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特開2023-68965くつずりの構造及びくつずりの施工方法並びにくつずり用固定部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068965
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】くつずりの構造及びくつずりの施工方法並びにくつずり用固定部材
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/70 20060101AFI20230511BHJP
   E06B 1/56 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
E06B1/70 F
E06B1/56 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180461
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】山上 重雄
(72)【発明者】
【氏名】野口 茂
(72)【発明者】
【氏名】廣島 光彰
【テーマコード(参考)】
2E011
【Fターム(参考)】
2E011JA03
2E011KA02
2E011KC03
2E011KD26
2E011KD28
2E011KE04
2E011KE06
2E011MA10
(57)【要約】
【課題】くつずりの位置決めを火気を用いず実施でき、躯体の誤差に柔軟に対応できるくつずりの構造及びくつずりの施工方法並びにくつずり用固定部材を提供する。
【解決手段】くつずり本体11と、くつずり本体11に設けられるくつずり支持部13と、床面15をはつって設けられくつずり本体11が内側に配置される溝17と、くつずり本体11の上面を表出状態で溝17に充填される充填剤と、を有するくつずりの構造であって、溝17の底面25である不陸面とくつずり支持部13との間に配置され、その間隔に応じ高さが増減され、不陸面25からくつずり支持部13を支えるスペーサ21を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
くつずり本体と、前記くつずり本体に設けられるくつずり支持部と、床面をはつって設けられ前記くつずり本体が内側に配置される溝と、前記くつずり本体の上面を表出状態で前記溝に充填される充填剤と、を有するくつずりの構造であって、
前記溝の底面と前記くつずり支持部との間に配置され、その間隔に応じ高さが増減され、前記底面から前記くつずり支持部を支えるスペーサを備えることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項2】
請求項1に記載のくつずりの構造であって、
前記スペーサは、板材で構成され、前記くつずり支持部と前記底面との間隔に応じ組み合わせて増減され、前記間隔を埋めることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項3】
請求項2に記載のくつずりの構造であって、
前記くつずり支持部と前記板材とを貫通して、前記底面に打ち込まれる締結部材を備えることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項4】
請求項1に記載のくつずりの構造であって、
前記スペーサは、前記くつずり支持部に螺合されて、回転により昇降する下端部が前記底面に支持されることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項5】
請求項4に記載のくつずりの構造であって、
前記スペーサは、雄ねじと雌ねじとの組み合わせで構成されることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項6】
請求項5に記載のくつずりの構造であって、
前記スペーサは、くつずり支持部に固定されて垂下する前記雄ねじと、この雄ねじに螺合する前記雌ねじを有し、前記下端部が前記底面に支持される当接先端部と、で構成され、
前記当接先端部には、前記下端部から延出して締結部材により前記底面に固定される固定片が設けられることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項7】
請求項5に記載のくつずりの構造であって、
前記スペーサは、前記くつずり本体の側部に延出して形成される前記くつずり支持部と、このくつずり支持部に形成される前記雌ねじと、この雌ねじに螺合する雄ねじとで、構成され、回転により昇降する前記雄ねじの前記下端部が前記底面に支持されることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項8】
請求項7に記載のくつずりの構造であって、
固定部材をさらに備え、
前記固定部材は、前記雄ねじの上部に当接する押さえ部と、前記底面に当接する固定片と、を有したハット型部材により構成され、前記固定片が、締結部材により前記底面に固定されることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項9】
請求項7に記載のくつずりの構造であって、
前記雄ねじは、貫通穴を同軸で有する中空状に形成され、前記貫通穴に挿通される締結部材が前記底面に打ち込まれて固定されることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項10】
請求項7に記載のくつずりの構造であって、
前記くつずり支持部には、前記雌ねじと、透孔とが並設して設けられ、
前記雌ねじには、前記雄ねじが螺合されて前記スペーサを構成し、
前記透孔には、締結部材が挿通されて前記底面に固定されることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項11】
請求項7に記載のくつずりの構造であって、
前記底面に打ち込まれる締結部材と、
前記雌ねじに螺合する前記雄ねじの前記くつずり支持部よりも上側と前記締結部材とに掛け渡されて緊締され、前記くつずり支持部を前記底面に固定する結束線材と、を具備することを特徴とするくつずりの構造。
【請求項12】
床面をはつって溝を形成するはつり工程と、
前記溝の底面と、前記くつずり本体に設けられるくつずり支持部との間に、その間隔に応じ高さを増減させたスペーサを配置させて、前記底面から前記くつずり支持部を支える隙間埋め工程と、
前記スペーサを締結部材により前記底面に固定するスペーサ固定工程と、
前記くつずり本体の上面を表出状態で前記溝に充填される充填材に、前記上面を除く前記くつずり本体と、前記スペーサとを埋入する充填剤充填工程と、
を含むことを特徴とするくつずりの施工方法。
【請求項13】
くつずり本体に固定されて、床面をはつって設けられる溝の底面に前記くつずり本体を固定するくつずり用固定部材であって、
前記くつずり本体に固定されて垂下する雄ねじと、
前記雄ねじに螺合する雌ねじを備え下端部が前記底面に支持される当接先端部と、
前記当接先端部の前記下端部から延出する固定片を前記溝の底面に固定する締結部材と、
を具備することを特徴とするくつずり用固定部材。
【請求項14】
くつずり本体に固定されて、床面をはつって設けられる溝の底面に前記くつずり本体を固定するくつずり用固定部材であって、
前記くつずり本体の側部に延出して形成される前記くつずり支持部と、このくつずり支持部に形成される雌ねじと、この雌ねじに螺合する雄ねじと、固定部材と、を備え、
前記固定部材は、回転により昇降する下端部が前記底面に支持された前記雄ねじの上部に当接する押さえ部と、前記底面に当接する固定片と、を有した部材とにより構成され、前記固定片が、締結部材により前記底面に固定されることを特徴とするくつずり用固定部材。
【請求項15】
くつずり本体に固定されて、床面をはつって設けられる溝の底面に前記くつずり本体を固定するくつずり用固定部材であって、
前記くつずり本体の側部に延出して形成される前記くつずり支持部と、このくつずり支持部に形成される雌ねじと、この雌ねじに螺合する雄ねじと、を備え、
前記雄ねじは、貫通穴を同軸で有する中空状に形成され、前記貫通穴に挿通される締結部材が前記底面に打ち込まれて固定されることを特徴とするくつずり用固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、くつずりの構造及びくつずりの施工方法並びにくつずり用固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
国土交通省の建築工事標準仕様書によれば、コンクリート系下地に取り付ける鋼製建具のドア枠には、モルタルを充填するよう指示がされている。また、枠を建物躯体に固定してからではモルタルが充填できない場合には、予めモルタル充填を行ってから取付けるよう求めており、多くの建築現場で実施されている。特に建具を構成する沓摺は、床面と連続する部材となることから、沓摺の内部に空隙の無いようモルタルを充填しなければならない。例えば、特許文献1に開示される沓摺は、床面に、上面が開口される断面U字状の下地枠の底面を直接固定するとともに、この下地枠内にモルタルを充填し、モルタルの上面を、下面が開口されるコ字形状の沓摺本体により上方から覆い、下地枠の側面に沓摺本体の側面を固定してなる。これにより、沓摺内部にはモルタルが充填された構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-256934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鋼製建具のくつずりは、それが納まる部分のコンクリート床をはつり取り、床とくつずりを高さレベル調整した位置で固定するため、溶接による固定が一般的である。ところが、溶接による固定は、工具、器具、ボンベなどの搬入、搬出、溶接時の養生等の作業が大掛かりとなる問題があった。このため、無火器によりくつずりを取り付けたい要請があるが、床面をはつって設けられる溝は、ラフな躯体の仕上がり状態、所謂ガタガタな凹凸面であることから、通常の平たい鉄板を打ちつけるようなくつずりの構造であると、水平なレベル出しができない問題があった。すなわち、凹凸面(不陸面)に対してどのように水平を保たせてくつずりを保持するのかが課題となっていた。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、溝の底面である不陸面に対してくつずりの位置決めを火気を用いず実施でき、不陸面の誤差や凹凸に柔軟に対応できるくつずりの構造及びくつずりの施工方法並びにくつずり用固定部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のくつずりの構造は、くつずり本体11と、前記くつずり本体11に設けられるくつずり支持部13と、床面15をはつって設けられ前記くつずり本体11が内側に配置される溝17と、前記くつずり本体11の上面を表出状態で前記溝17に充填される充填剤19と、を有するくつずりの構造であって、
前記溝17の底面25と前記くつずり支持部13との間に配置され、その間隔に応じ高さが増減され、前記底面25から前記くつずり支持部13を支えるスペーサ21を備えることを特徴とする。
【0007】
このくつずりの構造では、くつずり本体11が、くつずり支持部13を有する。くつずり支持部13は、溝17の底面25に対向する。くつずり支持部13と、溝17の底面25との間には、スペーサ21が配置される。
ここで、溝17において、側面は、カッター(コンクリートカッター)の刃で削られるので、比較的滑らかな面になる。一方、溝17の底面25は、たがねなどにより削り取っていくような作業(はつり作業)で作られる。このため、はつった底面25は凹凸の多いガタガタな面となる。つまり、底面25は、不陸面となっている。普通の平たい鉄板を打ちつけるようなくつずりの構造であると、水平なレベル出しができない。
そこで、くつずりの構造は、くつずり支持部13と不陸面25との間に、スペーサ21が配置される。スペーサ21は、くつずり支持部13に対向する底面である不陸面25の箇所との間隔に応じ、高さの増減が可能となる。スペーサ21としては、螺合させた雌ねじ29と雄ねじ27により、軸方向の距離を可変自在とするねじ構造や、板厚方向の厚みや、枚数を増減可能に設けられる板材55が挙げられる。
スペーサ21は、例えばねじ構造の場合、くつずり支持部13に対向する不陸面25の箇所が高ければ(深ければ)、ねじ込む。浅ければねじを引き抜く方向に、というふうに出具合が調節(アジャスト)される。これにより、くつずり本体11は、水平になるように、不陸面25の任意の箇所との間隔がスペーサ21により埋められて、水平状態となって不陸面25に支持され、つまり沈み込まないようになる。
その結果、くつずりの位置決めを溶接を行わずに、無火気で施工でき、躯体の誤差に柔軟に対応できる。
【0008】
本発明の請求項2記載のくつずりの構造は、請求項1に記載のくつずりの構造であって、
前記スペーサ21は、板材55で構成され、前記くつずり支持部13と前記底面25との間隔に応じ組み合わせて増減され、前記間隔を埋めることを特徴とする。
【0009】
このくつずりの構造では、スペーサ21が、板材55により構成される。すなわち、板材55は、不陸を調整するためのライナーとなる。板材55は、例えば間隔の距離よりも薄いものを何枚か重ねて、差し込む。この場合のスペーサ21では、くつずり支持部13から底面である不陸面25までの距離が大きければ(深ければ)、板材55が沢山入れられ(挟まれ)、浅ければ少なめに入れられる。これにより、くつずり本体11は、水平になるように、不陸面25の任意の箇所との間隔がスペーサ21により埋められて、水平状態となって不陸面25に支持され、つまり沈み込まないようになる。
【0010】
本発明の請求項3記載のくつずりの構造は、請求項2に記載のくつずりの構造であって、
前記くつずり支持部13と前記板材55とを貫通して、前記底面25に打ち込まれる締結部材39を備えることを特徴とする。
【0011】
このくつずりの構造では、締結部材39が、くつずり支持部13と板材55とを貫通して、底面である不陸面25に打ち込まれる。すなわち、くつずり本体11は、くつずり支持部13と不陸面25との間に、間隔に応じた板材55が配置され、沈み込みが抑制される。沈み込みが抑制されたくつずり本体11は、くつずり支持部13と板材55とを貫通した締結部材39が不陸面25に打ち込まれることにより、くつずり支持部13と板材55とが一体的に不陸面25に固定される。これにより、くつずり本体11は、不陸面25からの浮上も規制される。
【0012】
本発明の請求項4記載のくつずりの構造は、請求項1に記載のくつずりの構造であって、
前記スペーサ21は、前記くつずり支持部13に螺合されて、回転により昇降する下端部が前記底面25に支持されることを特徴とする。
【0013】
このくつずりの構造では、スペーサ21が、くつずり支持部13に螺合される。例えばくつずり支持部13には、雌ねじが形成され、この雌ねじに雄ねじが螺合されて、雄ねじが垂下し配置される。雌ねじに対し雄ねじが相対回転することで、軸方向の距離が増減されるので、くつずり支持部13と底面である不陸面25の任意の箇所との間隔を埋めることができる。これにより、くつずり本体11は、沈み込みが抑制される。
【0014】
本発明の請求項5記載のくつずりの構造は、請求項4に記載のくつずりの構造であって、
前記スペーサ21は、雄ねじ27と雌ねじ29との組み合わせで構成されることを特徴とする。
【0015】
このくつずりの構造では、スペーサ21が、雄ねじ27と雌ねじ29との組み合わせとなる。この組合せとは、くつずり本体11に、雌ねじ29が形成され、くつずり本体11の雌ねじ29に雄ねじ27が螺合されるねじ構造、或いは、くつずり本体11に雄ねじ27が垂下して固定され、その雄ねじ27に、雌ねじ29を有した支持体(当接先端部59)が螺合されるねじ構造を含む。これらのねじ構造では、雄ねじ27と雌ねじ29とが相対回転することにより、軸方向の距離が増減されるので、くつずり支持部13と底面である不陸面25の任意の箇所との間隔を埋めることができる。これにより、くつずり本体11は、沈み込みが抑制される。
【0016】
本発明の請求項6記載のくつずりの構造は、請求項5に記載のくつずりの構造であって、
前記スペーサ21は、くつずり支持部13に固定されて垂下する前記雄ねじ27と、この雄ねじ27に螺合する前記雌ねじ29を有し、前記下端部が前記底面25に支持される当接先端部59と、で構成され、
前記当接先端部59には、前記下端部から延出して締結部材39により前記底面25に固定される固定片35が設けられることを特徴とする。
【0017】
このくつずりの構造では、くつずり支持部13に、雄ねじ27が固定されて垂下する。雄ねじ27の垂下長は、くつずり支持部13から底面である不陸面25までの距離も短く設定される。この雄ねじ27には、当接先端部59に形成されている雌ねじ29が螺合される。つまり、当接先端部59は、回転されることにより、雄ねじ27の先端と不陸面25との間で、下端部が昇降可能となる。
当接先端部59が回転され、下端部が不陸面25に着地すれば、くつずり支持部13が、当接先端部59と雄ねじ27とを介して不陸面25に支持されることになる。つまり、くつずり本体11は、沈み込みが規制される。
当接先端部59には、下端部から、不陸面25に沿う方向で固定片35が延出する。この固定片35は、下端部が不陸面25に接した状態で、締結部材39により不陸面25に固定される。これにより、くつずり本体11は、不陸面25からの浮上も規制される。
【0018】
本発明の請求項7記載のくつずりの構造は、請求項5に記載のくつずりの構造であって、
前記スペーサ21は、前記くつずり本体11の側部に延出して形成される前記くつずり支持部13と、このくつずり支持部13に形成される前記雌ねじ29と、この雌ねじ29に螺合する雄ねじ27とで、構成され、回転により昇降する前記雄ねじ27の前記下端部が前記底面25に支持されることを特徴とする。
【0019】
このくつずりの構造では、スペーサ21が、くつずり支持部13に形成される雌ねじ29と、この雌ねじ29に螺合する雄ねじ27とで、構成される。すなわち、くつずり本体11と底面である不陸面25との間には、軸方向の距離を可変自在とするねじ構造が設けられる。
スペーサ21は、くつずり支持部13に対向する不陸面25の箇所が高ければ(深ければ)、雄ねじ27がねじ込まれる。浅ければ雄ねじ27が引き抜く方向に回転される。雄ねじ27は、不陸面25に向かう方向の出具合が調整される。これにより、くつずり本体11は、水平になるように、不陸面25の任意の箇所との間隔が雄ねじ27により埋められて、水平状態となって不陸面25に支持され、つまり沈み込まないようになる。
【0020】
本発明の請求項8記載のくつずりの構造は、請求項7に記載のくつずりの構造であって、
固定部材31をさらに備え、
前記固定部材31は、前記雄ねじ27の上部に当接する押さえ部33と、前記底面25に当接する固定片35と、を有したハット型部材37により構成され、前記固定片35が、締結部材39により前記底面25に固定されることを特徴とする。
【0021】
このくつずりの構造では、底面である不陸面25に向かう方向の出具合が調整され、不陸面25の任意の箇所との間隔を埋めた雄ねじ27に、ハット型部材37が被せられる。ハット型部材37は、雄ねじ27の上部に当接する押さえ部33と、不陸面25に当接する固定片35とを有する。
雄ねじ27の下端部を不陸面25に支持したスペーサ21は、沈み込みは規制されるが、不陸面25に乗っているだけとなる。スペーサ21は、このままでは、溝17に、充填剤19を詰めるときに、圧力等が掛かって、くつずり本体11が持ち上がってしまうことがあり得る。
そこで、スペーサ21は、雄ねじ27の上部がハット型部材37の押さえ部33に当接した状態で、ハット型部材37の下部に形成された固定片35が締結部材39により不陸面25に固定される。これにより、スペーサ21は、雄ねじ27が、不陸面25に押さえ込まれた状態となり、雄ねじ27自身が持ち上がらないようになり、浮き上がりも規制される。
【0022】
本発明の請求項9記載のくつずりの構造は、請求項7に記載のくつずりの構造であって、
前記雄ねじ43は、貫通穴45を同軸で有する中空状に形成され、前記貫通穴45に挿通される締結部材39が前記底面25に打ち込まれて固定されることを特徴とする。
【0023】
このくつずりの構造では、スペーサ21が、くつずり支持部13に形成される雌ねじ29と、この雌ねじ29に螺合する雄ねじ43とで、構成される。すなわち、くつずり本体11と底面である不陸面25との間に、軸方向の距離を可変自在とするねじ構造が設けられる。
雄ねじ43は、不陸面25に向かう方向の出具合がアジャストされる。これにより、くつずり本体11は、水平になるように、不陸面25の任意の箇所との間隔が雄ねじ43により埋められて、水平状態となって不陸面25に支持され、つまり沈み込まないようになる。
これに加え、雄ねじ43は、中空状に形成されることにより、貫通穴45に締結部材39が挿通可能となっている。雄ねじ43は、貫通穴45を使って、浮き上がり防止のための締結部材39(コンクリートねじ、またはコンクリート釘)を打ち込んで、不陸面25に固定することができる。これにより、スペーサ21は、雄ねじ27自身が持ち上がらないようになり、浮き上がりも規制される。
【0024】
本発明の請求項10記載のくつずりの構造は、請求項7に記載のくつずりの構造であって、
前記くつずり支持部13には、前記雌ねじ29と、透孔53とが並設して設けられ、
前記雌ねじ29には、前記雄ねじ27が螺合されて前記スペーサ21を構成し、
前記透孔53には、締結部材39が挿通されて前記底面25に固定されることを特徴とする。
【0025】
このくつずりの構造では、くつずり支持部13に、雌ねじ29と、透孔53とが並設されている。くつずり支持部13の雌ねじ29に螺合される雄ねじ27は、底面である不陸面25に向かう方向の出具合がアジャストされる。これにより、くつずり本体11は、水平になるように、不陸面25の任意の箇所との間隔が雄ねじ27により埋められて、水平状態となって不陸面25に支持される(沈み込まない)。
また、くつずり支持部13の透孔53に挿通される締結部材39は、不陸面25に打ち込まれて固定される。これにより、くつずり本体11は、くつずり支持部13が締結部材39により持ち上がらないようになり、浮き上がりも規制される。
【0026】
本発明の請求項11記載のくつずりの構造は、請求項7に記載のくつずりの構造であって、
前記底面25に打ち込まれる締結部材39と、
前記雌ねじ29に螺合する前記雄ねじ27の前記くつずり支持部13よりも上側と前記締結部材39とに掛け渡されて緊締され、前記くつずり支持部13を前記底面25に固定する結束線材57と、
を具備することを特徴とする。
【0027】
このくつずりの構造では、くつずり支持部13に形成された雌ねじ29に、雄ねじ27が螺合される。雄ねじ27は、底面である不陸面25に向かう方向の出具合がアジャストされる。これにより、くつずり本体11は、水平になるように、不陸面25の任意の箇所との間隔が雄ねじ27により埋められて、水平状態となって不陸面25に支持され、つまり沈み込まない。
これに加え、不陸面25には、締結部材39が打ち込まれる。締結部材39は、完全に打ち込まれず、くつずり支持部13の下で、頭部47が僅かに浮いた状態に打ち込まれる。この締結部材39の頭部47と、くつずり支持部13に螺合する雄ねじ27のくつずり支持部13よりも上側とは、結束線材57で結わかれる(括られる)。くつずり支持部13は、結束線材57が締められることにより、下方向に引っ張られる。つまり、くつずり支持部13が、不陸面25に押しつけられる方向となる。これにより、くつずり本体11は、くつずり支持部13が結束線材57により持ち上がらないように保持され、浮き上がりも規制される。
【0028】
本発明の請求項12記載のくつずりの施工方法は、床面15をはつって溝17を形成するはつり工程と、
前記溝17の底面25と、前記くつずり本体11に設けられるくつずり支持部13との間に、その間隔に応じ高さを増減させたスペーサ21を配置させて、前記底面25から前記くつずり支持部13を支える隙間埋め工程と、
前記スペーサ21を締結部材39により前記底面25に固定するスペーサ固定工程と、
前記くつずり本体11の上面を表出状態で前記溝17に充填される充填剤19に、前記上面を除く前記くつずり本体11と、前記スペーサ21とを埋入する充填剤充填工程と、
を含むことを特徴とする。
【0029】
このくつずりの施工方法では、床面15をはつって形成された溝17に、くつずり本体11が位置決めされて納められる。くつずり本体11には、複数のくつずり支持部13が設けられている。それぞれのくつずり支持部13と溝17の底面25である不陸面は、間隔が一定とならない。それぞれのくつずり支持部13と不陸面25との間には、スペーサ21が配置されている。スペーサ21は、それぞれのくつずり支持部13と不陸面25との間隔に応じ、高さが増減される。これにより、くつずり本体11は、隙間埋め工程により、くつずり支持部13と不陸面25との間隔がスペーサ21により埋められ、水平となって不陸面25に支持され、つまり沈み込みが規制される。
沈み込みを規制して不陸面25にくつずり支持部13を支持しているスペーサ21は、スペーサ固定工程により、締結部材39が用いられて不陸面25にさらに固定される。これにより、スペーサ21は、沈み込みに加えて、浮き上がりも規制される。
この状態で、溝17には、充填剤19が充填される。この際、充填剤19である例えばモルタルは、人の手で押し込むように入れられ、奥に入るように手で押し込むので、ある程度の圧力がスペーサ21に加わる。くつずりの施工方法では、この充填剤充填工程に先立ち、隙間埋め工程、スペーサ固定工程により、くつずり本体11の沈み込み、浮き上がりが規制されているので、くつずり本体11が沈み込むことも、浮き上がることもなく、位置保持される。
くつずり本体11は、充填剤19が硬化することにより、埋入されたスペーサ21がコンクリートと一体となって、位置決めされた状態のまま、床面15に固定される。
【0030】
本発明の請求項13記載のくつずり用固定部材65は、くつずり本体11に固定されて、床面15をはつって設けられる溝17の底面25に前記くつずり本体11を固定するくつずり用固定部材65であって、
前記くつずり本体11に固定されて垂下する雄ねじ27と、
前記雄ねじ27に螺合する雌ねじ29を備え下端部が前記底面25に支持される当接先端部59と、
前記当接先端部59の前記下端部から延出する固定片35を前記溝17の底面25に固定する締結部材39と、
を具備することを特徴とする。
【0031】
このくつずり用固定部材65では、請求項6の構成と同じ作用を得ることができる。
【0032】
本発明の請求項14記載のくつずり用固定部材41は、くつずり本体11に固定されて、床面15をはつって設けられる溝17の底面25に前記くつずり本体11を固定するくつずり用固定部材41であって、
前記くつずり本体11の側部に延出して形成される前記くつずり支持部13と、このくつずり支持部13に形成される雌ねじ29と、この雌ねじ29に螺合する雄ねじ27と、固定部材31と、を備え、
前記固定部材31は、回転により昇降する下端部が前記底面25に支持された前記雄ねじ27の上部に当接する押さえ部33と、前記底面25に当接する固定片35と、を有した部材37とにより構成され、前記固定片35が、締結部材39により前記底面25に固定されることを特徴とする。
【0033】
このくつずり用固定部材41では、請求項8の構成と同じ作用を得ることができる。
【0034】
本発明の請求項15記載のくつずり用固定部材51は、くつずり本体11に固定されて、床面15をはつって設けられる溝17の底面25に前記くつずり本体11を固定するくつずり用固定部材51であって、
前記くつずり本体11の側部に延出して形成される前記くつずり支持部13と、このくつずり支持部13に形成される雌ねじ29と、この雌ねじ29に螺合する雄ねじ43と、を備え、
前記雄ねじ43は、貫通穴45を同軸で有する中空状に形成され、前記貫通穴45に挿通される締結部材39が前記底面25に打ち込まれて固定されることを特徴とする。
【0035】
このくつずり用固定部材51では、請求項9の構成と同じ作用を得ることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る請求項1記載のくつずりの構造によれば、くつずりの位置決めを溶接作業など行わず、すなわち火器を用いず施工することができ、溝の底面が不陸面であっても、躯体側の誤差に柔軟に対応でき、くつずり本体を溝に沈み込ませることなく水平に設置することができる。
【0037】
本発明に係る請求項2記載のくつずりの構造によれば、板材の枚数や厚みを増減させてくつずりと溝の底面との間隔を安価かつ容易に埋めることができる。
【0038】
本発明に係る請求項3記載のくつずりの構造によれば、板材を配置させて間隔の調整ができたくつずり支持部を、板材とともに締結部材で躯体側に固定でき、くつずり本体の浮き上がりも抑制でき、すなわち仮固定を行うことができる。
【0039】
本発明に係る請求項4記載のくつずりの構造によれば、くつずり本体に螺合されていることで、回転を軸方向の長さ調整距離に変換し、間隔の調整を容易かつ高精度に実現できる。
【0040】
本発明に係る請求項5記載のくつずりの構造によれば、雄ねじと雌ねじの螺合構造により、回転を軸方向の長さ調整距離に変換し、間隔の調整を容易かつ高精度に実現できる。
【0041】
本発明に係る請求項6記載のくつずりの構造によれば、くつずり支持部に固定されて垂下する雄ねじに対し、雌ねじで螺合する当接先端部を回転させて間隔の調整ができ、調整後には、当接先端部の固定片を締結部材により躯体に固定して、浮き上がりも抑制できる。
【0042】
本発明に係る請求項7記載のくつずりの構造によれば、くつずり支持部の雌ねじに螺合する雄ねじを回転することにより、雄ねじが昇降し、その下端部を底面である不陸面に支持することで、間隔の調整を容易かつ高精度に実現できる。
【0043】
本発明に係る請求項8記載のくつずりの構造によれば、雄ねじの下端部を底面に支持して、沈み込みを防止する雄ねじの上部を、ハット型部材により底面に押さえ込んで固定することで、くつずり本体の浮き上がりも抑制できる。
【0044】
本発明に係る請求項9記載のくつずりの構造によれば、雄ねじの下端部を底面に支持して、沈み込みを防止する雄ねじが、中空状に形成され、その貫通穴に挿通された締結部材が底面に打ち込まれることで、くつずり本体の浮き上がりも抑制できる。
【0045】
本発明に係る請求項10記載のくつずりの構造によれば、くつずり支持部の雌ねじに螺合する雄ねじを回転することにより、雄ねじの下端部を底面に支持して、沈み込みを防止できるとともに、くつずり支持部の透孔に挿通した締結部材を底面に固定することで、くつずり本体の浮き上がりも抑制できる。
【0046】
本発明に係る請求項11記載のくつずりの構造によれば、くつずり支持部の雌ねじに螺合する雄ねじを回転することにより、雄ねじの下端部を底面に支持して、沈み込みを防止できるとともに、底面に固定する結束線材と雄ねじとに掛け渡した結束線材で緊締して、くつずり本体の浮き上がりも抑制できる。
【0047】
本発明に係る請求項12記載のくつずりの施工方法によれば、くつずり本体と底面との間に、スペーサを配置する隙間埋め工程と、スペーサを締結部材により底面に固定するスペーサ固定工程とを含むので、くつずりの位置決め及び固定を無火気で実施でき、躯体の誤差に柔軟に対応できる。
【0048】
本発明に係る請求項13記載のくつずり用固定部材によれば、請求項6と同じ効果を得ることができる。
【0049】
本発明に係る請求項14記載のくつずり用固定部材によれば、請求項8と同じ効果を得ることができる。
【0050】
本発明に係る請求項15記載のくつずり用固定部材によれば、請求項9と同じ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】第1実施形態に係るくつずりの構造を表す斜視図である。
図2図1に示したくつずりの構造の分解斜視図である。
図3図1に示したくつずりの構造の要部縦断面図である。
図4図3のA-A断面図である。
図5図1に示したくつずりの構造の隙間埋め工程の手順説明図である。
図6図1に示したくつずりの構造のスペーサ固定工程の手順説明図である。
図7】第2実施形態に係るくつずりの構造を表す縦断面図である。
図8図7に示したスペーサ及び締結部材の分解斜視図である。
図9図7に示したくつずり支持部の変形例を表す縦断面図である。
図10図8に示した雄ねじの変形例を表す分解斜視図である。
図11】第2実施形態に係るくつずりの構造の変形例1を表す斜視図である。
図12】第2実施形態に係るくつずりの構造の変形例2を表す縦断面図である。
図13】第2実施形態の変形例2と第1実施形態とを組み合わせた変形例を表す縦断面図である。
図14】第3実施形態に係るくつずりの構造を表す縦断面図である。
図15図14の平面図である。
図16】第4実施形態に係るくつずりの構造を表す側断面図である。
図17図16のB-B矢視図である。
図18図16に示したくつずりの構造の溝幅が小さい場合の縦断面図である。
図19図16に示したハット型部材の変形例を表す縦断面図である。
図20図19のC-C矢視図である。
図21図16に示したスペーサの変形例を表す縦断面図である。
図22図21に示したスペーサの変形例を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
先ず、第1実施形態に係るくつずりの構造を説明する。
【0053】
図1は、第1実施形態に係るくつずりの構造を表す斜視図である。
本実施形態に係るくつずりの構造は、長尺なくつずり本体11と、くつずり本体11に設けられるくつずり支持部13と、くつずり本体11の幅長よりも広い幅で床面15をはつって設けられくつずり本体11が内側に配置される溝17と、くつずり本体11の上面を表出状態で溝17に充填される充填剤19と、スペーサ21と、を有する。
【0054】
なお、充填剤19は、モルタルやコンクリート、或いはケミカルアンカー(登録商標)等の接着系アンカー等でもよいが、以下の各実施形態においては、充填剤19は、モルタルとして説明する。
【0055】
くつずり本体11は、例えば三方枠に固定されて施工現場へ搬入することができる。三方枠は、離間した平行な一対の縦枠23の上端同士が上枠(不図示)で連結される。くつずり本体11は、この三方枠における縦枠23の下端同士を連結した状態で設けられる。すなわち、三方枠は、くつずり本体11が設けられることにより、四角枠(四方枠)となっている。
【0056】
スペーサ21は、くつずり支持部13に設けられ、溝17の底面25である不陸面(以下、「不陸面25」とも称す。)とくつずり支持部13との間に挟み込むように配置される。スペーサ21は、くつずり支持部13と不陸面25との間隔に応じ高さが増減され、不陸面25からくつずり支持部13を支える。
【0057】
スペーサ21は、例えば雄ねじ27と雌ねじ29との組み合わせで構成することができ、くつずり支持部13に螺合し、回転により昇降する下端部を不陸面25に支持する。
【0058】
本実施形態において、スペーサ21は、くつずり本体11の側部に延出して形成される複数のくつずり支持部13と、このくつずり支持部13に形成される雌ねじ29と、この雌ねじ29に螺合する雄ねじ27とで、構成される。
【0059】
くつずり支持部13は、くつずり本体11の長さに応じて複数箇所に設けられる。一例として、くつずり支持部13のくつずり本体11に沿う方向における間隔長は500mm程度以内で、くつずり本体11の長手方向両端からは150mm程度の位置で設けられる。くつずり支持部13は、例えばヒレ状に形成される。くつずり支持部13は、くつずり本体11に工場内で予め溶接固定してもよい。現場での後付け固定でもよい。また、くつずり本体11に、折り曲げと切欠で形成される板金加工部であってもよい。
【0060】
雄ねじ27には、例えばすりわり付きねじ、六角穴付きねじ等が使用される。雄ねじ27は、回転により昇降する下端部が不陸面25に支持される。ねじ径は、例えばM6程度のものとすることができる。
【0061】
くつずりの構造は、固定部材31をさらに備えることができる。固定部材31は、雄ねじ27の上部に当接する押さえ部33と、不陸面25に当接する固定片35と、を有した部材としてのハット型部材37により構成することができる。ハット型部材37は、固定片35が、締結部材39により不陸面25に固定される。
【0062】
図2は、図1に示したくつずりの構造の分解斜視図である。
本実施形態において、くつずり支持部13は、長方形の金属板で形成される。くつずり支持部13は、くつずり本体11の下側で長手方向両端が側部から張り出すようにして溶接等により固定される。雄ねじ27の軸長は、ハット型部材37の高さとほぼ同じ長さとなる。くつずり支持部13、雌ねじ29、雄ねじ27は、スペーサ21を構成する。締結部材39は、例えばコンクリートねじや、コンクリート釘とすることができる。ハット型部材37、締結部材39は、固定部材31を構成する。
【0063】
図3は、図1に示したくつずりの構造の要部縦断面図である。
くつずりの構造は、くつずり本体11が溝17において、水平に位置決めされた状態で、くつずり支持部13に螺合した雄ねじ27の下端部が不陸面25に当接する。この状態で、くつずり支持部13と雄ねじ27には、ハット型部材37が被せられる。ハット型部材37は、押さえ部33が雄ねじ27の上部に当接した状態で、雄ねじ27をくつずり本体11の長手方向で挟む一対の固定片35が締結部材39により不陸面25に固定される。つまり、くつずり本体11は、雄ねじ27の上部がハット型部材37により押さえ込まれることで、浮き上がりが規制される。
【0064】
ハット型部材37は、雄ねじ27を挟む一対の固定片35が、くつずり本体11の長手方向に沿う方向で配置される。ハット型部材37は、図1に示すように、くつずり本体11の幅方向の片側で、長手方向に複数箇所、くつずり支持部13に対応して配置される。なお、このハット型部材37は、複数のくつずり支持部13の全てに対応して配設しなくてもよい。
【0065】
図4は、図3のA-A断面図である。
スペーサ21は、くつずり支持部13の各位置のそれぞれで、雄ねじ27の回転により、不陸面25からのくつずり支持部13の距離を調整する。これにより、くつずり本体11は、水平な状態でレベル出しが可能となる。
【0066】
本実施形態に係るくつずりの構造は、製品としてのくつずり用固定部材41(図2参照)の構成を含む。すなわち。くつずり用固定部材41は、くつずり本体11に固定されて、床面15をはつって設けられる溝17の底面25にくつずり本体11を固定するくつずり用固定部材41であって、くつずり本体11の側部に延出して形成されるくつずり支持部13と、このくつずり支持部13に形成される雌ねじ29と、この雌ねじ29に螺合する雄ねじ27と、固定部材31と、を備え、固定部材31は、回転により昇降する下端部が不陸面25に支持された雄ねじ27の上部に当接する押さえ部33と、不陸面25に当接する固定片35と、を有したハット型部材37により構成され、固定片35が、締結部材39により不陸面25に固定される。
【0067】
次に、くつずりの施工方法を説明する。
【0068】
図5は、図1に示したくつずりの構造の隙間埋め工程の手順説明図である。
本実施形態に係るくつずりの施工方法は、はつり工程と、建て込み工程と、隙間埋め工程と、スペーサ固定工程と、充填剤充填工程と、を含む。
【0069】
はつり工程は、床面15をはつって溝17を形成する。溝17は、側面が、カッター(コンクリートカッター)の刃で削られるので、比較的滑らかな略垂直の面になる。一方、溝17の底面25は、たがねなどにより削り取っていくような作業、所謂はつり作業で作られる。このため、はつった底面25は凹凸の多いガタガタな面となる。つまり、底面25は、不陸面25となる。
【0070】
建て込み工程は、離間した平行な一対の縦枠23(図1参照)の上端同士が上枠で連結される三方枠における縦枠23の下端同士を連結したくつずり本体11を溝17に納めて位置決めする。このため、くつずり本体11は、不陸面25から浮上した位置で位置決めされることになる。
【0071】
隙間埋め工程は、溝17の底面25である不陸面と、くつずり本体11に設けられるくつずり支持部13との間に、その間隔に応じ高さを増減させたスペーサ21を配置する。本実施形態では、くつずり支持部13の雌ねじ29に螺合する雄ねじ27を回転し、浮上状態の雄ねじ27の下端部を不陸面25に着地させる。これにより、くつずり支持部13は、雄ねじ27を介して不陸面25に沈み込むことなく支持される。
【0072】
なお、上述の建て込み工程においては、くつずり本体11を三方枠に連結せずに溝17に納める手順とする場合もある。すなわち、くつずり本体11のみを溝17内に配置して、上記隙間埋め工程を行う手順となる。この場合、はつり工程の後、建て込み工程として、くつずり本体11単体を溝17内へ搬入し不陸面25上に置き、その状態から隙間埋め工程となる。隙間埋め工程では、上記同様にくつずり支持部13の雌ねじ29に螺合する雄ねじ27を回転し、この雄ねじ27の下方向に延びる作用でくつずり本体11を不陸面25から浮上させる。つまり不陸面25に着地状態のくつずり本体11を、雄ねじ27の回転で上昇させることにより、くつずり本体11と不陸面25との間隔を広げ、くつずり本体11を所定の高さ、水平なレベルとし、溝17内における不陸面25上にくつずり支持部13との間を雄ねじ27で埋め、支持することとなる。
【0073】
図6は、図1に示したくつずりの構造のスペーサ固定工程の手順説明図である。
スペーサ固定工程は、スペーサ21を締結部材39により不陸面25に固定する。本実施形態では、隙間埋め工程の後の雄ねじ27に被せたハット型部材37の一対の固定片35を、締結部材39により不陸面25に固定する。
【0074】
充填剤充填工程は、くつずり本体11がスペーサ21により支持されている溝17に、充填剤19を充填する。充填剤19は、例えば床面15と面一となるように、手作業等により流し込まれ詰め込まれる。充填剤19は、くつずり本体11の上面を表出状態で、くつずり本体11の上面を除くくつずり本体11と不陸面25との間で、くつずり支持部13、スペーサ21を埋入して溝17に充填される。これにより、充填剤19が硬化する養生を経て、くつずりの施工が完了する。
【0075】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0076】
本実施形態に係るくつずりの構造では、くつずり本体11が、くつずり支持部13を有する。くつずり支持部13は、溝17の底面25に対向する。くつずり支持部13と、溝17の底面25との間には、スペーサ21が配置される。
【0077】
ここで、溝17において、側面は、カッター(コンクリートカッター)の刃で削られるので、比較的滑らかな略垂直な面になる。一方、溝17の底面25は、たがねなどにより削り取っていくようなはつり作業で作られる。このため、はつった底面25は凹凸の多いガタガタな面となる。つまり、底面25は、不陸面25となっている。通常の平たい鉄板を打ちつけるようなくつずりの構造であると、不陸面25と接する面が大きく、水平なレベル出しが行いにくい。
【0078】
そこで、くつずりの構造では、くつずり支持部13と不陸面25との間に、スペーサ21が配置される。スペーサ21は、くつずり支持部13に対向する不陸面25の箇所との間隔に応じ、高さの増減が可能となる。スペーサ21としては、本実施形態のように、螺合させた雌ねじ29と雄ねじ27により、軸方向の距離を可変自在とするねじ構造や、後述する板厚方向の厚みや、枚数を増減可能に設けられる板材が挙げられる。
【0079】
スペーサ21は、例えばねじ構造の場合、くつずり支持部13に対向する不陸面25の箇所が高ければ(深ければ)、ねじ込む。浅ければねじを引き抜く方向に、というふうに出具合が調節(アジャスト)される。これにより、くつずり本体11は、水平になるように、不陸面25の任意の箇所との間隔がスペーサ21により埋められて、水平状態となって不陸面25に支持され、つまり沈み込まないようになる。
【0080】
その結果、くつずりの位置決めを火器を用いず実施でき、不陸面25に対して水平となって、躯体側の誤差に柔軟に対応できる。
【0081】
くつずりの構造では、スペーサ21が、雄ねじ27と雌ねじ29との組み合わせとなる。この組合せとは、本実施形態のように、くつずり支持部13に、雌ねじ29が形成され、くつずり支持部13の雌ねじ29に雄ねじ27が螺合されるねじ構造、或いは、後述するくつずり支持部13に雄ねじ27が垂下して固定され、その雄ねじ27に、雌ねじ29を有した支持体(当接先端部)が螺合されるねじ構造を含む。これらのねじ構造では、雄ねじ27と雌ねじ29とが相対回転することにより、軸方向の距離が増減されるので、くつずり支持部13と不陸面25の任意の箇所との間隔を埋めることができる。これにより、くつずり本体11は、沈み込みが抑制される。その結果、雄ねじ27と雌ねじ29の螺合構造により、回転を軸方向の長さ調整距離に変換し、間隔の調整を容易かつ高精度に実現、すなわち不陸面25の凹凸に関わらずくつずり本体11を水平に設置できる。
【0082】
また、このくつずりの構造では、スペーサ21が、くつずり支持部13、雌ねじ29、雄ねじ27により構成される。すなわち、くつずり本体11と不陸面25との間には、軸方向の距離を可変自在とするねじ構造が設けられる。
【0083】
スペーサ21は、くつずり支持部13に対向する不陸面25の箇所が高ければ(深ければ)、雄ねじ27がねじ込まれる。浅ければ雄ねじ27が引き抜く方向に回転される。雄ねじ27は、不陸面25に向かう方向の出具合が調整される。これにより、くつずり本体11は、水平になるように、不陸面25の任意の箇所との間隔が雄ねじ27により埋められて、水平状態となって不陸面25に支持され、つまり沈み込まないようになる。
【0084】
さらに、このくつずりの構造及びくつずり用固定部材41では、不陸面25に向かう方向の出具合が調整され、不陸面25の任意の箇所との間隔を埋めた雄ねじ27に、ハット型部材37が被せられる。ハット型部材37は、雄ねじ27の上部に当接する押さえ部33と、不陸面25に当接する固定片35とを有する。
【0085】
雄ねじ27の下端部を不陸面25に支持したスペーサ21は、沈み込みは規制されるが、不陸面25に乗っているだけとなる。スペーサ21は、このままでは、溝17に、充填剤19を詰めるときに、圧力等が掛かって、くつずり本体11が持ち上がってしまうことがあり得る。
【0086】
そこで、スペーサ21は、雄ねじ27の上部がハット型部材37の押さえ部33に当接した状態で、ハット型部材37の下部に形成された固定片35が締結部材39により不陸面25に固定される。これにより、スペーサ21は、雄ねじ27が、不陸面25に押さえ込まれた状態となり、雄ねじ27自身が持ち上がらないようになり、浮き上がりも規制される。また、雄ねじ27を覆うことで、雄ねじ27の回転を防止できる。
【0087】
また、本実施形態に係るくつずりの施工方法では、床面15をはつって形成された溝17に、くつずり本体11が位置決めされて納められる。くつずり本体11には、複数のくつずり支持部13が設けられている。それぞれのくつずり支持部13と溝17の底面25である不陸面は、間隔が一定とならない。それぞれのくつずり支持部13と不陸面25との間には、スペーサ21が配置されている。スペーサ21は、それぞれのくつずり支持部13と不陸面25との間隔に応じ、高さが増減される。これにより、くつずり本体11は、隙間埋め工程により、くつずり支持部13と不陸面25との間隔がスペーサ21により埋められ、水平となって不陸面25に支持され、沈み込みが規制される。
【0088】
沈み込みを規制して不陸面25にくつずり支持部13を支持しているスペーサ21は、スペーサ固定工程により、締結部材39が用いられて不陸面25にさらに固定される。これにより、スペーサ21は、沈み込みに加えて、浮き上がりも規制される。
【0089】
この状態で、溝17には、充填剤19が充填される。この際、充填剤19である例えばモルタルは、人の手で押し込むように入れられ、奥に入るように手で押し込むので、ある程度の圧力がスペーサ21に加わる。くつずりの施工方法では、この充填剤充填工程に先立ち、隙間埋め工程、スペーサ固定工程により、くつずり本体11の沈み込み、浮き上がりが規制されているので、くつずり本体11が沈み込むことも、浮き上がることもなく、位置保持、つまり仮固定となる。
【0090】
くつずり本体11は、充填剤19が硬化することにより、埋入されたスペーサ21がコンクリートと一体となって埋設され、位置決めされた状態のまま、床面15に固定される。
【0091】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るくつずりの構造を説明する。
【0092】
図7は、第2実施形態に係るくつずりの構造を表す縦断面図である。なお、第2実施形態においては第1実施形態で示した部材・部位と同等の部材・部位には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
第2実施形態に係るくつずりの構造において、雄ねじ43は、貫通穴45(図8参照)を同軸で有する中空状や中空パイプ状で形成される。この貫通穴45を有した雄ねじ43は、スペーサ21を構成する。くつずり本体11には、くつずり支持部13が溶接固定される。くつずり支持部13は、くつずり本体11の幅方向両側から張り出す。張り出し位置には、雌ねじ29がそれぞれ形成される。このくつずり支持部13のそれぞれに、雄ねじ43が螺合される。雄ねじ43の貫通穴45には、締結部材39が挿通される。締結部材39は、雄ねじ43を押さえ込む頭部47を有する。雄ねじ43は、締結部材39が、不陸面25に打ち込まれて固定される。
【0093】
図8は、図7に示したスペーサ21及び締結部材39の分解斜視図である。
雄ねじ43は、貫通穴45を同軸で備える例えばすりわり付きねじとすることができる。締結部材39は、例えばコンクリート釘とすることができる。
【0094】
図9は、図7に示したくつずり支持部13の変形例を表す縦断面図である。
くつずり支持部13は、溶接の他、くつずり本体11に固定ねじ49により螺着されてもよい。くつずり支持部13は、固定ねじ49による固定方法とすることで、現場に合わせてくつずり支持部13の位置を調整して固定が可能となる。
【0095】
図10は、図8に示した雄ねじ43の変形例を表す分解斜視図である。
雄ねじ43は、貫通穴45を同軸で備えるすりわり付きねじの他、貫通穴45を同軸で備える六角穴付きねじであってもよい。この場合、六角レンチ等の工具で回転が可能となる。また、雄ねじ43は、貫通穴45を同軸で備える所謂鬼目ナットを使用してもよい。この場合、くつずり支持部13には、鬼目ナットの外周に螺刻された螺旋状の凹凸が螺合可能な雌ねじ状穴が形成される。
【0096】
本実施形態に係るくつずりの構造は、製品としてのくつずり用固定部材51(図7参照)の構成を含むものである。すなわち。くつずり用固定部材51は、くつずり本体11に固定されて、床面15をはつって設けられる溝17の底面25にくつずり本体11を固定するくつずり用固定部材51であって、くつずり本体11の側部に延出して形成されるくつずり支持部13と、このくつずり支持部13に形成される雌ねじ29と、この雌ねじ29に螺合する雄ねじ43と、を備え、雄ねじ43は、貫通穴45を同軸で有する中空状や中空パイプ状に形成され、貫通穴45に挿通される締結部材39が不陸面25に打ち込まれて固定される。
【0097】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0098】
本実施形態に係るくつずりの構造及びくつずり用固定部材51では、スペーサ21が、くつずり支持部13、雌ねじ29、雄ねじ43により構成される。すなわち、くつずり本体11と不陸面25との間に、軸方向の距離を可変自在とするねじ構造が設けられる。
【0099】
雄ねじ43は、不陸面25に向かう方向の出具合が調整される。これにより、くつずり本体11は、水平になるように、不陸面25の任意の箇所との間隔が雄ねじ43により埋められて、水平状態となって不陸面25に支持され、つまり沈み込まないようになる。
【0100】
これに加え、雄ねじ43は、中空パイプ状に形成されることにより、貫通穴45に締結部材39が挿通可能となっている。雄ねじ43は、貫通穴45を使って、浮き上がり防止のための締結部材39(コンクリートねじ、またはコンクリート釘)を打ち込んで、不陸面25に固定することができる。これにより、スペーサ21は、雄ねじ43自身が持ち上がらないようになり、浮き上がりも規制される。その結果、くつずり本体11は、沈み込みも、浮き上がりも抑制できる。
【0101】
図11は、第2実施形態に係るくつずりの構造の変形例1を表す斜視図である。
くつずりの構造は、くつずり支持部13に、雌ねじ29と、透孔53とが並設されてもよい。雌ねじ29には、雄ねじ27が螺合される。くつずり支持部13、雌ねじ29、雄ねじ27は、スペーサ21を構成する。くつずり支持部13の透孔53には締結部材39が挿通され、締結部材39は不陸面25に固定される。
【0102】
このくつずりの構造では、くつずり支持部13の雌ねじ29に螺合される雄ねじ27は、不陸面25に向かう方向の出具合を調整する。これにより、くつずり本体11は、水平になるように、不陸面25の任意の箇所との間隔が雄ねじ27により埋められて、水平状態となって不陸面25に支持され、つまり沈み込まない。
【0103】
また、くつずり支持部13の透孔53に挿通される締結部材39は、不陸面25に打ち込まれて固定される。これにより、くつずり本体11は、くつずり支持部13が締結部材39により持ち上がらないようになり、浮き上がりも規制される。その結果、くつずり本体11は、沈み込みも、浮き上がりも抑制できる。
【0104】
図12は、第2実施形態に係るくつずりの構造の変形例2を表す縦断面図である。
くつずりの構造は、スペーサ21が、板材55を含んでもよい。スペーサ21は、くつずり支持部13と不陸面25との間隔に応じ組み合わせて増減され、くつずり支持部13と不陸面25との間隔を埋める。
【0105】
さらに、くつずりの構造は、くつずり支持部13と板材55とを貫通して、不陸面25に打ち込まれる締結部材39を備えてもよい。
【0106】
このくつずりの構造では、スペーサ21が、板材55を含んで構成される。すなわち、板材55は、不陸を調整するためのライナーとなる。板材55は、例えば間隔の距離よりも薄いものを何枚か重ねて、差し込む。この場合のスペーサ21では、くつずり支持部13から不陸面25までの距離が大きければ(深ければ)、板材55が沢山入れられ(挟まれ)、浅ければ少なめに入れられる。これにより、くつずり本体11は、水平になるように、不陸面25の任意の箇所との間隔がスペーサ21により埋められて、水平状態となって不陸面25に支持され、つまり沈み込まないようになる。
【0107】
また、このくつずりの構造では、締結部材39が、くつずり支持部13と板材55とを貫通して、不陸面25に打ち込まれる。すなわち、くつずり支持部13と板材55とが一体的に不陸面25に固定される。その結果、くつずり本体11は、沈み込みも、浮き上がりも抑制できる。
【0108】
図13は、第2実施形態の変形例2と第1実施形態とを組み合わせた変形例を表す縦断面図である。
くつずりの構造は、くつずり支持部13の雌ねじ29に雄ねじ27を螺合し、この雄ねじ27の下端部と不陸面25との間に、不陸を調整するための板材55(ライナー)をさらに配置してもよい。このくつずりの構造においても、固定部材31を備えることができる。固定部材31は、ハット型部材37とすることができる。ハット型部材37は、雄ねじ27の上部に押さえ部33を当接する。ハット型部材37の固定片35は、板材55に当接する。固定片35には、締結部材39が打ち込まれる。締結部材39は、固定片35とともに板材55を貫通して不陸面25に打ち込まれることにより、固定片35と板材55とを不陸面25に共締めする。このくつずりの構造では、くつずり支持部13、雌ねじ29、雄ねじ27、板材55によりスペーサ21が構成される。このくつずりの構造では、雄ねじ27の長さが足りなかった場合や、溝17の底面25をはつりすぎた場合に、底面25を板材55により嵩上げして間隔を簡便に埋めることができる。なお、板材55は、可撓性や柔軟性を有する素材とすることで不陸面25に対しての追従が可能となり、固定片35のぐらつきを抑止できる。
【0109】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係るくつずりの構造を説明する。
【0110】
図14は、第3実施形態に係るくつずりの構造を表す縦断面図である。なお、第3実施形態においては第1実施形態で示した部材・部位と同等の部材・部位には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
くつずりの構造は、不陸面25に打ち込まれる締結部材39と、雌ねじ29に螺合する雄ねじ27のくつずり支持部13よりも上側と締結部材39とに掛け渡されて緊締され、くつずり支持部13を不陸面25に固定する結束線材57と、を具備する。くつずり支持部13、雌ねじ29、雄ねじ27は、スペーサ21を構成する。結束線材57、締結部材39は、固定部材31を構成する。
【0111】
結束線材57は、例えば、建物基礎施工に用いられ鉄筋の交差部で互いに固定するときに使う細い針金(結束線)を用いることができる。なお、結束線材57としては、樹脂製の結束バンドが用いられてもよい。結束線材57は、溝17内に充填剤19(モルタル)が充填されてしまえば、埋没するので、仮固定用としては樹脂製の結束バンドであっても支障なく使用が可能となる。
【0112】
図15は、図14の平面図である。
固定部材31は、くつずり支持部13の近傍で、平面視でくつずり支持部13の輪郭よりも外側で不陸面25に打ち込まれる。締結部材39は、結わかれた結束線材57が外れないように頭部47を有するコンクリートねじやコンクリート釘が用いられる。
【0113】
このくつずりの構造では、くつずり支持部13に形成された雌ねじ29に、雄ねじ27が螺合される。雄ねじ27は、不陸面25に向かう方向の出具合を調整する。これにより、くつずり本体11は、水平になるように、不陸面25の任意の箇所との間隔が雄ねじ27により埋められて、水平状態となって不陸面25に支持され、沈み込まないようになる。
【0114】
これに加え、不陸面25には、締結部材39が打ち込まれる。締結部材39は、完全に打ち込まれず、くつずり支持部13の下方で、頭部47が僅かに浮いた状態に打ち込まれる。この締結部材39の頭部47と、くつずり支持部13に螺合する雄ねじ27のくつずり支持部13よりも上側とは、結束線材57で結わかれる。くつずり支持部13は、結束線材57が締められることにより、下方向に引っ張られる。つまり、くつずり支持部13が、不陸面25に押しつけられる。これにより、くつずり本体11は、くつずり支持部13が結束線材57により持ち上がらないように保持され、浮き上がりも規制される。その結果、くつずり本体11は、沈み込みも、浮き上がりも抑制でき、仮固定となる。
【0115】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係るくつずりの構造を説明する。
【0116】
図16は、第4実施形態に係るくつずりの構造を表す側断面図である。なお、第4実施形態においては第1実施形態で示した部材・部位と同等の部材・部位には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
くつずりの構造は、スペーサ21が、くつずり支持部13に固定されて垂下する雄ねじ27と、この雄ねじ27に螺合する雌ねじ29を有し、下端部が不陸面25に支持される当接先端部59と、で構成されてもよい。当接先端部59には、下端部からさらに延出して締結部材39により不陸面25に固定される固定片35が設けられていてもよい。
【0117】
当接先端部59は、矩形状の天板部61と、天板部61の平行な一対の辺部から折り曲げられて垂下し、下端部を有する垂直片部63と、この垂直片部63から底面25に沿って延出する固定片35と、からなる例えばハット型に形成することができる。当接先端部59の天板部61には、くつずり支持部13から垂下する雄ねじ27が螺合する雌ねじ29が形成される。それぞれの固定片35には締結部材39が打ち込まれることにより、不陸面25に固定される。くつずり支持部13、雄ねじ27、当接先端部59は、スペーサ21を構成する。
【0118】
図17は、図16のB-B矢視図である。
当接先端部59は、くつずり支持部13から垂下する雄ねじ27を回転中心に回転される。これにより、当接先端部59は、くつずり支持部13と不陸面25との間隔に応じ固定片35が昇降される。複数の雄ねじ27は、くつずり本体11の長手方向にずれた位置、千鳥配置で設けられる。これにより、それぞれの当接先端部59は、固定片同士が干渉せずに回転が可能となっている。
【0119】
固定片35が不陸面25に着地した当接先端部59は、固定片35を貫通する締結部材39により不陸面25に固定される。この際、一対の固定片35は、いずれか一方がくつずり本体11の幅方向外側に配置されるように、回転半径が設定されている。すなわち、一対の固定片35は、いずれか一方のみが不陸面25に固定される。
【0120】
本実施形態に係るくつずりの構造は、製品としてのくつずり用固定部材65の構成を含むものである。すなわち。くつずり用固定部材65は、くつずり本体11に固定されて、床面15をはつって設けられる溝17の底面25にくつずり本体11を固定するくつずり用固定部材65であって、くつずり本体11に固定されて垂下する雄ねじ27と、雄ねじ27に螺合する雌ねじ29を備え下端部が不陸面25に支持される当接先端部59と、当接先端部59の下端部から延出する固定片35を溝17の底面25である不陸面に固定する締結部材39と、を具備する。
【0121】
このくつずりの構造及びくつずり用固定部材65では、雄ねじ27の垂下長は、くつずり支持部13から不陸面25までの距離よりも短く設定される。この雄ねじ27には、当接先端部59に形成されている雌ねじ29が螺合される。つまり、当接先端部59は、回転されることにより、雄ねじ27の先端と不陸面25との間で、下端部が昇降可能となる。
【0122】
当接先端部59が回転され、下端部が不陸面25に着地すれば、くつずり支持部13が、当接先端部59と雄ねじ27とを介して不陸面25に支持されることになる。つまり、くつずり本体11は、沈み込みが規制される。
【0123】
当接先端部59には、下端部から、不陸面25に沿う方向で固定片35が延出する。この固定片35は、下端部が不陸面25に着地した状態で、締結部材39により不陸面25に固定される。これにより、くつずり本体11は、不陸面25からの浮上も規制される。
【0124】
なお、固定片35は、当接先端部59の下端部から不陸面25に沿って水平に延出するが、締結部材39の貫通に必要最小限の面積で形成される。これにより、固定片35は、不陸面25の凹凸により当接先端部59の回転に支障を及ぼすことがない。その結果、くつずり支持部13から垂下する雄ねじ27に対し、当接先端部59を回転させて間隔の調整ができ、調整後には、当接先端部59の固定片35を締結部材39により躯体に固定して、浮き上がりも抑制できる。
【0125】
図18は、図16に示したくつずりの構造の溝幅が小さい場合の縦断面図である。
なお、くつずりの構造は、くつずり本体11の幅が狭い場合には、くつずり本体11の幅方向中央に雄ねじ27を配置し、構成することとしてもよい。
【0126】
図19は、図16に示したハット型部材37の変形例を表す縦断面図である。
当接先端部59は、天板部61から逆向きに傾斜する一対の傾斜片部67を折り曲げた山形に形成してもよい。
【0127】
図20は、図19のC-C矢視図である。
この山形に形成した当接先端部59では、傾斜片部67に、締結部材39を挿通する挿通穴69を穿設することにより、固定片35を省略することができる。また、この当接先端部59によれば、締結部材39を斜め方向から打ち込めるので、スペーサ固定工程を容易にすることができる。さらに、傾斜片部67とすることにより、垂直片部63に比べモルタルの流入を良好とすることができる。
【0128】
図21は、図16に示したスペーサ21の変形例を表す縦断面図である。
くつずりの構造は、当接先端部59を、水平片71と、起立片73と、からなる略逆L字形で形成してもよい。水平片71にはくつずり支持部13から垂下する雄ねじ27と螺合する雌ねじ29が形成される。水平片71から垂下する起立片73は、下端部が逆三角形状に形成される。この下端部は、雄ねじ27の中心軸に三角形の頂点が一致する。つまり、当接先端部59は、起立片73の下端部を中心に回転が可能となっている。このくつずりの構造によれば、不陸面25の凹凸による影響を受けにくくして、アジャストのための当接先端部59の回転を行いやすくできる。
【0129】
図22は、図21に示したスペーサ21の変形例を表す斜視図である。
また、当接先端部59は、下端部が逆円錐形となる柱体75に、同軸で雌ねじ29を形成し、外周に六角ナット部77を同軸で設けた形状としてもよい。この当接先端部59は、くつずり支持部13から垂下する雄ねじ27に雌ねじ29を螺合し、六角ナット部77を工具により回転することができる。この当接先端部59の場合も、逆円錐形の頂点部79である下端部が、雄ねじ27の中心軸に一致するので、不陸面25の凹凸による影響を受けにくくして、アジャストのための当接先端部59の回転を行いやすくできる。
【0130】
従って、本実施形態に係るくつずりの構造によれば、くつずりの位置決めを火器を用いず実施でき、躯体側の誤差に柔軟に対応できる。
【0131】
本実施形態に係るくつずりの施工方法によれば、くつずり本体11と不陸面25との間に、スペーサ21を配置する隙間埋め工程と、スペーサ21を締結部材39により不陸面25に固定するスペーサ固定工程とを含むので、くつずりの位置決め、仮固定、及び充填剤の充填までの固定を無火器で実施でき、躯体側の誤差に柔軟に対応できる。
【0132】
本実施形態に係るくつずり用固定部材65によれば、くつずり支持部13に固定されて垂下する雄ねじ27に対し、雌ねじ29で螺合する当接先端部59を回転させて間隔の調整ができ、調整後には、当接先端部59の固定片35を締結部材39により躯体側に固定して、浮き上がりも抑制できる。
【符号の説明】
【0133】
11…くつずり本体
13…くつずり支持部
15…床面
17…溝
19…充填剤
21…スペーサ
23…縦枠
25…底面(不陸面) 27…雄ねじ
29…雌ねじ
31…固定部材
33…押さえ部
35…固定片
37…部材(ハット型部材)
39…締結部材
41…くつずり用固定部材
45…貫通穴
53…透孔
55…板材
57…結束線材
59…当接先端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22