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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068986
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】集風装置及び風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/04 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
F03D3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180502
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】509122821
【氏名又は名称】株式会社波多製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140394
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 康次
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 靖徳
(72)【発明者】
【氏名】仲田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】石川 亮太
(72)【発明者】
【氏名】笠置 諒一
(72)【発明者】
【氏名】波多 乙三宏
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA18
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB71
3H178BB90
3H178CC01
3H178CC21
(57)【要約】
【課題】装置外部の水平方向の風を、装置内部に確実に取り込んで鉛直方向に変更可能な集風装置及び地産地消型風力発電装置を提供する。
【解決手段】集風装置1は、天地軸Oの一方に設けられた導入側端部2と、他方に設けられた排気側端部3と、これらの端部間に各端部から離間するように設けられた環状体4とを備える。環状体4は頂点部分が除去されかつ上下に外部空気Aが流通可能な内部通路42を有した円錐体41を成す。排気側端部3と環状体4との間には排気隙間Gが形成されている。排気隙間Gは天地軸Oを中心として外部空気Aに向けて全方位的に開放されるとともに、環状体4の内部通路42に接続されている。排気隙間Gの流路断面積は排気側端部3の外縁から天地軸Oに近づく程減少することを特徴とする。環状体4は端部2,3間に複数、夫々離間しながら配置されていることが好ましい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びた天地軸の一方に設けられた導入側端部と、
前記天地軸の他方に設けられた排気側端部と、
前記導入側端部と前記排気側端部との間に各端部から離間するように設けられかつ前記天地軸と同軸上に中心軸を有した環状体と、
を備えた集風装置であって、
前記環状体は、頂点部分が除去されかつ上下に外部空気が流通可能な内部通路を有した円錐体を成し、該円錐体の末窄まり側を前記排気側端部に向け、該円錐体の末広がり側を前記導入側端部に向けて配置されており、
前記排気側端部と前記環状体との間には排気隙間が形成され、かつ、前記導入側端部と前記環状体との間には導入隙間が形成され、
前記排気隙間は前記天地軸を中心として全方位の外部空気に向けて開放されるとともに、前記環状体の前記内部通路に接続されており、
前記排気隙間の流路断面積は前記排気側端部の外縁から前記天地軸に近づく程減少し、
前記導入隙間に流入した水平方向の外部空気は、鉛直方向に流れを変えて前記内部通路に進入して、前記排気隙間を流れる前記外部空気に合流する、
ことを特徴とする集風装置。
【請求項2】
前記導入側端部は椀状体を成し、該椀状体の末窄まりの底部が、前記天地軸に近づくにつれ、前記環状体の前記内部通路に向かって延びること、
を特徴とする請求項1に記載の集風装置。
【請求項3】
前記環状体の前記内部通路の流路断面積は前記末広がり側より前記末窄まり側が小さい ことを特徴とする請求項1又は2に記載の集風装置。
【請求項4】
前記環状体の外周側壁と内周側壁とが夫々、外方へ張り出すように湾曲した断面形状を有する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の集風装置。
【請求項5】
前記環状体は前記導入側端部と前記排気側端部との間に複数、夫々上下に離間しながら並置され、
隣接する前記環状体の間には環状隙間が形成され、
前記環状隙間は前記中心軸を中心として前記外部空気に向けて全方位的に開放されるとともに、前記環状体の前記内部通路に接続されている、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の集風装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の集風装置を備え、かつ、前記環状体の前記内部通路内に風力発電用の風車を回転可能に載置した、
ことを特徴とする風力発電装置。
【請求項7】
天空側に配置された前記導入側端部又は前記排気側端部を雪よけ用屋根として使用し、かつ、前記屋根の外表面にソーラーパネルを設置した、
ことを特徴とする請求項6に記載の風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集風装置及び風力発電装置に関し、より具体的には、装置外部の水平方向の風を、装置内部に取り込んで鉛直方向に変更可能な集風装置及び風力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、風力発電装置に用いられる風車は目的や出力の観点から主に2つに分かれている。一方は国民の日常生活や経済活動の電力を供給するための大型発電装置用の風車であり、他方は自宅の外灯を灯す程度の小電力を供給するための小規模な地産地消型発電装置用の風車である。
【0003】
(従来技術の問題点)
従来の地産地消型の風力発電装置の問題点として、冬に積雪の多い地域ではこの装置に雪が積もって風車部分が回転不能になり、ひいては発電不能になることが指摘されている。このため、風車に雪が積もるのを防ぎながら発電できることが望まれている。
【0004】
屋外の風を集めて装置内に取り込み、風速が最も高くなる場所に風車を設置してこれを回転させると多くの電力を生み出すことができる。しかしながら、屋外の風の方向は通常一定ではなく、時々刻々絶えず変化し、装置を中心として360度のどの方角からも吹いてくる。このため、風力発電装置は、屋外の風向きに対して全方位的に対応(制御)して発電できることが望まれている。
【0005】
また、屋外に設置された風力発電装置は一般に該装置周囲の風にとっては障害物である。従って、装置内に集風用の導入口や導風通路を設けたとしても、風は設計者の要望どおり導入口には入っていかずに装置(障害物)の周囲を通り過ぎていくだけになってしまうことが多い。つまり、屋外の風は、発電装置に対して障害物の周りを逃げるように通過していってしまう。
【0006】
この望ましくない流動現象は、導風通路の方がたとえ導風通路内部の気圧を多少下げて負圧にできたとしても装置周囲の何ら拘束のない外部空間より、流体抵抗が大きいことが原因である。
【0007】
(先行特許文献について)
この種の風力発電装置の先行技術として特許文献1~3を例示する。特許文献1には、1個以上の集風ユニットと1個以上の発電ユニットとを連結することにより、全方位の風から発電することを特徴とする風力発電機が開示されている。しかしながら、流体力学を専門とする本発明者らが考えるに、当該文献に記載の発電機を使用した場合、この発電機外周の風は仕切板に仕切られた流体抵抗の高い風取入口にすんなり取り込むことができず、実際は発電機の周りを逃げていくにすぎないものと容易に想定される。
【0008】
また、特許文献2には不特定の方角から垂直軸風車へ風を集める集風装置が開示されている。この集風装置には該風車の周囲で林立し該風車から放射状に広がるように配置された集風翼や、この集風翼の上下を覆う集風面付の集風部材が設けられている。
【0009】
この特許文献2の集風装置では該装置の外周から中心軸へ向かう集風通路は複数の集風翼に仕切られており、さらにその内部には風車が回転可能に軸支されているが、本発明者らにしてみれば、このような流体抵抗の高い集風通路には屋外の風が入っていかず、屋外の風は、円柱回りの流体流れのように装置本体部の外周に沿って該装置を通り抜けていくものと考える。
【0010】
さらに、特許文献3には不特定の方角からのビル風を集める風力発電用集風システムが開示されている。この集風システムには、建築物の各側壁全面に多数の集風部を設け、建築物の屋上に負圧発生室を設けられている。この集風部と負圧発生室との間は導風管及び風力発電室で連結している。
【0011】
特許文献3には負圧発生室で負圧を発生させて、側壁の集風部で取り込み、風力発電室を通過したビル風を逃がす点が興味深いが、屋上の外気(自然風)が負圧発生室の流路内を確実に通過しない限りは室内を負圧に出来ず、風力発電室を通過したビル風を排気できないことになる。本発明者らの見立てでは、外気(特に障害物の無い屋上の外気)は流路抵抗が高い負圧発生室内の流路内に入っていかず、負圧発生室の周囲を流れ去るのがより自然である。
【0012】
また、特許文献3の集風システムは建物全体を利用する非常に大規模なシステムになるため、上述した地産地消型の小規模集風システムに応用するには困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2013-127235号公報
【特許文献2】国際公開第2011/161821号パンフレット
【特許文献3】特開2005-098256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、装置外部の水平方向の風を、装置内部に確実に取り込んで鉛直方向に変更可能な集風装置を提供することを目的とする。
【0015】
加えて、本発明は、装置外部の水平方向の風を装置内部に確実に取り込んで鉛直方向に変更し、その風で発電用風車を回転可能な地産地消型の風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、本発明は、例えば、以下の構成・特徴を備えるものである。
(態様1)
鉛直方向に延びた天地軸の一方に設けられた導入側端部と、
前記天地軸の他方に設けられた排気側端部と、
前記導入側端部と前記排気側端部との間に各端部から離間するように設けられかつ前記天地軸と同軸上に中心軸を有した環状体と、
を備えた集風装置であって、
前記環状体は、頂点部分が除去されかつ上下に外部空気が流通可能な内部通路を有した円錐体を成し、該円錐体の末窄まり側を前記排気側端部に向け、該円錐体の末広がり側を前記導入側端部に向けて配置されており、
前記排気側端部と前記環状体との間には排気隙間が形成され、かつ、前記導入側端部と前記環状体との間には導入隙間が形成され、
前記排気隙間は前記天地軸を中心として全方位の外部空気に向けて開放されるとともに、前記環状体の前記内部通路に接続されており、
前記排気隙間の流路断面積は前記排気側端部の外縁から前記天地軸に近づく程減少し、
前記導入隙間に流入した水平方向の外部空気は、鉛直方向に流れを変えて前記内部通路に進入して、前記排気隙間を流れる前記外部空気に合流する、
ことを特徴とする集風装置。
(態様2)
前記導入側端部は椀状体を成し、該椀状体の末窄まりの底部が、前記天地軸に近づくにつれ、前記環状体の前記内部通路に向かって延びること、
を特徴とする態様1に記載の集風装置。
(態様3)
前記環状体の前記内部通路の流路断面積は前記末広がり側より前記末窄まり側が小さい
ことを特徴とする態様1又は2に記載の集風装置。
(態様4)
前記環状体の外周側壁と内周側壁とが夫々、外方へ張り出すように湾曲した断面形状を有する、
ことを特徴とする態様1~3のいずれかに記載の集風装置。
(態様5)
前記環状体は前記導入側端部と前記排気側端部との間に複数、夫々上下に離間しながら並置され、
隣接する前記環状体の間には環状隙間が形成され、
前記環状隙間は前記中心軸を中心として前記外部空気に向けて全方位的に開放されるとともに、前記環状体の前記内部通路に接続されている、
ことを特徴とする態様1~4のいずれかに記載の集風装置。
(態様6)
態様1~5のいずれかに記載の集風装置を備え、かつ、前記環状体の前記内部通路内に風力発電用の風車を回転可能に載置した、
ことを特徴とする風力発電装置。
(態様7)
天空側に配置された前記導入側端部又は前記排気側端部を雪よけ用屋根として使用し、かつ、前記屋根の外表面にソーラーパネルを設置した、
ことを特徴とする態様6に記載の風力発電装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の集風装置によれば、前記天地軸を中心とした全方位の外部空気が通過可能な排気隙間が形成されている。つまり、集風装置の一部(排気隙間)が全方位的に開放されている(筒抜けになっている)のである。これにより、この隙間部分での流路抵抗は集風装置外周の流路抵抗とさして変わらない程低くなり、外部空気が流入するようになる。
【0018】
また、本発明の集風装置は前記排気隙間が該装置の前記天地軸において最も短くなるように構成されている。つまり、流路面積が装置外周から装置中心に向かうに従って減少することから、該装置に進入した風は天地軸付近を通過する際に最も流速が増加(言い換えれば、最も圧力が低下)する(ベルヌーイの定理)。すなわち、排気隙間が負圧発生部となる。
【0019】
さらに、本発明の集風装置は環状体にも外部空気を装置内へ案内しかつ排気隙間に接続する内部通路が形成されていることから、環状体付近に水平方向に衝突した風も内部通路を経由して鉛直方向に風向きを変えた後に負圧発生部である排気隙間に案内されて装置外へ排気されることになる。
【0020】
加えて、本発明の集風装置又は風力発電装置は内部通路が負圧発生部へ向けて末窄まりに形成されているため、徐々に流速が増加(圧力が低下)するようになり、内部通路から排気隙間への風の流れを促進できる。この流速増加箇所に発電用風車を搭載することで効率よく発電することができるようになる。
【0021】
また、本発明の集風装置又は風力発電装置はこのような内部通路付きの環状体を複数直列に並べて配置させることで、装置内に集められた一つの風の流れに沿って複数の風車を載置させることができ、カスケード状の発電を実現することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】比較例(本発明者らによる検討初期)の集風装置の概略(数値解析モデル)を示した図である。
図2】比較例モデルでの数値解析結果(圧力分布及び流速分布)を示した図である。
図3】実施例1の集風装置を示した斜視図及び断面図である。
図4】実施例2の集風装置を示した斜視図及びその一部を破断した斜視図である。
図5】実施例3及び比較例の数値解析結果(流速)を比較したグラフである。
図6】実施例3における3段環状体付モデルでの数値解析結果(圧力分布及び流速分布)を示した図である。
図7】本発明(実施例4)の集風装置及び風車の試作品及び流速試験結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づき説明するが、本発明は、下記の具体的な実施態様に何等限定されるものではない。なお、各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
【0024】
(比較例(初期コンセプト案))
本発明者らは、発電用風車を搭載でき、外部の横向き(水平方向)の風Aを縦向きに変更して取り込むことのできる集風装置101を検討した。図1の(a)及び(b)に、検討初期のコンセプト案(以下、「比較例」とも呼ぶ。)の集風装置101の概略(後述の数値解析モデル)を示す。この比較例の集風装置101には、互いに離間した上下の円板(図示では、テーパーが付いた断面形状を有した円板)102,103が設けられるとともに、下側円板103の中央には中空円筒体104が接続され下方に延びている。中空円筒体104の上部104aも底部104bも開口(つまり貫通)しており、中空円筒体104の上部104aは下側円板103を貫通しているため、中空円筒体104の内部流路105は円板102,103間の隙間(負圧発生部)106に連結している。
【0025】
(ベルヌーイの定理)
ところで、流体Aの流速が増加すると圧力が低下することが知られている(ベルヌーイの定理)。空気等の流体Aは圧力の高い地点から圧力の低い地点へ流れることも知られている。
【0026】
上述の定理に照らしてみると、図1に示す比較例の集風装置101では、円板102,103間の隙間106は、その外周に近づくにつれ上下に広がり、装置中央(天地軸O)に近づくにつれ狭まることから、円板102,103間を通過する風Aの流速は装置中央(天地軸O)付近で流速が増加し、圧力が低下する(つまり、隙間106が負圧発生部となる)。また、中空円筒体104の内部流路105では底部104bの開口孔から、相対的に圧力の低下した負圧発生部106に接続した上部104aの貫通孔へ向けて外部空気Aが吸い込まれるようになる。つまり、横向きに吹いている外部の風Aは、その流れを縦向きに変えて集風装置101内へ集風されるようになる。
【0027】
(初期コンセプト案の改善すべき点)
しかしながら、この検討初期の比較例の集風装置101には以下の改善すべき点が挙げられる。先ず、(1)中空円筒体104の底部104bの開口孔から風Aが集風されやすい構造とはいえない。つまり、負圧発生部106で十分な圧力低下を達成しないと、横向きの風Aを内部流路105内に取り込んで縦向きへ変更することができないし、この内部流路105内に発電用風車を置けたとしても望ましい風車の回転や発電能力を得ることは難しい。(2)底部104b以外の部分、例えば中空円筒体104の胴部104c外壁付近に衝突する風Aは胴部104c周囲を通り抜けていくだけであり、集風に全く利用できない。
【実施例0028】
図3(a)及び(b)は、本発明(実施例1)の集風装置1(1A)を示した斜視図及び断面図である。なお、集風装置1は、後述する発電用風車7(図7(b)も参照)等を追加で搭載することで風力発電装置として使用できる。図3の各図に示すように、集風装置1は、主として、導入側端部2と、排気側端部3と、環状体4とを備える。上述の各要素2~4を集風装置1内の所定の位置や間隔で支持するために支持棒5が設けられている。図示の例では、環状体4の外周沿いに3つの支持棒5が、天地軸Oを基点として互いに120°に離間した状態で設置されている。この他に、集風装置1を図示しない地面から所定の高さに保持するための支柱6が設けられていてもよい。次に個々の要素の詳細について説明する。
【0029】
(導入側端部)
導入側端部2は、鉛直方向に延びた天地軸Oの一方(図3では上方、図4では下方)に設けられる。導入側端部2は椀状体21を成す。より具体的には、椀状体21の底部22が、その外周から中心(天地軸O)に近づくにつれ、環状体4の内部通路42に向かって延びている。
【0030】
(環状体)
導入側端部2と排気側端部3との間には、各端部2,3から離間するように環状体4が少なくとも1つ(図示では3つの環状体4a,4b,4c)設けられている。環状体4は天地軸Oと同軸上に中心軸Oを有する。つまり、導入側端部2と排気側端部3と環状体4とは、同一軸上に配列する。ここで、環状体4の本体は図示しない頂点部分が除去されたような円錐体41を成す。そして、円錐体41の内部には、鉛直方向上下に外部空気Aが流通可能な内部通路42が設けられる。図示の具体例では、円錐体41の末窄まり側41aが排気側端部3に向けて、末広がり側41bが導入側端部2に向けて配向されている。内部通路42の流路断面積は末広がり側41bが最も大きく、末窄まり側41aに向かって次第に縮小している。よって、内部通路42を流れる空気は、末窄まり側41aに進むに従い、その流速が増加し、その圧力は低下する。
【0031】
(発電用風車)
さらに集風装置1には、風力発電装置として利用するために、この内部通路42に発電用風車7(以下、単に「風車」とも呼ぶ。図7(b)参照)と、この風車7を回転させる回転軸(図示せず)とを追加設置してもよい。特に、発電効率の面から、取り込んだ流体Aの流速が高くなる末窄まり側41aに、風車7を載置することが好ましい。また集風装置1には、導入側端部2の内部23又は排気側端部3の内部33に発電機(図示せず)を設置し、上記回転軸に連結するようにしてもよいし、集風装置1の外部に風車7と連結させた発電機を設置しても、発電機を一体に形成した風車を載置してもよい。さらにこの集風装置1には、天空側に配置された導入側端部2(別の実施例2では排気側端部3)の外表面にソーラーパネル(図示せず)を搭載して太陽光発電も同時に行うように構成してもよい。
【0032】
(環状体の断面形状)
環状体4の断面形状についても触れておく。通常の航空用エンジンの回転翼のそれとは全く異なり、実施例の環状体4は、その外周側壁41cと内周側壁41dとが夫々、外方へ張り出す(膨出する)ように湾曲した断面形状を有することが特徴的である。このようなユニークな断面形状を採用することで、環状体4を通過する流体Aは外周側壁41cと内周側壁41dから容易に剥離せず、環状体4の境界近くで渦形成も生じにくくなるといった効果が得られる。
【0033】
(排気側端部)
天地軸Oの他方(図3の例では下方)には排気側端部3が設けられる。この排気側端部3は円板31(図示の例ではどら焼き形状)であるが、外縁から天地軸Oに近づくにつれ、環状体4に向かって次第に盛り上がった湾曲面32を有している。湾曲面32と環状体4との間には、内部通路42に接続した排気隙間Gが形成される。この排気隙間Gは天地軸Oを中心として外部の全方位に向けて開放されている。また、天地軸O方向における排気隙間Gの距離は、導入隙間Gや環状隙間Gのそれに比べ顕著に(好ましくは3倍以上)大きくなるよう設計されている。従って、図3(b)に示すように比較的多量の外部空気A(A)が排気隙間Gを通過可能である。さらに、排気隙間Gは上述した湾曲面32の存在により円板31外周(外縁)から徐々に狭まり、中心(天地軸O)において最も短くなる(流路断面積が最も減少する)ように構成されている。
【0034】
(流体抵抗の抑制及び負圧の発生)
排気側端部3と環状体4との間の排気隙間Gに、以上のような流路構造を採用しているため、外部空気Aは以下の挙動を示す。集風装置1周囲の外部空気A(A)の方向は時々刻々変わり得るが、排気隙間Gが天地軸Oを中心とした全方位に開放されているため流体抵抗は極めて小さく、どの方位の外部空気Aも該隙間Gを通過可能である。また、排気側端部3の湾曲面32と環状体4の円錐体41とで区画された排気隙間Gの距離Lは断面視で中心の天地軸Oで最も短くなっている(その流路断面積が最も減少する)ため、ベルヌーイの定理に従い、水平方向に通過する外部空気Aはこの天地軸O付近で最も大きな流速を有し、最も低い圧力を有することになる。
【0035】
一方で、排気隙間Gは、天地軸O付近にて鉛直方向に内部通路42に接続されている。つまり、内部通路42は、負圧発生部である排気隙間Gと、後述する導入隙間Gと、を連通する。従って、排気隙間Gは、該排気隙間Gに進入する水平方向の外部空気Aをその流速(圧力)を変化させながら通過させるとともに、導入隙間Gに進入した水平方向の外部空気Aも内部通路42を経由して取り込み、最終的には外部空気AとAを集風装置1外へ排出する。従って、導入隙間Gや内部通路42を通過する外部空気Aの流動方向は、水平方向→鉛直方向→水平方向に変化する。
【0036】
(環状体の複数設置)
また、環状体4は導入側端部2と排気側端部3との間に複数、夫々、環状隙間Gだけ、離間しながら配置されていることがさらに好ましい。各環状体4内には風車7を少なくとも1つ搭載することができることから、一つの集風装置1内に、所望の発電出力に応じて一つ又は複数の風車7を格納可能になる。なお、風車7が搭載可能な領域Wについては図3(b)を参照されたい。図3(b)では中段の環状体4bのみに風車7を載置することを示している。
【0037】
このように、この実施例では内部通路42付きの環状体4a~4cを複数直列に並べて配置させることで、集風装置1内に集められた一つの風Aの流れに沿って複数の風車7を載置させることができ、カスケード状の発電を実現することができるようになる。
【0038】
(環状隙間)
環状体4間の環状隙間Gも、排気側端部3と同様に、天地軸Oを中心に外部の全方位に開放されているため、その流路抵抗は低く、水平方向の外部空気Aは環状隙間Gを通過し易い。従って、この実施例では外部空気Aは、符号A及びAに示すように、導入隙間Gだけでなく夫々の環状隙間Gからも集風装置1内に進入可能となり、上述の比較例である初期案に比べて、集風装置1外周面全体からより多量の外部空気A~Aを取り込むことが可能となる。
【0039】
(集風装置の動作)
以上、集風装置1を構成する主要な各要素2~4を説明したが、集風装置1を使用する際の働きについておさらいする。集風装置1で風A(A~A)が流入する経路は、一端側の導入隙間Gと、他端側の排気隙間Gと、これらの間に設けられた少なくとも1つの環状隙間Gとの3つである。
【0040】
天地軸O方向に極めて長くかつ、支持棒5設置箇所以外は水平方向に全方位的に開放された排気隙間Gにおいて大量の外部空気Aが通過可能であり、天地軸O付近で圧力が最も低下する。
【0041】
一方、導入隙間Gや環状隙間Gも同様に水平方向に全方位的に開放されており、かつ、負圧状態の排気隙間Gと天地軸O方向に接続しているため、これらの隙間G,G近傍を流れる外部空気A,Aは、導入隙間Gや環状隙間Gから内部通路42内に入り、排気隙間Gを流れる外部空気Aと合流して排気隙間Gの下流側へ流れ、集風装置1から排出される。この際、各環状体4(4a,4b,4c)の内部通路42の最も流路が狭い箇所(例えば上述の領域W)を通過する際に、当該箇所に風車7を載置すれば、これを効率よく回転させることができる。
【実施例0042】
(逆さ配置の変形例)
本発明の集風装置1は上述の実施例1に限らず、種々の変形例が考えられる。図4の各図に示した実施例2の集風装置1Bのように、例えば、支柱6を除く実施例1の主要要素2~4を上下逆に配置してもよい。この逆さまの構成では、導入側端部2が下方(地面側)に配置され、排気側端部3が上方(天空側)に配置されるため、導入隙間G及び環状隙間Gに進入した外部空気A,Aは鉛直方向上方に向きを変えて排気隙間Gを経由して集風装置1外へ排出されるようになる。
【0043】
(逆さ配置のメリット)
この実施例2に示す構成では、各環状体4の末窄まり側41aが上方に位置し末広がり側41bが下方に位置することになり、いわば「傘を広げた状態」になる。このため、集風装置1を長時間、屋外に設置しても枯葉やゴミなどが環状体4内の風車7付近に進入しにくいものとなる。
【0044】
(サイズが異なる環状体を有した変形例)
例えば、実施例1,2に配置された各環状体4は同一の形状・寸法を有していたが、この構成に限定されない。図示しないが、例えば、円錐体41のサイズを徐々に小さくした環状体4を配置することも可能である。例えば、一端(導入側端部2)側に最も近い環状体4の寸法(直径)を最も大きくし、他端(排気側端部3)側に近づくにつれ、環状体4の寸法を徐々に小さくする構成を採用してもよい。このような構成によれば、より多量の外部空気A,Aを集風装置1(風車7)内に通過させることで、その発電能力が高まることを期待できる。
【実施例0045】
(数値解析による性能評価)
次に、上述の初期モデル(比較例)や本発明の集風装置1内を流れる流体の特性を把握するため数値解析を行うことにした。外部空気Aの主流速Vは、新潟市の年間平均流速に相当する3.3m/sに設定した。その他の解析パラメータは以下の表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
なお、拘束条件として横幅を600mm以内とし、縦幅を無制限とした。また、いずれの数値解析モデルにおいても風車7を載置しない状態で計算を行った。
【0048】
(初期モデル(比較例)の数値解析結果)
図1は上述したとおり比較例の集風装置101(数値解析モデル)を示した図である。図2(a)及び(b)に、この数値解析によって得られた比較例の圧力分布及び流速分布を示す。この結果、風車搭載可能領域として中空円筒体104内の内部流路105で図2(b)中の四角で囲む範囲を通過する流体Aの平均流速はV=0.78m/s(メートル毎秒)であった。上記解析結果は、後述の図5中のSampleAとしても示す。
【0049】
また、比較例と同様の解析条件で本発明(実施例3)の集風装置1の数値解析を行った。具体的には、環状体4を1段、2段、或いは3段配置したモデルを夫々構築して計算した(図5中のSampleB~Dを参照)。図5は、各モデルSampleA~Dの風車搭載可能領域Wに流入する流体Aの流速Vを比較したグラフである。
【0050】
この図5から、本実施例のいずれの解析モデル(SampleB~D)でも流速Vが1m/sを超える結果となり、比較例(SampleA)のモデルの結果より高くなること、及び、本実施例の解析モデル(SampleB~D)の中で比較すると、環状体4を増段する程、上記領域Wを通過する流体Aの流速Vが高くなることが判った。3段の環状体4を配置したモデル(SampleD、図6(a)の符号1Cも参照)の場合では、流入する主流速V=3.3m/sで集風装置1に進入した流体Aは、V=2.08m/sという高い流速を維持して風車搭載可能領域Wを通過することが判った。
【0051】
図6(a)は3段の環状体4を配置した場合の解析モデルを示し、図6(b)及び(c)は、このモデルを数値解析した場合の圧力分布と流速分布とを示す。これらの結果から、水平方向(図示では左から右方向)に集風装置1(1C)に衝突した外部空気Aは、導入隙間Gや環状隙間Gに勢い良く進入し、鉛直方向(下方向)に進路を変えて内部流路42を通過して、排気隙間Gに合流した後、集風装置1Cから水平方向に排出されていくことが判った。特に、導入隙間Gや環状隙間Gにおいては流体Aが進入する領域で高い流速となり、排気隙間Gでは内部通路42を通過した流体A,Aと排気隙間Gから流入した流体Aとが合流する地点より後流側(排出側)の領域で高い流速となることが判った。
【実施例0052】
(集風装置の試作)
上述の数値解析で最も高い流体特性を示した3段設置モデル(図5中の符号SampleD、図6(a)の符号1Cも参照)を模擬した集風装置1Dを実際に試作し、風洞実験に供することにした(実施例4、図7(a)参照)。風洞実験では中段(2段目)の環状体4bの風車搭載可能領域Wに熱線流速計プローブを取り付け、該領域Wを通過する流体AとAが合流した流体Aの流速Vを測定した。プローブの計測位置は上記領域W内の4地点に設定し、各地点で2回ずつ計測した。また、風洞内で集風装置1Dへ流入する流体Aの主流速Vを3m/s、5m/s、及び7m/sの3つの条件に設定した。
【0053】
(試作装置での流速測定)
図7(c)に各主流速Vに対する風車搭載可能領域Wでの流速V(「通過流速」とも呼ぶ。)を示す。図示の通過流速Vは4地点を2回測定して求めた平均流速である。横軸は主流速Vの設定条件を示し、縦軸は主流速Vに対する通過流速Vの割合を示す。破線は100%(計測した通過流速Vが主流速Vと同じ値)の場合を示し、一点鎖線は上述の数値解析上で計算された割合を示す。この図7(c)から、実際に試作した集風装置1Dでは、主流速Vに対して90%程度の通過流速Vが得られ、図5図6で示した解析モデルでの計算値よりも高い通過流速Vが実際に得られていることが判った。
【0054】
(風車回転実験)
また、本発明者らは、図7(b)に示すような風車7も試作し、集風装置1D内の風車搭載可能領域W(具体的には、2段目の環状体4b)内に載置した。そして、風速(主流速V)を10m/sとした条件下に集風装置1Dを置き、ハイスピードカメラを用いて風車7の回転数を測定した。
【0055】
(風車回転実験結果)
この結果、主風速がV=10m/sでは、風車7が70rpmで回転することが判った。このように実際に試作した集風装置1Dにおいても、横向きの外部空気Aが縦向きに流れ方向を変えて勢いよく集風装置1D内へ流入し、風車7を勢いよく回した後に集風装置1D外へ排出されていくことを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、水平方向の風(外部空気)を装置内部に確実かつ勢いよく取り込んで鉛直方向に変更可能な集風装置を提供したり、取り込んだその風で発電用風車を回転可能な地産地消型の風力発電装置を提供したりすることが可能となる。
【0057】
このような顕著な作用効果を発揮する本発明の集風装置や風力発電装置は、同種の市場には見当たらず、関連する学会においても提案されていないため、産業上の利用価値及び産業上の利用可能性が非常に高い。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B,1C,1D 集風装置(又はその解析モデル)
2 導入側端部
3 排気側端部
4,4a,4b,4c 環状体
5 支持棒
6 支柱
7 発電用風車(風車)
21 椀状体
22 導入側端部の底部
23 導入側端部の内部
31 円板
32 湾曲面
33 排気側端部の内部
41 円錐体
41a,41b,41c,41d 末窄まり側,末広がり側,外周側壁,内周側壁
42 内部通路
A,A,A,A 流体(外部空気,風)
,G,G 導入隙間,排気隙間,環状隙間
L 排気隙間の距離
O,O 集風装置の天地軸,環状体の中心軸
,V 主流速,風車搭載可能領域での流速(通過流速)
W 風車搭載可能領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7