(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068971
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】車両充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20230511BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230511BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H02J7/34 A
H02J7/00 P
H02J7/00 302A
H02J3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180472
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】河合 智成
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 弘友希
(72)【発明者】
【氏名】浅井 成実
(72)【発明者】
【氏名】平井 孝資
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA04
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA08
5G503CA10
5G503FA06
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】 電力系統からの受電電力が設定した値を超えることが無く、且つ蓄電池を利用した効果的な充電が可能な車両充電システムを提供する。
【解決手段】 充電器2と充電器2に電力を供給するための蓄電池盤3とを有し、蓄電池盤3は、受電電力を監視する第1通信IF11と、受電電力を直流変換するコンバータユニット31と、直流変換された受電電力と蓄電池33の出力とを基に、充電器2に供給する電力を生成するインバータユニット32と、コンバータユニット31及びインバータユニット32を制御する制御ユニット34とを有している。制御ユニット34は、第1通信IF11に送信された受電電力情報を基に、受電電力が設定された上限値を超えないようコンバータユニット31を制御し、且つ蓄電池33の蓄電残量の情報と充電器2が要求する電力情報とを基に、コンバータユニット31及びインバータユニット32とを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に電力を供給する充電器と、前記充電器に電力を供給するための蓄電池盤とを有し、電力系統からの受電電力と前記蓄電池の蓄電電力とで車両を充電する車両充電システムであって、
前記蓄電池盤は、受電設備の受電電力情報を入手する受電電力情報入手部と、
車両充電に使用する前記受電電力を直流変換するコンバータユニットと、
直流変換された前記受電電力と前記蓄電池の出力とを基に、前記充電器に供給する電力を生成するインバータユニットと、
前記コンバータユニット及び前記インバータユニットを制御する制御ユニットとを有し、
前記制御ユニットは、前記受電電力情報入手部からの受電電力情報を基に、受電電力が設定された上限値を超えないよう前記コンバータユニットを制御し、
且つ前記蓄電池の蓄電残量の情報と、前記充電器が要求する電力情報とを基に、前記コンバータユニット及び前記インバータユニットとを制御して、前記充電器に電力を供給することを特徴とする車両充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EV等の蓄電池を備えた車両を充電する車両充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
EVやPHV等の蓄電池を備えた車両の普及に伴い、車両を充電するための充電スタンドの設置が進んでいる。この充電スタンドは、短時間での充電を可能とする充電器が普及しているが、系統からの受電電力は増やしたくない要望があるため、充電設備に蓄電池を備えて系統と蓄電池の双方の電力で車両充電を行うことで、短時間での充電を実施するシステムが主流となりつつある。
例えば特許文献1の車両充電システムでは、蓄電池を備えて、商用電力と蓄電池とで車両充電中に蓄電池の蓄電残量が所定量以下になったら、商用電力を変更せずに充電器の出力を削減させて、商用電力の一部を蓄電池の充電に回す制御を実施した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、系統からの受電電力と蓄電電力の双方を使用する上記従来の車両充電システムは、系統からの受電電力を車両の充電器以外の負荷にも供給することを考慮していなかったため、他の負荷にも商用電力を供給する場合は適用できなかった。
例えば、系統からの受電電力の契約電力が40kWで急速充電器の出力が50kW(車両充電電力が50kW)の場合、蓄電池が25kW担当すれば系統側が25kWの担当で済み、受電電力に15kWの余裕が発生する。こうして、他の負荷にも系統から電力を供給することが可能となった。
しかしながら、他の負荷で使用される電力が15kWを超えると、契約電力を超過する場合が発生した。この対策として、充電器側の蓄電池の数を増やして対応することが考えられるが、蓄電池のコストが嵩み、システムがコスト高となる問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、電力系統からの受電電力が設定した値を超えることが無く、且つ蓄電池を利用した効果的な車両充電が可能な車両充電システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、車両に電力を供給する充電器と、充電器に電力を供給するための蓄電池盤とを有し、電力系統からの受電電力と蓄電池の蓄電電力とで車両を充電する車両充電システムであって、蓄電池盤は、受電設備の受電電力情報を入手する受電電力情報入手部と、車両充電に使用する受電電力を直流変換するコンバータユニットと、直流変換された受電電力と蓄電池の出力とを基に、充電器に供給する電力を生成するインバータユニットと、コンバータユニット及びインバータユニットを制御する制御ユニットとを有し、制御ユニットは、受電電力情報入手部からの受電電力情報を基に、受電電力が設定された上限値を超えないようコンバータユニットを制御し、且つ蓄電池の蓄電残量の情報と、充電器が要求する電力情報とを基に、コンバータユニット及びインバータユニットとを制御して、充電器に電力を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、充電器へ供給する電力を生成するインバータユニットに加えて、受電電力から車両充電及び蓄電池に供給する電力を生成するコンバータユニットも制御するため、充電器への出力に加えて車両充電に使用する受電電力も制御可能であり、車両充電以外の負荷へ供給する電力量に応じた受電電力の制御を実施できる。よって、受電電力が設定された上限値を超えないよう車両の充電制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る車両充電システムの一例を示す構成図である。
【
図3】コンバータユニットの制御を含む車両充電制御のフローチャートである。
【
図4】充電電流を決定するコンバータユニット出力の調整式である
【
図5】インバータユニットの制御を含む車両充電制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る車両充電システムの一例を示す構成図である。
車両充電システム1は、充電車両(図示せず)が接続される充電器2と、コンバータユニット31、インバータユニット32、蓄電池33、制御ユニット34を備えた蓄電池盤3とで構成されている。
【0010】
蓄電池盤3には、電力系統からの高圧電力を受電する高圧受電設備4が接続され、高圧受電設備4の低圧出力が入力される。この高圧受電設備4には、受電電力を計測して制御ユニット34に通知する計測部41及び通信部42が設けられている。
尚、高圧受電設備4は充電器2に加えて他の負荷にも電力を供給しており、
図1において、5は負荷の一例としてのエアコン、6は負荷に電力を供給するための動力分電盤である。また、高圧受電設備から50kWが充電器2に供給されると共に、蓄電池33からも50kWが充電器2に供給され、計100kWが充電器2に供給される状態を示している。
【0011】
コンバータユニット31は、AC/DC変換回路31aを備えており、高圧受電設備4から供給される交流電力を直流に変換して出力する。
インバータユニット32は、DC/AC変換回路32aを備えており、直流電力を交流変換して充電器2に供給する。
蓄電池33は、充放電を管理するBMS、制御ユニット34と通信する通信部(図示せず)を備えている。この蓄電池33は、コンバータユニット31の出力電力で充電される一方、インバータユニット32を介して放電電流が充電器2に供給される。
そして、コンバータユニット31の出力は、蓄電池33の放電電流とともに充電器2にも供給される。
【0012】
図2は制御ユニット34のブロック図を示している。制御ユニット34は、高圧受電設備4の通信部42と通信する受電電力情報入手部としての第1通信IF11、蓄電池33と通信する第2通信IF12、充電器2と通信する第3通信IF13、コンバータユニット31及びインバータユニット32と通信する第4通信IF14、後述する上限値、コンバータユニット31の定格電力等を記憶する記憶部15、充電器2への充電電流を制御すると共に制御ユニット34を制御する制御ユニットCPU16等を備えている。
【0013】
上記の如く構成された車両充電システムは以下のように動作する。
図3はコンバータユニット31の制御を中心とした充電器2への電力値情報の送信の流れを示すフローチャートであり、このフローを参照してコンバータユニット31の動作をまず説明する。
まず、制御の基準となる上限値が設定される。上限値は電力値或いは電流値であり、最大デマンド値を加味して設定され、受電電力の基本料金が抑制されるよう設定される。例えば、最大デマンド値より10%等僅かに低い数値で設定される。
そして、制御ユニットCPU16により、設定された上限値と蓄電池33の蓄電量とを加味して、コンバータユニット31が変換すべき電力が所定の調整式で算出される(S1)。
【0014】
所定の調整式は、例えば
図4のような式である。
図4に示すように、蓄電池33の電圧(蓄電池の残容量)と受電電力と受電電力の設定した上限値とを基に、コンバータユニット31の出力指示値が算出される。
尚、
図4において、
Z:電圧から電力変換(定格電流×電圧差分)
W:電力から電流変換(Z/蓄電池電圧差分)もしくはAC電力電流変換
V:入力制限部(プラスの場合は0を出力、マイナスの場合は比較値を出力)
Y:電流から電力変換(電流差分×蓄電池電圧)
である。
【0015】
コンバータユニット31の出力指示値の具体的な一例を示すと、蓄電池満充電時の蓄電池33の電圧が520V、上限値(或いは契約電力)が40kW、コンバータユニット31の定格電流が100Aであるとする。
また、入力データとして、現在の蓄電池33の電圧が500V、受電電力が50kWであるとすると、
G1点の電力は、
(520V-500V)×100A=2kW
となる。また、G2点の受電電力の電流は、
50kW/(200V×√3)=144A
となる。
そして、G3点の上限値電流は、
40kW/(200V×√3)=115A
となる。よって、G4点の超過電流は、
115A-144A=-29A
となり、受電電力の電流が上限値を29Aオーバーしている状態となる。
この場合、G5点に示す指示電流は、
100A-29A=71A
となり、コンバータユニット31の出力指示値は、
500V×71A=35.5kW
となる。即ち、コンバータユニット31の出力は35.5kWに設定される。
【0016】
図3のフローに戻り、出力指示値が算出されたら、コンバータユニット31の定格値と比較(S2)し、出力指示値がコンバータユニット31の定格値以下であれば、蓄電池33とコンバータユニット31の合算量が充電器2へ供給されるよう送信(S8)される。
出力指示値が定格値より大きければ(S2でNO)、コンバータユニット31の出力を増やせないが、現在の受電電力が上限値以下であれば(S3でNO)、コンバータユニット31を定格出力させる(S4)。
【0017】
一方S3において、現在の受電電力が上限値より大きければ(S3でYES)、コンバータユニット31の出力を定格の50%と下げる(S5)。これでも受電電力が上限値を上回っていたら(S6でYES)、コンバータユニット31の出力を0にして(S7)、蓄電池33の出力のみを充電器2へ供給する(S8)。
但し、コンバータユニット31の出力を定格の50%と下げたことで、受電電力が上限値以下となったら(S6でNO)、コンバータユニット31と蓄電池33の出力の合算した電力を充電器2へ供給させる(S8)。
【0018】
次に、蓄電池33の残容量に応じたインバータユニット32の動作を説明する。
図5は、インバータユニット32の制御を中心とした蓄電池33の残量に対する電流制御の流れを示すフローチャートであり、この
図5を参照して説明する。制御ユニット34は、コンバータユニット31の制御(S11)を実施している状態で、蓄電池33の残量情報を入手(S12)し、残量が90%以上であれば(S13でYES)、インバータユニット32の出力を変更しない(S15)。
一方、蓄電残量が90%未満であれば(S13でNO)、インバータユニット32の出力を抑制する(S14)。
【0019】
このように、充電器2へ供給する電力を生成するインバータユニット32に加えて、受電電力から車両充電及び蓄電池に供給する電力を生成するコンバータユニット31も制御するため、充電器2への出力に加えて車両充電に使用する受電電力も制御可能であり、車両充電以外の負荷への供給する電力に応じた受電電力の制御を実施できる。よって、受電電力が設定された上限値を超えないよう車両の充電制御を行うことができる。
また、蓄電池33の蓄電残量が90%未満になったら、インバータユニット32の出力が抑制されるため、コンバータユニット31の出力の一部を蓄電池33の充電に回すこともでき、蓄電池33の良好な状態を維持できる。
【0020】
尚、上記実施形態では、受電電力が上限値を超えた場合は、コンバータユニット31の出力を下げる制御(
図3のS5,S7)を実施し、インバータユニット32のこのときの制御を記載していないが、蓄電池33の電池残量が90%以上等十分にあれば、インバータユニット32の出力を上げて、充電器2への供給電流を維持する制御が実施される。
【符号の説明】
【0021】
1・・車両充電システム、2・・充電器、3・・蓄電池盤、4・・高圧受電設備、5・・エアコン(負荷)、11・・第1通信IF(受電電力情報入手部)、15・・記憶部、16・・制御ユニットCPU、31・・コンバータユニット、32・・インバータユニット、33・・蓄電池、34・・制御ユニット、41・・計測部、42・・通信部。