(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068980
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】金属板の塗装方法、及びプレコート金属板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/28 20060101AFI20230511BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20230511BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230511BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D7/14 G
B05D7/00 A
B05D3/00 D
B05D3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180493
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴尾 史生
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC23
4D075AC26
4D075AC28
4D075AC34
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC94
4D075AC95
4D075AC96
4D075BB56Y
4D075BB93Y
4D075CA22
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB01
4D075DC01
4D075DC10
4D075DC18
4D075EA05
4D075EA06
4D075EA27
4D075EB32
4D075EB35
4D075EB38
4D075EB51
4D075EB56
4D075EB57
4D075EC01
4D075EC10
4D075EC30
4D075EC35
(57)【要約】
【課題】属板の通板速度を速くしても、塗料への空気同伴及びローピングの発生を抑制する金属板の塗装方法、及びプレコート金属板の製造方法を提供すること。
【解決手段】回転するアプリケーターロールに、塗料供給口が前記アプリケーターロールから1~10mm離れて配置された塗料供給部により、前記アプリケーターロールの上方側から塗料を供給し、前記アプリケーターロールにより供給された前記塗料を通板する金属板に転写し塗装する金属板の塗装方法、それを利用したプレコート金属板の製造方法
【選択図】
図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するアプリケーターロールに、塗料供給口が前記アプリケーターロールから1~10mm離れて配置された塗料供給部により、前記アプリケーターロールの上方側から塗料を供給し、前記アプリケーターロールにより供給された前記塗料を通板する金属板に転写し塗装する金属板の塗装方法。
【請求項2】
前記アプリケーターロールの前記塗料の供給位置よりも前記アプリケーターロールの回転方向上流側に配置された減圧部により、前記塗料の供給位置に対して前記アプリケーターロールの回転方向上流側の気圧を前記アプリケーターロールの回転方向下流側の気圧を低くした状態で、前記塗料供給部により前記アプリケーターロールに前記塗料を供給する請求項1に記載の金属板の塗装方法。
【請求項3】
前記塗料の供給位置に対する前記アプリケーターロールの回転方向上流側の気圧と前記アプリケーターロールの回転方向下流側の気圧との気圧差の絶対値が、100~2000Paである請求項2に記載の金属板の塗装方法。
【請求項4】
前記アプリケーターロールの回転方向が、前記金属板の通板方向と逆方向である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の金属板の塗装方法。
【請求項5】
前記塗料は、樹脂と界面活性剤と有機溶剤とを含む塗料である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の金属板の塗装方法。
【請求項6】
前記塗料は、樹脂と界面活性剤と水とを含む塗料であって、前記塗料の最大泡圧法で測定した動的表面張力が、バブルライフタイム0.05sで30~60mN/mであり、バブルライフタイム0.5sで20~50mN/mである請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の金属板の塗装方法。
【請求項7】
前記塗料は、比重1.2~10.0g/cm3の固形分を含む請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の金属板の塗装方法。
【請求項8】
前記固形分の平均粒径は、0.5~5.0μmである請求項7に記載の金属板の塗装方法。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の金属板の塗装方法を利用したプレコート金属板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属板の塗装方法、及びプレコート金属板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレコート金属板は、家電の筐体や建築材料に広く使用されている。プレコート金属板は金属板の表面に化成処理層、プライマー層及びトップ層を積層したものが一般的である。各層は連続的に通板される金属板に、順に塗装及び焼付けて積層される。各層の塗装にはロールコーターが多用されている。プレコート金属板のトップ層は意匠性を担保する層である。このトップ層に塗装欠陥があると意匠性が損なわれるため商品価値が損なわれる。特にトップ層には均一性が求められる。
【0003】
プレコート金属板は、連続的に製造され、数kmから数十km単位でコイル状に巻き取り保管、輸送される。プレコート金属板の生産性を高めるには、金属板の通板速度を高速化させる必要がある。
特に、連続溶融亜鉛めっきライン(CGL:Continuous Galvanizing Line)で、プレコート金属板の製造を実施すると、金属板の通板速度の高速化が要求される。
【0004】
ロールコーターは、ロールをマイナスギャップで金属板に接触させて塗装する。膜厚はロール周速及び通板速度に従う。通板速度が速いほどロールを高速で回転させる必要がある。ロールの回転速度を速くすると、塗料への空気同伴、塗料転写時に発生する縄目状の塗装欠陥(以下、ローピング)、及び塗料飛散が発生しやすくなる。そのため、ロールコーターでは高速通板が困難である。
【0005】
ロールコーターよりも均一な塗装方法として、カーテンコーターが知られている。カーテンコーターは塗料を自由落下させてカーテン膜を形成する。金属板がカーテン膜を通過することで塗装する。膜厚は塗料流量で調整するため、ロールコーターのように塗料への空気同伴、及びローピングが発生しにくく、均一な塗装外観が得られやすい。しかし、カーテンコーターでは、薄膜塗装し難く、薄膜型のプレコート金属板を製造するには狙いとする膜厚の塗装が困難である。
【0006】
一方、カーテンコーターと同様な非接触塗装方法として、スロットコーターも知られている。スロットコーターは、カーテンコーターよりも薄膜塗装が可能な塗装方法である。
しかし、一般的なスロットコーターの塗料吐出口と金属板との間隔は、0.01~0.5mm程度である。そのため、金属板の形状又は表面性状により容易に金属製のスロットコーターの塗料吐出口と金属板が接触する。そのため工業的に実用化することは困難である。
【0007】
そのため、スロットコーターにより塗料をロールコーターのピックアップロールに供給する方法が検討されている、具体的には、例えば、特許文献1には、「スリットダイにより、回転する中間ロールへ多層の塗布液を供給し、次いで、前記中間ロールより、回転するアプリケーターロールへ前記多層の塗布液を転写し、次いで、前記アプリケーターロールを連続的に走行する基材と接触させて前記多層の塗布液を基材へ転写するにあたり、前記中間ロールは、アプリケーターロールとの接触部においてアプリケーターロールと逆方向に回転し、前記アプリケーターロールは、基材との接触部において基材と逆方向に回転し、前記スリットダイにより供給する多層の塗布液は、最下層を形成する塗布液のウェット膜厚h1、上層を形成する塗布液のウェット膜厚h2、前記スリットダイと前記中間ロールの間のギャップをGとした場合、0.15≦h1/G≦0.70かつ0.10≦h2/G≦0.60かつ0.60≦h1/G+h2/G≦0.90となることを特徴とする基材への塗布方法」が提案されている。
【0008】
また、アプリケーターロールに直接塗料を供給する方法も検討されている。具体的には、例えば、特許文献2には、「金属帯に接触して塗布液を塗布するアプリケータロールと、そのアプリケータロールに塗布液をカーテン状に押し出して供給するスリットダイと、アプリケータロールから金属帯に転写されずに残った塗布液を除去する掻取装置と、金属帯表面の塗布液を乾燥する乾燥装置を備えた塗装装置を用いて連続的に走行する金属帯に塗膜を形成する方法において、水系塗料を塗料より表面張力の低い溶媒で希釈した室温における表面張力が30~50dyn/cmの塗布液をスリットダイからアプリケータロールに供給することを特徴とする塗装方法。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許5849780明細書
【特許文献2】特許5239457明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の塗装方法では、外観を美麗にすることができるとされているが、ピックアップロールからアプリケーターロールへの塗料転写時に、ローピングが発生するため実用化には至っていない。
【0011】
また、特許文献2の塗装方法では、アプリケーターロールとスリットダイの間隔が15μmと微小であり、塗料がアプリケーターロールに落下し発生する衝突エネルギーが小さい。そのため、塗料がアプリケーターロールへ供給されたときに巻き込まれる空気が塗料外部へ排出され難く、塗料への空気同伴が発生する。
【0012】
そこで、本発明の課題は、金属板の通板速度を速くしても、塗料への空気同伴、ローピング、色抜け、及び塗料飛散の発生を抑制する金属板の塗装方法、及びプレコート金属板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため手段は、次の態様を含む。
<1>
回転するアプリケーターロールに、塗料供給口が前記アプリケーターロールから1~10mm離れて配置された塗料供給部により、前記アプリケーターロールの上方側から塗料を供給し、前記アプリケーターロールにより供給された前記塗料を通板する金属板に転写し塗装する金属板の塗装方法。
<2>
前記アプリケーターロールの前記塗料の供給位置よりも前記アプリケーターロールの回転方向上流側に配置された減圧部により、前記塗料の供給位置に対して前記アプリケーターロールの回転方向上流側の気圧を前記アプリケーターロールの回転方向下流側の気圧を低くした状態で、前記塗料供給部により前記アプリケーターロールに前記塗料を供給する<1>に記載の金属板の塗装方法。
<3>
前記塗料の供給位置に対する前記アプリケーターロールの回転方向上流側の気圧と前記アプリケーターロールの回転方向下流側の気圧との気圧差の絶対値が、100~2000Paである<2>に記載の金属板の塗装方法。
<4>
前記アプリケーターロールの回転方向が、前記金属板の通板方向と逆方向である<1>~<3>のいずれか1項に記載の金属板の塗装方法。
<5>
前記塗料は、樹脂と界面活性剤と有機溶剤とを含む塗料である<1>~<4>のいずれか1項に記載の金属板の塗装方法。
<6>
前記塗料は、樹脂と界面活性剤と水とを含む塗料であって、前記塗料の最大泡圧法で測定した動的表面張力が、バブルライフタイム0.05sで30~60mN/mであり、バブルライフタイム0.5sで20~50mN/mである<1>~<5>のいずれか1項に記載の金属板の塗装方法。
<7>
前記塗料は、比重1.2~10.0g/cm3の固形分を含む<1>~<6>のいずれか1項に記載の金属板の塗装方法。
<8>
前記固形分の平均粒径は、0.5~5.0μmである<7>に記載の金属板の塗装方法。
<9>
<1>~<8>のいずれか1項に記載の金属板の塗装方法を利用したプレコート金属板の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、金属板の通板速度を速くしても、塗料への空気同伴、ローピング、色抜け、及び塗料飛散の発生を抑制する金属板の塗装方法、及びプレコート金属板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1-1】本開示の金属板の塗布方法に適用される塗装装置の一例を示す概略構成図である。
【
図1-2】本開示の金属板の塗布方法に適用される塗装装置における塗料供給部の周囲を示す部分拡大概略構成図である。
【
図2】従来の金属板の塗装方法に適用される塗装装置の一例を示す概略構成図である。
【
図3】従来の金属板の塗装方法に適用される塗装装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の一例である実施形態について説明する。
なお、本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されていない場合は、これらの数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されている場合の数値範囲は、これらの数値を下限値又は上限値として含まない範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、ある段階的な数値範囲の下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、実質的に同じ機能を有する部材は、全図面通して、同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0017】
本開示の金属板の塗装方法は、回転するアプリケーターロールに、塗料供給口が前記アプリケーターロールから1~10mm離れて配置された塗料供給部により、前記アプリケーターロールの上方側から塗料を供給し、前記アプリケーターロールにより供給された前記塗料を通板する金属板に転写し塗装する金属板の塗装方法である。
つまり、本開示の金属板の塗装方法において、塗料供給部の塗装供給口とアプリケーターロールとの間隔は、1~10mmである。
【0018】
本開示の金属板の塗装方法では、塗料供給部により、塗料は、ピックアップロール又はその他中間ロールを介さずに、直接、アプリケーターロールに供給される。そして、供給された塗料は、アプリケーターロールにより、通板する金属板に転写される。そのため、塗料の転写時に生じるローピングが抑制される。その結果、金属板の通板速度を速くしても、ローピングの発生が生じ難くなる。
加えて、ピックアップロールが介在しないので、ピックアップロールの回転に伴う塗料飛散も抑制できる。
【0019】
また、アプリケーターロールとの間隔が1mmと十分離れた塗料供給部の塗料供給口から、重力方向下方側に向かって塗料をアプリケーターロールに供給するため、塗料がアプリケーターロールと接触したとき、塗料の自重による衝突エネルギーが大きくなる。それにより、巻き込まれた空気が塗料外への排出が促進される。そのため、金属板の通板速度を速くしても、塗料への空気同伴が生じ難くなる。
一方で、塗料供給部の塗料供給口とアプリケーターロールとの間隔を10mm以下とすることで、間隔が広すぎることで生じる、塗料供給部の塗料供給口から吐出された塗料の膜が分断されることが抑制される。そのため、塗料の膜の分断に起因する、色抜けが抑制される。
【0020】
以上により、本開示の金属板の塗装方法では、金属板の通板速度を速くしても、塗料への空気同伴、ローピング、色抜け、及び塗料飛散の発生を抑制する。
【0021】
また、従来、塗料を貯留する塗料パンから、ピックアップロールにより、アプリケーターロールに供給する方式又は中間ロールを介してアプリケーターロールに供給する方式の塗装方法では、塗料に含まれる固形分(特に、平均粒径が大きくかつ比重が大きい顔料等の固形分)が沈降し、塗装不良が生じやすい。
しかし、本開示の金属板の塗装方法では、塗料供給部の塗料供給口から塗料を押出して、直接、アプリケーターロールに供給するため、塗料に含まれる固形分の沈降が生じ難い。つまり、比較的、粘度が低い水系塗料を適用しても、塗料に含まれる固形分の沈降が生じることなく、良好な金属板への塗料の塗装が実現できる。
【0022】
加えて、本開示の金属板の塗装方法では、アプリケーターロールにより塗料を金属板に塗装するので、カーテンコーターにより塗料を金属板に塗装する場合に比べて、薄膜塗装し難易く、薄膜型のプレコート金属板を製造するときに狙いとする膜厚の塗装を実現できる。
【0023】
そして、本開示の金属板の塗装方法を利用すれば、塗料への空気同伴及びローピングの発生を抑制しつつプレコート金属板の製造が実現できる。
ここで、一般的に、連続溶融亜鉛めっきライン(CGL:Continuous Galvanizing Line)で、プレコート金属板の製造を実現するには、水系塗料の適用、通板速度の高速化が要求される。
しかし、本開示の金属板の製造方法を連続溶融亜鉛めっきラインで適用しても、塗料に含まれる固形分の沈降が生じ難く、かつ空気同伴及びローピングの発生を抑制しつつ、良好な塗膜を有するプレコート金属板の製造が実現できる。
【0024】
以下、本開示の金属板の塗装方法について詳細に説明する。
【0025】
(塗装装置)
まず、本開示の金属板の塗装方法で適用する塗装装置について説明する。
図1-1は、本開示の金属板の塗装方法で適用する塗装装置の一例である。
【0026】
図1-1に示すように、塗装装置100は、金属板Mの表面に塗料を転写により塗装するアプリケーターロール10と、金属板Mを介して対向配置され、通板する金属板Mを支持するバックアップロール12と、を備える。
アプリケーターロール10周囲には、アプリケーターロール10に塗料を供給する塗料供給部14と、アプリケーターロール10により塗料を金属板Mに塗装後、アプリケーターロール10に残留する塗料を掻き取る掻取部16と、アプリケーターロール10の塗料の供給位置よりもアプリケーターロール10の回転方向上流側に配置された減圧部18と、も備える。
【0027】
アプリケーターロール10は、例えば、周知のロールコーターで適用される、金属ロールと金属ロールの外周面上に設けられたゴム被覆層と、を有する周知のアプリケーターロールが採用できる。
バックアップロール12は、アプリケーターロール10の押し込み圧力に対して金属板を支える役割を担う。例えば、周知のロールコーターで適用される、金属板の通板速度と同調回転する周知のバックアップロールが採用できる。また、金属板に張力をかけることでバックアップロールを省略することも可能である。
【0028】
塗料供給部14は、アプリケーターロール10の上方側に配置され、塗料の吐出口となる塗料供給口14Aを有する。
そして、塗料供給部14の塗料供給口14Aとアプリケーターロール10との間隔は、1~10mm(好ましくは2~9mm、より好ましくは3~7mm)に設定されている。
具体的は、塗料供給部14の塗料供給口14Aとアプリケーターロール10との間隔とは、塗料供給口14Aとアプリケーターロール10の外周面における塗料供給位置P1との最短距離あって、塗料供給口14Aから塗料がアプリケーターロール10の外周面に到達するまでの距離である(
図2参照)。
【0029】
塗料供給部14としては、スロットコーター、カーテンコーター(ローラーカーテンコーター、スライドカーテンコーター等)等の周知のコーターが採用できる。
【0030】
掻取部は、先端によりアプリケーターロール10に残留する塗料を掻き取る掻取ブレード16Aと、掻取ブレード16Aの先端により掻き取られた塗料を回収する塗料回収パン16Bと、を備える。
【0031】
掻取ブレード16A、アプリケーターロール10による金属板Mへの塗料塗装P2よりもアプリケーターロール10の回転方向下流側で、先端がアプリケーターロール10の外周面に接触して配置され、塗料を掻き取る。
【0032】
掻取ブレード16Aは、アプリケーターロール10の回転方向とは逆回転方向側に先端を向けた状態で配置するドクター方式のブレードである。ドクター方式のブレードを採用すると、塗料の掻き取り性が向上する。
ただし、アプリケーターロール10の回転方向側に先端を向けた状態で配置するワイパー方式のブレードであってもよい。
【0033】
掻取ブレード16Aは、塗料の掻き取り性の観点から、プレスチック製のブレード(ポリエステル製、ポリエチレン製、ポリウレタン製等のブレード)、セラミック製のブレード(ジルコニア製、チタニア製等のブレード)などが挙げられる。
【0034】
減圧部18は、アプリケーターロール10の塗料供給位置P1よりもアプリケーターロール10の回転方向上流側で、かつ塗料供給部14に隣接して配置され、アプリケーターロール10の外周面を覆うフード18Aと、フード18Aと連結されたダクト18Bを備える。
減圧部18において、ダクト18Bは、図示しない吸引ポンプに連結されている
そして、減圧部18では、吸引ポンプによる吸引により、フード18Aで覆われた、アプリケーターロール10の塗料供給位置P1よりもアプリケーターロール10の回転方向上流側の気圧を負圧にする。
ここで、気圧の圧力は、フード18Aの内面に設けた圧力計で測定できる。
【0035】
なお、塗装装置100には、上記以外に、周知の塗装装置に備えられる各種部材を備えることができる
【0036】
(塗装方法)
塗布装置100を利用した本開示の金属板の塗装方法の一例について説明する。
【0037】
本開示の金属板の塗装方法では、まず、アプリケーターロール10を回転させ、アプリケーターロール10から1~10mm離れて配置された塗料供給部14の塗料供給口14Aから塗料を吐出し、アプリケーターロール10に塗料を供給する。
アプリケーターロール10への塗料の供給を開始後又は開始と同時に、金属板Mの通板を開始し、アプリケーターロール10により供給された塗料を通板する金属板Mに転写し塗装する。
【0038】
塗料供給部14の塗料供給口14Aから塗料を吐出し、直接、アプリケーターロール10に供給すると、塗料の転写がアプリケーターロール10から金属板Mへの転写の1回のみとなることから、金属板Mの通板速度を速めても、ローピングの発生が抑制される。
【0039】
塗料供給部14の塗料供給口14Aとアプリケーターロール10との間隔が1mm未満であると、塗料がアプリケーターロール10と接触したとき、塗料の衝突エネルギーが小さく、塗料がアプリケーターロール10へ供給されたときに巻き込まれる空気が塗料外部へ排出され難く、塗料への空気同伴が発生する。特に、金属板Mの通板速度を速くすると、塗料への空気同伴が発生し易い。
そのため、塗料供給部14の塗料供給口14Aとアプリケーターロール10との間隔は、1mm以上とする。
塗料への空気同伴抑制の観点から、塗料供給部の塗装供給口とアプリケーターロールとの間隔は、好ましくは3mm以上である。
ただし、塗料供給部14の塗料供給口14Aとアプリケーターロール10との間隔が10mmを超えると、塗料が着色顔料を含み、かつ金属板Mの通板速度を速めた場合、塗料液の膜が分断される場合がある。塗料の膜が分断されるとアプリケーターロール10上で塗料のあるところ、塗料のないところが生じる。これが起点となり、塗膜の色抜けが生じることがある。そのため、塗料供給部14の塗料供給口14Aとアプリケーターロール10との間隔は10mm以下とする。
【0040】
アプリケーターロール10の回転方向は、金属板Mの通板方向Aと同方向でも、金属板Mの通板方向Aと逆方向でもよい。ただし、アプリケーターロール10の回転方向は、金属板Mの通板方向Aと逆方向がよい。アプリケーターロール10の回転方向が金属板Mの通板方向Aと逆方向であると、塗料の転写時に塗料の泣き別れが抑えられ、ローピングの発生が抑制される。
なお、アプリケーターロール10の回転方向は、金属板Mと対向する位置(つまり、塗料塗装位置P2)での方向を意味する。
【0041】
塗料供給部14によるアプリケーターロール10への塗料供給量は、金属板Mの表面へ形成する塗膜の膜厚に応じて適宜設定される。アプリケーターロール10の回転速度も、金属板Mの表面へ形成する塗膜の膜厚に応じて適宜設定される。
なお、金属板Mの通板速度LSは、例えば、20~200m/minとする。
【0042】
塗料供給部14によるアプリケーターロール10への塗料供給は、減圧部18により、塗料供給位置P1に対してアプリケーターロールの回転方向上流側の気圧をアプリケーターロール10の回転方向下流側の気圧を低くした状態で、実施する。それにより、塗料供給位置P1周囲が減圧され、塗料がアプリケーターロール10へ供給されたときに巻き込まれる空気が塗料外部へ排出され易くなり、塗料への空気同伴が抑制される。
【0043】
塗料への空気同伴抑制の観点から、アプリケーターロール10の塗料供給位置P1に対するアプリケーターロール10の回転方向上流側の気圧とアプリケーターロールの回転方向下流側の気圧との気圧差は、100~2000Paが好ましく、200~800Paがより好ましい。
【0044】
なお、アプリケーターロール10の塗料供給位置P1に対するアプリケーターロール10の回転方向上流側の気圧は、減圧部18フード18Aの内部に設けられた、不図示の圧力計で測定される、減圧部18フード18Aの内部の気圧を、アプリケーターロール10の塗料供給位置P1に対するアプリケーターロール10の回転方向上流側の気圧と見なす。
一方、アプリケーターロールの回転方向下流側の気圧は、大気気圧とする。
【0045】
次に、本開示の金属板の塗装方法では、アプリケーターロール10により、供給された塗料を通板する金属板Mに転写し塗装した後、アプリケーターロール10に残留する塗料を、掻取部16において、掻取ブレード16Aにより掻き取り、塗料回収パン16Bで回収する。回収された塗料は、再利用してもよい。つまり、塗料回収パン16Bで回収した塗料を循環させて、再度、塗料供給部14から吐出で、塗装に再利用してもよい。
【0046】
なお、塗装の対象となる金属板Mは、亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム合金めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、亜鉛-ニッケル合金めっき鋼板、亜鉛-鉄合金めっき鋼板、銅板、マグネシウム板、アルミニウム板、又は、ステンレス板等の周知の金属板が挙げられる。
ここで、金属板Mには塗料を塗装する前に、公知の化成処理皮膜、公知のプライマー塗膜が被覆してもよい。
【0047】
以上説明した本開示の金属板の塗装方法では、上述のように、金属板Mの通板速度を速くしても、塗料への空気同伴及びローピングの発生を抑制できる。
【0048】
そして、本開示の金属板の塗装方法により、金属板Mの表面に塗装膜を形成後、塗装膜を乾燥及び/又は硬化させ、プレコート層とすることで、プレコート金属板が得られる。
塗装膜の乾燥条件及び硬化条件は、使用する塗料により適宜設定すればよい。
【0049】
(塗料)
以下、本開示の金属板の塗装方法に利用する塗料の一例について説明する。
【0050】
塗料は、樹脂と界面活性剤と有機溶剤とを含む塗料(以下、溶剤系塗料とも称する)、及び樹脂と界面活性剤と水とを含む塗料(以下、水系塗料とも称する)のいずれも採用できる。
ここで、塗膜として硬化膜を形成する場合、塗料には、樹脂共に硬化剤を含んでもよい。
【0051】
[樹脂]
樹脂としては、特に限定されず、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ふっ素樹脂、エポキシ樹脂など、塗料に適用される周知の樹脂が挙げられる。これら樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上ブレンドして使用しても良い。
これらの中でも、特に、樹脂としては、加工性と他性能とを両立させやすい、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及びウレタン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリエステル樹脂、及びウレタン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0052】
樹脂の種類の特定は、公知の方法で測定することが可能である。例えば、遠心分離した塗料を乾燥させた試料に対して、赤外線吸収スペクトル(IR)、熱分解ガスクロマトグラフィー等の測定を実施することで、樹脂の種類の特定を行う。
【0053】
樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、3000~25000が好ましい。なお、数平均分子量が異なる樹脂を併用した場合、樹脂の数平均分子量は、加重平均した数平均分子量である。
【0054】
樹脂の数平均分子量の測定方法は、次の通りである。
塗料を遠心分離した後、塗料上澄みを樹脂固形分として20mgとなるよう測り取る。
得られた試料をテトラヒドロフラン(THF)10mlに溶解させた後、ゲルパーエミーションクロマトグラフィ(GPC、東ソー株式会社 HLC8220 GPC、カラム Shodex KFタイプ)を用いて、ポンプ流量0.6ml/min、温度40℃で測定する。そして、樹脂の数平均分子量を、クロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準に算出する。
【0055】
樹脂の濃度は、塗料に対して5~50質量%が好ましく、10~45質量%がより好ましい。
樹脂の濃度を上記範囲とすると、塗料の固形分濃度を高め、塗装に関するコストを安価にできる。
【0056】
[有機溶剤]
有機溶剤は、樹脂を溶解させる溶剤である。また、有機溶剤は、硬化剤、着色顔料、界面活性剤などを添加しても反応せず、液体状態を保つ必要がある。
有機溶剤としては。特に限定されず、公知の溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、3-メトキシブチルアセテート、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系有機溶剤;、ソルベッソ100(エクソンモービル社)、ソルベッソ150(エクソンモービル社)などを挙げることができる。
これら有機溶剤は、1種単独で使用してもよく、任意の割合で2種以上混合して使用してもよい。
【0057】
[水]
水としては、例えば、水道水、蒸留水、純水等が挙げられる。
【0058】
[界面活性剤]
界面活性剤は、塗料に巻き込まれた空気を排出する作用、吐出された塗料の膜(つまりカーテン膜)を安定的に形成させる作用を併せ持つものである。
界面活性剤としては、アクリル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素変性シリコーン系界面活性剤などが挙げられる。
【0059】
アクリル系界面活性剤としては、アクリル系モノマーの共重合体が挙げられる
アクリル系モノマーとしては、アクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アルキレンオキシドエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエーテルエステル類、アクリル酸アミノアルキルエステル類、アクリル酸アミド化合物等が挙げられる。
【0060】
シリコーン系界面活性剤としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール等)等で側鎖又は主鎖の末端が変性されたポリジメチルシロキサンが挙げられる。
フッ素変性シリコーン系界面活性剤としては、上記シリコーン系界面活性剤の一部をパーフルオロアルキル基で置換したものが挙げられる。
【0061】
界面活性剤の濃度は、塗料に対して0.05~0.80質量%が好ましく、0.10~0.50質量%がより好ましい。
界面活性剤の濃度を上記範囲にすると、塗料の動的表面張力が制御され、塗料に巻き込まれた空気を排出する作用、吐出された塗料の膜(つまりカーテン膜)を安定的に形成させる作用が向上し易くなる。
【0062】
[固形分]
塗料には、比重1.2~10.0の固形分を含んでもよい。比重1.2~10.0の固形分は、塗料中で沈降し易い。特に、比重1.2~10.0、平均粒径0.5~5.0μmの固形分は、塗料中で沈降し易い。
しかし、沈降し易い固形分を塗料中に含んでも、本開示の金属板の塗装方法では、塗料供給部から直接アプリケーターロールに塗料を供給するため、固形分の沈降が抑制される。
固形分の比重は、好ましくは1.5~7.0である。固形分の平均粒径は、好ましくは1.0~5.0μmである。
【0063】
上記固形分の比重は、次の通り測定される。
測定対象の塗料を金属板に表面に塗布して、塗装膜を形成後、塗装膜を乾燥及び/又は硬化させ、プレコート層を形成する。
プレコート層付き金属板を試料とし、プレコート層の表面(厚み方向に対向する面)を研磨する。そして、この研磨によって形成されたプレコート層の断面(ここでは平断面)を、電子線マイクロアナライザ(FE-EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)で分析し、固形分を構成する元素割合を求める。また、顕微ラマン分光や顕微赤外分光、顕微X線回折などの分析結果から固形分を構成する物質を同定する。そして当該固形分の比重を文献値から求める。
【0064】
上記固形分の平均粒径は、次の通り測定される。
固形分の比重の測定と同様に上記プレコート層付き金属板を試料とし、研磨によって形成されたプレコート層の断面(ここでは平断面)をFE-SEMで観察する。固形分の断面径は、研磨を繰り返す毎に徐々に増大し、やがて最大値に達する。この最大値は、固形分の粒径に相当する。研磨をさらに続けると、断面径は減少する。そこで、ある視野において観察される固形分の断面径を研磨のたびに測定し、最大の測定値をその固形分の粒径とする。そして、任意に選ばれた複数個(例えば20個)の固形分の粒径の算術平均値を固形分の平均粒径とする。
なお、最初に観察された断面径が最大値となる場合、その断面径は実際の粒径よりも小さい可能性があるため、平均値を求める際の対象から除外する。
【0065】
ここで、プレコート層の研磨方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、樹脂埋め込み研磨やミクロトーム加工などを用いることができる。特に高い精度でビーズ40の平均粒径を求める場合は、研磨方法としてクライオFIB-SEM(Cryo Scanning Electronscopy combined with Focused Ion Beam)が好適である。試料温度を約-100℃とし、イオンビームで試料を加工するため、イオンビーム照射に伴う発熱による被膜への損傷が少なく、サブナノメートル単位での研磨が可能であるため、小さい固形分であっても粒径を求めることができる。
【0066】
上記固形分として代表的な成分は、顔料が挙げられる。
【0067】
顔料としては、着色、及び導電性付与の一方又は双方の機能を有する顔料(つまり、着色顔料、導電性顔料、着色導電性顔料等)が挙げられる。
顔料としては、特に限定されず、公知の顔料を使用することができる。
具体的には、顔料としては、例えば、
酸化バナジウム化合物(炭化バナジウム、一ホウ化バナジウム、二ホウ化バナジウム、窒化バナジウム等)、金属単体又は合金(アルミ、銀、ニッケル、ステンレス、フェロシリコン)酸化物(酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛粒子、酸化マグネシウム粒子、酸化カルシウム粒子、酸化ストロンチウム粒子、カーボンブラック(ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック)、
鉱物(マイカ)等などが挙げられる。
【0068】
顔料の種類の特定は、公知の方法で測定することが可能である。例えば、塗膜、または遠心分離後の沈殿物に対して、SEM-EDXによる元素分析、又はX線結晶回折測定により、着色顔料の種類を特定できる。
【0069】
顔料の濃度は、塗料に対して、2~45質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。
【0070】
[その他添加剤]
塗料には、触媒、ワックス、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、カップリング剤、顔料分散剤、沈殿防止剤、抗菌剤等のその他の周知の添加剤を含んでもよい。
【0071】
[動的表面張力]
塗料のうち、水系塗料は、水系塗料を最大泡圧法で測定した塗料の動的表面張力は、バブルライフタイム0.05sで30~60mN/mであり、バブルライフタイム0.5sで20~50mN/mであることが好ましい。
動的表面張力が、これらの範囲内である場合、塗料に巻き込まれた空気を排出する作用と、吐出された塗料の膜(つまりカーテン膜)を安定的に形成させる作用とが向上する。
動的表面張力は、樹脂と界面活性剤の種類、界面活性剤の濃度により調整できる。
【0072】
水系塗料の動的表面張力は、最大泡圧法により測定でき、例えば、協和界面科学製DP-51を使用して測定することができる。具体的には、次の通りである。
測定開始時および終了時の圧力を安定させるために、バブルライフタイムを0.01秒から5秒まで変化させたとき動的表面張力を測定し、バブルライフタイムが0.05秒と0.5秒における動的表面張力を求める。
プローブ径は1mmのものを使用し、装置内蔵のタンク内のエアーが100%の状態で測定を開始する。
水系塗料の粘度が高く測定できない場合、塗料温度を上げて(塗料粘度を下げて)測定してもよい。なお、塗料の温度を上げて、粘度を下げても動的表面張力は変動しない。塗料測定温度は10~60℃の範囲とすることが好ましい。温度が高すぎると溶媒である有機溶剤が揮発し、動的表面張力が変化する可能性がある。
【0073】
[粘度]
塗料の粘度は、特に制限はない。ただし、塗料としては、5~2000mPa・s(好ましくは10~500mPa・s)と低粘度の塗料も採用できる。低粘度の塗料を採用しても、塗料に固形分(特に、平均粒径が大きくかつ比重が大きい顔料等の固形分)を含んだ場合でも、固形分の沈降が抑制される。
加えて、低粘度の塗料を採用すると、アプリケーターロール10による金属板Mへの塗料の転写時において、塗料の泣き別れが発生し難く、ローピングが抑制される。
【0074】
塗料の粘度は、常温(25℃)の粘度であって、次の通り測定される。せん断速度により粘度が変化しない塗料については、フォードカップ型粘度計、岩田カップ型粘度計、振動式粘度計、レオメーターなど、公知の方法を使用することができる。せん断速度により塗料粘度が異なる塗料については、レオメーターを用い、ロール塗装時のせん断速度と言われる1000~10000s-1の範囲における粘度を測定する。
【実施例0075】
以下では、実施例および比較例を示しながら、本発明に係る塗料およびその塗装方法について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明に係る塗料、塗装方法の一例にすぎず、本発明に係る塗料、塗装方法が下記の例に限定されるものではない。
【0076】
<試験例1-1~5-6、9-1~11-7>
図1-1に示す塗装装置100を用いて、表1の条件で金属板の塗装を実施した。なお、本試験例では、塗料供給部14としてスロットコーターを採用した(表中、塗装方法の欄に「スロット+APR」と表記)
【0077】
以下、表中の記号又は略称等の詳細について説明する。
(ロールの回転方向)
・R:アプリケーターロール10の回転方向が、金属板Mの通板方向Aと逆方向。
・N;アプリケーターロール10の回転方向が、金属板Mの通板方向Aと同方向。
【0078】
(掻取ブレード)
・ポリエステル:ポリエステル製ドクターブレード
・セラミック :ジルコニア製ドクターブレード
【0079】
・気圧差(下流側-上流側):塗料供給位置P1に対するアプリケーターロール10の回転方向上流側の気圧とアプリケーターロール10の回転方向下流側の気圧との気圧差の絶対値
【0080】
・ギャップ:塗料供給部14の塗料供給口14Aとアプリケーターロール10との間隔
【0081】
・LS:通板速度
【0082】
(樹脂/硬化剤の欄)
・A:ウレタン/メラミン(質量比=100/20)、ウレタン(自製、数平均分子量Mn=17000)、メラミン(オルネクスジャパン「サイメル303LF」=100質量%)
・B:ポリエステル/メラミン(質量比=100/30)、ポリエステル(東洋紡「バイロン600」、数平均分子量Mn=16000)、メラミン(オルネクスジャパン「サイメル303LF」=60質量%、DIC「スーパーベッカミン」=40質量%)
・C:ポリエステル/メラミン(質量比=100/30)、ポリエステル:東洋紡「バイロンGK-810」、数平均分子量Mn=6000)、メラミン(オルネクスジャパン「サイメル303LF」=60質量%、DIC「スーパーベッカミン」=40質量%)
【0083】
(界面活性剤の欄)
・a: 日信化学工業(株)製オルフィンWE-003
・b: 共栄社化学(株)製ポリフローNo.50E
・c: 共栄社化学(株)製フローレンAC-303
【0084】
(顔料の欄)
・VB2:二ホウ素バナジウム
・Ag :銀
・Ni :ニッケル
・Al :アルミ
【0085】
(溶媒の欄)
・溶剤:昭栄化学工業製/シクロヘキサノンとエクソンモービル製/ソルベッソ150の1:1混合物を用いた。
【0086】
(動的表面張力の欄)
・BLT0.05s:バブルライフタイム0.05sでの動的表面張力(mN/m)
・BLT0.5s :バブルライフタイム0.5sでの動的表面張力(mN/m)
【0087】
<試験例6-1~6-6>
図2に示す塗装装置200を用いて、表1の条件で金属板の塗装を実施した。
図2に示す塗装装置200は、塗料供給部14に代えて、スロットコーター20により、一旦、中間ロール22に塗料を供給した後、中間ロール22によりアプリケーターロール10に塗料を供給する構成を採用する以外は、
図1-1と同じ構成の塗装装置である(表中、塗装方法の欄に「スロット+PUR」と表記)。
なお、
図2の装置では、中間ロール22も、中間ロール22によりアプリケーターロール10に塗料を供給後、中間ロール22に残留する塗料を掻き取る掻取ブレード16Aを設けている。一方、減圧部18は設けていない。
【0088】
ここで、表中、ロール回転方向の欄における、「NR」、「NN」は、次の事項を示す。
・NR:中間ロール22の回転方向が金属板Mの通板方向Aと同方向、アプリケーターロール10の回転方向が金属板Mの通板方向Aと逆方向
・NN:中間ロール22の回転方向が金属板Mの通板方向Aと同方向、アプリケーターロール10の回転方向が金属板Mの通板方向Aと同方向
【0089】
<試験例7-1~8-6>
図3に示す塗装装置300を用いて、表1の条件で金属板の塗装を実施した。
図3に示す塗装装置300は、塗料供給部14に代えて、塗料を貯留する貯留パン26からピックアップロール24により塗料をピックアップした後、アプリケーターロール10に塗料を供給する構成を採用する以外は、
図1-1と同じ構成の塗装装置である(表中、塗装方法の欄に「ロールコーター」と表記)。
図3に示す塗装装置300には、減圧部18は設けていない。
【0090】
ここで、表中、ロール回転方向の欄における、「NR」、「NN」は、次の事項を示す。
・NR:ピックアップロール24の回転方向が金属板Mの通板方向Aと同方向、アプリケーターロール10の回転方向が金属板Mの通板方向Aと逆方向
・NN:ピックアップロール24の回転方向が金属板Mの通板方向Aと同方向、アプリケーターロール10の回転方向が金属板Mの通板方向Aと同方向
【0091】
<評価>
各試験例について、次の評価を実施した。
【0092】
(空気同伴)
空気同伴について、次の通り評価した。
塗装した金属板を乾燥させ、表面を目視で観察した。評価基準は次の通りである。4点以上を合格とした。
・5 : 外観不良なし。
・5-: 未塗装部なし。塗膜に濃淡あり、30cmの距離から観察して見えない。
・4 : 未塗装部なし。塗膜に濃淡あり、50cmの距離から観察してみえない。
・3 : 未塗装部なし。塗膜に濃淡あり、100cmの距離から観察して見えない。
・2 : 未塗装部あり。任意の場所を観察し、未塗装部が3個/1m2以下。
・1 : 未塗装部あり。任意の場所を観察し、未塗装部が3個/1m2超。
【0093】
(ローピング)
ローピングについて、次の通り評価した。塗装した金属板を乾燥させ、表面を目視で観察した。評価基準は次の通りである。4点以上を合格とした。
・5 : 外観不良なし
・5-: ローピングあり。30cmの距離から観察して見えない。
・4 : ローピングあり。30cmの距離から観察して正面から見えない。斜めから僅かに見える。
・3 : ローピングあり。30cmの距離から観察して正面から見えない。斜めから見える。
・2 : ローピングあり。30cmの距離から観察して正面から見える。斜めから見える。
・1 : ローピングあり。30cmの距離から観察して正面からはっきり見える。斜めからはっきり見える。
【0094】
(色抜け)
色抜けについて、次の通り評価した。塗装した金属板を乾燥させ、表面を目視で観察した。評価基準は次の通りである。4点以上を合格とした。
・5 : 色抜けなし。
・5-: 色抜けなし。幅方向に濃淡あり。30cmの距離から観察して濃淡が判別できない。
・4 : 色抜けなし。幅方向に濃淡あり。50cmの距離から観察して濃淡が判別できない。
・3 : 色抜けあり。任意の1m2を観察し、色抜け面積率が1%以下
・2 : 色抜けあり。任意の1m2を観察し、色抜け面積率が3%以下
・1 : 色抜けあり。任意の1m2を観察し、色抜け面積率が3%超
【0095】
(塗料飛散)
塗料飛散について、次の通り評価した。塗装機周辺に紙を置き、塗装機を所定の条件で30分稼働させた。紙のどこに塗料が飛散したかを調査した。コーターの中心を起点とし、塗料が飛散した最大距離を調査した。評価基準は次の通りである。評点3以上を合格とした。
・5 :塗料飛散なし。
・4 :塗料最大飛散距離が1m以下。
・3 :塗料最大飛散距離が1m超2m以下。
・2 :塗料最大飛散距離が2m超3m以下。
・1 :塗料最大飛散距離が3m超。
【0096】
(導電性)
導電性について、次の通り評価した。
塗装、乾燥して得られた金属板を用いて、JIS C 2550に規定されている測定方法で、層間抵抗値(Ω・cm2)を測定し、以下の基準にて導電性を評価した。評価基準は次の通りである。合否基準は特に設けていない。
(評価基準)
6:層間抵抗値が1.0Ω・cm2未満
5:層間抵抗値が1.0Ω・cm2以上、1.5Ω・cm2未満
4:層間抵抗値が1.5Ω・cm2以上、2.0Ω・cm2未満
3:層間抵抗値が2.0Ω・cm2以上、2.5Ω・cm2未満
2:層間抵抗値が2.5Ω・cm2以上、3.0Ω・cm2未満
1:層間抵抗値が3.0Ω・cm2以上
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
上記結果から、試験例1-1~3-6、9-1~9-2、10-1~11-7(実施例)は、試験例4-1~8-6、9-3(比較例)に比べ、金属板の通板速度を速くしても、塗料への空気同伴、ローピング、色抜け、及び塗料飛散の発生を抑制できることがわかる。
また、試験例1-1~3-6、9-1~9-2、10-1~11-7(実施例)は、導電性の評価も良好であることもわかる。