては、開口部34の内面51の曲率は、角部43の外面52の曲率よりも大きい。開口部34にケース40Aを挿入すると、ケース40Aの角部43が把持本体28Aの開口部34により締め付けられ、上述したように開口部34の内面51の曲率が角部43の外面52の曲率と同一となる。このように、把持装置10Aは、ケース40Aの角部43が把持本体28Aの開口部34により締め付けられることにより、把持本体28Aがケース40Aから脱落することがより確実に防止されている。
【0040】
2.変形例
図7に、上記実施形態の変形例に係る把持装置10Bの分解斜視図を示す。図7では、把持装置10Bを構成する把持本体28Bの一部を切り欠いて示している。
【0041】
図7に示すように、把持装置10Bは、把持本体28Bがリブ60を有し、ケース40Bがリブ60と係合する溝62を有している点において、上記実施形態に係る把持装置10A(図3参照)と相違する。把持装置10Bは、リブ60と溝62とが係合することにより、ケース40Bに対する把持本体28Bの位置決めが行われている。
【0042】
リブ60は、把持本体28Bの内側面に設けられている。リブ60は、把持本体28Bの周方向に沿って環状に形成されている。リブ60の形状は、この例では断面半円形状であるが、適宜選択することができ、例えば、断面半楕円形状、断面三角形状、断面矩形状、断面台形状などでもよい。
【0043】
溝62は、ケース40Bを構成する筒状部42Bの外側面に設けられている。溝62は、筒状部42Bの周方向に沿って環状に形成されている。溝62の形状は、この例では断面矩形状であるが、適宜選択することができ、例えば、断面角丸矩形状、断面半円形状、断面半楕円形状、断面三角形状、断面台形状などでもよい。
【0044】
図8に示すように、リブ60の幅W1は、溝62の幅W2よりも小さい。リブ60の幅W1は、例えば溝62の幅W2の1/2以下としてもよい。この例では、初期状態において、溝62の幅方向における中央位置にリブ60が配置されている。リブ60の幅W1が溝62の幅W2よりも小さいことにより、溝62内でリブ60の移動が許容される。
【0045】
図9に示すように、ワークを把持する動作が行われる場合、すなわち、掌部30が厚さ方向(Z方向)へ変形するのに伴い、指部32が掌部30へ向かって倒れるように弾性変形する場合は、把持本体28Bの開口部34の開口端50が把持本体28Bの他端側から一端側へ移動するとともに、リブ60が溝62内を他端側から一端側へ移動する。
【0046】
ワークを手放す動作が行われる場合、すなわち、掌部30及び指部32が元の状態に戻る場合は、把持本体28Bの開口部34の開口端50が把持本体28Bの一端側から他端側へ移動するとともに、リブ60が溝62内を一端側から他端側へ移動して元の位置に戻る(図8参照)。
【0047】
把持装置10Bは、リブ60の幅W1が溝62の幅W2よりも小さいことにより、溝62内でリブ60が移動し、滑らかな動作が可能である。
【0048】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0049】
例えば、給排気口48は、切換弁を介して、正圧源と三方弁とに接続してもよい。正圧源は、内部空間29に対し正圧を供給するポンプなどで構成される。給排気口48が正圧源と接続している場合は、内部空間29を加圧することができる。掌部30は、正圧源により内部空間29が加圧されることにより、内部空間29側から大気圧空間側へ押し出されるようにして厚さ方向(Z方向と反対方向)に変形する。指部32は、掌部30が厚さ方向へ変形するのに伴い、掌部30から離れる方向へ倒れるように弾性変形する。すなわち、指部32を開くことができる。このとき、開口部34の内面51と角部43の外面52とが擦れ合いながら、開口部34の開口端50が把持本体の一端側から他端側へ移動する。内部空間29を加圧することにより、指部32をワークの大きさに合わせて開くことができ、汎用性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0050】
10A,10B 把持装置
12 産業用ロボット
28A,28B 把持本体
30 掌部
32 指部
34 開口部
40A,40B ケース
41 底部
42A,42B 筒状部
43 角部
50 開口端
51 内面
52 外面
60 リブ
62 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9